説明

可搬型放射線撮影システム

【課題】可搬性に優れ、在宅診療などにおいて簡単にX線画像を立体視可能にする。
【解決手段】X線撮影システム10を、X線発生装置11、電子カセッテ12、保持アーム13、PC14、及び制御装置15から構成する。X線発生装置11を、X線源17、高電圧発生器18、及び照射スイッチ19から構成する。保持アーム13をアーム本体25と支柱26とから構成する。アーム本体25の水平部にX線源17を取り付ける。支柱26に位置決め機構22を形成し、アーム本体25の水平部25bを入射面12aと平行な面内で移動させる。X線源17が常に入射面12aから一定距離の範囲で移動し、この状態でX線を照射して、R視点画像及びL視点画像を得るため、立体視が違和感なく行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線により被検体の撮影を行う可搬型放射線撮影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、画像診断を行うために、放射線、例えば、X線を利用したX線撮影システムが知られている。X線撮影システムは、被検体にX線を照射(曝射)するX線源と、被検体(患者)を透過したX線の照射を受けてX線画像を検出するX線画像検出装置とからなる。また、X線撮影システムの中には、来院が困難な患者の自宅で行う在宅診療や救急出動先における応急処置においてX線撮影を可能とするために可搬型のものも各種提案されている。
【0003】
たとえば、特許文献1に示すように、台車に設けられた支柱に、X線源とX線画像検出装置を対向させた姿勢で保持する略C字状の保持アームを設けた、いわゆる回診車が知られている。回診車では、保持アームは、支柱に対して回動自在に設けられており、保持アームを移動させることで、X線源やX線画像検出装置の位置や向きを変化させることができる。保持アームの移動により、被検体の撮影部位に応じて、X線源及びX線画像検出装置との相対的な位置を調節するポジショニングがしやすく、また、照射位置を変化させながら複数回の撮影を行い、各撮影により得た画像を繋ぎ合わせて長尺画像を得るパノラマ撮影なども可能である。
【0004】
特許文献2には、上端部で回動可能に連結された2組の支持脚を有し、上端部の連結部分にX線源を設けた、全体として脚立形状のX線源装置と、可搬型のX線画像検出装置である電子カセッテとを組み合わせた可搬型X線撮影システムが開示されている。特許文献2のX線源装置は、撮影時には2組の支持脚を開脚させることで起立状態が保たれる。また、2本の支持脚は畳むことができるので、持ち運び時にはコンパクトなサイズにすることができる。
【0005】
特許文献3には、特許文献1と同様の略C字状の保持アームを有する回診車を用いたX線診断装置が開示されている。このX線診断装置では、保持アームのポジショニングを可能とする各可動部を固定するために、各可動部に電磁ブレーキを設け、X線発生部に前記電磁ブレーキのブレーキを解除し、最適な位置にポジショニングするための各ブレーキ解除スイッチを設けている。これにより、最適なポジショニングを術者本人が行うことができ、術者の視差方向とX線発生部の焦点方向とを一致させて、術者の見ている方向とモニタ装置に表示される手術対象部位の表示方向とのズレをなくして、対象部位を立体視することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−299773号公報
【特許文献2】特開2010−57546号公報
【特許文献3】特開平10−225450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の回診車は、台車によって移動させることができるので、院内の病棟の回診には適しているが、在宅診療や救急出動先の応急処置には可搬性の点で不利である。また、X線画像での立体視に対応することができない。
【0008】
特許文献2のシステムは、回診車と比べて可搬性には優れているものの、X線画像での立体視に対応することができないという問題がある。
【0009】
