説明

口腔用組成物

【課題】銅化合物を含み、歯周病及び口臭抑制・改善効果に優れ、さらに、銅による使用感の悪さを改善した口腔用組成物を提供する。
【解決手段】(A)グルコン酸銅及び/又は硫酸銅もしくはそれらの水和物:銅として0.005〜0.2質量%、(B)アラントイン又はその誘導体:アラントインとして0.005〜2質量%、(C)HLB値が6〜20の非イオン性界面活性剤:0.01〜3質量%を含有することを特徴とする口腔用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯周病及び口臭の抑制効果に優れた口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
歯周病及び口臭は、口腔内の特定の細菌が原因となり生じる。例えば、歯周病の原因菌としてポルフィロモナス ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、口臭の原因菌としてフゾバクテリウム ヌクリエタム(Fusobacterium nucleatum)が知られている。そこで、歯周病及び口臭の予防を目的として、これら病原菌に対して抗菌作用を有する、銅、亜鉛、銀等の金属を用いた口腔用組成物が提案されている(例えば、特許文献1:特開平05−163125号公報、特許文献2:特開平07−165544号公報、特許文献3:特開2006−176416号公報参照)。
【0003】
しかし、金属の抗菌性は殺菌剤には及ばず、その効果は十分ではなかった。配合量を増加することで効果を高めることは出来るが、これらの金属には、金属特有の渋味、苦味があり、口腔用組成物として用いるには嗜好性に大きな課題があった。
【0004】
嗜好性を改善する方法として、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油とl−メントールとを組合せる方法(特許文献4:特開昭63−008324号公報)、多価アルコールとアネトールとを組み合わせる方法(特許文献5:特開2004−203894号公報)、非イオン性の界面活性剤と特定のカルボキシメチルセルロースとを組み合わせる方法(特許文献6:特開2000−178150号公報)、キシリトールと特定のポリフェノールとを組み合わせる方法(特許文献7:特開平11−180840号公報)等が提案されている。しかし、その効果は十分ではなく、さらに検討の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05−163125号公報
【特許文献2】特開平07−165544号公報
【特許文献3】特開2006−176416号公報
【特許文献4】特開昭63−008324号公報
【特許文献5】特開2004−203894号公報
【特許文献6】特開2000−178150号公報
【特許文献7】特開平11−180840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、金属化合物を用いた、歯周病抑制・改善効果に優れ、さらに、金属由来の使用感の悪さを改善した口腔用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、銅として0.005〜0.2質量%のグルコン酸銅及び/又は硫酸銅もしくはそれらの水和物に、アラントイン又はその誘導体とHLB値が6.0〜20の非イオン性の界面活性剤とを組合せることで、高い歯周病治療効果が得られるだけではなく、高い口臭抑制効果が得られること、さらには、銅由来の苦味に由来する使用感の悪さを改善できることを見出し、本発明をなすに至った。なお、上記銅化合物の代わりに亜鉛化合物を用いても、亜鉛化合物にはこのような併用による作用はなく、銅化合物に特異的に認められた上記作用は本発明者による新知見である。
【0008】
従って、本発明は、下記口腔用組成物を提供する。
[1].(A)グルコン酸銅及び/又は硫酸銅もしくはそれらの水和物:銅として0.005〜0.2質量%、(B)アラントイン又はその誘導体:アラントインとして0.005〜2質量%、(C)HLB値が6〜20の非イオン性界面活性剤:0.01〜3質量%を含有することを特徴とする口腔用組成物。
[2].(A)成分の銅と(B)成分との割合が質量比で(A)/(B)=1/100〜3/1である[1]記載の口腔用組成物。
[3].(C)成分の非イオン性界面活性剤のHLB値が9〜16である[1]又は[2]記載の口腔用組成物。
