説明

可塑剤フリーのコポリマーを含むイオン検出センサー

試料中の標的イオンを検出するための可塑剤フリーのイオン検出センサーが提供される。前記センサーは、メタクリレートモノマーの重合したユニットと、重合可能なイオン交換体とを含む可塑剤フリーのコポリマーを含み、前記メタクリレートモノマーは異なる長さのペンダントアルキル基を有し、前記官能基修飾されたイオン交換体は、共有結合によって前記コポリマー内にグラフトされる。前記イオン交換体は、重合可能な原子団を有するハロゲン化closo−ドデカカルボラン・アニオンのC−誘導体を含む。本発明のセンサーは、担体を利用するイオン選択電極か、薄いフィルム状のイオン特異的オプトード、粒子を利用するオプトードまたはバルクのオプトードのようなオプトードかを含む。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中の標的イオンを検出するためのシステムに関し、より具体的には、可塑剤フリーのコポリマーに共有結合でグラフトされたイオン交換体を含むイオンセンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本発明は、2002年12月5日出願の米国特許出願第10/313,090号の一部継続出願である、2003年3月7日出願の米国特許出願第10/384、097号の一部継続出願であり、これら2つの出願のそれぞれは、引用により本明細書にその全体が取り込まれる。本発明は、「イオン選択的センサーの共有結合で付着したカチオン交換体としての共重合したドデカカルボランアニオン」という名称の2003年5月28日出願の仮出願第60/473,677号に基づく優先権を主張するが、この出願は引用によりその全体が本明細書に取り込まれる。
【0003】
先行技術の説明
本明細書を通じて、さまざまな参考文献が括弧つきで参照される。これらの刊行物の開示内容は、本発明が関係する先行技術水準をより完全に説明するために、引用により本明細書に取り込まれる。これらの参考文献の完全な書誌的事項は、本明細書の最後に、図面の簡単な説明の欄の前に記載される。
【0004】
分子識別および抽出の原理に基づく高度に選択的な化学的センサーは、非常に重要で、よく理解されたクラスのセンサーである(1(非特許文献1)、2(非特許文献2))。特に、イオン選択電極(ISEs)およびオプトード(optode)は、臨床検査室で広範に使用され(3(非特許文献3))、多数の他の用途への使用が試みられている。
【非特許文献1】Buehlmann, P.; Pretsch, E.; Bakker, E. Chem. Rev. 1998, 98, 1593.
【非特許文献2】Bakker, E.; Buehlmann, P.; Pretsch, E. Chem. Rev. 1997,97, 3083.
【非特許文献3】Collison, M. E.; Meyerhoff, M. E. Anal. Chem. 1990,62, A425.
【0005】
従来は、これらのセンサーは、親油性のイオン交換体に加えて1種類または2種類以上のイオノフォアでドープされた、疎水性の可塑化されたポリマー膜に基づくものである。これらの構成要素のそれぞれは、前記センサーの応答に重要な役割を果たしている(2、4(非特許文献4))。前記ポリマーの疎水性は、試料からの自然発生的かつ非特異的な電解質の抽出が抑制されることを担保する。同時に、前記膜マトリックスは、前記フィルム内の全ての活性を有する検知構成要素に対して粘度の低い溶媒として作用しなければならない。それぞれのイオノフォアは親油性の錯化剤として作用し、前記イオン交換体は、電気中性を満たすために、前記試料から前記膜へと前記被検体イオンを抽出する原因になる。
【非特許文献4】Morf, W. E. The Principles of Ion-Selective Electrodes and of Membrane Traasport ; Elsevier: New York, 1981.
【0006】
多くの意味で、これらのISEsの基本的な組成および機能は、全ての構成要素が有機溶媒中に単に溶けていた、初期の液体膜電極のものをいまだに真似ている。しかし、現代のイオンセンサーは、劇的な小型化に向かっており、これらのセンサーは、無希釈の全血のような、比較的親油性の試料環境と接触することがしばしばある。微小電極が、長い間、細胞内イオン組成を探知するために用いられてきており、化学的プロファイリングおよび化学的顕微鏡用に用いられている(5(非特許文献5))。今日では、さまざまな組成を有するミクロスフェア・オプトードが、生物学的および臨床的試料の測定を考慮して開発されている(6(非特許文献6))。直径数百ナノメートルの光学的検知用スフェアが細胞内イオン測定用に現在試みられている(7(非特許文献7))。これらの重要な用途は、センサーの相互混入および活性成分のセンサー膜からの浸出が低減するか、除去されることを想定する。
【非特許文献5】Horrocks, B. R.; Mirkin, M. V.; Pierce, D. T.; Bard, A. J.; Nagy, G.; Toth, K. Anal. Chem. 1993, 65, 1213.
【非特許文献6】Tsagkatakis, I.; Peper, S.; Bakker, E. Anal. Chem. 2001,73, 6083.
【非特許文献7】Brasuel, M.; Kopelman, R.; Miller, T. J.; Tjalkens, R.; Philbert, M. A. Anal. Chem. 2001,73, 2221.
【0007】
初期の研究は、これらのセンサーの寿命を改善するために全ての検知成分の親油性を向上させることに焦点が絞られていた。イオノフォアおよび可塑剤はポリマー膜相に可溶性でなければならないから、イオノフォアおよび可塑剤をより親油性にするために長鎖アルキル基を有するイオノフォアおよび可塑剤を合成することには実用的な限界がある(8(非特許文献8))。保持が不十分であるという問題に対する解決策の1つは、全ての活性のある検知成分をポリマー骨格上に共有結合で付着させることである。何年間も、異なる材料を利用する可塑剤フリーのイオン選択性膜が評価されてきた。適当なマトリックスは、ポリウレタン(9(非特許文献9))、ポリシロキサン(10(非特許文献10)、11(非特許文献11))、シリコーンゴム(12(非特許文献12)、13(非特許文献13))、ポリチオフェン(polythiophene、14(非特許文献14))、ポリアクリレート(15(非特許文献15))、エポキシアクリレート(16(非特許文献16))、ゾル−ゲル(17(非特許文献17)、18(非特許文献18))、メタクリル−アクリルコポリマー(19−22(非特許文献19−22))およびメタクリレートコポリマー(23(非特許文献23)、24(非特許文献24))を含む。これらの間で、フリーラジカルで開始されるメカニズムを通じて合成される、メタクリル−アクリルコポリマーおよびメタクリレートコポリマーが魅力的であるが、その理由は、異なる物理的機械的特性を有するポリマーを作成するために、さまざまなモノマーの組み合わせおよび多数の重合法が利用可能だからである。報告された可塑剤フリーのコポリマーのうち、メチルメタクリレートおよびデシル・メタクリレートのコポリマー(MMA−DMA)がPeperら(特許文献1)によって有望なマトリックスとして研究されてきており、Li、Na、K、Ca2+およびMg2+に対するISE(23)およびオプトード(25(非特許文献25))の機能を有することが報告されている。
【特許文献1】米国特許出願第2003/0217920号明細書
【非特許文献8】Gehrig, P.; Rusterholz, B.; Simon, W. Anal. Chim. Acta 1990,233, 295.
【非特許文献9】Yun, S. Y.; Hong, Y. K.; Oh, B. K.; Cha, G. S.; Nam, H.; Lee, S. B.; Jin, J.-I. Anal. Chem. 1997, 69, 868.
【非特許文献10】Reinhoudt, D. N.; Engbersen, J. F. J.; Brzozka, Z. Anal. Chem. 1994, 66, 3618.
【非特許文献11】Hogg, G.; Lutze, O. ; Cammann, K. Anal. Chim. Acta 1996, 335, 103.
【非特許文献12】Poplawski, M. E.; Brown, R. B.; Rho, K L.; Yun, S. Y.; Lee, H. J.; Cha, G. S.; Paeng, K.-J. Anal. Chim. Acta 1997, 355, 249.
【非特許文献13】Yoon, I. J.; Lee, D. K.; Nam, H.; Cha, G. S.; Strong, T. D.; Brown, R. B. J. Electroanal. Chem. 1999, 464, 135.
【非特許文献14】Bobacka, J.; Ivaska, A.; Lewenstam, A. Anal. Chim. Acta 1999, 385, 195.
【非特許文献15】Peper, S.; Tsagkatakis, I.; Bakker, E. Anal. Chim. Acta 2001, 442, 25.
【非特許文献16】Dimitrakopoulos, T.; Farrell, J. R.; Iles, P. J. Electroanalysis 1996, 8, 391.
【非特許文献17】Kimura, K.; Sunagawa, T.; Yajima, S.; Miyake, S.; Yokoyama, M. Anal. Chem. 1998, 70,4309.
【非特許文献18】Kimura, K.; Yajima, S.; Takase, H.; Yokoyama, M.; Sakurai, Y. Anal. Chem. 2001, 73,1605.
【非特許文献19】Heng, L. Y.; Hall, E. A. H. Anal. Chem. 2000,72, 42.
【非特許文献20】Heng, L. Y.; Hall, E. A. H. Electroanalysis 2000, 12, 178.
【非特許文献21】Malinowska, E.; Gawart, L.; Parzuchowski, P.; Rokicki, G.; Brzozka, Z. Anal. Chim. Acta 2000, 421, 93.
【非特許文献22】Mohr, G. J.; Tirelli, N.; Spichiger-Keller, U. E. Anal. Chem. 1999, 71, 1534.
【非特許文献23】Qin, Y.; Peper, S.; Bakker, E. Electroanalysis 2002, 13, 1375.
【非特許文献24】Qin, Y.; Peper, S.; Radu, A.; Bakker, E. Anal. Chem. 2003, 75, 3038.
【非特許文献25】Peper, S.; Ceresa, A.; Qin, Y.; Bakker, E. Anal. Chim. Acta 2003, 500, in press.
【0008】
イオノフォアを共有結合で付着することに向けての初期の研究は、官能基修飾されたポリ(塩化ビニル)(26(非特許文献26)、27(非特許文献27))を利用したが、これは可塑剤なしでは使うことができなかった。その後の研究では、Na2+、KおよびPb2+選択性イオノフォアが共有結合でポリシロキサンマトリックスにグラフトされて、CHEMFETセンサーの作成に応用された(10、28(非特許文献28))。ゾル−ゲル法によるイオノフォアグラフト化における別の注目に値する方向は、キムラによって導入され、血清測定で実証された(17、18)。最近、Pretschと共同研究者たちによって、膜を通過するイオン流束を低減することを考慮して、ポリウレタン膜マトリックスに中性イオノフォアが共有結合で付着された(29(非特許文献29))。他の最近の報告では、4’−アクリロイルアミドベンゾ−15−クラウン−5(AAB15C5)および4’−アクリロイルアミドベンゾ−18−クラウン−6(AAB18C6)という、2種類の親水性クラウンエーテル型カリウム選択性イオノフォア(20)と、4−tertブチル・カリックス[4]アレン(arene)四酢酸テトラエチルエステル(21)というナトリウム選択性イオノフォアと、N,N’−ジシクロヘキシル−N’−フェニル−N’−3−(2−プロペノイル)オキシフェニル−3−オキサペンタンジアミド(AU−1、図1を参照せよ。)という新規カルシウムイオノフォア(24)とが、簡単なワン・ステップ溶液重合法によって、他のアクリレートモノマーと共重合された。この手順の単純さは、上記の大抵の他の方法と比べた重要な長所である。グラフト化イオノフォアを含むこれらのポリマーは、遊離した、すなわち、未結合のイオノフォアが存在するISEsと比較すると、選択性は匹敵し、寿命は向上していることが示された。したがって、共有結合で付着したイオノフォアを含む可塑剤フリーのポリマーを得るための多数の有望なアプローチが利用可能である。
【非特許文献26】Daunert, S.; Bachas, L. G. Anal. Chem. 1990, 62, 1428.
【非特許文献27】Rosatzin, T.; Holy, P.; Seiler, K.; Rusterholz, B. ; Simon, W. Anal. Chem. 1992, 64, 2029.
【非特許文献28】Lugtenberg, R. J. W.; Egberink, R. J. M.; Berg, A. v. d.; Engbersen, J. F. J.; Reinhoudt, D. N. J. Electroanal. Chem. 1998, 452, 69.
【非特許文献29】Puentener, M.; Fibbioli, M.; Bakker, E.; Pretsch, E. Electroanalysis 2002, 14, 1329.
【0009】
イオノフォアのグラフト化とは異なり、イオン交換体の共有結合による付着はあまり試みられてこなかった。Reinhoudtはテトラフェニルホウ酸アニオン(TPB)の共有結合による付着について報告し(28)、キムラも、ゾル−ゲルマトリックス内に、カチオン交換体(TPB)を付着すること(17)、および、アニオン交換体である塩化(テトラデシルジメチル(3−トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムを付着すること(18)に成功した。残念ながら、未置換のテトラフェニルホウ酸は酸による加水分解、酸化剤および光によって非常に分解しやすいことが知られている(30−32(非特許文献30−32))。水溶液中のppbレベルの水銀イオンは、可塑化されたPVC膜中のテトラフェニルホウ酸ナトリウムおよびテトラキス−(4−クロロフェニル)ホウ酸カリウムの迅速な分解を彦起こすことができることも報告された(33(非特許文献33))。したがって、単純なテトラフェニルホウ酸の共有結合による付着は、これらの固有の問題を解決できない可能性がある。テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸・ナトリウム(NaTFPB)のような、高度に置換された誘導体は安定性がもっと改善されるが、ホウ酸は酸性条件下ではプロトン化された後、加水分解される場合がある(32)。連続した水流に長時間曝露された後で、イオン選択性膜の選択性および応答曲線の低下が観察され、これはホウ酸アニオンのゆっくりした分解によって起こる、イオノフォアとイオン交換体(NaTFPB)との比の変化で説明された。さらに、高度に置換されたホウ酸アニオン、特に、非対称な類似体の調製は非常に困難で、合成的に複雑である(34(非特許文献34)、35(非特許文献35))。重合可能な誘導体の調製のような、これらの化合物のさらなる修飾は報告されたことがなかった。
【非特許文献30】Meisters, M.; Vandeberg, J. T.; Cassaretto, F. P.; Posvic, H.; Moore, C. E. Anal. Chim. Acta 1970, 49, 481.
【非特許文献31】Nishida, H.; Takada, N.; Yoshimura, M. Bull. Chem. Soc. Jpn. 1984, 57, 2600.
【非特許文献32】Rosatzin, T.; Bakker, E.; Suzuki, K.; Simon, W. Anal. Chim. Acta 1993, 280, 197.
【非特許文献33】Murkovic, I.; Wolfbeis, O. S. Seras. Actuators B 1997, 38-39, 246.
【非特許文献34】Bahr, S. R.; Boudjouk, P. J. Org. Chem. 1992, 57, 5545.
【非特許文献35】Fujiki, K.; Kashiwagi, M.; Miyamoto, H.; Sonoda, A. J. Fluorine Chem. 1992, 57, 307.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
カルボランは、イオン選択性センサーにおける代替的なカチオン交換体として使用可能であることが最近示された(36−38)。カルボランは、図1に示されるとおり、極度に安定なホウ素クラスターの枠組みに基づく弱い配位アニオン(CB1112)の比較的新しいクラスである。カルボランは、ホウ素−頂点および炭素頂点の両方が化学的に修飾されるため、多用途の官能基修飾化学特性を有する(39、40)。元のcloso−ドデカカルボラン(CB1112)のB−H結合は少しヒドリド的(hydridic)で、ハロゲン化のような求電子置換に適する。
【0011】
ホウ素原子で塩化、臭化およびヨウ化したカルボラン・アニオンは、固相合成によって調製された(36、37)。最近、ハロゲン化ドデカカルボランが、親油性および化学的安定性の点で改善されたカチオン交換体であることがわかった。これらのホウ素誘導体は、水溶性の未置換の親のカルボラン・アニオンと比較してはるかに親油性が高く、非常に有望な前記テトラフェニルホウ酸の代替物であることが示された(36)。これに対し、前記カルボラン・アニオンのC−H結合はやや酸性である。CB1112のCのリチウム挿入反応と、その後のアルキル化、シリル化またはホスフィン化ハリドとの処理とが、異なる炭素誘導体につながる(40)。かかるカルボラン・アニオンは、化学的および電気化学的に非常に不活性であり、紫外−可視領域での吸光を示さない。これらの化合物は、弱い配位およびイオン対形成特性を有するが、これらはイオン検知の用途には魅力的である。さらに、ホウ素頂点および炭素頂点の両方とも、化学的に修飾することが非常に容易にできる(39、40)。しかし、商業的に入手可能なカルボランセシウム(CsCB1112)は水溶性であって、親油性が低いことがイオン交換体としての用途を限定する。したがって、我々の研究室では、より親油性のある多数のB−ハロゲン化カルボラン・アニオンが最近合成され、多くは、入手可能な最高のテトラフェニルホウ酸である、テトラキス[3,5−(トリフルオロメチル)]フェニルホウ酸(TFPB)と比較して、ほぼ同等のイオン交換特性と、より向上した保持特性とを示した。
【0012】
比肩しうるものがない可能性がある親油性に加えて、前記カルボランは、電気化学的用途に適する多くの他の特性を有する。例えば、前記カルボランは、酸および塩基の加水分解を受けにくく、電気化学的酸化に対して比較的不活性(ジクロロメタン中のPtでのフェロセン/フェロセニウムに対して約2.0V)である(67)。I対称性が高いこと、および、σ−結合が接線方向に非局在化していることが、カルボランを化学における最も化学的に安定なクラスの化合物の1つにする。さらに、カルボランのサイズが大きい(直径がほぼ1nm)であること、および、荷電が十分に非局在化していることは、十分なイオン交換のために課される基準を満たす。バルクのオプトードの研究にとっては重要な別の利点は、紫外−可視スペクトルでの吸光がないことである。したがって、化学センサーに用いられるべきよりロバスト(robust)なイオン交換体を開発するために、カルボランをもっと研究することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の概要
本発明は、イオン選択性電極およびオプトードに用いるための、疎水性ポリマーマトリックス上に共有結合で付着した新規の重合可能なカルボラン誘導体を提供する。より具体的には、本発明の1つの面は、メタクリレートモノマーと新規の重合可能なドデカカルボラン・アニオン誘導体とのコポリマーが「グラフトポリマー」という、グラフト化イオン交換体を含むポリマーを調製するために適当なマトリックスである、という発見に基づく。本発明のグラフトポリマーは、試料中の標的イオンを検出するためのISEsおよびオプトードのようなセンサーを調製するために使用可能である。
【0014】
1つの実施態様では、試料中の標的イオンを検出するためのイオン検出センサーは、(i)メタクリレートモノマーの重合したユニットと、closo−ドデカカルボラン・アニオンの官能基修飾されたC−誘導体を含むイオン交換体とを含むコポリマーマトリックスと、(ii)前記標的イオンを検出するためのイオノフォアとを含み、前記官能基修飾されたイオン交換体は共有結合で前記コポリマー上にグラフトされ、前記メタクリレートモノマーはペンダントアルキル基のRおよびRを有し、RはC1−3アルキル基のいずれかであって、RはC4−12アルキル基のいずれかである。
【0015】
好ましくは、前記メタクリレートモノマーは、異なるペンダントアルキル基のRおよびRを含み、、RはC1−3アルキル基のいずれかであって、RはC4−12アルキル基のいずれかである。1つの実施態様では、可塑剤フリーコポリマーは、ポリ(塩化ビニル)および可塑剤とブレンドされる。代替的には、前記ポリマーは、メタクリレートモノマーに加えて、アクリレートモノマーのようなモノマーユニットを含む。
【0016】
本発明は、化学的に安定なカチオン交換体としての使用に適する重合可能な官能基を有するcloso−ドデカカルボラン・アニオン(CB1112)の新規なC−誘導体を提供する。したがって、本発明は、以下の化学式(I)の構造を有する、ドデカカルボランの新規な重合可能な誘導体を提供する。
【0017】
【化1】

