説明

口唇化粧料

【課題】フェニルシリコーンを均一に混和させた口唇化粧料に関するものであり、更に詳しくは、油感やべとつきを感じることなく、滑らかな伸び広がりに優れ、唇に高い艶感を付与し、化粧効果が持続し、更には高温での経時安定性に優れる口唇化粧料を提供する。
【解決手段】 次の成分(a)〜(d);(a)ポリイソブチレン、(b)フェニルシリコーン10〜60質量%、(c)トリメリト酸エステル、(d)油ゲル化剤を配合することにより、フェニルシリコーンを均一に混和させた口唇化粧料に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェニルシリコーンを均一に混和させた口唇化粧料に関するものであり、更に詳しくは、油感やべとつきを感じることなく、滑らかな伸び広がりに優れ、唇に高い艶感を付与し、化粧効果が持続し、更には、高温での経時安定性に優れる口唇化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、口唇化粧料は、油性成分に顔料成分やパール成分を均一に混和させたものをワックスや油ゲル化剤でゲル化させたものが一般的に用いられてきた。更に携帯性や使用性を向上させるために、ワックスや油ゲル化剤の種類や配合量を調整し、スティック状、ペースト状にしたもののほか、皿状の容器に流し込み成型したもの等が広く用いられてきた。一方、艶感を付与させる目的で、重質流動パラフィンやポリイソブチレン、フェニルシリコーン化合物、トリメリト酸エステル等の高屈折率の油を配合したものが知られている。(例えば特許文献1、2参照。)最近の口唇化粧料は艶を重視する傾向にあるため、高屈折率の油を、多量に配合したり、併用したりしてより艶を高めることが考えられてきた。
【0003】
【特許文献1】特開平11−222413号公報
【特許文献2】特開平11−71237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、屈折率が1.5を超える重質流動イソパラフィンやポリイソブチレンを多量に配合して艶を向上させたものは、化粧持ちには優れているものの、伸びが重く、仕上がりのべたつき感が強かった。これを緩和するために、フェニルシリコーン化合物を配合させたものもあるが、重質流動イソパラフィンやポリイソブチレンとの相溶性が悪いことから、艶の低下を招き、濁りや分離等の品質安定性上の問題を生じるものがあった。前述のように、高分子量の炭化水素油は化粧持ちは良いが、べたつきが生じてしまい、反対にフェニル基含有の油で特にフェニルシリコーン化合物はさらさらした感触であるが、化粧持ちが悪くなる性質があるため、組み合わせることにより、これらの優れた性質を利用する研究がなされたが、期待される品質が得られないばかりか、優れた性質をも損なう場合があった。また、油ゲル化剤の添加により、経時安定性は向上するが、高温においては十分な効果が得られない場合があった。そこで、油感やべたつきを感じることなく化粧効果が持続し、高い艶感を有し、更には、高温での経時安定性に優れる口唇化粧料の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる実情において、本発明者は、上記問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、口唇化粧料において、ポリイソブチレンとフェニルシリコーンに、トリメリト酸エステルと油ゲル化剤を組み合わせることにより、使用中の滑らかな伸び広がりを得ることができ、かつ強い油感やべとつきを感じることなく化粧効果が持続性し、高い艶感をもった仕上がりが得られ、更には高温での経時安定性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0006】
本発明の口唇化粧料は、油感やべとつきを感じることなく、従来にない非常に滑らかな伸び広がりで唇に高い艶感を付与し、化粧効果が持続し、更には、高温での経時安定性に優れる口唇化粧料である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。 以下、本発明について詳述する。
本発明に用いられる成分(a)のポリイソブチレンは、主としてポリイソブチレンの重合体であって、屈折率1.45以上のものが好ましく、本発明の口唇化粧料において唇の艶感を付与する目的で配合されるものであるが、化粧持ちを向上させる効果もある。従来からポリイソブチレンは、安定性を向上させる目的で水素添加したものも広く用いられているが、水素添加の有無に関わらず、本発明の効果を発揮することができる。また、平均分子量の違いにより、唇に付与できる艶感や化粧効果の持続性も異なるが、屈折率1.45以上のポリイソブチレンであれば、艶感や化粧効果の持続性を調整することが可能となる。但し、本発明において、成分(a)のポリイソブチレンは、成分(b)のフェニルシリコーンと(c)のトリメリト酸エステルと質量比で1:2:2で混合したとき、濁りがなく、透明になるものが好ましい。市販品としては、日本ナチュラルプロダクツ社製の「精製ポリブテンHV−100(SB)」や出光興産社製の「ポリブテン35R」、「ポリブテン100R」、「ポリブテン300R」、「ポリブテン2000H」等が挙げられる。これらは、すべて水素添加の有無や平均分子量に違いがある。この中でも特に平均分子量が1000以上3000未満のポリイソブチレンは、唇に艶感を付与する効果が高く、化粧効果の持続性を向上させる効果も高い。
