説明

口唇用化粧料

【課題】皮膚症状の改善、抗炎症、創傷治癒の効果を有し、口唇の荒れ防止及び改善作用を有する、安全性と安定性に優れた口唇用化粧料を提供する。
【解決手段】(a)上皮細胞成長因子(EGF)を0.000001〜0.1重量%、(b)デオキシリボ核酸(DNA)及び/又はその塩類を0.001〜5重量%、(c)レチノール化合物を5〜30重量%内包し、かつ平均粒子径が200nm以下であるナノカプセルを0.01〜5重量%を含有することを特徴とする口唇用化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口唇の肌荒れを改善又は予防し、かつ安全性と安定性に優れた新規な口唇用化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
口唇は、人の皮膚の中でも物理的、化学的、環境的要因によって影響を受けやすく、非常に荒れやすい部位であることが知られている。その原因は、他の部位に比較して、口唇の角質層が薄く、脂質の量も少ないことに起因している。このため、水分の放散が多く、口唇を非常に乾きやすいものにしている。その結果、時間の経過とともに口唇の荒れはひどくなりやすい。
【0003】
また、一旦荒れた口唇は、不完全角化の度合いが高くなることが確認されている。さらに荒れた口唇では、古い角質細胞が剥離せずに残存し肥厚してしまい。その結果、皮が剥けたり裂けたりすることも知られている。
加えて、口唇は他の皮膚に比較して、有害な紫外線を遮蔽するメラノサイトが少なく、そのため紫外線による損傷を受けやすい部位でもある。
【0004】
従来、口唇の荒れ防止又は改善するために、口唇用の化粧料にアラントイン、各種天然物からの抽出エキス類、多糖類、ビタミン類、タンパク質、醗酵代謝物などの薬効成分が配合されてきた。しかし、その効果は十分とはいえず、さらにこれらの成分は経時安定性に問題があり変色、異臭、分離などが起こる場合があった。上記薬効成分の内、ある種の成分は細胞賦活作用を有することでも知られている。これらは、皮膚細胞を賦活することにより肌荒れ改善、抗炎症、創傷治癒効果を期待して配合されたものである。
【0005】
しかしながら、これら細胞賦活作用を有する物質においては、副作用など安全性の問題から使用に際し制限を受けたり、少量では作用効果が十分でなく、大量に配合しなければ作用効果が発揮できないため、コストが高すぎるという問題点があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】香粧会誌 18巻,133-138頁, 1994年
【非特許文献2】Br. J. Dermatol, 141巻,453-459頁, 1999年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、細胞賦活作用を有する特定の物質を組み合わせて使用することにより、皮膚症状の改善、抗炎症、創傷治癒の効果を十分に発揮させ、口唇の荒れ防止及び改善作用を有し、且つ安全性と安定性、さらには経済性にも優れた口唇用化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記した課題を解決するため鋭意研究した結果、細胞賦活作用を有する上皮細胞成長因子(以下、単にEGFともいう。)、デオキシリボ核酸及び/又はその塩類(以下、単に、DNAともいう。)及びレチノール化合物を内包したナノカプセルを、それぞれ、特定の量で含有させた場合、後に示す実施例、及び比較例から例証されるように、それぞれの成分単独では到底なしえないように、口唇の乾燥、亀裂、シワ、皮剥け、紅班、腫れ等の症状が改善され、口唇の肌荒れを予防又は改善がなさ得ることを見出しだ。
【0009】
本発明は、上記の新規な知見に基づくものであり、以下の要旨を有するものである。
1.(a)上皮細胞成長因子(EGF)を0.000001〜0.1重量%、(b)デオキシリボ核酸(DNA)及び/又はその塩類を0.001〜5重量%、(c)レチノール化合物を5〜30重量%内包し、その平均粒子径が200nm以下であるナノカプセルを0.01〜5重量%を含有することを特徴とする口唇用化粧料。
2.上皮細胞成長因子(EGF)が、遺伝子組換え技術で製造されたヒト由来のEGFである、上記1に記載の口唇用化粧料。
