説明

可動検出モジュールを用いる蛍光検出システム及び方法

【課題】サーマルサイクラと共に使用するための可動励起/検出モジュールを有する蛍光検出システムを提供する。
【解決手段】サーマルサイクラの複数のウエルに配置されたサンプルを分析する蛍光検出装置及び使用方法。一実施形態では、装置は、サーマルサイクラに取付可能な支持構造体と支持構造体上に移動可能に取付け可能な検出モジュールとを含む。検出モジュールは、共に検出モジュール内に配置された励起光発生器と放出光検出器を各々有する1以上のチャンネルを含む。支持構造体がサーマルサイクラに取り付けられて検出モジュールが支持構造体に取付けられた時、検出器は、複数のウエルのうちの異なるウエルと光学連通状態に配置されるように移動可能である。検出モジュールは、容易な交換を可能にするために支持構造体から取外し可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略的には、蛍光検出システム、詳細には、サーマルサイクラと共に使用するための可動励起/検出モジュールを有する蛍光検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルサイクラは、当業技術で公知である。このような装置は、研究、医療、及び産業分野において、関連の様々な分子、例えば、核酸配列を作成して検出するための様々な処理で使用される。従来のサーマルサイクラを使用して実行することができる処理には、これに限定されるものではないが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のような手順を使用する核酸の増幅が含まれる。このような増幅処理は、核酸サンプル中に存在するターゲット配列の量を増加させるために使用される。
【0003】
サーマルサイクラによって処理されたサンプル中のターゲット分子の存在及び/又は濃度を検出するための多くの技術もまた公知である。例えば、蛍光標識法が使用される。蛍光標識(又は蛍光プローブ)は、一般的に、適切な電磁信号又は放射によって誘導された時に、その放射を吸収して誘導放射が継続する間、持続する信号(通常は、例えば波長によって誘導放射から識別可能な放射)、すなわち蛍光を発する物質である。一部の蛍光プローブは、サンプルからの蛍光応答がターゲット分子の存在を示すように、ターゲット分子(例えば、特定の核酸配列)が存在する時だけ活性であるように設計されるのが一般的である。他の種類の蛍光プローブは、反応中に存在する二本鎖DNAの量に比例してそれらの蛍光が増加する。これらのプローブは、増幅反応がターゲット分子上だけで作動するように設計された場合に使用されるのが一般的である。
【0004】
蛍光分析法は、適切な波長の光源のような誘導(励起とも呼ばれる)放射に蛍光標識又はプローブを含むサンプルを曝し、それによってプローブを励起して蛍光を生じさせるステップを伴う。生成された放射は、フォトダイオード、光電子倍増管、又は電荷結合素子(CCD)などのような適切な検出器を使用して検出される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
蛍光標識サンプルと共に使用される蛍光光度計は、当業者に公知である。1つの種類の蛍光光度計は、米国特許第6,043,880号明細書でAndrews他によって説明されているような光学式読取装置である。励起光にサンプルを曝し放出された放射を検出する光学式読取装置に、サンプルのアレイを収容したサンプルプレートが挿入される。光学式読取装置の利便性は、サーマルサイクラからサンプルプレートを取り外さなければならず増幅の進度をモニタすることが困難であるということによって、制限されている。
【0006】
1つの改善方法は、サンプルプレートをサーマルサイクラから取り外さないで、又はPCR処理を中断せずにサンプルプレートを分析することができるように、光学式読取装置をサーマルサイクラに一体化することである。そのような組み合わせた装置の例は、米国特許第5,928,907号明細書、米国特許第6,015,674号明細書、米国特許第6,043,880号明細書、米国特許第6,144,448号明細書、米国特許第6,337,435号明細書、及び米国特許第6,369,863号明細書に説明されている。このような組合せた装置は、例えば、米国特許第5,210,015号明細書、米国特許第5,994,056号明細書、米国特許第6,140,054号明細書、及び米国特許第6,174,670号明細書に説明されているように様々な用途で有用である。
【0007】
既存の蛍光光度計は、様々な欠点に持っている。例えば、一部の既存の設計では、アレイ内の異なるサンプルウエルに対して異なる光源と検出器が設けられている。光源及び/又は検出器間の変動は、1つのウエルから次のウエルへの検出蛍光応答の変動をもたらす。代替的に、光源及び/又は検出器は、各ウエルまでの及び/又はそれからの光学経路が異なる1つよりも多いウエルと光学連通するように配置することができる。光学経路が異なるために、検出された蛍光応答は、1つのサンプルウエルから次のサンプルウエルまで変動する。そのような変動を補正するために、各サンプルウエルに対する応答は、個々に較正されるべきである。アレイ内のサンプルウエルの数が増加すると、これがますます時間を浪費する作業になり、較正誤差が次の測定値に大きな誤差を生じさせる場合がある。
【0008】
更に、既存の蛍光光度計は、一般的に、光源と検出器が計器の固定部分であるように設計されている。これが蛍光光度計を異なる用途に適応させる実験者の能力を制約する。例えば、異なる蛍光標識の検出は、一般的に、異なる光源及び/又は検出器の使用を必要とする。多くの既存の蛍光光度計は、実験者が光源と検出器を再構成することを困難にし、従って、使用することができる様々な蛍光標識を制約している。
【0009】
また、サンプル中(又は異なるサンプル中)に存在する場合があるいくつかの異なる蛍光標識の同時測定を実行することも困難である。上述のように、分析で得られるデータを最大にするために、実験者は、異なる励起及び/又は放射波長を有する複数の蛍光標識物質を含めることが多い。各標識物質は、異なるターゲット配列に結合するようになっており、同一のサンプル中で複数のターゲット配列が検出されることを原理的に可能にする。しかし、既存の蛍光光度計は、そのような多重標識実験を容易に行うことができない。多くの蛍光光度計は、励起及び放射波長の一つの組合せ用に設計されている。他のものは、多重標識の検出を可能にする多重光源及び検出器を提供するが、これらの構成は、1つの標識の励起波長が別の標識の放射波長と重なる場合があるので、多くの場合に一度に一標識のみの探査を可能にするものであり、検出器に進入する励起光線は、誤った結果をもたらすと考えられる。多重標識の探査は、一般的に並列に行うことができず、データ収集処理を遅くするものである。
【0010】
従って、これらの欠点を克服するサーマルサイクラのための改善された蛍光光度計が望ましいと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態は、サーマルサイクル装置内での蛍光検出を提供する。本発明の1つの態様によれば、サーマルサイクラの複数のウエルに配置されたサンプルを分析するための蛍光検出装置は、サーマルサイクラに取付可能な支持構造体と、支持構造体に移動可能に取り付けることができる検出モジュールとを含む。検出モジュールは、共に検出モジュール内に配置された励起光発生器と放出光検出器を含む。支持構造体がサーマルサイクラに取り付けられ検出モジュールが支持構造体に取り付けられた時に、検出モジュールは、複数のウエルのうちの異なるウエルと光学連通した状態に位置決めされるように移動可能である。