(I)
【0018】
ここで、Rは、2重結合を含む置換基である。1つの実施態様では、Rは、(C=O)CH=CHである。
【0019】
この新規誘導体は、カチオン交換特性を有する可塑剤フリーのポリマーを調製するために、メタクリレートモノマーと共重合される場合がある。共有結合によるグラフト剤(grafter)ドデカカルボラン誘導体を含む、得られたコポリマーは、透明かつ均一で、イオノフォアをドープすることができる、溶液キャストフィルムを提供するために、従来の可塑化されたポリ(塩化ビニル)または架橋されないメタクリル酸ポリマーと都合よくブレンドされる場合がある。
【0020】
1つの実施態様では、前記イオノフォアは官能基修飾されたイオノフォアである。1つの実施態様によれば、前記官能基修飾されたイオノフォアの少なくとも一部は共有結合によって前記コポリマーにグラフトされる。官能基修飾されたイオノフォアの例は、重合可能な原子団を含む、3−オキサペンタンジアミンド(oxapentandiaminde)型カルシウムイオノフォアと、親水性クラウンエーテル型イオノフォアとを含む。別の実施態様では、前記官能基修飾されたイオノフォアは、以下の化学式IIを有し、Rは、アクリル酸基のような重合可能な原子団である、3−オキサペンタンジアミンド誘導体である。
【0021】
【化2】

