説明

受電装置、送電装置、無線電力伝送システム、及びコイル用導電性線材

【課題】無線電力伝送において送電効率の向上と装置重量の低減を両立可能な技術を提供する。
【解決手段】送電装置と受電装置とを備える無線電力伝送システムにおいて、送電装置は、高周波電源から高周波電力が供給される送電側電磁誘導コイルと、該送電側電磁誘導コイルからの電力を電磁誘導により受電する送電側共鳴コイルと、を有し、受電装置は、送電側共鳴コイルからの電力を送電側共鳴コイルとの間で発生する磁界共鳴により受電する受電側共鳴コイルと、該受電側共鳴コイルからの電力を電磁誘導により受電すると共に負荷抵抗と電気的に接続される受電側電磁誘導コイルを有する。受電側共鳴コイル及び受電側共鳴コイルの少なくとも一方が、中空構造の導電性線材によって形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受電装置、送電装置、無線電力伝送システム、及びコイル用導電性線材に関する。
【背景技術】
【0002】
大気汚染や化石燃料の枯渇に対する懸念から、環境に配慮した車両として電気自動車やハイブリッド車などの電動車両が注目されている。この種の車両は、例えば二次電池に蓄えた電力で走行するタイプのものが公知である。また、ハイブリッド車においても、電気自動車と同様に、車両外部の電源から車載の蓄電装置を充電可能な車両が知られている。例えば、家屋に設けられた電源コンセントと車両に設けられた充電口とを充電ケーブルで接続することで、家庭用電源から蓄電装置を充電可能な「プラグイン・ハイブリッド車」が知られている。
【0003】
送電技術として、電源コードや送電ケーブルを用いないワイヤレス送電技術が近年注目されている。例えば、自動車に搭載されている二次電池を充電する技術として、走行路に設けられた給電部から非接触で給電を受けて充電する技術(例えば、特許文献1を参照)がある。そして、このワイヤレス送電技術としては、磁界共鳴により離間している機器へ高い伝送効率で電力を送る技術が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−120357号公報
【特許文献2】特開2008−301918号公報
【特許文献3】特開平7−231591号公報
【特許文献4】特開2004−135386号公報
【特許文献5】特開2005−347481号公報
【特許文献6】特開2009−140708号公報
【特許文献7】実開平5−31016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなコイル間の電磁誘導による無線電力伝送(ワイヤレス送電)方式では、送電側と受電側の接点の露出が不要となる利点があるものの、送電側及び受電側のコイル間隔(送電距離)が大きくなるに従って送電効率が極端に落ちてしまうのが実情である。
【0006】
そこで近年では、このような電磁誘導方式に加えて、共振周波数を合わせたコイル間(送電側回路〜受電側回路間)における磁界共鳴(Magnetic Resonance。磁気共鳴、磁場共鳴、磁界共振ともいう)を利用した磁界共鳴方式のワイヤレス送電技術が提案されている。磁界共鳴方式によるワイヤレス送電では、電磁誘導方式に比べて送電側共鳴コイル及び受電側共鳴コイルを離間させた場合の電力の伝送効率(以下、「送電効率」という。)の低下が小さく、送電側共鳴コイル及び受電側共鳴コイルを離間させる距離、すなわち送電距離を上記電磁誘導方式に比べて大きくできるという利点がある。
【0007】
送電効率を向上する手法として、送電側共鳴コイル及び受電側共鳴コイルを形成するコイル用導電性線材(コイル導線)の直径(断面径)を拡大して電気抵抗を低減することが挙げられる。しかしながら、単純にコイル用導電性線材の断面径を大きくするのでは重量増加という背反が問題となり、いまだ改善の余地がある。
【0008】
本発明は、上記した問題に鑑みてなされてものであって、その目的は、無線電力伝送において送電効率の向上と装置重量の低減を両立可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、互いの間に発生する磁界共鳴によって電力の伝送を行うコイルを、中空構造の導電性線材によって形成するようにした。
【0010】
より詳細には、本発明は、送電装置から電力を無線で受電する受電装置において、前記送電装置側に設けられて高周波電力が供給される送電側共鳴コイルからの電力を該送電側共鳴コイルとの間で発生する磁界共鳴により受電する受電側共鳴コイルであって、中空構造の導電性線材によって形成される受電側共鳴コイルを備えることを特徴とする受電装置である。
【0011】
また、本発明に係る受電装置は、前記受電側共鳴コイルからの電力を電磁誘導により受電すると共に負荷抵抗と電気的に接続される受電側電磁誘導コイルを更に備え、前記受電側電磁誘導コイルが中実構造の導体によって形成されても良い。
【0012】
また、本発明は、受電装置に電力を無線で送電する送電装置において、前記受電装置側に配置された受電側共鳴コイルとの間で発生する磁界共鳴によって電力を該受電側共鳴コイルに送電する送電側共鳴コイルであって中空構造の導電性線材によって形成される送電側共鳴コイルを備えることを特徴とする送電装置である。
【0013】
また、本発明に係る送電装置は、高周波電源から高周波電力が供給され、該高周波電力を電磁誘導により前記送電側共鳴コイルに送電する送電側電磁誘導コイルを更に備え、前記送電側電磁誘導コイルは中空構造の導電性線材によって形成されても良い。
【0014】
また、本発明は、無線電力伝送システムとして捉えることもできる。即ち、本発明は、送電装置と受電装置とを備える無線電力伝送システムにおいて、前記送電装置は、高周波電源から高周波電力が供給される送電側電磁誘導コイルと、該送電側電磁誘導コイルからの電力を電磁誘導により受電する送電側共鳴コイルと、を有し、前記受電装置は、前記送電側共鳴コイルからの電力を、該送電側共鳴コイルとの間で発生する磁界共鳴により受電する受電側共鳴コイルと、該受電側共鳴コイルからの電力を電磁誘導により受電すると共に負荷抵抗と電気的に接続される受電側電磁誘導コイルを有し、前記受電側共鳴コイル及び前記受電側共鳴コイルの少なくとも一方が、中空構造の導電性線材によって形成されることを特徴とする、無線電力伝送システムである。
【0015】
