説明

口腔ケア組成物及び方法

本発明は、口腔ケア組成物に関する。口腔ケア組成物は、接着剤成分と、口腔ケア活性物質と、を含み、粘度指数向上剤及び/又は非水溶性成分と混合される。本発明はまた、口腔ケア組成物に関連する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔ケア組成物に関し、特に、接着剤成分と、口腔ケア活性物質と、を含み、粘度指数向上剤及び/又は非水溶性成分と混合された、改良された口腔ケア組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔ケア組成物は、日々の口腔の維持から口腔内の症状の治療又は口腔内への活性物質の投与まで、多くの領域で使用される。治療に使用される口腔ケア活性物質は、通常、水溶性担体内又は担体上に配され、口腔に適用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
残念ながら、多くのこのようなビヒクルは、唾液及び口内のその他の液体による、口内の担体及び活性物質の過剰な水和のために、治療を完了し得る前に腐食する。よって、改良された口腔ケア組成物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施形態によると、本発明は、接着剤成分と、粘度指数向上剤と、口腔ケア活性物質と、を含む口腔ケア組成物に関し、口腔ケア組成物は口腔の少なくとも一部分に適用されるように適合される。
【0005】
別の実施形態において、本発明は、a)接着剤成分を約30%〜約50%と、b)微結晶性ワックス、ポリエチレン、ゴム、エラストマー類、又はこれらの混合物を含む粘度指数向上剤を約40%〜約60%と、c)口腔ケア活性物質と、を含む口腔ケア組成物に関し、この組成物は予備成形され、口腔の少なくとも一部分に適用されるように適合される。
【0006】
更なる実施形態において、本発明は、a)接着剤成分と、b)非水溶性成分と、c)口腔ケア活性物質と、を含む口腔ケア組成物に関し、この組成物は口腔の少なくとも一部分に適用するように適合される。
【0007】
本発明のこれら及び他の実施形態は、以下の詳細な説明を考慮すると、更に十分理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の詳細な説明を以下に示す。
【0009】
用語の定義
ここで列挙する略語は本明細書で以下の意味を有するように使用する。すなわち、「cm」はセンチメートルを意味し、「mm」はミリメートルを意味し、「g」はグラムを意味し、「P」はパスカルを意味し、「s」は秒を意味し、「Ps」はパスカル−秒を意味し、「oz」はオンス(1オンス=29mL)を意味する。
【0010】
本明細書で使用するとき、「口腔」という用語は、動物又はヒトの口内の任意の表面を意味し、頬、歯、歯茎、唇、歯肉、舌、口蓋、架工義歯、歯冠、修復部分、バーニッシュ、シーラント、歯科充填物、インプラント、歯科矯正装置等を意味する。
【0011】
本明細書で使用するとき、「口腔ケア組成物」という用語は、義歯接着剤を除く、口腔内で使用される組成物を意味する。
【0012】
本明細書で使用するとき、「口腔ケア活性物質」という用語は、口腔症状の治療、又は予防の促進に使用、あるいは口腔経由で投与できる活性物質を意味する。
【0013】
本明細書で使用するとき、「粘度指数向上剤」という用語は、温度が規定範囲を超えて上昇するにつれて、取り込まれた物質の粘度及び/又はレオロジーをより安定化させる物質を意味する。口腔ケア製品の場合、上述の規定範囲は、約25℃〜約60℃である。
【0014】
本明細書で使用するとき、「チューブから分注/分注可能」という用語とは、手による圧力下で小型チューブから分注できる組成物を意味する。小型チューブは、箔積層物でできており、長さ約8.8cm(3.5インチ)、幅約1.21cm(0.48インチ)、製品を約7.39mL(0.25oz)の収容する。この小型チューブのノズルの内径は、約0.48cm(0.19インチ)であり、ノズルの長さは約0.96cm(0.38インチ)である。小型チューブの例は、7.39mL(0.25オンス)のサンプルサイズのチューブであり、在庫品番号2293でAlcan社から供給されている。
【0015】
本明細書で使用するとき、「予備成形された」という用語は、口腔に適合するように適切に成形されたシートに形成された口腔ケア組成物を意味する。
【0016】
本明細書で使用するとき、「安全かつ有効な量」とは、健全な医学/歯学的判断の範囲内で、治療すべき状態を著しく(よい方向に)改変、又は求められる便益をよい方向に改変するのには十分多いが、重篤な副作用を(妥当な便益/危険比で)回避できるほど少ない、薬剤の量を意味する。
【0017】
本明細書で使用するとき、用語「AVE/MA」とは、アルキルビニルエーテル−マレイン酸又はその無水物共重合体のことを言う。本明細書で使用するとき、「混合塩類」という用語は、少なくとも2種類の異なるカチオン類が、同一のポリマー上で互いに、又はその他の塩類と混合された、ポリマーの塩類を意味する。
【0018】
本明細書で使用するとき、用語「毒物学的に許容可能」とは、毒性特性が、ヒト及び/又は動物に投与するために適している物質を記載するために使用される。
【0019】
本明細書で使用するとき、「非水性」という用語は、付加水が実質的にない組成物を意味する。「実質的にない」とは、自由水がその組成物には添加されていないが、組成物はその他の成分の一部として、約5%以下の水を含んでいる可能があることを意味する。
【0020】
本明細書で使用するとき、「非水溶性」という用語は、水に晒されると溶解しないが、異なる度合いで分散する可能性のある物質を意味する。
【0021】
本明細書で使用するとき、「生体内腐食性」という用語は、組成物が過剰な水又は唾液に晒された場合に、物理的作用及び/又は化学的作用によって経時的に腐食することを意味する。前記組成物は、完全に又はほぼ完全に腐食してよいが、最終的には前記組成物はその原形及び/又は完全性を喪失する。
【0022】
特に記載のない限り、「融点」という用語は、本明細書で使用するとき、物質がASTM D−127に列挙される所定の条件下で決定する際に用いる温度計からしたたるような十分な流体になる温度である、液滴融点(Drop Melting Point)を意味する。ASTM D−3954は、融点測定を測定する代替法である。
【0023】
特に記載のない限り、「誘導体」という用語は、本明細書で使用するとき、ポリマー主鎖骨格が不変であるが、側基/鎖及び/又は末端基が変化している場合を意味する。