[4].(C)成分の非イオン性界面活性剤が、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれるものである[1]〜[3]のいずれかに記載の口腔用組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の口腔用組成物は、銅化合物を含み、歯周病と口臭の抑制・改善効果に優れ、さらに、銅による使用感の悪さを改善したものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明で用いる(A)成分のグルコン酸銅及び硫酸銅としては、無水物だけではなく、硫酸銅5水和物等の結晶水を含む水和物を用いることができる。
【0011】
本発明において、これら銅化合物は1種以上含有されていればよく、その配合量は、銅として組成物全体の0.005〜0.2質量%、好ましくは0.01〜0.1質量%である。銅の配合量が0.005質量%未満では歯周病及び口臭抑制効果が十分でなく、0.2質量%を超えると使用感の改善効果が十分でなくなる。
【0012】
次に、本発明で使用する(B)成分のアラントインとしては、アラントインクロルヒドロキシアルミニウムやアラントインジヒドロキシアルミニウム等の誘導体を用いることもできる。その配合量は、アラントインとして組成物全体の0.005〜2質量%、好ましくは0.01〜1質量%である。配合量が0.005質量%未満では歯周病及び口臭抑制効果が十分でなく、2質量%を超えるとアラントイン自体の苦味等の問題が顕著になり、使用感の改善効果が十分でなくなる可能性がある。
【0013】
本発明において、(A)成分の銅の量と(B)成分の配合量(アラントイン換算)は、(A)/(B)が質量比で1/100〜3/1が好ましく、さらに好ましくは3/100〜6/10となるように上記配合量の範囲内で選択することができる。(A)/(B)の質量比が1/100未満及び3/1を超えると、併用による歯周病、口臭抑制効果及び使用感改善効果が小さくなる場合がある。
【0014】
本発明に用いる非イオン性界面活性剤は、配合する非イオン性界面活性剤のHLB値が6〜20、さらに6.5〜20、特に9〜16となるように選択することが、歯肉炎抑制効果、使用感(苦味改善)を良好とするため好ましい。
【0015】
HLB(Hydrophile−Lipophile Balance)値とは、界面活性剤の水及び油への親和性を示す数値で、1949年にウィリアム・グリフィンによって提唱された。HLB値は下記式により定義され、0〜20までの値をとる。HLB値が0に近いほど親油性が高く、20に近いほど親水性が高くなる。2種以上の非イオン性界面活性剤を混合した時のHLB値は、各非イオン性界面活性剤のHLB値の加重平均となる。すなわち、非イオン性界面活性剤A(HLB値 5)0.2質量%と非イオン性界面活性剤B(HLB値 15)0.8質量%を配合した場合のHLB値は、(5×0.2+15×0.8)/(0.2+0.8)=13となる。
HLB値=20×(親水性部分の分子量総和)/(界面活性剤の分子量)
【0016】
本発明に用いる非イオン性界面活性剤としては、多価アルコールと脂肪酸がエステル結合でつながっている多価アルコール型、高級アルコールやアルキルフェノール等の水酸基を持つ疎水性原料に主として酸化エチレン(エチレンオキサイド)が付加したタイプ、脂肪酸や多価アルコール脂肪酸エステルに酸化エチレンを付加したタイプのポリエチレングリコール型のものが好適であり、多価アルコールとしてはショ糖、ソルビタン、又はポリグリセリンが好適である。
【0017】
多価アルコール型としては、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられ、中でもショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルが好ましい。
【0018】
ポリエチレングリコール型としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油等が挙げられ、なかでも、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが好ましい。これら非イオン性界面活性剤は、1種を単独で又は2種以上を組合わせて使用できる。
【0019】
非イオン性界面活性剤のHLB値は、非イオン性界面活性剤の疎水性部分を構成するアルキル基や脂肪酸の炭素数、及び、多価アルコール、ポリグリセリン、ポリエチレングリコール等の水酸基へエステル結合する脂肪酸の数、さらに、親水性部分を構成するエチレンオキサイドの付加モル数、ポリグリセリン、ポリエチレングリコールの重合度により任意の値に調整することができ、用いる非イオン性界面活性剤のHLB値が6.0〜20、特に9〜16となるように選択することができる。
【0020】
例えば、ショ糖脂肪酸エステルとしては、脂肪酸炭素数が10〜22、好ましくは炭素数が12〜18である。エステル化可能な脂肪酸の数は、最大6つあるが、1つの脂肪酸をエステル化したモノエステルの含有率が50質量%以上、好ましくは70質量%以上のものが好ましい。