(II)
【0022】
本発明のコポリマーマトリックスは、膜状または粒子状の形態の場合がある。
【0023】
本発明のイオン検出センサーは、指示薬イオノフォアも含む場合がある。
【0024】
別の実施態様では、本発明は、2価イオンに選択的な最初の可塑剤フリーイオン選択性膜を提供するが、前記イオノフォアおよびイオン交換体の両方が前記ポリマーに共有結合で付着して、浸出可能な構成成分が全くない、全部がポリマー製の検知マトリックスを形成する。
【0025】
本発明は、コポリマーマトリックスを調製する方法であって、
(a)(i)ペンダントアルキル基のRおよびRを有し、RはC1−3アルキル基のいずれかで、RはC4−12のアルキル基のいずれかである、メタクリレートモノマーと、
(ii)重合可能な官能基を有するcloso−ドデカカルボラン・アニオンの官能基修飾されたC−誘導体を含むイオン交換体と、
(iii)前記標的イオンに対して選択的なイオノフォアと、
(iv)架橋モノマーと、
(v)重合開始剤との組み合わせを混合すること、および
(b)前記メタクリレートモノマーと前記官能基修飾されたcloso−ドデカカルボラン・アニオンとが共重合することを可能にする条件下で、前記組み合わせを処理することを含む、コポリマーマトリックスを調製する方法を提供する。
【0026】
本発明のセンサーは、担体を利用するイオン選択電極(ISEs)か、薄いフィルム状のイオン特異的オプトード、粒子利用オプトードまたはバルクのオプトードのようなオプトードかの場合がある。イオン特異的オプトードは、光ファイバーの先端に固定された検知フィルム、自己参照(self−referencing)ミクロスフェアおよびナノスケールの細胞内プローブのような、微小化された検知用プラットホームを含む。
【0027】
本発明の追加の特徴および利点は、部分的には以下の説明で示され、部分的には以下の明細書を検討するとき当業者に自明となるであろう、あるいは、本発明の実施によって学習される場合がある。本発明の利点および新規な特徴は、添付する請求の範囲において特に指摘される手段、組み合わせおよび方法によって実現され、達成される場合がある。
【0028】
発明の詳細な説明
本発明の1つの面は、メタクリレートモノマーと前記官能基修飾されたドデカカルボラン・アニオン誘導体とのコポリマーが、「グラフトポリマー」という、グラフト化されたイオン交換体を含むポリマーを調製するために適したマトリックスであるという発見に基づく。本発明のグラフトポリマーは、試料中の標的イオンを検出するためのISEsおよびオプトードのようなセンサーを調製するために用いられる場合がある。
【0029】
1つの実施態様では、試料中の標的イオンを検出するためのイオン検出センサーは、(i)メタクリレートモノマーと、closo−ドデカカルボラン・アニオンの官能基修飾されたC−誘導体を含むイオン交換体とを含むコポリマーマトリックスと、(ii)前記標的イオンを検出するためのイオノフォアとを含み、前記官能基修飾されたイオン交換体は共有結合で前記コポリマー上にグラフトされ、前記メタクリレートモノマーは、ペンダントアルキル基のRおよびRを有し、RはC1−3のアルキル基のいずれかであり、RはC4−12のアルキル基のいずれかである。前記コポリマーは、ポリマー鎖内にランダムに分布するように固定化されたイオン交換体を含む場合がある。
【0030】
本発明は、化学的に安定なカチオン交換体として重合可能な官能基を有する前記closo−ドデカカルボラン・アニオン(CB1112)の新規なC−誘導体を提供する。「closo−ドデカカルボラン」という用語は、11個のホウ素原子と1個の炭素原子とでできた閉じたカルボランのケージを指す。より具体的には、本発明は、以下の化学式(I)の構造を有するドデカカルボランの重合可能な新規誘導体であって、R4が重合可能な原子団である、新規誘導体を提供する。
【0031】
【化3】

(I)
【0032】
「重合可能なイオン交換体」、「官能基修飾されたイオン交換体」および「官能基修飾されたドデカカルボラン」という用語は、交換可能に使用され、重合可能な反応性官能基を有するイオン交換体を指し、前記反応性官能基は前記イオン交換体がコポリマーに共有結合で結合されることを可能にする。かかる官能基の例は、アクリル基およびメタクリル基のような炭素−炭素間2重結合と、炭素−炭素間3重結合と、カルボニル基とを含むが、これらに限定されない。前記官能基は、前記イオン交換体が、共有結合を形成して、前記イオン交換体が前記コポリマー上に共有結合でグラフトされるように、炭素−炭素間2重結合のような前記コポリマーの官能基と反応することを可能にするために必要である。1つの実施態様では、前記イオン交換体は、トリメチルアンモニウム2−カルボラン・エチルアクリレート(TMCA)で、R4は−(C=O)CH=CHである。
【0033】
共有結合でグラフトされた本発明の新規イオン交換体を含むメタクリレートモノマーのコポリマーは、可塑剤フリーのイオン選択性膜電極およびバルクのオプトードフィルムの製造に適した機械特性を示す。さらに、前記センサーは中性pHでのイオンの生理学的評価に適していることがわかった。例えば、ISEセンサーがMMA−DMA−TMCAを含むグラフトコポリマー、グラフトコポリマー(すなわち、MMA−DMAコポリマーマトリックス内に共有結合でグラフトされたTMCA)で調製されたとき、センサーは遊離のTMCAを含むMMA−DMAコポリマーに対して優秀な応答時間(すなわち5分間未満)を示した。
【0034】
MMA−DMA−TMCAを含むセンサーは、溶液キャスティング法およびスピン・コーティング法により可塑剤フリーのイオン選択性膜電極およびバルクオプトードフィルムを製造するのに適した機械特性を示す。
【0035】
さらに、本発明のコポリマーは、TMCAを含む従来の可塑化ポリマーとともに、遊離の(未結合の)TMCAを含む類似のメタクリレートコポリマーに対してイオン選択性が向上した。同様に、本発明のコポリマーは、従来の可塑剤を含むポリマーに対して応答時間が向上したことを実証した。
【0036】
本発明のイオン検出センサーは、従来のセンサーと比較すると複数の利点がある。例えば、共有結合によってイオン交換体をポリマーに定着させることは、未結合のイオン交換体を含むポリマーに対して、前記イオン交換体がポリマー膜を通過して拡散することを減らし、このことはさらに前記センサーの検出限界を向上させる。
【0037】
引用により本明細書に具体的に取り込まれる米国特許出願第10/313,090号明細書に説明されるとおり、本発明のコポリマーマトリックスは、新規な官能基修飾されたドデカルボラン(dodecarborane)誘導体と、メタクリレートモノマーとのコポリマーであって、異なるペンダントアルキル基のRおよびRを有するコポリマーを含むが、ここで、RはC1−3のアルキル基のいずれかであり、RはC4−12のアルキル基のいずれかである。
【0038】
本明細書で用いられるところの用語「アルキル」は、1個ないし12個の炭素原子の飽和した直鎖または分岐鎖の1価の炭化水素ラジカルを指すが、ここで、前記アルキルラジカルは、任意的には、以下に説明する1個または2個以上の置換基で独立に置換される場合がある。アルキル基の例は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、へキシル基、イソヘキシル基等を含みが、これらに限られない。
【0039】
本発明の実施態様によると、RはC1−2のアルキル基で、RはC8−12のアルキル基であることが好ましい。1つの実施態様では、メチルメタクリレートおよびデシルメタクリレートのモノマーが本発明のメチルメタクリレート−デシルメタクリレート(MMA−DMA)コポリマーのマトリックスを形成するために用いられる。本発明のメタクリレートモノマーは、例えばPolysciences,Inc.から商業的に入手可能である。代替的には、メタクリレートモノマーは、当業者に知られた標準的な方法によって、あるいは、引用により本明細書に取り込まれる、同時係属中の米国特許出願第10/313,090号明細書に説明されるとおりの熱開始フリー・ラジカル溶液重合法によって、調製される場合がある。
【0040】
「ポリマー」および「コポリマー」という用語は、交換可能なように使われ、重合によってできた化学的な化合物または化合物の混合物で、繰り返すモノマーユニットでできており、前記ポリマーは、1つのタイプのモノマーユニットでできている場合があるか、あるいは、2種類または3種類以上の異なるモノマーユニットを含む場合がある。
【0041】
本発明のコポリマーマトリックスは、検出されるべき標的イオンに対して選択的なイオノフォアを含む。1つの実施態様では、前記イオノフォアは、重合可能な官能基を有する、官能基修飾されたイオノフォアである。この実施態様では、前記官能基修飾されたイオノフォアの少なくとも一部が、該イオノフォアをMMAおよびDMAモノマーのようなメタクリレートモノマーとともに共重合することによって、可塑剤フリーのマトリックス上に共有結合でグラフトされる場合があり、前記コポリマーは前記MMA−DMAポリマー鎖内にランダムに分布して固定化されたイオノフォアを含む場合がある。
【0042】
「共有結合でグラフトされたイオノフォア」、「共有結合で定着されたイオノフォア」および「共有結合で固定化されたイオノフォア」という用語は本明細書では交換可能なように使われて、共有結合によってポリマーに付着したイオノフォアを指す。
【0043】
「官能基修飾されたイオノフォア」という用語は、反応性のある官能基を有するイオノフォアであって、前記官能基は前記イオノフォアがコポリマーに共有結合で結合されることを可能にする、イオノフォアを指す。かかる官能基の例は、アクリル基およびメタクリル基のような炭素−炭素2重結合と、炭素−炭素3重結合と、カルボニル基とを含むが、これらに限定されない。「重合可能なイオノフォア」は、重合可能な官能基を含む、官能基修飾されたイオノフォアである。
【0044】
共有結合でグラフトされたイオノフォアを含む本発明のコポリマーは、前記イオノフォアに該イオノフォアをポリマーマトリックスに共有結合でグラフトまたは定着させることを可能にする官能基を含むことを条件に、異なる標的イオンを検出するための広範囲のイオノフォアとともに使用される場合がある。前記官能基は、共有結合を形成するべく、前記イオノフォアが、炭素−炭素2重結合のような、前記コポリマーの反応性の官能基と反応することを可能にするために必要であるが、前記共有結合によって、前記イオノフォアは前記コポリマー上に共有結合でグラフトされる。
【0045】
本発明の目的に適する官能基修飾されたイオノフォアの例は、4’−アクリロイルアミドベンゾ−15−クラウン−5および4’−アクリロイルアミドベンゾ−18−クラウン−6のような親水性クラウンエーテル型イオノフォアを含む。本明細書に説明される型の親水性クラウンエーテルは、当業者に周知で、商業的に入手可能であるか、あるいは、従来の合成技術を用いて調製される場合がある。官能基修飾されたイオノフォアが親水性クラウンエーテルのときには、前記イオノフォアは約1ないし2重量%の量が添加される。前記官能基修飾されたイオノフォアがAU−1のときには、前記イオノフォアは約1ないし5重量%の量が添加されるが、5%が好ましい。
【0046】
本発明に適する官能基修飾されたイオノフォアの他の例は、3−オキサペンタンジアミンデ型カルシウムイオン選択性イオノフォアの官能基修飾された誘導体で、以下の化学式に示す構造IIを有する誘導体を含む。
【0047】
【化4】

