説明

可変鏡

本発明は、外側の反射面及びその上に複数の永久磁石が固定される内側表面を有する可変鏡(2,3)からなる光電気デバイスに関し、前記デバイスは、可変膜に対応する領域を局所的に置換してその上に電磁気力を及ぼすために永久磁石と対向して置かれた複数の電磁石(6)を含むハウジング(5)をさらに含む。本発明は、内側表面(7)全体が可撓性材料の連続層で被覆されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射膜を含む光電気デバイスに関する。より具体的には、本発明は、局所制御ループを有さない、磁気作動性の極めて動的な小型の可変鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような可変鏡の主要原理は公知である。例えば、特許文献1の明細書は、永久磁石が固定される可変膜を含む解決策を記載している。この膜は膜が挿入されるリブを有する支持構造体内に保持されている。この支持構造体は膜に固定された磁石と相互に作用する電磁石が置かれる平板を支持している。
【0003】
モデリングすること、すなわち予測することが困難な態様で、膜が変形するという問題がもたらされる。膜は、剛性、質量、及び固有周波数といった機械特性が極めて異質な領域を有する。従って、実際の問題として、電磁石の電子サーボ回路、並びに予測される変形と比較して実際の変形に関する情報を収集するための位置センサと、位置センサによって供給される設定点及び信号に応じて、リアルタイムで各電磁石に供給される電気信号を制御する電子回路とを関連付けることが重要である。
【0004】
特に、サーボシステムは大型の磁気ミラーに必要とされている。これは、磁気ミラーの高質量に起因し、これによって極めて低い共振周波数が生成され、第一共鳴を超えて作用する局所サーボシステムの生成が必要となる。より小型の鏡にとって、磁石と膜との間の連続的な、可撓層がない場合、鏡にとって適切な光学的品質を維持することは不可能である。この欠点を解決するために、一つの解決法は、極めて厚い膜を使用することを含むが、これによって効果的なストロークが迅速に制限される。局所サーボシステムがないことで、次のような結果が生じる。膜が極めて薄く維持され得る場合、極めて小型の作動装置(及び軽い磁石)を使用できる。その結果、共振周波数は、ほとんどのアプリケーションによって必要とされる帯域幅を超えて、局所サーボシステムに対する要求を抑制する。
【特許文献1】特開平8−334708号公報
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本発明の目的は、最も広義には、外側反射面及びその上に複数の永久磁石が固定される内側表面を有する可変膜からなる光電気デバイスを提供することによって、これらの欠点を解決することであり、前記デバイスは、可変膜に対応する領域を局所的に置換してその上に電磁気力を及ぼすために永久磁石と対向して配置された複数の電磁石を含むハウジングをさらに含み、底面が可撓性材料の連続層で被覆されていることを特徴とする。この連続的な可撓層は、より標準的な磁石組立体によって(ポイントまたは他の媒質を接着することによって)生じるストレスを吸収し分配する。
【0006】
この連続的な可撓層は、接着性があることが好ましい。それによって、接着が可能となる。
有利にも、この膜は電磁石支持体に機械的結合を提供する支持構造体のより薄い領域からからなる。次の利点が加えられる。本発明の具体的な実施形態によれば、この支持構造体は、可撓性のシリコン接着剤を用いて接着された三つのスペーサによって支持体に固定されている。有利にも、これらのスペーサは、(電子コネクタ技術のために現在使用されている)スズ―鉛合金の展性のあるボールを用いて、パルマ(Palmer)あるいは他の測定装置によって適切な側面上に圧搾されて、製造され得る。
【0007】
本発明の具体的な実施形態によれば、膜は5マイクロメートルと50マイクロメートルとの間の厚さを有するシリコンから製造されている。
本発明の有利な実施形態によれば、電磁石は、その上にスプールが置かれる円筒型領域を有するコアで組織され、コアの少なくとも一部分は、膜に固着された磁石のコアと同じ構成で編成されたハウジングを有するプレート内に格納されている。
【0008】
具体例によれば、磁石及び電磁石は、N×Nアレイを形成し、そのコーナー部は占有されていない。
膜は、磁石及び磁石のない周辺環状区域を備えた能動中心円盤状領域を有することが好ましい。
【0009】
本発明の具体的な実施形態によれば、能動領域の直径は膜の外側直径の0.3倍と0.7倍との間である。
また、本発明は、外側反射面及びその上に複数の永久磁石が固定される内側表面を有する可変鏡からなる光電気デバイスを製造する方法に関し、その方法は膜の底面全体にわたって粘着フィルムを堆積させる工程及び接着面の一部上に永久磁石を堆積させる工程を含むことを特徴とする。
【0010】
粘着フィルムを堆積させる工程は、膜の表面上に局所的に堆積された接着剤の遠心分離によって有利に実行される。
本発明の具体的な実施形態によれば、永久磁石は、仮支持体上に配置され、次に接着面が上述のように予め配置された磁石の表面の上方を移動される。
【0011】
一変形例によれば、膜は均質なブロックの円盤状領域を薄くすることによって形成される。
第二の変形例によれば、膜形成工程はプラズマエッチングによって実行される。
【0012】
第三の変形例によれば、膜形成工程はフォトリソグラフィーによって実行される。
第四の変形例によれば、膜形成工程は化学エッチングによって実行される。
本発明は、添付図面に関連して作成された以下の記載を読むことによってより理解されよう。ここで、
図1は、本発明にかかる作動装置の断面図を示す。
【0013】
図1は、本発明にかかる可変鏡の限定されない実施例を示す。
可変鏡は、支持構造体を形成する環状区域(1)を有し、より薄い中心領域によって延出されたモノリシック構造のシリコン部分を含み、その部分が反射膜を構成する。
【0014】
この反射膜は、支持頭頂部(3)によって囲まれた中心能動領域(2)を有する。中心能動領域(2)は裏面上の永久磁石(4)を含む。磁石は、250マイクロメートルの厚さを有し、膜表面に対して垂直に帯磁された鉄―ニッケル―クロム合金から製造される。それらは850マイクロメートルの直径を有する。合計52個のこれらの磁石(4)は、8×8スロットを有するアレイネットワークの形状で配置されており、その四隅には磁石がない。
【0015】
磁石は全て、同じ方向に磁化されて、同じ側面上にS極を有し、あるいは逆に、交互に磁化され得る。
例として、反射膜は30ミリメートルの直径を有し、中心領域は15ミリメートルの直径を有する。
【0016】