【0021】
このようなショ糖脂肪酸エステルは市販されているものを用いることができ、例えば、三菱化学フーズ社製の、サーフホープJ−1811、J−1815、J−1816、J−1216、J−1416等がある。
【0022】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、エチレンオキサイドの平均付加モル数が5〜100、好ましくは20〜100のものを用いることができる。
【0023】
このようなポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては市販されているものを用いることができ、例えば、日光ケミカルズ社製のHCO−5、HCO−10、HCO−20、HCO−30、HCO−40、HCO−50、HCO−60、HCO−80、HCO−100、日本エマルジョン社製のEMALEX HC−5、HC−10、HC−20、HC−30、HC−40、HC−50、HC−60、HC−80,HC−100等がある。
【0024】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、エチレンオキサイドの平均付加モル数が2〜50で、好ましくは6〜40である。アルキル基の炭素数は12〜22、好ましくは、12〜18のものを用いることができる。このようなポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、日光ケミカルズ社製のBL−2、BL−21、BC−2、BC−7、BC−15、BC−25、BS−20、BO−10V、BB−10、日本エマルジョン社製の、EMALEX105、110、115、120、130、510、520、550、602、605、615、620、625、630、640、703、705、710、715、720、730、750、BHA−5、BHA−10、BHA−20、BHA−30等がある。
【0025】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、エチレンオキサイドの平均付加モル数が5〜30、好ましくは10〜20である。脂肪酸の炭素数としては12〜22、好ましくは14〜18である。また、脂肪酸エステルは、モノエステルが好ましい。このようなポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、日光ケミカルズ社製のTS−10MV、TS−30V、TO−10MV等がある。
【0026】
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、グリセリンの重合度が4〜20、好ましくは6〜10である。脂肪酸の炭素数としては8〜22、好ましくは10〜18で、脂肪酸エステルはモノエステルが好ましい。このようなポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、日光ケミカルズ社製のNIKKOL Hexaglyn 1−SV、Decaglyn 1−L、Decaglyn 1−SV、阪本薬品工業社製の、ML−750、ML−500、MO−7S、MSW−7S、SYグリスターDML−3等がある。
【0027】
なお、非イオン性界面活性剤の配合量は、組成物全体の0.01〜3質量%、好ましくは0.1〜1.5質量%である。配合量が0.01質量%未満では歯周病及び口臭抑制効果が十分でなく、3質量%を超えると非イオン性界面活性剤による苦味や油っぽさが強くなるおそれがある。
【0028】
さらに、本発明においては、(A)成分(グルコン酸銅又は硫酸銅もしくそれらの水和物)、(B)成分(アラントイン又はその誘導体)、(C)成分(HLB値が、6.0〜20の非イオン性の界面活性剤)を含有するが、(A)成分中の銅/(B)成分が質量比で1/100〜3/1、かつ、非イオン性界面活性剤のHLBが9〜16であることが好ましい。
【0029】
本発明の口腔用組成物は、上記したように、グルコン酸銅又は硫酸銅もしくはそれらの水和物に、アラントイン又はその誘導体、及び、HLB値が6.0〜20の非イオン性界面活性剤とを含有し、練歯磨、潤製歯磨、液体歯磨等の歯磨剤、洗口剤、ゲル剤、軟膏剤、口中清涼剤、うがい用錠剤、口腔用パスタ、ガム等の各種剤型に調製することができる。これら製剤は、上記必須成分に加えて、その剤型に応じてその他の成分を本発明の効果を損ねない範囲で配合することができ、通常の方法で調製することができる。
【0030】
その他の成分としては、例えば歯磨類の場合には、各種研磨剤、湿潤剤、粘結剤、界面活性剤、甘味料、香料、着色剤、防腐剤、その他の有効成分等を、本発明の効果を妨げない範囲で通常量で用いることができる。
【0031】