(II)
【0048】
上記の式でRは不飽和官能基を含む置換基である。1つの実施態様では、Rは、重合可能なアクリル基の−O(C=O)CH=CHであり、この化合物は本明細書ではAU−1とよばれ、引用により本明細書に取り込まれる、米国特許出願第2003/021,691号明細書に説明される。
【0049】
本発明の共有結合でグラフトされた新規イオン交換体を含む本発明のコポリマーは、当業者に知られた方法か、あるいは、本明細書に説明される方法かによって作られる場合がある。例えば、1つの実施態様では、前記グラフトコポリマーは、実施例2に詳細に説明されるとおり、メタクリレートモノマーと、官能基修飾されたイオン交換体との混合物を熱で開始されたフリー・ラジカル溶液重合法によって調製される。前記溶液はさらにイオノフォアを含むが、該イオノフォアは官能基修飾されたイオノフォアの場合がある。
【0050】
代替的には、当業者に知られた他の方法が前記交換体を前記マトリックスに共有結合でグラフトするために用いられる場合がある。例えば、ゾル−ゲル法が前記グラフトコポリマーを調製するために用いられる場合がある。別のアプローチは、前記イオン交換体を既存のポリマー上に活性部位を用いて直接グラフトすることを伴う。さらに別のアプローチは、2種類の異なるポリマーであって、その一方が前記グラフトコポリマーを含むポリマーを一緒にブレンドすることを伴う。代替的には、メタクリレートモノマーと、本発明の官能基修飾されたイオン交換体とを含む溶液が、重合と、前記官能基修飾されたイオン交換体の前記メタクリレートコポリマー上への共有結合による付着とを起こさせるために、電子ビームで照射される場合もある。
【0051】
最適な機械強度のために望ましいガラス転移温度Tを有するコポリマーを製造するのに必要なそれぞれのモノマーサブユニットの量は、Foxの等式を用いて計算される場合がある。Tは、この目的のための標準的な装置である、示差走査熱量計を用いて実験的に決定されるのが典型的である。非常に低いT値を有するポリマーは非常に柔らかくて、機械的に取り扱いが困難であるのが普通である。本発明の官能基修飾されたイオン交換体の十分な量が、イオン選択性および応答時間のような、前記コポリマーの所望の特性の望ましい改良を得るために、前記コポリマーと組み合わされる。かかる特性は、周知の試験法によって定量的に測定される場合がある。
【0052】
もちろん、かかる特性の有意な増強を起こすのに必要な官能基修飾されたイオン交換体の正確な最小量は、用いられる構成成分の化学組成、構造および分離量と、達成されるグラフト反応の程度とに応じて変化するであろう。しかし、一般には、コポリマーの100重量部あたり少なくとも1重量部の官能基修飾されたイオン交換体を用いることが有利であろう。
【0053】
前記ポリマー組成物の成分の少なくとも部分的なグラフト化を達成するために必要な条件は、個々の成分の反応性に応じて異なる。例えば、前記イオン交換体および/またはイオノフォアが、(イオン交換体TMCAおよびイオノフォアAU−1の場合に)コポリマーのメタクリレートモノマーユニットと反応することができるアクリル基を含むとき、グラフト条件は、ベンゼンのような有機溶媒中で熱または光で開始される共重合を含む。例えば、TMCAがMMA−DMA上にグラフトされたとき、前記MMAおよびDMAモノマーと重合したTMCAの量が測定され、約61%であった。
【0054】
1つの実施態様では、本発明のグラフトコポリマーは、特性または性能が向上したブレンドを得るために、他のポリマーとブレンドされ、添加され、あるいは、併用される場合がある。例えばポリマー組成物は、ポリ(塩化ビニル)および可塑剤とブレンドされるとき、グラフトポリマーの応答時間を増加させるという有益な効果がある。グラフトポリマー組成物に対するPVC−可塑剤の相対比は望みどおりに変動できるが、重量比で約90:10から80:20までであることが好ましい。
【0055】
本発明のグラフトポリマーは、担体利用イオン選択性電極(ISEs)と、薄いフィルム状のイオン特異的オプトードと、粒子利用オプトードおよびバルクのオプトードと、超微小化イオン特異的プローブおよびナノスケール細胞内プローブと、低検出限界センサーとを含むが、これらに限定されない、さまざまなセンサー用の可塑剤フリーのイオン選択性の膜または粒子を製造するために用いられる場合がある。超微小化イオン特異的プローブの例は、光ファイバーの先端に固定化された検知フィルムと、自己参照ミクロスフェアとである。例えば、本発明のグラフトポリマーは、本明細書の実施例2の方法その他の当業者に知られた方法によってISEのポリマー膜を製造するために用いられる場合がある。本発明のポリマーは、当業者に知られた方法によって、薄いフィルム状のイオン特異的オプトードに用いられる薄いフィルムを製造したり、粒子利用オプトードに用いられるミクロスフェアを製造するために使用される場合もある。前記電極およびオプトードは、例えば、溶液キャスティング法およびスピンコーティング法によって調製される場合がある。
【0056】
本発明のイオン検出センサーがオプトードの形態のときには、前記センサーは指示薬イオノフォアも含む。指示薬イオノフォアの例は、pH指示クロモイオノフォア、クロモイオノフォア、フルオロイオノフォア、pH指示薬またはpH指示フルオロイオノフォアを含むが、これらに限定されない。
【0057】
本発明のイオン検出センサーは、全てのタイプの体液試料のイオンを検出するのに用いられる場合がある。前記試料の例は、全血、脊髄液、血清、尿、唾液、精液、涙等を含むが、これらに限定されない。前記液体試料は、無希釈(neat)で、あるいは、バッファーでの希釈または処理の後で、アッセイされる場合がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
試薬
塩化トリメチルアンモニウム、ブチルリチウム、2−ヨウ化エタノール、塩化ブチルジメチルシリル(TBSCl)、イミダゾール、塩化アクリロイルおよびトリエチルアミンは、アルドリッチ(ウィスコンシン州、ミルウォーキー)の最高品質のものであった。カルボランセシウムはStrem Chemicals(マサチューセッツ州、Newburyport)から購入された。N,N−ジシクロヘキシル−N’−フェニル−N’−3−(2−プロペノイル)オキシフェニル−3−オキサペンタンジアミド(AU−1)は報告のとおり合成された(24)。合成に用いられた全ての溶媒は、Fisher Scientific社(ペンシルバニア州、ピッツバーグ)から入手し、使用前に脱水処理された。
【0059】
モノマーの99.5%メチルメタクリレートと、99%n−デシルメタクリレートとは、Polysciences、Inc社(ペンシルバニア州、Warrington)から入手された。重合開始剤の98%2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)はアルドリッチ社から入手された。ベンゼン、ジクロロメタンおよび1,4−ジオキサンは試薬グレードで、Fisherから入手された。ベンゼンおよびジクロロメタンは、水素化カルシウムとともに4時間還流した後、分留により精製された。阻害剤は、5%(w/v)NaOHおよび20%NaClを含む苛性溶液および水と1:5の比(モノマー:苛性溶液)で洗浄することによりモノマーから除去された。有機相が分離され、無水NaSOで脱水された。この精製工程は、既に報告された(23)。AIBNは、使用前に、温めたメタノールから再結晶化された。4−tert−ブチルカリックス[4]アレン四酢酸テトラエチルエステル(Na−イオノフォアX)、9−(ジエチルアミノ)−5−オクタデカノイルイミノ−5H−ベンゾ[a]フェノキサジン(クロモイオノフォアI、ETH5294)、テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸ナトリウム(NaTFPB)、シアノアクア−コビリン酸ヘプタキス(2−フェニルエチル・エステル)(亜硝酸イオノフォアI)、o−ニトロフェニルオクチルエーテル(NPOE)、ビス(2−エチルヘキシル)セバシン酸(DOS)、高分子量ポリ(塩化ビニル)、テトラヒドロフラン(THF)および全ての塩は、フルカ(ウィスコンシン州、ミルウォーキー)からSelectophoreまたはpurissグレードの品質のものが購入された。トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)はアルドリッチからのACSグレードのものであった。ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウムの塩化物はフルカのpurissグレードのものであった。水溶液は、適当な塩類をNanopureで精製した水(18Mオームcm)中に溶解して調製された。
【0060】
本発明は、以下の非限定的な実施例によって例示される。全ての科学技術用語は、当業者によって理解されるとおりの意味を有する。以下の特定の実施例は、本発明の組成物が調製される方法を例示するが、本発明の範囲を限定するものと解されるべきではない。前記方法は、本発明に係る組成物を製造するために変更を施される場合があるが、具体的に開示されない。さらに、少し異なるやり方で同一の組成物を製造する方法の変更は、当業者に明かであるだろう。
【実施例1】
【0061】
2−カルボラン・エチルアクリレート・トリメチルアンモニウム(TMCA)の合成
I(CHOTBSの調製(1)
20mLの無水ジクロロメタン中の2−ヨウ化エタノール(3g、17ミリモル)と、イミダゾール(1.74g、25ミリモル)との溶液に、TBSCl(2.82g、18.7ミリモル)が添加された。混合液は室温で終夜(12時間)攪拌された。この反応混合液は水(2x10mL)および塩水(brine、10mL)で洗浄され、NaSOで脱水処理された。溶媒を除去して、精製物I(CHOTBS(1)が得られた(5.6g、収率98%、分子量286.02)。
【0062】
[MeNH][TBSO(CH2)−CB1111]の調製(2):
n−ブチルリチウム(5.5ミリモル)が、15mLの無水THF中の[MeNH][closo−CB11l2](0.2g、1ミリモル)の溶液に窒素雰囲気で0°Cで添加された。前記混合液は室温に戻され、1時間攪拌された。3mL THF中の化合物1(0.372g、1.3ミリモル)が5分間かけて1滴ずつ添加された。反応液が室温で15時間攪拌された後、溶媒が除去された。10mLの水に入ったMeNHCl(6ミリモル)が上記の残渣に添加された。薄黄色の固形物が形成された。ろ過によって主に所望の生成物が得られた。さらなる精製は、カラムクロマトグラフィー(CHCl:CHCN=4:1)によって行われ、白色の固形物[MeNH][TBSO(CH−CBllll](2)が得られた(0.25g、収率50%、分子量:361.26)。H NMR:デルタ(250MHz;CDCl)4.28(m、2H)、3.77(m、2H)、3.44(s、9H)、2.60−0.60(m、11H)、0.91(s、9H)、0.15(s、6H);13C NMR :デルタ(62.9MHz;CDCl)68.8、58.3、54.8、51.7、26.3、18.6,−5.5。
【0063】
[MeNH][HO(CH−CB1111]の調製(3):
化合物2(0.15g、0.40ミリモル)が5mL THF中に溶解され、1N HClが5mL添加された。この反応液は室温で4時間攪拌された。溶媒が除去され、白色の固形物が水溶液から沈殿された。ろ過によって、生成物3が得られた(0.10g、収率90%、分子量194.33)。H NMR:デルタ(250MHz;CDCl)4.22(br、1H)、4.17(m、2H)、3.73(m、2H)、3.44(s、9H)、2.62−0.58(m、11H);13C NMR:デルタ(62.9 MHz;CDCl)68.5、56.5、54.4、51.2。
【0064】
[MeNH][CHCHCOO(CH−CB1111](TMCA)の調製(4)
上記の固形物は0°Cで10mLのTHF中に溶解された。EtN(0.66ミリモル)が添加された。この溶液に、2mL THF中の塩化アクロイル(0.50ミリモル)が注射器によって1滴ずつ添加された。この反応液が同じ温度で0.5時間攪拌された後、1時間かけて室温まで加温された。溶媒が除去され、20mLのEtOAcが添加された。この溶液が水および塩水で洗浄され、NaSOで脱水処理された。溶媒が除去され、残渣がカラムクロマトグラフィー(CHCl:CHCN=3:1)によって精製されて、白色の固形物として最終生成物(80mg、収率50%、分子量301.25)を得た。H NMR:デルタ(250MHz;CDCl)6.58(dd、1H)、6.27(dd、1H)、5.88(dd、1H)、4.02(m、2H)、3.57(m、2H)、3.44(s、9H)、2.42−0.78(m、llH)。
【実施例2】
【0065】
ポリマー合成
全てのポリマーは、熱で開始されるフリー・ラジカル溶液重合法で合成された。使用されたメチルメタクリレートおよびn−デシル・メタクリレートの量は、既に報告されたのと同じであった(23)。グラフト化Ca2+選択的イオノフォアを含むポリマーとして、5重量%のAU−1が用いられた。グラフト化カチオン交換体を含むポリマーとして、2重量%のTMCA(50mg、66ミリモル/kg)が用いられた。計算された量のMMA(0.46g)およびDMA(1.97g)(23)が、AU−1については無水ベンゼン、TMCAについては酢酸エチルの5mLに添加された。上記溶液は10分間窒素でパージされた後、AIBNを5.1mg添加された。前記均一溶液は連続的に攪拌され、液温は90°Cまで加熱され、この温度で16時間保温された。反応が完了した後、溶媒が蒸発され、ポリマーは10mLのジオキサン中に再溶解された。ポリマー溶液の分注(2mL)が激しく攪拌しながら蒸留水10mL中に添加された。白色の沈殿物が回収され、ジクロロメタン25mL中に溶解され、水で洗浄された。有機相が分離された後、無水MgSOを用いて水が除去され、ろ過された。溶媒は蒸発され、得られた透明なポリマーが常温常圧の実験室の条件下で乾燥された。報告された方法(19、24)に従ってカルボランの対イオン(counter−cation)についてピーク強度を分析することによって、MMA−DMAポリマー中のグラフト化されたTMCAの濃度が、H NMRスペクトルから40ミリモル/kg(収率61%)と推定された。
【実施例3】
【0066】
ISE膜調製と、電位差測定
イオノフォアを含まないISE膜は、TMCAがグラフトされた10重量%のMMA−DMAポリマーを、90重量%PVCおよび可塑剤(DOSまたはNPOE)に(1:2で)溶解させて、1.5mLのTHF中に140mgの全カクテル質量を得た。
【0067】
亜硝酸選択的な膜は、10ミリモル/kgの亜硝酸イオノフォアIと、10重量%のTMCAがグラフトされたMMA−DMAポリマーと、90重量%のPVCと、NPOE(1:2)をを含み、1.5mLのTHF中に140mgの全カクテル質量を得た。
【0068】
カルシウムイオノフォアAU−1およびイオン交換体TMCAがグラフト化された可塑剤フリーの膜のために、カクテルは、1.5mLのTHF中に、35mgのMMA−DMA−AU−1と、30mgのMMA−DMA−TMCAと、75mgのMMA−DMAポリマーとを含有した。
【0069】
カクテルは、顕微鏡用ガラス製スライド上に固定されたガラスのリング(内径2.2cm)の内側に注入された。溶媒は終夜蒸発され、透明な膜が得られた。可塑剤フリーのMMA−DMA膜は水に1時間浸され、外科用メスで前記ガラス製スライドから注意深く剥離された。TMCAを含む膜は、トリメチルアンモニウムを水溶液中に抽出するために、1mMLiOH中でプレコンディショニングを行った。その後前記膜は、0.01M MgClまたは0.01M NaCl溶液中で終夜コンディショニングを行った。直径6mmのディスクが元の膜から切り出され、Pilips電極(IS−561、Glasblaserei M▲oe(ウムラウト記号付きの小文字のo)▼ller、スイス、チューリヒ)の本体にマウントされた。0.01M MgClが、イオノフォアを含まない膜と、AU−1またはTMCAがグラフトされた可塑剤フリーの膜とのバイアスのない選択性の測定用の内部充填液として用いられた(41)。0.01M NaClは亜硝酸イオノフォアIの測定用の内部充填液として用いられた。1MLiOAcの架橋電解質を用いて、A/AgCl参照電極に対して異なる試料溶液で測定された。実験結果の全ては、少なくとも3本の電極の平均と、算定された標準偏差とである。
【実施例4】
【0070】
オプトード浸出実験
浸出実験におけるオプトード用には、20ミリモル/kg Na−イオノフォア(X)と、10ミリモル/kg 遊離TMCAまたは45mg MMA−DMA−TMCAと、6ミリモル/kg ETH5294と、PVCと、DOS(1:2)とを含む、全部で300mgの膜成分が1.75mL THF中に溶解された。前記カクテルの200μL分注が注射器でスピン・コーティング装置に配設された水晶のディスク上に移された(42)。それぞれのカクテルについて、同一組成の2枚のフィルムが製造された。前記フィルムは、1時間風乾した後、フロースルー・セル内に配設された。このフロー・セルはヒューレットパッカード8452Aダイオードアレイ紫外―可視分光光度計にマウントされた。1mM TRIS−HClバッファー(pH7.46)が1.2mL/分の流速で前記セルを連続的に通過させるために用いられた。吸光スペクトルは1分間隔で300ないし800nmについて記録された。
【実施例5】
【0071】
応答時間実験
(全部で300mgの膜成分から)前記オプトードの薄いフィルムが上記の手順と同じスピン・コーティング装置によって調製された。オプトードIは、20ミリモル/kg Na−イオノフォア(X)と、10ミリモル/kg NaTFPBと、5ミリモル/kg ETH5294と、15重量%のブランクのMMA−DMAと、85重量%のPVCとDOS(1:2)とを含有した。オプトードIIは、20ミリモル/kg Na−イオノフォア(X)と、15重量%mgのMMA−DMA−TMCAと、5ミリモル/kg ETH5294と、85重量%のPVCとDOS(1:2)とを含有した。前記フィルムは、フロースルー・セルに配設され、紫外−可視光で測定された。迅速な液交換のために5mL/分の流速が用いられた。前記フロースルー・セル内の溶液を置換するのに約0.5分間必要であった。
【実施例6】
【0072】
オプトードNa応答
Na−イオノフォア(X)を利用するオプトードについては、上記と同じ手順および組成でスピン・コーティングされたフィルムが調製された。2−3mm厚の前記スピン・コーティングされたフィルムは、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウムの塩化物と、1mM TRISバッファー(pH7.46)とを含ま異なる試料溶液中で平衡化され、既に報告されたとおり蛍光分光法によって特徴付けられた(6、43)。全ての点のデータは5回の測定の平均と、算定された標準偏差とである。
【0073】
結果と考察
本発明は、新規の重合可能なC−誘導体化されたカルボラン・アニオン(TMCA)を提供するが、該アニオンは、図2に示す手順に従って合成された。ホウ素誘導体の合成と異なり、商業的に入手可能なカルボラン・セシウムは炭素原子の直接リチウム挿入に用いることはできなかったが、これは、その後の置換化学反応を阻害する、Cs[1−LiCB1112]が著しく不溶性であるためである(44)。したがって、元のCsCB1112をまずトリメチルアンモニウム塩に変換することが重要で、該トリメチルアンモニウム塩は、リチウムブチルと反応して、可溶性のC−リチウム化誘導体である1−LiCB1112が生成された。副産物のブタンおよびトリメチルアミンは蒸発によって容易に除去できた。このリチウム化誘導体をTBSClで保護された2−ヨウ化エタノールとin situで処理することにより、塩化トリメチルアンモニウムの添加によって沈殿可能なC−アルキル誘導体が提供される。酸加水分解によって保護基が除去された後、化合物3は、対イオンとしてトリメチルアンモニウムを有する重合可能なカルボラン・アニオン4(TMCA)を得るために、塩化アクリロイルと反応させられた。この新規誘導体は酢酸エチルにおける溶解度が高く、メチル・メタクリレートおよびデシル・メタクリレートと1段階溶液重合法によって酢酸エチル中で共重合できた。カルボラン・アニオンがグラフトされたポリマーは修飾されたMMA−DMAコポリマーと同様に、透明で弾性があった。他方、前記ポリマーは、ブランクのMMA−DMAよりは軟らかく粘着性があり、機械的または水力学的な圧力の下で変形する傾向が大きい。
【0074】
イオン交換体の共有結合による付着は、オプトードフィルムからの浸出実験を行うことによって確認された。薄いPVC−DOSフィルムは、Naイオノフォアと、HクロモイオノフォアのETH5294と、共有結合で付着したか、あるいは、溶解したかのいずれかの状態のカルボランイオン交換体とを含有した。前記クロモイオノフォアの紫外−可視スペクトルは、プロトン化および脱プロトン化した最大吸光をそれぞれ650nmおよび550nmで示す(45)。Na非存在下のpH7.46では、前記クロモイオノフォアはカチオン交換体(R)の存在下でプロトン化される。親油性が不十分なために前記カチオン交換体が前記フィルムから脱離すると、電気中性を満たすために、前記クロモイオノフォアから水素イオンが抽出されなければならない。この緩慢な脱プロトン化の過程は都合良く紫外−可視分光法で追跡することができる(32)。未置換のカルボランのCsCB1112をカチオン交換体とするフィルムについては、前記クロモイオノフォアは、水溶液におけるカルボラン・セシウムの溶解度が高いために、全くプロトン化できない。
【0075】
図3は、連続移動条件下における、カルボラン・アニオン誘導体のTMCAを、遊離状態か、共有結合で付着した状態かのいずれかで含む、PVC−DOSフィルムの浸出挙動の観察結果である。未置換のカルボラン・セシウムと比較すると、前記クロモイオノフォアのプロトン化が観察できることから、重合可能なカルボラン・アニオン(TMCA)は親油性が向上する。しかし、図3のトレースBに示すとおり、結局のところ未置換のカルボラン・セシウムは定量的に前記フィルムから浸出した。遊離のイオン交換体を含むPVC−DOSフィルムとの直接対比をするために、カルボラン・アニオンを有するオプトードフィルムがPVC−DOSの中に15重量%のMMA−DMA−TMCAをドープすることによって調製された。得られたフィルムは透明で均一であった。吸光度の時間変化のトレース(図3、トレースA)は、トレースBと同じ上記および流速の下で、ETH5294の吸光度は16時間安定であったことを示す。これは、前記イオン交換体が前記ポリマーのマトリックスに本当に共有結合で付着し、得られたオプトードフィルムの寿命が非常に改善されたことを確認する。
【0076】
直鎖のMMA−DMAポリマーは、エステル基が豊富で、誘電定数が比肩できることのようにいくらかDOSで可塑化された膜との類似性がある(23)。少量のMMA−DMAポリマーを過剰のPVC−DOSと混合することにより、膜および拡散特性に有意な変化を示さない、適合性のある均一な膜を作ることができる(23)。15重量%のブランクのMMA−DMAを含むPVC−DOS膜における遊離の重合可能なカルボラン誘導体(TMCA)の迅速な浸出も観察され、前記遊離カルボラン・アニオンはかかるマトリックス内に物理的に封じこめることはできないことを示した(データ示さず)。したがって、図3のトレースAは、前記イオン交換体は本当に前記ポリマーのマトリックスに共有結合で付着したことを強く示唆する。
【0077】
前記グラフト化カルボラン・アニオンの基本的なイオン交換特性をさらに研究するために、Na選択的なオプトードの応答が測定された。PVC−DOSフィルムは、ナトリウム選択的イオノフォアのETH5294と、MMA−DMA−TMCAとを含有した。カルボラン・アニオンをグラフトしたMMA−DMAポリマーは非常に軟らかいので、MMA−DMAコポリマーまたは可塑化PVCのように物理的および機械的特性が向上した他のポリマー材料とブレンドされた。しかし、たいていの場合では、完全に可塑剤フリーのメタクリレートコポリマーのオプトードフィルムは、可塑化PVCフィルムよりも遅い拡散挙動と、はるかに長い応答時間とを示した(25)。カルシウムイオノフォアが共有結合で付着した10重量%のMMA−DMAポリマーがPVCおよびDOSとブレンドされる場合には、比較的速い応答時間(15分未満)が得られたことが報告されている(24)。したがって、PVC−DOSが、共有結合で付着したカルボラン・アニオンの基本特性を評価するために、最初のモデルポリマーマトリックスおよび可塑剤として用いられた。本発明では、TMCAがグラフトされた15重量%のMMA−DMAコポリマーが85重量%のPVCおよびDOSと混合された。化学量数「n」で複合体を形成する中性のナトリウムイオノフォアLと、Hクロモイオノフォア「Ind」と、カチオン交換体「R」とを含むかかるオプトードについての検知原理は、以下の等式(1)の被検体IとHとの間のイオン交換機構に基づく(42)。
【0078】
【数1】

