説明

口臭を予防および/または治療するための使用および方法

唾液中のペプチド濃度を大幅に低下させることによって、口臭の原因因子である口内細菌叢の嫌気性微生物により用いられる基質を枯渇させることができる乳酸菌群に属する微生物が記載される。さらに、ストレプトコッカス・サリバリウスの増殖を刺激することができるが、ストレプトコッカス・ミュータンスおよび/もしくはポルフィロモナス・ギンギバリスの増殖は刺激しない、乳酸菌群に属する微生物が記載される。また、上記微生物を含む組成物、口臭および/もしくは臭い息を予防および/もしくは治療するためのその使用ならびに口臭および/もしくは臭い息を予防および/もしくは治療するための方法が記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、唾液中のペプチド濃度を大幅に低下させることにより、口臭の原因物質である口内微生物叢の嫌気性微生物により用いられる基質を枯渇させることができる乳酸菌群に属する微生物に関する。さらに、本発明は、ストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)の増殖を刺激することができるが、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)および/またはポルフィロモナス・ギンギバリス(Porphyromonas gingivalis)の増殖は刺激しない乳酸菌群に属する微生物に関する。
【0002】
本発明はまた、上記の微生物を含む組成物、口臭および/もしくは臭い息を予防および/または治療するためのその使用ならびに口臭および/もしくは臭い息を予防および/または治療するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
口腔衛生における一般的な問題は、慢性の口臭(臭い息)である。臭い息を治療するための普及している方法は、例えば、メントールを含む口内洗浄液またはチューイングガムの使用によって悪臭を隠すか、または中和することである。しかしながら、これらの方法は、短期間で有効であるだけで、長期間では有効ではない。従って、臭い息を予防または治療するための長期的な方法が必要である。この問題は、例えば、硫化水素およびメチルメルカプタンなどの「揮発性硫黄化合物(VSC)」を生成する嫌気性細菌の数を多かれ少なかれ減少させることを目標とする様々な方法によって、当業界の状態で解決されてきた。
【0004】
これらの細菌を減少させるための1つの記載された方法は、タンスクレーパーを用いて舌苔を除去して、舌から細菌増殖のための基質を排除することである。別の方法は、塩化亜鉛などの金属塩またはアルコールもしくはクロルヘキシジンなどの消毒剤を用いて舌を治療することである。しかしながら、これらの方法の欠点は、金属塩および消毒剤が、他の無害な、または有益でさえある口内微生物の増殖も同じく阻害してしまうことである。
【0005】
記載された臭い息を治療または予防するための1つの手法は、生理学的に正常なレベルに唾液のpHを維持することである。虫歯および粘膜感染と関連する微生物種は酸性のpHを好む;歯周病の発生と関連する微生物種は正常を超えるpHを好むが、良好な口腔衛生と関連する微生物種は中性のpHを好むことが知られている。この機構を使用するプロバイオティック細菌(例えば、ラクトバチルス(Lactobacillus)およびストレプトコッカス(Streptococcus))を含む組成物が、US200707137およびUS2006018843に開示されている。WO2007/077210は、通常は健康な口内微生物叢に存在する早期にコロニー形成する口腔細菌群(例えば、ストレプトコッカス(オラリス)(oralis)、ユーバクテリウム(Eubacterium)、ナイセリア(Neisseria)、ベイロネア(Veillonea))から選択される弱酸を産生するか、もしくは酸を産生しないプロバイオティックを、pHを上昇させる物質もしくはpHを緩衝化する物質を有する物質(例えば、重炭酸塩、カルバミド、リン酸塩、タンパク質および/もしくは塩)と共に使用する良好な口腔衛生と関連する口内微生物叢の再確立のための方法を開示している。US2006045870は、好気的および嫌気的条件下で、VSCを産生する細菌と相互作用し、過酸化水素を生成することにより、その増殖を阻害するワイセラ(Weissella)属に属する生きた乳酸菌を開示している。US2006171901は、BLIS(バクテリオシン様阻害物質)を産生するストレプトコッカス・サリバリウス株およびその抽出物を含む、嫌気性細菌、特に、臭い息を引き起こす細菌の増殖を阻害する別の方法を開示している。
【0006】
臭い息の予防および治療のために利用可能である方法の欠点は、これらの方法の多くが、口臭の主な原因として知られるVSCを産生する細菌の増殖を阻害するだけでなく、他の無害な口内微生物の増殖も同様に阻害してしまうことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の課題は、口臭および/または臭い息の予防および/または治療のための代替的な手段および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、第1の態様において、本発明は、下記アッセイ(a):
(a)微生物を、1 x 107細胞/mlの出発細胞密度で15 g/lのペプチドを含有する合成培地中、嫌気的条件下、37℃で24時間培養すること;
(b)4000 x gで15分間の遠心分離により細胞を除去すること;および
(c)得られる上清中のペプチド濃度を決定すること;
に供する場合、以下の特性(b):
前記微生物が、24時間のインキュベーション後の上清中のペプチド濃度が、15 g/lの出発濃度と比較して少なくとも20%低下するように培養培地中のペプチド濃度の低下を誘導する特性、すなわち、該微生物が、アッセイ(a)における培地中のペプチド濃度を少なくとも20%低下させることができる特性、
を示すことを特徴とする、乳酸菌群に属する微生物に関する。
【0009】
好ましい実施形態においては、本発明に従う微生物は、以下のアッセイ(A):
(a)微生物を、1 x 107細胞/mlの出発細胞密度で嫌気的条件下、37℃で24時間、100 mlの合成培地中で培養すること;
(b)続いて、細胞を4000 x gで15分間遠心分離し、20 mlのH2O中に再懸濁すること;
(c)続いて、細胞を-80℃に凍結し、減圧下で16時間凍結乾燥すること;
(d)10 mgの凍結乾燥された細菌をH2O中に再懸濁し、4000 x gで10分間遠心分離すること;
(e)7 g/lのペプチドを含有する1 mlの合成培地を細胞ペレットに添加し、細胞を培地中に再懸濁し、37℃で5分間好気的条件下でインキュベートした後、細胞を4000 x gで15分間の遠心分離により除去すること;ならびに
(f)得られる培地上清中のペプチド濃度を決定すること;
に供する場合、以下の特性(B):
凍結乾燥された細菌が、インキュベーション期間の開始時の培地の濃度(7 g/l)と比較して、得られる培地上清中のペプチド濃度の少なくとも20%の低下を誘導する特性、
をさらに示す。
【0010】
好ましい実施形態においては、アッセイ(a)または(A)中のペプチド濃度を、本発明に従う微生物によって少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%およびさらにより好ましくは少なくとも50%低下させる。
【0011】
特に好ましい実施形態においては、本発明に従う微生物は、アッセイ(A)におけるペプチド濃度を、少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも70%低下させることができる。
【0012】
かくして、本発明は、添付の実施例に記載のように、その環境、特にまた、唾液中のペプチド濃度を効率的に低下させることができる微生物を提供する。公知のように、口臭は、健康な口腔細菌叢(多くはストレプトコッカス・サリバリウスにより構成される)と、病原性の口腔細菌叢(多くは嫌気性グラム陰性細菌により構成される)との比率が、唾液中に存在するタンパク質を揮発性化合物に分解する嫌気性グラム陰性細菌にシフトするという事実により引き起こされる。これは口臭を引き起こす揮発性硫黄化合物の産生を誘導する。
【0013】
本発明の微生物は、ペプチドの量を低下させ、それによって口腔細菌叢の嫌気性グラム陰性細菌の基質を枯渇させることにより、口臭を低下させることができる。
【0014】
本発明を、以下に記載のように図1〜7により例示する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】唾液中に存在するグラム陰性嫌気性細菌によるH2S産生に対する、ラクトバチルスによるペプチド濃度の低下の影響を分析する実験の結果を示す。
【図2】実施例3に記載のストレプトコッカス・サリバリウスの増殖に対するラクトバチルス上清の影響を分析する実験の結果を示す。
【図3】実施例5に記載のポルフィロモナス・ギンギバリスの増殖に対するラクトバチルスの影響を分析する実験の結果を示す。
【図4】実施例6に記載のストレプトコッカス・サリバリウスの増殖に対する熱処理されたラクトバチルス上清の影響を分析する実験の結果を示す。
【図5】本発明に従うラクトバチルスによるペプチド濃度の低下を分析する実験の結果を示す。
【図6】本発明に従う凍結乾燥されたラクトバチルスによるペプチド濃度の低下を分析する実験の結果を示す。
【図7】PTU抽出物の典型的なアミノ酸プロフィールを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
用語「合成培地」とは、化学規定培地、すなわち、化合物の組成が知られた培地を指す。合成培地は、問題の微生物の培養にとって好適な任意の合成培地であってよい。1つの好ましい実施形態においては、合成培地は米国特許第6,340,585号に開示された合成培地である。
【0017】
好ましい実施形態においては、合成培地は、以下の組成:
グアニン: 0.1 g/l
シトシン: 0.1 g/l
チミジン: 0.1 g/l
2'-デオキシアデノシン: 0.1 g/l
2'-デオキシウリジン: 0.1 g/l
K2HPO4: 2 g/l
酢酸ナトリウム: 5 g/l
MgSO4・七水和物: 0.1 g/l
クエン酸水素二アンモニウム: 2 g/l
CaCl2・二水和物: 0.5 g/l
オレイン酸: 0.1%(w/v)
シアノコバラミン: 0.02 mg/l
リボフラビン: 10 mg/l
葉酸: 0.2 mg/l
ピリドキサル-5-リン酸一水和物: 10 mg/l
4-アミノ安息香酸: 0.2 mg/l
D(+)-ビオチン: 1 mg/l
アスコルビン酸: 500 mg/l
ニコチン酸: 10 mg/l
パントテン酸カルシウム: 10 mg/l
チアミン: 1 mg/l
コバルト(II)-硝酸六水和物: 500 mg/l
MnSO4・一水和物: 20 mg/l
MgSO4・七水和物: 500 mg/l
Na2MoO4: 0.04 mg/l
PTU-抽出物(Ohly, Deutsche Hefewerke Germany): 15 g/l(または他の場所に記載のように)
D-グルコース・一水和物: 10 g/l
を有する培地である。
【0018】
用語「15 g/lのペプチドを含有する」(または「7 g/lのペプチドを含有する」)とは、インキュベーション期間の開始時の合成培地が、15 g/lのペプチド(またはそれぞれ、7 g/lのペプチド)を含むことを意味する。原理的には、前記ペプチドは任意の種類のペプチドであってよい。好ましい実施形態においては、合成培地中に含まれるペプチドは、酵母抽出物、好ましくは、PTU抽出物の形態にある。PTU抽出物を、Ohly, Deutsche Hefewerke, Germanyから購入することができる。それは、高含量の容易に入手可能なペプチドを含む限外濾過された低塩酵母抽出物であり、以下の特徴:
平均分析:
・乾燥物質: 96%
・d.m.中のタンパク質(Nx6,25) 72.9%
・d.m.中の総窒素: 11.7%
・NaCl: 1.0%以下
・灰分: 10%
・pH(2%溶液中) 5.7
ビタミン(典型的):
・塩酸チアミンx HCl(B1): 1.2 mg/100 g
・リボフラビン(B2): 7.0 mg/100 g
・ピリドキシン x HCl(B6): 5.9 mg/100 g
・ニコチン酸: 47.8 mg/100 g
・ビオチン: 0.022 mg/100 g
・D-パントテン酸カルシウム: 17.9 mg/100 g
・葉酸: 3.7 mg/100 g
アミノ酸プロフィール(典型的):図7に示されるもの
を示すのが好ましい。
【0019】
用語「細胞/mlの出発細胞密度」とは、合成培地が、培養期間の開始時に、1 x 107細胞/mlが培地中に存在するように微生物を接種されることを意味する。
【0020】
ペプチド濃度を、当業者には公知の任意の方法により決定することができる。よく確立された方法は、例えば、Biuret、LowryまたはBradfordによる方法である。さらに、ペプチド濃度を決定するための任意の市販のキットまたは他の道具を用いてもよい。1つの好ましい例は、Invitrogen社のQuant-it Proteinキットなどの蛍光染料に基づく道具またはキットである。上記のアッセイ(a)および/または(A)におけるペプチド濃度の低下を、添付の実施例に記載のようにアッセイするのが好ましい。添付の実施例に示されるように、驚くべきことに、その環境中でペプチド濃度を大幅に低下させる能力を有する乳酸菌を同定することができることが見出された。この効果は、生きた細菌に関して観察されるだけでなく、凍結乾燥された形態に関しても観察される。さらに、本発明に従う微生物が、上記のアッセイにおいてだけでなく、唾液中でも上記の効果を示すこと、および本発明に従う微生物の存在が、唾液に添加された場合、H2Sの産生の顕著な低下を誘導することが実施例において示されている。
【0021】
特に、好ましい実施形態においては、本発明に従う微生物はまた、以下のアッセイ(c):
(a)微生物を、1 x 107細胞/mlの出発細胞密度で嫌気的条件下、37℃で24時間、100 mlの合成培地中で培養する;
(b)続いて、細胞を4000 x gで15分間遠心分離して、20 mlのH2O中に再懸濁する;
(c)続いて、細胞を-80℃で凍結し、減圧下で16時間凍結乾燥する;
(d)10 mgの凍結乾燥された細菌を、ディープウェルプレート中のH2Oに再懸濁し、4000 x gで10分間遠心分離する;
(e)3 g/lのペプチドを含有する1 mlの合成培地をペレットに添加し、37℃で5分間インキュベートした後、細胞を4000 x gで15分間の遠心分離により除去する;
(f)次いで、上清を新しいディープウェルプレートに移した後、10〜100μl、好ましくは50μlの非滅菌ヒト唾液を接種し、37℃で6時間嫌気的にインキュベートし、その間、ディープウェルプレートを、酢酸鉛を含浸させた滅菌濾紙で被覆する;
(g)反応物中の微生物による硫化水素の産生を、濾紙の黒変を決定することによりモニターする;
にかけた場合、以下の特性(d):
本発明に従う微生物の存在下で、濾紙に含浸された酢酸鉛の黒変が、培地を前記微生物と共に予備インキュベートしなかった対照と比較して減少する特性、
も示す。濾紙の黒変の減少は、培地に接種するのに用いた非滅菌ヒト唾液中に含まれる細菌によるH2Sの産生の低下を示唆する。用語「H2Sの産生の低下」とは、対照と比較して少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、さらにより好ましくは少なくとも30%および特に好ましくは少なくとも40%またはさらに少なくとも50%のH2S産生の低下を意味する。この低下を、例えば、濾紙の黒変を密度測定分析することにより測定することができる。あるいは、工程(f)および(g)における硫化水素の産生を、濾紙の使用により測定しないが、ガスクロマトグラフィーを用いるヘッドスペース分析により測定する。
【0022】
また、第2の態様において、本発明は、ストレプトコッカス・サリバリウスの増殖を刺激することはできるが、ストレプトコッカス・ミュータンスおよび/またはポルフィロモナス・ギンギバリスの増殖は刺激しないことを特徴とする乳酸菌群に属する微生物に関する。
【0023】
ストレプトコッカス・サリバリウス種の微生物の増殖に関連する用語「刺激する」とは、この微生物の増殖が、本発明に従う微生物と接触させた場合に増加することを意味する。増殖の増加とは、好ましくは、増殖、すなわち、単位時間あたりの細胞分裂における増加を意味する。あるいは、用語「刺激する」とは、個々の細胞のサイズの増加をも指す。細菌細胞のサイズを、染料SYBR Green I (Molecular Probes, USA)を用いて染色した後、フローサイトメトリー(例えば、Becton-Dickinson FACSortフローサイトメーター、San Jose, CA)により評価することができる。細菌細胞のサイズを、Side-Angle Light Scatter (SSC)モードで評価する。かくして、増殖の増加は、単位時間あたりのバイオマス産生における増加を意味する。
【0024】
それぞれの微生物の増殖の刺激を、好ましくはin vitroで、より好ましくは本発明に従う微生物をストレプトコッカス・サリバリウスと接触させ、ストレプトコッカス・サリバリウスの増殖を決定するアッセイにおいて観察することができる。様々な時間間隔のインキュベーション後の細胞/コロニーの数を計数することにより増殖を決定し、本発明に従う微生物を含まない対照と比較し、それによって増殖の増加があるかどうかを決定することができる。
【0025】
増殖の刺激を決定するためのin vitroアッセイは実施例に記載されており、いわゆる「光同時インキュベーションアッセイ」を含む。簡単に述べると、そのようなアッセイは、以下の工程:
(a)試験しようとする乳酸菌群に属する微生物を、1/2 TSY培地中、1:100(乳酸菌:ストレプトコッカス・サリバリウス)の細胞計数比でストレプトコッカス・サリバリウスと混合する;
(b)細胞懸濁液を37℃で12時間好気的にインキュベートする;
(c)対照として、消費されていない1/2 TSY培地またはMRSライト培地を用いる;
(d)指数増殖中の最大光密度(OD600, max)を決定する、および/または最大増殖速度(Vmax)を決定する;ならびに
(e)最大光密度(OD600, max)および/または最大増殖速度(Vmax)が対照と比較して少なくとも10%増加した場合、前記微生物を、ストレプトコッカス・サリバリウスの増殖を刺激することができる微生物と分類する、
を含む。
【0026】
用語「1/2 TSY培地」とは、H2Oで1:1(vol:vol)の比に希釈されたTSY培地を指す。
【0027】
好ましい実施形態においては、インキュベーションを96穴プレート中で行う。さらに好ましい実施形態においては、インキュベーションをBio Tek PowerWaveマイクロプレート分光光度計(Biotek Instruments GmbH; Germany)中で行う。好ましくは、OD600, maxおよびVmaxを、以下のように決定する。
【0028】
OD600での光密度を、インキュベーションの開始後、規則的な間隔、例えば、2.5分毎に、長時間にわたって、好ましくは約8〜12時間測定する。OD600, maxの決定のために、好ましくはOD600の決定を、インキュベーション後10時間にわたって行う。
【0029】
OD600, maxの決定のために、平均値を3つの最も高い測定値から算出する。
【0030】
Vmaxを、最も急な勾配を示す15個の連続する値を選択することにより決定するのが好ましい。Vmaxを指示するための単位はmOD/分である。Vmaxの算出のためのOD600の決定を、培養された微生物の指数増殖期をカバーすることができる期間にわたって実行するのが好ましい。好ましくは、本発明に従う微生物は、上記アッセイにおけるストレプトコッカス・サリバリウスの最大光密度(OD600, max)または最大増殖速度(Vmax)の、対照と比較して、少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、さらにより好ましくは少なくとも30%および特に好ましくは少なくとも40%、50%、60%、70%またはさらには80%の増加を誘導する。
【0031】
好ましい実施形態においては、本発明に従う上記微生物は、ストレプトコッカス・サリバリウスの増殖を刺激するだけでなく、健康な口腔細菌叢の少なくとも1種のさらなる微生物の増殖をも刺激する。そのような微生物の例は、ストレプトコッカス・オラリス(Streptococcus oralis)およびストレプトコッカス・エピデルミディス(Streptococcus epidermidis)である。これらの細菌の刺激を、上記のアッセイにより測定することができる。
【0032】
本発明に従う上記の微生物はまた、それがストレプトコッカス・ミュータンスおよび/またはポルフィロモナス・ギンギバリスの増殖を刺激しないことを特徴とする。微生物が、ストレプトコッカス・ミュータンスおよび/またはポルフィロモナス・ギンギバリスと接触させた場合にその増殖の増加を誘導しない場合、それを一過的病原性細菌叢の微生物の増殖を刺激しないものとみなす。増殖の刺激またはその不在を、in vitroで試験することができる。増殖の刺激またはその不在を決定するためのin vitroアッセイは実施例に記載されており、いわゆる「光同時インキュベーションアッセイ」を含む。簡単に述べると、ストレプトコッカス・ミュータンスの場合、そのようなアッセイは、以下の工程:
(a)試験しようとする乳酸菌群に属する微生物を、150μlの合成培地を含む96穴プレート中、37℃で24時間、嫌気的条件下で培養し、細胞を4000 x gで15分間の遠心分離によりペレット化し、上清を回収する工程;
(b)ストレプトコッカス・ミュータンスを、37℃で一晩、密閉された15 mlのFalconチューブ中、5 mlのTSY培地中で嫌気的に培養する工程;
(c)ストレプトコッカス・ミュータンス細胞培養物を、工程(a)の上清と、2:1の体積比で混合する工程;
(d)培養上清を、37℃で12時間、好気的にインキュベートする工程;
(e)対照として、消費されていない1/2 TSY培地またはMRSライト培地を用いる工程;
(f)指数増殖の間に最大光密度(OD600, max)を決定し、および/または最大増殖速度(Vmax)を決定する工程;ならびに
(g)最大光密度(OD600, max)および/または最大増殖速度(Vmax)が対照と比較して増加していない場合、前記微生物を、ストレプトコッカス・ミュータンスの増殖を刺激することができない微生物と分類する工程、
を含む。
【0033】
あるいは、そのようなアッセイは、以下の工程:
(A)試験しようとする乳酸菌群に属する微生物を、1/2 TSY培地中、1:100の細胞計数比(ラクトバチルス:ストレプトコッカス・ミュータンス)でストレプトコッカス・サリバリウスと混合する工程;
(B)培養懸濁液を、37℃で12時間好気的にインキュベートする工程;
(C)対照として、消費されていない1/2 TSY培地またはMRSライト培地を用いる工程;
(D)指数増殖の間に最大光密度(OD600, max)を決定し、および/または最大増殖速度(Vmax)を決定する工程;ならびに
(E)最大光密度(OD600, max)および/または最大増殖速度(Vmax)が対照と比較して増加していない場合、前記微生物を、ストレプトコッカス・ミュータンスの増殖を刺激することができない微生物と分類する工程、
を含む。
【0034】
ポルフィロモナス・ギンギバリスの場合、前記アッセイは、以下の工程:
(h)試験しようとする乳酸菌群に属する微生物を、150μlの合成培地を含む96穴プレート中、37℃で24時間、嫌気的条件下で培養し、細胞を4000 x gで15分間の遠心分離によりペレット化し、上清を回収する工程;
(i)ポルフィロモナス・ギンギバリスを、37℃で一晩、密閉された15 mlのFalconチューブ中の5 mlのFAB培地中で嫌気的に培養する工程;
(j)ポルフィロモナス・ギンギバリス細胞培養物を、工程(h)の上清と、2:1の体積比で混合する工程;
(k)培養上清を、37℃で45時間、嫌気的にインキュベートする工程;
(l)対照として、消費されていないFAB培地を用いる工程;
(m)インキュベーション(OD600)の10、15、21、39および45時間後に、光密度(OD600)を決定する工程;ならびに
(n)測定の各時間での光密度(OD600)が対照と比較して増加していない場合、前記微生物を、ポルフィロモナス・ギンギバリスの増殖を刺激することができない微生物と分類する工程、
を含む。
【0035】
あるいは、そのようなアッセイは、以下の工程:
(H)試験しようとする乳酸菌群に属する微生物を、FAB培地中、1:100の細胞計数比(ラクトバチルス:ポルフィロモナス・ギンギバリス)でポルフィロモナス・ギンギバリスと混合する工程;
(I)培養懸濁液を37℃で45時間、好気的にインキュベートする工程;
(J)対照として消費されていないFAB培地を用いる工程;
(K)指数増殖の間に最大光密度(OD600, max)を決定し、および/または最大増殖速度(Vmax)を決定する工程;ならびに
(L)最大光密度(OD600, max)および/または最大増殖速度(Vmax)が対照と比較して増加していない場合、前記微生物を、ポルフィロモナス・ギンギバリスの増殖を刺激することができない微生物と分類する工程、
を含む。
【0036】
好ましい実施形態においては、工程(d)および(B)におけるインキュベーションを、96穴プレート中で行う。さらに好ましい実施形態においては、インキュベーションを、Bio Tek PowerWaveマイクロプレート(Fa. Biotek Instruments GmbH, Germany)分光光度計中で行う。
【0037】
好ましい実施形態においては、工程(k)および(I)におけるインキュベーションを、96穴プレート中で行う。さらに好ましい実施形態においては、インキュベーションを、Whitley DG250嫌気的ワークステーション(Meintrup-DWS, Germany)中で行う。OD600, maxおよびVmaxに関しては、上記でさらに説明されたものと同じものを適用する。
【0038】
微生物を、前記微生物と接触させた場合に増殖が増加しないか、またはほんのわずかに増加する場合、ストレプトコッカス・ミュータンスまたはポルフィロモナス・ギンギバリスの微生物の増殖を刺激しないものと見なす。「わずかに増加した」とは、増殖が、対照と比較した場合、5%以下増加する、より好ましくは、対照と比較した場合、2%以下増加することを意味する。用語「増加していない」とは、本発明の微生物が存在しない対照と比較した場合、本発明の微生物と接触させた場合のストレプトコッカス・ミュータンスまたはポルフィロモナス・ギンギバリスの増殖の間に統計学的に関連する差異を見出すことができないことを意味する。好ましい実施形態においては、用語「増加していない」はまた、微生物が実際にストレプトコッカス・ミュータンスまたはポルフィロモナス・ギンギバリスの増殖の低下を誘導する場合、すなわち、それがそのような微生物の増殖を抑制する場合を含む。
【0039】
別の好ましい実施形態においては、本発明の微生物は、ストレプトコッカス・ミュータンスまたはポルフィロモナス・ギンギバリスの増殖に負に影響しない。用語「負に影響しない」とは、本発明の微生物が存在しない対照と比較した場合、本発明の微生物と接触させた場合のストレプトコッカス・ミュータンスまたはポルフィロモナス・ギンギバリスの増殖の阻害が認められないことを意味する。
【0040】
好ましい実施形態においては、本発明に従う微生物は、ストレプトコッカス・ミュータンスまたはポルフィロモナス・ギンギバリスの増殖を刺激しないだけでなく、口腔細菌叢の少なくとも1種のさらなる病原性微生物の増殖も刺激しない。病原性口腔細菌の代表は、嫌気性のグラム陰性細菌である。さらなる例は、アクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans)、アクチノミセス・ナエスルンジ(Actinomyces naeslundii)、フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、フソバクテリウム・ヌクレアタム・ポリモルファム(Fusobacterium nucleatum polymorphum)、プレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)、ソロバクテリウム・モーレイ(Solobacterium moorei)、ストレプトコッカス・ゴルドニ(Streptococcus gordonii)、ストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)、ストレプトコッカス・サンギニス(Streptococcus sanguinis)、タネレラ・フォルシンテンシス(Tannerella forsynthensis)およびトレポネマ・デンチコラ(Treponema denticola)である。
【0041】
これらの細菌の増殖の刺激または刺激の不在を、ストレプトコッカス・ミュータンスおよびポルフィロモナス・ギンギバリスに関する上記のアッセイにより測定することができる。
【0042】
好ましい実施形態においては、本発明に従う上記微生物は、それらが生細胞としてのストレプトコッカス・サリバリウスの増殖を刺激する効果を示すだけでなく、培養上清としてのそれの増殖も刺激する効果を示すことを特徴とする。これは、本発明に従う微生物から得られた培養上清も、ストレプトコッカス・サリバリウスの増殖を刺激する効果を示すことを意味する。好ましくは、この効果は、以下のアッセイ:
(a)ストレプトコッカス・サリバリウスを、37℃で一晩、8 mlのTSY培地を含む6穴プレート中で嫌気的に培養する;
(b)試験しようとする乳酸菌群に属する微生物を、37℃で24時間、150μlの合成培地を含む96穴プレート中、嫌気的条件下で培養し、細胞を4000 x gで15分間の遠心分離によりペレット化し、上清を回収する;
(c)工程(a)のストレプトコッカス・サリバリウス細胞培養物を、2:1〜4:1の体積比で1/2 TSY培地中の工程(b)の上清と混合する;
(d)細胞懸濁液を37℃で12時間、好気的にインキュベートする;
(e)対照として、消費されていない1/2 TSYまたはMRSライト培地を用いる;
(f)指数増殖の間に最大光密度(OD600, max)を決定し、および/または最大増殖速度(Vmax)を決定する;ならびに
(g)前記微生物を、最大光密度(OD600, max)および/または最大増殖速度(Vmax)が対照と比較して少なくとも10%増加した場合、ストレプトコッカス・サリバリウスの増殖を刺激することができる微生物と分類する、
において起こる。
【0043】
好ましい実施形態においては、インキュベーションを96穴プレート中で行う。さらに好ましい実施形態においては、インキュベーションをBio Tek PowerWaveマイクロプレート分光光度計(Biotek Instruments GmbH, Germany)中で行う。
【0044】
OD600, maxおよびVmaxに関しては、上記でさらに説明されたものと同じものを適用する。
【0045】
好ましくは、本発明に従う微生物は、上記のアッセイにおいて、対照と比較して少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、さらにより好ましくは少なくとも30%および特に好ましくは少なくとも40%、50%、60%、70%またはさらに80%の最大光密度(OD600, max)または最大増殖速度(Vmax)の増加を誘導する。
【0046】
特に好ましい実施形態においては、本発明に従う微生物により示されるストレプトコッカス・サリバリウスの増殖の刺激は、熱処理に対して抵抗性である、すなわち、細胞(もしくはその抽出物)または培養上清を熱処理にかけた場合にもそれが起こる。熱処理は、好ましくは、60℃〜100℃、より好ましくは70℃〜90℃、さらにより好ましくは75℃〜85℃および最も好ましくは約80℃または正確に80℃の温度での熱処理である。
【0047】
一般的には、熱処理は少なくとも1分間の期間続くべきである。好ましくは、熱処理は少なくともn分間の期間(ここで、nは2〜60の範囲の整数であるが、n=10または15または20が特に好ましい)続く。しかしながら、原理的にはインキュベーション時間について上限はない。しかしながら、4、3、2または1時間より長くないのが好ましい。最も好ましい熱処理は、インキュベーター中、80℃の温度で約10分間である。最も好ましい熱処理は、タンパク質および細胞の活力の任意の機能を破壊すると考えられ、かくして、乳酸菌群に属する上記の微生物を、依然としてストレプトコッカス・サリバリウスの増殖を刺激することができる点で、他の微生物から識別する。従って、微生物が生存するべきではないことが望ましい場合、熱処理は食品、飼料、飲料または本発明の文脈における組成物における使用にとって非常に有用である。
【0048】
冷却した後、本発明に従う微生物(もしくはその抽出物)またはその培養上清がストレプトコッカス・サリバリウスの増殖を刺激する能力を、本明細書に上記されたアッセイまたは添付の実施例に記載のアッセイにおいて決定する。本発明に従う微生物の培養上清に関する文脈においては、対応するアッセイは、好ましくは以下の工程:
(h)ストレプトコッカス・サリバリウスを、37℃で一晩、8 mlのTSY培地を含む6穴プレート中で嫌気的に培養する工程;
(i)試験しようとする乳酸菌群に属する微生物を、37℃で24時間、150μlの合成培地を含む96穴プレート中、嫌気的条件下で培養し、細胞を4000 x gで15分間の遠心分離によりペレット化し、上清を回収する工程;
(j)上清を80℃で10分間、インキュベーター中でインキュベートした後、室温まで冷却する工程;
(k)工程(a)のストレプトコッカス・サリバリウス細胞培養物を、2:1の体積比で1/2 TSY培地中の工程(j)の上清と混合する工程;
(l)細胞懸濁液を37℃で12時間、好気的にインキュベートする工程;
(m)対照として、消費されていない1/2 TSYまたはMRSライト培地を用いる工程;
(n)指数増殖の間に最大光密度(OD600, max)を決定し、および/または最大増殖速度(Vmax)を決定する工程;ならびに
(o)前記微生物を、最大光密度(OD600, max)および/または最大増殖速度(Vmax)が対照と比較して少なくとも10%増加した場合、ストレプトコッカス・サリバリウスの増殖を刺激することができる微生物と分類する工程、
を含む。
【0049】
さらに、本発明に従う微生物のストレプトコッカス・ミュータンスおよび/またはポルフィロモナス・ギンギバリスの増殖を刺激しない特性も、熱処理に対して抵抗性である。用語「熱処理」の定義に関しては、上記で説明されたものと同じものを適用する。
【0050】
別の好ましい実施形態においては、本発明に従う微生物により示されるストレプトコッカス・サリバリウスの増殖の刺激は、凍結乾燥に対して抵抗性である、すなわち、それは細胞を凍結乾燥処理にかけた場合にも起こる。凍結乾燥処理は、好ましくは、細胞(もしくはその抽出物)または細胞上清をまず-80℃で凍結した後、減圧下で16時間凍結乾燥する凍結乾燥処理である。凍結乾燥処理の後、本発明に従う微生物がストレプトコッカス・サリバリウスの増殖を刺激する能力を、既に上記されたアッセイまたは添付の実施例に記載されたアッセイにより試験することができる。本発明に従う微生物の培養上清に関する文脈においては、対応するアッセイは、好ましくは以下の工程:
(p)ストレプトコッカス・サリバリウスを、37℃で一晩、8 mlのTSY培地を含む6穴プレート中で嫌気的に培養する工程;
(q)試験しようとする乳酸菌群に属する微生物を、37℃で一晩、密閉した100 mlのボトル中、50 mlの合成培地中で嫌気的条件下で培養し、細胞を4000 x gで15分間の遠心分離によりペレット化し、上清を回収する工程;
(r)工程(q)の上清20 mlを-80℃で凍結し、減圧下で16時間凍結乾燥する工程;
(s)凍結乾燥された上清を20 mlのH2O中に再懸濁する工程;
(t)工程(a)のストレプトコッカス・サリバリウス細胞培養物を、2:1の体積比で1/2 TSY培地中の工程(s)の上清と混合する工程;
(u)細胞懸濁液を37℃で12時間、好気的にインキュベートする工程;
(v)対照として、消費されていない1/2 TSYまたはMRSライト培地を用いる工程;
(w)指数増殖の間に最大光密度(OD600, max)を決定し、および/または最大増殖速度(Vmax)を決定する工程;ならびに
(x)前記微生物を、最大光密度(OD600, max)および/または最大増殖速度(Vmax)が対照と比較して少なくとも10%増加した場合、ストレプトコッカス・サリバリウスの増殖を刺激することができる微生物と分類する工程、
を含む。
【0051】
特に好ましい実施形態に従えば、本発明に従う微生物は、それぞれ、本発明の第1および第2の態様に記載の特性の両方を示す、すなわち、それは第1の態様に記載の特性(b)および/もしくは(B)(ペプチド濃度の大幅な低下)を示し、第2の態様に記載の特性(ストレプトコッカス・サリバリウスの増殖を刺激し、ストレプトコッカス・ミュータンスおよび/もしくはポルフィロモナス・ギンギバリスの増殖を刺激しない)を示す。
【0052】
本明細書に上記された本発明に従う微生物は、その特性に起因して、口腔細菌叢の平衡を、口臭の発生に関して改善をもたらすストレプトコッカス・サリバリウスに向かうようにシフトさせる。
【0053】
上記のことから明らかなように、上記の特性は全て、乳酸菌群に属する上記の微生物を、口臭および/もしくは臭い息を減少させるか、または口臭および/もしくは臭い息、特に、口腔細菌叢の病原性微生物、特に、嫌気性グラム陰性細菌により引き起こされる口臭および/もしくは臭い息を予防および/もしくは治療するための好適な薬剤にする。従って、本発明に従う微生物は、口臭の低下に対する効果を有し、かくして、口臭および/もしくは臭い息を予防および/もしくは治療するための有用な薬剤である。
【0054】
用語「口臭を予防すること」は、口臭の予防を含む。従って、口臭の発生の原因となるこれらの微生物に遭遇したことがないが、そのような微生物に遭遇する、すなわち、感染する危険性のある被験者、または依然として均衡の取れた口腔細菌叢を有する被験者は、該被験者が口臭に罹患しない限りにおいて、例えば、本発明の微生物、組成物、使用および方法から、利益を得る。従って、幼児または若い動物の口腔は通常、口臭の発生の原因となる微生物を含まないため、本発明の微生物、組成物、使用および方法を、例えば、口臭の予防のために幼児、子供または若い動物に適用することができる。しかしながら、本発明に従って用いられる微生物および組成物は、幼児、子供または若い動物への投与に限定されない。
【0055】
用語「口臭を治療すること」および「臭い息を治療すること」は、産生される口臭の量を減少させるための、本明細書に記載の微生物または組成物の、口臭および/もしくは臭い息に罹患する被験者への投与を含む。
【0056】
必要に応じて、本発明に従う微生物は、その口臭低下効果とは別に、それを投与する宿主生物に対する有益な効果を有するプロバイオティック微生物である。一般的に許容される定義によれば、「プロバイオティック」は、「その腸内微生物の均衡を改善することにより宿主動物に有益に作用する生きた微生物の補助食品」である。
【0057】
従って、本発明は、口臭を低下させる効果に加えて、プロバイオティックとして有用であってよい食品等級の生物である容易に投与可能な細菌の使用を提供する。
【0058】
驚くべきことに、培地から、およびかくして唾液からもペプチドを効率的に除去し、それによって口臭の生成を誘導する物質の産生の原因となる口腔細菌叢中に存在する他の微生物が対応する物質を産生するのを防止する本発明に従う微生物の効果を、不活性化された形態、例えば、凍結乾燥された形態またはUV光線もしくは放射線を用いる処理から得られる形態の微生物を用いて観察することもできる。
【0059】
最も重要なことに、その効果はまた、本発明に従う微生物を、特に、経口適用物の形態での使用または食品、飼料もしくは飲料のための添加物としての使用にとって好適にする唾液の存在下で生じる。顕著には、本明細書に開示された前記微生物の温度的に不活化された、または凍結乾燥された形態、特に、類似体、誘導体または断片は、依然として上記のアッセイにおけるペプチド濃度を特異的かつ効率的に低下させることができる。
【0060】
同様に、本発明の第2の態様に記載された本発明に従う微生物の特性、すなわち、ストレプトコッカス・サリバリウスの増殖を刺激し、ストレプトコッカス・ミュータンスおよび/またはポルフィロモナス・ギンギバリスの増殖を刺激しない特性は、その微生物自身についでだけでなく、該微生物の培養上清およびその不活化形態についても生じる。特に、ストレプトコッカス・サリバリウスの増殖を刺激し、ストレプトコッカス・ミュータンスおよび/またはポルフィロモナス・ギンギバリスの増殖を刺激しない特性は、熱処理に対して抵抗性であり、凍結乾燥処理に対して抵抗性である。
【0061】
これらの驚くべき効果は、口臭および/または臭い息を予防および/または治療するための、前記不活化形態、培養上清、前記微生物の類似体もしくは断片ならびに動物、好ましくはヒトもしくは哺乳動物における使用のための組成物中のその突然変異体もしくは誘導体の使用にとって有利である。特に、前記不活化形態、培養上清、類似体または断片を、任意の組成物、例えば、化粧用組成物もしくは医薬組成物、食品もしくは飼料または飲料などに容易に添加することができる。さらに、そのような不活化形態、培養上清、類似体または断片の生産は安価で容易であり、ペプチド濃度を低下させ、ならびに/またはストレプトコッカス・サリバリウスの増殖を刺激し、ストレプトコッカス・ミュータンスおよび/もしくはポルフィロモナス・ギンギバリスの増殖を刺激しない能力を失うことなく、それらを長期間にわたって保存することができる。特に、本発明に従う微生物の利点は、それが凍結乾燥されるか、またはスプレー乾燥もしくは乾燥された場合でもペプチド濃度を低下させ、ならびに/またはストレプトコッカス・サリバリウスの増殖を刺激し、ストレプトコッカス・ミュータンスおよび/もしくはポルフィロモナス・ギンギバリスの増殖を刺激しない能力を保持するということである。さらに、ストレプトコッカス・サリバリウスの増殖を刺激し、ストレプトコッカス・ミュータンスおよび/もしくはポルフィロモナス・ギンギバリスの増殖を刺激しない特性は、熱処理後でも保持される。上記の特性により、本発明に従う微生物は本明細書に記載の組成物中での使用のための好ましい成分になる。
