説明

可動テーブル

【課題】位置合わせ作業が簡単で測定機の計測用基台に対する試料載置台の位置が低く機構が簡単で価格が低廉な可動テーブルを提供する。
【解決手段】可動テーブル10は磁石12の磁力で不図示の計測用基台に固定される。固定前の位置合わせのときは、指で二つの操作レバー18がつままれ、開放位置Fから移動位置Mへ回動される。操作レバー18に一体なシャフト部21が回転し、シャフト部21に形成されているカム部22が逃げ部24から下方に回動してその先端が計測用基台の面を押しやり相対的に天板11を計測用基台から浮き上がらせる。指で二つの操作レバー18をつまんだまま天板11を所望の方向へ移動させて位置決めし、指を離すと磁石12の磁力で天板11が計測用基台の面に密着して固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定と位置合わせを行うための可動テーブルに関するものであって、例えば計測用の試料などを積載し、測定機の計測用基台に位置合わせを行って、試料の計測に参画するためのものである。
【背景技術】
【0002】
測定機の計測用基台に対する小型軽量の計測用の試料の位置合わせには、しばしば可動テーブルが使用される。
従来技術1
従来から用いられている位置合わせ用の可動テーブルの例を図1に示す。図1に示す位置合わせ用の可動テーブル1は、不図示の測定機の計測用基台に対してX方向に移動可能なX方向移動台2と、このX方向移動台2に対してY方向に移動可能であり、且つ試料の載置台でもあるY方向移動台3を備えている。
【0003】
X方向移動台2は、測定機の計測用基台に固定されるX方向固定台4に摺動可能に取り付けられている。上記のX方向移動台2は、X方向固定台4に配設されているネジ5が人の指で左右に廻されることによって摺動してX方向に進退する。
【0004】
そして、Y方向移動台3は、X方向移動台2に固定されるY方向固定台6に摺動可能に取り付けられている。このY方向移動台3は、Y方向固定台6に配設されているネジ7が人の指で左右に廻されることによって摺動してY方向に進退する。
【0005】
この位置合わせ用の可動テーブル1は、確かに精度良く位置を合わせることができようになっており、位置合わせが終了した後には、その位置で固定されるようになっている。
従来技術2
従来から用いられている、この他の位置合わせ用の可動テーブルの例を図2に示す。図2は、右上に可動テーブルの平面図、右下に正面図、左に側面図を示している。図2に示す可動テーブル8は、天板9aとその下に板状の磁石9bを接着した構造をもつ。
【0006】
留め具取り付けネジ穴9cを用いて天板9aに取り付けられた留め具9dと、計測試料固定ネジ9eの間に計測対象の試料を置き、計測資料固定ネジを掴んで可動テーブルを水平方向に移動した後、下方に動かし磁石9bの力で計測用基台に固定するようになっている。
【0007】
従来技術3
また、それぞれ薄い板状の構成の二つの物体からなるソケットコネクタのカバーとベースにおいて、カバーがベースに対して摺動する際に、摺動する方向に垂直する方向に側方偏向を生じることを制限する機構の中の一つに、操作レバーと、この操作レバーに垂直につながる駆動カムを組み込んだ構成が開示されている。(例えば、特許文献1参照。)
【特許文献1】特開2004−022538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来技術1の場合、上記の位置合わせ用の可動テーブルは、ネジを回すという細かで時間のかかる作業を伴うので迅速な位置合わせ作業ができないという問題がある。
【0009】
また、固定台とその上を摺動する移動台からなる二段重ねの台が、X方向とY方向とで更に二段重ねになっているので、載置された試料の位置が測定機の計測用基台に対して非常に高くなる。
【0010】
他方、測定機がレーザ光線を用いる三次元測定機であったりすると、しばしば計測用基台が回転テーブルで構成されている場合がある。