本発明に係る送電システムでは、例えば送受電時に受電装置と送電装置とが対向配置され、かつ送受電時から受電装置へと無線(非接触)によって電力が伝送(以下、「ワイヤレス送電」ともいう)される。以下に、本発明を無線送電システムの代表例の一つである4コイル構成に適用する場合を説明する。
【0016】
受電装置側では、受電側電磁誘導コイルが、受電側共鳴コイルと電磁誘導により磁気的に結合されている。そして、送電装置側では、送電側電磁誘導コイルが、送電側共鳴コイルと電磁誘導により磁気的に結合されている。そして、高周波電源から送電側電磁誘導コイルに高周波電力が供給されると、送電側共鳴コイルとの間に発生する電磁誘導によって送電側共鳴コイルに電流が流れる。
【0017】
そうすると、共鳴(共振)周波数が互いに合致するように調整された送電側共鳴コイル及び受電側共鳴コイルの間で磁界共鳴が発生することで、受信側共鳴コイルに電流が流れ
るようになる。そして、受信側共鳴コイルと受電側電磁誘導コイルの間で電磁誘導が発生して受電側電磁誘導コイルに電流が流れることで、受電側電磁誘導コイルに接続されている負荷抵抗へと電力が供給される。
【0018】
上記のような4コイル構成を採用する場合、高周波電源と直接接続されるコイル及び負荷抵抗に直接接続されるコイル(送電側電磁誘導コイル、受電側電磁誘導コイルが該当し、これらを総称する場合は「電磁誘導コイル」と記す)と、磁界共鳴による電力伝送に用いられるコイル(送電側共鳴コイル、受電側共鳴コイルが該当し、これらを総称する場合は「磁界共鳴コイル」と記す)とを物理的に接続せず電磁結合によって接続することで、電源や負荷抵抗等の構成が磁界共鳴コイルの共鳴周波数に与える影響等を抑える効果がある。
【0019】
ここで、送電装置からより多くの電力を受電装置へ送電することを考えた場合、磁界共鳴コイル、即ち送電側共鳴コイル及び受電側共鳴コイルにより多くの電流を流すことが要求されるため、ジュール熱の発生を抑制する観点から、磁界共鳴コイルの電気抵抗をできるだけ低くしておくことが望ましい。尚、上記のような4コイル構成の無線送電システムの他、電磁誘導コイルを採用しない以下のような2コイル構成、すなわち、送電側共鳴コイルに直接電力を供給し、また、受電側共鳴コイルから直接電力を取り出す構成の無線送電システムにおいても、4コイル構成と同様の課題がある。
【0020】
これに対して、本発明に係る受電装置によれば、受電側共鳴コイルが中空構造の導電性線材によって形成されるので、受電側共鳴コイルを中実構造とした場合と比べて重量を増加させることなく、コイル断面径のサイズを大きくすることが可能になる。同様に、本発明に係る送電装置によれば、送電側共鳴コイルが中空構造の導電性線材によって形成されるので、送電側共鳴コイルを中実構造とした場合と比べて重量を増加させることなく、コイル断面径のサイズを大きくすることが可能になる。
【0021】
本明細書において「中実構造」とは、コイルを形成する導電性線材の中心部が中空になっていない構造であり、いわゆるソリッド(solid)構造といえる。磁界共鳴コイルには
高周波電流が流れるため、いわゆる「表皮効果」によってコイル表面の電流密度が高くなり、コイル表面から中心側に向かうと電流密度が低くなる。「表皮効果」とは、高周波電流が導体を流れる時、導体の表面近傍で電流密度が高く、表面から離れると電流密度が低くなる現象である。つまり、高周波電流はコイルの表面近傍を密集して電流が流れ、中心部側は殆ど電流が流れないことになる。そこで、本発明においては上記表皮効果を利用するようにした。即ち、磁界共鳴コイルに関して、表皮効果によって電流の流路として殆ど寄与しないコイルの中心側領域を中空とすることで重量軽減を図ることとした。
【0022】
本発明では、磁界共鳴コイルを中空構造とすることで、同外径を有する中実構造のコイルと比して、電流を流すのに有効な有効表面積を実質的に増加させつつ、コイル重量を低減できる。そして、単位重量(単位長さ当たりの重量)を等しい条件とした場合、本構成のように磁界共鳴コイルを中空構造とすることで、中実構造とした場合に比して外径のサイズをより大きくすることができる。その結果、磁界共鳴コイルにおいて電流密度の大きい領域を拡大することができ、ジュール熱の発生によるエネルギー損失を抑えることができる。従って、本発明によれば、送電効率の向上と装置重量の低減を、共に高いレベルで両立することができる。
【0023】
受電装置における受電側共鳴コイル、送電装置における送電側共鳴コイルは、各々のコイルを中実構造とする場合を基準としたときの重量低減効果が見込める範囲を限度として、そのコイルを形成する導電性線材の断面径をできるだけ大きく確保しても良い。
【0024】
本発明に係る受電装置において、前記受電側共鳴コイルを収容する受電用コイルケースの背面側に配置されて、磁束を遮蔽するシールド部材を更に備えることができる。この場合、前記シールド部材は、前記受電用コイルケースの背面に沿って形成される背面部と、前記受電側共鳴コイル全体を側方から取り囲むように前記背面部から前記送電装置と対向する対向面側に向かって立ち上がる周壁部と、を有するようにしても良い。
【0025】
同様に、本発明に係る送電装置において、前記送電側共鳴コイルを収容する送電用コイルケースの背面側に配置されて、磁束を遮蔽するシールド部材を更に備えることができる。この場合、前記シールド部材は、前記送電用コイルケースの背面に沿って形成される背面部と、前記送電側共鳴コイル全体を側方から取り囲むように前記背面部から前記受電装置と対向する対向面側に向かって立ち上がる周壁部と、を有するようにしても良い。
【0026】
即ち、送電装置及び受電装置の各々には、その背面側の部分にシールド部材が設置される。対向配置される送電装置と受電装置とが互いに対峙する方の面を正面と定義する。本明細書において送電装置及び受電装置におけるコイルケースの「背面」とは、上記対峙面と逆側に相対する面を指す。各装置のコイルケースの背面側に「シールド部材が配置される」とは、コイルケース背面の内側に配置されることは勿論、外側に配置しても良いし、コイルケースの一部(主として、背面)とシールド部材を同部材で形成しても良い。この場合、コイルケースの一部がシールド部材を兼ねている。
【0027】