【0062】
さらに、好ましい実施形態においては、本発明に従う微生物は、唾液の存在下でも、上記の特性(すなわち、ペプチド濃度を低下させ、ならびに/またはストレプトコッカス・サリバリウスの増殖を刺激し、ストレプトコッカス・ミュータンスおよび/もしくはポルフィロモナス・ギンギバリスの増殖を刺激しない特性)を示す。唾液は、唾液腺により合成される外因性の分泌物である。唾液は、約99%の水とは別に、複数の有機化合物および無機化合物を含有する複雑な液体である。唾液の生理学的成分は、特に、酵素、例えば、アミラーゼ、カルボアンヒドラーゼ、リゾチーム、ペルオキシダーゼまたはタンパク質、例えば、ムチン、ラクトフェリン、プロリンに富むタンパク質、シスタチン、ヒスタチンもしくはスタテリンまたは可溶性IgAである。かくして、様々な潜在的な阻害物質が唾液中に存在するが、本発明に従う微生物の上記特性は唾液の存在によって阻害されない。
【0063】
乳酸菌群に属する上記微生物の上記特徴は、それが主として、特に、炭水化物を含有する食品の摂取後に、特定のプロテアーゼおよび低いpH値を含む唾液が存在する口腔および歯などの口に対して様々な形態で投与されるため、それを口臭および/もしくは臭い息を予防および/または治療するための強固かつ有効な薬剤にする。さらに、熱および/または凍結乾燥に対する抵抗性は、食品の調製の間に該食品に対する添加物として乳酸菌群に属する上記微生物を添加する際に有益な効果を有する。すなわち、食品は、微生物の生存能力にとって有害である加熱滅菌、予備調理、低温殺菌などされることが多い。
【0064】
本発明の他の実施形態および利点を、本明細書に記載の説明において部分的に説明し、それは部分的には、その説明から明らかであるか、またはそれを本発明の実施から学習することができる。
【0065】
本発明を詳細に説明する前に、本発明が本明細書に記載の特定の方法、プロトコル、細菌、ベクター、および試薬などに限定されず、これらが変化してもよいことが理解されるべきである。また、本明細書で用いられる用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるであろう本発明の範囲を限定することを意図するものではない。別途定義しない限り、本明細書で用いられる全ての技術的および化学的用語は、当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0066】
好ましくは、本明細書で用いられる用語は、「A multilingual glossary of biotechnological terms: (IUPAC Recommendations)」、Leuenberger, H.G.W, Nagel, B.およびKolbl, H.(編)(1995), Helvetica Chimica Acta, CH-4010 Basel, Switzerland)に記載のように定義される。本明細書および以下の特許請求の範囲を通して、文脈が別途必要としない限り、単語「含む(comprise)」および「含む(comprises)」および「含む(comprising)」などの変形は、任意の他の整数もしくは工程または整数もしくは工程の群の排除ではなく、記述された整数もしくは工程または整数もしくは工程の群の含有を意味すると理解されるであろう。
【0067】
いくつかの文書が本明細書の本文を通して引用されている。本明細書で引用されるそれぞれの文書(全ての特許、特許出願、科学的刊行物、製造業者の明細書、説明書など)は、上記のものであろうと下記のものであろうと、その全体が参照により本明細書に組み入れられるものとする。本明細書に記載のものは、本発明が先行する発明のおかげでそのような開示に先行する権利を与えられないとの許諾と解釈されるべきではない。
【0068】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられる、単数形の「a」、「an」および「the」は、本文が別途明確に指摘しない限り、複数の指示対象を含むことに留意しなければならない。かくして、例えば、「試薬(a reagent)」に対する参照は、そのような様々な試薬のうちの1種以上を含み、「方法(the method)」に対する参照は、本明細書に記載の方法に改変または置換することができる当業者には公知の等価な工程および方法に対する参照を含む。
【0069】
本発明の文脈において用いられる場合、用語「乳酸菌群に属する微生物」は、細菌に属する、特に、グラム陽性発酵性真正細菌に属する、より具体的には、乳酸菌などのラクトバクテリウム科(lactobacteriaceae)に属する微生物を包含する。さらに、前記用語はまた、上記の特性(すなわち、ペプチドの濃度を低下させ、ならびに/またはストレプトコッカス・サリバリウスの増殖を刺激し、ストレプトコッカス・ミュータンスおよび/もしくはポルフィロモナス・ギンギバリスの増殖を刺激しない特性)を保持する、前記微生物の、本明細書に記載の細胞抽出物もしくは膜画分などの誘導体もしくは突然変異体もしくは類似体もしくは断片も包含する。用語「誘導体」、「突然変異体」、「類似体」および「断片」は、本明細書の他の場所に記載されている。乳酸菌は、分類上の観点から、ストレプトコッカス、エンテロコッカス、ロイコノストック、およびラクトバチルスの再区分に分割される。乳酸菌群に属する上記微生物は、好ましくはラクトバチルス種である。乳酸菌群のメンバーは通常、ポルフィリンおよびシトクロムを欠損し、電子輸送リン酸化を実行せず、従って基質レベルのリン酸化によってのみエネルギーを獲得する。すなわち、乳酸菌においては、ATPは炭水化物の発酵によって合成される。乳酸菌は全て嫌気的に増殖するが、多くの嫌気性生物と違って、多くの乳酸菌は酸素に対して敏感ではなく、かくして、その存在下ならびにその非存在下で増殖することができる。従って、乳酸菌群に属する上記微生物は、好ましくは、ラクトバチルス属に属する、酸素耐性嫌気性乳酸菌であるのが好ましい。
【0070】
上記乳酸菌は、長く細いものから短く湾曲した棹まで変化する、好ましくは桿状もしくは球状のものであり、さらに好ましくは、動けない、および/もしくは胞子非形成性のものであり、発酵的代謝の主要な、もしくは唯一の生成物として、乳酸を産生する。上記微生物が属するラクトバチルス属は、以下の特性によって3つの主要な亜群に分割され、それによって、上記のラクトバチルス種が3つの主要な亜群:
(a)同種発酵性ラクトバチルスであって、
(i)Embden-Meyerhof経路を介してグルコースから少なくとも85%の量の乳酸、好ましくは乳酸のL-、D-もしくはDL-異性体を産生する;
(ii)45℃の温度では増殖するが、15℃の温度では増殖しない;
(iii)長い棹状である;および
(iv)細胞壁中にグリセロールテイコ酸を有する、
前記ラクトバチルス;
(b)同種発酵性ラクトバチルスであって、
(i)Embden-Meyerhof経路を介して乳酸、好ましくは乳酸のL-もしくはDL-異性体を産生する;
(ii)15℃の温度で増殖し、45℃の温度でも可変的増殖を示す;
(iii)短い棹状またはコリネ型である;ならびに
(iv)その細胞壁中にリビトールおよび/もしくはグリセロールテイコ酸を有する、
前記ラクトバチルス;
(c)異種発酵性ラクトバチルスであって、
(i)ペントース-リン酸経路を介してグルコースから少なくとも50%の量の乳酸、好ましくは、乳酸のDL-異性体を産生する;
(ii)二酸化炭素およびエタノールを産生する;
(iii)15℃または45℃での可変的増殖を示す;
(iv)長いか、または短い棹状である;ならびに
(v)その細胞壁中にグリセロールテイコ酸を有する、
前記ラクトバチルス、
のそれぞれに属してもよいことが想定される。
【0071】
上記特性に基づいて、上記微生物を、乳酸菌群、特に、ラクトバチルス属に属すると分類することができる。古典的分類法を用いることにより、例えば、「Bergey's Manual of Systematic Bacteriology」(Williams & Wilkins Co., 1984)の関連する記述を参照することにより、微生物を、ラクトバチルス属に属すると決定することができる。あるいは、前記微生物を、当業界で公知の方法により、例えば、その代謝フィンガープリント、すなわち、そのような微生物が糖を代謝する能力の比較可能な概観によるか、または例えば、Schleiferら、System. Appl. Microb., 18 (1995), 461-467もしくはLudwigら、System. Appl. Microb., 15 (1992), 487-501に記載の他の方法により、ラクトバチルス属に属すると分類することができる。上記微生物は、糖の供給源を代謝することができ、それはラクトバチルス属に属する微生物にとって典型的であり、当業界で公知である。しかしながら、好ましくは、上記微生物は、
(i)D-ラクトースを代謝するが、L-ソルボースおよび/もしくはD-サッカロースおよび/もしくはD-イヌリンを代謝しない、
(ii)イヌリンを代謝する、
(iii)L-ソルボースを代謝するが、D-ラクトースおよび/もしくはD-サッカロースおよび/もしくはイヌリンを代謝しない、ならびに
(iv)L-ソルボース、D-ラクトースおよびイヌリンを代謝する、
からなる群より選択される代謝フィンガープリントを有する。
【0072】
好ましくは、上記微生物は、
(i)D-ラクトースを代謝するが、L-ソルボース、D-サッカロースおよびイヌリンを代謝しない、
(ii)L-ソルボース、D-ラクトースおよびイヌリンを代謝するが、D-サッカロースを代謝しない、
(iii)L-ソルボースを代謝するが、D-ラクトース、D-サッカロースおよびイヌリンを代謝しない、および
(iv)L-ソルボース、D-ラクトース、D-サッカロースを代謝するが、イヌリンを代謝しない、
からなる群より選択される代謝フィンガープリントを有する。
【0073】
勿論、上記微生物は、上記の代謝フィンガープリントパターンに記載の糖の代謝に限定されるわけでないが、ラクトバチルス種によって一般的に代謝されるさらなる糖を代謝することができるものであってよい。
【0074】
また、上記微生物のラクトバチルス属への加入は、当業界で公知の他の方法を用いること、例えば、決定しようとする種の総タンパク質のSDS-PAGEゲル電気泳動を使用し、それらを、ラクトバチルス属の既知の、および既に特性評価された株と比較することを特徴としてもよい。上記の総タンパク質プロフィールを調製するための技術、ならびにそのようなプロフィールの数値解析は、当業者にはよく知られている。しかしながら、その結果は、プロセスの各段階が十分に標準化される限りにおいてのみ信頼できる。微生物のラクトバチルス属への付属を決定する場合の正確性の要件に直面して、標準化された手順は、1994年9月12〜16日にベルギーのヘント大学で欧州連合により開催された「ワークショップ」の間に提供された、Potらのものなどのその著者によって公衆にとって定期的に利用可能になっている(細菌の分類および同定のためのフィンガープリント技術、全細胞タンパク質のSDS-PAGE)。SDS-PAGE電気泳動ゲルを分析するための技術において用いられるソフトウェアは、種間の相関度がこのソフトウェアにより用いられるパラメーターおよびアルゴリズムに依存するため、決定的に重要である。理論的な詳細に行くものではないが、密度計により測定され、コンピューターにより正規化されるバンドの定量的比較を、Pearsonの相関係数を用いて行うのが好ましい。かくして得られた類似マトリックスを、最も類似するプロフィールを一緒にグループ化するのを可能にするだけでなく、デンドログラムを構築することもできるUPGMA(平均結合を用いる非加重結合法)アルゴリズムを援用して体系化することができる(Kersters, Numerical methods in the classification and identification of bacteria by electrophoresis, Computer-assisted Bacterial Systematics, 337-368, M. Goodfellow, A. G. O'Donnell(編)、John Wiley and Sons Ltd, 1985を参照)。
【0075】
あるいは、前記微生物のラクトバチルス属への加入を、いわゆるRiboprinter.RTMにおいてリボソームRNAに関して特性評価することができる。より好ましくは、上記種のラクトバチルス属への加入を、前記細菌の16SリボソームRNA、または16SリボソームRNAをコードするそのゲノムDNAのヌクレオチド配列と、現在まで知られる乳酸菌の他の属および種のものと比較することにより証明する。種のラクトバチルス属への付属を決定するための別の好ましい代替法は、16S-23S rRNAスペーサー領域を標的化する種特異的PCRプライマーの使用である。別の好ましい代替法は、同定された微生物のラクトバチルス属への加入を決定することができる株特異的DNAパターンを生成するという点で、RAPD-PCR (Nigatuら、Antonie van Leenwenhoek (79), 1-6, 2001)である。微生物のラクトバチルス属への加入を決定するのに有用なさらなる技術は、制限断片長多型(RFLP)(Giraffaら、Int. J. Food Microbiol. 82 (2003), 163-172)、反復エレメントのフィンガープリント法(Geversら、FEMS Microbiol. Lett. 205 (2001) 31-36)または細菌細胞の脂肪酸メチルエステル(FAME)パターンの分析 (Heyrmanら、FEMS Microbiol. Lett. 181 (1991), 55-62)である。あるいは、ラクトバチルスを、レクチンタイピング(Annukら、J. Med. Microbiol. 50 (2001), 1069-1074)またはその細胞壁タンパク質の分析 (Gattiら、Lett. Appl. Microbiol. 25 (1997), 345-348)により決定することができる。
【0076】
上記微生物は、好ましくは、ラクトバチルス属に属する乳酸菌、より好ましくは、本明細書に記載のラクトバチルス種、特に、アシドフィルス(acidophilus)、ファーメンタム(fermentum)、ラクチス(lactis)、デルブレッキ(delbrueckii)、アルギダス(algidus)、ブレビス(brevis)、ブフネリ(buchneri)、カセイ(casei)、カメリア(camelliae)、コレオホミニス(coleohominis)、クルストラム(crustorum)、ディオリボランス(diolivorans)、ヘテロヒオチ(heterohiochii)、ヒルガルジ(hilgardii)、キムチ(kimchii)、リンドネリ(lindneri)、オリス(oris)、パンテリス(pantheris)、パラブフネル(parabuchner)およびサエリムネリ(saerimneri)からなる群より選択される種に属するラクトバチルス細菌である。さらにより好ましくは、前記ラクトバチルスは、ラクトバチルス・アシドフィルスである。しかしながら、ラクトバチルス種はそれに限定されない。上記微生物は、「単離」または「精製」されたものであるのが好ましい。用語「単離された」とは、材料がその元の環境、例えば、それが天然のものである場合、天然の環境から取り出されたことを意味する。例えば、天然の系に同時に存在する材料のいくらか、または全部から分離された天然微生物、好ましくはラクトバチルス種は、単離されている。そのような微生物は、組成物の一部であってよく、該組成物がその天然の環境の一部ではない点で依然として単離されていると見なされるべきである。用語「精製された」は、絶対的な純度を要するわけではなく、むしろ、それは相対的な定義であると意図される。ライブラリーから得られた個々の微生物は、通常は微生物学的に均一になるまで精製されている、すなわち、それらは当業界で公知の方法により寒天プレート上にストリークした場合、単一のコロニーとして増殖する。好ましくは、この目的に用いられる寒天プレートは、ラクトバチルス種にとって選択的である。そのような選択用寒天プレートは当業界で公知である。
【0077】
より好ましくは、乳酸菌群に属する上記微生物を、DSMZ受託番号DSM 19825、DSM 19826、DSM 19827を有するラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)または本明細書に上記されたアッセイ(a)および/もしくは(A)においてペプチド濃度を低下させる能力を保持するその突然変異体もしくは誘導体からなる群より選択する。用語「DSMZ受託番号を有するラクトバチルス・アシドフィルス」は、2007年11月1日にDeutsche Sammlung fur Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH (「DSMZ」)にBASFによって寄託されたラクトバチルス・アシドフィルス種に属し、以下の受託番号DSM 19825、DSM 19826、DSM 19827を有する微生物の細胞に関する。DSMZは、Inhoffenstr. 7b, 38124 Braunschweig, Germanyに位置する。
【0078】
上記のDSMZ寄託は、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約の条項に従って行われた。
【0079】
乳酸菌群に属する上記微生物、好ましくは、寄託されたラクトバチルス・アシドフィルスの「突然変異体または誘導体」は、それぞれの寄託された株と同じ特性を有する、すなわち、それが本明細書の上記のアッセイ(a)および/もしくは(A)においてペプチド濃度を低下させる能力を保持し、ならびに/またはそれがストレプトコッカス・サリバリウスの増殖を刺激し、ストレプトコッカス・ミュータンスおよび/もしくはポルフィロモナス・ギンギバリスの増殖を刺激しない能力を保持するのが好ましい。例えば、前記誘導体を、遺伝子工学的に操作することができる。本発明の文脈においては、用語「遺伝子工学的に操作された」は、遺伝的改変が行われ、遺伝子が組換えDNA技術により変化するような、in vitroおよびin vivoで所望の核酸を改変するための当業者には公知の方法についてその最も広い意味で用いられる。従って、前記方法は、組換え核酸のクローニング、配列決定および形質転換を含むのが好ましい。この目的のために、好適なベクターとしては、例えば、EP-B1 506 789、EP-B1 316 677、EP-B1 251 064、EP-B1 218 230、EP-B1 133 046またはWO 89/01970に記載のラクトバチルス種のための発現ベクターが挙げられる。中間構築物などのクローニングのためのプライマー、酵素、さらなる宿主細胞を用いることができ、それらは当業者には公知である。好ましくは、遺伝子工学的に操作された突然変異体は、その細菌染色体中に、もしくはプラスミド上に、またはその細菌染色体および/もしくはプラスミド中に含まれた組換え核酸を担持する、乳酸菌群に属する上記微生物、好ましくは、寄託されたラクトバチルス種の細胞を含む。前記組換え核酸は、好ましくは、乳酸菌群に属する上記微生物にとって外来のものである。「外来」とは、ポリヌクレオチドまたは核酸分子が、宿主細胞に関して異種性であることを意味し、これは異なる遺伝的バックグラウンドを有する細胞もしくは生物から誘導されるか、または宿主細胞に関しては相同であるが、前記核酸分子の天然の対応物とは異なる遺伝的環境に位置することを意味する。これは、核酸分子が宿主細胞に関して相同である場合、それが前記宿主細胞のゲノム中のその天然の位置になく、特に、それが異なる遺伝子によって囲まれていることを意味する。この場合、前記ポリヌクレオチドは、その自身のプロモーターの制御下にあるか、または異種プロモーターの制御下にあってもよい。宿主細胞中に存在する上記ベクターまたは核酸分子を、宿主細胞のゲノム中に組込むか、またはそれをいくつかの形態で染色体外で維持することができる。これに関連して、上記核酸分子を用いて、相同組換えを介して突然変異遺伝子を回復するか、または作成することができることも理解されるべきである。
【0080】