回転テーブルから成る計測用基台に位置決めされるこのような可動テーブルの試料載置台が、計測用基台から大きく離れた高い位置にあると、計測用基台の回転時の偏心による誤差が、試料載置台上に積載される試料の計測精度に悪影響を及ぼすという問題が発生する。
【0011】
また、上記の位置合わせ用の可動テーブルは、機構が複雑なために装置全体が大きくなって嵩張る。このように嵩張る装置は、使用する測定機に制約を受けるという問題がある。更に、機構が複雑である分だけ費用が嵩むという問題もある。
【0012】
さらに、この可動テーブルは重く重心も高い。これは計測用基台が回転テーブルである場合は、その軸受けに対して大きな偶力を発生するので、偏心量の経時誤差が大きいという問題もある。
【0013】
また従来技術2は、可動テーブルが高価であること、試料の積載位置が計測用基台に対して高くなること、および可動テーブルが重く、重心も高いと言う、従来技術1の問題点は解決している。
【0014】
しかしながら、計測用基台に一旦固定した可動テーブルを計測位置の調整のために移動する必要が生じた場合、計測資料固定ネジ17をつまんで持ち上げて、移動することになる。
【0015】
計測用資料を可動テーブルに完全に固定できる場合は問題ないが、容器やフレームは固定できるものの、計測用試料の一部は固定できない場合が少なくない。一方、磁石の吸着力は可動テーブルをしっかりと固定するほど大きい。
【0016】
したがって、可動テーブルの取り外しを滑らかに行うことが困難であり、勢い余ってしばしば計測対象の試料が動いてしまい、前回行った計測データとの照合ができなくなり、計測の作業性を低下せしめると言う問題をもっている。
【0017】
また、時には可動テーブルが大きく傾いて計測対象の試料を落としてしまうと言うことすら発生し問題となっていた。
また従来技術3は、それぞれ薄い板状の構成の二つの物体の相対的な摺動時の、摺動方向に垂直する方向への側方偏向を制限する機構を示しているものの、二つの物体は予め定められている位置に嵌め込まれるものであって、操作レバーと駆動カムによって任意の位置に位置決めされるものではない。
【0018】
本発明の課題は、上記従来の実情に鑑み、位置合わせ作業が簡単かつ滑らかに行うことができて、測定機の計測用基台に対する載置試料の位置が低く、可動テーブルの重量も小さく重心が低く、機構が簡単で価格が低廉な可動テーブルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の可動テーブルは、鋼または鉄からなる基台に設置され、前記基台に対し所定の位置に手動による移動で位置決めされ、且つ位置決め後に前記基台に固定される可動テーブルであって、天板と、該天板の底面に固着され、前記基台に吸着することによって、前
記天板を前記基台に固定する磁石と、該磁石の吸着力、または該磁石の吸着力と重力に抗して、前記天板を前記基台から前記の固定状態を脱して上昇させる機構と、前記磁石の吸着力、または重力、または前記磁石の吸着力と重力の両方によって所定の上昇位置から前記天板を下降させ、前記磁石の吸着力の作用で前記天板を前記基台に固定する機構を併せ持つ、開放位置と移動位置との間を、それぞれ一つの点を支点に回動する少なくとも二つの操作レバーと、該操作レバーと一体に配設され、且つ該操作レバーの回動に応じて該回動の角度内を順逆に回転するシャフト部と、該シャフト部と一体に形成され、且つ前記天板が設置される前記基台の天板設置面に当接し、且つ前記シャフト部の前記順逆の回転に応じて、前記天板を前記基台に対して上昇させる位置あるいは下降させる位置に回動するカム部と、を有する昇降機構を備えて構成される。
【0020】
この可動テーブルにおいて、例えば、上記天板は、計測試料を載置・固定する試料固定装置を有する載置台である。また、例えば、上記磁石は、上記天板とほぼ同じ大きさのフェライト磁石板であってもよく、複数に分かれていてもよい。さらに、磁石は基台に接触する構造であってもよいし、基台と天板が接触するものの磁石は基台とは接触しない構造であってもよい。また、磁石と天板、磁石と基台、基台と天板は直接接触する構造であってもよいし、途中に他の部品を介在する構造であってもよい。