シールド部材の周壁部は、送電装置から受電装置への電力の伝送方向(即ち、送電方向)に概ね平行に延設される。そして、受電装置の受電側コイルケースにおいては受電側共鳴コイル全体をシールド部材の周壁部が側方から取り囲むことで、また、送電装置の送電側コイルケースにおいては送電側共鳴コイル全体をシールド部材の周壁部が側方から取り囲むことで、送電装置から受電装置への電力の伝送に寄与しない電磁波、特に送電方向に直交する方向に向かう電磁波の外部への漏洩を効果的に抑制できる。これにより、送電装置及び受電装置の外部における漏洩電界強度を好適に低減する効果が期待できる。
【0028】
また、各装置におけるシールド部材の周壁部は、該シールド部材の背面部から正面方向へと向かって垂直かつ筒状に延設されても良い。
【0029】
受電装置において、負荷抵抗に接続される受電側電磁誘導コイルは電力を外部に引き抜くためのコイルであり、上記4コイル構成を採用する無線電力伝送システムにおいては最も流れる電流が少ないコイルに相当する。そこで、本発明に係る受電装置においては、受電側電磁誘導コイルが中実構造の導電性線材によって形成されても良い。このように、相対的に流れる電流量の少ないコイルに関しては中空構造とせずに中実構造とすることで、製造コストの削減に寄与することができる。
【0030】
また、受電装置においては、前記受電側共鳴コイルの中空部に冷却媒体を循環させる受電側冷却装置を、更に備えるようにしても良い。同様に、送電装置においては、前記送電側共鳴コイルの中空部に冷却媒体を循環させる送電側冷却装置を、更に備えるようにしても良い。ここでの冷却媒体とは、液体であっても良いし気体であっても良い。このように、磁界共鳴コイルにおける中空部を冷却媒体の循環流路にすることで、磁界共鳴コイルを良好に冷却することができる。
【0031】
なお、上述してきた受電装置、送電装置、無線電力伝送システムにおいて、送電側電磁誘導コイル、送電側共鳴コイル、受電側共鳴コイル、受電側電磁誘導コイルの巻数(ターン数)は特に限定されるものではない。また、本発明は、電力送電用のコイルを形成するコイル用導電性線材であって、コイルの延伸方向に沿って形成される中空孔を有する中空構造として構成されていることを特徴とするコイル用導電性線材として捉えることもでき
る。また、本発明における課題を解決するための手段は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、無線電力伝送において送電効率の向上と装置重量の低減を両立することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】第一実施形態に係る無線電力伝送システムの構成を示す図である。
【図2】地面に埋め込まれた送電装置から送電する様子を示す図である。
【図3】第一実施形態に係る送電用コイルケース及び受電用コイルケースの構成を示す図である。
【図4】第二実施形態に係る送電用コイルケース及び受電用コイルケースの構成を示す図である。
【図5】第三実施形態に係る送電用コイルケース及び受電用コイルケースの構成を示す図である。
【図6】図5に示した4コイル構成においてコイル間距離と送電効率との関係をシミュレーションした結果を示す図である。
【図7】第四実施形態に係る送電用コイルケース及び受電用コイルケースの内部及びその周辺の構成を示す図である。
【図8】壁に埋め込まれた送電装置から送電する様子を示す図である。
【図9】天井に埋め込まれた送電装置から送電する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係る無線電力伝送システムの実施の形態について、図面に基づいて例示的に詳しく説明する。なお、本実施の形態に記載されている構成要素の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に特定的な記載がない限りは、発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。また、本実施形態に係る無線電力伝送システムは、車載バッテリに充電される電力を車両側にワイヤレス(無線)で送電するためのワイヤレス送電システムであり、送電装置は車両が停止する位置の地面側に、受電装置は車両側に設けられる。但し、本発明に係る無線電力伝送システムは車両用途に限定されず、家電、情報機器、玩具等、電力を用いる様々な機器に適用することが可能である。
【0035】
<第一実施形態>
図1は、本実施形態に係る無線電力伝送システム1の構成を示す図である。無線電力伝送システム1は、大きく分けて送電装置10および受電装置20を備える。受電装置20は、例えば電動車両30(以下、単に「車両」ともいう)の車体下部に設けられ、送電装置10は、車両30が停止する位置(例えば、駐車スペース)の地面側に設けられている。
【0036】
送電装置10は、アンテナ11、データ送受信ユニット12、コンバータ13、送電アンプ14、送電コイル15、共振制御ユニット16、送電コントローラ17、および発振回路18を備える。また、受電装置20は、受電コントローラ27、受電コイル25、共振制御ユニット26、整流回路28、DC/DCコンバータ29、アンテナ21およびデータ送受信ユニット22を備える。
【0037】
まず、送電装置10について説明する。送電コイル15は、例えば、駐車スペースの車止めを基準とした所定位置等、車両が停止した場合の位置合わせが容易な位置に、車両底面に設けられた受電コイル25に対向するように設けられている。
【0038】
送電コントローラ17は、発振回路18、共振制御ユニット16、コンバータ13を制御するコンピュータである。データ送受信ユニット12は、アンテナ11に接続された、無線通信のための通信インターフェースである。また、コンバータ13は、外部電源から供給された交流の電力を直流電流へ変換して送電アンプ14へ送る装置である。なお、コンバータ13による出力電圧は、送電コントローラ17によって制御される。また、送電アンプ14は、コンバータ13から送られた電力を、発振回路18から与えられた周波数で、送電コイル15へ入力する装置である。ここで、発振回路18によって与えられる周波数は、送電コントローラ17によって制御される。
【0039】
共振制御ユニット16は、送電コントローラ17による指示に従って、送電コイル15に設けられた可変容量コンデンサC1の容量を制御する等の方法で、送電装置10の共振周波数を、発振回路18の発振周波数と一致するように制御する装置である。また、発振回路18は、送電コントローラ17による指示に従って、送電コイル15へ発振される周波数を目標値となるように制御する。