【0024】
本明細書で使用するとき、「シリコーン」という用語は、ケイ素についた様々な有機基を有する、ケイ素及び酸素原子が交互に存在する構造に基づくシロキサンポリマーを意味する。
【0025】
本明細書で使用される他のすべての百分率は、他に指示がない限り組成物の重量による。本明細書で言及されるすべての測定は、特に明記されない限り25℃で行なわれる。
【0026】
口腔ケア組成物及び方法
歴史的に、歯磨剤及び洗口剤のような口腔ケア製品は、口腔に様々な活性物質を送達するための基剤として水溶性成分を使用してきた。このようなアプローチには、いくつかの不都合な点がある。例えば、水溶性基剤及び活性物質は容易に唾液中に溶解してしまい、また活性物質は水溶性基剤に溶解しているので、口腔ケア活性物質の選択肢は、水溶性成分と相互作用しない、又は互いに相互作用しないものに限定される。従来の口腔ケア製品とは異なり、義歯接着剤組成物は、接着剤粒子を口腔に送達するのに非水溶性成分を使用する。現在では驚くべきことに、口腔ケア活性物質はもはや水溶性基剤に溶解する必要はないので、義歯接着剤に使用されるもののような非水溶性成分を、口腔への口腔ケア活性物質の送達を改良されたものにするため、口腔ケア組成物に使用できることがわかった。
【0027】
更に、粘度指数向上剤は非水溶性成分の有益な効果を増大させ、そのもの自身でも追加的な利点を有する。歴史的には、粘度指数向上剤は、潤滑剤業界に関連の用語であった。潤滑剤の粘度は、摩擦を低減する能力に密接に関係している。最も望ましい潤滑剤は、摩擦を最小限にさせるため、2つの移動する表面を分離させたまま2表面を容易に移動させるものである。しかしながら、液体の粘度は、温度上昇とともに低下する傾向にあるので、比較的低温で機能する潤滑剤の多くは、比較高温では機能するには粘稠ではなく、比較的高温で十分粘稠なものは、比較的低温では粘稠すぎる傾向がある。最良の潤滑剤は、所望の温度範囲では粘度があまり変化せず、それ故その範囲で十分に機能する。
【0028】
潤滑剤が機能する温度範囲をうまく予測するために、米国自動車技術会(SAE)が粘度指数を確立した。粘度指数は、潤滑剤の粘度が温度変化とともにどのように変化するかを強調している。粘度指数は、40℃(華氏100°)の任意の「低」温及び100℃(華氏210°)の任意の「高」温における物質の粘度を示す。
【0029】
設定温度範囲にわたる潤滑剤の特性を理解した後、ある種の潤滑剤がより広い温度範囲でその潤滑剤粘度をよりばらつきのないものとしていることが発見された。このため、比較的高温では潤滑剤粘度の低下が少ない。高温で高い粘度を有することで、潤滑剤は高温でよりよく機能することができる。高温での粘度を上昇させるのに添加する物質を粘度指数向上剤と定義した。
【0030】
驚くべきことに、この原理の応用は、口腔ケア組成物とも関連があることが見出された。一般に、口腔ケア組成物は、最終用途に基づいて、無数の物質から生成することができる。活性物質を接着を通じて口腔に送達することを意図するものについては、一般に接着剤成分と担体を含む。使用中、唾液中の水分がその担体を通して浸透し、接着剤成分及び活性物質を水和する。これは、接着剤成分は粘膜組織及びその他の口腔表面に対して粘着性を帯びさせる。口腔ケア組成物の粘度は、接着剤成分が水和され得る速度に寄与する。水和量は、接着剤成分の量、非水溶性ビヒクルの量、及び非水溶性ビヒクルの粘度の影響を受け、これら3つすべてが口腔ケア組成物の全体的な粘度に寄与する。口腔ケア組成物の粘度は、接着剤成分の水和の速度及び/又は量に寄与する。時間の経過とともに、過剰の唾液及び/又は液体による過剰の水和により、接着剤を失うことになり、これにより接着が弱まって、活性物質の損失を招き得る。粘度指数向上剤により付与された粘度の温度抵抗性は、過剰の水和に対する耐性、ひいては経時的に保持されてより高い接着性及び活性を生じることになる。このことは、口腔ケア組成物のより長い持続性と、向上した性能につながる。
【0031】
口腔ケア組成物に最も関連のある温度範囲は、分注容器(例えば、チューブ又は包装容器)での口腔ケア組成物の粘度を扱う室温(25℃)から口内での口腔ケア組成物の粘度を扱う40℃の範囲である。温かい飲み物の摂取時は、口内の温度が60℃以上に達することもあり、40℃での組成物の挙動をみることは、60℃における増大した有益特性を有するかについてのよい予測判断材料ともなりやすい。したがって、口腔ケア組成物関連の粘度指数向上剤は、機能温度(すなわち、25℃〜60℃)の範囲にわたり、粘度をより安定なものにする。
【0032】
したがって、粘度指数向上剤のみの使用、又は非水溶性成分との併用は、口腔ケア組成物の水和特性及び/又は口腔ケア活性物質との適合性を改善し、それにより向上した性能を提供する。上記の観点で、一実施形態において、本発明による口腔ケア組成物は、接着剤成分と、口腔ケア活性物質とを含み、非水溶性成分及び/又は粘度指数向上剤と混合する。
【0033】
接着剤成分
本発明は、安全かつ有効な量、一般に組成物の約5重量%〜約99重量%の組成物を含む。別の実施形態において、接着剤成分は、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%〜約50%、55%、60%、65%、70%、75%、又は任意のこれらを組み合わせた範囲で存在する。ある特定の実施形態において、接着剤成分は、約10.0%〜約60.0%の量で存在する。
【0034】
一般に、接着剤成分は、水分で活性化したとき粘稠になる親水性粒子、又は親水性液体である。水分で活性化するものについては、水分は例えば、使用者の口腔内はもちろん、口腔ケア組成物自身に存在していてもよい。様々な実施形態において、本明細書の接着剤成分は、粘膜付着性、親水性、水溶性であり、水分に暴露したときに膨潤する特性又はこれらの組み合わせを有する。
【0035】
一実施形態において、接着剤成分は、グリセリン、ポリオキサマー、ソルビトール、ポリオックス、カルボマー、ポリアクリルアミド類、ポリペプチド類、天然ガム類、合成高分子系ガム類、AVE/MA、AVE/MA/IB、マレイン酸又はその無水物とエチレン、スチレン、及び/又はイソブチレンとの共重合体類、ポリアクリル酸及び/又はそのポリアクリレート類、ポリイタコン酸、粘膜付着性ポリマー類、水溶性親水コロイド類、糖、セルロース、これらの誘導体類、及びこれらの混合物からなる群から選択される。このような物質の例として、カラヤガム、グアーガム、ゼラチン、アルギン、アルギン酸ナトリウム、トラガント、キトサン、アクリルアミドポリマー類、カルボキシポリメチレン、ポリビニルアルコール、ポリアミン類、ポリ四級化合物類、ポリビニルピロリドン又はその共重合体、カチオン性ポリアクリルアミドポリマー類、AVE/MAの塩類及び混合塩類、高分子酸類、高分子塩類、及びこれらの共重合体、ポリイタコン酸塩類、ポリヒドロキシ化合物類、これらの誘導体、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0036】