【0012】
本発明の別の態様によれば、検出モジュールは、2または3以上の励起/検出対を形成するように配置された2または3以上の励起光発生器と2または3以上の放出光検出器を含むことができる。一実施形態では、励起/検出対は、各励起/検出対が複数のウエルの異なるウエルと光学接触して同時に配置することができるように構成される。代替的な実施形態では、励起/検出対は、第1の励起/検出対が複数のウエルのいずれか1つと光学接触して配置された時に、別の励起/検出対が複数のウエルのいずれとも光学接触しないように構成される。一部の実施形態では、検出モジュールは、支持構造体に取外し可能に取り付けられ、それによってユーザは、検出モジュールを異なる検出モジュールと交換することができる。
【0013】
本発明の更に別の態様によれば、溶液中のターゲット分子の存在を検出する方法が提供される。複数のサンプルが用意され、各サンプルは、ターゲット分子に結合するようになった蛍光標識を含む。各サンプルは、サーマルサイクラ装置の複数のサンプルウエルのそれぞれのウエル内に配置され、サーマルサイクラ装置は、検出モジュールを移動可能に取付け、検出モジュールは、励起/検出チャンネルを含み、励起/検出チャンネルは、検出モジュール内に配置された励起光発生器と検出モジュール内に配置された放出光検出器とを含む。サーマルサイクラ機器は、反応を誘導するために使用され、検出モジュールを移動して励起/検出チャンネルを作動することにより、サンプルウエルが走査されて蛍光応答を検出する。走査中に、検出モジュールは、励起/検出チャンネルが複数のサンプルウエルのそれぞれと光学連通した状態に順番に配置されるように移動される。検出モジュールが複数の励起/検出対又はチャンネルを含む場合は、チャンネルは、並行して又は順番に作動する。
【0014】
添付図面と共に以下の詳細説明は、本発明の特質と利点のより良い理解を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の例示的な装置の実施形態を、同じ参照数字が対応する部分を表す添付図面を参照して説明する。装置を使用する方法も以下に説明する。本明細書に示して説明する実施形態は例示的であり、本発明を制約するものではない。
【0016】
I.例示的な装置
図1は、本発明の実施形態によるサーマルサイクル装置100の概略図である。装置100は、ベースユニット110と蓋アセンブリ112から成る。ベースユニット110は、従来の設計とすることができ、プログラマブルプロセッサ及びクロックなどのような従来の電子構成要素(図示せず)を通じてサーマルサイクル処理のための電力と制御機能を提供する。ベースユニット110は、キーパッド118とLCDディスプレイスクリーン120を含むことができ、ユーザがサーマルサイクラの作動を制御してモニタすることができるユーザインタフェース116もまた提供する。ベースユニット110は、電源ケーブル121を通じて外部電源(例えば、標準の120V交流電源)に接続される。ベースユニット110のいくつかの例は、本発明の譲受人であるMJ・リサーチ・インコーポレーテッドから販売されている「DNAエンジン(登録商標)」、「Dyad(登録商標)」、及び「Tetrad(登録商標)」サーマルサイクラを含む。
【0017】
蓋アセンブリ112は、蓋122内に配置されたサンプルユニットと蛍光検出装置を含み、以下、これらの構成要素を説明する。蓋122は、ベースユニット110への配置とそれからの取外しを助けるハンドル124と、通気口126とを有する。蓋122は、蓋アセンブリ112内部の構成要素に対して光学的及び熱的分離を提供するものである。
【0018】
図2は、蓋アセンブリ112の内部の分解組立図である。示されているのは、サンプルユニット202、蓋加熱器204、及び蛍光光度計アセンブリ206である。サンプルユニット202は、規則的なアレイ(例えば、8x12の格子)に配置された、いくつかのサンプルウエル210を含む。一実施形態では、各サンプルウエル210は、ターゲット核酸配列に結合するか又はその存在に応答するようになった少なくとも1つの蛍光標識又はプローブを含む適切なPCR反応物質(緩衝剤、プライマーとプローブ、及びヌクレオチドなど)と共に、試験される核酸サンプルを含むチューブのような取外し可能な反応容器(図示せず)を保持する。反応容器には、処理中のサンプルの交差汚染又は流出を回避するために、容器の上部を覆って確実に嵌る透明なサンプルキャップ(図示せず)が設けられるのが好ましい。反応容器はまた、「Microseal(登録商標)B」(MJ・リサーチ・インコーポレーテッド製)のようなフィルム、「Chill−out(登録商標)」(MJ・リサーチ・インコーポレーテッド製)のようなワックス製品、又は鉱物油の使用を含む他の方法で、シールすることができる。代替の構成として、1または2以上の個別のサンプルをサンプルウエル210に対応する位置に保持する取外し可能なサンプルトレイ(図示せず)を使用してもよい。サンプルトレイはまた、上述のいずれかの方法でシールすることができる。
【0019】
サンプルユニット202はまた、加熱要素(例えば、ペルチエ効果熱電装置)、熱交換要素、加熱要素をベースユニット110に接続するための電気的接続要素、及び機械的接続要素を含む。これらの要素(図示せず)は、従来技術の設計にすることができる。サンプルユニット202はまた、コネクタ214に取外し可能に接続したマルチワイヤ式ケーブル212を介して蓋加熱器204と蛍光光度計アセンブリ206のための電気接続を提供する。
【0020】
蓋加熱器204には、サンプルウエル210と電子制御された加熱要素(図示せず)との大きさと間隔に適合する孔220が貫通している。蓋加熱器204は、蓋122に連結される。連結機構(図示せず)は、蓋122がサンプルユニット202から取り外された時に、蛍光光度計アセンブリ206にアクセスできるように移動可能である(例えば、蓋加熱器204はヒンジによって蓋122に取り付けることができる)のが好ましい。蓋122がサンプルユニット202の所定位置にある時に、支持体224は、蓋加熱器204を所定位置に保持する。支持体224の下方部分226は、蓋加熱器204をサンプルユニットに向けて圧縮するように設計され、それによって装置100の作動中にサンプルが蒸発する可能性を低くするのが好ましい。この圧縮はまた、異なる大きさの反応容器の使用を可能にする。蓋加熱器204は、サーマルサイクル作動中にキャップ上での結露を回避するために、反応容器のサンプルウエル210のサンプルキャップ(又は他のシーラント)の温度を制御するために使用される。
【0021】