【0021】
シャフト部の運動に関しては、例えば、上記天板に、又は上記磁石に、又は上記天板と上記磁石の両方に形成された上記シャフト部の回転を案内する回転軸案内溝穴と、上記カム部の待機位置となる逃げ部と、を有するように構成するのが好ましい。なお、回転案内溝穴は、天板、磁石に限らずこれらと一体となる他の部品に配備してもよい、
また、例えば、上記シャフト部は硬鋼線からなり、上記カム部は上記シャフト部を屈曲させて上記シャフト部の長手方向に沿って複数形成されているようにしてもよい。
【0022】
また、例えば、上記シャフト部は硬鋼部材からなり、上記カム部は上記シャフト部と一体に上記シャフト部の長手方向に沿って延在するように1個形成されるように構成してもよい。
【0023】
また、この可動テーブルにおいて、例えば、上記操作レバーは上記移動位置で移動限界に到達して停止する強制停止機構を備え、上記操作レバーが強制停止位置にあるとき、上記天板は上昇の終端に位置するように構成するのが好ましい。
【0024】
また、上記昇降機構は、例えば、複数の上記操作レバーと、複数の上記操作レバーに連結されて複数の上記操作レバーを連動させるリンク機構を有するように構成してもよい。
また、この可動テーブルにおいて、例えば、上記天板が上記上昇の終端位置に在るとき、上記磁石は、上記強制停止位置にある上記操作レバーをつまむ指から加えられる外力で、上記天板が上記基台に対して自在な方向に容易に移動可能な程度の磁力を、上記基台に対して維持するように構成するのが好ましい。なお、上記天板が上記基台に対して殆ど磁力を及ぼさない設計も可能である。この場合は、天板は上記上昇の終端においては重力のみが天板を下降させる駆動力となる。
【0025】
また、上記の説明は基台が水平におかれていることを想定しているが、基台は垂直方向に向いていても問題ない。なお、基台が水平の場合は天板を基台から離脱する力は、重力と磁石の吸着力に抗する必要があるが、垂直の場合は磁石の吸着力のみに抗すればよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、位置合わせ作業が簡単でかつ滑らかに行うことができて、測定機等の計測用基台に対する載置した試料の位置が低く、軽量で重心も低く、機構が簡単で価格が低廉な可動テーブルを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0028】
図3は、第1の実施形態における可動テーブルを示す図である。図3は、左上に可動テーブルの平面図を示し、左下に正面図、右に側面図、左中央に平面図から取り出したシャフト及びシャフトと一体なカムを示している。
【0029】
図3に示す可動テーブル8は、例えば試料を計測する不図示の測定機等の鋼または鉄からなる計測用基台に設置されて使用されるものの例として示されている。
この可動テーブル10は、天板11と、この天板11の底面に固着され、測定機の計測用基台に吸着して、天板11を計測用基台に平行に固定する磁石12と、天板11を測定機の計測用基台に対し矢印a又は矢印bで示すように昇降させる昇降機構13とを備えている。
【0030】
天板11は、例えば歯医者が患者から採った歯型に基づいて義歯を作製する技工士等が、精度の良い義歯を作製するために歯型を正確に計測する場合等に、測定機の計測用基台に設置されて計測試料の載置台として使用される。
【0031】
そのような用途のために、上記の天板11は、歯型等の計測試料を載置・固定するための試料固定装置を備えている。ただし、容器やフレームは固定できるが、計測資料全体を固定できるとは限らず、この場合が特に問題となる。
【0032】
試料固定装置は、図3の左上に示すように、天板11の上面後方(図の左方)の2隅にそれぞれ形成されている留め具取付けネジ穴14、留め具取付け予備ネジ穴15、これらのネジ穴に捻じ込まれて固定される計測試料留め具16(図3の左下)、及び天板前面の計測試料固定ネジ17で構成されている。
【0033】