【0079】
有機フィルム相と、水相とは、それぞれ(org)および(aq)と表示される。等式1にしたがう平衡は、共有結合で付着したイオン交換体が化学的にアクセス可能な場合にだけ、全測定範囲で観察可能である。したがって、オプトードの応答曲線の記録に成功することは、共有結合で付着したイオン交換体が本当にイオンセンサーの用途に有用であることの証拠のはずである。ある試料中のナトリウム活性は、中性クロモイオノフォアのETH5294の蛍光発光を用いて決定される。脱プロトン化型およびプロトン型にそれぞれ対応する647および680nmのピークが、イオン交換を監視するために用いられた。ナトリウムイオンがフィルムに入ると、水素イオンが該フィルムから交換されて出て行き、クロモイオノフォアは電気中性を保存するために脱プロトン化される。そしてまた、これが蛍光特性の計測可能な変化につながる。これは、680nmでの蛍光強度の減少と、逆に、647nmの脱プロトン化発光ピークの増大とに対応する。これら2つの発光ピークの比をとることによって、応答曲線ができる場合がある。
【0080】
クロモイオノフォアのプロトン化の程度の点から応答曲線を正規化するために蛍光のレシオ測定を用いることが報告された(43、46)。非プロトン化クロモイオノフォアの実験的にアクセス可能なモル分画αと、2種類のイオン(aおよびa)のイオン活性との関数として与えられる等式1にしたがうイオン交換平衡に基づくフィルムの応答は、以下の等式2に示すとおりに記載される(42、47)。
【0081】
【数2】