【0040】
一方、受電装置20における共振制御ユニット26は、前述の共振制御ユニット16と同様に、受電コントローラ27による指示に従って受電装置20の共振周波数を発振回路18の発振周波数と一致するように制御する装置である。その結果、送電装置10の共振周波数と受電装置20の共振周波数とは一致するように制御され、磁界共鳴による無線電力伝送が可能となる。ここで、受電コイル25は、車両底面の、地面に設置された送電装置10と対向する位置に設けられることが好ましい。
【0041】
また、受電装置20は、車載の充放電制御装置31を介して、バッテリ33と接続されている。なお、充放電制御装置31は、マイクロコンピュータ(マイコン)を有しており、アクセル操作に応じてバッテリ33から車両駆動用の電力を放電させ、また、ブレーキが操作された場合には、車輪を駆動し車両を前進あるいは後退させるためのモータ32によって発電された電力がバッテリ33に充電されるように制御する。また、バッテリ33は再充電可能な直流電源であり、例えばリチウムイオンやニッケル水素などの二次電池等で実現でき、また、大容量のキャパシタ等も適宜採用することができる。
【0042】
受電コントローラ27は、共振制御ユニット26、整流回路28およびDC/DCコンバータ29を制御するコンピュータである。データ送受信ユニット22は、アンテナ21に接続された、無線通信のための通信インターフェースである。また、受電コイル25には、送電コイル15との間の磁界共鳴によって電流が流れる。受電コントローラ27は、受電コイル25と送電コイル15との間で磁界共鳴を発生させるために、受電コイル25の共振周波数が送電装置10側と一致するように共振制御ユニット26を制御する。
【0043】
送電コイル15は共に導電性線材である一次コイル15a(送電側電磁誘導コイル)と送電側共鳴コイル15bから構成されている。送電側共鳴コイル15bの両端には可変容量コンデンサC1が接続されている。また、一次コイル15aは送電側共鳴コイル15bの内側に配置されている。また、受電コイル25は、共に導電性線材である二次コイル25a(受電側電磁誘導コイル)と受電側共鳴コイル25bから構成されている。受電側共鳴コイル25bの両端には可変容量コンデンサC2が接続されている。また、二次コイル25aは受電側共鳴コイル25bの内側に配置されている。
【0044】
一次コイル15aは、送電アンプ14から直接電力が与えられるコイルである。送電アンプ14によって一次コイル15aに電流が流されると、一次コイル15aに流れる磁気変動により送電側共鳴コイル15bに電磁誘導が発生し、送電側共鳴コイル15bに高周波電流が流れるようになる。その際、共振制御ユニット16は、送電コントローラ17による指示に従って可変容量コンデンサC1の容量を制御し、送電側共鳴コイル15bの共
振周波数を外部電源からの供給電力に対して発振回路18が付与する発振周波数と一致するように制御する。更に、共振制御ユニット26は、受電コントローラ27による指示に従って可変容量コンデンサC2の容量を制御し、受電側共鳴コイル25bの共振周波数が送電側共鳴コイル15bの共振周波数と一致するように制御する。その結果、送電側共鳴コイル15bと受電側共鳴コイル25bとの間で磁界共鳴が発生して両者間のインピーダンスが小さくなり、受電側共鳴コイル25bに大電流が効率良く流れるようになる。
【0045】
上記のように磁界共鳴によって受電側共鳴コイル25bに電流が流れると、受電側共鳴コイル25bに流れる電流によって生じる磁気変動によって二次コイル25aに電磁誘導が発生し、この二次コイル25aに電流が流れることとなる。二次コイル25aは、受電側共鳴コイル25bにより受電された電力を電磁誘導により取り出して整流回路28へ出力する。ここで、受電コイル25とバッテリ33との間には、整流回路28およびDC/DCコンバータ29が介在している。整流回路28は、二次コイル25aによって取出された交流電力を整流する。DC/DCコンバータ29は、受電コントローラ27からの制御信号に基づいて、整流回路28によって整流された電力をバッテリ33の電圧レベルに変換してバッテリ33へ出力する。また、受電コントローラ27は、例えば車載バッテリ33側によって取り出される電力を一定に保つように整流回路28およびDC/DCコンバータ29を制御することができる。
【0046】
上記のように構成される本実施形態に係る無線電力伝送システム1において、送電コイル15は、例えば、駐車スペースの車止めを基準とした所定位置等、車両30が停止した場合の位置合わせが容易な位置に、車両底面に設けられた受電コイル25に対向するように設けられている。送電コイル15と受電コイル25とがこのような所定の対向位置関係になると、例えば車室内に設けられた通信開始ボタン(図示省略)がユーザによって押されることをトリガーとして、送電コントローラ17と受電コントローラ27が各送受信ユニット12,22を介して互いに通信を開始する。そして、上記した如く送電装置10及び受電装置20との間に発生する磁界共鳴を利用して無線で送電装置10から受電装置20へと電力を伝送し、受電装置20が受電した電力とバッテリ33等に供給することができる。
【0047】
また、本実施形態では、送電アンプ14から電力が直接流されるコイルおよび受電側の負荷抵抗に直接接続されたコイル(ここでは、一次コイル15a及び二次コイル25a)と、磁界共鳴による電力伝送に用いられるコイル(ここでは、送電側共鳴コイル15b及び受電側共鳴コイル25b)と、を物理的に接続せず、電磁結合によって接続している。そうすることで、送電アンプ14や負荷抵抗等の構成によって磁界共鳴に用いるコイル(送電回路・受電回路)の共振周波数等に及ぼす影響が抑制されている。
【0048】
次に、送電コイル15及び受電コイル25の詳細構成について説明する。図2、図3に示されるように、送電装置10側においては送電コイル15、即ち一次コイル15a及び送電側共鳴コイル15bが送電用コイルケース150に収容されている。一方、受信装置20側においては受電コイル25、即ち二次コイル25a及び受電側共鳴コイル25bが受電用コイルケース250に収容されている。
【0049】
