説明

古紙処理装置

【課題】装置の小型化を図るとともに、再生紙の品質を高めてその利用を促進することができ、さらには古紙の投入操作において待ち時間が生じず、かつ任意の時間に稼動させ、停止させることができる古紙処理装置を提供する。
【解決手段】制御部7は稼動開始から稼動停止までの運転プロセスを逐次実行する自動運転制御機能部716と、稼動開始と稼動停止の少なくとも何れか一方のタイミングを自動運転制御機能部へ指示信号として入力するタイミング入力部73とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、古紙を離解させた再生パルプから紙を製造する技術に関し、古紙の発生場所であるオフィス等に設置して紙を再生することができる小型の古紙処理装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、わが国においては、一度使用した古紙、例えば代表的なものとしては古新聞紙を回収して紙を再生する技術ならびに社会システムが確立している。
一般的な製紙工場で行なっている製紙方法は、パルプ工程、抄紙工程、仕上工程からなり、古紙を原料として使用する場合には古紙パルプ工程が加わる。
【0003】
パルプ工程では、木材から繊維を取り出すパルプ化の一つの方法である化学的方法により、蒸解、洗浄、漂白、精選等の工程を経ることで、木材チップからパルプを生成する。
古紙パルプ工程では、原料である古紙を水に溶解し、機械的な力や薬品を利用して紙繊維以外の異物である金属やフィルム、粘着性樹脂、印刷インク(染料系、顔料系)、コピートナーなどを分離、除去し、漂白処理、脱水、乾燥して古紙パルプを得る。
【0004】
抄紙工程では、抄紙機のワイヤーパート、プレスパート、ドライヤーパート、カレンダーパート、コーターパートを経て製品の紙とする。ワイヤーパートでは調製されたパルプを抄紙用の網(ワイヤー)に乗せて脱水して紙を抄き、プレスパートではワイヤーパートから出た水分を多く含んだ湿紙の水分を除去する。ドライヤーパートでは蒸気で加熱されたドライヤーに紙を通して乾燥させ、カレンダーパートではロール間に紙を通して表面の凹凸を平滑化し、コーターパートでは原紙に塗料を塗工する。
【0005】
仕上工程では、スーパーカレンダーパートではコーターパートで塗工した紙面のミクロの凹凸を平滑化して光沢を出し、カッターおよびワインダーパートでは所定の製品寸法にカットし、あるいはロールに巻き取る。
【0006】
ところで、古紙から再生紙を製紙する場合には以下の問題がある。紙の消費により古紙が発生するオフィス等の消費場所と古紙から紙を再生する製紙工場とは離れており、古紙の運搬にコストとエネルギーを要する。また、古紙の持ち出しにより用紙に記載された機密情報等が外部へ漏洩するおそれがある。このため、シュレッダーで用紙を細かく裁断処理することが行なわれているが、細かく裁断したシュレッダーダストは繊維が短くなり過ぎるために、再生が困難である。
【0007】
特許文献1には、再生紙の製造方法として、原料古紙を離解し、ソーキング、脱墨後に、凝集性を有する酵母を添加し、酵母によりインク(染料系、顔料系)に含まれる微細な無機顔料、カーボン粒子などを凝集させ、ついでフローテーションにより凝集物を分離除去する構成が記載されている。
【0008】
また、特許文献2には、古紙再生方法および装置として、文書裁断機によって裁断した古紙を離解して再生パルプとする工程と、再生パルプを貯蔵する工程と、再生パルプを噴射装置に充填して繊維シートに吹きかける工程と、繊維シートに吹きかけた再生パルプを抄紙する工程とからなる構成が記載されている。
【0009】
また、特許文献3には、古紙処理装置として、什器サイズの装置ケース内にパルプ製造部と抄紙部と制御部を備え、パルプ製造部において古紙を離解し、さらに叩解して古紙パルプを製造し、抄紙部において古紙パルプを抄紙して再生紙を製造し、制御部によってパルプ製造部および抄紙部を連動して駆動制御する構成が記載されている。