【0008】
成分(a)のポリイソブチレンは、必要に応じて一種又は二種以上を用いることができ、配合量は、全成分中3〜25質量%(以下、単に「%」で示す)が好ましく、5〜20%がより好ましい。5〜20%用いた場合、唇の艶感と、化粧効果の持続性が飛躍的に向上する。
【0009】
本発明に用いられる成分(b)のフェニルシリコーンは、ジメチルポリシロキサンのメチル基が一部、フェニル基に置換されたものをいう。分子量やフェニル基の数に特に限定されないが、屈折率が1.45を越えるものであることが好ましく、例えばINCI名(International Nomenclature Cosmetic Ingredient labeling names)でフェニルメチコン、フェニルジメチコン、フェニルトリメチコン、ジフェニルジメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、トリフェニルトリメチコン、トリメチルペンタフェニルトリシロキサン等が挙げられる。市販品としては、信越化学工業社製の「KF−53」、「KF−54」、「KF−56」のほか、東レ・ダウコーニング社製の「PH−1555」が挙げられる。これらの中でも、特に屈折率が1.5を越えるジフェニルジメチコンである「KF−54」やトリメチルペンタフェニルトリシロキサンである「PH−1555」がより好ましい。これらを配合することにより、使用中の滑らかな伸び広がりが得られ、塗布後のべたつきを感じることなく、唇に高い艶感を付与することができる。
【0010】
成分(b)のフェニルシリコーンは、必要に応じて一種又は二種以上を用いることができ、配合量は、全成分中10〜60%が好ましく、15〜40%がより好ましい。配合量が10%〜60%で用いた場合、成分(a)のポリイソブチレンに起因する使用中の伸びの重さや、唇のべたつきを感じることなく、持続性に優れた艶感を付与することができる。
【0011】
本発明で用いられる成分(c)のトリメリト酸エステルは、トリメリト酸と高級アルコールとのトリエステルをいい、トリメリト酸と炭素数6〜15の飽和の直鎖状或いは分岐鎖を有するアルコールを脱水縮合させたものをさす。性状は、液状もしくは半固形状が好ましく、屈折率は1.45〜1.5のものが好ましい。本発明の口唇化粧料において成分(c)のトリメリト酸エステルを配合することにより、相溶性の悪い成分(b)のフェニルシコーンと成分(a)のポリイソブチレンを含む油性成分を透明均一に混和させ、艶を飛躍的に向上させることができる。更に、経時による分離や排液等の品質安定性上の問題も解消することが可能となる。成分(c)のトリメリト酸と脱水縮合させるアルコールは、炭素数6〜15が好ましいが、うち炭素数8〜12のものが、特に品質安定性を向上させる点に優れより好ましい。具体的にはトリメリト酸トリへキシル、トリメリト酸トリへプチル、トリメリト酸トリオクチル、トリメリト酸トリノニル、トリメリト酸トリデシル、トリメリト酸トリウンデシル、トリメリト酸トリドデシル、トリメリト酸トリトリデシル、トリメリト酸トリテトラデシル、トリメリト酸トリペンタデシル、等が挙げられる。この中でも特に、トリメリト酸トリオクチル、トリメリト酸トリトリデシルが艶の向上、高温での経時安定性上の点から好ましい。市販品としては、リポケミカルズ社製の「LIPONATE TDTM」(屈折率1.48)やクローダ社製の「クロダモルTOTM」(屈折率1.48)等が挙げられる。
【0012】
成分(c)のトリメリト酸エステルは、必要に応じて一種又は二種以上を用いることができ、配合量は、成分(c)の配合量は全成分中3〜30%が好ましく、3〜20%がより好ましい。この範囲であれば、艶が飛躍的に向上する。また、本発明の口唇化粧料を透明な均一層にし、高温での経時安定性を向上させるためには、成分(a)のポリイソブチレンの配合量に応じて調整することが好ましい。すなわち、成分(c)/成分(a)を質量割合で0.7以上にすることにより飛躍的に艶が向上する。更に、(a)〜(c)の配合量の合計が全成分中30%以上であると、優れた艶感が得られるため好ましい。
【0013】
本発明の口唇化粧料における成分(d)の油ゲル化剤は、従来の使用目的である口唇化粧料に適度な粘性や形状保持性を与えることにより使用性を向上させ、顔料やパール剤等の不溶性成分の沈降を防止する効果以外にも、成分(a)のポリイソブチレンの化粧効果の持続性を向上させる働きがある。成分(d)の油ゲル化剤としては化粧料で使用可能な油ゲル化剤であれば特に限定されず、例えば12−ヒドロキシステアリン酸、イソステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、デキストリン脂肪酸エステル、イヌリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、無水ケイ酸等が挙げられ、無水ケイ酸は煙霧状無水ケイ酸が好ましく、例えば、市販品としては、日本アエロジル社製の「AEROSIL 200」、「AEROSIL 300」、「AEROSIL 380S」、表面処理を施したものでは、「AEROSIL R−972」、「AEROSIL R−974」、「AEROSIL R−976S」等が挙げられる。