【0082】
上記の等式2において、L、CおよびRは、それぞれ、イオノフォア、クロモイオノフォアおよび親油性イオン交換体の全濃度で、zは被検体の荷電数(ナトリウムについてはz=1)で、Kexchはイオン交換定数(等式1を記述するため)である。
【0083】
Naのオプトードフィルムの観察された応答曲線と、潜在的な干渉因子(K、Mg2+、Ca2+)に対する観察された選択性とが図4に示される。点のデータは実験値(n=5)の平均で、エラー・バーは標準偏差を示す(プロットの記号より小さいことがしばしばある)。実線は等式2にしたがう理論曲線を表す。Na−イオノフォア(X)、ETH5294およびMMA−DMA−TMCAについての応答曲線は、理論的に予測される応答に非常によく対応するが、これは、このカチオン交換体が共有結合で結合された状態で完全な機能が保持されることを確認する。観察されたイオン交換定数は、log Kexch=−4.8であることがわかった(48)。K、Mg2+およびCa2+に対するNaの選択係数は、1Mの溶液中で(クロモイオノフォア半分プロトン化した状態で)logkOselが−3.05、−4.84、−4.79であると決定された(47)。これに対し、イオノフォアと、クロモイオノフォアETH5294と、イオン交換体として遊離の重合可能なカルボラン誘導体(TMCA)とを含むPVC−DOSフィルムは、最適なナトリウム応答を示すことができなかった。前記フィルムは、はじめはナトリウムイオンを含まないpH7.4のバッファー中でプロトン化できたが、前記化合物の親油性が不十分なために前記イオン交換体が前記フィルムから浸出するから、次第に同じ溶液中で脱プロトン化した。同様に、両方のイオノフォアを有するがイオン交換体を全く添加されないPVC−DOSフィルムは、予想どおり、pH7.4ではプロトン化できなかった。
【0084】
図5Aおよび図5Bでは、遊離およびグラフト化されたイオン交換体を含むオプトードフィルムの応答時間が、フロースルー・セルおよび紫外−可視検出を用いて対比される。オプトードI(図5A)は、15重量%ブランクMMA−DMAおよび85重量%PVC−DOSからなるマトリックス中に、ナトリウムイオノフォアと、遊離のイオン交換体NaTFPBとを含有した。オプトードII(図5B)は、イオン交換体TMCAがグラフトされた15重量%MMA−DMAおよび85重量%PVC−DOSのマトリックス中に、同一のイオノフォアを含有した。前記クロモイオノフォアのPVCへの共有結合による付着が前記フィルムの応答を遅延させることが報告された(27)。図5Aおよび5Bに示すとおり、Na濃度が10倍増大または現象すると、オプトードI(遊離イオン交換体入り)は5分間未満の応答時間を示した。同一の条件下で、オプトードII(グラフト化イオン交換体入り)は脱プロトン化時間が約15分という長い応答時間を示した。さらなる微小化を考慮すると、これはかなり速く、イオノフォアが固定化された他のオプトードに十分匹敵する(27)。上記の結果は、脱プロトン化速度が異なることは、異なるポリマー材料が混合しているためではなく、むしろ、前記ポリマー中に活性成分が共有結合で付着したためである。さらに、前記イオン交換体の共有結合による付着は、可塑化PVCとブレンドされる場合には、センサーの応答時間を劇的に遅延させないようであった。上記のオプトード実験は、カルボラン・アニオンがグラフト化されたメタクリレートポリマーがイオン選択的センサーに適したカチオン交換体みたいであることを示唆する。
【0085】
光学的な実験に加えて、イオン選択性膜における電位差測定応答と、カルボランがグラフト化された膜の選択性とが評価された。まず、イオン交換体のみを含むイオノフォアを含まない膜の電位差が測定されたが、その理由は、イオン対効果はかかる条件下で膜選択性への影響が最も大きいからである(32)。グラフト化TMXAと、遊離のTFPB−と、遊離UBC−という3種類の異なるイオン交換体が比較された。イオン交換体として10%MMA−DMA−TMCAを有するPVC−DOS膜は視認では透明で均一なようであった。前記膜は、遊離のイオン交換体を含む可塑化PVC膜と比肩する応答時間があった。前記膜の勾配および選択性は選択性にバイアスのない測定によって決定された(表1、48)。MMA−DMA−TMCAを含むPVC−DOS膜は、測定された全てのイオンに対してネルンスト式または近ネルンスト式の勾配を示した。コポリマー膜について観察された選択性のパターンは、NaTFPBを含む全てのMMA−DMAマトリックスについて他で実証されたのと同じであった(23)。イオノフォアを含まない膜では、選択性は試料イオンの水和エンタルピーによって左右される(2)。表1に示すとおり、選択パターンは前記カチオンの親油性の増大に実際に追随した。これは、共有結合で付着したカルボラン・アニオンのイオン交換特性が、確立したNaTFPBを含むPVC−DOS膜でわかった特性と類似することを示す。
【0086】
表1
異なるカチオン交換体を含むイオノフォアを含まないPVC−DOS膜の勾配および選択係数
【0087】
【表1】