蓋加熱器204は、選択された孔220の間、又は蓋加熱器204の周囲近辺のような孔から離れた別の位置に位置決めされた1または2以上の較正要素222を含むのが好ましい。較正要素222は、既知の蛍光応答を提供し、蛍光光度計アセンブリ内の蛍光検出器を較正するために使用することができる。較正要素222は、ガラス又はプラスチック基板に蛍光コーティングを施して作ることができ、又は色素が含浸されたプラスチック、蛍光ガラス、又はポリエーテルイミド(PEI)のような蛍光プラスチックで構成することができる。蛍光検出器の飽和を回避するために、蛍光材料の上にニュートラル又は他の種類のフィルタを配置することができる。一般的に、蛍光特性が光(光漂白)と熱を付与された期間に亘って十分に安定していることを条件として、あらゆる材料を使用することができる。実用上、蛍光応答に対する温度の影響が最小にされるのが好ましい。複数の較正要素222が提供される場合、構成要素の異なるものに対して異なる材料を使用することができる。他の実施形態では、蓋加熱器204を省略し、較正要素222をサンプルユニット202の表面に配置することができる。
【0022】
サンプルユニット202と蓋加熱器204は、従来の設計にすることができる。適切な設計の例は、本発明の譲受人であるMJ・リサーチ・インコーポレーテッドから販売されている様々な「Alpha(登録商標)」モジュールのサンプルユニット及び蓋加熱器構成要素を含む。
【0023】
蛍光光度計アセンブリ206は、内側蓋122に固定された支持フレーム又はプラットフォーム230を含む。シャトル232が、支持フレーム230の下側に移動可能に取り付けられ、このシャトル232が検出モジュール234を保持する。シャトル232は、蓋加熱器204の対応する孔220を通してサンプルユニット202の異なったサンプルウエル210と光学連通するように検出モジュール234を位置決めできるように、二次元的に移動可能であり。支持フレーム230と支持体224は、蓋122がベースユニット110内に配置されて閉じられた時に、検出モジュール234が蓋加熱器204の近くに保持されるような寸法とされるのが好ましく、この配置が、サンプルウエルと検出モジュールの間の光損失を低減することがわかる。
【0024】
図3は、蛍光光度計アセンブリ206の底面図であり、シャトル232と検出モジュール234の移動可能な取付けを示している。この実施形態では、検出モジュール234が取外し可能に連結されたシャトル232を望ましい位置まで移動させるために、ステッパモータによって駆動される並進ステージが使用される。特に、支持フレーム230は、x軸ステッパモータ302とそれに取り付けられたリードスクリュー304とを有する。ステッパモータ302は、リードスクリュー304を回転させるように作動し、それによって並進ステージ306をx方向(矢印で示された)に移動させる。リミットスイッチ308が設け、並進ステージ306の動きを、検出モジュール234をいずれのウエルとも光学接触して配置できるように十分に大きく、且つ並進ステージ306がステッパモータ302のような他のシステム要素との接触を回避できる適切な範囲に制限するが好ましい。
【0025】
並進ステージ306は、y軸ステッパモータ316とこれに取り付けられたリードスクリュー318とを有する。ステッパモータ316は、リードスクリュー318を回転させるように作動し、それによってシャトル232をy方向(矢印で示された)に沿って移動させる。リミットスイッチ320が設け、シャトル232の動きを、検出モジュール234をいずれのウエルとも光学接触して配置できるように十分に大きく、且つシャトル232がステッパモータ316のような他のシステム要素と接触するのを回避できるる適切な範囲に制限するのが好ましい。
【0026】
ステッパモータ302及び316、リードスクリュー304及び318、及びリミットスイッチ308及び320は、通常は、従来技術の設計にすることができる。他の可動式の取付け方法で代用することができるがわかる。例えば、モータをリードスクリューに直接連結する代わりに、チェーン駆動又はベルト駆動のような間接連結を使用することができる。検出モジュールを配置するためにリードスクリューを使用せず、例えば、並進ステージをチェーン駆動、ベルト駆動、又は他の駆動機構に取り付けることにより、チェーン駆動、ベルト駆動、又は他の駆動機構も使用することができる。他の種類のモータ、例えば、サーボモータ又はリニアモータなども使用することができる。異なる自由度に対して、異なる駆動機構を使用することもできる。
【0027】
シャトル232は、コネクタ330及び331を介して検出モジュール234を保持する。コネクタ330及び331は、設計によって変わる場合があるが、検出モジュール234をシャトル232の下部に支持し整列するように構成される。検出モジュールを簡単に取り替えることができるように、コネクタは検出モジュール234に簡単に挿入かつ取り外しすることができるようになっているのが好ましい。一実施形態では、コネクタ330は、検出モジュール234の縁部をピボット回転可能に保持する円筒形部材(図示せず)に対する取付けを提供し、一方でコネクタ331は、検出モジュール234上の対応するレセプタクルに挿入可能なシャトルに取り付けられたボールプランジャを含む。以下に説明するように、シャトル232と検出モジュール234の間の電気接続(図示せず)も提供される。
【0028】
図4は、検出モジュール234の上面図である。検出モジュール234は、シャトル232の下側の対応するコネクタ330に連結することによりシャトル232と共にユニットとして動くように検出モジュール234を所定位置に固定する取り付け金具420を含む。検出モジュール234はまた、シャトル232の下側の対応する電気コネクタに接続する電気コネクタ424を含み、それによって検出モジュール234への制御信号の供給と検出モジュール234からの読取信号の取得が可能になる。
【0029】
図5Aは、検出モジュール234の一実施形態の底面図であり、検出モジュール234の本体内側に配置された4つの個々に制御された蛍光励起/検出チャンネル(「励起/検出対」とも呼ばれる)の4つの開口部502、504、506、及び508を示している。励起/検出チャンネルの例を以下に説明する。開口部502、504、506、及び508の間隔は、サンプルウエル210の間隔に対応する。従って、開口部502がサンプルウエル210の1つと光学連通状態に置かれた時に、開口部504、506、及び508は、それぞれ別々のサンプルウエル210との光学連通状態に置かれる。開口部502、504、506、及び508は、単に検出モジュール234の底面を通る孔とするか、又は各チャンネルの励起及び検出光線の波長に対して透過性が高いあらゆる物質で作ることができる。
【0030】
図5Bは、本発明の他の実施形態による検出モジュール234’の底面図である。この実施形態では、4つの開口部512、514、516、及び518が設けられるが、それらは千鳥状に配置されるので、一度に1つの開口部だけがサンプルウエルのいずれかと光学連通することができる。この構成は、励起/検出対間のクロストークを低減するのに有用である。
【0031】
図6は、本発明の実施形態による励起/検出チャンネル(又は励起/検出対)600のための光学要素の構成を示す概略図である。検出モジュール234は、励起/検出対600の1または2以上のインスタンスを含むことができ、各対は、独立した蛍光検出チャンネルを提供する。励起/検出対600は、不透明な壁602の内側に配置され、この壁は、外部光源の他に検出モジュール234に含めることができる他の励起/検出対からの光学分離を提供する。励起光路604は、発光ダイオード(LED)又は他の光源606、フィルタ608、レンズ610、及びビームスプリッタ612を含む。検出光路620は、ビームスプリッタ612、フィルタ624、レンズ626、及びフォトダイオード又は他の光検出器を含む。ビームスプリッタ612は、励起波長の光に対して極めて透過性が高く、検出(蛍光応答)波長の光に良く反射するように選択されるのが好ましい。