これら油ゲル化剤の中でもオリゴ糖や多糖と脂肪酸とのエステルが好ましく、更にデキストリンと脂肪酸のエステルが、塗布後の唇の艶感を損なうことなく、使用性や品質安定性を向上させることができるため好ましい。例えば、デキストリンと炭素数8〜22の高級脂肪酸とのエステルが用いられ、具体的には、オクタン酸デキストリン、ラウリン酸デキストリン、パルミチン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、ステアリン酸デキストリン、ベヘニン酸デキストリン、ヤシ油脂肪酸デキストリン、(パルミチン酸/オクタン酸)デキストリン等が挙げられる。このうちパルミチン酸デキストリンが経時安定性や、使用性面から最も好ましい。これらのデキストリン脂肪酸エステルの市販品としては、例えば、千葉製粉社製の「レオパールKL」「レオパールKE」「レオパールTT」「レオパールTL」等が挙げられる。
【0014】
成分(d)の油ゲル化剤は、必要に応じて一種又は二種以上を用いることができ、配合量は、配合量は、全成分中1〜15%が好ましく、3〜10%がより好ましい。この範囲で配合した場合、唇の艶を損なうことなく化粧効果の持続性が飛躍的に向上する。
【0015】
本発明の口唇化粧料には、上記必須成分の他に、通常化粧料に配合される成分として、成分(a)以外の炭化水素油、成分(b)以外のエステル油、植物油、抱水性油剤、成分(b)以外のシリコーン油、シリコーン誘導体等の油性成分、無機顔料、有機顔料及び体質顔料等の粉体およびそれらのシリコーン処理物やフッ素化合物処理物、界面活性剤、水や多価アルコール、低級アルコール、水溶性高分子、保湿剤等の水性成分、糖類、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、リパーゼやプロテアーゼ等の酵素類、レゾルシンやイオウ等の各種薬剤、清涼剤、色素、香料等を本発明の効果を妨げない範囲で配合することができる。
【0016】
油性成分としては、化粧料に一般に使用される動物油、植物油、合成油等の起源の固形油、半固形油、液体油、揮発性油等の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類等が挙げられる。具体的には、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、ポリエチレンワックス、エチレン・プロピレンコポリマー、パラフィンワックス、モンタンワックス、フィッシャートロプシュワックス、セレシンワックス、オゾケライトワックス等の炭化水素類、モクロウ、オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類、ミツロウ、ゲイロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス等のロウ類、ホホバ油、2−エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステル、フィトステロール脂肪酸エステル、トリグリセライド等のエステル類、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸類、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類、ジメチルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、トリメチルシロキシケイ酸、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン、架橋型ポリエーテル変性メチルポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、ステアリル変性メチルポリシロキサン、オレイル変性メチルポリシロキサン、ベヘニル変性メチルポリシロキサン、ポリビニルピロリドン変性メチルポリシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、ポリオキシアルキレン・アルキルメチルポリシロキサン・メチルポリシロキサン共重合体、アルコキシ変性ポリシロキサン、架橋型オルガノポリシロキサン、フッ素変性オルガノポリシロキサン等のシリコーン類、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤類、ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。
【0017】