乳酸菌群に属する上記微生物の突然変異体、好ましくは寄託されたラクトバチルス株の突然変異体は、好ましくは人工的に突然変異されたものである。本発明に従えば、用語「突然変異された」とは、例えば、天然に、または物理的手段もしくはEMSもしくはENUなどの化合物/物質/薬剤により引き起こされる、遺伝子材料、すなわち、核酸の永続的改変を意味する。前記改変としては、遷移もしくはトランスバージョンなどの点突然変異、核酸/遺伝子/染色体内の1個以上の欠失/挿入/付加、それによる、特に、異常な遺伝子発現/転写/翻訳もしくは不活性な遺伝子産物、例えば、ドミナントネガティブ効果を誘導する構成的活性/不活性遺伝子産物を引き起こす核酸/遺伝子/染色体の改変が挙げられる。好ましくは、突然変異は、本明細書に上記されたアッセイ(a)および/またはアッセイ(A)におけるペプチド濃度を低下させる能力の増加をもたらす。かくして、所望の遺伝子中に突然変異を担持するか、所望の遺伝子中の突然変異が当業者には公知の方法により誘導される寄託された微生物の突然変異細胞も好ましい。また、突然変異されたか、または遺伝子工学的に操作された細菌細胞を、任意の好適な方法/表現型により選択することができることも当業界で知られている。本発明の文脈においては、本明細書に上記されたアッセイ(a)および/もしくはアッセイ(A)においてペプチド濃度を低下させる能力が増加した突然変異体ならびに/またはストレプトコッカス・サリバリウスの増殖を刺激し、ストレプトコッカス・ミュータンスおよび/もしくはポルフィロモナス・ギンギバリスの増殖を刺激しない能力を有する突然変異体を、本明細書に上記されたか、または添付の実施例に記載の方法に従って試験することができる。しかしながら、用語「突然変異体」はまた、乳酸菌群に属する上記微生物の細胞、好ましくは、そのゲノム、すなわち、細菌染色体中に天然の、自然発生的突然変異を担持する寄託微生物の細胞を含む。「自然発生的突然変異」は、自然に生じる、すなわち、人によるか、または変異原への曝露による直接的遺伝子操作を含まない突然変異である。自然発生的突然変異体の選択を、株を培養し、例えば、本明細書に上記されたアッセイ(a)および/もしくはアッセイ(A)においてペプチド濃度を低下させる能力の増加を示す、ならびに/またはストレプトコッカス・サリバリウスの増殖を刺激し、ストレプトコッカス・ミュータンスおよび/もしくはポルフィロモナス・ギンギバリスの増殖を刺激しない能力を示す細菌変異体の能力により、所望の変異体を選択することにより達成することができる(例えば、Sambrook, Russell 「Molecular Cloning, A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory, N.Y. (2001); Ausubel, 「Current Protocols in Molecular Biology」、Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y. (1989)を参照されたい)。例えば、そのような突然変異は、培養の間、例えば、DNA複製を伴う正常な細胞分裂プロセスの間または乳酸菌群に属する上記微生物の継代および/もしくは突然変異体の保存の間に起こってもよい。
【0081】
本発明はまた、乳酸菌群に属する上記微生物の誘導体にも関する。用語「乳酸菌群に属する上記微生物の誘導体」は、乳酸菌群に属する上記微生物の不活化形態、類似体または断片を含み、該不活化形態、類似体または断片は、本明細書に上記されたアッセイ(a)および/もしくはアッセイ(A)においてペプチド濃度を低下させる能力ならびに/またはストレプトコッカス・サリバリウスの増殖を刺激し、ストレプトコッカス・ミュータンスおよび/もしくはポルフィロモナス・ギンギバリスの増殖を刺激しない能力を保持する。
【0082】
本発明に従えば、用語「不活化形態」は、ラクトバチルス属に属する微生物に特異的なプレート上で単一のコロニーを形成することが最早できない本発明に従う死んだ細胞または不活化された細胞を含む。前記死んだ細胞または不活化された細胞は、無傷の、または壊れた細胞膜を有してもよい。乳酸菌群に属する上記微生物の細胞を殺傷するか、または不活化するための方法は、当業界で公知である。El-Nezamiら、J. Food Prot. 61 (1998), 466-468は、UV照射によりラクトバチルス種を不活化するための方法を記載している。好ましくは、本発明に従う微生物の細胞は、添付の実施例に記載のように熱不活化されているか、または凍結乾燥されている。上記の細胞の凍結乾燥は、本明細書に上記されたアッセイ(a)および/もしくはアッセイ(A)においてペプチド濃度を低下させる能力ならびに/またはストレプトコッカス・サリバリウスの増殖を刺激し、ストレプトコッカス・ミュータンスおよび/もしくはポルフィロモナス・ギンギバリスの増殖を刺激しない能力を保持しながら、それらを容易に保存し、取り扱うことができるという利点を有する。さらに、凍結乾燥された細胞を、当業界で公知の条件下で好適な液体または固体培地に適用した場合に再度増殖させることができる。凍結乾燥を、当業界で公知の方法により行う。好ましくは、それを室温、すなわち、16℃〜25℃の任意の温度で少なくとも2時間行う。特に好ましくは、それを減圧下で16時間行う。さらに、乳酸菌群に属する上記微生物の凍結乾燥された細胞は、本明細書に上記されたアッセイ(a)および/もしくはアッセイ(A)においてペプチド濃度を低下させ、ならびに/またはストレプトコッカス・サリバリウスの増殖を刺激し、ストレプトコッカス・ミュータンスおよび/もしくはポルフィロモナス・ギンギバリスの増殖を刺激しないことが依然としてできるように、4℃の温度で少なくとも4週間安定である。
【0083】
熱不活性化を、80℃の温度で、少なくとも10分間、乳酸菌群に属する上記微生物の細胞をインキュベートすることにより達成することができる。熱不活性化を、2バールの大気圧で飽和水蒸気の存在下、121℃の温度で少なくとも20分間、前記細胞および/または上清をオートクレーブすることにより達成することができる。好ましくは、細胞または培養上清の熱不活性化を、熱処理と関連して本明細書に上記されたように達成する。
【0084】
代替法においては、乳酸菌群に属する上記微生物の細胞の熱不活性化を、-20℃で少なくとも4週間、3週間、2週間、1週間、12時間、6時間、2時間または1時間、前記細胞を凍結することにより達成する。少なくとも70%、75%もしくは80%、より好ましくは85%、90%もしくは95%、特に好ましくは少なくとも97%、98%、99%、より特に好ましくは、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%もしくは99.9%、最も好ましくは100%の乳酸菌群に属する上記微生物の類似体の細胞は死んでいるか、または不活化されているが、それらは依然として本明細書に上記されたアッセイ(a)および/もしくはアッセイ(A)においてペプチド濃度を低下させる能力、ならびに/またはストレプトコッカス・サリバリウスの増殖を刺激し、ストレプトコッカス・ミュータンスおよび/もしくはポルフィロモナス・ギンギバリスの増殖を刺激しない能力を有する。乳酸菌群に属する上記微生物の不活化形態、類似体または断片が実際に死んでいるか、または不活化されているかどうかを、当業界で公知の方法により、例えば、生存能力に関する試験により試験することができる。
【0085】
用語「不活化形態」または「類似体」はまた、本明細書に上記されたアッセイ(a)および/もしくはアッセイ(A)においてペプチド濃度を低下させる能力、ならびに/またはストレプトコッカス・サリバリウスの増殖を刺激し、ストレプトコッカス・ミュータンスおよび/もしくはポルフィロモナス・ギンギバリスの増殖を刺激しない能力を保持する、上記微生物の溶解物、膜画分などの画分、または抽出物も包含する。これらの能力を、本明細書に記載のように、および特に、添付の実施例に記載のように試験することができる。溶解物の場合、上記のような本発明に従う微生物の画分または抽出物は、本明細書に上記されたアッセイ(a)および/もしくはアッセイ(A)においてペプチド濃度を低下させる能力、ならびに/またはストレプトコッカス・サリバリウスの増殖を刺激し、ストレプトコッカス・ミュータンスおよび/もしくはポルフィロモナス・ギンギバリスの増殖を刺激しない能力を示さなくてもよく、当業者であれば、例えば、本明細書の以下に例示される当業界で公知の方法により前記溶解物、画分または抽出物をさらに精製して、前記低下を阻害する物質を除去することができる。その後、当業者であれば、前記溶解物、画分または抽出物が本明細書に上記されたアッセイ(a)および/またはアッセイ(A)においてペプチド濃度を低下させることができるかどうかについて、それを再度試験することができる。
【0086】
本発明に従えば、用語「溶解物」とは、本発明に従う微生物の細胞の水性媒体中の溶液または懸濁液を意味する。しかしながら、この用語は、限定的な意味で解釈されるべきではない。細胞溶解物は、例えば、DNA、RNA、タンパク質、ペプチド、炭水化物、脂質などの大分子および/もしくはアミノ酸、糖、脂肪酸などの小分子、またはその画分を含む。さらに、前記溶解物は、平滑構造または顆粒状構造のものであってよい細胞破片を含む。好ましくは、前記溶解物は、細胞壁もしくは細胞膜もしくはその両方または細胞壁もしくは細胞膜もしくはその両方の一部もしくは断片を含む。微生物の細胞溶解物を調製する方法は、例えば、ガラスもしくは鉄ビーズもしくは酵素細胞溶解などを用いるFrenchプレス、細胞ミルを使用することにより、当業界で公知である。さらに、細胞の溶解は、細胞を開口/破壊するための当業界で公知の様々な方法に関する。細胞を溶解する方法は重要ではなく、乳酸菌群に属する上記微生物の細胞の溶解を達成することができる任意の方法を用いることができる。好適な方法を、当業者により選択することができ、例えば、細胞の開口/破壊を酵素的、化学的または物理的に行うことができる。酵素および酵素カクテルに関する非限定例は、プロテイナーゼK、リパーゼもしくはグリコシダーゼなどのプロテアーゼである;化合物に関する非限定例は、イオノフォア、洗剤、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、酸もしくは塩基である;ならびに物理的手段の非限定例は、Frenchプレスなどの高圧、浸透圧、加熱または冷却などの温度である。さらに、タンパク質溶解酵素、酸、塩基など以外の酵素の好適な組合せを用いる方法を用いることもできる。例えば、乳酸菌群に属する上記微生物の細胞を、凍結および解凍、より好ましくは、-70℃以下の温度での凍結および30℃以上の温度での解凍により溶解し、特に、凍結は-75℃以下の温度が好ましく、解凍は35℃以下の温度が好ましく、最も好ましくは、-80℃以下の温度での凍結および37℃以上の温度での解凍である。また、前記凍結/解凍を、少なくとも1回、より好ましくは少なくとも2回、さらにより好ましくは少なくとも3回、特に好ましくは少なくとも4回および最も好ましくは少なくとも5回繰り返す。従って、当業者であれば、上記の一般的説明を参照し、必要に応じて、これらの方法を好適に改変または変更することにより、所望の溶解物を調製することができる。好ましくは、記載の溶解物に用いられる水性媒体は、水、生理食塩水、またはバッファー溶液である。細菌細胞溶解物の利点は、技術的容易性があまり必要でないため、それを容易に作製し、費用効果的に保存することができることである。
【0087】
好ましくは、用語「抽出物」は、本明細書に上記されたアッセイ(a)および/もしくはアッセイ(A)においてペプチド濃度を低下させる能力、ならびに/またはストレプトコッカス・サリバリウスの増殖を刺激し、ストレプトコッカス・ミュータンスおよび/もしくはポルフィロモナス・ギンギバリスの増殖を刺激しない能力を保持する、乳酸菌群に属する上記微生物の細胞内成分、例えば、タンパク質、DNA、RNA、ペプチド、炭水化物、脂質などの大分子および/またはアミノ酸、糖、脂肪酸などの小分子または任意の他の有機化合物もしくは分子、または前記大分子および/もしくは小分子もしくはその任意の画分の組合せを意味する。これらの特性を、本明細書に記載のように、および特に、添付の実施例に記載のように試験することができる。好ましくは、前記抽出物は、細胞壁もしくは細胞膜もしくはその両方または細胞壁もしくは細胞膜もしくはその両方の一部もしくは断片を含む。より好ましくは、用語「抽出物」とは、無細胞培地中の任意の上記細胞内成分を指す。
【0088】
さらに好ましい実施形態においては、抽出物を、本明細書に上記されたように、細胞を開口/破壊するための当業界で公知の様々な方法に従って細胞を溶解することにより、および/または当業者には公知の任意の好適な液体、培地もしくはバッファー中の乳酸菌群に属する上記微生物の培養物またはそのような培養物もしくは任意の他の好適な細胞懸濁液の溶解物の遠心分離手順の上清として取得することができる。より好ましくは、抽出物は、精製された溶解物もしくは細胞培養上清またはその任意の画分もしくは一部分であってよく、その精製された溶解物もしくは細胞培養上清またはその任意の画分もしくは一部分は、本明細書に上記されたアッセイ(a)および/もしくはアッセイ(A)においてペプチド濃度を低下させる能力、ならびに/またはストレプトコッカス・サリバリウスの増殖を刺激し、ストレプトコッカス・ミュータンスおよび/もしくはポルフィロモナス・ギンギバリスの増殖を刺激しない能力を保持する。これらの特性を、本明細書に記載のように、および特に添付の実施例に記載のように試験することができる。溶解物、培養上清または抽出物の分画および精製のための好適な方法は当業者には公知であり、例えば、アフィニティクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、およびカラムもしくはバッチ式方法における他のクロマトグラフィー材料を用いるクロマトグラフィー、他の分画方法、例えば、濾過法、例えば、限外濾過、透析、遠心分離中でのサイズ排除を用いる透析および濃縮、密度勾配もしくは段階マトリックス中での遠心分離、沈降、例えば、親和性沈降、塩溶もしくは塩析(硫酸アンモニウム沈降)、アルコール沈降または任意の他の好適なタンパク質化学、分子生物学、生化学、免疫学、化学もしくは物理学的方法が挙げられる。
【0089】
本発明に従えば、溶解物はまた、上記溶解物からの分子画分の調製物でもある。これらの画分を、当業者には公知の方法、例えば、アフィニティクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、およびカラムもしくはバッチ式方法における他のクロマトグラフィー材料を用いるクロマトグラフィー、他の分画方法、例えば、濾過法、例えば、限外濾過、透析、遠心分離中でのサイズ排除を用いる透析および濃縮、密度勾配もしくは段階マトリックス中での遠心分離、沈降、例えば、親和性沈降、塩溶もしくは塩析(硫酸アンモニウム沈降)、アルコール沈降または溶解物の上記成分を分離するための任意の他のタンパク質化学、分子生物学、生化学、免疫学、化学もしくは物理学的方法により取得することができる。好ましい実施形態においては、他のものより免疫原性が高い画分が好ましい。当業者であれば、上記の一般的説明および本明細書に記載の実施例中の具体的説明を参照し、必要に応じて、これらの方法を好適に改変または変更することにより、好適な方法を選択し、その免疫原性を決定することができる。
【0090】
従って、用語「不活化形態または類似体」はまた、好ましくは、本明細書に上記されたアッセイ(a)および/もしくはアッセイ(A)においてペプチド濃度を低下させる能力、ならびに/またはストレプトコッカス・サリバリウスの増殖を刺激し、ストレプトコッカス・ミュータンスおよび/もしくはポルフィロモナス・ギンギバリスの増殖を刺激しない能力を保持する、本発明の微生物の濾液も包含する。これらの特性を、本明細書に記載のように、および特に、添付の実施例に記載のように試験することができる。本明細書に上記されたように、乳酸菌群に属する上記微生物の濾液が、本明細書に上記されたアッセイ(a)および/もしくはアッセイ(A)においてペプチド濃度を低下させる能力、ならびに/またはストレプトコッカス・サリバリウスの増殖を刺激し、ストレプトコッカス・ミュータンスおよび/もしくはポルフィロモナス・ギンギバリスの増殖を刺激しない能力を有さない場合、当業者であれば、例えば、本明細書の以下に例示される当業界で公知の方法により前記濾液をさらに精製して、前記低下および/または増殖刺激を阻害する物質を除去することができる。その後、当業者であれば、それが本明細書に上記されたアッセイ(a)および/もしくはアッセイ(A)においてペプチド濃度を低下させる、ならびに/またはストレプトコッカス・サリバリウスの増殖を刺激し、ストレプトコッカス・ミュータンスおよび/もしくはポルフィロモナス・ギンギバリスの増殖を刺激しないことができるかどうかについて、前記濾液を再度試験することができる。
【0091】
用語「濾液」はまた、当業者には公知の任意の好適な液体、培地またはバッファー中での乳酸菌群に属する上記微生物の培養物の遠心分離手順の上清として取得された本明細書に上記された本発明の微生物の無細胞溶液または懸濁液を意味する。しかしながら、この用語は、限定的な意味で解釈されるべきではない。前記濾液は、例えば、DNA、RNA、タンパク質、ペプチド、炭水化物、脂質などの大分子および/またはアミノ酸、糖、脂肪酸などの小分子、またはその画分を含む。微生物の濾液を調製するための方法は、当業界で公知である。さらに、「濾液」は、当業界で公知の様々な方法に関する。正確な方法は重要ではなく、本明細書に上記された本発明の微生物の細胞の濾過を達成することができる任意の方法を用いることができる。用語「濾液」はまた、例えば、遠心分離により細胞をペレット化し、得られる上清を回収することにより取得された培養上清を含む。
【0092】
特に好ましい実施形態においては、前記濾液、最も好ましくは、培養上清を、特に、本明細書に上記されたように加熱または凍結乾燥によりさらに処理する。
【0093】
本発明に従う微生物の「断片」は、乳酸菌群に属する上記微生物の細胞の任意の部分を包含する。好ましくは、前記断片は、膜調製により得られた膜画分である。ラクトバチルス属に属する微生物の膜調製物を、例えば、Rollanら、Int. J. Food Microbiol. 70 (2001), 303-307, Matsuguchiら、Clin. Diagn. Lab. Immunol. 10 (2003), 259-266またはStentzら、Appl. Environ. Microbiol. 66 (2000), 4272-4278またはVarmanenら、J. Bacteriology 182 (2000), 146-154に記載の方法を用いることにより、当業界で公知の方法により取得することができる。あるいは、全細胞調製物も想定される。好ましくは、本明細書に記載の乳酸菌群に属する上記微生物の誘導体または断片は、本明細書に上記されたアッセイ(a)および/もしくはアッセイ(A)においてペプチド濃度を低下させる能力、ならびに/またはストレプトコッカス・サリバリウスの増殖を刺激し、ストレプトコッカス・ミュータンスおよび/もしくはポルフィロモナス・ギンギバリスの増殖を刺激しない能力を保持する。
【0094】
本発明はまた、本発明に従う上記微生物、その不活化形態、誘導体または突然変異体または類似体または断片を含む組成物にも関する。前記組成物は、好ましくは、例えば、口臭および/もしくは臭い息の治療および/もしくは予防のための化粧用組成物もしくは医薬組成物、または飼料もしくは食品組成物である。
【0095】
好ましい実施形態においては、前記組成物は、固体形態の組成物1 mgあたり、102〜1012個の細胞、好ましくは、103〜108個の細胞の量の上記微生物を含む。液体形態の組成物の場合、微生物の量は、102〜1013個の細胞/mlである。しかしながら、特定の組成物について、前記微生物の量は、本明細書に記載のものと異なっていてもよい。
【0096】
化粧用組成物は、化粧上または経口上許容し得る担体または賦形剤を含んでもよい。医薬組成物は、製薬上または経口上許容し得る担体または賦形剤を含んでもよい。飼料または食品組成物は、経口上許容し得る担体または賦形剤を含んでもよい。
【0097】
本発明はまた、口臭および/または臭い息の予防および/または治療のための、本発明に従う上記微生物、その不活化形態、誘導体もしくは突然変異体もしくは類似体もしくは断片を含む組成物、特に、化粧用組成物、飼料もしくは食品組成物または医薬組成物の調製のための本発明に従う微生物、その不活化形態、誘導体もしくは突然変異体もしくは類似体もしくは断片の使用にも関する。
【0098】
そのような組成物を、本発明に従う微生物を、化粧上、経口上または製薬上許容し得る担体または賦形剤と共に製剤化する工程を含む方法により製造することができる。
【0099】
本発明に従って用いられる用語「組成物」は、上記の少なくとも1種の微生物もしくは突然変異体もしくは誘導体または前記微生物の不活化形態もしくは類似体もしくは断片を含む組成物に関する。本明細書の以下に記載される、本発明に従って用いられる組成物が、任意の組合せの上記成分を含むことが想定される。それは、必要に応じて、口臭および/または臭い息を予防するのに好適な少なくとも1種のさらなる成分を含んでもよい。従って、それは、必要に応じて、本明細書の以下に記載されるさらなる成分の任意の組合せを含んでもよい。用語「口臭および/または臭い息を予防するのに好適な成分」は、口臭を低下させるための当業界で公知の化合物または組成物および/またはその組合せを包含する。その例は、舌を治療するのに用いられる、塩化亜鉛などの金属塩、またはアルコールもしくはクロルヘキシジンなどの消毒剤である。別の例は、唾液のpHを生理学的に正常なレベルに維持するのを助ける化合物である。これらは、pHを上昇させる効果またはpHを緩衝化する効果を有する物質(例えば、重炭酸塩、カルバミド、リン酸塩、タンパク質および/または塩)であってよい。虫歯および粘膜感染に関連する微生物種は酸性pHを好み;歯周病の発生に関連する微生物種は正常より高いpHを好むが、良好な口腔衛生に関連する微生物種は中性pHを好むことが知られている。さらなる例は、US200707137、US2006018843もしくはWO2007/077210に開示されたプロバイオティック細菌(例えば、ラクトバチルスおよびストレプトコッカス)またはUS2006045870に記載のように好気的および嫌気的条件下でVSC産生細菌と相互作用し、過酸化水素を生成することにより、それらの増殖を阻害する、ワイセラ属に属する乳酸菌である。最後に、BLIS(バクテリオシン様阻害物質)を産生するストレプトコッカス・サリバリウス株およびその抽出物を、本発明の文脈で言及することができる(US2006171901)。
