可動接点体及びこれを用いたスイッチ

【課題】主に各種電子機器の操作に使用される可動接点体及びこれを用いたスイッチに関し、安価で多様な照光が可能なものを提供することを目的とする。
【解決手段】下面に可動接点２が貼付されたベースシート１１の上方に配置された基材１２上面に、複数の開口部１３Ａが設けられた反射層１３を形成することによって、発光素子６の光を反射層１３と基材１２やベースシート１１の間で反射させ、少ない発光素子６で複数の表示部７Ｂを照光することができるため、使用部品数が少なくなると共に、組立ても容易に行え、安価で多様な照光が可能な可動接点体１６、及びこれを用いたスイッチを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、主に各種電子機器の操作に使用される可動接点体及びこれを用いたスイッチに関するものである。
【背景技術】
【０００２】
近年、各種電子機器、特に携帯電話等の携帯端末機器においては、周囲が暗い場合でも、押釦や表示シート等の識別や操作が容易に行えるように、発光ダイオードやＥＬ素子等を発光させて操作部の照光を行うものが増えており、これらの機器に用いられる可動接点体やスイッチにも、安価で多様な照光を行えるものが求められている。
【０００３】
このような従来の可動接点体やスイッチについて、図５を用いて説明する。
【０００４】
なお、この図面は構成を判り易くするために、部分的に寸法を拡大して表している。
【０００５】
図５は従来のスイッチの断面図であり、同図において、１はフィルム状のベースシート、２は略ドーム状で導電金属薄板製の可動接点で、複数の可動接点２が接着剤（図示せず）によってベースシート１下面に貼付されて、可動接点体３が構成されている。
【０００６】
そして、４は上下面に複数の配線パターン（図示せず）が形成された配線基板で、上面には略円形状の中央固定接点５Ａと、これを囲む略馬蹄状または略リング状の外側固定接点５Ｂから形成された、複数の固定接点５が設けられている。
【０００７】
また、この配線基板４上面に可動接点体３が、各々の可動接点２の外周が外側固定接点５Ｂ上に載置され、可動接点２の下面中央が中央固定接点５Ａと所定の間隙を空けて、対向するように貼付されている。
【０００８】
さらに、６は発光ダイオード等の発光素子で、複数の発光素子６が固定接点５の間の配線基板４上面に実装され、上面に発光面を向けて配置されている。
【０００９】
そして、７は光透過性でフィルム状の表示シートで、下面に印刷等によって形成された遮光部７Ａの所定箇所が、文字や記号等の形状にくり抜かれて複数の表示部７Ｂが形成されている。
【００１０】
また、この表示シート７が上下面または片面に接着層（図示せず）が形成されたスペーサ８によって、可動接点体３上面に貼付されて、スイッチが構成されている。
【００１１】
そして、このように構成されたスイッチが、携帯電話等の電子機器の操作面に装着されると共に、複数の中央固定接点５Ａや外側固定接点５Ｂ、複数の発光素子６が配線パターン等を介して、機器の電子回路（図示せず）に接続される。
【００１２】
以上の構成において、表示シート７の所定の表示部７Ｂを下方へ押圧操作すると、表示シート７やこの下方のベースシート１が撓んで、可動接点２の略ドーム状の中央部が押圧され、所定の押圧力が加わると、可動接点２がクリック感を伴って下方へ弾性反転し、可動接点２の下面中央が中央固定接点５Ａに接触することによって、中央固定接点５Ａと外側固定接点５Ｂが、可動接点２を介して電気的に接続された状態となる。
【００１３】
また、表示シート７への押圧力を解除すると、弾性復帰力によって可動接点２が上方へ弾性反転し、可動接点２の下面中央が中央固定接点５Ａから離れて、中央固定接点５Ａと外側固定接点５Ｂが電気的に切断された状態となる。
【００１４】
そして、このような固定接点５の電気的接離に応じて、機器の様々な機能の切換えが行われると共に、機器の電子回路から発光素子６に電源が供給されると、複数の発光素子６が発光して、この光が上方の表示シート７の表示部７Ｂを下方から照光し、複数の表示部７Ｂが照光されることによって、周囲が暗い場合でも、表示部７Ｂの文字や記号等の表示が識別でき、操作を容易に行うことが可能なようになっている。
【００１５】
つまり、表示シート７を押圧操作することによってベースシート１上面を押圧し、可動接点２を弾性反転させて固定接点５の電気的接離を行うと共に、発光素子６を発光させ、この光によって、表示シート７の複数の表示部７Ｂを照光するように構成されているものであった。