別の実施形態において、接着剤成分は、セルロース、セルロース誘導体類(メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、トウモロコシデンプン、及びこれらの混合物等)、デンプン、デンプン誘導体、糖、糖誘導体類、ポリエチレンオキシド類、ポリエチレングリコール類、ポリビニルアルコール類、カラギーナン、アルギン酸塩類、カラヤガム類、キサンタンガム類、グアーガム類、ゼラチン類、アルギン類、トラガント、キトサン、アクリルアミドポリマー類、カルボキシポリメチレン類、ポリアミン類、ポリ四級化合物類、ポリビニルピロリドン、AVE/MA、AVE/MAの塩類、AVE/MAの混合塩類、高分子酸類、高分子酸塩類、ポリヒドロキシ化合物類、並びにこれらの混合物からなる群から選択される。
【0037】
一実施形態において、接着剤成分は、AVE/MAの塩である。別の実施形態において、接着剤成分は、AVE/MAの混合塩を含む。一実施形態において、接着剤成分は、AVE/MAのカルシウムと亜鉛の混合塩を含む。更に別の実施形態において、接着剤成分は、AVE/MAの混合塩類、セルロース誘導体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。別の実施形態において、接着剤成分は、AVE/MA、AVE/MAの塩類、AVE/MAの混合塩類、カルボキシメチルセルロースナトリウム、又はこれらの混合物を含む。一実施形態において、接着剤成分は、AVE/MAの混合塩とカルボキシメチルセルロースの混合物とを含む。
【0038】
非水溶性成分
いくつかの実施形態においては、本組成物は、安全でかつ効果的な量の非水溶性成分を含む。一実施形態において、この成分は、組成物の約1、2、5、10、20、25、30、35重量%〜約45、50、60、70、90重量%、又はこれの任意の組み合わせた範囲で存在する。更なる実施形態において、この非水溶性成分は、組成物の約20重量%〜約70重量%、約25重量%〜約60重量%、約35重量%〜約60重量%の量で存在する。また別の実施形態においては、この非水溶性成分は、水にほぼ非膨潤である。いくつかの実施形態においては、この非膨潤性で非水溶性の成分は、水中で約10%、5%、2%、又は1%未満膨潤する。
【0039】
一実施形態において、この非水溶性成分は、天然ワックス、合成ワックス、ペトロラタム、ポリ酢酸ビニル、天然油類、合成油類、脂肪類、シリコーン、シリコーン誘導体類、ジメチコン、シリコーン樹脂類、炭化水素類、炭化水素誘導体類、精油類、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド類、ポリブテン、オレイン酸、ステアリン酸、及びこれらの混合物からなる群から選択される。更なる実施形態においては、この非水溶性成分は、ペトロラタム、ポリ酢酸ビニル、天然油類、合成油類、脂肪類、シリコーン、シリコーン誘導体類、ジメチコン、シリコーン樹脂類、炭化水素類、炭化水素誘導体類、ポリブテン、オレイン酸、ステアリン酸、精油類、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド類、又はこれらの混合物を含む。更なる実施形態において、この非水溶性成分は、ペトロラタムを実質的に含まない。
【0040】
天然油類の例として、これらには限らないが、植物油類(例えば、コーン油)、大豆油、綿実油、パーム油、ヤシ油、鉱油、動物油(例えば、魚油)等が挙げられる。合成油の例として、シリコーン油等が挙げられるが、これらには限定されない。一実施形態において、非水溶性成分は天然油を含む。更なる実施形態においては、天然油は鉱油を含む。一実施形態において、鉱油は、組成物中に、約30%〜約50%存在し、別の実施形態では約35%〜約45%存在する。
【0041】
いくつかの実施形態においては、この非水溶性成分はワックスである。一実施形態では、非水溶性成分は天然又は合成ワックスである。様々な実施形態において、ワックスは、約1、2、5、8、10、15、20、40%〜約10、20、30、40、50、60、80%、又はこれらを組み合わせた範囲で存在する。
【0042】
粘度指数向上剤
前述のように、粘度指数向上剤は、口腔ケア組成物を機能温度(すなわち、約25℃〜約60℃)の範囲でより安定なものにする。別の機構も粘度指数向上剤を含む口腔ケア組成物の改良特性に寄与していると考えられている。理論に制限されるものではないが、接着剤成分の粒子の少なくともいくらかが粘度指数向上剤に少なくとも部分的に被覆又は包囲された場合に、少なくともいくつかの改良特性が生じると考えられている。実際、驚くべきことに、少なくともいくつかの本発明の実施形態において、粘度指数向上剤、例えば微結晶性ワックスが接着剤成分の粒子の少なくとも一部を被覆することが見出されている。このことは特に、接着剤組成物が、粘度指数向上剤の融点又はそれ以上の温度まで加熱して生成され、その後室温まで冷却された場合に見られる。いくつかの実施形態において、この粘度指数向上剤は、接着剤成分の粒子の孔及び/又は間隙内で固体化又は結晶化することにより接着剤成分の粒子を被覆できる。
【0043】
いくつかの具体例においては、接着剤成分が粘度指数向上剤により被覆/包囲されることは、例えば不完全な水和による洗い流し、(唾液又は飲み物による)過剰な水和、口内温度の変化(例えば、コーヒー等の温かい飲み物の摂取による)、及び/又は咀嚼から、接着剤粒子を保護する物理的な防壁として機能する。このことは又は、機能をより優れたものとする、接着剤成分のよりよい使用と最適化にもなり得る。
【0044】
粘度指数向上剤に関する一般的な原理の理解はさておき、物質が口腔ケア組成物中で粘度指数向上剤として機能するかを決定する別の方法は、瞬間粘度比を見ることである。この瞬間粘度比は、室温(25℃)と高温(40℃)で試作品サンプルの粘度比を測定するものである。本組成物は、粘度指数向上剤を含まない同組成物に比べ、高温において高い粘度を有する傾向がある。このことは、口腔ケア剤組成物は、一般に室温よりも高い使用者の口内に入れられるので、重要である。更にまた、使用者の口内温度は、温かい飲み物を摂取したときにも上昇する。このような高温で高い粘度を維持する能力は、使用中に口腔ケア組成物をよりよく保持し損失を少なくするのに役立つ。