【0032】
励起光路604は、望ましい波長の励起光をサンプルブロック202のサンプルウエル210に保持された反応容器616に導くように配置される。望ましい波長は、反応容器616に含まれる特定の蛍光標識物質に依存し、適切なLED606とフィルタ608の選択によって制御される。励起/検出対600と反応容器616の間の光学連通は、上述のように不透明な壁602の開口部502と蓋加熱器204を通る孔220によって提供される。励起/検出対600との光伝送を最大にするために、開口部502と蓋加熱器204の作動中の間隔は小さくされるのが好ましい。
【0033】
反応容器616に入った励起光線は、蛍光を発する蛍光標識又はプローブを励起し、それによって波長が異なる光を生成させる。この光の一部は、検出光路620上で反応容器616を出て開口部502を通過する。ビームスプリッタ612は、蛍光光線の実質的な部分が、励起周波数を濾過するフィルタ624とフォトダイオード628の活性表面上に光を集束させるレンズ626とを通るように誘導する。フォトダイオード628は、入射光線に応答して電気信号を発生する。この電気信号は、読取信号経路630によって回路基板634に伝送され、この基板は、読取のために信号を電気コネクタ424にルーティングする。回路基板634及び/又は信号経路630はまた、フォトダイオード628からの電気信号を成形して精緻化するためにプリアンプのような別の構成要素を含むことができる。
【0034】
LED606とフォトダイオード628は、各制御信号経路636及び638によって表示されるように、コネクタ424を通じて受信された信号によって制御することができる。LED606の制御信号は、LED606を望ましい時間に作動及び停止するように動作させることができ、フォトダイオード628の制御信号は、フォトダイオード628を望ましい時間に作動及び停止させたり、ゲインパラメータを調節する等の動作をおこなわせることができる。
【0035】
図6は、1つの励起/検出対600を示すが、検出モジュール234の実施形態は、各対が他から光学分離状態にあり、サンプルウエルとの光学連通のためのそれ自体の開口部(例えば、図5の開口部504、506、508)を有するあらゆる数のこのような対を含むことができることが好ましいことが分かる。様々な励起/検出対は単独に制御され、単独に読み出されるが、それらの各制御及び読取経路は、全て回路基板634と連結することができる。
【0036】
励起/検出対の構成は、図示されたものから変更することができ、励起及び検出経路は、追加の構成要素、より少ない構成要素、又は望ましい構成要素のあらゆる組合せを含むことができる。光学構成要素は、特定用途に対して適切に修正することができ(例えば、蓋加熱器204がない場合は、光学経路をより短くすることができ)、以下に限定はしないが、レンズ、ビームスプリッタ、ミラー、及びフィルタを含めた構成要素のあらゆる数との組合せを使用することができる。LEDは、コンパクトで信頼性のある構成要素を提供するが、レーザダイオード及びフラッシュランプなどのような干渉性又は非干渉性の光源の使用も除外されない。同様に、検出器は、フォトダイオードに制約されず、光電子倍増管及び電荷結合素子(CCD)を含めたあらゆる種類の光検出器で代用することができる。各励起/検出対は、自己完結型のアセンブリとして構成され、それを作動させるために外部電気接続のみを必要とするのが好ましい。励起及び検出経路の長さが1つの実験から次の実験まで変動しないので、作動中に更なる調節が必要ないように、製造中に各励起/検出対600を検出モジュール234の内部に固定し、様々な光学構成要素を最適化することが望ましい。
【0037】
図7は、蓋アセンブリ112の電気接続を示すブロック図である。主処理基板702が蓋アセンブリ112に取り付けられる。主処理基板702は、第1の信号プロセッサ704、ステッパモータ駆動ユニット706、電源用接点708、及び外部コンピュータ(例えば、パーソナルコンピュータ、すなわち、PC)用接点710を含む。主処理基板702はまた、蓋122に及びそれからの電気信号の伝送を行うケーブル212のためのコネクタ214を提供する。
【0038】
蓋122は、主処理基板702と、ステッパモータ302、304、およびシャトル232間の通信を容易にする副処理基板720を含む。副処理基板720は、ケーブル212のコネクタ722、ケーブル726をシャトル232に接続するコネクタ724、及びx及びyステッパモータ302及び316に制御信号を供給するケーブル736及び738のためのコネクタ732及び734を含む。副処理基板720内のルーティング経路(図示せず)は、様々なコネクタ間の適切な信号接続を設定する。
【0039】
ケーブル726は、検出モジュール234に対して個々の光源を作動及び停止するような制御信号を伝達し、検出モジュール234に含まれた光検出器から信号を受信するために使用される。電気コネクタ730は、検出モジュール234に対して信号を送受信するためにシャトル232に設けられる。電気コネクタ730は、検出モジュール234がシャトル232に取り付けられた時に、検出モジュール234の上面の合わせコネクタ424を受け入れる。他の実施形態では、ケーブル726は、検出モジュール234に直接取り付けてもよい。
【0040】
上述のように、主処理基板702は、外部コンピュータ(図示せず)に接点710を提供する。検出モジュール234から得られた蛍光光度計のデータの読取及び分析、並びにシャトル232の作動と検出モジュール234の作動を制御するために、外部コンピュータを使用することができる。
【0041】
上述のように、検出モジュール234は、自己完結型でシャトルから取外し可能に設計される。これは、蛍光分析システムを再構成可能にし、異なる測定を実行するために実験者が要望通りに検出モジュールを変更することを可能にする。例えば、異なる蛍光標識物質(又は標識物質の組合せ)に対して異なる検出モジュールを最適化することができる。実験者が異なる標識物質の研究を望む場合、実験者は、単に適切な検出モジュールを組み込むだけである。組込みは、シャトル232の下部の対応するコネクタに対する望ましい検出モジュール234の電気コネクタ424と機械コネクタ420の取り付ければよい。一部の実施形態では、コネクタは、機械的に接続した時に自動的に電気接続が行われるように設計される。上に指摘したように、蓋加熱器204は、移動可能に取り付けられて蛍光光度計アセンブリ230へのアクセスが可能になり、それによって実験者は、検出モジュールを変更することができるようになるのが好ましい。
【0042】
本明細書に説明した装置は例示的であり、変更及び修正が可能であることがわかる。例えば、基部とサンプルユニットは、一体化されたシステム、又はより小さなモジュール構成要素に更に分割されたものとして設計することができる。蛍光光度計アセンブリは、サンプルウエルに対して固定された位置に取り付けられる限り、蓋に取り付けられるか又は蓋と一体化される必要はない。変換ステージ又はステッパモータに限らず、サンプルウエルの異なるものと光学連通状態で検出モジュールを配置するように検出モジュールを可動にするあらゆる機構を使用することができる。検出モジュールは、単独の検出チャンネルとして作動するあらゆる数(1または2以上)の励起/検出対を含むことができ、同じ蛍光プローブ又は異なる蛍光プローブを検出するために異なる対を設計することができる。他の実施形態では、検出モジュールは、サンプルアレイの行と対応するように配置された光学ウインドウを有する励起/検出対の行を含み、検出モジュールは、アレイの異なる列を調べるために一方向に可動にされる。