研磨剤としては、沈降性シリカ、シリカゲル、アルミノシリケート、ゼオライト、ジルコノシリケート、第2リン酸カルシウム・2水和物及び無水物、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、不溶性メタリン酸カリウム、酸化チタン、ハイドロキシアパタイト、合成樹脂系研磨剤等が挙げられる(配合量:通常、組成物全体に対して5〜50質量%)。
【0032】
湿潤剤としては、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール等が挙げられる(配合量:通常、組成物全体に対して10〜50質量%)。
【0033】
粘結剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、キサンタンガム、タラガム、グアガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、ゼラチン、カードラン、アラビアガム、寒天、ペクチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、プルラン等が挙げられる(配合量:通常、組成物全体に対して0.1〜5質量%)。
【0034】
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤の他に、アニオン性界面活性剤、及びカチオン性界面活性剤、両性界面活性剤を配合し得る。アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸ナトリウム、N−ラウロイルサルコシンナトリウム、N−ミリストイルサルコシンナトリウム等のN−アシルサルコシンナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、水素添加ココナッツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、N−パルミトイルグルタミン酸ナトリウム等のN−アシルグルタミン酸塩、N−メチル−N−アシルタウリンナトリウム、N−メチル−N−アシルアラニンナトリウム、α−オレフィンスルフォン酸ナトリウム等が挙げられる(配合量:通常、組成物全体に対して0〜5質量%、特に0.1〜5質量%)。
【0035】
しかし、アニオン性界面活性剤は、使用感の改善効果を抑制する傾向があるため、用いないほうが好ましい。
【0036】
有効成分としては、上記銅化合物とアラントインの他に、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸塩、フッ化スズ等のフッ化物、アスコルビン酸塩、トコフェロールエステル等のビタミン類、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム等の酵素、オウバクエキス、オウゴンエキス、チョウジエキス等の生薬成分、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化デカリニウム、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、ヒノキチオール等の殺菌剤、塩化ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、オルソリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、乳酸アルミニウム、キトサン等の無機塩類や有機塩類等である。なお、これら有効成分の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で有効量とすることができる。
【0037】
甘味剤としては、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、ステビアエキス、パラメトキシシンナミックアルデヒド、ネオヘスペリジルヒドロカルコン、ペリラルチン等が挙げられる。
着色剤としては、青色1号、黄色4号、二酸化チタン等が挙げられる。
防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
香料としては、l−メントール、カルボン、アネトール、リモネン等のテルペン類又はその誘導体やペパーミント油等が挙げられる。
pH調整剤としては、クエン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸及びこれらの塩等が挙げられる。
【実施例】
【0038】
以下、実験例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。なお、本発明で用いた、グルコン酸銅、硫酸銅5水和物、グルコン酸亜鉛、アラントイン、グリチルリチン酸ジカリウム、非イオン性界面活性剤は下記の通りである。