【0045】
瞬間粘度比は、以下に概説するようにして測定できる。一実施形態において、瞬間粘度比は、0.25を超える。別の実施形態において、瞬間粘度比は、約0.25〜約1.0である。更なる実施形態において、瞬間粘度比は、約0.25、0.3、0.4、0.6、0.7〜約0.3、0.4、0.5、0.8、1.0、あるいはこれらの組み合わせた範囲である。更なる実施形態において、瞬間粘度比は約0.3〜約0.8である。他の実施形態においては、瞬間粘度比は約0.3〜約0.6、又は約0.3〜約0.5である。
【0046】
粘度指数向上剤のいくつかの例として、ポリメタクリレート類、オレフィン共重合体類、水素化スチレン−ジエン共重合体類、スチレンポリエステル類、ゴム、ポリ塩化ビニル、ナイロン、フッ化炭素、ポリウレタンプレポリマー、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、セルロース系樹脂類、アクリル樹脂類、微結晶ワックス、エラストマー類、ポリ(n−ブチルビニルエーテル)、スチレン−無水マレイン酸共重合体、フマル酸アルキル−酢酸ビニル共重合体、アルキル化ポリスチレン、ポリ(t−ブチルスチレン)、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0047】
ポリメタクリレート類の例として、例えば、アクリレート−メタクリレート共重合体、メタクリレート−スチレン共重合体、又はこれらの組み合わせが挙げられる。エラストマー類の例として、例えば、水素化スチレン−ブタジエン共重合体、水素化スチレン−イソプレン共重合体、エチレン−エチレン−プロピレンポリマー、エチレン−プロピレンポリマー、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンポリマー、又はこれらの混合物が挙げられる。ゴムの例として、水素化ポリイソプレンが挙げられる。粘度指数向上剤のその他の例は、ChapmanとHallによる「Chemistry and Technology of Lubricants(2nd Ed.1997)」に記載されている。
【0048】
一実施形態において、粘度指数向上剤は、ポリメタクリレート類、オレフィン共重合体類、水素化スチレン−ジエン共重合体類、スチレンポリエステル類、及びこれらの混合物からなる群から選択される。別の実施形態において、粘度指数向上剤は、ゴム、ポリ塩化ビニル、ナイロン、フッ化炭素、ポリウレタンプレポリマー、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、セルロース系樹脂類、アクリル樹脂類、微結晶ワックス、エラストマー類、及びこれらの混合物からなる群から選択される。更なる実施形態において、粘度指数向上剤は、微結晶ワックス、ポリエチレン、ゴム、エラストマー類、又はこれらの混合物を含む。
【0049】
別の実施形態において、粘度指数向上剤は、Honeywell製のA−C 1702及びA−C 6702等のポリエチレンである。別の実施形態において、粘度指数向上剤は、分子量が少なくとも約80,000の非晶質ポリエチレンを実質的に含まない。更なる実施形態において、粘度指数向上剤が平均分子量約1000〜約21,000のポリエチレンからなる場合、接着剤成分は低分子量AVE/MAの、カルシウムと、ナトリウム、カリウム、及び四級アンモニウムカチオン類からなる群より選択されるアルカリカチオン塩との混合部分塩を実質的に含まない。
【0050】
別の実施形態において、粘度指数向上剤は微結晶ワックスを含む。一実施形態において、微結晶ワックスは、精製され、かつ/又は実質的に純粋である。更なる実施形態において、ペトロラタムは微結晶ワックスに寄与しない。別の実施形態において、微結晶ワックスは、約50℃〜約100℃の範囲に融点を有する。更なる実施形態において、微結晶ワックスは、約50℃、55℃、60℃、65℃、70℃〜約70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、又はこれらの任意の組み合わせの範囲の融点を有する。具体的な一実施形態において、微結晶ワックスは、約75℃〜約85℃の範囲に融点を有する。別の実施形態ではワックスは、Crompton、Sonneborn(Witco)によって製造され、Multiwax(登録商標)W−835の商標で照会及び販売されている。
【0051】
いくつかの実施形態においては、粘度指数向上剤は、約0.001%〜約90.0%の量で使用される。様々な実施形態において、粘度指数向上剤は、約1、2、5、10、15、20、30、40%〜約10、15、20、30、40、50、60、70、80、90%、又はこれらの任意の組み合わせの範囲で存在する。一実施形態において、口腔ケア組成物を予備成形する場合、粘度指数向上剤は約40%〜約60%存在する。一実施形態において、口腔ケア組成物がチューブから分注できる場合、粘度指数向上剤は約1.0%〜約15.0%存在する。一実施形態において、粘度指数向上剤は、非水溶性及び/又は水に対し非膨潤性である。
【0052】
各種の添加剤
可塑剤
本発明の組成物はまた所望により、1つ以上の安全且つ有効な量の毒物学的に許容可能な可塑剤類を含んでよい。様々な実施形態において、可塑剤の濃度は、組成物の約0.01重量%〜約40重量%、約1重量%〜約10重量%、又は約2重量%〜約5重量%である。
【0053】
ゲル化剤
本発明の組成物はまた所望により、1つ以上の安全且つ有効な量の毒物学的に許容可能なゲル化剤類を含んでよい。様々な実施形態において、ゲル化剤は、組成物の約0.01重量%〜約40重量%、約1重量%〜約10重量%、又は約2重量%〜約5重量%の範囲で含まれる。
【0054】
口腔ケア活性物質