粉体成分としては、化粧料に一般に使用される粉体として用いられる粉体であれば、球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、金属粉体類、複合粉体類等が挙げられる。具体的に例示すれば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、硫酸バリウム等の白色無機顔料、酸化鉄、カーボンブラック、チタン・酸化チタン焼結物、酸化クロム、水酸化クロム、紺青、群青等の有色無機顔料、タルク、白雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、合成雲母、絹雲母(セリサイト)、合成セリサイト、カオリン、炭化珪素、ベントナイト、スメクタイト、無水ケイ酸、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、珪ソウ土、ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、窒化ホウ素等の白色体質粉体、二酸化チタン被覆雲母、二酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化鉄雲母チタン、紺青処理雲母チタン、カルミン処理雲母チタン、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末等の光輝性粉体、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン−アクリル共重合樹脂等のコポリマー樹脂、ポリプロピレン系樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等の有機高分子樹脂粉体、ステアリン酸亜鉛、N−アシルリジン等の有機低分子性粉体、シルク粉末、セルロース粉末等の天然有機粉体、赤色201号、赤色202号、赤色205号、赤色226号、赤色228号、橙色203号、橙色204号、青色404号、黄色401号等の有機顔料粉体、赤色3号、赤色104号、赤色106号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号等のジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料粉体あるいは更にアルミニウム粉、金粉、銀粉等の金属粉体、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等の複合粉体、等が挙げられ、これら粉体はその一種又は二種以上を用いることができ、更に複合化したものを用いても良い。
【0018】
口唇化粧料においては粉体を配合することが多いが、その粉体の分散性向上を目的で、界面活性剤としては、化粧料一般に用いられている界面活性剤であればいずれのものも使用でき、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。例えば、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、蔗糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシアルキレンアルキル共変性オルガノポリシロキサン、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン、レシチン等が挙げられる。
【0019】
水溶性高分子としては、グアーガム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、アラビアガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン等の天然系のもの、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の半合成系のもの、カルボキシビニルポリマー、アルキル付加カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム等の合成系のものを挙げることができる。タンパク質、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、ケラチン等が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えばα−トコフェロール、アスコルビン酸等、美容成分としては例えばビタミン類、消炎剤、生薬等、防腐剤としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系、PABA系、ケイ皮酸系、サリチル酸系、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン等が挙げられる。
【0020】
本発明の口唇化粧料としては、口紅、リップグロス、リップトリートメント、リップクリーム、リップ下地があるが、特に口紅、リップグロスであることが好ましい。剤型は油性または油中水型が好ましく、形状は固形、半固形、液状等があり、スティックや金皿に流し込むものや、塗布体付きの容器(アプリケーター)やチューブに入れて用いるものがあるが、アプリケーターやチューブに入れて用いるものが好ましい。
【0021】
本発明の口唇化粧料の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば成分(d)の油ゲル化剤を任意の油性成分に加え、加熱溶融したのち、成分(a)のポリイソブチレン、成分(b)のフェニルシリコーン、成分(c)のトリメリト酸エステルを均一に混合分散し、これを容器に流し込み充填し、室温まで冷却させて得ることができる。
