説明

可動家具部材を駆動する家具用駆動装置

本発明は、可動である家具部材を駆動するための家具用駆動装置であって、電気モータ(3)と、前記家具部材に力を与えて駆動するために2つの端位置の間で往復運動をするアクチュエータ(4)と、前記電気モータと前記アクチュエータとの間で連結された変速部(5)と、を備えており、前記変速部は、2つの相互にかみ合うギアを備える偏心変速部の形態において動力伝達が少なくとも一段階からなるものであり、前記偏心変速部(6)が前記アクチュエータ(4)の2つの端位置に対応する2つの端位置を有し、かつ所定の回転角の範囲において前記ギア(7,8)が前記端位置から回転するときに変速部比が減少するように、前記2つのギア(7,8)の一方が前記アクチュエータ(4)に固定して連結あるいは結合されており、他方が前記電気モータに結合されていることを特徴とする家具用駆動装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動である家具部材を駆動するための家具用駆動装置であって、電気モータと、家具部材に力を与えて駆動するために2つの端位置の間で往復運動をするアクチュエータと、電気モータとアクチュエータとの間で連結された変速部と、を備えており、変速部は、2つの相互にかみ合うギアを備える偏心変速部の形態において動力伝達が少なくとも一段階からなる家具用駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
様々な理由(価格、必要なスペース、所要電力を下げるため)から、可能な限り小さく、かつ、トルク制御のために複雑な電子制御システムが無くても好都合に管理することができる電気モータが使用されることが望ましい。
【0003】
先行技術文献1は、可変の変速部比を有する家具用駆動装置を開示しており、これはエルボーレバーを配置することによって達成される。
【0004】
先行技術文献2は、2つの相互にかみ合うギアを備える偏心変速部の形態において一段階の動力伝達でアクチュエータを駆動するための駆動装置を記載している。その明細書において、動力伝達のために一の位置でのみ最大駆動出力トルクが必要とされる場合が多くあり、この必要性は例えば閉動作を実行する動力伝達に関して生じることが記載されている。
【0005】
特許文献2の明細書によると、電動モータと一定の変速部比を有する変速部による駆動は、一般的に高い変速部比を必要とする電動モータによって最大トルクが出るように変速部比が非常に高いという不利益を被る。更に、変速部比が高いことによって変速部のセット時間が長くもなる。
【0006】
一定の変速部比の変速部の代わりに、特許文献2は二段階の動力伝達からなり、第1段階の動力伝達はシャフト変速部(ハーモニックドライブ変速部)の形態であり、第2段階の動力伝達は偏心変速部の形態である。
【0007】
この明細書は、有利な変速部比の構成の具体的な例を教示していない。特に、トルクとセット時間との間の相互作用に注意が向けられている。
【0008】
特許文献2は、トルクとセット時間との間の比率が固定されており、その比率が重要ではない役割をなしているため、あまり重要ではない。
【0009】
特許文献3は2つの互いにかみ合うギヤを有する偏心変速部を備える車両用フラップのためのアクチュエータを開示している。その明細書において、自動車用フラップに関し、閉動作中にフラップに掛ける力はシールによって生じる反発力に打ち勝つように高トルクで掛ける必要があることが記載されている。これは、フラップが、閉動作の大部分では比較的低い変速部比で駆動され、このフラップが閉位置に近づいたとき(特にシールに対して押し付けられたとき)に高い変速部比で駆動されることによって解決される。
【0010】
開動作は特許文献3に記載されておらず、それは、自動車の窓はほとんどの場合手動で開けられるためである。
【0011】
従って、特許文献3は、2つの端位置の間で往復運動をするアクチュエータを有する一般的な家具用駆動装置に関するものではない。
【0012】
特許文献4は、更に離れた技術を示している。その明細書において、一つの電気モータによって駆動される2つのワイパーレバーを備えるワイパー装置が記載されている。ここでは、所定の範囲でワイパーの往復運動を減速または加速させる偏心変速部が提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】オーストリア国特許出願第A1542/2007号
【特許文献2】欧州特許出願公開公報第1194708号
【特許文献3】欧州特許出願公開公報第1898036号
【特許文献4】独国特許出願第19739851号
【0014】
本発明の目的は、公知の偏心変速部を用いることで、可動家具部材の全移動範囲において変速部比が一定である家具用駆動装置よりも有利な動作特性を有する家具用駆動装置を提供することである。
【0015】
本発明は請求項1の構成要素を備える家具用駆動装置によってこの目的を達成することができる。
【0016】
偏心変速部の2つのギアの一つがアクチュエータに固定して連結され、かつ、偏心変速部の2つのギアが互いにかみ合うことによって、アクチュエータの位置と、偏心変速部の2つのギアの位置が1:1に対応することが確実になる。特に、結果として、偏心変速部はアクチュエータの2つの端位置に対応する2つの端位置を有している。この方法により、変速部比は、偏心変速部が回転した場合、所定の回転角の範囲において2つの端位置から離れるに従って徐々に減少することを可能にする。
【0017】
よって、本発明の家具用駆動装置において、偏心変速部の端位置の領域において電気モータによって変速部を介してアクチュエータに与えられたトルクも、アクチュエータの端位置の間の領域よりもアクチュエータの端位置の領域のほうが大きい。駆動される家具部材に連結されたアクチュエータを備えて家具枠に設けられた家具用駆動装置において、アクチュエータの端位置は、駆動される家具部材の閉位置あるいは完全開位置に対応している。本発明では、端位置から始まった場合、電気モータは最初はゆっくり動き、特に高いレベルのトルクが引き出される。従って、両方の端位置(閉位置あるいは完全開位置)において、本発明よって最適トルクが引き出される。