【0039】
【表1】

【0040】
[実験例1]
成人男性を対象に、歯肉炎の評価及び口臭の評価を行い、歯肉炎評点が0.5点以上1.5点未満、及び、口臭の強度が2点以上3点未満の者を被験者として選定した。被験者は、歯肉炎及び口臭の評点の平均がほぼ同じ値となるように25群に分け(各群5名)、表2及び3に記載の試験組成物約10mLを1日2回、約20秒間洗口使用させた。4週間後に、再び歯肉炎及び口臭の評価を行い、下記評価基準により試験組成物の歯肉炎抑制効果及び口臭抑制効果を求めた。また、試験終了時に、試験組成物の味について使用感の評価を行った。
【0041】
<歯肉炎の評価>
代表歯6歯(左右の上顎2、6番及び下顎の4番)について、各歯の舌側面の近心、遠心及び頬側面の近心、遠心の4部位、すなわち総部位数24部位(6歯×4部位)に対して下記評価基準により歯肉炎を評価し、24部位の平均値を求めた。さらに、下記式により、歯肉炎改善度を求め、試験組成物の効果を下記判定基準により求めた。
<歯肉炎の評価基準>
0点:炎症は認められない。
1点:軽度の炎症。わずかな色調変化があるが、プロービングにより出血は認められない。
2点:中等度の炎症。発赤、浮腫、腫脹があり、プロービングにより出血が認められる。
3点:重度な炎症。著しい発赤、自然出血が認められる。
【0042】
<歯肉炎改善度の算出式>
(歯肉炎改善度)=(A−B)/(各群の被験者数)
但し、A=(各被験者の試験前の歯肉炎評点24部位平均値の合計)
B=(各被験者の試験後の歯肉炎評点24部位平均値の合計)
<試験組成物の歯肉炎抑制効果判定基準>
◎:顕著な効果あり。歯肉炎改善度が、0.5点以上。
○:効果あり。歯肉炎改善度が、0.25点以上0.5点未満。
△:若干の効果あり。歯肉炎改善度が、0点より大きく0.25点未満。
×:効果なし。歯肉炎改善度が、0点以下。
【0043】
<口臭の評価>
テドラバッグに採取した呼気1リットルの口臭強度を、専門評価者が下記評価基準に従い評価した。さらに、下記式により、口臭改善度を求め、試験組成物の口臭抑制効果を下記判定基準により求めた。
<口臭強度の評価基準>
0点:口臭は認められない。
1点:わずかな口臭が認められる。
2点:口臭が認められる。
3点:著しい口臭が認められる。
【0044】
<口臭改善度の算出式>
(口臭改善度)=(試験開始前の口臭強度平均値)−(試験後の口臭強度平均値)
なお、口臭強度平均値は、各群被験者の口臭強度を平均した値である。
<試験組成物の口臭抑制効果判定基準>
◎:顕著な効果あり。口臭改善度が、1.5点以上。
○:効果あり。口臭改善度が、1.0点以上1.5点未満。
△:若干の効果あり。口臭改善度が、0.5点以上1.0点未満。
×:効果なし。口臭改善度が、0.5点未満。
【0045】
<使用感評価>
使用感を下記評価基準にて評価し、その平均値から、下記判定基準により判定した。
<使用感の評価基準>
0点:苦みを感じない。
1点:苦みをほとんど感じない。
2点:苦みを若干感じる
3点:苦みを感じる。
4点:苦みを強く感じる。
<使用感の判定基準>
◎:使用感の平均値が、0点以上0.5点未満。
○:使用感の平均値が、0.5点以上1.5点未満。
△:使用感の平均値が、1.5点以上2.5点未満。
×:使用感の平均値が、2.5点以上。
【0046】
【表2】

【0047】
【表3】

【0048】
表2から明らかなように、(A)成分(グルコン酸銅又は硫酸銅)、(B)成分(アラントイン)、(C)成分(HLB値が6.0〜20の非イオン性界面活性剤)の併用により、高い歯肉炎抑制効果及び口臭抑制効果が得られ、銅化合物の苦味による使用感の悪さが改善されたことが分かる。また、(A)成分の銅と(B)成分が、(A)成分の銅/(B)成分の質量比で、1/100〜3/1のとき、さらに、(A)成分の銅/(B)成分の質量比が3/100〜6/10かつ配合する(C)成分全体のHLB値が9〜16のときに、より一層高い歯肉炎及び口臭抑制効果、使用感の改善効果が得られることが分かる。さらに、組成物中にアニオン性活性剤であるラウリル硫酸ナトリウムを含まないほうが好ましいことが分かる。
【0049】
表2,3から、(A)成分の銅化合物の配合量が銅として0.005質量%に満たないとき及び0.2質量%を超えるとき、銅化合物に代えて抗菌性を有する同じ金属化合物であるグルコン酸亜鉛を使用したとき、また、(B)のアラントインに代えて同じ抗炎症剤として使用されるグリチルリチン酸ジカリウムを使用したとき、さらに、(C)の代わりにアニオン性活性剤であるラウリル硫酸ナトリウム及び製剤中の非イオン性界面活性剤のHLB値が6.0より小さい場合では本発明の効果は得られないことが分かる。
【0050】
[実施例16]軟膏剤
硫酸銅5水和物(関東化学) 0.4