【0100】
本発明に従って用いられる組成物は、必要に応じて、口臭および/または臭い息を予防するのに好適である上記の任意の成分のうちの1種以上を含んでもよい。かくして、前記組成物は、少なくとも2、3、4、5種など、すなわち、「n」種の任意成分を含んでもよく、ここで「n」は限定されるものではないが、2より大きい整数である。前記任意成分を、任意の可能な組合せで組合わせることができる。
【0101】
前記組成物は、固体、液体または気体形態にあってもよく、特に、粉末、錠剤、フィルム調製物、溶液、エアロゾル、顆粒、ピル、懸濁液、乳濁液、カプセル、シロップ、液体、エリキシル剤、抽出物、チンキ剤もしくは液体抽出物の形態、または経口投与にとって特に好適である形態にあってもよい。
【0102】
経口投与にとって好適な液体調製物、例えば、シロップを、水、スクロース、ソルビトールおよびフルクトースなどの従来の糖類、ポリエチレングリコールおよびプロピレングリコールなどのグリコール、ゴマ種子油、オリーブ油および大豆油などの油、p-ヒドロキシ安息香酸エステルなどの防腐剤、p-ヒドロキシ安息香酸誘導体、例えば、p-ヒドロキシ安息香酸メチルおよび安息香酸ナトリウムなどの保存剤、ならびに香料、例えば、イチゴ香料もしくはペパーミントなどの他の材料を用いて調製することができる。
【0103】
さらに、経口投与にとって好適な調製物、例えば、錠剤、粉末および顆粒を、スクロース、グルコース、マンニトールおよびソルビトールなどの従来の糖類、ジャガイモ、小麦およびトウモロコシなどのデンプン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、および塩化ナトリウムなどの無機材料、結晶性セルロース、甘草粉末およびリンドウ粉末などの植物粉末、パインデックスなどの賦形剤、デンプン、寒天、ゼラチン粉末、結晶性セルロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウムおよびアルギン酸ナトリウムなどの粉砕剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク、水素化植物油、マクロゴール、およびシリコン油などの潤滑剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルメロース、ゼラチン、およびデンプン糊液などの結合剤、脂肪酸エステルなどの界面活性剤、ならびにグリセリンなどの可塑剤を用いて製造することができる。フィルム調製物を、当業界で公知の方法により調製することができる。フィルムの調製のための例は、本明細書の実施例19に与えられている。
【0104】
通常の経口投与の場合、上記微生物またはその類似体もしくは断片の用量は、細胞数に関して、または質量に関して上記のようなもの(乾燥重量で)であってよく、例えば、1μg〜50 g、1μg〜10 g、1μg〜5 mg、1μg〜1 mgまたは任意の他の重量/被験者/日もしくは毎日数部であってよい。非ヒト動物に投与する場合、さらに、用量は動物の年齢および種ならびにその症状の性質もしくは重篤度に応じて変化する。限定されるものではないが、動物のための用量は、0.1 mg〜10 g/kg体重、好ましくは、1 mg〜1 g/kg体重を1日1回または1日数部である。しかしながら、これらの用量および投与回数は、個々の状態に応じて変化する。
【0105】
好ましくは、本発明に従う組成物は、化粧上許容し得る担体または賦形剤をさらに含む化粧用組成物である。より好ましくは、前記組成物は、歯磨き剤、チューイングガム、ロゼンジ剤、口内洗浄液、マウスリンス、デンタルフロスまたはデンタルテープである。
【0106】
本発明に従う化粧用組成物は、本発明の組成物に関連して上記されたような微生物、その不活化形態、突然変異体、誘導体、類似体もしくは断片、ならびにさらに化粧上もしくは経口上許容し得る担体を含む。好ましくは、本発明に従う組成物に関連して記載されたように、前記微生物、その不活化形態、突然変異体、誘導体、類似体または断片は、本明細書に上記された微生物、その不活化形態、突然変異体、誘導体、類似体または断片である。好ましくは、本発明に従う化粧用組成物は、経口適用における使用のためのものである。従って、それは練り歯磨き、歯磨き剤、歯磨き粉、局所経口ゲル、マウスリンス、義歯製品、マウススプレー、ロゼンジ剤、経口錠剤、チューイングガム、デンタルフロスまたはデンタルテープの形態にあってよい。
【0107】
本明細書で用いられる用語「経口上または化粧上許容し得る担体」は、本発明の組成物を安全かつ有効な様式で口腔に適用するのに用いることができる好適なビヒクルを意味する。そのようなビヒクルとしては、フッ素イオン源、さらなる抗結石剤、バッファー、他の研磨材料、過酸化物源、アルカリ金属重炭酸塩、増粘材料、保湿剤、水、界面活性剤、二酸化チタン、香料系、甘味料、キシリトール、着色料、およびその混合物などの材料が挙げられる。本明細書で用いられる用語「安全かつ有効な量」は、歯を掃除する、ならびに口腔の組織および構造を害することなく、ステイン/歯垢/歯肉炎/歯石を減少させるのに十分な量を意味する。
【0108】
本明細書に記載の組成物のpHは、好ましくは、約3.0〜約9.0の範囲であるが、好ましくは約5.5〜約9.0のpH、最も好ましくは7.0〜約8.5または9.0のpHである。
【0109】
化粧用組成物は、通常の使用過程において、特定の治療剤の全身投与のために意図的に嚥下されないが、むしろ経口作用のために実質的に全ての歯の表面および/または口腔組織と接触させるのに十分な時間、口腔内に保持される生成物である。
【0110】
本明細書で用いられる用語「歯磨き剤」は、別途特定しない限り、ペースト、ゲル、または液体製剤を意味する。歯磨き組成物は、ペーストの周囲にゲルを有する、ディープストライプ、表面ストライプ、多層などの任意の所望の形態にあってよく、またはその任意の組合せであってもよい。歯磨き組成物を、ディスペンサーの物理的に分離された区分中に含有させ、並べて分注することができる。歯磨き組成物は、例えば、EP-B1 0 617 608に記載されている。
【0111】
好ましい歯磨き組成物は、実施例13〜16に記載されている。上記成分に加えて、本発明の歯磨き剤は、様々な任意の歯磨き成分を含んでもよく、そのうちのいくつかを以下に記載する。任意成分としては、例えば、限定されるものではないが、接着剤、泡立て剤、香料、甘味料、追加の抗歯垢剤、追加の研磨剤、および着色料が挙げられる。これらの、および他の任意成分は、例えば、米国特許第5,004,597号; 同第4,885,155号; 同第3,959,458号; および同第3,937,807号にさらに記載されている。
【0112】
例えば、練り歯磨きは、界面活性剤、キレート化剤、フッ素源、歯を白くする活性物質および歯の色を改変する物質、増粘剤、保湿剤、香料および甘味料、アルカリ金属重炭酸塩、様々な担体および/または他の活性薬剤を含んでもよい。
【0113】
本発明に従って使用される1つの好ましい任意薬剤は、界面活性剤、好ましくは、サルコシン酸塩界面活性剤、イセチオン酸塩界面活性剤および酒石酸塩界面活性剤からなる群より選択されるものである。本明細書における使用にとって好ましいのは、これらの界面活性剤のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩である。最も好ましくは、以下のもの:サルコシン酸ラウロイル、サルコシン酸ミリストイル、サルコシン酸パルミトイル、サルコシン酸ステアロイルおよびサルコシン酸オレオイルのナトリウムおよびカリウム塩である。
【0114】
別の好ましい任意薬剤は、酒石酸およびその製薬上許容し得る塩、クエン酸およびクエン酸アルカリ金属ならびにその混合物などのキレート化剤である。キレート化剤は、細菌の細胞壁中に認められるカルシウムを錯体化することができる。キレート化剤はまた、カルシウム架橋からカルシウムを除去することにより歯垢を破壊し、このバイオマスを無傷のまま保持するのを助けることができる。
【0115】
25℃で組成物中にフッ化物イオン濃度を与える、ならびに/またはそれを約0.0025重量%〜約5.0重量%、好ましくは約0.005重量%〜約2.0重量%で用いた場合に、虫歯防止効果を提供するのに十分な量の歯磨き剤および他の経口組成物中に存在する追加の水溶性フッ化物化合物を有することが一般的である。様々なフッ化物イオンが得られる材料を、本発明の組成物中の可溶性フッ化物源として用いることができる。好適なフッ化物イオンが得られる材料の例は、米国特許第3,535,421号および第3,678,154号に見出される。代表的なフッ化物イオン源としては、フッ化スズ、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、モノフルオロリン酸ナトリウムおよび多くの他のものが挙げられる。フッ化スズおよびフッ化ナトリウム、ならびにその混合物が特に好ましい。
【0116】
本発明の口腔ケア組成物はまた、過酸化物、過ホウ酸塩、過炭酸塩、ペルオキシ酸、過硫酸塩、亜塩素酸金属、およびその組合せなどの漂白剤または酸化剤などの歯を白くする活性物質を含む。好適な過酸化物としては、過酸化水素、過酸化尿素、過酸化カルシウム、およびその混合物が挙げられる。好ましい過炭酸塩は、過炭酸ナトリウムである。他の好適な歯を白くする薬剤としては、過硫酸カリウム、アンモニウム、ナトリウムおよびリチウムならびに過ホウ酸一および四水和物、ならびにピロリン酸ナトリウムペルオキシ水和物が挙げられる。好適な亜塩素酸金属としては、亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸バリウム、亜塩素酸マグネシウム、亜塩素酸リチウム、亜塩素酸ナトリウム、および亜塩素酸カリウムが挙げられる。好ましい亜塩素酸塩は亜塩素酸ナトリウムである。さらなる白くする活性物質は、次亜塩素酸塩および二酸化塩素であってよい。
【0117】
歯を白くする薬剤としての漂白剤に加えて、歯の色を改変する物質を、本発明において有用な口腔ケア活性物質の間で考慮することができる。これらの物質は、消費者を満足させるように歯の色を改変するのに好適である。これらの物質は、歯の表面に適用した場合、吸収および/または光の反射に関してその表面を改変する粒子を含む。そのような粒子は、そのような粒子を含むフィルムを歯の表面にわたって適用した場合、外見上の利益を提供する。
【0118】
練り歯磨きまたはゲルを調製する際に、組成物の所望の稠度を提供する、使用時に望ましい活性物質を放出する特性を提供する、貯蔵安定性を提供する、および組成物の安定性を提供するなどのために、いくらかの増粘材料を添加することが必要である。好ましい増粘剤は、カルボキシビニルポリマー、カラゲナン、ヒドロキシエチルセルロース、ラポナイトならびにカルボキシメチルセルロースナトリウムおよびカルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースナトリウムなどのセルロースエーテルの水溶性塩である。カラヤゴム、キサンタンゴム、アラビアゴムおよびトラガカントゴムなどの天然ゴムを用いることもできる。コロイド状ケイ酸アルミニウムマグネシウムまたは微粉シリカを、増粘剤の一部として用いて、質感をさらに改良することができる。
【0119】
本発明の組成物の局所経口担体の別の任意成分は、保湿剤である。保湿剤は、練り歯磨き組成物が空気への曝露時に硬化するのを防ぐ、口に湿った感覚を与える、および、特定の保湿剤については、練り歯磨き組成物に香料の望ましい甘味を付与するのに役立つ。保湿剤は、純粋な保湿剤ベースで、一般的には、約0重量%〜約70重量%、好ましくは約5重量%〜約25重量%の本明細書に記載の組成物を含む。本発明の組成物における使用にとって好適な保湿剤としては、グリセリン、ソルビトール、キシリトール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、およびプロピレングリコールなどの食用多価アルコール、特に、ソルビトールおよびグリセリンが挙げられる。
【0120】
香料および甘味料を前記組成物に添加することもできる。好適な香料としては、冬緑油、ペパーミント油、スペアミント油、クローブバッド油、メントール、アネトール、サリチル酸メチル、オイカリプトール、カシア、1-メンチル酢酸、セージ、オイゲノール、パセリ油、オキサノン、α-イリソン、マージョラム、レモン、オレンジ、プロペニルグアエトール、シナモン、バニリン、チモール、リナロール、CGAとして知られるシンナムアルデヒドグリセロールアセタール、およびその混合物が挙げられる。一般的には、香料を約0.001重量%〜約5重量%の組成物のレベルで前記組成物中で用いる。
【0121】
用いることができる甘味料としては、スクロース、グルコース、サッカリン、デキストロース、レブロース、本明細書に上記されたラクトース、マンニトール、ソルビトール、フルクトース、マルトース、キシリトール、サッカリン塩、タウマチン、アスパルテーム、D-トリプトファン、ジヒドロカルコン、アセサルフェームおよびシクラミン酸塩、特に、シクラミン酸ナトリウムならびにサッカリンナトリウム、ならびにその混合物が挙げられる。組成物は、好ましくは、約0.1重量%〜約10重量%のこれらの薬剤、好ましくは、約0.1重量%〜約1重量%の前記組成物を含む。
【0122】
本発明の組成物はまた、アルカリ金属重炭酸塩を含んでもよい。アルカリ金属重炭酸塩は、水中に可溶性であり、安定化されていない限り、水性系中で二酸化炭素を遊離する傾向がある。ベーキングソーダとしても知られる重炭酸ナトリウムは、好ましいアルカリ金属重炭酸塩である。本発明の組成物は、約0.5%〜約30%、好ましくは約0.5%〜約15%、および最も好ましくは約0.5%〜約5%のアルカリ金属重炭酸塩を含んでもよい。
【0123】
市販の好適な経口組成物の調製において用いられる水は、好ましくは、低イオン含量のものであり、かつ有機不純物を含まないべきである。一般的には、水は約10重量%〜約50重量%、および好ましくは、約20重量%〜約40重量%の本明細書に記載の水性練り歯磨きを含む。これらの量の水は、ソルビトールなどの他の材料と共に導入されるものに添加される遊離水を含む。二酸化チタンを本発明の組成物に添加してもよい。二酸化チタンは白色の粉末であり、前記組成物に不透明性を加える。一般的には、二酸化チタンは、約0.25重量%〜約5重量%の歯磨き組成物を含む。
【0124】
好ましくは、本発明の組成物のpHを、緩衝化剤の使用により調整する。本明細書で用いられる緩衝化剤とは、前記組成物のpHを約4.5〜約9.5の範囲に調整するのに用いることができる薬剤を指す。緩衝化剤としては、リン酸一ナトリウム、リン酸三ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、クエン酸、およびクエン酸ナトリウムが挙げられる。緩衝化剤を、約0.5重量%〜約10重量%の本発明の組成物のレベルで投与することができる。歯磨き組成物のpHを、3:1の歯磨き剤の水性スラリー、例えば、1重量部の練り歯磨きに対して3重量部の水から測定する。
【0125】
本発明の組成物中で用いることができる他の任意薬剤としては、C12〜C20アルキルジメチコンコポリオールおよびその混合物などのアルキル-およびアルコキシ-ジメチコンコポリオールから選択されるジメチコンコポリオールが挙げられる。商標名Abil EM90の下で販売されているセチルジメチコンコポリオールが非常に好ましい。ジメチコンコポリオールは、一般的には、約0.01重量%〜約25重量%、好ましくは、約0.1重量%〜約5重量%、より好ましくは約0.5重量%〜約1.5重量%のレベルで存在する。ジメチコンコポリオールは、積極的な歯の感覚の利益を提供するのに役立つ。他の有用な担体としては、米国特許第5,213,790号; 第5,145,666号; 第5,281,410号; 第4,849,213号および第4,528,180号に開示されたものなどの二相歯磨き製剤が挙げられる。
【0126】
前記化粧用組成物はまた、抗菌剤などの他の活性薬剤を含んでもよい。そのような薬剤に含まれるのは、ハロゲン化ジフェニルエーテルなどの不溶性非陽イオン性抗菌剤、フェノールおよびその相同体、モノおよびポリ-アルキルおよび芳香族ハロフェノールなどのフェノール化合物、レゾルシノールおよびその誘導体、ビスフェノール化合物およびハロゲン化サリチルアニリド、安息香酸エステル、ならびにハロゲン化カルバニリドである。水溶性抗菌剤としては、特に、四級アンモニウム塩およびビスビクアニド塩が挙げられる。トリクロサン一リン酸は、さらなる水溶性抗菌剤である。四級アンモニウム剤としては、四級窒素上の1個または2個の置換基が、約8〜約20、典型的には、約10〜約18個の炭素原子の炭素鎖長(典型的には、アルキル基)を有するが、残りの置換基(典型的には、アルキルまたはベンジル基)が約1〜約7個の炭素原子、典型的には、メチルまたはエチル基などのより少ない数の炭素原子を有するものが挙げられる。ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラドデシルピリジニウムクロリド、ジモフェンブロミド、N-テトラデシル-4-エチルピリジニウムクロリド、ドデシルジメチル(2-フェノキシエチル)アンモニウムブロミド、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロリド、セチルピリジニウムクロリド、四級化5-アミノ-1,3-ビス(2-エチル-ヘキシル)-5-メチルヘキサヒドロピリミジン、ベンズアルコニウムクロリド、ベンズエトニウムクロリドおよびメチルベンズエトニウムクロリドは、典型的な四級アンモニウム抗菌剤の例である。他の化合物は、米国特許第4,206,215号に開示されたビス[4-(R-アミノ)-1-ピリジニウム]アルカンである。ビスグリシン酸銅、グリシン酸銅、クエン酸亜鉛、および乳酸亜鉛などの他の抗菌剤を含有させてもよい。酵素は、本発明の組成物において用いることができる別の型の活性物質である。有用な酵素としては、プロテアーゼ、溶解酵素、歯垢マトリックス阻害剤およびオキシダーゼの分類に属するものが挙げられる:プロテアーゼとしては、パパイン、ペプシン、トリプシン、フィシン、ブロメリンが挙げられる;細胞壁溶解酵素としては、リゾチームが挙げられる;歯垢マトリックス阻害剤としては、デキストラナーゼ、ムタナーゼが挙げられる;ならびにオキシダーゼとしては、グルコースオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、尿酸オキシダーゼ、西洋わさびペルオキシダーゼ、ミエロペルオキシダーゼ、ラクトペルオキシダーゼ、クロロペルオキシダーゼなどのペルオキシダーゼが挙げられる。オキシダーゼはまた、抗菌特性に加えて、ホワイトニング/クリーニング活性を有する。そのような薬剤は、米国特許第2,946,725号および米国特許第4,051,234号に開示されている。他の抗菌剤としては、クロルヘキシジン、トリクロサン、トリクロサン一リン酸、およびチモールなどの香油が挙げられる。トリクロサンおよびこの型の他の薬剤は、米国特許第5,015,466号および米国特許第4,894,220号に開示されている。抗歯垢利益を提供するこれらの薬剤は、約0.01重量%〜約5.0重量%の歯磨き組成物のレベルで存在してもよい。
【0127】
本明細書で定義される用語「チューイングガム」は、咀嚼に好適であり、当業者には公知の任意の好適な量のエラストマー、好ましくは、2重量%以上の前記組成物を含む菓子組成物を意味する。好適なロゼンジ剤およびチューイングガム成分は、例えば、米国特許第4,083,955号;同第6,770,264号または同第6,270,781号に開示されている。好ましいロゼンジ剤は、実施例11および12に記載のものである。好ましいチューイングガム組成物は、実施例17に記載されている。
【0128】
本発明に従う組成物は、好ましくは、エラストマー、またはいくつかの異なるエラストマーの混合物を含む。エラストマー材料は、当業界で一般的に知られているが、その例としては、スチレン-ブタジエンゴム(SBR);合成ゴム;ポリイソブチレンおよびイソブチレン-イソプレンコポリマー;天然ゴム;チクル;天然ゴム;ジェルトン;バラタ;ガッタパーチャ;レチカプシ;ソルバ;ならびにその混合物が挙げられる。本発明の組成物は、好ましくは、約2重量%〜約30重量%、より好ましくは約5重量%〜約25重量%のエラストマーを含む。エラストマーの合計レベルが約2%以下である場合、ベース組成物は弾力性、咀嚼質感、および結束を欠くが、約30%を超えるレベルでは、製剤は硬く、ゴム状であり、締まった咀嚼を維持するため、これらのレベルを、チューイングガムの所望の最終質感により決定する。エラストマー溶媒はエラストマー成分の軟化を助けるため、それらが本発明の組成物中に存在するのが好ましい。本明細書における使用のためのエラストマー溶媒の好ましい例としては、部分水素化ウッドロジンのペンタエリスリトールエステル、ウッドロジンのペンタエリスリトールエステル、部分ダイマー化ロジンのグリセロールエステル、ポリマー化ロジンのグリセロールエステル、トールオイルのグリセロールエステル、ウッドもしくはゴムロジン、部分水素化ロジンのグリセロールエステル、部分水素化ロジンのメチルエステル、およびその混合物が挙げられる。本発明の組成物は、好ましくは、約2重量%〜約50重量%、より好ましくは約10重量%〜約35重量%のエラストマー溶媒を含む。
