可動式光ファイバー収納部の保持構造

【課題】ＣＡＴＶ伝送路用光機器内の信号伝送用光ファイバー芯線の余長部分を収納する光ファイバー収納部において機器の周波数特性調整の妨げることのない位置に光ファイバー収納ケースを移動して確実に保持する構造を提供することで筐体の小型化を目的とする。
【解決手段】回転動作をするための回転腕部を有する光ファイバー収納ケースと光ファイバー収納ケースの回転動作を支持する回転支持部からなる可動式光ファイバー収納部において、光ファイバー収納ケースの回転腕部に設けた光ファイバー収納ケースを固定するための保持用突起と保持用突起を保持する保持部を配置し、保持を解除することにより初期の保持位置に戻すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、映像、音声及びデータを伝送するＣＡＴＶシステムの伝送路において、光信号を光ファイバーにより伝送する光増幅器等の光ファイバー芯線の余長部分を収納する収納部の保持構造に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
近年、ＣＡＴＶシステムにおいては、大容量化、長距離伝送化、伝送品質の向上のため伝送路に光信号を用いるシステムが多くなってきた。
【０００３】
その伝送路には光ファイバーケーブルが使用され、光信号を伝送するために光増幅器、光分配器、光分岐器などの機器が使用されている。
【０００４】
これらの機器には、光ケーブルの光ファイバー芯線に、光コネクターからの光ファイバー芯線を融着し、機器に具備している光コネクターを介して信号を伝送している。
【０００５】
光ファイバー芯線は、細い特殊なガラスまたは、細いプラスチックよりできているため強度的に弱く折れやすい。そのため光ファイバー芯線の融着接続には、折れた場合にその部分をカットして繋ぎ直せるように長さに余裕を持たせて接続しているので、この余長部分を光機器内に収納するだけの空間が要求される。
【０００６】
また、光ファイバー芯線は同じ細い特殊なガラスまたは、細いプラスチックよりできているという理由から、所定の曲げ半径より小さい半径で曲げると信号の品質が低下する等のため、取り扱いには細心の注意が要求される。
【０００７】
図１、図２、図３、図４に、従来の光ファイバー収納部の構造例を示す。
【０００８】
１は光ファイバー収納ケース、２は回転腕部、３は回転腕部を支持する回転支持部、６は光機器の筐体、７は周波数特性等の調整部、８は光ファイバー、９は第２の保持位置、１０は摩擦力付加部である。
【０００９】
図１は、固定式光ファイバー収納部の一例であり、図２、図３は、光ファイバー収納部を第１の保持位置から固定機構を解除して光機器の筐体から一旦分離し、第２の保持位置に移動させ再度固定するという可動式光ファイバー収納部の一例であり、図４は、光ファイバー収納部を第１の保持位置から回転移動させ、回転支持部３の摩擦力を利用して光ファイバー収納部を周波数特性等の調整部から離れた位置で保持するという可動式光ファイバー収納部の別の一例である。
【特許文献１】特開２００２−２４３９５０号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【００１０】
しかしながら、図１の固定式光ファイバー収納部の構造では、周波数特性等の調整部は光ファイバー収納部を避けた場所に配置する必要があり、すなわち双方を足し合わせた広さの空間を必要とし、筐体の小型化の妨げになるという問題点を有していた。
【００１１】
また、図２、図３に示される従来の可動式光ファイバー収納部の構造では、光ファイバー収納部を第１の保持位置から第２の保持位置に移動する際、一旦光機器の筐体から光ファイバー収納部を分離するため、作業者が誤って手を離せば光ファイバー収納部が落下、光ファイバー芯線を傷めてしまうという問題点を有していた。
【００１２】
また、図４に示される従来の可動式光ファイバー収納部の構造では、回転支持部の摩擦力の低下やばらつきで回転支持部３が回転腕部２を支持できない場合があり、光ファイバー収納ケースが下がってきて作業者は光ファイバー収納部を片手で保持せざるを得ず、架設の工事現場における不安定な状況下での工事作業の妨げになるという問題点を有していた。
【００１３】
本発明は上記従来の問題点を解決するものであり、光ファイバーを傷めることなく光ファイバー収納ケースを移動でき、かつ、第２の保持位置において光ファイバー収納ケースを確実に保持し、また容易な操作で保持を解除して第１の保持位置に戻す構造を提供することで筐体の小型化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【００１４】
前記課題を解決するために本発明の光機器は、光ファイバー芯線の余長部分を巻きつけて収納する光ファイバー収納部と、前記光ファイバー収納部を光機器の筐体に回動可能に取付ける回転支持部と、前記光ファイバー収納部の回動支点側に備えられた保持用突起と、前記保持用突起に係止して前記光ファイバー収納部を前記光機器の筐体外の第２の保持位置に保持する保持部を備えた光機器であって、前記保持部または前記保持用突起を撓ませることにより、また、前記保持用突起と前記保持部を係止することにより、前記光機器の筐体内に前記光ファイバー収納部が格納される第１の保持位置と、前記第２の保持位置の間で前記光ファイバー収納部を回動可能に構成したことを特徴とする。