【0043】
外部コンピュータもまた任意的であり、その機能のいずれもサーマルサイクル装置内に統合することができ、逆に、サーマルサイクラの制御機能を、外部コンピュータを作動させるように実施することができ、それによって全体の装置に対して単一の制御装置を提供することができる。一実施形態では、外部コンピュータは、サンプルウエルに対する検出モジュール234の位置と光源及び検出器の作動とを制御するために使用される。更に、外部コンピュータは、専用の制御及び信号処理装置、並びにPCのような汎用コンピュータとすることができる。
【0044】
II.使用の方法
本明細書に説明する装置は、蛍光量を検出することによって、増幅反応で生成された増幅生成物の量を検出するために使用することができる。DNA又はRNAサンプル中に存在するターゲット配列を定量化するために、様々な増幅技術を使用することができる。増幅される配列に対して相補的な配列を含む核酸アンプリコン(コピー)の酵素的合成を伴うそのような技術は、当業技術では公知であり、広く使用されている。これらは、以下に限定はしないが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、RT−PCR、鎖置換増幅(SDA)、転写ベースの増幅反応、リガーゼ鎖反応(LCR)、及びその他(例えば、Dieffenfach及びDveksler著「PCRプライマー:実験用マニュアル」、1995年;米国特許第4,683,195号及び第4,683,202号、Innis他編集「PCRプロトコル:方法及び応用のためのガイド」、1990年;Walker他、「核酸研究」、20(7)、1691−6、1992年;Walker、「PCR方法応用」、3(1):1−6、1993年;Phyffer他、「J.Clin.Microbiol.」、34:834−841、1996年;Vuorinen他、「J.Clin.Microbiol.」、33:1856−1859、1995年;Compton、「Nature」、350(6313):91−2、1991年;Lisby、「Mol.Biotechnol.」、12(1):75−99、1999年;Hatch他、「Genet.Anal.」、15(2):35−40、1999年;及びIqbal他、「Mol.Cell Probes」、13(4):315−320、1999年を参照されたい)を含む。核酸増幅は、サンプル中に存在するターゲット配列の量が非常に少ない時に特に有益である。関連の有機体又はウイルスに属するサンプル中の核酸の検出をより確実にするのに検定の始めで必要なターゲット配列のコピーがより少ないので、ターゲット配列を増幅して合成されたアンプリコンを検出することにより、検定の感度を大幅に改善することができる。
【0045】
増幅生成物の測定は、反応が終了した後か又はリアルタイムに(すなわち、実質的に連続して)実行することができる。増幅が終了した後に累積された増幅生成物の測定が実行された場合、検出の試薬(例えば、蛍光プローブ)は、増幅反応の後に追加することができる。代替的に、増幅反応の前に又はその間に反応にプローブを追加することができ、従って、増幅の終了後か又はリアルタイムに増幅生成物の測定が可能になる。増幅生成物がリアルタイムに測定された場合、信号が閾値を超えるサイクル数を判断し、指数増幅を仮定して最初のコピー数に投影して戻すことにより、最初のコピー数を見積もることができる。
【0046】
A.蛍光プローブ
蛍光プローブを利用するいくつかのフォーマットが利用可能である。これらのフォーマットは、多くの場合、蛍光共鳴エネルギ移動(FRET)に基づいており、分子標識と「TaqMan(登録商標)」プローブを含む。FRETは、供与体及び受容体分子間の距離依存型相互作用である。供与体及び受容体分子は、燐光体である。燐光体が部分的に重なる励起及び放射スペクトルを有する場合、非常に近傍で(通常、約10−100オングストローム)、供与体燐光体の励起は、受容体燐光体に転送される。その結果、供与体分子の寿命が短縮されてその燐光体は消失し、一方で受容体分子の燐光体輝度は、増強されて消極される。供与体の励起状態エネルギが非燐光受容体に転送される時に、供与体の蛍光は、受容体による蛍光のその後の放射なしに消失する。この場合、受容体は、消失試薬として機能する。
【0047】
リアルタイムPCRに対する1つのFRETベースのフォーマットは、「分子標識」として公知のDNAプローブを使用する(例えば、Tyagi他、「Nat.Biotech.」、16:49−53、1998年;及び米国特許第5,925,517号を参照されたい)。分子標識は、消光色素とレポーター色素がヘアピン軸の端部で互いに密接に接触するヘアピン構造を有する。相補的な配列と混成化する時に、ヘアピン構造のループが二本鎖となって消失及びレポーター色素を強制的に分離し、従って、蛍光信号を発生する。関連の検出方法は、蛍光発生プローブとしてヘアピンプライマーを使用する(Nazarenko他、「核酸研究」、25:2516−2521、1997年;米国特許第5,866,336号、米国特許第5,958,700号)。PCRプライマーは、プライマーが線形構造を使用する、すなわち、PCR生成物に組み込まれる時だけ蛍光信号が生成される方法で設計することができる。
【0048】
増幅生成物はまた、蛍光発生5’ヌクレアーゼ検定、すなわち、「TaqMan」検定を使用して溶液中で検出することができる。Holland他、「Proc.Natl.Acad.Sci.」、U.S.A.88:7276−7280、1991年;米国特許第5,538,848号、第5,723,591号、及び第5,876,930号を参照されたい。「TaqMan」プローブは、望ましいPCR生成物内の配列に対して混成化するように設計される。「TaqMan」プローブの5’端部は、蛍光レポーター色素を含む。プローブの3’端部は、ブロックされてプローブの拡張を防止し、5’燐光体の蛍光発色を消失させることになる色素を含む。続く増幅中に、反応において5’エキソヌクレアーゼ活動を有するポリメラーゼが存在する場合は、5’蛍光標識は開裂される。5’燐光体の切除は、検出することができる蛍光の増加をもたらすことになる。
【0049】
ヘアピンと5’−ヌクレアーゼPCR検定に加えて、FRET機構を使用する他のフォーマットも開発されてきた。例えば、第1の色素の蛍光が第2の色素によって消失されるという方法で、単一鎖信号プライマーが2つの色素に対するリンクによって修正され、供与体/受容体色素対を形成した。この信号プライマーは、制限部位(米国特許第5,846,726号)を含み、ターゲットに混成化された時に適切な制限酵素がプライマーに刻みを付けるのを可能にする。この裂け目は、2つの色素を分離し、消失の現象による蛍光の変化が観測される。配位子にオリゴヌクレオチドを連結する非ヌクレオチドリンク試薬もまた説明されている(米国特許第5,696,251号)。
【0050】