【００１６】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献１が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【００１７】
【特許文献１】特開２００９−９４０３６号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【００１８】
しかしながら、上記従来の可動接点体３やスイッチにおいては、固定接点５の間に設けられた複数の発光素子６を発光させ、この光によって、表示シート７の複数の表示部７Ｂの照光を行っているため、多くの発光素子６が必要となり、使用部品数が増え高価なものになると共に、組立てにも時間がかかってしまうという課題があった。
【００１９】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、発光素子を少なくし、安価で多様な照光が可能な可動接点体及びこれを用いたスイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【００２０】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【００２１】
本発明の請求項１に記載の発明は、下面に可動接点が貼付されたベースシートの上方に配置された基材上面に、複数の開口部が設けられた反射層を形成して可動接点体を構成したものであり、発光素子の光を反射層と基材やベースシートの間で反射させ、少ない発光素子で複数の可動接点体の上方を照光することができるため、使用部品数が少なくなると共に、組立ても容易に行え、安価で多様な照光が可能な可動接点体を得ることができるという作用を有する。
【００２２】
請求項２に記載の発明は、請求項１記載の可動接点体を、上面に可動接点と対向する固定接点が形成された配線基板の上面に貼付してスイッチを構成したものであり、安価で多様な照光が可能なスイッチを実現することができるという作用を有する。
【発明の効果】
【００２３】
以上のように本発明によれば、安価で多様な照光が可能な可動接点体、及びこれを用いたスイッチを実現することができるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【００２４】
【図１】本発明の一実施の形態による可動接点体の断面図
【図２】同平面図
【図３】同スイッチの断面図
【図４】同部分断面図
【図５】従来のスイッチの断面図
【発明を実施するための形態】
【００２５】
以下、本発明の実施の形態について、図１〜図４を用いて説明する。
【００２６】
なお、これらの図面は構成を判り易くするために、部分的に寸法を拡大して表している。
【００２７】
また、背景技術の項で説明した構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を簡略化する。
【００２８】
（実施の形態）
図１は本発明の一実施の形態による可動接点体の断面図、図２は同平面図であり、同図において、１１はフィルム状でポリエチレンテレフタレート等のベースシート、２は略ドーム状で銅合金や鋼等の導電金属薄板製の可動接点で、複数の可動接点２が接着剤（図示せず）によってベースシート１１下面に貼付されると共に、この複数の可動接点２の間のベースシート１１の所定箇所には、略矩形状の貫通孔１１Ａが設けられている。
【００２９】
また、１２はフィルム状でポリウレタンやシリコーン、スチレン等の可撓性を有する光透過性の基材で、ベースシート１１上方に配置され、基材１２の上面には印刷等によって、ポリエステルやエポキシ等の絶縁樹脂内にアルミニウムや銀等の粉末が分散された、厚さ２〜２０μｍ前後の反射層１３が形成されると共に、この反射層１３には基材１２上面が露出した直径０．１〜０．５ｍｍ前後の、孔状の複数の開口部１３Ａが所定間隔で設けられている。
【００３０】
そして、この複数の開口部１３Ａは、ベースシート１１の貫通孔１１Ａの真上付近は数が少なく疎らで、貫通孔１１Ａから離れた可動接点２上方ほど数が多く密に、つまり、貫通孔１１Ａから離れた可動接点２上方近傍ほど、基材１２上面が露出する面積が大きくなるように形成されている。
【００３１】
さらに、この反射層１３上面には同じく印刷等によって、フェノキシやエポキシ等の光透過性の絶縁樹脂内に、粒径０．１〜５μｍ前後でホルムアルデヒドやメラミン、アクリル等の樹脂粒子が分散された、厚さ１０〜３０μｍ前後の薄い白色や乳白色等の拡散層１４が重ねて形成されている。
【００３２】