天板11に載置される計測試料は、2個の計測試料留め具16と計測試料固定ネジ17とで三方から挟持されて天板11上に固定される。
磁石12は、本例では、天板11とほぼ同じ大きさのフェライト磁石板で構成されている。しかし磁石12の配置形状はこれに限ることなく、例えば、磁石の吸着力が大き過ぎる場合は適宜小面積のフェライト磁石板を用いるのがよい。
【0034】
また、本例はフェライト磁石板が計測用基台に接触するがこの形に限るものではない。例えば、本例の変形例として、図4のように天板11が案内溝板や押さえ板を介して計測用基台に接触し、フェライト磁石板は計測用基台とわずかに離れた形に配置してもよい。
【0035】
図4は、左上に上記変形例の可動テーブルの平面図を示し、左三段目に正面図、右中央寄りに側面図を示している。さらに、左二段目に平面図から取り出したシャフト及びシャフトと一体なカムを示し、左下に基台と磁石の位置関係を示す拡大図(平面図のA−A´断面矢視拡大図)を示し、右に側面図の一部拡大図を示している。
【0036】
尚、図4では、図3と異なる構成部分には図3と異なる新たな符号を付与して示し、図4に示した構成または機能が、図3に示した構成または機能と同一である場合は、図3と同一の番号を、図3と対比できる程度に簡略に示している。
【0037】
図4に示すように、この変形例では、天板11の底面に、案内溝板34が密着し、その下面には、シャフト21を下から押えて保持する押さえ板35が配置されている。
案内溝板34には回転軸案内溝穴23が形成されており、更にこの案内溝板34と押さえ板35には、カム部22の逃げ部24が形成されている。
【0038】
図4の左下に示すように、天板11が案内溝板34と押さえ板35を介して計測用基台36に接触して固定されるとき、磁石収納部37に配設されているN極38とS極39からなる磁石12は、微小量hだけ計測用基台36から離れる(換言すれば押さえ板35の下面から引っ込む)ように配置されている。
【0039】
この図4に示す変形例の形態によると、製作費は大きくなるが磁石の形状的な耐久性は大きくなる。
図3に戻り(図4も上記の変形部分を除いてほぼ同様)、昇降機構13は、少なくとも二つの操作レバー18を備えている。二つの操作レバー18は、その一端19を支点にして、図3の右に示すように、開放位置Fと移動位置Mとの間を回動する。
【0040】
これらの操作レバー18には、その一端19に、シャフト部21が一体になって配設されている。シャフト部21は、操作レバー18の上記の回動に応じてその回動の角度内を順逆に回転する。
【0041】
これらシャフト部21には、本例では硬鋼線が用いられる。そして、このシャフト部21には、カム部22が一体に形成されている。
カム部22は、図3の左上及び中央に示すように、硬鋼線製のシャフト部21を屈曲させてシャフト部21に複数(本例ではシャフト部21ごとに2個)形成されている。
【0042】
また、カム部22は、シャフト部21に対し、天板11の内側(中心部側)に向けて突設されている。
本例ではこれらのカム部22は重力によって、天板11が設置される測定機の計測用基台の天板設置面に常に当接しており、操作におけるガタツキがない構造になっている。
【0043】
そして、これらのカム部22は、図3の右に示すように、操作レバー18の移動位置Mと開放位置F間の回動に連動するシャフト部21の順逆の回転に応じて、測定機の計測用基台に対し、天板11を矢印a及び矢印bで示すように上昇させる位置Uと下降させる位置Dとに回動する。
【0044】
また、昇降機構13は、シャフト部21の回転を案内する回転軸案内溝穴23と、カム部22の逃げ部24を有している。
回転軸案内溝穴23は、シャフト部21が回転するときに位置ずれが生じないように、シャフト部21を収容してその回転を案内する。
【0045】
逃げ部24は、カム部22が天板11を下降させる位置Dに回動した待機位置に在るときの逃げ場を構成する。
これら回転軸案内溝穴23と逃げ部24は、天板11に形成されるようにしてもよく、又は磁石12に形成されるようにしてもよく、又は天板11と磁石12の両方に形成されるようにしてもよいし、天板11と一体となる他の部品に配備されてもよい。