口腔ケア組成物はまた、1種以上の口腔ケア活性物質も含む。口腔ケア活性物質は、約0.1、0.5、1、5、10、15、20、25、30%〜約0.5、1、3、5、10、15、20、30、50、70%又はこれらの任意の組み合わせの範囲で存在し得る。口腔ケア活性物質として、例えば、ヨウ素、トリクロサン、過酸化物類、スルホンアミド類、ビスビグアニド類、又はフェノール類化合物等の抗菌剤、テトラサイクリン、ネオマイシン、カナマイシン、メトロニダゾール、塩化セチルピリジニウム、臭化ドミフェン、又はクリンダマイシン等の抗生物質、アスピリン、アセトアミノフェン、ナプロキセン及びその塩類、イブプロフェン、ケトロラク、フルルビプロフェン、インドメタシン、オイゲノール、又はヒドロコルチゾン等の抗炎症剤、硝酸カリウム、塩化ストロンチウム、又はフッ化ナトリウム等の歯科用脱感作剤、フッ化ナトリウム、フッ化第一スズ、MFP(モノフルオロリン酸塩)等のフッ化物、リドカイン又はベンゾカイン等の麻酔剤、過酸化物等の漂白剤、カンジダ・アルビカンスの治療用のものなどの抗カビ剤、インスリン、ステロイド類、ハーブ及びその他の植物由来の治療薬、並びに重曹が挙げられる。他の好適な治療活性物質については、Physicians Desk Reference 62nd Ed.,2008及びthe Physicians Desk Reference for non−prescription drugs,and herbs,29th Ed.で述べられている。
【0055】
一実施形態によると、活性物質は、抗歯石剤、フッ化物イオン源、スズイオン源、漂白剤、抗菌剤、抗プラーク剤、防汚剤、付着防止剤、歯肉炎防止剤、歯石防止剤、歯周炎防止剤、知覚過敏防止剤、虫歯防止剤、抗炎症剤、栄養分、抗酸化剤、抗ウイルス剤、防カビ剤、鎮痛剤、麻酔剤、H−2拮抗薬、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0056】
別の実施形態において、口腔ケア活性物質は、香味料、香料、及び/又は知覚性添加剤(sensates)(例えば、温感剤又は涼感剤)を含んでもよい。この部類の好適な口腔ケア活性成分としては、例えば、メントール、冬緑油、ペパーミント油、スペアミント油、リーフアルコール、クローブ芽油、アネトール、サルチル酸メチル、ユーカリプトール、カッシア、1〜8メンチルアセテート、セージ、オイゲノール、パセリ油、オキサノン、α−イリソン、マジョラム、レモン、オレンジ、プロペニルグエトール、シナモン、バニリン、チモール、リナロール、シンナムアルデヒドグリセロールアセタール、それらの誘導体類、及びこれらの混合物が挙げられる。一実施形態において、活性物質は、ショウノウ、ユーカリ油、及びベンズアルデヒド等のアルデヒド誘導体、又はこれらの組み合わせ等の香料である。
【0057】
その他の各種添加剤
その他の好適な含有成分として、着色料、保存料(例えば、メチル及びプロピルパラベン類)、及びレオロジー改質剤(例えば、シリコンジオキシド等)が挙げられる。レオロジー改質剤は、粘度、弾性、及び/又は降伏応力等のレオロジー特性を改質する。このような着色料、保存料、及びレオロジー改質剤は、組成物に対し、約0.1、0.2、1、2、5%から約1、5、10、20%、又はこれらを組み合わせた濃度で存在する。更に、前記組成物は、1種類以上の溶媒を含んでもよい。これらの選択的な溶媒は、粘度指数向上剤、非水溶成分、又はこれら両者と混和し、かつ/あるいはその場で消散できる。
【0058】
口腔ケア組成物
口腔ケア組成物は多くの異なる形態をとることができる。例えば、組成物は、乳濁液、分散液、スラリー、ゲル、クリーム、ペースト、固体、予備成形物、及びこれらの混合物でもよい。一実施形態において、口腔ケア組成物は、ゲル、クリーム、ペースト、ウエハ、又はストリップである。別の実施形態において、口腔ケア組成物は、チューブから分注できる。
【0059】
接着剤組成物はまた、多くの特性も有する。一実施形態において、組成物は、生体内分解性、非水性、又はこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は腐食する。別の実施形態において、口腔ケア組成物は予備成形されている。更なる実施形態において、予備成形された口腔ケア組成物は、裏材層を含む。
【0060】
裏材層
口腔ケア組成物を、単独のフィルムとして提供してもよいが、裏材層に塗装、被覆、あるいは他の方法で適用してもよい。この裏材層は、単層、あるいは発泡体、メッシュ、及び/又はその他の好適な材料等の複数の層から形成される積層材として提供できる。この裏材層は、水浸透性、非水浸透性、部分的に水浸透性、水溶性、非水溶性、腐食性、又はこれらを組み合わせたものでもよい。更にまた、裏材層は、連続又は非連続(例えば、複数の別々のセグメントで形成)であってもよい。
【0061】
一実施形態において、裏材は、接着剤及び/又は活性物質を保護する防護壁としての機能を果たす。防護壁は、接着剤及び/又は活性物質が、例えば実質的に着用者の唇、舌、頬、並びに唾液によって浸出、かつ/あるいは腐食するのを防ぐ。これにより、口腔ケア組成物中の活性物質は、数分から数時間のより長期にわたって口腔表面で作用できる。本明細書において、「〜で作用する」という用語は、所望の変化をもたらすと定義する。例えば、口腔ケア組成物が抗菌物質である場合、菌の増殖を低減又はなくし、歯及び歯肉組織を含む口腔で、全体としてプラスの影響をもたらす。
【0062】
裏材は、ポリマー、天然及び合成織物、不織材、箔、紙、ゴム、及びこれらを組み合わせたものを含んでいてもよい。裏材は、材料の単層、あるいは一層以上からなる積層物であってもよい。好ましくは、材料は、屈曲剛直性を有し、口腔ケア組成物に適合する、任意の種類のポリマー又はポリマーの混合物である。好適なポリマーとして、ポリエチレン、エチルビニルアセテート、ポリエステル、エチルビニルアルコール、及びこれらの組み合わせが挙げられる。裏材の形状は、所望の口腔表面を覆うならばどのような形状及び寸法でもよい。
【0063】
剥離ライナー
これらの口腔ケア組成物は、剥離ライナーを更に有していてもよい。この剥離ライナーは、口腔ケア組成物がそれ自身と裏材に対して示す親和性に比べ、低い親和性(親和性ゼロの場合も含む)を口腔ケア組成物に対して示す、任意の材料から形成できる。一実施形態において、剥離ライナーは、ポリエチレン、紙、ポリエステル、又はその他の材料を含み、その後非粘着性材料で被覆される。
【0064】
口腔ケア組成物及びその成分は本明細書に開示している要素及び特性を任意に組み合わせて含んでいてもよい。
【0065】
製造方法
口腔ケア組成物は、いくつかの方法によって製造できる。製造法の一例は、a)粘度指数向上剤及び/又は非水溶性の成分を容器に加え、b)その粘度指数向上剤及び/又は非水溶性成分を少なくとも約40℃まで加熱及び混合し、c)接着剤成分及び口腔ケア活性物質を加えて混合することを含む。上記成分の添加順序は、粘度指数向上剤及び/又は非水溶性成分が実質的に液体の形態で存在する場合に、接着剤成分が組成物内に存在する限り、あまり重要ではないと考えられている。本方法の温度は、使用する粘度指数向上剤及び/又は非水溶性成分についての必要条件に基づいて、調整する必要がある。更にまた、使用中の口腔ケア活性物質の熱による分解も、活性物質を組成物にいつ添加するのかを決定する際に考慮するべきである。