【0022】
以下、例をあげて本発明を更に説明する。なお、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【実施例】
【0023】
実施例1〜8および比較例1〜6:半固形状リップグロス
表1に示す組成の半固形状口紅を下記の製造方法により調製し、各試料について、伸びの軽さ、油感及びべたつき感のなさ、塗布後の艶感、化粧効果の持続性、高温での経時安定性の項目の評価を行い、その結果も併せて表1に示した。
【0024】
【表1】

【0025】
*1:AEROSIL R−976S(日本アエロジル社製)
*2:精製ポリブテンHV−100(SB)(屈折率1.49)(日本ナチュラルプロダクツ社製)
*3:KF−54(信越化学工業社製)
*4:KF−96(20cs)(信越化学工業社製)
*5:レオパールKL(千葉製粉社製)
*6:コスモール222(日清オイリオグループ社製)(屈折率1.46)
*7:LIALCARB SR−1000/R(ミテックス社製)
(製造方法)
A:成分6〜13を90℃に加温して溶解する。
B:Aに成分1〜5及び成分14を加え均一に分散する。
C:Bを70℃にてチューブ容器に流し込み室温にて冷却させる。
【0026】
(評価方法)
下記評価項目について各々下記方法により評価を行った。
各試料について専門パネル20名による使用テストを行った。パネル各人がイ、ロは塗布中、ハについては塗布直後、ニについては塗布後5時間経過して艶の状態を観察し、下記絶対評価基準にて6段階に評価し評点を付け、各試料のパネル全員の評点合計から、その平均値を算出し、下記4段階判定基準により判定した。
高温での経時安定性については、各試料を50℃で1ヶ月保管し、下記判定基準にて、室温保存品と比べ、外観の変化を目視で評価し判定した。
【0027】
(官能評価項目)
イ.伸びの軽さ
ロ.油感及びべたつき感のなさ
ハ.塗布後の艶感
ニ.化粧効果の持続性
【0028】
絶対評価基準
(評点):(評価)
6点:非常に良好
5点:良好
4点:やや良好
3点:普通
2点:やや不良
1点:不良
【0029】
4段階判定基準
(判定):(評点の平均点)
◎:5点を超える :非常に良好
○:3点を超える5点以下:良好
△:2点を超える3点以下:やや不良
×:2点以下 :不良
【0030】
ホ.高温での経時安定性
判定基準
◎:濁りや分離が全くみられず室温保存品との差がない :非常に良好
○:分離は見られないが、室温保存品に比べやや濁りがある :良好
△:分離が多少生じ、室温保存品に比べかなり濁りがある :やや不良
×:濁りや分離がかなり生じ室温保存品とはかなりの差がある:不良
【0031】
表1の結果から明らかな如く、本発明の実施例1〜8の半固形状リップグロスは、比較例1〜6の半固形状リップグロスに比べ、油感やべたつくことなく軽く伸び広がり、優れた艶感と化粧効果の持続性に優れ、高温での経時安定性が良好なものであった。一方、成分(a)のポリイソブチレンを使用しなかった比較例1は、艶がなく、化粧効果の持続性も不充分であった。成分(b)のフェニルシリコーンの代わりにジメチルポリシロキサンを使用した比較例2は、充分な艶感が得られなかった。成分(c)のトリメリト酸エステルを使用しなかった比較例3は、充分な艶感が得られず、製造直後は、実施例に比べ濁りが生じ、高温保存では、分離してしまった。また、成分(c)のトリメリト酸エステルの代わりに高屈折率のエステル油であるリンゴ酸ジイソステアリルを使用した比較例4は、充分な艶感が得られず、製造直後は、実施例に比べ濁りが生じ、高温保存では、分離してしまった。成分(d)の油ゲル化剤を使用しなかった比較例5、化粧膜が薄く艶感、化粧効果の持続性が不充分であった。成分(d)の油ゲル化剤のかわりにワックスを使用した比較例6は、比較例5に比べ、膜厚に塗布できるため艶感は少し得られたが、製造直後は、実施例に比べ濁りが生じ、高温保存では、分離してしまった。
また、表1の実施例1と比較例3の成分5〜13を90℃に加温して混合しそれを室温にて冷却した後、その状態を観察した結果、実施例1(一部)は透明な状態であったのに対し、比較例3(一部)は白濁した。更に、50℃で1ヶ月保管したものは、実施例1(一部)は室温保存品と比べ変化がなかったのに対し、比較例3(一部)は分離してしまった。
【0032】
実施例9:リップクリーム(固形状)
(成分) (%)
1.ポリエチレンワックス(平均分子量655) 4
2.キャンデリラワックス 6
3.トリメリト酸トリオクチル*8 15
4.ポリイソブチレン*9 15
5.トリメチルペンタフェニルトリシロキサン*10 30
6.トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 残量
7.ワセリン 5
8.パルミチン酸デキストリン*11 3
9.ショ糖ステアリン酸エステル 1
10.パラオキシ安息香酸プロピル 0.1
11.ビタミンC 0.1
12.ビタミンE 0.1
*8:クロダモルTOTM(クローダ社製)
*9:ポリブテン35R(出光興産社製)(屈折率1.49)
*10:PH−1555(東レ・ダウコーニング社製)
*11:レオパールTL(千葉製粉社製)
(製造方法)
A:成分1〜9を110℃に加温して溶解し混合する。