送信装置10から受信装置20への磁界共鳴を用いたワイヤレス送電が行われる際、送電用コイルケース150及び受電用コイルケース250は、図2及び3に示されるように対向配置された状態となる。図示の例では、送電用コイルケース150及び受電用コイルケース250は直方体に形成されているが、これに限定されるものではなく他の形状を適宜採用しても構わない。また、各コイルケース150,250の材質としては例えば樹脂を採用することができる。
【0050】
送電用コイルケース150は、天板151、底板152、周壁153から構成されている。同様に、受信用コイルケース250は、天板251、底板252、周壁253から構成されている。ここで、天板151,251は、ワイヤレス送電時において互いに対向(対峙)する面であり、この面を「正面」として定義する。底板152,252は、それぞれ天板151、251と相対する面であり、この面を「背面」として定義する。
【0051】
送電用コイルケース150において、底板152の内側には、この底板152に沿うようにしてシールド部材(以下、「第一シールド部材」という)153が設置されている。第一シールド部材153は、非磁性かつ導電性を有しており、例えばアルミニウム金属によって構成されている。第一シールド部材153の内側、即ち第一シールド部材153の底板152側には、磁性体コア部材154が配置されている。
【0052】
次に、受電用コイルケース250においても、導電用コイルケース150と同様なシールド部材(以下、「第二シールド部材」という)253、磁性体コア部材254が設けられている。即ち、受電用コイルケース250の底板252の内側にはこれに沿うように第二シールド部材253が設置されており、さらに第二シールド部材253の底板252側には、磁性体コア部材254が配置されている。第二シールド部材253は第一シールド部材153と同等の部材である。即ち、第二シールド部材253は、非磁性かつ導電性を有しており、例えばアルミニウム金属によって構成されている。
【0053】
各磁性体コア部材154,254は、例えばフェライトに代表されるような透磁率が大の強磁性体よりなり、磁束の高密度化機能やガイド機能を発揮する部材である。また、各シールド部材153,253は、導電体であってかつ非磁性体からなる部材であり、例えばアルミニウム等の金属材料によって構成されている。各シールド部材153,253は、外部に漏洩しようとする電磁波、即ちワイヤレス送電に寄与しなかった電磁波を、渦電流を発生させることで熱エネルギーに変換することで、不要な電磁波の外部への漏洩を抑制する。
【0054】
送電用コイルケース150には、一次コイル15a及び送電側共鳴コイル15bが同一面で扁平に渦巻き状に巻回された状態で収容されている。一次コイル15a及び送電側共鳴コイル15bは、仮想中心軸(以下、「コイル中心軸」という)AXLを中心に、その周りを周回するように配置されており、一次コイル15aが内側に、送電側共鳴コイル15bが外側に配置されている。一次コイル15aは、その周回数が1ターン(1巻)に設定されており、その周回径が209mmとされている。送電側共鳴コイル15bは、その周回数を5ターン(5巻)に設定されており、コイル中心軸AXLに対して最も外側を周回している部分の周回径(以下、「外端周回径」という)が300mmとされている。また、一次コイル15aは、送電用コイルケース150における底板152に設けられたコネクタ156に接続されている。コネクタ156は、配線ケーブルを介して送電アンプ14と接続されている。言い換えると、コネクタ156を介して一次コイル15aと送電アンプ14が接続されている。なお、コネクタ156を用いず、直接引き出したコイル導線を送電アンプ14と接続しても良い。
【0055】
同様に、受電用コイルケース250には、二次コイル25a及び受電側共鳴コイル25bが同一面で扁平に渦巻き状に巻回された状態で収容されている。二次コイル25a及び受電側共鳴コイル25bはコイル中心軸AXL’を中心に同軸上に配置されており、二次コイル25aが内側に、受電側共鳴コイル25bが外側に配置されている。二次コイル25aは、周回数が1ターン(1巻)に設定され、外端周回径が209mmとされている。また、受電側共鳴コイル25bは、周回数が5ターン(5巻)に設定され、外端周回径が300mmとされている。二次コイル25aは、受電用コイルケース250における底板252に設けられたコネクタ256に接続されている。コネクタ256は、配線ケーブル
を介して整流回路28と接続されている。言い換えると、コネクタ256を介して二次コイル25aと整流回路28が接続されている。なお、コネクタ256を用いず、直接引き出したコイル導線を整流回路28と接続しても良い。
【0056】
送電用コイルケース150内の第一シールド部材153、磁性体コア部材154、及び受電用コイルケース250内の第二シールド部材253、磁性体コア部材254はそれぞれ円板状に形成されている。例えば磁性体コア部材154,254は外径が400mm、厚さが5mmに設定されており、シールド部材153,254は外径が600mm、厚さが2mmに設定されている。但し、これらの形状、寸法は適宜変更することができる。
【0057】
本実施形態に係る無線電力伝送システム1では、送電装置15から受電装置へのワイヤレス送電時において、送電用コイルケース150側の送電コイル15(一次コイル15a、送電側共鳴コイル15b)におけるコイル中心軸AXLと、受電用コイルケース250側の受電コイル25(二次コイル25a、受電側共鳴コイル25b)におけるコイル中心軸AXL’が一致するように調整しても良い。例えば、受電用コイルケース250は、車体に対するその相対位置を変更可能な駆動機構(図示省略)を介して車体に据え付けられており、当該駆動機構のアクチュエータを作動させることで受電用コイルケース250の位置を調整可能に構成されていても良い。そして、受電用コイルケース250は、上記駆動機構に前後方向、左右方向、上下方向へ移動可能なように構成され、地面側に設置された送電用コイルケース150に対して相対的に移動可能なように構成されていると良い。
【0058】