【特許文献1】特開平8−60570号公報
【特許文献2】特開平10−317290号公報
【特許文献3】特開2007−23450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記した特許文献においては装置を小型化することが提案されている。しかしながら、装置として脱墨部を一体的に配置する構成は存在せず、再生パルプを脱墨せずに抄紙するので、再生紙の仕上がり品質が悪く、ユーザーによる再生紙の積極的活用を促進させることはできなかった。また、複数枚の古紙をバッチ処理する構成ではあるが、装置内に多量の古紙もしくは裁断したペーパーダストを蓄える機能を有していないので、一度に装置へ投入可能な古紙の枚数はバッチ処理の1回分の容量を超えることはできない。このため、多量の古紙を処理する場合には古紙の投入操作において待ち時間が発生し、ユーザーにとっては使い勝手が悪いものであった。また、装置を稼動させるにはユーザーが常に操作する必要があり、少なくとも運転の開始、終了にはユーザーの操作を必要としており、任意の時間に装置の起動、停止を行なうことができなかった。
【0011】
本発明は上記した課題を解決するものであり、装置の小型化を図るとともに、再生紙の品質を高めてその利用を促進することができ、さらには古紙の投入操作において待ち時間が生じず、かつ任意の時間に稼動させ、停止させることができる古紙処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の古紙処理装置は、古紙の裁断紙片を離解して再生パルプを調製する再生パルプ部と、再生パルプを漂白して脱墨パルプを調製する脱墨パルプ部と、脱墨パルプを抄紙して再生紙を調製する抄紙部を一体的に備えるとともに、各部の運転を制御する制御部を備え、制御部は稼動開始から稼動停止までの運転プロセスを逐次実行する自動運転制御機能部と、稼動開始と稼動停止の少なくとも何れか一方のタイミングを自動運転制御機能部へ指示信号として入力するタイミング入力部とを有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の古紙処理装置において、タイミング入力部は、制御部の内部に配設する内部時計が予定時刻に達したときに指示信号を自動運転制御機能部へ入力することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の古紙処理装置において、タイミング入力部は、制御部の外部に配設する外部時計が予定時刻に達したときに発する指示信号または外部機器から発する指示信号を入力するための入力ポートであることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の古紙処理装置において、再生パルプ部は、古紙を裁断するシュレッダーと、裁断した裁断紙片を貯留するシュレッダータンクと、シュレッダータンクの内部に貯留する裁断紙片の有無を検出する紙量検知センサを備え、制御部は、紙量検知センサから入力する裁断紙片の有無信号に応じて自動運転制御機能部へ稼動開始の許可指示または不許可指示を入力する運転ロック制御機能部を有することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の古紙処理装置において、制御部は表示部を有し、運転ロック制御機能部は紙量検知センサから入力する裁断紙片の有無信号がシュレッダータンクの内部に運転に必要な量の裁断紙片が無いことを示すものである場合に表示部に警告情報を表示することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の古紙処理装置において、制御部は、調製する再生紙の目標枚数を設定する目標枚数設定機能部と、調製した再生紙の枚数を数えるカウンター機能部を有し、カウンター機能部のカウント値が目標枚数となったときに運転を停止することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の古紙処理装置において、制御部は、再生パルプ部と脱墨パルプ部と抄紙部において運転終了時に所定の排水作業を行なう排水作業制御機能部および所定の洗浄作業を行なう洗浄作業制御機能部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
