説明

可変面積ディフューザ

【課題】空調パック用の圧縮空気システムにおける使用に適した可変面積ベーン式ディフューザを提供する。
【解決手段】ディフューザ22は、枢動ピン54を中心として複数の位置間で回動可能な複数のベーン38を備える。取付板30が、裏当て板28を支持している。これらのベーン38は、裏当て板28とシュラウド36との間に配列されている。枢動ピン54は、裏当て板28、ベーン38およびシュラウド36と滑合関係にあり、取付板30のボス42に螺入されている。裏当て板28および/またはシュラウド36が撓みを受けている間、取付板30および枢動ピン54の構成によって、裏当て板28およびシュラウド36が互いに平行の状態に維持される。突発的な破損が生じた場合にベーン38を良好に封じ込めるために、一体構造の突起46および/またはボルト40のような構造物が、裏当て板28およびシュラウド36から開口44を通ってベーン38に延びている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変面積ディフューザに関する。特に、本発明は、空調パック用の圧縮空気システムにおける使用に適した可変面積ベーン式ディフューザに関する。
【背景技術】
【0002】
可変面積ディフューザは、ディフューザのスロートの寸法を変更するために、種々の角度位置間で回動される複数のベーンを利用する。可変面積ディフューザは、例えば、過給機とともに使用され、種々の高度において航空機の空調システムを通る流れを変化させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
可変面積ディフューザは、例えば、圧縮機が高速度で駆動される際に、超高応力を受けることがある。ディフューザ構造体は、圧縮機ロータを破損するまで超高速度で回転させる封じ込みテスト(containment test)に合格しなければならない。破片により周囲の領域、部品または人に危険が及ばないように、破片をディフューザのハウジング内に留めなくてはならない。
【0004】
ディフューザの運転に関する他の問題は、ベーンに隣接する構造物、例えば、裏当て板および/またはシュラウドが撓むことである。ディフューザの運転にわたって、わずか千分の数インチのすき間をベーンの両側に維持することが望ましい。ベーンの周囲における構造物の撓みによって、膠着状態が生じ、ディフューザの運転を損なうことがある。
【0005】
負荷時の運転を改良すると共に、ロータの破損が生じた場合の破片の封じ込みを改良する、改良型可変面積ディフューザが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、シュラウドを有するハウジングを備えた圧縮空気ユニットを提供する。電動モータによって駆動される圧縮機ロータが、ハウジング内に配置されており、この圧縮機ロータは、ロータブレードを備える。可変面積ディフューザは、ハウジング内に配置され、前記圧縮機と流体連通している。ディフューザは、ロータの周方向に配列された複数のベーンを備える。ベーンは、圧縮空気システムを通る流れを変化させるために、枢動ピンを中心に複数の位置に回動する。取付板が、リテーナによってハウジングに固定され、裏当て板を支持している。ベーンは、裏当て板とシュラウドとの間に配置される。
【0007】
枢動ピンは、裏当て板、ベーンおよびシュラウドと滑合関係にあり、ボスによって、取付板内に螺入されている。本発明による取付板および枢動ピンの構成によって、負荷時に、裏当て板およびシュラウドが互いに平行な状態で良好に維持される。
【0008】
突発的な故障が生じた場合に、ベーンを良好に封じ込めるために、構造物、例えば、突起および/または締付け具(ボルトなど)が、ベーンの開口を通って、裏当て板とシュラウドとの間に延びている。図示の例では、複数の突起および複数のボルトが、破片に対するバリアとして作用するように用いられている。
【0009】
従って、本発明は、撓みの存在下での運転を改良するとともに、ベーンが破損した場合に破片の封じ込めを改良する、改良型可変面積ディフューザを提供するものである。
【0010】
本発明のこれらの特徴および他の特徴は、以下の最良の形態、および添付の図面から詳細に理解することができるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の可変面積ディフューザを有する圧縮ユニットシステムの断面図。
【図2】複数の平面で破断され、かつ図3の矢印2−2の方向から見た本発明のディフューザの部分破断図。
【図3】図1に示された本発明のディフューザの拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に圧縮機空気ユニット10を示す。ユニット10は、電動モータ14によって駆動される圧縮機ロータ12を備える。しかし、電動モータを用いない他の用途に本発明のディフューザを用いてもよいことを理解されたい。圧縮機ロータ12および電動モータ14は、ハウジング16内に収容され、このハウジング16は、互いに固定された複数のハウジング部分から構成される。ハウジング16は、空気を圧縮機12に供給するインレット18を有する。モータロータ20が、モータステータ19内に配置され、軸Aを中心として回転可能である。ロータ20は、ブレード21を有する圧縮機ローラを支持する。ディフューザアッセンブリ22は、ブレード21の半径方向外側に配置される。インレット18を通って引込まれた空気は、ブレード21によって、ディフューザ22を通ってアウトレット24に半径方向外側に圧送される。
【0013】
アクチュエータ26は、(図2において符号52で示される)インレットスロートを変化させ、ユニット10を通る流量を変化させるために、ディフューザ22と協働して操作される。一例では、ユニット10は、航空機の空気サイクル空調パックに加圧空気を供給するように用いられる。
【0014】