蛍光の読みを使用してモニタすることができる他の増幅反応は、増幅生成物に結合されたDNA結合色素の量を測定することによって定量化されるものを含む。そのような検定は、例えば、臭化エチジウム又は「SYBR Green I」(米国オレゴン州ユージーン所在のモレキュラー・プローブズ・インコーポレーテッド;米国特許第5,436,134号及び第5,658,751号)のような蛍光色素を使用し、それらは、DNA中に介在する時に蛍光の増加を呈する(例えば、米国特許第5,994,056号及び第6,171,785号を参照されたい)。蛍光の増加は、増幅反応によって生成された二本鎖DNAの量の増加に反映される。
【0051】
他の蛍光プローブは、無機分子、有機及び/又は無機分子の多分子混合物、結晶、及びヘテロポリマーなどを含む。例えば、シリカシェル中に封入されたCdSe−CdSコアシェル・ナノ結晶は、生物分子に連結するために簡単に変成される(Bruchez他(1998年)、「Science」、281:2013−2016)。同様に、高蛍光量子ドット(硫化亜鉛キャップド・セレン化カドミウム)は、超高感度生物学検出(Warren及びNie(1998年)、「Science」、281:2016−2018)で使用するために生体分子と共有結合されている。
【0052】
装置100を使用して多重検定もまた実行することができる。多重PCRは、同一反応で複数ポリヌクレオチド断片の増幅をもたらすものである。例えば、「PCRプライマー、実験用マニュアル」(Dieffenbach編、1995年)、コールド・スプリング・ハーバー・プレス、157−171ページを参照されたい。例えば、異なるターゲットテンプレートを追加し、同一の反応容器内で並行に増幅することができる。多重検定は、一般的に、異なる蛍光標識法の使用を含み、増幅された異なるターゲット配列を検出する。
【0053】
B.PCR条件及び成分
例示的なPCR反応条件は、一般的に、2又は3ステップサイクルを含む。2ステップサイクルは、変成ステップを有し、混成化/伸長ステップへと続く。3ステップサイクルは、変成ステップを有し、混成化ステップに続き、別の伸長ステップへと続く。ポリメラーゼ反応は、プライマーがターゲット配列に混成化されてポリメラーゼによって伸張される条件下で培養される。増幅の反応サイクル条件は、プライマーが特にターゲット配列に混成化されて伸張されるように選択される。
【0054】
成功するPCR増幅は、各ステップで高い処理量、高い選択性、及び制御された反応速度を必要とする。処理量、選択性、及び反応速度は、通常は温度に依存し、最適な温度は、反応システム内のポリヌクレオチド、酵素、及び他の成分の組成と長さに依存する。更に、異なるステップに対しては異なる温度が最適になる場合がある。最適な反応条件は、ターゲット配列とプライマーの組成次第で変動する場合がある。装置100のようなサーマルサイクラは、反応条件の必要な制御を行い、特定の検定のためにPCR処理を最適化する。例えば、装置100は、維持される温度、各サイクルの継続時間、サイクル数などを選択することにより、プログラムすることができる。一部の実施形態では、異なる温度で異なるサンプルウエルを維持することができるなどのために、温度勾配をプログラムすることができる。
【0055】
塩基リンク又は末端リンクのフッ素及び消光剤を含む蛍光オリゴヌクレオチド(プライマー又はプローブ)は、当業技術で公知である。それらは、例えば、ライフ・テクノロジーズ(米国メリーランド州ガイサーバーグ)、シグマ−ゲノシス(米国テキサス州ザ・ウッドランズ)、ゲンセット・コーポレーション(米国カリフォルニア州、ラホーヤ)、又はシンセティック・ジェネティクス(米国カリフォルニア州サンジエゴ)から入手可能である。塩基リンクフッ素は、塩基にリンクした反応基と合成されたオリゴヌクレオチドの合成後改質により、オリゴヌクレオチド内に取り込まれる。米国オレゴン州ユージーン所在のモレキュラー・プローブズのような市販の供給元からのものを含む、多数の異なる燐光体が入手可能であり、他の燐光体も当業者に公知であることを当業者は認識するであろう。有用な燐光体には、フルオレセイン、フルオレセイン・イソチオシアネート(FITC)、カルボキシ・テトラクロロ・フルオレセイン(TET)、NHS−フルオレセイン、5及び/又は6−カルボキシ・フルオレセイン(FAM)、5−(又は6−)ヨードアセトアミド・フルオレセイン、5−{〔2(及び3)−5−(アセチルメルカプト)−スクシニル〕アミノ}フルオレセイン(SAMSA−フルオレセイン)、及び他のフルオレセイン派生物、ローダミン、「Lissamine」ローダミンB塩化スルホニル、テキサスレッド・塩化スルホニル、5及び/又は6カルボキシ・ローダミン(ROX)、及び他のローダミン派生物、クマリン、7−アミノ−メチル−クマリン、7−アミノ−4−メチルクマリン−3酢酸(AMCA)、及び他のクマリン派生物、「BODIPY(登録商標)」燐光体、8−メチル・オキシピレン−1,3,6−三スルホン酸三ナトリウム塩のような「Cascade Blue(登録商標)」燐光体、3,6−二スルホン酸塩−4−アミノ・ナフタルイミドのような黄燐燐光体、フィコビリンプロテイン派生物、アレクサフッ素色素(米国オレゴン州ユージーン所在のモレキュラー・プローブズから入手可能)、及び当業者に公知の他の燐光体が含まれる。有用な燐光体の一般的なリストに関しては、Hermanson,G.T.著「生態共役技術」(アカデミック・プレス、サンジエゴ、1996年)も参照されたい。
【0056】
増幅反応のためのプライマーは、既知のアルゴリズムに従って設計される。例えば、市販で入手可能であるか又はカスタムソフトウエアで実施されるアルゴリズムは、ターゲット配列を増幅するプライマーを設計するために使用することができる。一般的に、プライマーは12塩基であり、より多くの場合に、長さが15、18、又は20塩基である。一般的に、プライマーは、特定の反応に関与する全てのプライマーが、互いの5℃以内、最も好ましくは2℃以内の溶融温度を有するように設計される。プライマーは、更に、それ自体に又は互いにプライミングすることを避けるように設計される。プライマーの濃度は、増幅された配列の量の正確な評価を提供するように、増幅されるターゲット配列の量に結合するのに十分であるべきである。プライマーの濃度は、結合される配列の大きさと同様にプライマーの結合親和性に従って変動することを当業者は認識するであろう。一般的なプライマー濃度は、0.01μMから0.5μMの範囲であることになる。
【0057】
当業者は、更に、関連の全ての反応の機能を考慮するために緩衝条件を設計することが望ましいことを認識するであろう。従って、プローブからの信号生成に関連するあらゆる酵素的反応と同様に、増幅反応をサポートするように緩衝条件を設計することができる。特定の反応緩衝は、個々に及び組合せでの反応を試験することにより、様々な反応をサポートする機能を試験することができる。塩又はマグネシウムのような反応の成分の濃度はまた、ターゲット核酸まで焼き戻すプライマー又は検出プローブの能力に影響する可能性がある。これらは、当業技術で公知の手引き、例えば、Innis他、前出に基づいて調節することができる。
【0058】
C.例示的なPCR処理
図8は、装置100を使用する核酸増幅と測定処理800のフローチャートである。この例では、装置100は、PCR増幅処理を制御し、核酸サンプル中の複数のターゲット配列の存在を検出する。
【0059】