ここで、本実施形態における送電コイル15(一次コイル15a、送電側共鳴コイル15b)及び受電コイル25(二次コイル25a、受電側共鳴コイル25b)は全て中空構造の導電性線材(導電性パイプ)によって形成されている。これら4コイルは、例えば銅製パイプである。また、各コイルを形成するコイル導線の外表面は絶縁加工(絶縁皮膜)されており、コイル導線の外表面同士が接触したとしても導電経路の乱れ、ショート等の不具合が防止されるような構造となっている。また、送電コイル15及び受電コイル25の各コイルケース内への支持固定は、例えば樹脂等の絶縁性材料を用いて形成される支持固定部材(図示省略)等によって行われる。本実施形態では、各コイルを中空構造とすることで、これらを中実構造とした場合と比べて重量を増加させることなく、コイル導線の断面径を大きくすることが可能になる。
【0059】
本システム1では各コイルに高周波の電流を流すため、「表皮効果」によってコイル表面の電流密度が高くなり、コイル中心側の電流密度が低くなる。従って、高周波電流が流れる各コイルを中空構造とすることにより、表皮効果に基づいてより電流が流れ易いコイル表層領域の断面を増加させることができる。即ち、本構成によれば電流密度の大きな領域を増やすことができるので、ジュール熱の発生によるエネルギー損失を低減することができる。さらには、表皮効果によって電流の流路として殆ど寄与しない各コイルの中心側領域を中空とすることで、コイル重量を軽減することができる。従って、送電効率の向上と装置重量の低減を、共に高いレベルで両立することができる。
【0060】
上記実施形態は本発明を説明するための一例であって、本発明の本旨を逸脱しない範囲内において上記の実施形態には種々の変更を加え得る。例えば、送電コイル15(一次コイル15a、送電側共鳴コイル15b)、受電コイル25(二次コイル25a、受電側共鳴コイル25b)の各々の周回数、周回径などは適宜変更することができる。また、本実施形態における送電側共鳴コイル15b、受電側共鳴コイル25bは、同一面で扁平に渦巻き状に巻回されていたが、例えば複数層にわたり立体的に巻回されても良い。なお、本実施形態では、代表的な例として、送電側2コイル、受電側2コイルの4コイル構成を説明したが、本発明は、送電コイル15と受電コイル25との間での磁界共鳴による無線電力伝送を用いたシステムに適用可能なものであり、コイル数は上記4コイル構成に限定さ
れない。例えば、送電側1コイル(送電側共鳴コイル15b)、受電側1コイル(受電側共鳴コイル25b)の2コイル構成が採用されても良い。
【0061】
<第二実施形態>
図4は、第二実施形態に係る送電用コイルケース及び受電用コイルケースの構成を示す図である。既に説明した構成については、同一符号を付すことでその詳細な説明を省略する。なお、本図において図3に示したコネクタ156,256が便宜上省略されているが、図3の構成と同様に一次コイル15a及び二次コイル25aのそれぞれには、コネクタ156,256が接続されているものとする。
【0062】
図示のように、一次コイル15a、送電側共鳴コイル15b、及び受電側共鳴コイル25bはそれぞれ、積層数が2層、周回総数が8ターン(1層につき4ターンずつ、計8ターン)として多層状に巻回されている。また、二次コイル25aは積層数が4層、周回総数が8ターンとして立体的に巻回されている。一次コイル15a、送電側共鳴コイル15b、及び受電側共鳴コイル25bは、図3に示すものと同様に、中空構造の導電性パイプにより形成されている。
【0063】
ここで、4種類のコイルに流れる電流量の大小を比較すると、磁界共鳴に用いられる送電側共鳴コイル15b及び受電側共鳴コイル25bが相対的に電流量が多く、これらに次いで一次コイル15aの電流量が多く、二次コイル25aを流れる電流量はこれらの中で最も少ない。そこで、本実施形態では、図示のように、流れる電流量の少ない二次コイル25aを形成するコイル導線に関しては中実構造の導体を使用するようにした。また、図示の通り、中実構造とした二次コイル25aは、中空構造としている他の3コイルに比べてコイル断面径を小さくなるように形成されている。ここでは、二次コイル25aは、積層数が4層、周回総数が8ターン(1層につき2ターンずつ、計8ターン)として多層状に巻回されている。
【0064】
このように、コイルに流す電流量の違いに基づき中空構造にするのか中実構造にするのかを決定し、電流量が少ないコイルに関しては中実構造を採用することで製造コストの削減が実現される。なお、例えば二次コイル25aに加えて、流す電流量に応じて一次コイル15aに関しても中実構造としても良い。少なくとも送電側共鳴コイル15b及び受電側共鳴コイル25bに関しては中空構造を採用することで、送電効率の向上と装置重量の低減を実現することができる。
【0065】
<第三実施形態>
図5に示されるように、本実施形態では、送電用コイルケース150及び送電用コイルケース250に設けられる第一シールド部材153A,第二シールド部材253Aの形状が第一実施形態と相違する。既に説明した構成については、同一符号を付すことでその詳細な説明を省略する。また、第一シールド部材153A,第二シールド部材253Aの材質は、第一実施形態における各シールド部材153,253と同等である。更に、図4と同様、本図においても図3に示したコネクタ156,256を省略しているが、実際には一次コイル15a及び二次コイル25aのそれぞれには、コネクタ156,256が接続されているものとする。
【0066】
送電用コイルケース150について説明すると、第一シールド部材153Aは、送電用コイルケース150の底板152(即ち、背面)に沿って形成される背面部1531と、この背面部1531から天板151に向かって垂直に立ち上がる筒状の周壁部1532とにより構成されている。
【0067】
また、送信用コイルケース150における送電側共鳴コイル15b’は、第一実施形態
における送電側共鳴コイル15bと比べて周回パターンが積層パターンになっている点で相違する。送電側共鳴コイル15b’は、送電側共鳴コイル15bと同様に一次コイル15aと同軸上に配置されており、中空構造の導電性パイプによって形成されている。そして、送電側共鳴コイル15b’における送電側共鳴コイル15bとの相違点は、送電側共鳴コイル15b’が2層の渦巻き状に巻回されていると共に、第1層と第2層の部分が千鳥状に配置されている点にある。
【0068】