【0129】
本発明に従うロゼンジ剤を、例えば、二糖類を圧縮可能な固体担体上に分散させ、必要に応じて、潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)などの任意の好適な錠剤化補助剤と混合し、錠剤に圧縮する、圧縮錠剤を形成させるための当業界で認識された技術により調製することができる。そのような錠剤化製剤のための固体担体成分は、ロゼンジ剤が口中で容易に溶解して、ロゼンジ剤が口中に保持された場合に口腔粘膜/食道粘膜との接触およびそれによる吸収のために唾液中に含まれる二糖類酸を放出するように、唾液に溶解する固体、例えば、冷水溶解性デンプンまたは単糖類であってよい。上記製剤のpHは、約4〜約8.5の範囲であってよい。
【0130】
本発明に従うロゼンジ剤を、他の当業界で認識された固体単位剤形製剤化技術を用いて調製することもできる。
【0131】
本発明に従う口内洗浄液またはマウスリンスは、好ましくは以下のようなものであってよい:
A ハッカ油 1.2重量部
アルニカチンキ 3.0重量部
ミルラチンキ 3.0重量部
Tween 5.0重量部
B 酒精90% 50.0重量部
C 安息香酸ナトリウム 0.2重量部
甘味料(例えば、アスパルテーム) 0.02重量部
蒸留水で100重量部に。
【0132】
Aをよく混合し、Bを攪拌しながら加えた後、Cを加える。得られる透明の液体を、沈降後48時間以内に濾過する。別の好ましい口内洗浄液は実施例18に記載されている。
【0133】
液体または固体の剤形に関わらず、本発明の1つの好ましい実施形態においては、乳酸菌群に属する上記微生物の微生物またはその類似体もしくは断片と、患者の口腔との接触を促進するのに十分な時間、前記剤形を患者の口中に保持させる。
【0134】
本明細書で用いられる用語「デンタルフロス」および「デンタルテープ」とは、隣接歯間および歯肉縁下表面に蓄積した分解食品材料を除去し、口腔内に蓄積した細菌、歯垢および/または歯石を除去するための材料を指す。デンタルフロスまたはデンタルテープは、本明細書に上記された微生物に加えて、洗浄剤、研磨剤、歯石制御成分、漂白剤、界面活性剤および/またはフッ化物などの活性成分、抗菌剤、化学療法剤または抗生物質をさらに含んでもよい。さらなる追加の薬剤は、抗歯垢剤、香料および着色料である。デンタルフロスまたはデンタルテープは、当業者には公知の任意の好適な形態、例えば、米国特許第3,664,915号、同第3,953,566号、同第3,962,153号、同第4,096,227号、同第4,187,390号、同第4,256,806号、同第4,385,093号、同第4,478,665号、同第4,776,358号、同第5,033,488号、同第5,209,251号、同第5,220,932号、同第5,518,012号、同第5,718,251号、同第5,765,576号もしくは同第5,911,228号に記載のPTFE(テフロン)デンタルフロスの形態、例えば、米国特許第3,800,812号、同第4,974,615号、同第5,760,117号、同第5,433,226号、同第5,479,952号、同第5,503,842号、同第5,755,243号、同第5,884,639号、同第6,003,525号もしくは同第6,027,592号に記載のモノフィラメント歯間デバイスの形態、または生体成分テープの形態にあってもよい。好ましくは、デンタルフロスまたはデンタルテープは、例えば、US 20050226820に記載のエラストマーでコーティングされたモノフィラメントの形態または例えば、US 20020144704に記載の指向性熱可塑剤に基づくデンタルテープの形態にあってもよい。
【0135】
本明細書に上記された化粧用組成物を、ヒトへの経口投与の領域で、ならびに動物への経口投与の領域で、好ましくは、非ヒト哺乳動物、より好ましくはペットのために用いることができる。化粧用組成物を動物への経口投与の領域で用いる場合、該組成物は当業者には公知のそのような投与にとって好適なさらなる成分を含んでもよい。
【0136】
本発明はまた、口臭および/もしくは臭い息の治療および/または予防のための医薬組成物の調製のための、本発明に従う微生物またはその不活化形態の使用にも関する。好ましくは、前記医薬組成物は、製薬上許容し得る担体または賦形剤をさらに含む。
【0137】
医薬組成物は、治療上有効量の本発明の微生物を含み、様々な形態、例えば、固体、液体、粉末、水性形態、凍結乾燥形態で製剤化することができる。
【0138】
医薬組成物を本明細書に記載のように、製薬上許容し得る担体と共に患者に投与することができる。特定の実施形態においては、用語「製薬上許容し得る」とは、動物、およびより具体的には、ヒトにおける使用のための規制当局または他の一般的に認識された薬局方により認可されていることを意味する。
【0139】
用語「担体」とは、治療剤と共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指す。そのような担体は製薬上許容し得るものである、すなわち、用いられる用量および濃度で、受容者に対して非毒性的である。それは好ましくは、スクロース溶液により提供されるように、等張性、低張性または弱高張性であり、比較的低いイオン強度を有する。そのような医薬担体は、石油、動物、植物またはピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などの合成起源のものなどの、水および油などの滅菌液体であってよい。塩水溶液および水性デキストロースおよびグリセロール溶液を、液体担体として、特に、注射用溶液のために用いることもできる。好適な医薬賦形剤としては、デンプン、グルコース、スクロース、ゼラチン、モルト、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、ナトリウムイオン、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。賦形剤は、本明細書に上記されたラクトースを含んでもよく、最も好ましくは、それはラクトースを含まない。必要に応じて、前記組成物はまた、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤を含んでもよい。これらの組成物は、溶液、懸濁液、乳濁液、錠剤、ピル、カプセル、粉末、持続放出製剤などの形態を取ってもよい。経口製剤は、医薬等級のマンニトール、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準的な担体を含んでもよい。好適な医薬担体の例は、E.W. Martinによる「Remington's Pharmaceutical Sciences」に記載されている。スキムミルク、スキムミルク粉末、ミルクまたはラクトースを含まない製品を用いることもできる。スキムミルク粉末を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に従来通り懸濁し、オートクレーブまたは濾過してタンパク質性および生きている夾雑物を除去した後、冷凍乾燥、熱乾燥、減圧乾燥、または凍結乾燥する。医薬担体として役立ち得る物質のいくつかの他の例は、グルコースおよびスクロースなどの糖;トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンなどのデンプン;カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなどのセルロースおよびその誘導体;粉末化トラガカント;モルト;ゼラチン;タルク;ステアリン酸;ステアリン酸マグネシウム;硫酸カルシウム;炭酸カルシウム;ピーナッツ油、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびカカオ油などの植物油;プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコールなどのポリオール;寒天;アルギン酸;発熱源を含まない水;等張性生理食塩水;クランベリー抽出物およびリン酸緩衝溶液;スキムミルク粉末;ならびに例えば、ビタミンC、エストロゲンおよびエキナセアなどの医薬製剤中で用いられる他の非毒性適合物質である。湿潤剤およびラウリル硫酸ナトリウムなどの潤滑剤、ならびに着色料、香料、潤滑剤、賦形剤、錠剤化剤、安定剤、抗酸化剤および保存剤も存在してもよい。
【0140】
当業界でよく知られた経口投与にとって好適な様々な担体および/または賦形剤を、本発明のために用いることができる。前記組成物は、必要に応じて、例えば、保存剤、硬化剤、潤滑剤、乳化剤、安定剤、エッセンスなどの様々な公知の添加物をさらに含んでもよい。そのような組成物は、好ましくは精製された形態の、治療上有効量の上記化合物と共に、患者への適切な投与のための形態を提供する好適な量の担体とを含むであろう。この製剤は投与様式に適合するものであるべきである。
【0141】
一般的には、前記成分を、例えば、活性薬剤の量を指示するアンプルもしくはサチェットなどの密閉容器中の乾燥した凍結乾燥粉末もしくは水を含まない濃縮物として、別々に、または単位投与剤形中で一緒に混合して供給する。前記組成物を輸液により投与する場合、それを滅菌医薬等級の水または生理食塩水を含有する輸液ボトルと共に調剤することができる。
【0142】
本発明の医薬組成物を、中性または塩の形態として製剤化することができる。製薬上許容し得る塩としては、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などから誘導されるものなどの陰イオンを用いて形成されたもの、ならびにナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどから誘導されるものなどの陽イオンを用いて形成されたものが挙げられる。
【0143】
必要に応じて、in vitroでのアッセイを用いて、最適な用量範囲を同定するのを助けることができる。製剤中で用いられる正確な用量は、投与経路、および疾患もしくは障害の重篤度にも依存するであろうし、医師の判断および各患者の環境に従って決定されるべきである。有効量を、in vitroまたは動物モデル試験系から誘導された用量応答曲線から外挿することができる。好ましくは、前記医薬組成物を、直接投与するか、またはアジュバントと共に投与する。アジュバントを、クロロキン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、EtOH、1-メチルL-2-ピロリドンもしくはその誘導体などの極性プロトン性化合物、またはジメチルスルホキシド(DMSO)、ジエチルスルホキシド、ジ-n-プロピルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセタミド、テトラメチルウレア、アセトニトリルもしくはその誘導体などの極性非プロトン性化合物からなる群より選択することができる。これらの化合物を、pH限界に関する条件で添加する。本発明に従って用いられる組成物を、脊椎動物に投与することができる。本明細書で用いられる「脊椎動物」は、当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有すると意図される。特に、「脊椎動物」は、哺乳動物、およびより具体的にはヒトを包含する。
【0144】
用語「投与される」とは、治療上有効量の上記組成物の投与を意味する。「治療上有効量」とは、それを投与した場合に効果をもたらす用量を意味し、好ましくは、この効果は抗齲蝕原性である。正確な用量は治療の目的に依存し、公知の技術を用いる当業者により確認可能であろう。当業界で公知のように、および上記のように、全身対局所送達、年齢、体重、全体的な健康、性別、食事、投与時間、薬剤相互作用および症状の重篤度に関する調整が必要であり、それは当業者による日常的な実験によって確認可能であろう。
【0145】
前記方法は、ヒト治療および動物適用の両方に適用可能である。所望の治療活性を有する本明細書に記載の化合物を、本明細書に記載のように、生理学的に許容し得る担体中で患者に投与することができる。導入の様式に応じて、製剤中の治療上活性化合物の濃度は、約0.1〜100重量%で変化してもよい。この薬剤を単独で、または他の治療と共に投与することができる。
【0146】
医薬組成物の投与を、限定されるものではないが、経口、皮下、静脈内、動脈内、結節内、髄内、鞘内、心室内、鼻内、気管支内、経皮、結節内、直腸内、腹腔内、筋肉内、肺内、経膣、直腸、または眼内などの上記で考察された様々な方法で行うことができる。
【0147】
好ましくは、前記投与は経口または頬内である。主治医および臨床学的因子が、投与計画を決定するであろう。医学界でよく知られるように、任意の一人の患者の用量は、患者の大きさ、体表面積、年齢、投与しようとする特定の化合物、性別、投与の時間および経路、全体的な健康、および同時に投与される他の薬剤などの多くの因子に依存する。典型的な用量は、例えば、0.001〜1000μgの範囲であってよいが、特に、上記の因子を考慮して、この例示範囲を下回るか、またはそれを超える用量も想定される。
【0148】
好ましくは、前記用量を週に1回与えるが、治療の進行中に、この用量を非常により長い間隔で与えてもよく、必要に応じて、非常により短い間隔で、例えば、毎日与えることができる。好ましい場合、免疫応答を本明細書に記載の方法および当業者には公知のさらなる方法を用いてモニターし、例えば、時間、量および/または組成において用量を最適化する。定期的評価により進行をモニターすることができる。本発明の医薬組成物を、局所または全身投与することができる。また、前記医薬組成物を同時治療手法において、すなわち、他の医薬品もしくは薬剤、例えば、本明細書に記載される虫歯を予防、治療または改善するための他の薬剤との同時投与において用いる。
【0149】
別の好ましい実施形態においては、本発明は、食品または飼料である、口臭および/もしくは臭い息の治療および/もしくは予防のための組成物の調製のための本発明に従う微生物の使用ならびに前記本発明に従う微生物、その不活化形態、突然変異体、誘導体、類似体もしくは断片を含む食品もしくは飼料に関する。好ましくは、食品または飼料の形態の組成物は、経口的に許容し得る担体または賦形剤をさらに含む上記の微生物、その不活化形態、突然変異体、誘導体、類似体または断片を含む食品または飼料組成物である。
【0150】
「食品」または「飼料」は、哺乳動物、例えば、ヒトまたは動物、例えば、本明細書に記載のペットのための任意の食用、口当たりのよい、および/または飲用可能な物を含む。食品および飼料は、本明細書の他の場所に記載されている。「経口的に許容し得る担体」は本明細書に上記されており、好ましくは、非毒性的であり、食品および/または飼料等級のものである。しかし、この用語は、本発明に従って用いられる医薬組成物と関連して記載される担体をも包含する。
【0151】
本発明に従えば、用語「食品」は、全ての食べられる、および飲むことができる食品および飲料を包含する。従って、前記微生物、その不活化形態、誘導体、類似体または断片を、食品または飲料に含有させることができる。これらのものは、例えば、ガム、スプレー、飲料、キャンディー、特殊調製粉乳、アイスクリーム、フローズンデザート、スイートサラダドレッシング、ミルク調製物、チーズ、クォーク、ラクトースを含まないヨーグルト、酸性化ミルク、コーヒークリームまたはホイップクリームなどである。
【0152】
ミルクに基づく製品が、本発明の枠組み内に想定される。しかしながら、ミルクは、ウシ、ヤギ、ヒツジ、バッファロー、シマウマ、ウマ、ロバ、またはラクダなどの動物起源のものを意味すると理解される。ミルクは、天然の状態のもの、再構成されたミルク、スキムミルクまたは細菌の増殖にとって、もしくは例えば、脂肪、酵母抽出物のタンパク質、ペプトンおよび/もしくは界面活性剤などの発酵ミルクのその後の加工にとって必要な化合物を補給したミルクであってもよい。用語「ミルク」はまた、植物ミルクと一般的に呼ばれるもの、すなわち、処理された植物材料またはさもなければ、化学的作用、酸発酵および/もしくは加熱により凝固可能である、溶液もしくはコロイド状懸濁液中にタンパク質を含む、豆科植物(大豆、ヒヨコマメ、レンティルなど)もしくは脂肪種子(菜種、大豆、ゴマ、綿など)などの抽出物であるものにも適用される。最後に、単語「ミルク」はまた、動物ミルクと植物ミルクの混合物をも意味する。
【0153】
本発明の微生物、その不活化形態、またはその誘導体もしくは類似体もしくは断片を、同様の含量を有するヨーグルトなどに添加する場合、一般的には、本発明の微生物を約105〜107細胞/mlの濃度で添加することで十分である。
【0154】
そのような食品、飲料もしくは飼料を、活性成分を食品、飲料もしくは飼料の生材料もしくは調理された材料に添加することなどの、食品および飲料もしくは飼料を製造するための一般的な方法により製造することができる。本発明に従う食品、飲料または飼料を、食品、飲料または飼料に一般的に用いられるのと同じ様式で成型および造粒することができる。成型および造粒方法としては、液層造粒、攪拌造粒、押出し造粒、回転造粒、ガス流造粒、圧縮成型造粒、クラッキング造粒、スプレー造粒、および注入造粒などの造粒方法、パンコーティング、液層コーティング、および乾燥コーティングなどのコーティング方法、パフ乾燥、過剰蒸気法、気泡マット法、マイクロ波インキュベーション法などの拡張方法、ならびに押出し造粒装置および押出し機を用いる押出し方法が挙げられる。
【0155】
本発明の食品、飲料または飼料は、活性成分として本発明の微生物、その不活化形態、誘導体もしくは類似体もしくは断片を含む任意の食品、飲料または飼料を含む。食品、飲料または飼料中の活性成分は、得られる食品、飲料または飼料が口臭を低下させるその活性を発揮することができる限り、任意の濃度に特異的に制限されない。活性成分の濃度は、そのような活性成分を含むか、または本明細書に記載の細胞数に関して、好ましくは0.001〜100重量%、より好ましくは0.01〜100重量%および最も好ましくは0.1〜100重量%の食品、飲料または飼料である。
【0156】
活性成分を添加する特定の食品または飲料としては、例えば、ジュース、清涼飲料水、スープ、茶、サワーミルク飲料、発酵ミルク、アイス、バター、チーズ、加工ミルクおよびスキムミルクなどの乳製品、ハム、ソーセージ、およびハンバーガーなどの肉製品、魚肉ケーキ製品、味付け卵焼きおよび卵カードなどの卵製品、クッキー、ゼリー、スナック、およびチューイングガムなどの菓子類、パン、麺類、ピクルス、燻製品、干物および調味料が挙げられる。食品または飲料の形態としては、例えば、粉末食品、シート状食品、瓶詰め食品、缶詰食品、レトルト食品、カプセル食品、錠剤食品および液体食品が挙げられる。
【0157】
幼児により摂取される本発明に従う食品または飲料は、好ましくは、幼児用の栄養組成物である。幼児用のそのような栄養組成物としては、幼児用調製ミルク、タンパク質分解ミルク、特定の栄養的に調製されたミルクまたはベビーフードおよび幼児用に調製された食品が挙げられる。幼児用の栄養組成物の形態としては、具体的に限定されるものではないが、乾燥および粉砕された粉末ミルクならびにベビーフードが挙げられ、また、アイスクリーム、発酵ミルク、および幼児による摂取のためのゼリーなどの一般的な食品も挙げられる。
【0158】
本発明に従う幼児用栄養組成物は、原理的には、タンパク質、脂質、糖質、ビタミンおよび/またはミネラルから構成される。栄養組成物においては、活性成分をこれらの成分と混合する。タンパク質としては、スキムミルク、カゼイン、チーズホエー、ホエータンパク質濃縮物およびホエータンパク質単離物などのミルクタンパク質ならびにα-s-カゼイン、β-カゼイン、α-ラクトアルブミンおよびβ-ラクトグロブリンなどのその画分が挙げられる。さらに、卵黄タンパク質、卵白タンパク質、およびオブアルブミンなどの卵タンパク質、または脱脂大豆タンパク質、分離大豆タンパク質、および濃縮大豆タンパク質などの大豆タンパク質を用いることができる。小麦グルテン、魚肉タンパク質、牛肉タンパク質およびコラーゲンなどのこれらのタンパク質以外のものを満足に使用することもできる。さらに、これらのタンパク質の画分、その酸もしくは酵素処理に由来するペプチド、または酸を含まないものも、同様に満足に使用することができる。遊離アミノ酸は、窒素源として役立ち、これをさらに用いて、特定の生理学的作用を与えることができる。そのような遊離アミノ酸としては、例えば、タウリン、アルギニン、システイン、シスチンおよびグルタミンが挙げられる。脂質としては、ミルク脂肪、ラード、牛脂および魚油などの動物脂肪および油、大豆油、菜種油、トウモロコシ油、ココナッツ油、ヤシ油、パーム核油、サフラワー油、エゴマ油、亜麻仁油、月見草油、中鎖脂肪酸トリグリセリド、および綿実油などの植物油、細菌により生成された脂肪および油、ならびにその分画油、その水素化油、およびそのエステル交換油が挙げられる。混合しようとする脂質の量は、用途に応じて変化する。
【0159】
糖質としては、例えば、1種以上のデンプン、可溶性多糖類、デキストリン、スクロース、本明細書に記載のラクトース、マルトース、グルコース、およびフルクトースなどの単糖類、ならびに他のオリゴ糖が挙げられる。そのような糖質の総量は、栄養組成物中の固体合計に対して、好ましくは40〜80重量%である。さらに、アスパルテームなどの人工甘味料の量は、栄養素生物中の固体合計あたり約0.05〜1.0重量%である。