【0018】
アクチュエータに連結または結合された偏心変速部の二つのギアの一方は、例えば、家具用駆動装置の搭載が容易にするため、あるいはその部品を交換するために、取り外すことができる。重要なことは、家具用駆動装置の動作中、上記連結または結合によってアクチュエータの端位置と偏心変速部の端位置との間の対応を確実にすることが可能となることである。
【0019】
本発明の更なる利点は添付の特許請求の範囲に記載される。
【0020】
本発明の家具用駆動装置を有する、可動に取り付けられた家具部材(例えば扉、ドア、あるいは引き出し)を有する家具を保護(権利化)することも必要である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明による、家具用駆動装置の斜視図である。
【図2a】図2aは、図1に示された家具用駆動装置の電気モータとアクチュエータとの間の動力伝達経路を示す前面斜視図である。
【図2b】図2bは、図1に示された家具用駆動装置の電気モータとアクチュエータとの間の動力伝達経路を示す背面斜視図である。
【図3】図3は図2aおよび2bに対応する図であるが、動力伝達経路に直接属しない部品は全て省略されている。
【図4a】図4aは、3つの異なる位置における本発明の家具用駆動装置に用いられる偏心変速部を示す図である。
【図4b】図4bは、3つの異なる位置における本発明の家具用駆動装置に用いられる偏心変速部を示す図である。
【図4c】図4cは、3つの異なる位置における本発明の家具用駆動装置に用いられる偏心変速部を示す図である。
【図5a】図5aは家具枠に搭載された状態の本発明の家具用駆動装置を示す図である。
【図5b】図5bは家具枠に搭載された状態の本発明の家具用駆動装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の更なる利点および詳細は図面および以下の詳細な説明から明らかになる。
【0023】
図1に示された実施形態において、家具用駆動装置1は2つの取り外し可能に連結されたユニット13,14を備えている。詳細には、ユニット14は家具の扉のためにそれ自体が完全に機能的なものである駆動装置であり、公知なものであるためここではより詳細に記載しない。ここでは、ユニット14に配置されたアクチュエータ4のみについて記載する。このアクチュエータ4によってレバー機構15を介して可動家具部材に力が加えられる(図5を参照)。
【0024】
電気モータ3と、変速部5と、アクチュエータ4に対して回転不能に連結されたシャフト12がユニット13(次の図でより詳細に記載されている)に配置されている。
【0025】
図2aおよび2bはユニット14が省かれた状態のユニット13を示している。ここでは、2つのユニット13と14との間の力を伝達するインターフェースはシャフト12であり、図ではその断面が示されており、変速部5を介して電気モータによって駆動可能であって、アクチュエータ4に連結された構成の凹部に係合する。シャフト12が回転すると、これに対応してアクチュエータ4が回転する。
【0026】
本発明の家具用駆動装置1のドライブトレイン(図2aを参照)は、変速部5の第1段階の動力伝達においてウォーム駆動を介して協働する電気モータ3で開始される(図2aの左側)。この場合、電気モータ3と変速部5との間にかみ合いクラッチ9が配置されており、このかみ合いクラッチ9は、適切な分離を行なうためのものであり、軸の心合わせ不良を補償するものである。この実施形態において、変速部5は、アクチュエータ4に与えられた過剰な力によって電気モータ3が損傷するのを回避する目的で過負荷安全装置を更に有する。フリーホイール結合16によって、電気モータ3によって妨害されることなしに、決められた範囲(例えば家具部材2の閉位置の僅か前)を超えて家具部材2が移動可能となる。これにより、家具部材のための好適な一連の動作を達成することが、純粋に機械的な部品によって可能となり、この目的のために制御システムを介して電気モータ3を制御することを要しないのである。
【0027】
図3に特に明確に示されている偏心変速部6の形態である一段階の動力伝達を構成するギア7,8を記載する。この図は2つの異なる半径r1,r2を示しており、半径r1はギア7におけるもので、および半径r2はギア8におけるものである。所望のトルク構成をなすために所定の態様で半径r1,r2(ギアの回転軸からギアのリムまでの測定値)がそれぞれ変化することが重要である。この場合2つのギア7,8の回転軸が互いに固定された間隔で離間しているため、電気モータ3に連結されたギア7の半径r1とアクチュエータ4に連結されたギア8の半径r2はその全体として2つの回転軸間の間隔と正確に一致するようにそれぞれ変化する必要がある。
【0028】
図4a〜4cは本発明において用いられる偏心変速部6を示しており、この実施形態において図1〜3に示された偏心変速部6とはいくらか異なるものである。しかしながら、この相違はギア7,8の構成のみに関するものであり、本発明の作動形態とは無関係である。
【0029】
図4aに示される偏心変速部6の端位は、家具部材2の最終閉位置(図4a)に対応しており、図4cに示される偏心変速部6の端位は、可動家具部材2の完全開位置(図4c)に対応している。図4bの位置は可動家具部材2の中間位置に対応している。所定の回転角の範囲内で図4aおよび4cの端位から開始するギア7,8の回転動作によって、偏心変速部および全変速部5の変速部比が減少することが重要である。図示された実施形態において、変速部比は2つの端位間の全回転角の範囲の約半分の位置において最小値となる(これは、駆動出力ギアとして作動するギア8の最小トルクと、ギア8の最大周辺速度に関しても同じである)。図示の実施形態において、2つの端位間の図示された回転角は約150oの可動家具部材2の開口角に対応している。これに対応して他の開口角と偏心変速部6の回転角も当然予測することができる。