一方、受電用コイルケース250においても、第二シールド部材253Aは、受電用コイルケース250の底板252(即ち、背面)に沿って形成される背面部2531と、この背面部2531から天板251に向かって垂直に立ち上がる筒状の周壁部2532とにより構成されている。そして、受電用コイルケース250における受電側共鳴コイル25b’は、一次コイル15aと同軸上に配置されてかつ中空構造の導電性パイプによって形成されている点で前述の受電側共鳴コイル25bと共通し、受電側共鳴コイル25b’が2層の渦巻き状に巻回されていると共に、第1層と第2層の部分が千鳥状に配置されている点が受電側共鳴コイル25bと相違している。
【0069】
このように、磁界共鳴の原理を利用して送受電する送電側共鳴コイル15b’、受電側共鳴コイル25b’を渦巻き状に千鳥配置することにより、図3に示したような同一面で扁平状に巻くパターンや、図4に示すように単純に複層状に巻くパターンに比べて、各ターンにおけるコイル導線同士の距離を広げることができる。これにより、いわゆる「近接効果」による電気抵抗の増加を抑制することができる。なお、「近接効果」とは、導体が近接配置される場合、電流の大きさ、向き、周波数等により各導体に流れる電流の密度分布が変化する現象である。そして、このように電流密度の分布に偏りが生じると、電流密度の大きい部分で交流抵抗が増加し、発熱等によるエネルギー損失が増加する。これに対して、本実施形態に係る送電側共鳴コイル15b’、受電側共鳴コイル25b’の配置パターンによれば上記近接効果の影響が及び難くなるため、送電効率をより高めることに適している。
【0070】
更に、第一シールド部材153Aにおける周壁部1532は、送電側共鳴コイル15b’全体を側方から覆うように取り囲んでいる。送電側共鳴コイル15b´のうち、これに対峙する受電側共鳴コイル25b’に対して最も近接する部位の、背面部1531の内面を基準とした位置(高さ)を「送電側コイル高さ」と称する。第一シールド部材153Aは、その周壁部1532の上端が少なくとも送電側コイル高さまで到達するように、周壁部1532における背面部1531からの立ち上がり高さが規定されている。これにより、コイル中心軸AXLに直交する方向、すなわち本実施形態では水平方向に関して、送電側共鳴コイル15b’は周壁部1532によって完全に覆われる。
【0071】
同様に、第二シールド部材253Aにおける周壁部2532は、受電側共鳴コイル25b’全体を側方から覆うように取り囲んでいる。ここで、受電側共鳴コイル25b’において最も送電用コイルケース150に近接する部分の、背面部2531の内面を基準としたときの高さを「受電側コイル高さ」と称する。第二シールド部材253Aにおける周壁部2532の上端は、少なくとも受電側コイル高さに到達するように、背面部2531からの立ち上がり高さが規定されている。これにより、受電側共鳴コイル25b’は、コイル中心軸AXL’に直交する方向に関して、周壁部2532によって完全に覆われるようになる。
【0072】
以上のように、周壁部1532,2532を背面部1531,2531からそれぞれ立ち上げて形成することにより、送電方向に対する直交方向、即ちコイル中心軸AXL,AXL’に直交する方向に向かう電磁波を、周壁部1532,2532に衝突させることができる。そして、周壁部1532,2532に衝突した電磁波は、渦電流の発生を経て熱
エネルギーに変換されることで、ワイヤレス送電に寄与しない電磁波が外部に漏洩することが抑制される。そして、高周波電界の強度は電波法により規制されているところ、本実施形態における各シールド部材153A,253Aによれば漏洩電界強度を好適に低減できる。つまり、無線電力伝送システム1によれば電波法の規制を確実に遵守することの可能な送電システムを提供することが可能となる。
【0073】
図6は、図5に示した4コイル構成において、対峙する送電側共鳴コイル15bと受電側共鳴コイル25bとの間の距離であるコイル間距離と、送電効率との関係をシミュレーションした結果を示す図である。なお、シミュレーションの実施条件として、一次コイル15aには、周波数2MHz、かつ1.5kWの高周波電力を供給する条件とした。また、一次コイル15a及び二次コイル25aのコイル外径を209mm、送電側共鳴コイル15b及び受電側共鳴コイル25bの最外周径を300mm、磁性体コア部材154,254の外径を400mm、シールド部材153,253の外径を600mm、各コイルのパイプ外径を9.2mmに設定した。図6に示した例では、コイル間距離が150〜250mmの範囲で、送電効率90%以上を達成していることがわかる。
【0074】
<第四実施形態>
図7は、第四実施形態に係る送電用コイルケース及び受電用コイルケースの内部及びその周辺の構成を示す図である。既に説明した構成については、同一符号を付すことでその詳細な説明を省略する。
【0075】
図7に示されるように、本実施形態における送電装置10は、送電側共鳴コイル15bの中空部15cに冷却媒体としての冷却液を循環させる送電側冷却装置155を備える。また、受電装置20は、受電側共鳴コイル25bの中空部25cに冷却媒体としての冷却液を循環させる受電側冷却装置255を備える。送電側共鳴コイル15b及び受電側共鳴コイル25bは、図3(第一実施形態)で説明したものと同様であり、中空構造の導電性パイプによって形成されている。なお、本図においても図3に示したコネクタ156,256を省略しているが、実際には一次コイル15a及び二次コイル25aのそれぞれには、コネクタ156,256が接続されているものとする。
【0076】
図7において、送電側冷却装置155は、送電側共鳴コイル15bの中空部15cと連結して冷却液の循環経路を形成する第一流路1551、この第一流路1551内に設けられた冷却液を冷却するための第一ラジエーター1552、及び冷却液を圧送する第一ポンプ1553を含む。送電側冷却装置155における冷却液の循環経路は、送電側共鳴コイル15bの中空部15cと第一流路1551から構成される。図中、送電側共鳴コイル15bの各ターンに付した角括弧付きの符号は、送電側冷却装置155における循環経路を冷却液が循環する際の順番を例示したものである。第一ポンプ1553の稼働時においては、[1]→[2]→・・・→[9]→[10]→[1]→・・・のように、順次、循環経路を冷却液が循環する。
【0077】