図2および図3を参照すると、ディフューザ22は、撓みDから隔離されている裏当て板28を備える。従来の装置では、裏当て板28は、ハウジング16に直接固定され、これが、ディフューザベーンの膠着の一因となっている。それに代わって、本発明のディフューザ22は、裏当て板28を支持する取付板30を用いる。裏当て板28の内周および外周は、取付板30によって支持されているが、取付板30とは独立して軸方向に移動することが許容されている。取付板30は、リテーナ32および締付け具34によって、ハウジング16に固定されている。
【0015】
シュラウド36は、ハウジング16によって支持されており、負荷が作用したときに、軸方向に撓む。複数のベーン38が、裏当て板28とシュラウド36との間に保持されており、通常、千分の数インチのすき間が、ベーン38と裏当て板28との間およびベーン28とシュラウド36との間に設けられる。図示されている例示的なシステムでは、全開と全開の40%との間で調整される23枚のベーンが設けられている。
【0016】
ベーン38は、インレット端部48およびアウトレット端部50を備える。インレット端部48は、ベーン38を枢動させることによってもたらされる図2に示された調整可能なスロート52を付与する。封じ込めを改良するために、本発明は、インレット端部48とアウトレット端部50との間に配置された開口44を備える。この開口は、ベーン38の長さの方向に細長く延びている。突起46が、裏当て板28から開口44内に延びている。図示の例では、突起46は、裏当て板28と一体であり、シュラウド36と係合するように延びている。図2に示されるボルト40は、ベーン38をシュラウド36と裏当て板28との間で固定するように開口44を通って延びている。本発明の付加的なボルト40および突起46によって、破損が生じた場合に、ベーン38の封じ込めが改良される。
【0017】
取付板30は、各ベーン38用のボス42を備える。各ベーン38は、枢動ピン54を受ける孔55を備える。枢動ピン54は、ベーン38をシュラウド36と裏当て板28との間で固定するように、シュラウドの開口を通って取付板30へと延びている。枢動ピン54の端は、ボス42内に固定されている。裏当て板28、ベーン38およびシュラウド36の開口は、シュラウド36および裏当て板28がベーン38と膠着することなく、軸方向に撓むことができるように、枢動ピン54に対して滑合関係にある。
【0018】
図2において、シュラウド36は、ディフューザの部品との相互関係を良好に示すために、面J,K,Lに沿って破断されている。ベーン38は、駆動ピン58を収容するスロット60を備える。駆動ピン58は、枢動ピン54を中心にベーン38を回転させるために、アクチュエータ26によって回動される駆動リング56に取り付けられている。駆動リング56は、駆動リング56をハウジング16内に支持する軸受57を備える。駆動ピン58は、ベーン38の位置制限を規定する、シュラウド36におけるスロット内に収容される。
【0019】
本発明の好ましい実施形態を開示したが、当業者であれば、本発明の範囲内においていくつかの修正がなされることを理解されるであろう。この理由から、本発明の真の範囲と内容を決定するように、特許請求の範囲を検討されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シュラウドを有するハウジングと、
前記ハウジング内に配置され、かつロータブレードを備える圧縮機と、
前記ハウジング内に配置され、前記圧縮機のロータブレードと流体連通する可変面積ディフューザと、
を備える圧縮空気ユニットであって、
前記ディフューザは、前記ロータブレードの周方向外側に配列された複数のベーンを備え、前記ベーンが、枢動ピンを中心として複数の位置間で回動可能であり、前記ハウジングには取付板が固定され、裏当て板を支持し、この裏当て板と前記シュラウドとの間に前記ベーンが配置され、
駆動リングが、前記ベーンのスロットに収容される駆動ピンを備えるとともに、軸受を介して前記ハウジングに支持され、
前記駆動リングに対してアクチュエータが、前記ベーンを前記複数の位置間で移動させるように操作可能に接続されることを特徴とする圧縮空気ユニット。
【請求項2】
リテーナが、締付け具によって前記ハウジングに固定され、前記取付板が、前記リテーナと前記ハウジングとの間に配置されることを特徴とする請求項1に記載のユニット。
【請求項3】
前記取付板がボスを備え、前記ベーンが孔を備え、枢動ピンが、前記シュラウドから前記孔を通って前記ボス内に延びることを特徴とする請求項1に記載のユニット。
【請求項4】
前記枢動ピンが、前記裏当て板、前記ベーンおよび前記シュラウドと滑合関係にあることを特徴とする請求項3に記載のユニット。
【請求項5】
前記ベーンは、開口を備え、構造物が前記裏当て板から前記開口を通って前記シュラウドに延びることを特徴とする請求項1に記載のユニット。
【請求項6】
前記構造物は、突起と、該突起と近接する締付け具と、を備えることを特徴とする請求項5に記載のユニット。
【請求項7】
電動モータが前記ハウジング内に配置され、前記電動モータが、前記圧縮機を駆動することを特徴とする請求項1に記載のユニット。
【請求項8】
前記シュラウドおよび前記裏当て板が、前記圧縮機の回転軸を横切って互いに平行に配列されることを特徴とする請求項1に記載のユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−80481(P2011−80481A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13652(P2011−13652)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【分割の表示】特願2007−532457(P2007−532457)の分割
【原出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(500107762)ハミルトン・サンドストランド・コーポレイション (165)
【氏名又は名称原語表記】HAMILTON SUNDSTRAND CORPORATION
【住所又は居所原語表記】One Hamilton Road, Windsor Locks, CT 06096−1010, U.S.A.
【Fターム(参考)】