【0046】
また、上記の操作レバー18には、移動位置Mで、その移動限界に到達して強制的に停止させられる強制停止機構を備えている。
図3の左上と右に示す例では、二つの操作レバー18が移動位置M方向に動かされたとき、それぞれ計測試料固定ネジ17の両側面に当接して強制的に停止させられる。
【0047】
このように、操作レバー18が強制停止位置(=移動位置M)にあるとき、天板11は
、上昇の終端に位置することになる。
また、磁石12の磁力は計測用基台から離れるにつれて弱まるが、天板11が上昇の終端位置に在るとき、天板11が計測用基台に対し自在な方向に容易に移動可能な程度の磁力を、計測用基台に対して維持するように設計されている。
【0048】
すなわち、天板11が上昇の終端位置に在るときでも、人が指で強制停止位置(=移動位置M)にある操作レバー18をつまんで、天板11を容易に動かすことが出来る程度の弱い磁力が磁石12から計測用基台に向けて維持されている。
【0049】
このように昇降機構13は、人の指による操作レバー18の開放位置Fから移動位置Mへの移動に応じてカム部22が下降位置Dから上昇位置Uへと回動することにより、磁石12の磁力による計測用基台への吸着力に抗して、天板11を計測用基台から矢印aで示す方向に上昇させる。
【0050】
しかも、カムで上昇させるので可動テーブルの動きは滑らかであり、水平が保たれるので、人手で引き離すときのような勢い余って試料の位置が変わってしまうと言うような不具合は発生しない。
【0051】
そして、磁石12と計測用基台との間に働く磁力は、天板11が計測用基台から脱落することのない程度の強さであり、それでいて、移動位置Mに位置固定された操作レバー18をつまんだ指で天板11を所望の方向へ自在に動かすことができる程度に弱いものである。
【0052】
このような磁石12と計測用基台との間に形成される磁力は、カム部22の突出部分の大きさを加減することで容易に調節できる。
また、操作レバー18を、より長い形状に構成すると、指先にそれほど強い力を入れなくても、弱い力で、磁石12によって天板11全体に生じる計測用基台への強い吸着力に抗して、天板11を容易に上昇の終端位置に持ち上げることができる。
【0053】
この状態で、操作レバー18を移動位置Mの固定位置でつまんだまま、指で天板11を所望の方向へ動かすと、カム部22の先端が計測用基台の面を滑動する。
したがって、天板11の下面を計測用基台の上面に対して平行に維持したまま、天板11を指先で自在に動かすことができる。
【0054】
これにより、天板11上の計測試料を所定の計測位置に配置することができる。位置合わせが出来たならば、操作レバー18をつまみから放す。
すると天板11は、上記所定の上昇位置から、重力と磁石12の吸着力で計測用基台に向けて下降し計測用基台に接触した時点で磁石12から働く磁力が最強となり、天板11が計測用基台に強固に固定される。
【0055】
このように、本発明の可動テーブル10を用いると、操作レバー18をつまむだけで、計測用基台に強固に固定されたいた可動テーブル10を計測用基台から浮き上がらせることが容易にかつ滑らかに行うことができて、且つ弱い磁力による計測用基台への吸着力を維持したまま、天板11を指先で動かして位置合わせすることが短時間で実現する。
【0056】
また、本発明の可動テーブル10の構成においては、天板11の計測試料を載置・固定する上面の計測用基台からの高さは、天板11の厚さと磁石12の厚さだけであるので、計測用基台の面に近接した状態が維持される。
【0057】
したがって、測定機の計測用基台が回転機能を備えたものである場合でも、計測用基台
の回転の偏心誤差は、ほとんど拡大することはないので、計測試料を高い精度で計測することが可能となる。
【0058】
また、本例は図1に示す従来の可動テーブルに比べて軽量である上に、重心も低いので、計測用基台の回転軸に加わる偶力が著しく軽減される。
このことは、計測用基台の回転駆動系の経時誤差が低減されることにつながり、計測データの精度維持に大きく貢献する。