【００１５】
また、前記光ファイバー収納部と、前記光ファイバー収納部を光機器の筐体に回動かつ固定可能に取付ける回転支持部を備えた光機器であって、前記光ファイバー収納部の回動支点に備えた長円形状の回転軸と前記回転支持部が備える長円形状と円形状の複合形状をしたガイド穴が嵌合されるとともに、前記回転軸が前記ガイド穴の円形部分で回転することで前記第１の保持位置と前記第２の保持位置の間で前記光ファイバー収納部が回動し、また、前記回転軸が前記ガイド穴の円形部分から長円形部分にスライドすることで前記光ファイバー収納部が前記第２の保持位置で固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【００１６】
この構成によって、光ファイバーを傷めることなく光ファイバー収納ケースを移動でき、かつ、第２の保持位置において光ファイバー収納ケースを確実に保持し、また容易な操作で保持を解除して第１の保持位置に戻す構造を提供することで筐体の小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１７】
本発明の可動式光ファイバー収納部は、回転支持部を支点として光ファイバー収納ケースを回転させ、可動部側に設けた保持用突起を固定部側に設けた保持部に当接させることにより保持することを特徴としたものであり、筐体の限られた空間を光ファイバー収納部と周波数特性等調整部とで共有することができるという作用を有する。
【００１８】
（実施の形態１）
本発明の実施の形態を図５から図７を用いて説明する。
【００１９】
図５は、本発明の実施の形態１における可動式光ファイバー収納部の保持構造の正面図である。図６は、本発明の実施の形態１における可動式光ファイバー収納部の側面図である。
【００２０】
図５において１は光ファイバー収納ケース、２は回転腕部、３は回転腕部を支持する回転支持部、４は保持用突起、５は保持部、６は光機器の筐体、７は周波数特性等の調整部、８は光ファイバー、９は第２の保持位置にある光ファイバー収納ケース１である。
【００２１】
以下その動作について説明する。
【００２２】
光ファイバー収納ケース１に回転腕部２と保持用突起４を設け回転支持部３を中心に回転させ可動側の保持用突起４または、固定側の保持部５を撓ませることにより、保持用突起４を保持部５の上に載せて光ファイバー収納ケースを第２の保持位置に置くことができる。
【００２３】
同様に、可動側の保持用突起４または、固定側の保持部５を撓ませることにより保持状態を解除して光ファイバー収納ケースを第１の保持位置に戻すことができる。
【００２４】
保持部５または保持用突起４の材質としては合成樹脂やばねなど、撓ませることが可能な素材であれば何でもよい。また、本実施の形態１では保持部５または保持用突起４のいずれかが撓む場合を例示したが、両方が撓むものであってもよい。
【００２５】
本発明によれば筐体の小型化を実現することができ、また、光ファイバー収納作業が容易に行うことができ、周波数特性の調整時に光ファイバー芯線の保護を実現することができる。
【００２６】
（実施の形態２）
本発明の別の実施形態を図８から図１５を用いて説明する。
【００２７】
図８は、本発明の第２の実施の形態における回転腕部を支持する回転支持部の断面図である。図９は、本発明の第２の実施の形態における光ファイバー収納ケース側面図である。図１０は、本発明の実施の形態２における光ファイバー収納ケースが第１の保持位置にある時の側面図である。図１１は、本発明の実施の形態２における光ファイバー収納ケースが第１の保持位置にあるときの回転軸部の詳細図である。図１２は、本発明の実施の形態２における光ファイバー収納ケースが回転停止部に当接したときの側面図である。図１３は、本発明の実施の形態２における光ファイバー収納ケースが回転停止部に当接したときの回転軸部の詳細図である。図１４は、本発明の実施の形態２における光ファイバー収納ケースが第２の保持位置にある時の側面図である。図１５は、本発明の実施の形態２における光ファイバー収納ケースが第２の保持部にあるときの回転軸部の詳細図である。
【００２８】
図８において３は回転腕部を支持する回転支持部、５は保持部、１１は回転軸のガイド穴、１４は第２の保持部である。
【００２９】
図９において１は光ファイバー収納ケース、２は回転腕部、４は保持用突起、１２は第２の保持用突起、１３は長円形状の回転軸である。
【００３０】
図１０において１は光ファイバー収納ケース、３は回転腕部を支持する回転支持部、６は光機器の筐体、７は、周波数特性等の調整部である。図１１において１１は回転軸のガイド穴、１５は回転停止部である。図１３において１４は、第２の保持部である。図１５において４は保持用突起、５は保持部である。
【００３１】
以下その動作について説明する。
【００３２】