B:Aに成分10〜12を加え均一に分散する。
C:90℃にて容器に流し込み充填する。
実施例9は、軽く伸び広がり、油感やべたつき感がなく、高い艶と化粧効果の持続性に優れ、高温での経時安定性が良好なリップクリームであった。
【0033】
実施例10:口紅(固形状)
(成分) (%)
1.赤色202 1
2.酸化チタン 1
3.酸化鉄 1
4.酸化鉄被覆雲母チタン 10
5.ポリイソブチレン*12 9
6.フェニルトリメチコン*13 20
7.トリメリト酸トリトリデシル 30
8.リンゴ酸ジイソステアリル 残量
9.(パルミチン酸/2−エチルヘキサン酸)デキストリン*14 7
10.フェノキシエタノール 0.5
*12:ポリブテン300R(出光興産社製)(屈折率1.49)
*13:KF−56(信越化学工業社製)
*14:レオパールTT(千葉製粉社製)
(製造方法)
A:成分8〜10を90℃に加温して溶解し混合する。
B:Aに成分1〜7を加え均一に分散する。
C:Bを70℃にて容器に流し込み室温にて冷却させる。
実施例10は、軽く伸び広がり、油感やべたつき感がなく、高い艶と化粧効果の持続性に優れ、高温での経時安定性が良好な口紅であった。
【0034】
実施例11:口紅(液状)
(成分) (%)
1.デキストリン脂肪酸エステル*5 2
2.12−ヒドロキシステアリン酸 1
3.イソステアリン酸アルミニウム 1
4.ポリイソブテン*2 7
5.トリメリト酸トリデシル 5
6.トリメチルペンタフェニルトリシロキサン*10 15
7.2−エチルヘキサン酸セチル 残量
8.無水ケイ酸*15 1
9.フッ素化合物処理酸化ケイ素・ベンガラ被覆アルミニウム*16 0.5
10.酸化チタン被覆ガラス末*17 2
11.赤色202号 0.5
12.黄色4号アルミニウムレーキ 1
13.黒酸化鉄 0.5
14.p−メトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル 1
15.dl−α−トフェロール 0.1
16.香料 0.01
17.パラオキシ安息香酸プロピル 0.1
*15:AEROSIL 300(日本アエロジル社製)
*16:パーフルオロアルキルリン酸ジエタノールアミン塩3%処理
*17:メタシャイン1080RC−R(日本板硝子社製)
(製造方法)
A:成分1〜7を100℃で均一に溶解混合する。
B:A成分に成分8〜17を添加し均一に混合する。
C:Bを塗布体付き容器に流し込み、冷却して口紅(液状)を得た。
実施例11は、軽く伸び広がり、油感やべたつき感がなく、高い艶と化粧効果の持続性に優れ、高温での経時安定性が良好な口紅であった。
【0035】
実施例12:リップグロス(液状)
(成分) (%)
1.デキストリン脂肪酸エステル*5 3
2.(パルミチン酸/2−エチルヘキサン酸)デキストリン*14 2
3.ポリイソブテン*12 12
4.トリメリト酸トリデシル 20
5.トリメチルペンタフェニルトリシロキサン*10 15
6.ジフェニルジメチコン*3 15
7.2−エチルヘキサン酸グリセリル 10
8.トリイソステアリン酸ジグリセリル 残量
9.ジメチルポリシロキサン(20cs) 5
10.ジメチルジクロルシラン処理煙霧状無水ケイ酸*1 1
11.シリコーン化合物処理酸化チタン被覆ガラス末*18 1
12.シリコーン化合物処理ベンガラ被覆雲母*19 0.1
13.シリコーン化合物処理赤色202号無水ケイ酸複合物*20 0.1
14.香料 0.01
15.フェノキシエタノール 0.1
*18:メタシャイン1080RC−S(日本板硝子社製)をジメチルポリシロキサン・メチルハイドロジェンポリシロキサン5%で処理したもの
*19:ジメチルポリシロキサン・メチルハイドロジェンポリシロキサン5%処理
*20:メチルハイドロジェンポリシロキサン3%処理
A:成分1〜9を100℃で均一に溶解混合する。
B:A成分に成分10〜15を添加し均一に混合する。
C:Bを塗布体付き容器に流し込み、冷却してリップグロス(液状)を得た。
実施例12は、軽く伸び広がり、油感やべたつき感がなく、高い艶と化粧効果の持続性に優れ、高温での経時安定性が良好なリップグロスであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)〜(d);
(a)ポリイソブチレン
(b)フェニルシリコーン10〜60質量%
(c)トリメリト酸エステル
(d)油ゲル化剤
を配合することを特徴とする口唇化粧料。
【請求項2】
前記成分(a)〜(c)の配合量の合計が、30質量%以上であり、且つ質量割合で、成分(c)/成分(a)が0.7以上であることを特徴とする請求項1に記載の口唇化粧料。
【請求項3】
前記成分(d)の油性ゲル化剤がデキストリンと脂肪酸のエステルであることを特徴とする請求項1又は2に記載の口唇化粧料。

【公開番号】特開2007−238578(P2007−238578A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−67036(P2006−67036)
【出願日】平成18年3月13日(2006.3.13)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】