3.デオキシリボ核酸が鮭白子など魚精液などから抽出された、分子量50,000〜200,000ダルトンであるデオキシリボ核酸又はそれらのKないしNa塩である、上記1又は2に記載の口唇用化粧料。
【0010】
4.レチノール化合物を内包するナノカプセルの外被が、ラメラ液晶構造を形成することのできるレシチンなどのリン脂質、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤である、上記1〜3のいずれかに記載の口唇用化粧料。
5.ナノカプセルの核中に内包されるレチノール化合物がパルミチン酸レチノールであり、その内包量が、5〜30重量%であるナノカプセルから構成される、上記1〜4のいずれかに記載の口唇用化粧料。
6.上皮細胞成長因子(EGF)1重量部に対し、デオキシリビボ核酸(DNA)の使用量が1,000〜500,000重量部であり、かつレチノール化合物を内包したナノカプセルが10,000〜500,000重量部含有する、上記1〜5のいずれかに記載の口唇用化粧料。
7.口唇の荒れ防止又は改善するための口紅、リップクリーム、リップグロス、リップトリートメント又はリップライナーである、上記1〜6のいずれかに記載の口唇用化粧料。
【発明の効果】
【0011】
本発明の口唇用化粧料では、細胞賦活作用を有する上皮細胞成長因子(EGF)、デオキシリボ核酸及び/又はその塩類(DNA)及びレチノール化合物を内包したナノカプセルを、それぞれ、特定の量で含有させることにより、それぞれの成分単独では到底なしえないように、上皮細胞成長因子の細胞賦活作用が顕著に高まり、口唇の乾燥、亀裂、シワ、皮剥け、紅班、腫れ等の症状が改善され、また、口唇の肌荒れを予防もなされる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に使用されるEGFは、ヒト由来のEGFで天然のものも使用しうるが、遺伝子組換え技術を使用して、組換え大腸菌ないし組換え酵母菌などから単離精製されたヒトEGFが好ましく使用される。このEGFは、53個のアミノ酸残基と3個の分子内ジスルフィド結合からなる、分子量6045ダルトンのタンパク質である。EGFは上皮細胞などの細胞を増殖せしめる細胞賦活作用を有することで知られている。しかしながら、EGFは唾液などの体液に接触すると、それら体液に含まれている酵素の影響などで効力を失うために、口唇用化粧料に用いた場合において創傷治癒効果を十分発揮することが出来なかった。
【0013】
本発明の口唇用化粧料に使用されるEGFの量は、化粧料の総重量に対し、0.000001〜0.1重量%、より好ましくは、0.00001〜
0.01重量%である。EGFの量が0.1重量%を超えて使用した場合、EGFが極めて高価であることから経済的でないばかりでなく、その効果も配合量に比例しては向上しない。逆に、EGFの量が少ない場合には、口唇の肌荒れの予防又は改善に効果が低いので好ましくない。
【0014】
本発明で使用されるデオキシリボ核酸(DNA)は、動物、植物、微生物などすべての生物中に含まれている物質でデオキシリボヌクレオチドが単位となり、リン酸ジエステル結合によって結ばれている糖質の一種であるポリデオキシリボヌクレオチドである。このDNAは、皮膚賦活作用を有していることでも知られており、且つ紫外線や放射線防御剤としても知られている。本発明に使用されるDNAは、鮭白子など魚精液などから抽出精製された、分子量が好ましくは5,000〜200,000ダルトン、より好ましくは10,000〜100,000ダルトンであるデオキシリボ核酸、又はそれらのカリウム(K)又はナトリウム(Na)塩が安定性の面から特に好ましい。
【0015】
本発明の口唇用化粧料に使用されるDNAの量は、化粧料の総重量に対し、0.001〜5重量%、より好ましくは、0.01〜3重量%が好ましい。また、DNAの使用量は、上記EGFの1重量部に対し、1,000〜500,000重量部、好ましくは、5,000〜300,000重量部であるのがより好ましい。
また、本発明では、上記EGFとDNAとは、口唇用化粧料を製造する際には、予め、両者を十分混合してから使用するのが好ましい。DNAの使用量が、EGFの1重量部に対し1,000重量部以下の場合、及び配合前の混合が不十分の場合には、出来上がった口唇用化粧料を口唇に塗布しても、口唇の肌荒れの予防又は改善に効果が低いので好ましくない。このことは、EGFとDNAを予め十分混合してから口唇用化粧料に配合することにより、EGFが保護されて、唾液に含まれているタンパク質分解酵素の影響を受けにくくなったことで、EGFが分解せずに、本来有している細胞賦活作用を十分発揮できるためと推定される。