そして、１５はポリエチレンテレフタレート等のフィルム状のセパレータで、このセパレータ１５がベースシート１１下面全面を覆うように貼付され、保管・搬送時に可動接点２下面に塵埃等が付着しないようにして、可動接点体１６が構成されている。
【００３３】
また、図３はこのような可動接点体１６を用いたスイッチの断面図であり、同図において、４はポリエチレンテレフタレートやポリカーボネート等のフィルム状、または紙フェノールやガラス入りエポキシ等の板状の配線基板で、上下面に銅等によって複数の配線パターン（図示せず）が形成されると共に、上面には銅やカーボン等によって、略円形状の中央固定接点５Ａと、これを囲む略馬蹄状または略リング状の外側固定接点５Ｂから形成された、複数の固定接点５が設けられている。
【００３４】
そして、この配線基板４上面にセパレータ１５を剥離した可動接点体１６が、各々の可動接点２の外周が外側固定接点５Ｂ上に載置され、可動接点２の下面中央が中央固定接点５Ａと所定の間隙を空けて、対向するように貼付されている。
【００３５】
また、６は発光ダイオード等の発光素子で、可動接点２の間のベースシート１１の貫通孔１１Ａを挿通して配線基板４上面に実装され、上面に発光面を向けて配置されている。
【００３６】
そして、７は光透過性でフィルム状の表示シートで、下面に印刷等によって形成された遮光部７Ａの所定箇所が、文字や記号等の形状にくり抜かれて複数の表示部７Ｂが形成されている。
【００３７】
さらに、１７はポリエステルやエポキシ等の絶縁樹脂製のスペーサで、このスペーサ１７の上下面または片面に塗布形成されたアクリルやゴム等の接着層（図示せず）によって、表示シート７が可動接点体１６上面に貼付されると共に、表示シート７の各表示部７Ｂが複数の可動接点２上方に配置されて、スイッチが構成されている。
【００３８】
そして、このように構成されたスイッチが、携帯電話等の電子機器の操作面に装着されると共に、複数の中央固定接点５Ａや外側固定接点５Ｂ、複数の発光素子６が配線パターン等を介して、機器の電子回路（図示せず）に接続される。
【００３９】
以上の構成において、表示シート７の所定の表示部７Ｂを下方へ押圧操作すると、基材１２やベースシート１１が撓んで、この下方の可動接点２の略ドーム状の中央部が押圧され、所定の押圧力が加わると、可動接点２がクリック感を伴って下方へ弾性反転し、可動接点２の下面中央が中央固定接点５Ａに接触することによって、中央固定接点５Ａと外側固定接点５Ｂが、可動接点２を介して電気的に接続された状態となる。
【００４０】
また、表示シート７への押圧力を解除すると、弾性復帰力によって可動接点２が上方へ弾性反転し、可動接点２の下面中央が中央固定接点５Ａから離れて、中央固定接点５Ａと外側固定接点５Ｂが電気的に切断された状態となる。
【００４１】
そして、このような固定接点５の電気的接離に応じて、機器の様々な機能の切換えが行われると共に、機器の電子回路から発光素子６に電源が供給されると、発光素子６が発光して、図４の部分断面図に示すように、この光が基材１２上面の反射層１３下面やベースシート１１上面、基材１２下面の間で反射しながら、右方や左方へ進む。
【００４２】
さらに、この反射光が開口部１３Ａから拡散層１４内に入射し、拡散層１４で拡散されて、これらの上方の表示シート７の表示部７Ｂを下方から照光し、複数の表示部７Ｂが照光されることによって、周囲が暗い場合でも、表示部７Ｂの文字や記号等の表示が識別でき、操作を容易に行うことが可能となる。
【００４３】
なお、上記のように反射しながら進むほど、すなわち発光素子６から離れるほど、光の明るさは低下するが、発光素子６から離れた箇所の可動接点２上方の基材１２下面には、多くの数の開口部１３Ａが設けられ、この多くの開口部１３Ａから拡散層１４内に入射し、拡散された光によって照光が行われるため、発光素子６から多少離れた箇所の表示部７Ｂも、発光素子６近傍の表示部７Ｂと殆んど変わらない明るさで照光されるようになっている。
【００４４】
つまり、表示シート７を押圧操作することによって、基材１２やベースシート１１を介して可動接点２上面を押圧し、可動接点２を弾性反転させて固定接点５の電気的接離を行うと共に、発光素子６を発光させ、この光によって、表示シート７の複数の表示部７Ｂを照光するように構成されている。
【００４５】
そして、この時、基材１２上面には複数の開口部１３Ａが設けられた反射層１３が形成され、発光素子６の光が反射層１３下面やベースシート１１上面、基材１２下面の間で反射しながら、右方や左方へ進んで複数の表示部７Ｂの照光が行われるため、一つの発光素子６で、複数の表示部７Ｂの照光を行うことが可能なようになっている。