【0030】
2つのギアの相関する位置に依って、動力伝達のための効果的なレバーの長さが異なり、所望のトルクが異なる。
【0031】
図5aおよび5bは、家具11と、家具枠の左側に搭載された本発明の家具用駆動装置1の前面図および背面図を示している。この場合、家具用駆動装置1のアクチュエータ4は、レバー機構15を介して駆動されるべき家具部材2に連結されている。図示された実施形態において、本発明の家具用駆動装置は家具枠の一側部にのみ設けられており、他方の側部には機械ユニット14のみが配置されている。家具枠の両側部に本発明の家具用駆動装置1およびユニット13を設けることも可能であることが理解されよう。
【0032】
本発明のこの家具用駆動装置1を作動させるにはタッチラッチ機構といった公知の手段によってなされる。この機構により、ユーザによる可動家具部材2の僅かな動きがセンサによって検知され(例えば押し込まれ、または引っ張られることによって)、その結果、作動命令が家具用駆動装置1に与えられる。これは家具用駆動装置1のために公知の制御ユニットによってなされ、家具用駆動装置1自体に一体化することができる。
【0033】
図示された好適な実施形態において、ギア7,8は非対称の構成をしており、家具部材の開位置に対応するギア7,8の端位置から始まるよりも家具部材の閉位置に対応するギア7,8の端位置から始まるほうが変速部比がより多く減少する。この理由は、好適な実施形態において、家具部材は扉であり、重力が働くことにより、更に自動引き込みの構成(automatic pull−in arrangement)であるため負荷が掛けられる蓄力手段がないことにより、最終開位置からの動作のほうが容易である。
【0034】
図中の全ての要素は一定の縮尺であり、正しい角度で示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動である家具部材を駆動するための家具用駆動装置であって、
電気モータと、
前記家具部材に力を与えて駆動するために2つの端位置の間で往復運動をするアクチュエータと、
前記電気モータと前記アクチュエータとの間で連結された変速部と、
を備えており、前記変速部は、2つの相互にかみ合うギアを備える偏心変速部の形態において動力伝達が少なくとも一段階からなるものであり、
前記偏心変速部(6)が前記アクチュエータ(4)の2つの端位置に対応する2つの端位置を有し、かつ所定の回転角の範囲において前記ギア(7,8)が前記端位置から回転するときに変速部比が減少するように、前記2つのギア(7,8)の一方が前記アクチュエータ(4)に固定して連結あるいは結合されており、他方が前記電気モータに結合されていることを特徴とする家具用駆動装置。
【請求項2】
前記偏心変速部(6)の前記2つのギア(7,8)の回転軸は互いに固定された間隔で離間して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の家具用駆動装置。
【請求項3】
前記電気モータ(3)に結合された前記ギア(7)の半径(r1)は、所定の回転角の範囲において前記端位置から徐々に増大し、これに対応して前記アクチュエータ(4)に連結あるいは結合された前記ギア(8)の半径(r2)が減少することを特徴とする請求項2に記載の家具用駆動装置。
【請求項4】
前記変速部比は、前記2つの端位置の間の全回転角の範囲の約半分の位置において最小値となることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の家具用駆動装置。
【請求項5】
フリーホイール結合(9)および/または過負荷安全装置(10)が、前記電気モータ(3)に結合された前記ギア(7)と前記電気モータ(3)との間に連結されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の家具用駆動装置。
【請求項6】
前記アクチュエータ(4)は、前記ギア(8)に対して回転不能に連結されたシャフト(12)を介して前記ギア(8)によって回転可能であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の家具用駆動装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の家具用駆動装置を備えて可動に取り付けられた家具部材を備える家具。
【請求項8】
前記家具部材(2)は扉、ドア、あるいは引き出しの形態であることを特徴とする請求項7に記載の家具。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5a】
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【図5b】
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【公表番号】特表2011−519404(P2011−519404A)
【公表日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−500007(P2011−500007)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【国際出願番号】PCT/AT2009/000100
【国際公開番号】WO2009/114883
【国際公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ハーモニックドライブ
【出願人】(597140501)ジュリウス ブルム ゲゼルシャフト エム.ビー.エイチ. (122)
【Fターム(参考)】