【0016】
レチノール化合物を内包したナノカプセルは、水中油型のエマルジョン状態でも良いし、それらを凍結乾燥した粉末状態のものでも良いが、好ましくは、水中油型のエマルジョン状態のものが良い。
ナノカプセルに内包されるレチノール化合物は、細胞賦活作用を有するビタミン(ビタミンAないしビタミンA誘導体)として知られており、化粧料や皮膚治療薬としても使用されている物質である。しかし、レチノール化合物は極めて不安定な物質であり、そのままでは貯蔵中にその活性が低下するという欠点を有している。また、少量の使用時でも皮膚刺激が強く、従来化粧料成分としては極めて制限されていた。
【0017】
しかし、レチノール化合物を内包したナノカプセルを使用することにより、かかる欠点を解消し、且つ上記EGF及びDNAと併用することによって、それぞれの成分が相乗効果を発揮し、それぞれが単独では到底なしえない効果、すなわち、効率良く皮膚細胞を賦活して、口唇の肌荒れ予防又は肌荒れを著しく改善し得ることを見出し、本発明を完成するにいたった。
【0018】
本発明で使用されるレチノール化合物を内包し、外皮がラメラ液晶構造の皮膜で被服されたナノカプセルを製造する方法は、特開平6−343854号公報、特開平7−165530号公報、特開平2000−191506号公報などに開示されている既知の方法、すなわち、水中で親油性の界面活性剤、親水性の界面活性剤及び脂肪酸、レシチン、ポリエステル(アジピン酸ブチレン、アジピン酸エチレンなど)などの存在下に攪拌しつつレチノール化合物を添加し、ホモジナイザーで攪拌混合した後、次いで、高圧ホモジナイザーなどを使用して、高圧下攪拌混合することにより得られる。
【0019】
該ナノカプセルの平均粒子径(カプセルの平均外直径をいう。)は200nm(ナノメートル)以下、好ましくは、100nm以下、より好ましくは80nm以下が好適である。また、かかるナノカプセルに内包されるレチノール化合物の量(内包率ともいう。)は、好ましく5〜30重量%、より好ましくは、5〜15重量%であるのが好適である。内包量が30重量%を超えると、ナノカプセルの安定性が損なわれるので好ましくない。
【0020】
かかるレチノール化合物を内包したナノカプセルは、上記した如き既知の方法で容易に製造できるが、例えば、Ciba Specialty Chemicals社の商品名Tinoderm Aとして市販のものも使用できる。
本発明の口唇用化粧料に使用される上記レチノール化合物を内包したナノカプセルの量は、化粧料の総重量の100重量部に対し、0.01〜5重量%、より好ましくは、0.1〜3重量%が好適である。また、口唇用化粧料中におけるレチノール化合物の量は、化粧料の総重量の100重量部に対し、好ましくは0.001〜1重量%、より好ましくは0.01〜1重量%の範囲であるのが望ましい。
【0021】
また、本発明の口唇用化粧料における、レチノール化合物を内包したナノカプセルの量は、上記EGFの1重量部に対し、10,000〜500,000重量部が好ましく、20,000〜200,000重量部であるのがより好ましい。
【0022】
本発明の口唇用化粧料には、本発明の目的を損なわない範囲で上記の必須成分以外に、通常口唇用化粧料に使用される以下の如き原料を適宜組み合わせて使用することができる。
例えば、固形油性原料としては、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、セレシン、カルナバロウ、キャンデリラロウ、ミツロウ、デキストリン脂肪酸エステルなどがある。
ペースト状油性原料としては、ワセリン、ポリブテン、ラノリン、ラノリン誘導体、高級脂肪酸、高級アルコール、ショ糖脂肪酸エステル、トリ(カプリル/カプリン/ミリスチン/ステアリン酸)グリセリド、硬化油などがある。
【0023】
液状油性原料としては、液状パラフィン、スクワラン、ホホバ油、ヒマシ油、オリーブ油、ヒマワリ油、パーム油、綿実油、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、ジカプリル酸プロピレングリコール、リンゴ酸ジイソステアリルなどがある。シリコーン化合物としては、ジメチコン、シクロメチコン、フェニルメチコンなどがある。