【0160】
ビタミンとしては、限定されるものではないが、必須成分としてのリコペンが挙げられ、さらに、例えば、そのようなビタミンを幼児に投与する限り、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、DおよびEならびにビタミンK群、葉酸、パントテン酸、ニコチンアミド、カルニチン、コリン、イノシトールおよびビオチンが挙げられる。そのようなビタミンは、好ましくは、幼児用栄養組成物中の固体合計あたり、10 mg〜5 g重量である。
【0161】
さらに、ミネラルとしては、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、鉄、銅、亜鉛、リン、塩素、マンガン、セレンおよびヨウ素が挙げられる。そのようなミネラルは、好ましくは、幼児用栄養組成物中の固体合計あたり、1 mg〜5 g重量である。
【0162】
上記成分以外に、本発明に従う幼児用栄養組成物を、栄養組成物中で望ましく混合された任意の成分、例えば、食物繊維、ヌクレオチド、核酸、香料、および着色料と混合することができる。
【0163】
本発明に従う食品または飲料を、健康食品もしくは飲料または機能食品もしくは飲料として用いて、口臭を予防および/または治療することができる。本発明に従う食品または飲料を摂取した場合、摂取される量は具体的に限定されない。摂取される量は、一般的には、活性成分の総量に基づいて、毎日0.1〜50 g、好ましくは0.5 g〜20 gである。この食品または飲料を、1日〜5年、好ましくは2週間〜1年の期間にわたってこの量で継続的に摂取する。ここで、摂取される量を、食品または飲料を摂取する個体の症状の重篤度、その年齢および体重などに応じて好適な範囲に調整することができる。
【0164】
本発明に従う飼料は、前記活性成分を含む任意の飼料であってよい。飼料としては、例えば、イヌ、ネコおよびラット用のペットフード、ウシおよびブタ用の家畜飼料、ニワトリおよび七面鳥用のニワトリの餌、ならびに鯛およびブリ用の魚の養殖用の飼料が挙げられる。
【0165】
飼料を、例えば、シリアル、ぬか、脂肪種子ミール、動物由来生餌材料、他の生餌材料および精製産物などの生餌材料中に、本明細書に記載の活性成分を好適に混合することにより製造することができる。
【0166】
シリアルとしては、例えば、マイル(mile)、小麦、大麦、オート麦、ライ麦、玄米、そば粉、粟、中国産粟、デカン草、トウモロコシ、および大豆が挙げられる。
【0167】
ぬかとしては、例えば、米ぬか、脱脂米ぬか、ぬか、最低級小麦、小麦胚芽、大麦ぬか、スクリーニングペレット、トウモロコシぬか、およびトウモロコシ胚芽が挙げられる。
【0168】
脂肪種子ミールとしては、例えば、大豆ミール、大豆粉末、亜麻ミール、綿実ミール、ピーナッツミール、サフラワーミール、ココナッツミール、ヤシミール、ゴマミール、ヒマワリミール、菜種ミール、カポック種子ミールおよびマスタードミールが挙げられる。
【0169】
動物由来生餌材料としては、例えば、魚粉、輸入ミール、全粒小麦、およびコーストミール、フィッシュソリュブル、肉粉末、肉および骨の粉末、血液粉末、分解毛髪、骨粉末、食肉処理に由来する副産物、羽毛粉、カイコの蛹、スキムミルク、カゼイン、乾燥ホエーおよびオキアミが挙げられる。
【0170】
他の生餌材料としては、例えば、アルファルファ、ヘイキューブ、アルファルファ葉ミール、およびイナゴ葉粉末などの植物の茎と葉、トウモロコシグルテンミール、トウモロコシグルテン飼料およびコーンスティープリカーなどのトウモロコシ加工業に由来する副産物、デンプン、糖類、酵母、ビール残渣、モルトルート、アルコール残渣および醤油残渣などの発酵産業に由来する副産物、ならびに柑橘類加工残渣、大豆カード残渣、コーヒー残渣、およびココア残渣などの農業副産物、キャッサバ、空豆、グアーミール、海藻、スピルリナおよびクロレラが挙げられる。
【0171】
精製産物としては、例えば、カゼインおよびアルブミンなどのタンパク質、アミノ酸、デンプン、セルロース、スクロースおよびグルコースなどの糖類、ミネラルならびにビタミンが挙げられる。
【0172】
本発明に従う飼料を動物に提供する場合、摂取させようとする飼料の量は、具体的に限定されないが、例えば、活性成分の量に基づいて、0.1 mg〜50 g/kg体重/日、好ましくは、0.5 mg〜20 g/kg体重/日であるのが好ましい。この飼料を、1日〜5年、好ましくは2週間〜1年の期間にわたって、この量で継続的に摂取する。再度、摂取される量を、飼料を摂取する動物の種、年齢および体重などに応じて好適な範囲に調整することができる。
【0173】
さらなる実施形態において、本発明は、本発明に従う微生物、その不活化形態、突然変異体、誘導体、類似体もしくは断片を含む食品、飲料もしくは飼料のための添加物ならびに口臭および/もしくは臭い息の治療および/もしくは予防のための組成物であって、食品、飲料もしくは飼料のための添加物である前記組成物の調製のための本発明に従う微生物、その不活化形態、突然変異体、誘導体、類似体もしくは断片の使用に関する。好ましくは、食品または飲料のための添加物は、幼児用の栄養組成物のための添加物を含む。
【0174】
食品用の添加物を、食品、飲料または飼料のための添加物を製造するための一般的な方法により製造することができる。必要に応じて、甘味料、着色料、保存剤、増粘剤および安定剤、酸化防止剤、発色剤、漂白剤、防腐剤、ガムベース、苦味、酵素、増白剤、酸性化剤、調味料、乳化剤、増強剤、製造のための薬剤、香料、およびスパイス抽出物などの、食品、飲料または飼料における一般的使用のための添加物、例えば、Food Additive Handbook (日本食品添加物協会; 1997年1月6日発行)に記載の添加物を満足に添加することができる。さらに、医薬錠剤について以前に記載された従来の糖質、デンプン、無機材料、植物粉末、賦形剤、分解剤、潤滑剤、結合剤、界面活性剤、および可塑剤を満足に添加することができる。
【0175】
添加物としては、以下の添加物が挙げられる。
【0176】
甘味料としては、アスパルテーム、甘草、ステビア、キシロースおよびラカンカ(モノディカ・グロスベノリ(Momordica grosvenori)の果実)が挙げられる。着色料としては、カロテノイドおよびターメリック含油樹脂、フラボノイド、キャラメル色素、スピルリナ色素、クロロフィル、紫イモ色素、紫山芋色素、エゴマ色素、およびブルーベリー色素が挙げられる。
【0177】
保存剤としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、安息香酸塩、ベンゾイン抽出物、ソルビン酸塩、およびプロピオン酸塩が挙げられる。増粘剤および安定剤としては、例えば、農耕ゴムおよびキサンタンゴムなどのゴム、アルギン酸塩、キチン、キトサン、アロエ抽出物、グアーゴム、ヒドロキシプロピルセルロース、カゼインナトリウム、トウモロコシデンプン、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、寒天、デキストリン、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、マイクロファイバーセルロース、微結晶セルロース、海藻セルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、カラゲナンまたは酵母細胞壁が挙げられる。
【0178】
酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC群、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸カルシウム、エリソルビン酸、オリザノール、カテキン、ケルセチン、クローブ抽出物、酵素処理ルチン、リンゴ抽出物、ゴマ種子抽出物、ジブチルヒドロキシトルエン、フェンネル抽出物、西洋わさび抽出物、水セロリ抽出物、茶抽出物、トコフェロール、菜種抽出物、コーヒー豆抽出物、ヒマワリ種子抽出物、フェルリオ酸、ブチルヒドロキシアニソール、ブルーベリー葉抽出物、プロポリス抽出物、コショウ抽出物、ホウセンカ抽出物、没食子酸、ユーカリ抽出物、およびローズマリー抽出物が挙げられる。
【0179】
発色剤としては、例えば、亜硝酸ナトリウムが挙げられる。漂白剤としては、例えば、亜硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0180】
防腐剤としては、例えば、o-フェニルフェノールが挙げられる。ガムベースとしては、例えば、アセチルリシノール酸メチル、ウルシロウ、エステルゴム、エレミ樹脂、オウリキュウリロウ、カウリゴム、カルナバロウ、グリセリン脂肪酸エステル、鯨ロウ、コパイババルサム、コパル樹脂、ゴム、米ぬかロウ、サトウキビロウ、セラック、ジェルトン、スクロース脂肪酸エステル、脱重合天然ゴム、パラフィンロウ、バルサムモミ、プロピレングリコール脂肪酸エステル、粉末化パルプ、粉末化籾殻、ホホバ油、ポリイソブチレン、ポリブテン、微結晶性ロウ、マスチックゴム、蜜蝋およびリン酸カルシウムが挙げられる。
【0181】
苦味としては、例えば、イソ-α-苦味酸、カフェイン、カワラタケ(Coriolus versieolor)抽出物、赤キナ皮抽出物、黄柏抽出物、竜胆根抽出物、スパイス抽出物、酵素改変ナリンギン、ジャマイカ桂皮抽出物、テアブロミン、ナリンギン、桂皮抽出物、ニガヨモギ抽出物、ヒキオコシ抽出物、オリーブ茶、ビターオレンジ(ダイダイ(Citrus aurantium))抽出物、ホップ抽出物ならびにヨモギ抽出物が挙げられる。
【0182】
酵素としては、例えば、アミラーゼ、トリプシンまたはレネットが挙げられる。
【0183】
増白剤としては、例えば、ウルシロウおよび日本ロウが挙げられる。酸性化剤としては、例えば、アジピン酸、イタカニア酸、クエン酸、コハク酸、酢酸ナトリウム、酒石酸、二酸化炭素、乳酸、フィチン酸、フマリオ酸、リンゴ酸およびリン酸が挙げられる。調味料としては、例えば、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン、アラニン、イソロイシン、グリシン、セリン、シスチン、チロシン、ロイシン、およびプラリンなどのアミノ酸、イノシン酸ナトリウム、ウリジン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウム、シチジル酸ナトリウム、リボヌクレオチドカルシウムおよびリボヌクレオチドナトリウムなどの核酸、クエン酸およびコハク酸などの有機酸、塩化カリウム、塩水湖水低塩化ナトリウム液、粗製塩化カリウム、ホエー塩、リン酸三カリウム、リン酸水素ジカリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素ジナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三ナトリウムならびにクロレラ抽出物が挙げられる。
【0184】
増強剤としては、例えば、亜鉛塩、ビタミンC群、種々のアミノ酸、5-アデニル酸、塩化鉄、ヘスペリジン、種々の焼成カルシウム、種々の非焼成カルシウム、ジベンゾイルチアミン、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、チアミンの塩酸塩、ドナリエラ、オアロテン、トコフェロール、ニコチン酸、ニンジンカロテン、ヤシ油カロテン、パントテン酸カルシウム、ビタミンA、ヒドロキシプロリン、ピロリン酸二水素カルシウム、ピロリン酸第一鉄、ピロリン酸第二鉄、フェリチン、ヘム鉄、メナキノン、葉酸およびリボフラビンが挙げられる。
【0185】
製造のための薬剤としては、例えば、アセトンおよびイオン交換樹脂などの加工補助剤が挙げられる。香料としては、例えば、バニラエッセンスが挙げられ、スパイス抽出物としては、例えば、唐辛子抽出物が挙げられる。
【0186】
これらの様々な添加物を、本発明に従って、投与様式を考慮して、活性成分に添加することができる。本発明に従う組成物は、本発明に従う微生物を包含する。前記組成物がプロバイオティック微生物の形態の前記微生物を含むことが想定される。すなわち、プロバイオティック効果に加えて、乳酸菌群に属する上記プロバイオティック微生物は、口臭および/または臭い息を治療および/または予防するのに有用である。前記プロバイオティック微生物の量は、治療しようとする症状、好ましくは、口臭を有意に正に改変するのに十分高いものであるが、妥当な医学的判断の範囲内で、重篤な副作用(合理的な利益/危険比で)を回避するには十分に低いものである。前記プロバイオティック微生物の有効量は、達成しようとする特定の目標、治療される患者の年齢および身体状態、基礎疾患の重篤度、治療期間、同時治療の性質ならびに用いられる特定の微生物に応じて変化するであろう。かくして、前記プロバイオティック微生物の有効量は、所望の効果を提供する最少量であろう。リン酸緩衝生理食塩溶液の0.05 ml溶液、または寒天の懸濁液0.05 ml、または細胞壁断片の乾燥重量等価物中の生もしくは非生全細胞としての、例えば、1 x 109個の細菌の存在が、約0.05 ml〜約20 mlの量で投与された場合に有効である。
【0187】
決定的な実用上の利益は、プロバイオティック生物を、経口経路によるなどの都合の良い様式で投与することができることである。投与経路に応じて、前記プロバイオティック生物を含む活性成分を、前記生物を不活化し得る酵素、酸および他の天然条件の作用から該生物を保護するための材料中でコーティングする必要がある。非経口投与以外によってプロバイオティック生物を投与するために、それらを、不活化を防止するための材料によりコーティングするか、またはそれと共に投与するべきである。例えば、プロバイオティック生物を、酵素阻害剤と共に、またはリポソーム中で同時投与することができる。酵素阻害剤としては、膵臓トリプシン阻害剤、ジイソプロピルフルオロリン酸(DFP)およびトラシロールが挙げられる。リポソームとしては、水中油中水P40乳濁液ならびにラクトバチルスもしくはその副産物を尿生殖器表面に輸送する従来の特異的に設計されたリポソームが挙げられる。また、分散剤を、例えば、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびその混合物、ならびに油中で調製することもできる。一般的には、種々の滅菌されたプロバイオティック生物を、基本分散培地および上記に列挙されたものに由来する必要な他の成分を含む滅菌ビヒクル中に組込むことにより、分散剤を調製する。滅菌注入可能な溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製の好ましい方法は、予め滅菌濾過された溶液から、活性成分と、任意のさらなる所望の成分との粉末が得られる減圧乾燥および凍結乾燥技術である。調製のためのさらに好ましい方法としては、限定されるものではないが、凍結乾燥および加熱乾燥が挙げられる。
【0188】
前記組成物はまた、乳酸菌群に属する上記微生物の細胞を、例えば、新鮮な、濃縮された、もしくは乾燥された形態で添加した本明細書に記載の許容し得る医薬担体を含む、経口的、もしくは頬的に投与されることを意図された生成物も包含する。勿論、前記微生物の不活化形態、誘導体もしくは類似体もしくは断片、または本明細書に開示された前記微生物、その誘導体および/もしくは類似体および/もしくは断片の任意の組合せを添加することもできる。これらの生成物を、摂取可能な懸濁液、ゲル、拡散器、カプセル、ハードゼラチンカプセル、シロップの形態で、または当業者には公知の任意の他の生薬形態で提供することができる。
【0189】
プロバイオティック生物を上記のように好適に保護する場合、活性化合物を、例えば、不活性希釈剤もしくは吸収可能な食用担体と共に経口投与するか、またはそれをハードもしくはソフトゼラチンカプセル中に封入するか、またはそれを胃を通過するように設計された錠剤(すなわち、腸溶性コーティング)に圧縮するか、またはそれを食事の食品と共に直接取り込むことができる。経口治療投与のために、プロバイオティック生物を、賦形剤と共に組込み、摂取可能な錠剤、頬錠剤、トローチ剤、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、ウェハースなどの形態で用いることができる。本発明に従う組成物または調製物を、経口単位投与剤形が、例えば、1 mlあたり、約1 x 109個の、例えば、ラクトバチルスの生細胞または非生細胞を含むように調製する。プロバイオティック生物を、有効量での都合の良い、効率的な投与のために、本明細書の前記に開示された単位投与剤形中に好適な製薬上または食品として許容し得る担体と混合する。単位投与剤形は、例えば、1 mlあたり、約109個の量の、例えば、ラクトバチルスの生細胞または非生細胞の中に主な活性化合物を含んでもよい。プレバイオティックとして補給成分を含有する組成物の場合、用量を、前記成分の投与の通常の用量および様式を参照して決定する。
【0190】
さらなる実施形態においては、本発明は、口臭および/または臭い息の予防および/または治療の方法に関する。好ましくは、予防および/または治療の方法は、被験者に、本発明に従う微生物もしくはその不活化形態、または本明細書に記載の前記微生物の突然変異体、誘導体、類似体もしくは断片を投与することを含む。
【0191】
好ましくは、治療しようとする被験者は動物である。より好ましくは、動物は哺乳動物であり、さらにより好ましくは、哺乳動物はペット哺乳動物である。好ましい実施形態においては、このペットはイヌ、ネコ、ハムスター、サル、ラットまたはマウスである。別の好ましい実施形態においては、動物はウシ、ウマ、ブタ、ロバ、ヒツジまたはヤギである。別の好ましい実施形態においては、哺乳動物はヒトである。
【0192】
本発明の治療および/または予防方法の文脈における本発明に従う微生物の投与を、当業者には公知の任意の好適な形態で実行することができる。好ましくは、前記投与は、必要に応じて、例えば、本明細書に記載の医薬担体もしくは化粧用担体もしくは賦形剤を含んでもよい、上記の組成物の使用および適用を包含する。前記投与の用量および時間経過を、当業者には公知の任意の好適な情報に従って確立することができる。好ましくは、前記用量および時間経過を、本明細書に上記されたように確立することができる。
【0193】
(実施例)
本発明およびその多くの利点のより良い理解を、例示目的のみで提供され、いかなる意味でも本発明の範囲を限定することを意図しない以下の実施例から得られるであろう。
【実施例1】
【0194】
培地
TSY-培地:
TSY混合物(Difco, USA) 30 g/l
酵母抽出物(Deutsche Hefewerke, Germany) 3 g/l
MRSライト培地:
ペプトントリプチカーゼ: 1.0 g/l
酵母抽出物: 0.5 g/l
クエン酸水素ジアンモニウム: 0.2 g/l
酢酸ナトリウム: 0.5 g/l
MgSO4・七水和物: 0.050 g/l
MnSO4・一水和物: 0.025 g/l
D-グルコース一水和物: 1 g/l
K2HPO4: 0.2 g/l
オレイン酸: 0.1%(w/v)
合成培地:
グアニン: 0.1 g/l
シトシン: 0.1 g/l
チミジン: 0.1 g/l
2'-デオキシアデノシン: 0.1 g/l
2'-デオキシウリジン: 0.1 g/l
K2HPO4: 2 g/l
酢酸ナトリウム: 5 g/l
MgSO4・七水和物: 0.1 g/l
クエン酸水素ジアンモニウム: 2 g/l
CaCl2・二水和物: 0.5 g/l
オレイン酸: 0.1%(w/v)
シアノコバラミン: 0.02 mg/l
リボフラビン: 10 mg/l
葉酸: 0.2 mg/l
ピリドキサル-5-リン酸一水和物: 10 mg/l
4-アミノ安息香酸: 0.2 mg/l
D(+)-ビオチン: 1 mg/l
アスコルビン酸: 500 mg/l
ニコチン酸: 10 mg/l
パントテン酸カルシウム: 10 mg/l
チアミン: 1 mg/l
コバルト(II)-硝酸六水和物: 500 mg/l
MnSO4・一水和物: 20 g/l
MgSO4・七水和物: 500 mg/l
Na2MoO4: 0.04 mg/l
PTU抽出物(Ohly, Deutsche Hefewerke Germany): 15 g/l(または他の場所に記載)
D-グルコース一水和物: 10 g/l
FAB培地:
ペプトン混合物 15.0 g/l
酵母抽出物 10.0 g/l
チオグリコール酸ナトリウム 0.5 g/l
塩化ナトリウム 2.5 g/l
寒天No.1 0.75 g/l
L-システインHCl 0.5 g/l
レサズリン 0.001 g/l
重炭酸ナトリウム 0.4 g/l
ハエミン 0.005 g/l
ビタミンK 0.0005 g/l。
【0195】
保存および増殖
株の保存および増殖を、通常の手順に従って行うことができる。例えば、株を-80℃で凍結保存物として保存することができる。1 mlの培養液を、MRS培地中で定常期(OD600/mL 4-8)まで増殖させ、500μlの滅菌50%グリセリン溶液と混合し、凍結することができる。
【0196】
ストレプトコッカス・サリバリウスの培養物を、TSY培地中で定常期(OD600/ml 1-2)まで増殖させ、上記のように処理した。この実験において好ましく用いられたストレプトコッカス・サリバリウス株は、ストレプトコッカス・サリバリウスDSM 20560(AndrewsおよびHorder、1906)であった。