以上のように本発明によれば、再生パルプ部と脱墨パルプ部と抄紙部を一体的に備えて小型化を図ることで、古紙が発生するオフィス等の消費場所に古紙処理装置を設置することができる。このため、機密情報等を記載した書面を外部へ持ち出す必要がなくなることで機密情報の漏洩を防止できるとともに、機密情報の漏洩を目的とした細かな裁断が不要となる。よって、再生に適した任意のサイズに古紙を裁断して再生パルプ化することを実現できる。
【0020】
また、制御部の自動運転制御機能部が稼動開始から稼動停止までの運転プロセスを逐次実行し、タイミング入力部が稼動開始と稼動停止の少なくとも何れか一方のタイミングを自動運転制御機能部へ指示信号として入力するので、ユーザーがその場に居なくても予定時刻に自動的に稼動開始、稼動停止を行なうことができ、任意の時間において無人運転が可能となる。
【0021】
また、紙量検知センサから入力する有無信号がシュレッダータンクの内部に運転に必要な量の裁断紙片が無いことを示すものである場合には、運転ロック制御機能部が自動運転制御機能部へ不許可指示を入力し、自動運転制御機能部が起動しないことで、無駄な運転を行なわずに消費電力を抑えることができる。この際に、表示部に警告情報を表示することでユーザーに原因を明確に伝えることができる。
【0022】
また、調製した再生紙の目標枚数をカウンター機能部においてカウントし、カウンター機能部のカウント値がユーザーが目標枚数設定機能部に設定した目標枚数になったときに運転を停止することで、過剰な運転を抑制し、ユーザーが必要とする最小限の稼動だけを実現する。
【0023】
また、排水作業制御機能部および洗浄作業制御機能部によって再生パルプ部と脱墨パルプ部と抄紙部を制御し、運転終了時に所定の排水作業および所定の洗浄作業を行なうことで、装置の各部を常に清浄な状態に保つことができ、その結果として再生紙の品質を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1において、古紙処理装置は、再生パルプ部1、脱墨パルプ部2、抄紙部3、仕上げ部4、排水処理部5を一体的に備え、古紙6から再生紙を調製するものであり、再生パルプ部1、脱墨パルプ部2、抄紙部3、仕上げ部4、排水処理部5の運転を制御する制御部7を有している。
(再生パルプ部)
再生パルプ部1は、古紙6の裁断紙片を離解して再生パルプを調製するものであり、古紙6を裁断処理して再生に適した所定の大きさに紙片化するシュレッダー11と、シュレッダー11で裁断した裁断紙片を一時的に貯留するシュレッダータンク12と、繊維濃度調整部13およびパルパー14を備えている。
【0025】
図2に示すように、シュレッダータンク12は、上方のシュレッダー11に向けて開放した上部開口121を有し、底面122が排出口123に向けて傾斜する傾斜面をなす。排出口123には裁断紙片61を排出する排出装置124を設けており、排出装置124は種々のものがあるが、ここでは複数の羽根を回転軸の周りに放射状に配置した構造をなす。排出装置124の上方には紙量検知センサ125が配置してあり、紙量検知センサ125はシュレッダータンク12の内部に貯留する裁断紙片の有無を検出するもので、ロードセル、光センサ等を用いる。
【0026】
繊維濃度調整部13は、シュレッダータンク12の排出口123の下方に配置してあり、排出口123から排出する裁断紙片61を受け止める受け皿部131と、受け皿部131を支持する計量部132を備えており、計量部132は受け皿部131に投入した裁断紙片61の重量を計量し、設定重量を変更することでパルパー14へ投入する裁断紙片61の量、すなわち繊維量を調整する。
【0027】