ステップ802で反応容器616が準備される。この準備は、容器への反応成分の配置と、流出と二次汚染を防止するための容器のシールとを含む。反応成分は、緩衝剤、ターゲット核酸、適切なプライマーとプローブ、ヌクレオチド、ポリメラーゼ、並びに任意的な付加的な成分を含む。一実施形態では、4つの蛍光プローブが含まれ、各プローブは、異なるターゲット配列を検出するようになっており、特定の反応容器は、1または2以上の蛍光プローブのいずれかを含むことができる。各プローブは、異なる入射波長の光に応答して異なる波長の光を放射するのが好ましい。
【0060】
ステップ806で、検出モジュール234は、シャトル232に取り付けられる。上述のように、検出モジュール234は、いくつかの検出チャンネル(すなわち、励起/検出対)を含んでもよい。一実施形態では、検出モジュール234は、4つの検出チャンネルを含む。各チャンネルは、反応容器616に含まれる、異なる蛍光プローブが最適化される。
【0061】
ステップ808で、反応容器616は、サンプルユニット202のサンプルウエル210の中に配置される。ステップ810で、蓋アセンブリ112は、閉じられてベースユニット110に位置決めされる。
【0062】
ステップ812で、検出モジュール234の各チャンネルが較正される。較正は、位置検出モジュールのチャンネルの少なくとも1つが較正位置222と光学連通するように位置検出モジュール234に対してステッパモータ302及び316を作動することにより実行される。上述のように、各較正位置は、既知の蛍光応答を提供する。従って、較正測定値は、検出器応答の変動又はばらつきに対して次のサンプル測定値を訂正するために使用することができる。多くの較正技術が当業技術が公知である。検出モジュール234が複数のチャンネルを有する場合、各チャンネルは、個別に較正することができる。
【0063】
ステップ814で、PCRサイクルが実行される。一般的に、ステップ814は、サンプルユニット202の温度を調節するためのベースユニット110の作動を含み、それによって反応容器を望ましい時間に亘って望ましい温度に保持し、2ステップ又は3ステップのPCRサイクルを完了させる。ベースユニット110は、ユーザインタフェースを通じて又は外部コンピュータによって制御することができる。
【0064】
ステップ816で、蛍光光度計アセンブリ206は、反応容器616を走査して調べる。蛍光光度計アセンブリ206の作動は、外部コンピュータによって制御され、測定値がPCR処理の特定の時間に対応するものとして識別可能なようにベースユニット110の作動と同期されるのが好ましい。
【0065】
より詳細には、ステップ816aで、ステッパモータ302及び316又は他の移動装置は、4つの検出チャンネルの各々が対応する光学ウインドウ502、504、506、508を通じて異なるサンプルウエル210と光学連通するように検出モジュール234を配置するために作動される。ステップ816bでは、各チャンネルのLED又は他の光源が作動され(短時間に亘って点滅)、蛍光を誘導する。一実施形態では、異なるチャンネルのLEDが並行して作動し、他の実施形態では、別のチャンネルの光検出器内で誤信号を引き起こす1つのチャンネルからの反射LED光線を回避するために、それらは順番に作動される。
【0066】
ステップ816cで、得られた蛍光は、対応するフォトダイオード又はチャンネルの他の検出器により検出され、これは、外部コンピュータに読み出される。検出器は、様々な方法で読み取ることができる。例えば、ピーク信号を検出してもよく、信号をある一定の時間間隔に亘って積分、又は、LEDが停止された後の蛍光信号の減衰を測定してもよい。
【0067】
ステップ816a−cは繰り返され、検出モジュールの位置は、検出モジュール234の各チャンネルが最終的にサンプルウエル210の各々を調べるようにその度に変更されるのが好ましい。一実施形態では、96サンプルの各々に対する4チャンネルの走査と調査には約15秒かかる。外部コンピュータは、ユーザが収集した測定データを図及び/又は表の形態で見ることができるプログラム(例えば、MJ・リサーチ・インコーポレーテッドが販売している「Opticon Monitor」プログラム)を実行する。そのようなプログラムは、当業技術で公知である。例としては、MJ・リサーチ・インコーポレーテッドが販売している「Opticon Monitor(登録商標)」プログラムが含まれるのが好ましい。
【0068】
ステップ814と816は、何回の反応サイクルに亘って繰り返すことができる。処理800からのリアルタイムの蛍光測定値を使用して各ターゲット配列の存在を検出して定量化することができることを当業者は認識できる。そのような測定値はまた、反応速度の判断、効率を改善するための反応パラメータの調節、並びに特定の実験において付加的な反応サイクルがそれ以上必要でなくなる時(例えば、ターゲット配列の十分な量が生成された時)の判断のような目的のために使用することができる。
【0069】
処理800は例示的なものであり、変形と修正が可能であることが認められるであろう。順次的として説明したステップは並行に実行することができ、ステップの順序は変更することができ、ステップを修正するか又は組み合わせることもできる。例えば、蛍光測定は、PCRサイクル中のどの点でも実行することができ、各PCRサイクル中(サンプルウエルの実質的に連続した走査を含む)に複数回実行することもでき、又はある回数のPCRサイクルの後まで実行されない場合もある。あらゆる数の認識可能な蛍光プローブを単一の反応容器で使用することができ、検出モジュールは、使用されているプローブの数と少なくとも同じくらい多いチャンネルを含むように適応させることができる。一部の実施形態では、検出モジュールは、同じプローブに対して最適化された複数のチャンネルを含む。これは、特定のサンプルウエルを質問するのにこれらのチャンネルの1つだけを使用すればよいので、走査時間を短縮することができる。
【0070】
更に、上述のように、他の実施形態では、検出モジュール234の様々なチャンネルは、チャンネルの1つがサンプルウエル210と光学連通状態にある時に他のチャンネルがそうでないように配置される。この構成は、ウエルの上を走査が通過する間に検出モジュール234が実質的に連続して運動中である作動の「フライオーバー」モードを考慮したものである。一度に1つだけのサンプルウエルがあらゆる励起光を受け取るので、チャンネル間のクロストークが減少する。
【0071】
結論
本発明を特定的な実施形態に関連して説明したが、多くの修正が可能であることを当業者は認識するであろう。例えば、本明細書に説明した蛍光検出アセンブリは、広範囲のサーマルサイクラシステムと共に使用するように適応させることができ、特定機器の設計に応じてあらゆる方向(例えば、上方又は下方)からサンプルウエルを調べることができる。更に、システムは、蛍光標識又はプローブによって識別可能な生物的に関連する広範囲の分子を検出するようになっており、それは、核酸にも又はあらゆる特定の増幅処理にも限定されないものである。
【0072】
すなわち、本発明を特定的な実施形態に関連して説明したが、本発明は、特許請求の範囲内の全ての修正と均等物を網羅するように意図されていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施形態によるサーマルサイクル装置の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態によるサーマルサイクル装置のための蓋アセンブリの分解組立図である。