【実施例2】
【0059】
図5は、第2の実施形態における可動テーブルを示す図である。なお、図5に示した構成または機能が、図3に示した構成または機能と同一である場合は、図3と同一の番号を付与して示している。また、図5には、試料固定装置の図示を省略している。
【0060】
図5に示すように、本例の可動テーブル25は、図3に示した操作レバー18の頭に、ほぼ球形の抓み部26が操作レバー18と一体に取り付けられている。
この抓み部26があることで、指先で二つの操作レバー18をつまんで矢印c及びdで示す移動方向に操作レバー18を移動させるとき、指先が二つの操作レバー18の上方向に滑り抜ける不具合が生じる可能性を防止することができる。
【0061】
また、抓み部26があることで、操作レバー18をつまむ指先が、抓み部26の下方で操作レバー18に良く固定される。したがって、不図示の測定機の計測用基台から天板11を浮き上がらせた後の位置合わせの作業を、より容易に行うことができるようになる。
【0062】
尚、本例における強制停止機構は、抓み部26が兼ねており、二つの抓み部26が天板11の前面中央で当接し合ったときに、操作レバー18は強制的停止させられる。
【実施例3】
【0063】
図6は、第3の実施形態における可動テーブルを示す図である。尚、図6に示した構成または機能が、図3又は図5に示した構成または機能と同一の場合は、図3又は図5と同一の番号を付与して示している。また、図6には、試料固定装置の図示を省略している。
【0064】
本例における可動テーブル27の操作レバー18は、図6に示す開放位置において、X状に交差して配置される。
また、これらの操作レバー18と一体なシャフト部21に形成されているカム部22はシャフト部21に対し、天板11の外側に向けて突設されている。
【0065】
ここで操作レバー18を指でつまんで矢印e及びfで示す移動方向に動かすと、この操作レバー18と一体なシャフト部21は、第1及び第2の実施形態の可動テーブル10及び25の場合と逆の方向に回転する。
【0066】
そして、この回転に伴ってカム部22が回動し、計測用基台の面を押して、天板11を計測用基台から浮き上がらせる。
本例の操作レバー18は、開放位置においてX状に交差して配置されているので、二つの操作レバー18の先端をつまむ指先は、常に操作レバー18の外側で、外側斜め下方に押さえ込まれる形となる。
【0067】
したがって、操作レバー18の先端を指先でつまんで操作レバー18を矢印e及びfで示す移動方向に動かしたとき、指先が滑って操作レバー18から外れることがない。
なお、二つの操作レバー18の先端をつまむ指先は、常に操作レバー18の外側にあるので、指が操作レバー18の移動限界を構成するので、敢えてシャフト部21と同じある
いは逆方向に向かう強制停止のためのストッパを操作レバー18に配備する必要はない。
【0068】
また、カム部22が、シャフト部21に対して天板11の外側に向けて突設されているので、カム部22はシャフト部21よりも外側で、つまりシャフト部21よりも広い範囲で計測用基台の面を押して、天板11を計測用基台から浮き上がらせることになる。
【0069】
これは、四つのカム部22がシャフト部21の外側で、つまり第1及び第2の実施形態の可動テーブル10及び25の場合よりも広い範囲で、計測用基台に接するので、4つのカム部22による支点が第1及び第2の実施形態の場合よりも広がることになる。
【0070】
このように四つのカム部22による支点が拡がっているので、天板11が計測用基台から浮き上がっている状態での位置合わせにおける天板11の姿勢がより安定する。
本形式は、レバー及びカムの形状、ならびにシャフトの軸の位置を適切に設計することによって、天板に対するレバーを位置を、図5の形式に較べて低くできるので、計測における死角を減ずることができるという特徴をもっている。
【実施例4】
【0071】