【0088】
カルボラン・アニオンがグラフト化されたMMA−DMAポリマーは、荷電単体を利用するイオン選択性膜においても試験された。原理的に荷電イオノフォアは、膜内の電気中性を維持し、機能的なセンサーにするためにイオン交換体を必要としないことが知られている(49)。しかし、前記イオノフォアと反対に荷電したイオン交換体を使用することは、複合体を形成しないイオノフォアを所定の量生成することによって、最も可能性の高い選択性を有する電極をもたらす(5)。前記グラフト化されたイオン交換体の機能をさらに実証するために、亜硝酸イオノフォアIが正に荷電したイオノフォアの例として取り上げられた(図1参照)。アニオン交換体(TDMAC1)を含むNO(I)を利用する膜は、亜硝酸選択性を失い、かわりに、該膜はホフマイスター系列にしたがう選択性を示した(50)。反対に、カチオン交換体の添加は、選択性を1対数単位を超えて向上させることができた。KTFPBの全体の比は10ないし60モル%で最適であることがわかった(50)。本発明では、添加物を含まないPVC−NPOE膜と、カルボラン・アニオンがグラフト化されたPVC−NPOE膜との電位差が測定された。これらの選択性は表2のTFPBを利用する膜の文献値と比較される。NO(I)のみを有する膜の選択性が本発明において繰り返されたが、前記文献値に近い結果であった。グラフト化TMCAをカチオン交換体として添加することによって、SO2−、OAc、Cl、NOおよびClOに対するNOの選択性がほぼ1桁向上した。選択性の値はKTFPBの最適量での実施例に非常に近かった。これらの結果は、カルボランが共有結合で付着したMMA−DMAポリマーの機能および能力を実証する。
【0089】
表2
イオン部位なしか、NaTFPBか、グラフト化されたTMCAかのいずれかを含む亜硝酸イオノフォアIを利用するPVC−NPOE膜の勾配および選択性
【0090】
【表2】

【0091】
説明したとおり、可塑化PVC膜は、特にセンサーが劇的に微小化されたときの生物学的な試料への応用を考慮すると本当は望ましくない。したがって究極の目標は、浸出しうる成分を含まない、全部ポリマー製の検知膜の製造である。この方向での研究の一部は既に報告済みである。イオノフォアおよびイオン交換体の両方が共有結合で固定化された、ポリシロキサンを利用するCHEMFETセンサー(10)と、改良型ゾル−ゲルセンサー(17)とが記載された。かかる膜は、ネルンスト式の応答と、NaおよびKに対する良好な選択性を示した。しかし、鉛イオノフォアがグラフトされたポリシロキサンを利用するかかるCHEMFETセンサーはPb2+に対して直線的な応答をせず、これは当時、Pb2+の2価の荷電は共有結合で付着したイオン交換体によって効率的に補償できないと推測されたため、Pb2+のKとの(ホウ酸の対イオン)交換が不十分なことによって説明された(28)。
【0092】
本発明は、MMA−DMA−AU−1と、MMA−DMA−TMCAと、ブランクのMMA−DMAポリマーとのブレンドを利用することにより、イオノフォアおよびイオン交換体が共有結合で付着した最初のカルシウム選択性の可塑剤フリーのイオン選択性膜を提供する。応答の勾配および選択性は表3および図6Aに示される。
【0093】
表3
遊離状態かグラフト化されたかのいずれかのカルシウムイオノフォア(AU−1)と、イオン交換体とを含む、可塑剤フリーのMMA−DMA膜の勾配および選択性
【0094】
【表3】

【0095】
全ての活性成分が共有結合でグラフトされた可塑剤フリーの全部ポリマー製の膜は、カルシウムイオンに対してはネルンスト式の応答の勾配を示すが、干渉するイオンに対してはサブ・ネルンスト式の応答を示し、これは、遊離のNaTFPBを含むMMA−DMA−AU−1膜についても観察された。その結果、両方の活性成分がグラフトされた膜の選択性は、遊離の成分を含む膜より劣るようにみえる。干渉するイオンに対するサブ・ネルンスト式の応答の勾配は、選択係数の上限だけを与える(48)。図6Bは、塩化カルシウム濃度を10−5ないし1Mの範囲内で変化させるときの前記膜についての電位差−時間のトレースを示す。前記膜は、比較的迅速な応答時間を示すが、これは、共有結合で付着した成分を含む膜の中で前記活性成分の十分な移動度が維持できることを示唆する。ネルンスト式の応答範囲内では評価しうる膜濃度変化が起こらないため、イオン選択性電極に要求される移動度は、光学的センサーに要求される移動度よりも明らかに非常に小さい(2)。前記膜のイオン移動度は前記ポリマーのガラス転移温度が低いことによって、かなり高く保たれる。したがって、かかる全部ポリマー製の膜は、真に固定された分子種ではなく、むしろ、イオン選択的電極の用途に十分な移動度が制限された浸出できない成分を含む可能性がある。
【0096】
結論
活性検知成分の共有結合によるメタクリレートポリマー内への付着が、微小化と、生物学的な試料への応用とを考慮すると、イオンセンサーの限界を向上させる有望な経路を構築する。本発明は、当業者に従来使用されている従来のテトラフェニルホウ酸誘導体の魅力的な置換物となる特性を有することが示された、重合可能なカルボランイオン交換体を提供する。カチオン交換体の共有結合による付着への初期の経路は、テトラフェニルホウ酸を利用したが、テトラフェニルホウ酸は合成が困難で、化学的に不安定になりやすい。
【0097】
本発明の新規なカルボラン誘導体の有用性を実証するために、浸出実験およびオプトード応答曲線が評価された。結果は、遊離して溶解した誘導体だけが薄いフィルム状オプトードから数時間で浸出したため、TMCAはコポリマーに共有結合で付着していたという認識を支持する。グラフト化カルボランを含むフィルムを有するイオン交換オプトードの応答機能は、完全に理論的予測に従い、確立したシステムと比肩できるくらいに迅速な応答時間を示した。これは、前記共有結合で付着したカルボランが、全く明かな問題を起こすことなく、機能を有し均一に溶解したイオン交換体として作用したことを実証した。イオン選択性は、膜内イオノフォア比存在下でのイオン対形成の過程によって最も劇的に影響を受ける。対応する電位差測定実験は、テトラフェニルホウ酸を含む膜と比較して、本発明のシステムには異常な選択性の違いがないことを示した。
【0098】
本発明の新規カルボラン誘導体は、テトラフェニルホウ酸と類似する、荷電担体を利用する膜の選択性を改善するのに有用であることが示された。これらの結果は、可塑剤も、浸出可能な成分も含まない、全部ポリマー製のカルシウム選択性膜の製造を実証する。本発明のコポリマーマトリックスの成分は、本当に固定化されるというよりも、むしろ、ガラス転移温度が低く、柔軟で、架橋がない、ポリマーのネットワークの一部である可能性がある。信頼性のある電位差測定を担保するのに十分に高いイオン移動度が見かけ上保存されている。
【0099】
本発明は、その本質的な特徴から逸脱することなく、他の具体的な形態で実施される場合がある。説明された実施態様は、全ての点で、例示的にのみ解されるべきであって、制限的に解されるべきではない。したがって本発明の範囲は、以上の説明によってではなく、添付する請求の範囲によって示される。前記請求の範囲の均等の意味および範囲に含まれる全ての変更は本発明の範囲内に該当すべきものである。
【0100】
本明細書および請求の範囲に用いられる「含む(comprise、comprising、include、includingおよびincludes)」という文言は、表明された特徴、整数、成分またはステップの存在を特定するためのものであるが、1個または2個以上の他の特徴、整数、成分、ステップまたはこれらの群の存在または追加を排除するものではない。
【0101】
文献リスト
【0102】