受電側冷却装置255は、受電側共鳴コイル25bの中空部25cと連結して冷却液の循環経路を形成する第二流路2551、この第二流路2551内に設けられた冷却液を冷却するための第二ラジエーター2552、及び冷却液を圧送する第二ポンプ2553を含む。受電側冷却装置255における冷却液の循環経路は、受電側共鳴コイル25bの中空部25cと第二流路2551から構成される。図中、受電側共鳴コイル25bの各ターンに付した角括弧内付きの符号は、受電側冷却装置255における循環経路を冷却液が循環する際の順番を例示したものである。第二ポンプ2553の稼働時においては、[1]→[2]→・・・→[9]→[10]→[1]→・・・のように、順次、循環経路を冷却液が循環する。
【0078】
本実施形態における無線電力伝送システム1では、冷却液を中空部15c,25cに循環させることで、送電側共鳴コイル15b及び受電側共鳴コイル25bが冷却され、これらの電気抵抗を低減することができる。なお、冷却媒体としては液体に限らず、気体を用いても良く、種々の流体を採用することができる。また、冷却媒体として水銀等の導電流体を用いることで、冷却媒体を電流の流路として利用するようにしても良い。
【0079】
また、上記各実施形態では、地面に送電コイルが埋められて車両側に送電する場合を例に説明したが、本発明は、例えば、図8に示すように壁に埋め込まれた送電装置で横方向へ送電したり、図9に示すように天井に埋め込まれた送電装置で下方向へ送電したりすることも可能である。この場合においても、車両を最適な位置に配置することを上記各実施形態と同様の構成で実現可能である。
【0080】
以上述べた実施の形態は本発明を説明するための一例であって、本発明の本旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得る。また、本発明に係る無線受電装置、無線送電装置、無線電力伝送システムは、上記実施形態に限定されるものではなく可能な限りこれらの組合せを含むことができる。
【符号の説明】
【0081】
1・・・無線電力伝送システム
10・・送電装置
15・・送電コイル
15a・一次コイル
15b・送電側共鳴コイル
20・・受電装置
25a・二次コイル
25b・受電側共鳴コイル
30・・電動車両
150・送電用コイルケース
250・受電用コイルケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電装置から電力を無線で受電する受電装置において、
前記送電装置側に設けられて高周波電力が供給される送電側共鳴コイルからの電力を該送電側共鳴コイルとの間で発生する磁界共鳴により受電する受電側共鳴コイルであって、中空構造の導電性線材によって形成される受電側共鳴コイルを備えることを特徴とする受電装置。
【請求項2】
前記受電側共鳴コイルを収容する受電用コイルケースの背面側に配置されて、磁束を遮蔽するシールド部材を更に備え、
前記シールド部材は、
前記受電用コイルケースの背面に沿って形成される背面部と、
前記受電側共鳴コイル全体を側方から取り囲むように前記背面部から前記送電装置と対向する正面側に向かって立ち上がる周壁部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の受電装置。
【請求項3】
前記受電側共鳴コイルからの電力を電磁誘導により受電すると共に負荷抵抗と電気的に接続される受電側電磁誘導コイルを更に備え、
前記受電側電磁誘導コイルが中実構造の導電性線材によって形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の受電装置。
【請求項4】
前記受電側共鳴コイルの中空部に冷却媒体を循環させる受電側冷却装置を、更に備えることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の受電装置。
【請求項5】
受電装置に電力を無線で送電する送電装置において、
前記受電装置側に配置された受電側共鳴コイルとの間で発生する磁界共鳴によって電力を該受電側共鳴コイルに送電する送電側共鳴コイルであって、中空構造の導電性線材によって形成される送電側共鳴コイルを備えることを特徴とする送電装置。
【請求項6】
前記送電側共鳴コイルを収容する送電用コイルケースの背面側に配置されて、磁束を遮蔽するシールド部材を更に備え、
前記シールド部材は、
前記送電用コイルケースの背面に沿って形成される背面部と、
前記送電側共鳴コイル全体を側方から取り囲むように前記背面部から前記受電装置と対向する正面側に向かって立ち上がる周壁部と、を有することを特徴とする請求項5に記載の送電装置。
【請求項7】
高周波電源から高周波電力が供給され、該高周波電力を電磁誘導により前記送電側共鳴コイルに送電する送電側電磁誘導コイルを更に備え、
前記送電側電磁誘導コイルは中空構造の導電性線材によって形成されることを特徴とする請求項5又は6に記載の送電装置。
【請求項8】
前記送電側共鳴コイルの中空部に冷却媒体を循環させる送電側冷却装置を、更に備えることを特徴とする請求項5から請求項7の何れか一項に記載の送電装置。
【請求項9】
送電装置と受電装置とを備える無線電力伝送システムにおいて、
前記送電装置は、高周波電源から高周波電力が供給される送電側電磁誘導コイルと、該送電側電磁誘導コイルからの電力を電磁誘導により受電する送電側共鳴コイルと、を有し、
前記受電装置は、前記送電側共鳴コイルからの電力を、該送電側共鳴コイルとの間で発
生する磁界共鳴により受電する受電側共鳴コイルと、該受電側共鳴コイルからの電力を電磁誘導により受電すると共に負荷抵抗と電気的に接続される受電側電磁誘導コイルを有し、
前記受電側共鳴コイル及び前記受電側共鳴コイルの少なくとも一方が、中空構造の導電性線材によって形成されることを特徴とする無線電力伝送システム。
【請求項10】
電力送電用のコイルを形成するコイル用導電性線材であって、コイルの延伸方向に沿って形成される中空孔を有する中空構造として構成されていることを特徴とするコイル用導電性線材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−119615(P2012−119615A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270338(P2010−270338)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】