【0066】
本明細書の予備成形した組成物は、当該技術分野における従来法により、例えば流延、被覆、カレンダー、及び押し出し等のフィルム製造業界において生成できる。一実施形態では、組成物の個々の成分を溶融し、その後均一混合物が得られるまで、混合タンク内で混合する。その後、前記溶融混合物を許容可能な厚さで適切な基材上にキャストしてよい。かかる基材の例としては、Mylar、連続運転ステンレス鋼ベルト(必要であれば、最終的には乾燥器セクションに入る)、剥離紙などが挙げられる。続いて、組成物を冷却する。次に、必要に応じて、組成物を例えば送風乾燥器内で乾燥してもよい。乾燥用空気温度及び乾燥時間は、当該技術分野において認識されているように、利用される溶媒の性質に依存する。一般に、乾燥温度として、約25℃〜140℃、別の実施形態では約60°〜90℃の間の温度で、約20分〜約60分間、別の実施形態では約30〜約40分間の持続時間が挙げられる。次に組成物は、所望の寸法を備えた所望の形状に切断し、その後積み重ね、かつ/又は引き続いて包装してよい。
【0067】
当該技術分野において既知の別の公知のフィルム製造方法は、押出成形である。この方法は、フィルムの膜形成成分が各種の押し出し可能な物質を含む場合に可能である。押出成形法の機械的な詳細、例えば、使用する特定の装置、押出成形力、オリフィス及び/又はダイの形状及び温度は、当該分野の技術の範囲内であるとみなし、本明細書に記載する口腔ケア組成物の物理的特性を達成するために既知の態様で変更できる。
【0068】
一実施形態では、本明細書の予備成形した組成物の厚さは一般に、約0.1mm〜約2.5mm、別の実施形態では、約0.4mm〜約1.5mmの厚さ、別の実施形態では、約0.5mm〜約1mmの厚さである。組成物は、使用者の望む緩衝作用の程度に応じて、より厚く又はより薄くてもよい。
【0069】
組成物の使用
本組成物は、一般に口腔の一部分に適用される。更にまた、口腔ケア組成物は、ヒト及び動物に使用することができる。一実施形態において、口腔ケア組成物は、家庭用ペットに使用される。更なる実施形態において、家庭用ペットは、イヌを含む哺乳動物である。別の実施形態によると、口腔ケア組成物はヒトに使用される。
【0070】
組成物は、単独、又は裏材及び/又は剥離ライナーと併用して適用される。口腔に適用する場合、口腔ケア組成物は、例えば、創傷を感染から守るのに役立つ絆創膏として使用できる。別の実施形態において、口腔ケア組成物は、創傷閉鎖に使用できる。更に、別の実施形態において、口腔ケア組成物は、口腔の治療に使用することができる。例えば、一実施形態において、口腔ケア組成物は、炎症、口臭、感染症、熱傷、又はこれらの組み合わせの治療に使用できる。別の実施形態において、口腔ケア組成物は、例えば、ビタミン、ミネラル、又はその他の有益な活性物質の送達に使用できる。更に、その他の実施形態において、口腔ケア組成物は、香味料の送達に使用できる。したがって、上述からわかるように、口腔ケア組成物は、例えば、様々な口腔の疾患及び症状を治療する方法、口腔の少なくとも一部分に活性物質を送達する方法、活性物質を全身への使用のために送達する方法に使用できる。
【0071】
組成物を口腔上の任意の適切な位置に適用してもよい。一実施形態において、前記口腔ケア組成物装着者は一般に、約1時間〜約3日間、別の実施形態では、約6時間〜約24時間、組成物を装着する。使用後、一実施形態において、口腔ケア組成物を口腔から取り外し、すべての残留組成物を、例えば水及びブラシでやさしく擦ることで、口腔から清掃してもよい。
【0072】
試験方法
参考用サンプル(RS)及び試作サンプル(PS)の調製手順
参考用サンプルは、標準としてみなされ、標準品の非水溶性成分を用いて生成されるものであるのに対し、試作サンプルは、評価する粘度指数向上剤を用いて生成される。
【0073】
材料
1.標準義歯接着剤成分及び(RS及びPSの両サンプル調製用)賦形剤粉末
i.Ca(47.5)/Zn(17.5)MVE/MA(メチルビニルエーテル/マレイン酸)混合部分塩(33%)
ii.カルボキシメチルセルロースナトリウム(20%)
iii.コロイド状二酸化ケイ素(1.14%)
2.水溶性成分(WIC)及び粘度指数向上剤
iv.標準WICを用いたRSのサンプルの調製
● 鉱油(Penreco社のDrakeol 35)(23.95%)+白色ワセリン(Penreco社の「Snow」)(21.91%)
又は
試作品の粘度指数向上剤及びWICを用いた、PSのサンプルの調製
● 鉱油(Penreco社のDrakeol 35)(40.812%)+試作品の粘度指数向上剤(5.048%)
【0074】
手順
参考サンプル及び試作サンプルを共に以下の手順により、調製する。
【0075】
ウォールスクレーパブレード(Haagen and Rinau社のUnimix)及び温水ジャケットを備えるミキサーを、ウォータバス及び真空ポンプに接続する。温水ジャケットのウォータバスを約95℃に設定する。WIC及び/又は粘度指数向上剤成分をミキサー容器に入れる。非水溶性成分及び/又は粘度指数向上剤が室温で液体でない場合、攪拌機にスイッチを入れる前にこれらを柔らかくさせておく。攪拌機を約60RPMに設定し、WIC及び/又は粘度指数向上剤成分を、温度が約95℃に達するまで混合する。「標準義歯接着剤成分及び賦形剤粉末」を、ベントを開放した状態で、漏斗を介してミキサーに加える。ベントを閉め、混合を止める。粉末の固まりを擦り落とす。約60RPMで混合を再開する。約81.27kPa(24インチHg)に真空引きし、そのバッチが約90℃に達するまで混合する。ウォータバス温度を約60℃まで下げ、バッチが約65℃になるまで真空下で混合し続ける。混合を止め、ポンプを停止し、ベントをゆっくり開き、真空解除し、蓋を開ける。容量約41.4mL(1.4oz)のホイルチューブ等の適切な容器にサンプルを満たす。約1週間かけて、サンプルを平衡化させる。評価の直前にチューブから絞り出し、最初の約2gを廃棄する。
【0076】
可能な限り、RS及びPSは、同一の義歯接着剤成分及び賦形剤粉末を同濃度で用い、同一製造手順により生成される。これは、義歯接着剤成分及びサンプル調製手順を含むあらゆる変数を同じに保つことにより、多様な粘度指数向上剤間の違いを試験するための標準マトリックスを提供するために行う。標準義歯接着剤成分により付与されるその他の特性の中でも、これらは、唾液と水分が義歯接着剤組成物を通して浸透する標準的な駆動力も提供する。
【0077】