図7は、第4の実施形態における可動テーブルに使用される昇降機構の例を示す図である。尚、図7に示した構成または機能が、図3又は図5に示した構成または機能と同一の場合は、図3又は図5と同一の番号を付与して示している。また、図7には昇降機構を構成する1組の一方の構成のみを示している。
【0072】
図7に示すように、本例の昇降機構の構成において、操作レバー18と、この操作レバー18の下端部に固設されるシャフト部21は、硬鋼部材から成る。
そして、カム部22は、同様の硬鋼部材によりシャフト部21と一体にシャフト部21の長手方向に沿って2個形成されている。なお、カム部22は3個以上としてもよい。
【0073】
本例の昇降機構は全体が硬鋼部材より成るので構成が頑丈であり、より大型な可動テーブルに用いることができる。
【実施例5】
【0074】
図8は、第5の実施形態における可動テーブルに使用される昇降機構の例を示す図である。尚、図8に示した構成または機能が、図7に示した構成又は機能と同一の場合は、図7と同一の番号を付与して示している。また、図8には昇降機構を構成する1組の構成のみを示している。
【0075】
図8に示す本例の昇降機構の構成において、操作レバー18と、この操作レバー18の下端部に固設されるシャフト部21と、このシャフト部21と一体に形成されているカム部22は、硬鋼部材から成る。
【0076】
そして、カム部22は、シャフト部21の長手方向に沿って延在するように1個形成されている。
このように1個のカム部でも、シャフト部21の長手方向に沿って延在するように拡がっているので、カムとしての機能は、図7に示す第4の実施形態における昇降機構の場合と同様である。
【0077】
すなわち、本例の昇降機構も、全体が硬鋼部材より成るので構成が頑丈であり、より大型な可動テーブルに用いることができる。
【実施例6】
【0078】
ところで、可動テーブルが、水平に、より広がりのある大きなテーブルになると、寸法的に実施例1ないし5の形態では指で掴みやすい操作レバーを設計し難い場合がある。
しかし、そのような場合でも、リンク機構を採用することにより対応することができる。これを第6の実施形態として以下に説明する。
【0079】
図9に、第6の実施形態における可動テーブルに使用される昇降機構の例を示す。この図9は、図3の右に示した側面図と同様の方角から本例の可動テーブルを見た図である。
尚、図9に示した構成または機能が、図3又は図5に示した構成または機能と同一の場合は、図3又は図5と同一の番号を付与して示している。また、図9には試料固定装置を省略している。
【0080】
図9に示す昇降機構13は、三つの操作レバー18と、これら三つの操作レバー18に連結されて、三つの操作レバー18を連動させるリンク機構を有する。ここでは三つの操作レバーの形式を例示したが、可動テーブルが小さい場合は二つの操作レバーでも十分滑らかに操作できる。
【0081】
リンク機構は、連結バー28と支持部材29とで構成される。支持部材29は、上端の支持部31で連結バー28の一端部を摺動自在に支持し、その支持部31に支持されて連結バー28は図の両方向矢印gで示すように水平方向に進退する。
【0082】
図9に示す連結バー28の位置は、開放位置から移動方向に動いたときの位置である。連結バー28の係合部32に係合する三つの操作レバー18は、連結バー28の図の右方への移動に連動して、図の右方に回動している。
【0083】
これにより、シャフト部21に形成されているカム部22が、逃げ部(図3の左上の平面図参照)から下方に回動して、その先端が磁石12の下面から突出して、不図示の測定機の計測用基台の面を押しやり、天板11を計測用基台の面から浮き上がらせている。
【0084】
このように、可動テーブルが、水平に、より広がりのある大きなテーブルの場合には、可動テーブルに均等に三つ以上(本例の図では3つだが四つ以上でもよい)の操作レバー18、シャフト部21、それらのカム部22を配置する。
【0085】
本例の場合も、操作の容易性や、計測用基台の面に対して天板11が低い位置にあって偏心誤差の拡大の恐れがない高精度性など、前述した第1〜第5の実施形態の場合と何ら変わることはない。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】従来の位置合わせ用の可動テーブルの例を示す図である。