シリコン部分は永久磁石(4)の各々と対向して配置された一連の電磁石(6)を備える支持体(5)に固定されている。電子回路が電磁石(6)の各々を制御している。
磁気可変鏡を製造する方法は以下の通りである:
1. 磁石の調整
100マイクロメートルの厚さを有する非接着材料、例えばKapton(商標)のシートが鉄の支持体上に配置される。
【0017】
磁石がこのシート状に配置され、次にテンプレートの助けを借りて整列させられる。
2. 膜の調整
SOI(シリコンインシュレータ)型のシリコンウエハ(総厚さ:500マイクロメートル)の選択エッチング。
【0018】
20マイクロメートルのシリコン膜が得られ、500マイクロメートルのシリコン支持体上に取付けられる。
この支持体は機械的インターフェイスとして作用する金属板との接着によって固定される。
【0019】
液状シリコン接着剤の均一層(厚さ100マイクロメートル)が遠心分離(スピンコータ)によって堆積させられる。
接着剤が数分間の部分的乾燥を許容される。
【0020】
3. 組立
接着膜が変形装置によって磁石の上に置かれる。
接触後、まだ極めて柔らかい状態の接着剤の中に磁石を部分的に沈めるために、50マイクロメートル分、変形が続く。
【0021】
一度完全に乾燥すると(10時間)、磁石内に覆われた膜が除去される。
本発明は厳密に限定されない例として上述されている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明にかかる可変鏡の限定されない実施例を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側反射面及びその上に複数の永久磁石が固定される内側表面を有す可変膜からなる光電気デバイスであって、前記デバイスは、可変膜に対応するコアを局所的に置換してその上に電磁気力を及ぼすために永久磁石(4)と対向して配置された複数の電磁石(6)を含むハウジング(5)を含み、底面(7)の全体が可撓製材料の連続層で被覆されていることを特徴とする光電気デバイス。
【請求項2】
前記可撓性材料が接着剤層(7)であることを特徴とする請求項1に記載の光電気デバイス。
【請求項3】
前記膜が電磁石支持体(5)に機械的結合を提供する支持構造体(1)のより薄い領域からからなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光電気デバイス。
【請求項4】
前記膜がシリコンから製造されていることを特徴とする請求項1,2又は3に記載の光電気デバイス。
【請求項5】
前記膜が5マイクロメートルと50マイクロメートルとの間の厚さを有することを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の光電気デバイス。
【請求項6】
前記電磁石が、その上にスプールが置かれる円筒型領域を有するコアからなり、前記コアの少なくとも一部分は、膜に固着された磁石の部分と同じ構成において組織されたハウジングを有する平板内に格納されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の光電気デバイス。
【請求項7】
前記磁石及び電磁石は、N×Nアレイを形成し、そのコーナー部は占有されていないことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の光電気デバイス。
【請求項8】
前記膜は磁石及び磁石のない周辺環状区域を備えた能動中心円盤状領域を有することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の光電気デバイス。
【請求項9】
前記能動中心円盤状領域の直径は膜の外側直径の0.3倍と0.7倍との間であることを特徴とする請求項8に記載の光電気デバイス。
【請求項10】
外側反射面及びその上に複数の永久磁石が固定される内側表面を有する可変膜からなる光電気デバイスを製造する方法であって、前記方法は、前記膜の底面全体にわたって粘着フィルムで堆積させる工程及び粘着表面の一部上に永久磁石を堆積させる工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記粘着フィルムを堆積させる前記工程は、前記膜の表面上に局所的に配置された接着剤の遠心分離によって実行されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記永久磁石は、仮支持体上に配置され、次に接着面が上述のように予め配置された磁石の表面の上方を移動させられることを特徴とする、請求項10又は求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記膜は均質ブロックの円盤状領域を薄くすることによって形成されることを特徴とする請求項10乃至請求項12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記膜形成工程はプラズマエッチングによって実行されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記膜形成工程はフォトリソグラフィーによって実行されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記膜形成工程は化学エッチングによって実行されることを特徴とする請求項13に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2008−516277(P2008−516277A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−535203(P2007−535203)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【国際出願番号】PCT/FR2005/002528
【国際公開番号】WO2006/040477
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(505045610)サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ スィヤンティフィック(セーエヌエルエス) (41)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE(CNRS)
【出願人】(507118035)ユニヴェルシテ ジョゼフ フォーリエル (2)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE JOSEPH FOURIER
【Fターム(参考)】