【0197】
ストレプトコッカス・サリバリウス(DSM 20560)ならびに単離物の培養を、37℃で一晩、8 mlのTSY培地を含む6穴プレート中で嫌気的に行った。
【0198】
ラクトバチルス(DSM 19825、19826、19827)を、37℃で24時間、96穴プレート中の150μlの合成培地中で嫌気的に培養した。
【0199】
ラクトバチルスとストレプトコッカス・サリバリウスの混合を、1/2 TSY培地中、1:100(ラクトバチルス:ストレプトコッカス・サリバリウス)の細胞計数比で行った。これを96穴プレート中で行った。
【0200】
培養懸濁液を、BioTek PowerWaveマイクロプレート分光光度計中、37℃で12時間インキュベートした。
【0201】
対照として、消費されていない1/2 TSY培地またはMRSライト培地を、ラクトバチルス培養液の代わりに用いた。
【0202】
ストレプトコッカス・サリバリウスの増殖刺激を、最大光密度(OD600, max)または最大増殖速度(Vmax)と、インキュベーションの10時間後(OD600, max)または指数増殖の間(Vmax)のラクトバチルスと比較することにより可視化した。
【0203】
最大光密度(OD600, max)または最大増殖速度(Vmax)が少なくとも10%増加した場合、刺激と定義する。
【実施例2】
【0204】
株の分類学的分類
株の分類学的分類を、その炭水化物発酵パターンに従って行った。これを、API 50 CH (bioMerieux, France)系を用いて決定し、APILAB PLUSソフトウェアバージョン3.3.3 (bioMerieux, France)を用いて分析した。
【実施例3】
【0205】
ラクトバチルス上清を用いるストレプトコッカス・サリバリウスの増殖刺激に関する試験
細菌を実施例1に記載のように培養した。ラクトバチルス(特に、DSM 19826)の上清を、4000 x gで15分間の遠心分離により取得した。ラクトバチルス上清とストレプトコッカス・サリバリウスの混合を、1/2 TSY培地中に2:1〜4:1(ストレプトコッカス・サリバリウス:ラクトバチルス上清)の体積比で行った。これを96穴プレート中で行った。培養上清を、BioTek PowerWaveマイクロプレート分光光度計中、37℃で12時間インキュベートした。対照として、消費されていない1/2 TSY培地またはMRSライト培地を、ラクトバチルス上清の代わりに用いた。
【0206】
増殖刺激を実施例1に記載のようにアッセイした。ラクトバチルスの上清を用いるストレプトコッカス・サリバリウスの増殖の刺激の成功を観察することができる。これらの結果を図2に示す。
【実施例4】
【0207】
口腔細菌叢ストレプトコッカス・ミュータンスの口腔病原体の非刺激
ストレプトコッカス・サリバリウス培養物を、実施例1に記載のように増殖させた。ストレプトコッカス・ミュータンス(DSM 20253)を、密閉された15 mlのFalconチューブ中で一晩、5 mlのTSY培地中で増殖させた。口内細菌を、2:1の体積比で、ラクトバチルス上清と混合し、増殖を実施例1に記載のようにアッセイした。対照として、口内細菌を、ラクトバチルス上清の代わりに、消費されていない1/2 TSY培地と共に培養した。
【0208】
ラクトバチルスによる口腔病原体ストレプトコッカス・ミュータンスの増殖刺激がないことを観察することができた。
【0209】
さらに、ストレプトコッカス・ミュータンス増殖の非刺激を、以下のアッセイによりアッセイすることができる。
【0210】
ラクトバチルス(例えば、DSM 19825、19826、19827)を、37℃で24時間、96穴プレート中、150μlの合成培地中で嫌気的に培養する。ストレプトコッカス・ミュータンス(DSM 20253)を、密閉された15 mlのFalconチューブ中、37℃で一晩、5 mlのTSY培地中で嫌気的条件下で増殖させる。ラクトバチルスとストレプトコッカス・ミュータンスの混合を、1/2 TSY培地中、1:100(ラクトバチルス:ストレプトコッカス・ミュータンス)の細胞計数比で行う。これを96穴プレート中で行う。培養懸濁液を、BioTek PowerWaveマイクロプレート分光光度計中、37℃で12時間嫌気的にインキュベートする。対照として、消費されていない1/2 TSY培地をラクトバチルス培養物の代わりに用いる。
【実施例5】
【0211】
口腔細菌叢ポルフィロモナス・ギンギバリスの口腔病原体の非刺激
ストレプトコッカス・サリバリウス培養物を、実施例1に記載のように増殖させた。ポルフィロモナス・ギンギバリス(DSM 20709)を、密閉された15 mlのFalconチューブ中、37℃で一晩、5 mlのFAB培地中で嫌気的条件下で増殖させた。ポルフィロモナス・ギンギバリスを、ラクトバチルス上清(DSM 19826由来)と2:1の体積比で混合し、96穴プレート中で嫌気的に培養した。対照として、ポルフィロモナス・ギンギバリスを、ラクトバチルス上清の代わりに消費されていないFAB培地と共に培養した。
【0212】
ラクトバチルスによる口腔病原体ポルフィロモナス・ギンギバリスの増殖刺激がないことが観察された。その結果を図3に示す。
【0213】
さらに、ポルフィロモナス・ギンギバリス増殖の非刺激を、以下のアッセイによりアッセイすることができる。
【0214】
ラクトバチルス(例えば、DSM 19825、19826、19827)を、37℃で24時間、96穴プレート中の150μlの合成培地中で嫌気的に培養する。ポルフィロモナス・ギンギバリス(DSM 20709)を、37℃で一晩、密閉された15 mlのFalconチューブ中の5 mlのFAB培地中で嫌気的に増殖させる。ラクトバチルスとポルフィロモナス・ギンギバリスの混合を、FAB培地中、1:100(ラクトバチルス:ポルフィロモナス・ギンギバリス)の細胞計数比で行う。これを96穴プレート中で行う。培養懸濁液を、Whitley DG250嫌気的ワークステーション(Meintrup-DWS, Germany)中、37℃で45時間好気的にインキュベートする。対照として、消費されていないFAB培地を、ラクトバチルス培養物の代わりに用いる。
【実施例6】
【0215】
ラクトバチルスの刺激能力の温度抵抗性
細菌を実施例1に記載のように増殖させた。(DSM 19827の)ラクトバチルス上清を、インキュベーター中、80℃で10分間インキュベートした。上清を室温まで冷却した後、ラクトバチルス上清を、増殖させたストレプトコッカス・サリバリウス培養物と1:2の体積比で混合し、対照実験を含む実施例1に記載のように刺激をアッセイした(刺激を、実施例4および5に概略されたように口腔病原菌を用いて同様にアッセイした。口腔病原菌に対するラクトバチルスの非刺激行動は熱処理により影響されないことが証明された)。ストレプトコッカス・サリバリウスに対する刺激活性に対する熱処理による影響を観察することはできなかった。その結果を図4に示す。
【実施例7】
【0216】
凍結乾燥に対する刺激の感度
ストレプトコッカス・サリバリウスを実施例1に記載のように増殖させた。ラクトバチルスを、密閉された100 mlのボトル(Schott, Germany)中、37℃で一晩、50 mlの合成培地中で嫌気的に培養した。ラクトバチルス上清を、4000 x gで15分間の遠心分離により取得した。20 mlの上清を-80℃に凍結し、減圧下で16時間凍結乾燥した。凍結乾燥された上清を20 mlのH2O中に再懸濁した。再懸濁された上清を、96穴プレート中の1/2 TSY培地中、2:1(ストレプトコッカス・サリバリウス:再懸濁された上清)の比でストレプトコッカス・サリバリウス培養物と混合した。増殖刺激を、対照実験を含む実施例1に記載のようにアッセイした。刺激活性は、凍結乾燥により低下しなかった。
【実施例8】
【0217】
ラクトバチルスによるペプチド濃度の低下
ラクトバチルス(DSM 19827)を実施例1に記載のように培養した。主培養物を、15 g/lのペプチド(PTU抽出物)を含有する合成培地中で培養した。培地に10μlの培養懸濁液を接種し、37℃で24時間、嫌気的に培養した。次いで、ペプチド濃度を決定したところ、それが24時間後に少なくとも20%低下したことがわかった。
【0218】
その結果は、増殖するラクトバチルスによるペプチド濃度の効率的な低下を示し、それを図5により例示する。
【実施例9】
【0219】
凍結乾燥によるペプチド濃度の低下の感度
ラクトバチルス(DSM 19827)を、37℃で24時間、100 mlの合成培地中で培養した。全培養物を、4000 x gで15分間遠心分離し、20 mlのH2O中に再懸濁した。20 mlの再懸濁されたラクトバチルスを-80℃に凍結し、減圧下で16時間凍結乾燥した。
【0220】
ペプチド取込みアッセイのために、10 mgの凍結乾燥されたラクトバチルスをH2O中に再懸濁し、4000 x gで10分間遠心分離した。7 g/lのペプチドを含有する1 mlの合成培地をペレットに添加し、37℃で5分間インキュベートした後、細胞を遠心分離により除去した。上清中のペプチド濃度を決定した。細胞除去後の培地中のペプチド濃度は2 g/lに低下した。これは凍結乾燥されたラクトバチルス1 mgあたり0.5 mgのペプチドの取込みに対応する。
【0221】
これらの結果は、図6に示されるように凍結乾燥状態のラクトバチルスによるペプチド濃度の効率的な低下を示す。
【実施例10】
【0222】
グラム陰性嫌気性細菌によるH2S産生に対する、ラクトバチルスによるペプチド濃度の低下の影響
ラクトバチルスを、実施例8に記載のように培養し、凍結乾燥した。実験のために、10 mgの凍結乾燥されたラクトバチルスを、ディープウェルプレート中のH2O中に再懸濁し、4000 x gで10分間遠心分離した。3 g/lのペプチドを含有する1 mlの合成培地をペレットに添加し、37℃で5分間インキュベートした後、細胞を遠心分離により除去した。培地のpHはインキュベーションにより変化しなかった。次いで、培地に50μlの非滅菌ヒト唾液を接種し、37℃で6時間嫌気的にインキュベートした。ディープウェルプレートを、酢酸鉛を含浸させた滅菌濾紙で被覆した。唾液由来の微生物による硫化水素の産生を、濾紙の黒変によりモニターした。
【0223】
ラクトバチルスで処理された培地中でのH2Sの産生の低下を、ラクトバチルスと共に予備インキュベーションしていない対照実験に対して黒変を比較することにより観察した。
【0224】
これらの結果は、ラクトバチルスとの培地の予備インキュベーションが、その後、ヒト唾液由来の微生物と共に培地をインキュベーションする間にH2Sの産生を低下させることを示している。
【実施例11】
【0225】
ロゼンジ組成物(I)
好ましくは、ロゼンジ組成物を、DE C2 36 45 147の8頁の実施例4に記載のように調製するが、前記実施例4に記載の成分に加えて、乳酸菌群に属する上記微生物を、ロゼンジ1 mgあたり102〜1012、好ましくは103〜108個の細胞の量で添加する。
【実施例12】
【0226】
ロゼンジ組成物(II)
好ましくは、ロゼンジ組成物を、DE C2 36 45 147の8頁の実施例5に記載のように調製するが、前記実施例5に記載の成分に加えて、乳酸菌群に属する上記微生物を、ロゼンジ1 mgあたり102〜1012、好ましくは103〜108個の細胞の量で添加する。
【実施例13】
【0227】
歯磨き剤組成物
好ましくは、歯磨き剤組成物を、DE C2 36 45 147の8頁の実施例3に記載のように調製するが、前記実施例3に記載の成分に加えて、乳酸菌群に属する上記微生物を、歯磨き剤1 mgあたり102〜1012、好ましくは103〜108個の細胞の量で添加する。
【実施例14】
【0228】
チョークに基づく歯磨き剤組成物
好ましくは、チョークに基づく歯磨き剤組成物を、教科書「Kosmetik」、W. Umbach(編)、第2版、Thieme Verlag, 1995の205頁の7.1.4.4章「Rezepturbeispiel」に記載のように調製するが、205頁の前記章に記載の成分に加えて、乳酸菌群に属する上記微生物を、チョークに基づく歯磨き剤1 mgあたり102〜1012、好ましくは103〜108個の細胞の量で添加する。
【実施例15】
【0229】
ケイ酸/フッ化ナトリウムに基づくゲル歯磨き剤
好ましくは、ケイ酸/フッ化ナトリウム歯磨き剤組成物に基づくゲル歯磨き剤を、教科書「Kosmetik」、W. Umbach(編)、第2版、Thieme Verlag, 1995の205頁の7.1.4.4章「Rezepturbeispiel」に記載のように調製するが、205頁の前記章に記載の成分に加えて、乳酸菌群に属する上記微生物を、ケイ酸/フッ化ナトリウムに基づくゲル歯磨き剤1 mgあたり102〜1012、好ましくは103〜108個の細胞の量で添加する。
【実施例16】
【0230】
歯石に対する歯磨き剤組成物
好ましくは、歯石に対する歯磨き剤組成物を、教科書「Kosmetik」、W. Umbach(編)、第2版、Thieme Verlag, 1995の206頁の7.1.4.4章「Rezepturbeispiel」に記載のように調製するが、206頁の前記章に記載の成分に加えて、乳酸菌群に属する上記微生物を、歯石に対する歯磨き剤1 mgあたり102〜1012、好ましくは103〜108個の細胞の量で添加する。
【実施例17】
【0231】
チューイングガム組成物
好ましくは、チューイングガム組成物を、DE C2 36 45 147の9頁の実施例6に記載のように調製するが、前記実施例6に記載の成分に加えて、乳酸菌群に属する上記微生物を、チューイングガム1 mgあたり102〜1012、好ましくは103〜108個の細胞の量で添加する。
【実施例18】
【0232】
濃縮口内洗浄液組成物
好ましくは、濃縮口内洗浄液組成物を、教科書「Kosmetik」、W. Umbach(編)、第2版、Thieme Verlag, 1995の206頁の7.1.4.4章「Rezepturbeispiel」に記載のように調製するが、206頁の前記章に記載の成分に加えて、乳酸菌群に属する上記微生物を、歯石に対する歯磨き剤1 mgあたり102〜1013個の細胞の量で添加する。
【実施例19】
【0233】
フィルム調製物
フィルムの調製:
1. 水相
・水を60℃に加熱する
・アスパルテーム(甘味料)を攪拌下で添加する
・アスパルテームを完全に溶解する
・例えば、Kollicoat IR(ポリビニルアルコール上のポリエチレングリコール)もしくはPVP(ポリビニルピロリドン)もしくはアルギン酸塩などの天然ポリマーなどのポリマー性水溶性フィルム形成剤を、それらが溶解するまで攪拌しながら添加する
・10分後、気泡の残りを除去する
・最終芳香フィルムあたり102〜1012、好ましくは103〜108個の細胞の量の乳酸菌群に属する上記微生物を、混合物の冷却後に添加する;あるいは、乳酸菌群に属する上記微生物の突然変異体もしくは誘導体または乳酸菌群に属する上記微生物の類似体もしくは断片を添加してもよい。
【0234】
2. 油相
・メントールをペパーミント油中に溶解する
・ポリソルベート80をペパーミント油-メントール混合物に攪拌下で添加する
・次いで、この混合物を攪拌下でプロピレングリコールに添加する
・任意の着色料(色素、レーキなど)を添加してもよい。
【0235】
3.
・攪拌下で、油相を水相とゆっくりと混合する。
【0236】
4.
・切断装置を用いて薄いフィルムを機械的に作製する。
【0237】
サンプル製剤:

本発明の他の実施形態および使用は、本明細書の考慮および本明細書に開示された本発明の実施から、当業者には明らかであろう。いかなる理由でも、全ての刊行物、全ての米国および外国の特許ならびに全ての米国および外国の特許出願を含む本明細書に引用される全ての参考文献は、あらゆる目的で具体的かつ完全に参照により本明細書に組み入れられるものとする。本明細書および実施例は以下の特許請求の範囲により示される本発明の真の範囲および精神を用いてのみ典型的に考慮されることが意図される。
【0238】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記アッセイ(a):
(a)微生物を、1 x 107細胞/mlの出発細胞密度で15 g/lのペプチドを含有する合成培地中、嫌気的条件下、37℃で24時間培養すること;
(b)4000 x gで15分間の遠心分離により細胞を除去すること;および
(c)得られる上清中のペプチド濃度を決定すること;
に供する場合、
以下の特性(b):
前記微生物が、24時間のインキュベーション後の上清中のペプチド濃度が、15 g/lの出発濃度と比較して少なくとも20%低下するように培養培地中のペプチド濃度の低下を誘導する特性であって、該微生物が、アッセイ(a)における培地中のペプチド濃度を少なくとも20%低下させることができる特性、
を示すことを特徴とする、乳酸菌群に属する微生物。
【請求項2】
下記アッセイ(A):
(a)微生物を、1 x 107細胞/mlの出発細胞密度で嫌気的条件下、37℃で24時間、100 mlの合成培地中で培養すること;
(b)続いて、細胞を4000 x gで15分間遠心分離し、20 mlのH2O中に再懸濁すること;
(c)続いて、細胞を-80℃に凍結し、減圧下で16時間凍結乾燥すること;
(d)10 mgの凍結乾燥された細菌をH2O中に再懸濁し、4000 x gで10分間遠心分離すること;
(e)7 g/lのペプチドを含有する1 mlの合成培地を細胞ペレットに添加し、細胞を培地中に再懸濁し、37℃で5分間好気的条件下でインキュベートした後、細胞を4000 x gで15分間の遠心分離により除去すること;ならびに
(f)得られる培地上清中のペプチド濃度を決定すること;
に供する場合、
以下の特性(B):
凍結乾燥された細菌が、インキュベーション期間の開始時の培地の濃度(7 g/l)と比較して、得られる培地上清中のペプチド濃度の少なくとも20%の低下を誘導する特性、
をさらに示す、請求項1に記載の微生物。
【請求項3】
前記微生物が、ストレプトコッカス・サリバリウスの増殖を刺激することができるが、ストレプトコッカス・ミュータンスおよび/もしくはポルフィロモナス・ギンギバリスの増殖は刺激しないことをさらに特徴とする、請求項1または2に記載の微生物。
【請求項4】
前記微生物がラクトバチルス属に属する微生物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の微生物。
【請求項5】
前記ラクトバチルスが、ラクトバチルス・アシドフィルスである、請求項4に記載の微生物。
【請求項6】
7 g/lのペプチドを含有する合成培地に添加し、好気的条件下、37℃で5分間インキュベートされた場合、前記培地のペプチド濃度を少なくとも20%低下させる特性を示す、請求項1〜5のいずれか1項に記載の微生物の不活化形態。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の微生物または請求項6に記載の不活化形態を含む組成物。
【請求項8】
前記組成物が歯磨き剤、チューイングガム、ロゼンジ剤、口内洗浄液、マウスリンス、デンタルフロスまたはデンタルテープである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
口臭および/または臭い息を低下させるための、請求項1〜5のいずれか1項に記載の微生物、請求項6に記載の不活化形態または請求項7もしくは8に記載の組成物の使用。
【請求項10】
ストレプトコッカス・サリバリウスの増殖を刺激することができるが、ストレプトコッカス・ミュータンスおよび/もしくはポルフィロモナス・ギンギバリスの増殖を刺激しないことを特徴とする、乳酸菌群に属する微生物。
【請求項11】
前記微生物が、ラクトバチルス属に属する微生物である、請求項10に記載の微生物。
【請求項12】
前記ラクトバチルスが、ラクトバチルス・アシドフィルスである、請求項11に記載の微生物。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれか1項に記載の微生物の不活化形態。
【請求項14】
請求項10〜12のいずれか1項に記載の微生物の培養上清。
【請求項15】
請求項10〜12のいずれか1項に記載の微生物、請求項13に記載の不活化形態または請求項14に記載の培養上清を含む組成物。
【請求項16】
前記組成物が、歯磨き剤、チューイングガム、ロゼンジ剤、口内洗浄液、マウスリンス、デンタルフロスまたはデンタルテープである、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
口臭および/または臭い息を低下させるための、請求項10〜12のいずれか1項に記載の微生物、請求項13に記載の不活化形態、請求項14に記載の培養上清または請求項15もしくは16に記載の組成物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−525351(P2011−525351A)
【公表日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512851(P2011−512851)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【国際出願番号】PCT/EP2009/003586
【国際公開番号】WO2009/149816
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】