【図2】従来の位置合わせ用の可動テーブルの他の例を示す図である。
【図3】第1の実施形態における可動テーブルを示す図である。
【図4】第1の実施形態における可動テーブルの変形例を示す図である。
【図5】第2の実施形態における可動テーブルを示す図である。
【図6】第3の実施形態における可動テーブルを示す図である。
【図7】第4の実施形態における可動テーブルに使用される昇降機構の例を示す図である。
【図8】第5の実施形態における可動テーブルに使用される昇降機構の例を示す図である。
【図9】第6の実施形態における可動テーブルに使用される昇降機構の例を示す図である。
【符号の説明】
【0087】
1 可動テーブル
2 X方向移動台
3 Y方向移動台
4 X方向固定台
5 ネジ
6 Y方向固定台
7 ネジ
8 可動テーブル
9a 天板
9b 磁石
9c 留め具取り付けネジ穴
9d 留め具
9e 計測試料固定ネジ
10 可動テーブル
11 天板
12 磁石
13 昇降機構
14 留め具取付けネジ穴
15 留め具取付け予備ネジ穴
16 計測試料留め具
17 計測試料固定ネジ
18 操作レバー
19 一端
21 シャフト部
22 カム部
23 回転軸案内溝穴
24 逃げ部
25 可動テーブル
26 抓み部
27 可動テーブル
28 連結バー
29 支持部材
31 支持部
32 係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼または鉄からなる基台に設置され、前記基台に対し所定の位置に手動による移動で位置決めされ、且つ位置決め後に前記基台に固定される可動テーブルであって、
天板と、
該天板の底面に固着され、前記基台に吸着することによって、前記天板を前記基台に固定する磁石と、
該磁石の吸着力、または該磁石の吸着力と重力に抗して、前記天板を前記基台から前記の固定状態を脱して上昇させる機構と、前記磁石の吸着力、または重力、または前記磁石の吸着力と重力の両方によって所定の上昇位置から前記天板を下降させ、前記磁石の吸着力の作用で前記天板を前記基台に固定する機構を併せ持つ、
開放位置と移動位置との間を、それぞれ一つの点を支点に回動する少なくとも二つの操作レバーと、
該操作レバーと一体に配設され、且つ該操作レバーの回動に応じて該回動の角度内を順逆に回転するシャフト部と、
該シャフト部と一体に形成され、且つ前記天板が設置される前記基台の天板設置面に当接し、且つ前記シャフト部の前記順逆の回転に応じて、前記天板を前記基台に対して上昇させる位置あるいは下降させる位置に回動するカム部と、
を有する昇降機構と、
を備えたことを特徴とする可動テーブル。
【請求項2】
前記天板に、又は前記磁石に、又は前記天板と前記磁石の両方に形成された、前記シャフト部の回転を案内する回転軸案内溝穴と、前記カム部の待機位置となる逃げ部と、を有することを特徴とする請求項1記載の可動テーブル。
【請求項3】
前記操作レバーは、前記移動位置側の移動限界に到達して停止する強制停止機構を備え、前記操作レバーが強制停止位置にあるとき、前記天板は上昇の終端に位置する、ことを特徴とする請求項1記載の可動テーブル。
【請求項4】
前記天板が前記上昇の終端位置に在るとき、前記磁石は、前記強制停止位置にある前記操作レバーをつまむ指から加えられる外力で、前記天板が前記基台に対して自在な方向に容易に移動可能な程度の磁力を、前記基台に対して維持することを特徴とする請求項1記載の可動テーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−58307(P2009−58307A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−224889(P2007−224889)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】