上記に詳述される手順に対応していない(例えば、95℃を超える温度のみで軟化する)試作粘度指数向上剤の任意の特性を対応させる必要がある場合、必要に応じて、加工温度プロファイルを変更できる。同様に、上述の標準義歯接着剤成分が適切ではない場合、単一の義歯接着剤成分のみ、Ca/Zn MVE/MA塩との組み合わせの代わりに、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウムを53%で使用できる。更にまた、上述の試験配合物が以下に述べるような瞬間粘度の試験には濃度が高すぎるPSを与える場合、サンプルを鉱油等の追加的な非水溶性成分で希釈する必要があることもある。
【0078】
上記のプロセスは、約5%の濃度での粘度指数向上剤を評価する。5%での試作粘度指数向上剤の評価は、基準値の設定に役立つ、すなわち、5%濃度での粘度指数向上剤の特性を見つけることが、高濃度での粘度指数向上剤の特性の指標となると考えられている。そうは言っても、5%で評価し、その濃度で粘度指数向上剤特性をもたないとわかった試作粘度指数向上剤は、より高い濃度ならもつことがあり、確認のため高濃度で評価すべきである。
【0079】
上記のプロセスは、スケールアップして、粘度指数向上剤及び/又は義歯接着剤組成物の非水溶性成分に適切な温度における一般的な製造に利用することもできる。
【0080】
瞬間粘度比試験
瞬間粘度比は、以下の手順により測定及び計算できる。
【0081】
装置:
● Ares歪み制御レオメータ
● 25mm永久平行板
【0082】
方法
1.25mm平行板をAresレオメータに載せる。
2.垂直力をゼロにする。
3.25℃(すなわち室温)でのギャップをゼロにする。
4.サンプルを、平行板を横切るような半円状の動きで、底板に適用する。2.177±0.005mmのギャップに達すると、過剰分を切り落とし、試料がギャップがないようにすべての端に均一に行き渡るように十分な試料があるべきである。
5.以下の手順により、ギャップを調整する。
● ギャップ設定アイコンをクリックする。コマンドギャップ位置を2.55mmに設定する。
● 許容最大力を100gに設定する。
● ギャップ設定をクリックする。
● プラスチックのカバースライドでサンプルを切り落とす。
● マンドギャップ位置を2.177mm、許容最大力=100gに設定する。
● ギャップ設定をクリックする。
● プラスチックのカバースライドでサンプルを切り落とす。
● コマンドギャップ位置をを2.147mm、許容最大力=100gに設定する。
● ギャップ設定をクリックする。
● サンプルを切り落とさない。
● 最終的なギャップの読みは、2.147±0.005mmであるべきである。
● 温度を25℃に平衡させる。
● ギャップ及び軸力を各観察記録とともに試験ノートに記録する。
● 実験を開始する。
6.試験開始
● 方法は、以下の手順を行うステップレート(一過性)試験である。
i.1s(1s遅延)に対し、0/sのレートを適用する。
ii.5sに対し、5/sを適用する。
● 結果は粘度対時間の曲線で示される。
7.この曲線の粘度のピーク値(別名「瞬間粘度」)を記録する。
8.25℃でPSについてステップ1〜7を繰り返す−少なくとも3回
9.40℃でPSについてステップ1〜7を繰り返す−少なくとも3回
10.25℃でのPSの瞬間粘度の平均値、及び40℃での値を別個に計算する。
11.最後に以下を計算する。
● 「瞬間粘度比」=(40℃における組成物の平均瞬間粘度)/(25℃における組成物の平均瞬間粘度)
【0083】
以下の実施例は、本発明の範囲内にある実施形態を更に説明し、かつ、実証する。これら実施例は、説明の目的のためのみに提示するものであって、本発明を限定するものと解釈すべきではない。本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく、これらの多くの変更が可能である。
【実施例】
【0084】
本発明のある実施形態のいくつかの非限定例を以下に示す。
【表1】

【0085】
実施例I Aの組成物は、以下の方法により調製される。すなわち、1)65℃に設定した乾燥器内でペトロラタムを溶融し、2)部分Aのすべての粉末を乳棒及び乳鉢に入れて混合し、3)低下させた温度で香味料及び染料を、溶融したペトロラタムに加えて、へらでかき混ぜ、5)1000RPMで2分間混合した後取り出し、へらで物質を壁からかきとる。
【0086】
実施例I Bの組成物は以下の方法により調製される。1)65℃に設定した乾燥器内でペトロラタムを溶融し、2)すべての粉末をグリセリンに加えて分散させ、3)すべての液体成分、懸濁液成分、及びPEG 40−水素化ヒマシ油を溶融ペトロラタムに加えて、へらでかき混ぜ、4)1000RPMで2分間混合した後取り出し、へらで物質を壁からかきとる。
【0087】
実施例Iの組成物は、接着剤成分、非水溶性成分、及び口腔ケア活性物質を含有する口腔ケア組成物の例である。実施例Iの組成物は、歯磨きジェルとして使用できる。これらは、口腔の全域又は一部にブラシで塗布、又は展延でき、長持続性の利点を提供する。実施例I Aの組成物は、歯石予防効果の他に、口内の清潔感及び口臭の清涼感も提供できる。実施例I Bの組成物Aは、歯の漂白、抗菌効果、及び口臭の清涼感を提供できる。実施例I Bの組成物Bは、抗菌効果及び口臭の清涼感を提供できる。実施例I Bの組成物Cは、口内の清潔感及び口臭の清涼感を提供できる。
【0088】
実施例IIA−歯科用組成物
【表2】

【0089】
実施例IIB−歯科用組成物
【表3】

【0090】
実施例IIの口腔ケア組成物は、以下の手順により調製される。1)90℃に設定した乾燥器内でワックスを溶融し、2)粉末成分を広口びん内で振とうして混合、並びに塊を除去し、3)工程2で得られた粉末混合物を溶融ワックスに加えて、へらでワックスに混ぜ込み、4)1000RPMで2分間混合し、物質をへらで壁からかき取り、5)更に4分間混合する。その後、このサンプルを冷却し、シート状に押出成形し、例えば直径1cmの小円に切り取る。
【0091】
実施例IIの口腔ケア組成物を予備成形する。これらの予備成形された組成物は、口腔内、例えば歯に配することができる。例えば抗菌効果といった、局所的な処置が望ましい場合のこれらの適用については、口腔ケア組成物を、処置が望まれる領域に置く。実施例II Aの組成物Aは、抗菌効果、歯肉炎予防効果、悪臭予防効果を提供できる。実施例II Aの組成物B〜Dは、抗菌効果を提供できる。実施例II Bの組成物Aは、抗菌効果、歯肉炎予防効果、及び虫歯予防効果を提供できる。実施例II Bの組成物B及びCは、歯の漂白、抗菌効果、及び口臭の清涼感を提供する。組成物D及びEは、口内の清潔感及び口臭の清涼感を提供する。