図3に示すように、受け皿部131は受け皿131aが水平姿勢からパルパー14へ向けて傾斜する傾斜姿勢にまで傾動するものであり、受け皿131aを傾動させるモータ等の駆動手段を有する。また、受け皿131aはパルパー14に隣接する側壁部131bが立ち姿勢の通常位置とパルパー14へ向けて傾倒する傾倒位置とにわたって開閉可能に設けてあり、側壁部131bは受け皿131aの傾動に伴って傾倒し、受け皿131aの復動に伴って立ち姿勢に復帰する。
【0028】
受け皿131aには、排出装置124によって裁断紙片61を徐々に投下し、計量部132で測定する測定値が設定した値になった時点で排出装置124を停止し、受け皿131aを傾動させて裁断紙片61をパルパー14へ投入する。
【0029】
パルパー14は、アルカリ水等の溶媒中において裁断紙片61を繊維、つまり再生パルプにまで離解させるものであり、裁断紙片61を投入する槽体141と、槽体141の内部で旋回する攪拌翼142と、攪拌翼142を回転駆動するモータ等の駆動手段(図示省略)を有している。
【0030】
槽体141には溶媒を所定温度に加温するためのヒータ143および温度センサ144が設けてあり、溶媒を供給する溶媒供給系(図示省略)および再生パルプ含有液を脱墨パルプ部2へ移送する管路、ポンプ等からなる移送系(図示省略)が連通している。
【0031】
パルパー14では、裁断紙片61の量に応じた量の溶媒、ここでは水を槽体141に投入し、攪拌翼142を回転駆動して裁断紙片の繊維を離解させ再生パルプを調製し、再生パルプを含む再生パルプ含有液を脱墨パルプ部2へ送る。
(脱墨パルプ部)
脱墨パルプ部2は、脱墨前希釈部21と脱墨部22とすすぎ部23とを備え、各部の間には管路、ポンプ等からなる移送系(図示省略)を設けている。
【0032】
脱墨前希釈部21は再生パルプ含有液を脱墨に適した繊維濃度、ここでは1重量%程度にまで希釈するものであり、希釈用水および脱墨剤としての界面活性剤を投入する希釈液供給系(図示省略)を備えている。
【0033】
脱墨部22は、フローテータと呼ばれ、インク、トナー等の異物を繊維から分離するものであり、本実施の形態では図4に示す構成を有する。脱墨部22は前槽221と後槽222を有しており、越流堰を形成する仕切り壁223の上端側の開口において前槽221と後槽222とが連通している。前槽221と後槽222にはそれぞれヒーター224、225を配置し、前槽221には微細気泡の噴出口226および攪拌翼227を配置しており、後槽222には温度センサ228を配置している。
【0034】
前槽221では、界面活性剤が存在する下で、インク、トナー等の異物の粒子を含む再生パルプ含有液を攪拌翼227で攪拌しつつ、再生パルプ含有液中に噴出口226から細かい気泡を吹き込み、疎水性の異物の粒子を界面活性剤の気泡表面に付着させて浮上分離し、親水性の繊維を仕切り壁223の上端側の開口から後槽222へ移送することで脱墨する。この際にヒーター224、225で再生パルプ含有液を所定温度に加熱し、温度センサ228で温度制御を行う。
【0035】
すすぎ部23は、脱墨パルプから脱墨剤を洗浄するものであり、本実施の形態では、図5に示す構成を有する。すすぎ部23は、両側のロール231、232の間に掛け渡して展張したメッシュベルト233を有し、メッシュベルト233が上部の往路軌道と下部の復路軌道からなる無端軌道を形成している。
【0036】
往路軌道には始端側から終端側へ順次にホッパー234、洗浄ノズル235、プレスロール236が配置してあり、復路軌道の始端側にスクレーパ237を配置し、往路軌道と復路軌道の間にドレーンパン238を配置している。
【0037】
ホッパー234は脱墨パルプ239を含む脱墨パルプ液をメッシュベルト233の上に供給するものであり、複数の洗浄ノズル235はメッシュベルト233の上に広がった脱墨パルプ239に向けて洗浄水を噴射する。繊維に残るインク、トナー等の異物の粒子および脱墨剤を洗浄水により洗い流す。
【0038】
