口腔内局所投与に適したウイルス感染予防製剤

【課題】カフェインを有効成分とし、口腔内局所投与に適したウイルス、特にインフルエンザウイルス感染を予防する製剤を提供する。
【解決手段】口腔内局所投与によって有効成分を口腔内に滞留させるのに適した担体に担持させたカフェインを含むインフルエンザウイルス感染予防製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カフェインを有効成分とする口腔内局所投与に適したウイルス、特にインフルエンザウイルス感染予防製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
新型インフルエンザを含む、A型およびB型インフルエンザの感染経路は、感染者のくしゃみや咳によってウイルスが直接周囲の人の呼吸器に侵入する「飛抹感染」、ウイルスに汚染された器物に触れた手を介し、目、鼻、口などの粘膜からウイルスが侵入する「接触感染」、感染者と同じ空間に居ることにより空気中に浮遊しているウイルスが侵入する「空気感染」がある。インフルエンザ予防にはこれらの感染経路からのウイルスの侵入を防ぐことが有効な対策である。
【0003】
マスクの着用およびうがいの励行は口腔を介する感染の予防手段であるが、ポビドンヨードやグルコン酸クロルヘキシジンなどの殺菌作用のあるうがい薬によるうがいは、インフルエンザウイルスの撲滅には有効でなく、のどに常在する細菌叢を破壊し、却ってウイルスの侵入を許容し、のどの正常細胞に傷害を与える危険があるといわれる。グルコン酸クロルヘキシジンも同様に口腔内細菌叢の破壊の危険性がある。そのためうがい薬のような口腔内局所投与によるウイルス感染予防製剤の有効成分は選択的に抗ウイルス作用を有し、口腔内細菌叢を死滅させないことが重要である。
【0004】
カフェインがインフルエンザウイルスに対して抗ウイルス作用を有することは既に報告されており(非特許文献1参照)、そのような有効成分の候補薬物である。
【0005】
カフェインは、強い中枢神経刺激作用を有し、強心薬、中枢興奮薬、利尿薬、片頭痛鎮痛薬などに使用されている。大脳皮質に作用し、眠気を除去することから、特に抗ヒスタミン剤を配合した感冒薬に処方されている。
【0006】
最近、血中のLDLコレステロールを低下させる作用を有するスタチン類と、カフェインとの合剤がウイルス、特にA型およびB型インフルエンザウイルス感染の処置および予防に有効であることが報告された(特許文献1参照)。
【0007】
カフェインは、沃化カリウムおよび塩化アンモニウムとの混合物の形で、ウマのウイルス、特にヘルペスウイルスI型感染の治療剤に処方される(特許文献2参照)。
【0008】
これまで述べた抗ウイルス剤としてのカフェインの用途は、経口投与、非経口投与および経鼻投与を含む全身投与を意図している。これに対し、表層感染部位へ局所投与される、カフェインと局所投与に適した賦形成分とからなる、単純ヘルペスウイルス感染治療用組成物も知られている(特許文献3参照)。
【0009】
【非特許文献1】Prahoveanu,E.et al,“Effect of caffeine on experimental influenza in mice”,Virologie,1985,36(1):37−40.
【特許文献1】WO2008/034832 A1
【特許文献2】特開平5−112457号公報
【特許文献3】特許第3180221号公報
【0010】
しかしながら、口腔を介するインフルエンザウイルスの感染予防のため口腔内局所投与に適した製剤の有効成分としてカフェインを使用することは知られていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って本発明の課題は、カフェインを有効成分とし、口腔内局所投与に適したウイルス感染予防製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、口腔内局所投与によって有効成分を口腔内に滞留させることができる担体に担持させたカフェインを含む、口腔内局所投与に適したインフルエンザウイルス予防製剤を提供する。
【0013】
カフェインの効果はウイルスの増殖を抑制することにあるから、口腔を介してウイルス感染を予防するためにはカフェインの口腔内滞留を持続させる必要がある。このため本発明では、剤形に応じてカフェインを担持させる担体が増粘作用を有する水溶性高分子(増粘剤)および/またはとろみ成分を含んでいる。
【0014】
剤形は、含嗽液、口腔用スプレー剤のような液剤か、または使用時適量の水に溶解して含嗽液を調製するための発泡錠、口中に含むことによって徐々に有効成分を放出するトローチ、ドロップなどの固形製剤である。固形製剤には賦形成分の一部として増粘作用を有する水溶性高分子(増粘剤)が添加され、液剤にはとろみ成分が添加される。
【0015】
そのような水溶性高分子には、ゼラチン、カゼイン、ヒアルロン酸、トラガントガム、キサンタンガム、ペクチン、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、グルコマンナンのような天然高分子;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルメロースナトリウムのような水溶性セルロース系高分子;およびポビドン、クロスポビドン、コポリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウムのような水溶性合成高分子が含まれる。
【0016】
とろみ成分には、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタンのような常温で粘稠な液体が含まれる。液剤には、とろみ成分と、増粘作用を有する水溶性高分子を併用しても良い。
【0017】
上で例示した固形製剤や液剤の製造方法は当業者には良く知られている。本発明のウイルス感染予防製剤は、有効成分としてカフェインを使用し、賦形成分の一部として水溶性高分子および/またはとろみ成分を使用して公知の製造方法に準じて製造することができる。固形製剤は、デンプン、糖類、糖アルコールなどの賦形剤、滑沢剤、発泡錠の場合は発泡剤など、液剤の場合は保存剤などの慣用の添加剤を含むことができる。
【実施例】
【0018】
以下いくつかの処方例を挙げ、本発明を更に詳しく説明する。
【0019】
〔実施例1〕含嗽剤(発泡錠)
製造方法は以下の通りである。
カフェイン 1kg、ポビドンK30 0.4kg、乾燥炭酸水素マグネシウム 1kg、無水クエン酸 1kg、乳糖 0.76kg、カルメロース 0.2kg、ステアリン酸マグネシウム 0.04kg、ハッカ油微量を加えて混合し、乾式打錠法に従って発泡錠を調製する。
1回1錠を水50mLに入れて溶かし、うがいをする。これを1日数回行う。
【0020】