【0103】


【0104】


【0105】
図面の説明
上記およびその他の本発明の特徴と、該特徴を得るやり方とは、添付する図面とともに上記の説明を参照することにより、より明らかになり、最もよく理解されるであろう。これらの図面は、本発明の典型的な実施態様のみを示すので、本発明の範囲を制限するものではなく、具体性と詳細とを追加するための役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】Na−イオノフォア(X)、クロモイオノフォアETH5294、カルシウムイオノフォアAU−1、テトラフェニルホウ酸誘導体NaTFPBおよびcloso−ドデカカルボラン・アニオンの構造式。
【図2】重合可能なカルボラン・アニオンである、トリメチルアンモニウム2−カルボラン・エチルアクリレート(TMCA)の合成反応概念図。
【図3】プロトン化型の650nmでの吸光度の変化によって監視された、Na−イオノフォア(X)、ETH5294およびグラフト化カルボラン・アニオンを含むPVC−DOSオプトードフィルム(曲線A)と、遊離カルボラン・アニオンを含むPVC−DOSオプトードフィルム(曲線B)の吸光度の百分率対時間(hr)のグラフ。
【図4】pH7.46で測定された、ナトリウム(白丸)、マグネシウム、カリウムおよびカルシウムイオンに対するNa−イオノフォア(XO、MMA−DMA−TMCAおよびクロモイオノフォアETH5294を含むPVC−DOSフィルムの正規化されたオプトード応答曲線および選択性のグラフであって、実線は等式2にしたがって理論的に予測された応答で、NaについてlogKexch=−4.80(n=1)、Kについて−7.85(n=1)、Ca2+について−17.50(n=1)、Mg2+について−17.55(n=1)であるグラフ。
【図5】吸光値が650nmで記録され、Na濃度が10−4Mと10−3Mとの間で5mL/分の流速で変化させた、15重量%ブランクMMA−DMA(図5A)か、MMA−DMAに共有結合でグラフト化されたTMCA(図B)かのいずれかと、Na−イオノフォア(X)、ETH5294とを含むPVC−DOSオプトードの薄いフィルムの応答時間との比較を示すグラフ。
【図6】試料中の塩化カルシウム濃度が10−5Mから1Mまでの範囲における、イオノフォア(AU−1)およびイオン交換体(TMCA)の両方が共有結合でMMA−DMAポリマーにグラフト化された、全部がポリマー製の可塑剤フリーのカルシウム選択性膜のEMF測定についての較正曲線(図6A)および対応する実験時間トレース(図6B)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の標的イオンを検出するためのイオン検出センサーであって、
(i)メタクリレートモノマーの重合したユニットと、closo−ドデカカルボラン・アニオンの官能基修飾されたC誘導体を含むイオン交換体とを含む可塑剤フリーのコポリマーのマトリックスと、
(ii)前記標的イオンを検出するためのイオノフォアとを含み、
前記官能基修飾されたイオン交換体は前記コポリマー上に共有結合によってグラフトされ、
前記メタクリレートモノマーはペンダントアルキル基のRまたはRを有し、ここでRはC1−3のアルキル基のいずれかで、RはC4−12のアルキル基のいずれかである、試料中の標的イオンを検出するためのイオン検出センサー。
【請求項2】
はC1−2のアルキル基のいずれかであり、RはC8−12のアルキル基のいずれかである、請求項1に記載のイオン検出センサー。
【請求項3】
はCのアルキル基であり、RはC10のアルキル基である、請求項2に記載のイオン検出センサー。
【請求項4】
前記イオン交換体は以下の化学式で表される構造を有し、
【化1】

上記化学式で、Rは2重結合を含む置換基である、請求項1に記載のイオン検出センサー。
【請求項5】
は、−(C=O)CH=CHである、請求項4に記載のイオン検出センサー。
【請求項6】
前記マトリックスは膜状である、請求項1に記載のイオン検出センサー。
【請求項7】
前記センサーは担体を利用するイオン選択電極である、請求項6に記載のイオン検出センサー。
【請求項8】
前記センサーは薄いフィルム状のイオン特異的オプトードである、請求項6に記載のイオン検出センサー。
【請求項9】
前記センサーはバルクのオプトードである、請求項6に記載のイオン検出センサー。
【請求項10】
前記ポリマーは粒子状である、請求項1に記載のイオン検出センサー。
【請求項11】
前記センサーは粒子を利用するオプトードである、請求項10に記載のイオン検出センサー。
【請求項12】
前記イオノフォアはカルシウムイオンについて選択的である、請求項1に記載のイオン検出センサー。
【請求項13】
指示剤イオノフォアを含む、請求項1に記載のイオン検出センサー。
【請求項14】
前記指示剤イオノフォアは、pH指示クロモイオノフォアと、クロモイオノフォアと、フルオロイオノフォアと、pH指示剤と、pH指示フルオロイオノフォアとからなるグループから選択される、請求項13に記載のイオン検出センサー。
【請求項15】
前記標的イオンは、H、Li、Na、K、Ca2+およびMg2+からなるグループから選択される、請求項1に記載のイオン検出センサー。
【請求項16】
前記試料は、全血液、血清、尿、唾液、精液および涙からなるグループから選択される体液である、請求項1に記載のイオン検出センサー。
【請求項17】
前記コポリマーはポリ(塩化ビニル)および可塑剤とともにブレンドされる、請求項1に記載のイオン検出センサー。
【請求項18】
前記イオノフォアは官能基修飾されたイオノフォアである、請求項1に記載のイオン検出センサー。
【請求項19】
前記官能基修飾されたイオノフォアの少なくとも一部は共有結合によって前記コポリマー上にグラフトされる、請求項18に記載のイオン検出センサー。
【請求項20】
前記官能基修飾されたイオノフォアは、以下の化学式で表される構造を有し、
【化2】

上記の化学式で、Rは不飽和官能基を含む置換基である、請求項19に記載のイオン検出センサー。
【請求項21】
は−O(C=O)CH=CHである、請求項20に記載のイオン検出センサー。
【請求項22】
前記官能基修飾されたイオノフォアは親水性のクラウンエーテルである、請求項18に記載のイオン検出センサー。
【請求項23】
前記クラウンエーテルは、4’−アクリロイルアミドベンゾ−15−クラウン−5または4’−アクリロイルアミドベンゾ−18−クラウン−6である、請求項22に記載のイオン検出センサー。
【請求項24】
可塑剤フリーのコポリマーの中に共有結合によってグラフトされたイオン交換体を含み、該イオン交換体は重合可能な原子団を有するハロゲン化カルボラン・アニオンの誘導体である、試料中の標的カチオンを検出するためのイオン検出センサー。
【請求項25】
前記重合可能なイオン交換体は以下の化学式で表される構造を有し、
【化3】

上記化学式で、Rは2重結合を含む置換基である、請求項24に記載のイオン検出センサー。
【請求項26】
は−(C=O)CH=CHである、請求項25に記載のイオン検出センサー。
【請求項27】
標的イオンに応答する可塑剤フリーのコポリマーを調製する方法であって、
(a)(i)ペンダントアルキル基のRまたはRを有し、RはC1−3アルキル基のいずれかで、RはC4−12のアルキル基のいずれかである、メタクリレートモノマーと、
(ii)重合可能な原子団を有するcloso−ドデカカルボラン・アニオンの官能基修飾されたC−誘導体を含むイオン交換体と、
(iii)前記標的イオンに対して選択的なイオノフォアと、
(iv)架橋モノマーと、
(v)重合開始剤との組み合わせを混合すること、および
(b)前記メタクリレートモノマーと前記官能基修飾されたcloso−ドデカカルボラン・アニオンとが共重合することを可能にする条件下で、前記組み合わせを処理することを含む、標的イオンに応答する可塑剤フリーのコポリマーを調製する方法。
【請求項28】
前記closo−ドデカカルボラン・アニオンは、以下の化学式で表される構造を有し、
【化4】

上記化学式で、Rは2重結合を含む置換基である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
は(C=O)CH=CHである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記コポリマーを、ポリ(塩化ビニル)および可塑剤とともにブレンドすることを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
はC1−2のアルキル基のいずれかであり、RはC8−12のアルキル基のいずれかである、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記イオノフォアは官能基修飾されたイオノフォアである、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記官能基修飾されたイオノフォアは以下の化学式で表される構造を有し、
【化5】

上記の化学式で、Rは不飽和官能基を含む置換基である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
は−O(C=O)CH=CHである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記官能基修飾されたイオノフォアは、親水性のクラウンエーテルである、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記クラウンエーテルは、4’−アクリロイルアミドベンゾ−15−クラウン−5または4’−アクリロイルアミドベンゾ−18−クラウン−6である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記イオノフォアの少なくとも一部は前記コポリマー上にグラフトされる、請求項32に記載の方法。
【請求項38】
請求項27の方法によって調製される、可塑剤フリーのコポリマー。
【請求項39】
請求項27の方法によって調製される、可塑剤フリーのコポリマーを含むセンサー。
【請求項40】
以下の化学式で表される構造を有し、
【化6】

上記化学式で、Rは2重結合を含む置換基である、重合可能なcloso−ドデカカルボラン。
【請求項41】
は−(C=O)CH=CHである、請求項40に記載の重合可能なドデカカルボラン。
【請求項42】
標的イオンに対する選択性を有する可塑剤フリーのグラフトコポリマーであって、
(i)メタクリレートモノマーの重合したユニットを含むコポリマーと、
(ii)前記標的イオンに対して選択的なイオノフォアと、
(iii)重合可能な原子団を有するcloso−ドデカカルボラン・アニオンのC誘導体を含むイオン交換体とを含み、
イオン交換体は共有結合によって前記コポリマー上にグラフトされる、グラフトコポリマー。
【請求項43】
前記イオン交換体は以下の化学式で表される構造を有し、
【化7】

上記化学式で、Rは2重結合を含む置換基である、請求項42に記載のグラフトコポリマー。
【請求項44】
は−(C=O)CH=CHである、請求項43に記載のグラフトコポリマー。
【請求項45】
前記イオノフォアは官能基修飾されたイオノフォアである、請求項42に記載のグラフトコポリマー。
【請求項46】
前記イオノフォアは以下の化学式で表される構造を有し、
【化8】

上記の化学式で、Rは不飽和官能基を含む置換基である、請求項45に記載のグラフトコポリマー。
【請求項47】
前記官能基修飾されたイオノフォアは、親水性のクラウンエーテルである、請求項45に記載のグラフトコポリマー。
【請求項48】
前記クラウンエーテルは、4’−アクリロイルアミドベンゾ−15−クラウン−5である、請求項47に記載のグラフトコポリマー。
【請求項49】
前記クラウンエーテルは、4’−アクリロイルアミドベンゾ−18−クラウン−6である、請求項47に記載のグラフトコポリマー。
【請求項50】
前記イオノフォアの少なくとも一部は前記コポリマー上にグラフトされる、請求項45に記載のグラフトコポリマー。
【請求項51】
以下の化学式で表される構造を有し、
【化9】

上記化学式で、Rは2重結合を含む置換基である、重合可能なイオン交換体を調製する方法であって、
I(CHOTBSを生成するために、2−ヨウ化エタノールおよび塩基の溶液にTBSClを添加すること、
中間体を生成するために、n−リチウムブチルおよび[MENH][closo−CB1112]の無水溶媒中の混合液に前記I(CHOTBSを添加すること、
残渣を形成するために、前記無水溶媒を除去すること、
[MeNH][TBSO(CHCB1112]を生成するために、前記残渣にMeNHClを添加すること、
[MeNH][HO(CHCB1112]を生成するために、無水溶媒中において前記[MeNH][TBSO(CHCB1112]をHClで処理すること、
[MeNH][CHCHCOO(CHCB1112]を生成するために、[MeNH][HO(CHCB1112]および塩基の無水溶媒中の溶液に塩化アクリロイルを添加することを含む、重合可能なイオン交換体を調製する方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−503005(P2007−503005A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533539(P2006−533539)
【出願日】平成16年5月28日(2004.5.28)
【国際出願番号】PCT/US2004/017226
【国際公開番号】WO2004/106893
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(505439727)オーバーン ユニバーシティ (1)
【Fターム(参考)】