プレスロール236はメッシュベルト233を挟んで上下に対をなし、メッシュベルト233の上に広がった脱墨パルプ239をプレスして脱水する。すすぎ終えた脱墨パルプ239はスクレーパ237がメッシュベルト233から回収し、繊維濃度が0.5重量%程度となるように水を混ぜて抄紙部3へ送る。脱墨パルプ239から離れた脱離水はドレーンパン238で受け留めて排水処理部5へ送る。
(抄紙部)
抄紙部3は、脱墨パルプを抄紙して再生紙を調製するものであり、図1に示すように、ヘッドボックス31、ワイヤー部32、脱水部33、プレス部34、ドライヤー部35からなる。
【0039】
ワイヤー部32は両側のロール321、322の間に掛け渡して展張したメッシュベルト323を有し、メッシュベルト323が無端軌道を形成している。メッシュベルト323にはヘッドボックス31から脱墨パルプ239を含む脱墨パルプ含有液を均一に噴出させ、水切りして繊維の層を形成する。
【0040】
脱水部33は、複数のローラ331の間に掛け渡したフェルトからなる上下一対の吸水ベルト332からなり、抄いた紙333をメッシュベルト323から吸水ベルト332に転移させ、上下の吸水ベルト332の間に挟んで吸水して脱水する。吸水ベルト332は走行軌道上に設けた上下一対の脱水ローラ334の間において脱水する。
【0041】
プレス部34は、複数のローラ341の間に掛け渡したフェルトからなる上下一対の吸水ベルト342からなり、抄いた紙333を吸水ベルト342の間に挟み、上下一対の脱水ローラ343を通して圧搾、脱水する。
【0042】
ドライヤー部35は、複数のローラ351の間に掛け渡した上下一対の布製の搬送ベルト352の間に抄いた紙333を挟み、複数の乾燥ローラ353に圧接させて抄いた紙333を乾燥させるものであり、搬送ベルト352は布の他、ゴムや樹脂などの材料を用いてもよい。図6に示すように、ドライヤー部35は、内部にヒーターを備えた乾燥ローラ353の周囲に搬送ベルト352を配置し、乾燥ローラ353の表面の温度を測定する温度センサ354を有している。
(仕上げ部)
仕上げ部4はカレンダー部41を有しており、図7に示すように、カレンダー部41は抄いた紙333を複数のプレスローラ411の間に通し、紙の平坦度を上げ、カット部(図示省略)で所定のシートサイズにカットして再生紙が完成する。
(排水処理部)
排水処理部5は、排水離解タンク51、排水(抄紙)タンク52、排水(すすぎ)53、排水脱墨54、排水処理部55の各槽体を有し、再生紙の作製に係る各工程で使用し、排出された排水を処理するものであり、フィルターに通して繊維、インク、トナーを除去し、薬剤の添加により中性化して再度各工程へ供給する。再利用が困難な水は公共下水等へ排水可能な水質にまで処理する。
(制御部)
図8に示すように、制御部7は、CPU71に設定する機能回路として、以下の機能部を有している。つまり、再生パルプ部1の運転を制御する再生パルプ部制御機能部711と、脱墨パルプ部2の運転を制御する脱墨パルプ部制御機能部712と、抄紙部3の運転を制御する抄紙部制御機能部713と、仕上げ部4の運転を制御する仕上げ部制御機能部714と、排水処理部5の運転を制御する排水処理部制御機能部715と、稼動開始から稼動停止までの運転プロセスを逐次実行する自動運転制御機能部716と、紙量検知センサ125から入力する裁断紙片の有無信号に応じて自動運転制御機能部716へ稼動開始の許可指示または不許可指示を入力する運転ロック制御機能部717と、調製する再生紙の目標枚数を設定する目標枚数設定機能部718と、調製した再生紙の枚数を数えるカウンター機能部719と、再生パルプ部1と脱墨パルプ部2と抄紙部3において運転終了時に所定の排水作業を行なう排水作業制御機能部720および所定の洗浄作業を行なう洗浄作業制御機能部721を有する。
【0043】