【0021】
〔実施例2〕含嗽剤(液剤)
製造方法は以下の通りである。
ハッカ油 0.05gをポリオキシエチレン硬化ヒマシ油8gと混合する。これにD−ソルビトール 10g、グリセリン 200g、マクロゴール400 100g、精製水 300gを混合撹拌したのち、カフェイン2gを加え約60℃に加温して溶かす。冷後精製水で1Lとする。
1回50mLをとり、うがいをする。これを1日数回行う。
【0022】

【0023】
〔実施例3〕口腔用スプレー剤
製造方法は以下の通りである。
カフェイン 1gを精製水 40mLに溶かす。これにゼラチン 1g及びポビドンK30 6gを加え約60℃に加温して溶かす。冷後、濃グリセリン 45g及びl−メントール微量を加え、精製水で100mLとする。これをノズルのついたスプレー容器に充てんする。
のどに直接噴霧する。1日数回噴霧する。
【0024】

【0025】
〔実施例4〕口腔用スプレー剤
製造方法は以下の通りである。
カフェイン 1gを精製水 40mLに溶かす。これにペクチン 1g、カラギーナン 1g及びポビドンK25 8gを加え約60℃に加温して溶かす。冷後、濃グリセリン 40g及びl−メントール微量を加え、精製水で100mLとする。これをノズルのついたスプレー容器に充てんする。
のどに直接噴霧する。1日数回噴霧する。
【0026】

【0027】
〔実施例5〕口腔用錠剤(ドロップ剤)
製造方法は以下の通りである。
カフェイン 25g、ヒドロキシプロピルセルロース 250g、ゼラチン 225g、白糖 1000g、水あめ 500gをアルミ鍋に仕込み、精製水を適当量入れて混練しながら、直火形方式で加熱し、該混練物が150℃となった時、一時火を小さくしてからカカオ微量を添加し十分撹拌した上で水盤にこぼし適温に冷えた時点で延ばしながらドロップ機に通す。
1個ずつ口中で溶かすか、噛み砕く。1回2個までを1日3回まで。
【0028】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔内局所投与によって有効成分を口腔内に滞留させるのに適した担体に担持させたカフェインを含むインフルエンザウイルス感染予防製剤。
【請求項2】
剤形が含嗽液、使用時適量の水に溶解して含嗽液を調製するための固形製剤、口腔スプレー剤、または口中に含むことによって唾液により徐々に有効成分を放出する固形製剤である請求項1のインフルエンザウイルス感染予防製剤。
【請求項3】
前記担体は、増粘作用を有する水溶性高分子を含んでいる請求項1または2のインフルエンザウイルス感染予防製剤。
【請求項4】
前記水溶性高分子は、ゼラチン、カゼイン、ヒアルロン酸、トラガントガム、キサンタンガム、ペクチン、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、グルコマンナンのような天然高分子;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルメロースのような水溶性セルロース系高分子;およびポビドン、クロスポビドン、コポリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウムのような水溶性合成高分子から選ばれる請求項3のインフルエンザウイルス感染予防製剤。
【請求項5】
前記担体は液状であり、とろみ成分を含んでいる請求項1または2のインフルエンザウイルス感染予防製剤。
【請求項6】
前記とろみ成分は、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールおよびポリオキシエチレンソルビタンから選ばれる請求項5のインフルエンザウイルス感染予防製剤。

【公開番号】特開2011−111418(P2011−111418A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−269688(P2009−269688)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000222200)東洋カプセル株式会社 (14)
【Fターム(参考)】