【図3】本発明の実施形態によるサーマルサイクル装置のための蛍光光度計アセンブリの底面図である。
【図4】本発明の実施形態による検出モジュールの上面図である。
【図5A】本発明の他の実施形態の検出モジュールの底面図である。
【図5B】本発明の他の実施形態の検出モジュールの底面図である。
【図6】本発明の実施形態による検出モジュールのための励起/検出対の概略図である。
【図7】本発明の実施形態によるサーマルサイクル装置のための蓋アセンブリに対する電気接続を示すブロック図である。
【図8】本発明の実施形態による蛍光検出システムを有するサーマルサイクラを使用するための処理のフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーマルサイクラの複数のウエル内に配置されたサンプルを分析する蛍光検出装置であって、
サーマルサイクラに取付可能な支持構造体と、
前記支持構造体上に移動可能に取付け可能な検出モジュールと、を備え、
該検出モジュールは、該検出モジュール内に配置された励起光発生器と、該検出モジュール内に配置された放出光検出器とを備え、
前記支持構造体が前記サーマルサイクラに取り付けられ前記検出モジュールは前記支持構造体に取付けられた時、該検出モジュールは、前記複数のウエルの異なるウエルと光学連通した状態で位置決めされるように移動可能である、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記検出モジュールは、複数の励起/検出対を形成するように配置された複数の励起光発生器及び複数の放出光検出器を含む、
請求項1に記載の蛍光検出装置。
【請求項3】
各放出光検出器は、異なる範囲の波長を検出するように構成されている、
請求項2に記載の蛍光検出装置。
【請求項4】
各励起光発生器は、異なる範囲の波長で光を発生するように構成されている、
請求項2に記載の蛍光検出装置。
【請求項5】
前記複数の励起/検出対は、各励起/検出対が前記複数ウエルの異なるものと光学接触した状態で同時に位置決め可能なように配置されている、
請求項2に記載の蛍光検出装置。
【請求項6】
前記複数の励起/検出対は、該複数の励起/検出対の第1の対が前記複数のウエルのいずれか1つと光学接触した状態で位置決めされた時に、該励起/検出対の別の対が該複数のウエルのいずれとも光学接触しないように配置されている、
請求項2に記載の蛍光検出装置。
【請求項7】
前記検出モジュールは、前記支持構造体に取外し可能に取付けられ、それによってユーザが該検出モジュールを異なる検出モジュールと交換することを可能にする、
請求項1に記載の蛍光検出装置。
【請求項8】
較正要素であって、前記検出モジュールが前記較正要素と光学連通した状態で位置決めされるように移動可能であるように配置され、
既知の蛍光応答を供給する較正要素を備えている、
請求項1に記載の蛍光検出装置。
【請求項9】
前記較正要素は、前記複数のウエルの2または3以上の間に位置している、
請求項8に記載の蛍光検出装置。
【請求項10】
前記ウエルに対する前記検出モジュールの位置決めは、外部コンピュータにより制御される、
請求項1に記載の蛍光検出装置。
【請求項11】
前記較正要素は、前記複数のウエルに対して周辺区域に位置している、
請求項8に記載の蛍光検出装置。
【請求項12】
前記励起光発生器及び前記放出光検出器の作動は、外部コンピュータにより制御される、
請求項1に記載の蛍光検出装置。
【請求項13】
溶液中のターゲット分子の存在を検出する方法であって、
ターゲット分子と結合するようになった蛍光プローブを各々含む複数のサンプルを準備するステップと、
検出モジュールが移動可能に取付けられたサーマルサイクラ装置の複数のサンプルウエルのそれぞれのウエルに各サンプルを配置するステップと、を備え、
前記検出モジュールは、該検出モジュール内に配置された励起光発生器と該検出モジュール内に配置された放出光検出器とを含む励起/検出チャンネルを含み、
前記サーマルサイクラ装置を使用して反応を誘導するステップと、
前記検出モジュールを移動して前記励起/検出チャンネルを作動させることにより、蛍光応答を検出するために前記複数のサンプルウエルを走査するステップと、を更に備え、
前記走査ステップ中に、前記検出モジュールが、前記励起/検出チャンネルが前記複数のサンプルウエルの各々と光学連通した状態に順次、位置決めされるように移動させられる、
ことを特徴とする方法。
【請求項14】
前記ターゲット分子は、核酸配列である、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記反応は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記走査するステップは、
前記励起/検出チャンネルが前記サンプルウエルの1つと光学連通するように前記検出モジュールを位置決めするステップと、
前記励起/検出チャンネルの前記励起光発生器を一時的に作動させるステップと、
前記励起/検出チャンネルの前記放出光検出器を使用して蛍光応答を検出するステップと、
前記励起/検出チャンネルが前記サンプルウエルの異なるサンプルウエルと光学連通するように前記検出モジュールを再位置決めするステップと、を含む、
請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記検出モジュールは、少なくとも2つの励起/検出チャンネルを含む、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記検出モジュールが、第1の励起/検出チャンネルが1の前記サンプルウエルと光学連通するように位置決めされた時、第2の励起/検出チャンネルが、別のサンプルウエルと光学連通している、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記検出モジュールが、第1の励起/検出チャンネルが1の前記サンプルウエルと光学連通するように位置決めされた時、第2の励起/検出チャンネルが、いずれのサンプルウエルとも光学連通していない、
請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記走査ステップ中、前記検出モジュールは、実質的に連続して動いている、
請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−504477(P2007−504477A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532916(P2006−532916)
【出願日】平成16年5月10日(2004.5.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/014566
【国際公開番号】WO2004/104547
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(591131844)バイオ−ラッド ラボラトリーズ インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】