また、制御部7は、自動運転制御機能部716へ稼動開始と稼動停止の少なくとも何れか一方のタイミングを指示信号として入力するタイミング入力部73および表示部74を備えており、タイミング入力部73は本実施の形態では制御部7の内部に配設する内部時計からなり、内部時計が予定時刻に達したときに指示信号を自動運転制御機能部716へ入力するものである。しかしながら、タイミング入力部3は制御部7の外部に配設する外部時計が予定時刻に達したときに発する指示信号または外部機器から発する指示信号を入力するための入力ポートとすることも可能である。
【0044】
制御部7は、再生パルプ部1と脱墨パルプ部2と抄紙部3と仕上げ部4と排水処理部5における上述した運転を、それぞれ再生パルプ部制御機能部711、脱墨パルプ部制御機能部712、抄紙部制御機能部713、仕上げ部制御機能部714、排水処理部制御機能部715で制御する。
(運転制御)
制御部7による自動運転の開始から停止までの制御は、図9に示すフローシートに沿って行う。つまり、停止状態900から稼動開始条件チェック910、稼動準備作業920、再生紙作製930、稼動停止条件チェック940、停止準備作業950の各工程を経て装置停止960となる。
【0045】
稼動開始条件チェック910では、図10に示すように、稼動開始信号の有無の判断911を行う。稼動開始信号は、タイミング入力部73から自動運転制御機能部716へ入力する指示信号であり、本実施の形態では内部時計が予定時刻に達したときに入力する指示信号である。しかしながら、稼動開始信号は、外部時計が予定時刻に達したときに発する指示信号または外部機器から発する指示信号であっても良い。
【0046】
次に、稼動開始信号がある場合には、シュレッダータンク12の内部に裁断紙片があるか否かの判断912を行なう。制御部7は、運転ロック制御機能部717が紙量検知センサ125から入力する裁断紙片の有無信号に応じて自動運転制御機能部716へ稼動開始の許可指示または不許可指示を入力する。このため、有無信号がシュレッダータンク12の内部に運転に必要な量の裁断紙片が無いことを示すものである場合には、運転ロック制御機能部717が自動運転制御機能部716へ不許可指示を入力し、自動運転制御機能部716が起動しないことで、無駄な運転を行なわずに消費電力を抑えることができる。この際に、制御部7は表示部74に警告情報としてシュレッダータンク12の内部に運転に必要な量の裁断紙片が無いことを示す。シュレッダータンク12の内部に運転に必要な量の裁断紙片がたまった時に警告表示リセット913を行なう。
【0047】
運転ロック制御機能部717が稼動開始の許可指示を出している場合には、シュレッダータンク12の内部に必要量、つまり少なくともパルパー14で行う1回分の処理量以上にあると判断する。
【0048】
稼動準備作業920では、図12に示すように、タンクへの注水921を行なう。残りの部位へは必要に応じて所定のタイミングで注水を行なう。つまり、パルパー14および脱墨部22へ必要量の注水を行う。
【0049】
次に、パルパー14および脱墨部22のヒータ143、224、225に通電し、さらに乾燥ローラ353のヒータ(図示省略)に通電して加熱操作922を行なう。
次に、各温度センサ144、228により測定するパルパー14および脱墨部22の水温および、温度センサ354で測定する乾燥ローラ353の表面温度が設定温度に達したか否かの判断923を行なう。
【0050】
再生紙作製930では、再生パルプ部制御機能部711、脱墨パルプ部制御機能部712、抄紙部制御機能部713、仕上げ部制御機能部714、排水処理部制御機能部715で、それぞれ再生パルプ部1と脱墨パルプ部2と抄紙部3と仕上げ部4と排水処理部5を制御して上述した運転を行う。
【0051】
稼動停止条件チェック940では、図11に示すように、終了時刻に達したか否かの判断941を行なう。この終了時刻は、タイミング入力部73から自動運転制御機能部716へ入力する指示信号で指示するものであり、本実施の形態では内部時計が予定時刻に達したときに入力する指示信号である。また、稼動開始から予定時間が経過した後の時刻であっても良い。終了時刻である場合は停止準備作業へ移る。
【0052】