図９に示す通り、光ファイバー収納ケース１に回転腕部２と保持用突起４と第２の保持用突起１２を設け、図８に示す回転支持部３を中心に回転させる。光ファイバー収納ケース１が回転軸１３を中心に回転し、図１２に示すように、回転腕部２が固定側の回転停止部１５に当接して回転動作が停止する。図１４、１５に示すように、回転動作が停止した位置で長円状の回転軸１３が、回転軸のガイド穴１１に沿って第２の保持位置にスライドする。ガイド穴１１は、勘合した回転軸１３が回転およびスライド、固定可能なように円と長円の複合形状となっている。
【００３３】
また、本実施の形態２では、図１５に示すように、長円状の回転軸１３がガイド穴１１をスライドする方向と同じ角度で保持用突起４と保持部５、第２の保持部１４と第２の保持用突起１２を設け、回転軸のガイド穴長円形部分のスライドに伴ってこれらが互いに係止する構造とすることにより、光ファイバー収納ケース１が保持される際に回転軸１３に加わる力を分散させて回転軸１３の耐久を高めることができる。
【００３４】
なお、本実施の形態２では、回転軸１３の耐久を高めるため、保持用突起４と保持部５、第２の保持部１４と第２の保持用突起１２を設ける構造としたが、回転軸１３を耐久性の高い金属等で構成することで、これらを排除することも可能である。
【００３５】
さらに、本実施の形態２では、光ファイバー収納ケース１側に回転軸１３を設け、光機器の筐体６の回転支持部３にガイド穴１１を設ける構成としたが、光ファイバー収納ケース１側にガイド穴１１を設け、光機器の筐体６の回転支持部３に回転軸１３を設ける構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【００３６】
以上のように本発明は、ＣＡＴＶ伝送路用光増幅器内の信号伝送用光ファイバー芯線の余長部分を収納する光ファイバー収納ケースにおいて、光ファイバーケース側に保持用突起を、固定側に保持部を設け、光ファイバー収納ケースが回転移動し、第２の保持位置で保持されることにより、筐体の限られた空間で周波数特性などの調整作業をすることができるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【００３７】
【図１】従来の固定式光ファイバー収納部の内部正面図
【図２】従来の可動式光ファイバー収納部の内部正面図
【図３】従来の可動式光ファイバー収納部の内部側面図
【図４】従来の可動式光ファイバー収納部の内部正面図
【図５】本発明の実施の形態１における光機器の正面図
【図６】本発明の実施の形態１における光機器の側面図
【図７】本発明の実施の形態１における光機器の保持構造詳細図
【図８】本発明の実施の形態２における光機器の回転支持部断面図
【図９】本発明の実施の形態２における光機器の光ファイバー収納ケース側面図
【図１０】本発明の実施の形態２における光機器の光ファイバー収納ケースが第１の保持部にあるときの側面図
【図１１】本発明の実施の形態２における光機器の光ファイバー収納ケースが第１の保持部にあるときの回転軸部詳細図
【図１２】本発明の実施の形態２における光機器の光ファイバー収納ケースが回転停止部に当接したときの側面図
【図１３】本発明の実施の形態２における光機器の光ファイバー収納ケースが回転停止部に当接したときの回転軸部詳細図
【図１４】本発明の実施の形態２における光機器の光ファイバー収納ケースが第２の保持部にあるときの側面図
【図１５】本発明の実施の形態２における光機器の光ファイバー収納ケースが第２の保持部にあるときの回転軸部詳細図
【符号の説明】
【００３８】
１光ファイバー収納ケース
２回転腕部
３回転腕部を支持する回転支持部
４保持用突起
５保持部
６光機器の筐体
７周波数特性等の調整部
８光ファイバー
９第２の保持位置
１０摩擦力付加部
１１回転軸のガイド穴
１２第２の保持用突起
１３長円状の回転軸
１４第２の保持部
１５回転停止部

【特許請求の範囲】
【請求項１】
光ファイバー芯線の余長部分を巻きつけて収納する光ファイバー収納部と、前記光ファイバー収納部を光機器の筐体に回動可能に取付ける回転支持部と、前記光ファイバー収納部の回動支点側に備えられた保持用突起と、前記保持用突起に係止して前記光ファイバー収納部を前記光機器の筐体外の第２の保持位置に保持する保持部を備えた光機器であって、
前記保持部または前記保持用突起を撓ませることにより、また、前記保持用突起と前記保持部を係止することにより、前記光機器の筐体内に前記光ファイバー収納部が格納される第１の保持位置と、前記第２の保持位置の間で前記光ファイバー収納部を回動可能に構成したことを特徴とする光機器。
【請求項２】
前記光ファイバー収納部と、前記光ファイバー収納部を光機器の筐体に回動かつ固定可能に取付ける回転支持部を備えた光機器であって、
前記光ファイバー収納部の回動支点に備えた長円形状の回転軸と前記回転支持部が備える長円形状と円形状の複合形状をしたガイド穴が嵌合されるとともに、前記回転軸が前記ガイド穴の円形部分で回転することで前記第１の保持位置と前記第２の保持位置の間で前記光ファイバー収納部が回動し、また、前記回転軸が前記ガイド穴の円形部分から長円形部分にスライドすることで前記光ファイバー収納部が前記第２の保持位置で固定されることを特徴とする光機器。

【図１】