アラントイン(パーマケムアジア) 0.3
ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油 1.0
(日光ケミカルズ、商品名HCO−20、HLB値10.0)
グリセリン 10.0
流動パラフィン 15.0
香料 1.0
白色ワセリン バランス
合計 100.0%
【0051】
[実施例17]ゲル剤
硫酸銅5水和物(関東化学) 0.2
アラントイン(パーマケムアジア) 0.3
グリチルリチン酸ジカリウム 0.4
モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン 0.3
(日光ケミカルズ、商品名 TS−10MV、HLB値15.7)
モノステアリン酸ソルビタン 0.2
(日光ケミカルズ、NIKKOL SS−10V、HLB値4.7)
カルビキシビニルポリマ− 1.5
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.2
グリセリン 20.0
流動パラフィン 0.5
エタノール 5.0
香料 0.9
水 バランス
合計 100.0%
【0052】
[実施例18]歯磨剤
リン酸カルシウム 25.0
無水ケイ酸 5.0
ラウリル硫酸ナトリウム 1.2
キサンタンガム 1.0
カラゲナン 0.5
フッ化ナトリウム 0.2
アラントイン(パーマケムアジア) 0.03
グルコン酸銅(富田製薬) 0.1
ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油 1.0
(日光ケミカルズ、商品名HCO−40、HLB値13.3)
ソルビトール 15.0
キシリトール 10.0
香料 1.0
水 バランス
合計 100.0%
【0053】
[実施例19]歯磨剤
無水ケイ酸 15.0
ラウリル硫酸ナトリウム 1.0
キサンタンガム 0.5
アルギン酸ナトリウム 0.5
サッカリンナトリウム 0.1
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.1
アラントインクロルヒドロキシアルミニウム 0.05
(パーマケムアジア)
グルコン酸銅(富田製薬) 0.05
ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル 0.3
(日光ケミカルズ、商品名NIKKOL BS−20、HLB値15.7)
ソルビトール 10.0
エリスリトール 5.0
香料 1.0
水 バランス
合計 100.0%
【0054】
[実施例20]洗口剤
エタノール 10.0
グルコン酸銅(富田製薬) 0.1
アラントイン(パーマケムアジア) 0.05
ソルビトール 5.0
キシリトール 5.0
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 0.5
(日光ケミカルズ、商品名HCO−60、HLB値15.2)
サッカリンナトリウム 0.2
香料 0.8
水 バランス
合計 100.0%
【0055】
[実施例21]ガム
ガムベース 20.0
香料 1.0
水飴 20.0
粉糖 10.0
クエン酸3ナトリウム 1.5
アラントイン(パーマケムアジア) 0.01
グルコン酸銅(富田製薬) 0.05
ショ糖ステアリン酸エステル 0.5
(三菱化学フーズ、商品名サープホープJ−1816、HLB値16.0)
ソルビトール 15.0
キシリトール 10.0
水 バランス
合計 100.0%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)グルコン酸銅及び/又は硫酸銅もしくはそれらの水和物:銅として0.005〜0.2質量%、(B)アラントイン又はその誘導体:アラントインとして0.005〜2質量%、(C)HLB値が6〜20の非イオン性界面活性剤:0.01〜3質量%を含有することを特徴とする口腔用組成物。
【請求項2】
(A)成分の銅と(B)成分との割合が質量比で(A)/(B)=1/100〜3/1である請求項1記載の口腔用組成物。
【請求項3】
(C)成分の非イオン性界面活性剤のHLB値が9〜16である請求項1又は2記載の口腔用組成物。
【請求項4】
(C)成分の非イオン性界面活性剤が、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれるものである請求項1〜3のいずれか1項記載の口腔用組成物。

【公開番号】特開2010−189358(P2010−189358A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37699(P2009−37699)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】