終了時刻でない場合は、設定分の処理が完了したか否かの判断942を行なう。制御部7は、抄紙部3の駆動回数等を数えることにより、あるいは仕上げ部4に設けるセンサ(図示省略)によって完成した再生紙を検知することにより、調製した再生紙の目標枚数をカウンター機能部719においてカウントし、カウンター機能部719のカウント値がユーザーが目標枚数設定機能部718に設定した目標枚数になったときに運転を停止する。よって、過剰な運転を抑制し、ユーザーが必要とする最小限の稼動だけを実現する。設定分の処理が完了した場合は停止準備作業へ移る。
【0053】
設定分の処理が完了していない場合は、紙量検知センサ125によりシュレッダータンク12の内部にある裁断紙片の有無の確認943を行なう。裁断紙片が無い場合には、表示部74に警告944を表示し、停止準備作業へ移る。裁断紙片が有る場合は運転を継続する。
【0054】
停止準備作業950では、図13に示すように、各ヒータ143、224、225への通電を停止951する操作を行い、温度センサ354で測定する乾燥ローラ353の表面温度が設定温度以下になったか否かの判断952を行い、繊維と水の処理953を行う。
【0055】
繊維と水の処理953では、排水作業制御機能部720により運転制御し、抄紙部3に残った繊維は最終位置まで送って再利用し、他の繊維は廃棄のための処理を行い、水は異物を取り除いて薬剤で中性に戻して排出する。
【0056】
次に、駆動の停止954を行い、各部の清掃955では、洗浄作業制御機能部721により運転制御し、槽内やベルトに付着している繊維を水で自動的に洗い流す。次に、発生したゴミの処理956では、繊維、インクともに水分を除去して固形化させる。
【0057】
このように、制御部7は、排水作業制御機能部720および洗浄作業制御機能部721によって再生パルプ部1と脱墨パルプ部2と抄紙部3を制御し、運転終了時に所定の排水作業および所定の洗浄作業を行なうことで、装置の各部を常に清浄な状態に保つことができ、その結果として再生紙の品質を維持することができる。
【0058】
以上のように、本実施の形態では、自動運転制御機能部716による運転制御によりユーザーがその場に居なくても自動的に運転の開始、停止を行なうことができ、任意の時間において無人運転が可能となる。しかしながら、本実施の形態において制御部7にマニュアルスタートキーおよびマニュアルストップキーを設け、運転の開始および停止を手動操作することは、本発明の実施を妨げるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施の形態における古紙処理装置を示す模式図
【図2】同古紙処理装置の再生パルプ部を示す模式図
【図3】同古紙処理装置の再生パルプ部における繊維濃度調整部の作用を示す模式図
【図4】同古紙処理装置の脱墨部を示す模式図
【図5】同古紙処理装置のすすぎ部を示す模式図
【図6】同古紙処理装置の乾燥ローラを示す模式図
【図7】同古紙処理装置のプレスローラを示す模式図
【図8】同古紙処理装置の制御部のブロック図
【図9】同古紙処理装置の制御を示すフローシート図
【図10】同制御における稼動開始条件チェックを示すフローシート図
【図11】同制御における稼動停止条件チェックを示すフローシート図
【図12】同制御における稼動準備作業を示すフローシート図
【図13】同制御における停止準備作業を示すフローシート図
【符号の説明】
【0060】
1 再生パルプ部
2 脱墨パルプ部
3 抄紙部
4 仕上げ部
5 排水処理部
6 古紙
7 制御部
11 シュレッダー
12 シュレッダータンク
13 繊維濃度調整部
14 パルパー
21 脱墨前希釈部
22 脱墨部
23 すすぎ部
31 ヘッドボックス
32 ワイヤー部
33 脱水部
34 プレス部
35 ドライヤー部
41 カレンダー部
51 排水離解タンク
52 排水(抄紙)タンク
53 排水(すすぎ)
54 排水脱墨
55 排水処理部
61 裁断紙片
71 CPU
73 タイミング入力部
74 表示部
121 上部開口
122 底面
123 排出口
124 排出装置
125 紙量検知センサ