【0024】
乳化安定剤としては、各種合成及び天然のノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤がある。
保湿剤としては、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ペンチレングリコールなどがある。
増粘剤としては、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、寒天、ゼラチン、ヒアルロン酸、アルギン酸ソーダなどの水溶性高分子がある。
その他、本発明の化粧料には、顔料、色素などの着色料、紫外線吸収剤、香料、防腐剤、各種エキス類などを適宜組み合わせて配合することが出来る。
【0025】
本発明の口唇用化粧料を製造する方法としては、上記した各成分が口唇用化粧料に含有される限り従来の通常使用されている方法が使用でき、特に限定さるものではない。しかし、安定した特性の口唇用化粧料を製造するために、(a)成分である上皮細胞成長因子(EGF)と、(b)成分であるデオキシリボ核酸(DNA)とは予め混合し、撹拌しておくのが好ましい。また、(c)成分である、レチノール化合物を内包したナノカプセル、及び通常配合される口唇用化粧料の他の成分などは、上記の(a)成分と(b)成分との混合物に対して混合する方法などが使用される。
【0026】
例えば、本発明の口唇用化粧料が、口紅、リップスティックなどの固形状である場合、(a)成分と(b)成分とを十分混合後、口唇用化粧料の他の成分である液状ないしペースト状油性原料に分散混合せしめる。これに(c)成分の水中分散液を添加混合し、さらに油成分、保湿成分、乳化剤、酸化防止剤、色素、防腐剤などを適宜添加混合し、次いで固化させることにより製造することができる。
本発明の口唇用化粧料の性状としては、固形、半固形、エマルジョン、ゲル又は液体のいずれであってもよい。また、その形態はスティック状のもの、平板上のもの、適当な容器に収納された無定形のもの、いずれの形態でもよい。
【実施例】
【0027】
以下、実施例、比較例を挙げて本発明を説明するが、本発明の解釈はこれによって限定されるものではない。
【0028】
実施例1
表−1に本発明の実施例1及び比較例1〜4の配合処方を示す。
表中の成分(12)及び成分(13)を予め乳鉢を使用して攪拌混合する。さらに、この混合物を、表中の成分(10)及び成分(11)とともにロールミルで均一に混合分散せしめる。
次いで、ステンレス製容器に成分(1)〜(9)を計量し、約80℃に昇温して、加熱溶解する。その後、50℃まで冷却し、予め混合分散せしめてある上記成分(10)〜(13)を上記ステンレス製容器に添加し、同温度に保ちつつ十分に混合撹拌せしめる。さらに、成分(14)を同容器に添加し、十分混合せしめる。
その後、混合液を金型に移して冷却固化させ、スティック状としたリップトリートメントを得た。
【0029】
【表−1】

【0030】
EGF:ヒト由来のEGF(マンニトールで安定化された粉末、丸栄トレーディング社、商品名rhEGFとする市販品)
DNA−K:デオキシリボ核酸カリウム(平均分子量約50000ダルトンである、魚精液から抽出精製されたもの、(大和化成社製)
Tinoderm A:パルミチン酸レチノールを20重量%内包する、平均粒子径40nmであるナノカプセルの水中分散液(パルミチン酸レチノールを内包するナノカプセルを10重量%含有する、Ciba Specialty Chemicals社製)
【0031】
上記した実施例1及び比較例1~4の口唇用化粧料を用いて、口唇の荒れ防止作用について下記のように試験した。
晩秋から冬季にかけて、20〜50才までの女性を1グループ10名ずつ5グループに分け、各グループに実施例1及び比較例1〜4の口唇用化粧料をブラインドにて2週間、一日2回朝晩使用させ、口唇の状態を観察した。口唇の状態は、口唇の乾燥、亀裂、シワ、皮剥け、紅班、腫れ等の発生状況を目視で判定し、表―2に示す判定基準に従い評価した。評価した結果を表−3に示した。なお、評価点は各グループの平均点で示した。
【0032】
【表−2】

【0033】
【表−3】

【0034】
表−3から明らかなように、本発明の実施例−1は、比較例1〜4に比べて総合点が1/2〜1/4以下であり、本発明の実施例の化粧料は、比較例のものに比べて顕著に良好な特性を有することがわかる。