【００４６】
すなわち、発光素子６の光を反射層１３によって、ベースシート１１上面や基材１２下面との間で反射させると共に、この反射光を複数の開口部１３Ａから拡散層１４内に入射させ、拡散層１４で拡散して上方の表示部７Ｂを照光することで、一つの発光素子６で複数の表示部７Ｂの照光が行えるため、使用部品数が少なくなると共に、組立ても容易となり、安価で多様な照光が可能なように構成されている。
【００４７】
さらに、開口部１３Ａの数を発光素子６の近傍、つまりベースシート１１の貫通孔１１Ａの真上付近は少なく、発光素子６から離れた可動接点２上方ほど多く設け、発光素子６から離れるほど基材１２が露出する面積を大きくすることによって、発光素子６からやや離れた表示部７Ｂも、発光素子６近傍の表示部７Ｂと殆んど変わらない明るさで照光が行えるようになっている。
【００４８】
そして、このように複数の開口部１３Ａが形成された反射層１３を、基材１２の上面に設けることによって、例えば上記とは逆に、反射層を基材１２の下面に設けた場合には、この反射層下面とベースシート１１上面との間で、発光素子６の光を反射させる必要があるため、この間にはある程度の空隙が必要となり、全体の高さが大きなものとなってしまう。
【００４９】
これに対し、上記のように反射層１３を基材１２の上面に設けることで、このような空隙が不要となり、基材１２下面とベースシート１１上面とを殆んど接した状態に形成できるため、全体の低背化を容易に図ることが可能となる。
【００５０】
なお、拡散層１４をなくし、基材１２上面には反射層１３のみを形成した構成としても、本発明の実施は可能であるが、上記のように拡散層１４を設けることによって、複数の開口部１３Ａからの光がこの拡散層１４で拡散されるため、上方の表示シート７の表示部７Ｂをばらつきのない、均等な明るさで照光することができる。
【００５１】
また、拡散層１４内に分散する樹脂粒子には、上述したように粒径０．１〜５μｍ前後の大きさのものを用いることが可能であるが、粒径が小さすぎると光の拡散が不充分となり、大きすぎると光が遮られ発光色が暗くなるため、樹脂粒子には可視光の波長０．４〜０．８μｍよりもやや大きな、粒径０．４〜１．５μｍのものを用いることが好ましい。
【００５２】
さらに、反射層１３をポリエステルやエポキシ等の絶縁樹脂内に酸化チタン等の顔料粉末を分散し、白色や乳白色等の明色に着色したもので形成しても本発明の実施は可能であるが、上述したように、絶縁樹脂内にアルミニウムや銀等の粉末を分散して形成することによって、反射層１３をより反射率の高いものとすることができる。
【００５３】
このように本実施の形態によれば、下面に可動接点２が貼付されたベースシート１１の上方に配置された基材１２上面に、複数の開口部１３Ａが設けられた反射層１３を形成することによって、発光素子６の光を反射層１３と基材１２やベースシート１１の間で反射させ、少ない発光素子６で複数の表示部７Ｂを照光することができるため、使用部品数が少なくなると共に、組立ても容易に行え、安価で多様な照光が可能な可動接点体１６、及びこれを用いたスイッチを得ることができるものである。
【００５４】
なお、以上の説明では、基材１２上面に孔状の複数の開口部１３Ａが設けられた反射層１３を形成した構成について説明したが、反射層１３を複数のドット状に形成し、これらの間の基材１２上面を露出させて複数の開口部１３Ａを設けた構成としても、本発明の実施は可能である。
【産業上の利用可能性】
【００５５】
本発明による可動接点体及びこれを用いたスイッチは、安価で多様な照光が可能なものが得られ、主に各種電子機器の操作用として有用である。
【符号の説明】
【００５６】
２可動接点
４配線基板
５固定接点
５Ａ中央固定接点
５Ｂ外側固定接点
６発光素子
７表示シート
７Ａ遮光部
７Ｂ表示部
１１ベースシート
１１Ａ貫通孔
１２基材
１３反射層
１３Ａ開口部
１４拡散層
１５セパレータ
１６可動接点体
１７スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項１】
フィルム状のベースシートと、この下面に貼付された略ドーム状の複数の可動接点と、上記ベースシート上方に配置されたフィルム状で光透過性の基材からなり、上記基材上面に複数の開口部が設けられた反射層を形成した可動接点体。
【請求項２】
請求項１記載の可動接点体を、上面に可動接点と対向する固定接点が形成された配線基板の上面に貼付したスイッチ。

【図１】