131 受け皿部
131a 受け皿
131b 側壁部
132 計量部
141 槽体
142 攪拌翼
143 ヒータ
144 温度センサ
221 前槽
222 後槽
223 仕切り壁
224、225 ヒーター
226 噴出口
227 攪拌翼
228 温度センサ
231、232 ロール
233 メッシュベルト
234 ホッパー
235 洗浄ノズル
236 プレスロール
237 スクレーパ
238 ドレーンパン
239 脱墨パルプ
321、322 ロール
323 メッシュベルト
331 ローラ
332 吸水ベルト
333 抄いた紙
334 脱水ローラ
351 ローラ
352 搬送ベルト
353 乾燥ローラ
354 温度センサ
411 プレスローラ
711 再生パルプ部制御機能部
712 脱墨パルプ部制御機能部
713 抄紙部制御機能部
714 仕上げ部制御機能部
715 排水処理部制御機能部
716 自動運転制御機能部
717 運転ロック制御機能部
718 目標枚数設定機能部
719 カウンター機能部
720 排水作業制御機能部
721 洗浄作業制御機能部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
古紙の裁断紙片を離解して再生パルプを調製する再生パルプ部と、再生パルプを漂白して脱墨パルプを調製する脱墨パルプ部と、脱墨パルプを抄紙して再生紙を調製する抄紙部を一体的に備えるとともに、各部の運転を制御する制御部を備え、制御部は稼動開始から稼動停止までの運転プロセスを逐次実行する自動運転制御機能部と、稼動開始と稼動停止の少なくとも何れか一方のタイミングを自動運転制御機能部へ指示信号として入力するタイミング入力部とを有することを特徴とする古紙処理装置。
【請求項2】
タイミング入力部は、制御部の内部に配設する内部時計が予定時刻に達したときに指示信号を自動運転制御機能部へ入力することを特徴とする請求項1に記載の古紙処理装置。
【請求項3】
タイミング入力部は、制御部の外部に配設する外部時計が予定時刻に達したときに発する指示信号または外部機器から発する指示信号を入力するための入力ポートであることを特徴とする請求項1に記載の古紙処理装置。
【請求項4】
再生パルプ部は、古紙を裁断するシュレッダーと、裁断した裁断紙片を貯留するシュレッダータンクと、シュレッダータンクの内部に貯留する裁断紙片の有無を検出する紙量検知センサーを備え、制御部は、紙量検知センサーから入力する裁断紙片の有無信号に応じて自動運転制御機能部へ稼動開始の許可指示または不許可指示を入力する運転ロック制御機能部を有することを特徴とする請求項1に記載の古紙処理装置。
【請求項5】
制御部は表示部を有し、運転ロック制御機能部は紙量検知センサーから入力する裁断紙片の有無信号がシュレッダータンクの内部に運転に必要な量の裁断紙片が無いことを示すものである場合に表示部に警告情報を表示することを特徴とする請求項4に記載の古紙処理装置。
【請求項6】
制御部は、調製する再生紙の目標枚数を設定する目標枚数設定機能部と、調製した再生紙の枚数を数えるカウンター機能部を有し、カウンター機能部のカウント値が目標枚数となったときに運転を停止することを特徴とする請求項1に記載の古紙処理装置。
【請求項7】
制御部は、再生パルプ部と脱墨パルプ部と抄紙部において運転終了時に所定の排水作業を行なう排水作業制御機能部および所定の洗浄作業を行なう洗浄作業制御機能部を有することを特徴とする請求項1に記載の古紙処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−299229(P2009−299229A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−156069(P2008−156069)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【出願人】(390002129)デュプロ精工株式会社 (351)
【Fターム(参考)】