より細かに見ると、本発明の実施例−1の化粧料の使用グループにおいては、乾燥、亀裂、皮剥けなど口唇炎の症状は殆ど認められなかった。一方、比較例1〜4の使用グループでは、比較例−2の使用グループで軽度の口唇炎で収まっているものの、他のグループでは口唇の乾燥が著しく、口唇炎の症状が顕著に認められていた。
【0035】
実施例2〜4
実施例1と同様にして、表−4に記載された成分組成及び量を用いて、実施例2〜4の口唇用化粧料を調製した。
【0036】
【表−4】

【0037】
EGF:ヒト由来のEGF(マンにトールで安定化された粉末、丸栄トレーディング社、商品名rhEGFとする市販品)
DNA- K:デオキシリボ核酸カリウム(平均分子量約50000ダルトンである、魚精液から抽出精製されたもの、(大和化成社製)
Tinoderm A:パルミチン酸レチノールを20重量%内包する、平均粒子径40nmであるナノカプセルの水中分散液(パルミチン酸レチノールを内包するナノカプセルを10重量%含有する、Ciba Specialty Chemicals社製)
【0038】
実施例2〜4の各口唇用化粧料について、実施例−1と同様にして、使用試験を実施し、評価した。なお、比較のため、実施例−1及び一般市販品(有効成分として、アラントイン及びビタミンE配合と記載の薬用リップトリートメント:比較例−5)を同時に評価した。
使用試験の評価結果を表−5に示した。
【0039】
【表−5】

【0040】
表−5から明らかなように、本発明の必須成分である、(a)成分と(b)及び(c)成分を含有する口唇用化粧料は、いずれの場合もその効果は優れるものであった。
一方、同時に試験を実施した一般市販品(本発明の必須成分を全く含んでいない)を使用したグループは、口唇の乾燥が著しく、口唇炎の症状が顕著に認められていた。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の口唇用化粧料は、口唇の乾燥、亀裂、シワ、皮剥け、紅班、腫れ等の症状が改善され、また、口唇の肌荒れを予防もなし得るものであり、極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)上皮細胞成長因子(EGF)を0.000001〜0.1重量%、(b)デオキシリボ核酸(DNA)及び/又はその塩類を0.001〜5重量%、(c)レチノール化合物を5〜30重量%内包し、その平均粒子径が200nm以下であるナノカプセルを0.01〜5重量%を含有することを特徴とする口唇用化粧料。
【請求項2】
上皮細胞成長因子(EGF)が、遺伝子組換え技術で製造されたヒト由来のEGFである、請求項1に記載の口唇用化粧料。
【請求項3】
デオキシリボ核酸が、鮭白子など魚精液などから抽出された、分子量5,000〜200,000ダルトンであるデオキシリボ核酸又はそれらのカリウム又はナトリウム塩である、請求項1又は2に記載の口唇用化粧料。
【請求項4】
レチノール化合物を内包するナノカプセルの外被が、ラメラ液晶構造を形成することのできるレシチンのリン脂質、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、又はノニオン性界面活性剤である、請求項1〜3のいずれかに記載の口唇用化粧料。
【請求項5】
ナノカプセルに内包されるレチノール化合物がパルミチン酸レチノールであり、その内包量が5〜30重量%であるナノカプセルから構成される、請求項1〜4のいずれかに記載の口唇用化粧料。
【請求項6】
上皮細胞成長因子(EGF)1重量部に対し、デオキシリビボ核酸(DNA)及び/又はその塩類が1,000〜500,000重量部、かつレチノール化合物を内包したナノカプセルが10,000〜500,000重量部含有する、請求項1〜5のいずれかに記載の口唇用化粧料。
【請求項7】
形態が、口紅、リップクリーム、リップグロス、リップトリートメント又はリップライナーである、請求項1〜6のいずれかに記載の口唇用化粧料。

【公開番号】特開2011−207849(P2011−207849A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79499(P2010−79499)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(500066779)株式会社山忠 (4)
【Fターム(参考)】