【0092】
実施例IIIA−腐食性細片
【表4】

【0093】
実施例IIIB−腐食性細片
【表5】

【0094】
実施例IIIの口腔ケア組成物は、以下の手順により調製される。1)90℃に設定した乾燥器内で、ワックスを溶融し、2)粉末成分をそれぞれ乳棒及び乳鉢に入れ、3)へらで固まりを処理しながら、過酸化カルバミド以外の全ての粉末成分を広口びん内で振とうして混合し、4)香味油を溶融ワックスに加え、へらでかき混ぜ、5)工程3で得られた粉末混合物を溶融ワックスに加えて、へらでワックス中に混ぜ込み、6)1000RPMで2分間混合し、全ての物質をへらで壁からかき取り、7)約60℃未満の温度で過酸化カルバミドを加え、へらでワックスに混ぜ込み、8)更に4分間ミキサー中で混合し、9)混合物を一晩冷却させ、10)混合物が室温に達すれば、混合物を厚さ0.7mmの細片に押出成形し、11)所望の形状、例えば直径1cmの円盤状又は1.5cm×7.5cmの大きさの細片に打ち抜く。
【0095】
実施例IIIの口腔ケア組成物は、腐食性細片の形態である。これらの組成物は口腔に適用できる。実施例IIIの組成物は、少なくとも1本の歯に適用でき、それらの効果を提供するため、経時的に生体内腐食させる。提供される効果として、歯の漂白、抗菌効果、及び口臭の清涼感を含むことができる。
【0096】
実施例IV−口腔ジェル
【表6】

【0097】
実施例IVの口腔ケア組成物は、以下の手順により調製される。1)粉末を乳房及び乳鉢で混合し、2)粉末をグリセリン中に分散させ、すべての液体成分を混合し、3)これら液体成分を粉末に加えて、へらでかき混ぜ、4)この混合物を1000RPMで2分間混合する。
【0098】
実施例IVの口腔ケア組成物は、口腔ジェルの形態である。これらの組成物は、口腔、例えば歯に、ブラシで塗布してもよく、口内の清潔感及び口臭の清涼感を提供できる。
【0099】
上記の実施例において、ポリエチレンAC 6702を、微結晶ワックスの代わりに用いることができる。
【0100】
実施例の成分は、複合組成物及び効果を提供するため、混合してもよい。
【0101】
「発明を実施するための形態」で引用したすべての文献は、関連部分において本明細書に参考として組み込まれるが、いずれの文献の引用も、それが本発明に関して先行技術であることを容認するものとして解釈されるべきではない。
【0102】
本発明の特定の実施形態について説明し記載したが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正が可能であることが当業者には自明である。したがって、本発明の範囲内にあるそのようなすべての変更及び修正を、添付の特許請求の範囲で扱うものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)接着剤成分と、
b)非水溶性成分、粘度指数向上剤、又はそれらの組み合わせと、
c)口腔ケア活性物質と、
を含み、口腔の少なくとも一部分に適用するように適合される、口腔ケア組成物。
【請求項2】
前記接着剤成分が、前記口腔ケア組成物の約10.0重量%〜約60.0%の量で存在する、請求項1に記載の口腔ケア組成物。
【請求項3】
前記粘度指数向上剤が、前記口腔ケア組成物の約0.001重量%〜約90.0重量%の量で存在する、請求項2に記載の口腔ケア組成物。
【請求項4】
前記非水溶性成分が、約30%〜約70%の量で存在する、請求項2に記載の口腔ケア組成物。
【請求項5】
前記粘度指数向上剤が、ポリメタクリレート類、オレフィン共重合体類、水素化スチレン−ジエン共重合体類、スチレンポリエステル類、ゴム、ポリ塩化ビニル、ナイロン、フッ化炭素、ポリウレタンプレポリマー、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、セルロース系樹脂類、アクリル樹脂類、微結晶ワックス、エラストマー類、及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項3に記載の口腔ケア組成物。
【請求項6】
前記粘度指数向上剤が、微結晶ワックス、ポリエチレン、ゴム、エラストマー類、又はそれらの混合物を含む、請求項3に記載の口腔ケア組成物。
【請求項7】
非水溶性成分を更に含む、請求項3に記載の口腔ケア組成物。
【請求項8】
前記非水溶性成分が、ペトロラタム、ポリ酢酸ビニル、天然油類、合成油類、脂肪類、シリコーン、シリコーン誘導体類、ジメチコン、シリコーン樹脂類、炭化水素類、炭化水素類誘導体類、ポリブテン、オレイン酸、ステアリン酸、精油類、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド類、又はこれらの混合物を含む、請求項7に記載の口腔ケア組成物。
【請求項9】
前記組成物が、チューブから分注可能である、請求項7に記載の口腔ケア組成物。
【請求項10】
前記粘度指数向上剤が、前記口腔ケア組成物の約0.001重量%〜約10.0重量%の量で存在する、請求項9に記載の口腔ケア組成物。
【請求項11】
前記接着剤成分が、前記口腔ケア組成物の約20.0重量%〜約55.0%の量で存在する、請求項10に記載の口腔ケア組成物。
【請求項12】
前記非水溶性成分が、前記口腔ケア組成物の約20重量%〜約70重量%の量で存在する、請求項11に記載の口腔ケア組成物。
【請求項13】
前記組成物が、予備成形されている、請求項3に記載の口腔ケア組成物。
【請求項14】
前記粘度指数向上剤が、約40%〜約60%の量で存在し、前記接着剤成分が、約30%〜約50%の量で存在する、請求項13に記載の口腔ケア組成物。
【請求項15】
前記活性物質が、抗菌剤、虫歯予防剤、歯垢予防剤、歯石予防剤、防カビ剤、悪臭予防剤、抗炎症剤、腐食防止剤、漂白剤、保湿剤、口臭清涼剤、歯肉炎予防剤、知覚過敏予防剤、歯周病予防剤、抗寄生虫剤、及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項3に記載の口腔ケア組成物。

【公表番号】特表2011−522053(P2011−522053A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512572(P2011−512572)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/045887
【国際公開番号】WO2009/149030
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】