特許文献3の診断装置では、術者の視差方向とX線発生部の焦点方向とを一致させて、術者の見ている方向とモニタ装置に表示される手術対象部位の表示方向とのズレをなくして違和感のない立体視画像が得られるものの、各可動部に電磁ブレーキと、このブレーキ操作を行うブレーキスイッチを設ける必要があり、構成が複雑になる他に、台車及び支柱など、保持アームを支持するための堅牢な構成が必要となる。また、特許文献1の回診車と同じように、保持アーム自体もX線源とX線画像検出装置の両方を保持するため、堅牢な作りにならざるを得ない。そのため、大型化、重量増加が避けられず、在宅診療や救急出動先の応急処置には可搬性の点で不利である。したがって、在宅診療などにおいて、簡便にX線画像を立体視することができないという問題がある。
【0010】
また、在宅診療や緊急出動先での診療は一次診療という位置づけであり、精度はあまり求められていない反面、可搬容易性、セッティング迅速性、コンパクトな装置構成などが要求されるものであり、上記従来の大がかりな装置構成では対応が困難であるという問題がある。
【0011】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、可搬性に優れ、立体視も可能な可搬型放射線撮影システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の可搬型放射線撮影システムは、放射線を被検体に照射する放射線源と、前記被検体を透過した放射線を受けて前記被検体の放射線画像を検出する放射線画像検出器、及び一面に前記放射線が入射する入射面が形成され前記放射線画像検出器を収容する筐体を有する可搬型の電子カセッテと、前記入射面に対して前記放射線源が対向配置されるように前記放射線源を保持し、該放射線源を、立体視可能な視差を有する右眼用のR視点画像と左眼用のL視点画像の1組の画像のそれぞれを得るための右眼用照射位置及び左眼用照射位置に変位させる可搬型の保持アームと、前記放射線源を前記右眼用照射位置と左眼用照射位置の各位置に位置決めする位置決め機構とを備えている。
【0013】
前記保持アームは、前記放射線源が取り付けられるアーム本体と、前記放射線源が前記右眼用照射位置と左眼用照射位置の各位置に選択的に変位するように前記アーム本体が変位自在に取り付けられる支柱とを有しており、前記位置決め機構は、前記アーム本体の変位を規制して前記放射線源の位置決めを行う。
【0014】
前記アーム本体は、前記放射線源が取り付けられる端部とは反対側の端部を支点として前記入射面と平行な面内で回転し、前記放射線源を前記右眼用照射位置と前記左眼用照射位置との間で変位させる。また、前記アーム本体は、前記支点から前記放射線源が取り付けられる取付位置までの長さが前記視差の1/2の長さを有しており、前記右眼用照射位置と前記左眼用照射位置の一方から他方への回転角度が180度であることが好ましい。さらに、前記右眼用照射位置と前記左眼用照射位置の各位置において、前記放射線源の照射方向が前記各位置の間の中心に向けて傾斜するように、前記アーム本体は、前記照射方向が前記支点に向けて傾いた状態で前記放射線源を取り付ける首振り機構を有することが好ましい。
【0015】
前記保持アームは、前記放射線源が一端に取り付けられるアーム本体と、前記アーム本体の他端が取り付けられ、前記電子カセッテの近傍に配置されて、前記入射面に垂直な面内で揺動する支柱とを有しており、前記位置決め機構は、前記支柱の揺動を規制して前記放射線源の位置決めを行う。
【0016】
前記位置決め機構は、さらに、前記右眼用照射位置及び左眼用照射位置の中間に位置する基準位置に前記放射線源を位置決めすることが好ましい。前記保持アームは、前記放射線源を前記入射面との間隔が変化するように高さを調節する高さ調節機構と、前記放射線源を前記入射面と平行な方向に移動させて水平方向の位置を調節する水平位置調節機構とを含むことが好ましい。また、前記保持アームは、前記筐体に着脱自在に取り付けられることが好ましい。また、前記保持アームは、自立型の三脚部を備えることが好ましい。前記保持アーム及び前記筐体に設けられる水準器と、前記三脚部に設けられ、前記右眼用照射位置及び左眼用照射位置の各位置での放射線源が同一水平面となるようにレベル調節するための三脚側アジャスト機構と、前記筐体に設けられ、前記入射面が水平面となるようにレベル調節するための筐体側アジャスト機構とを備えることが好ましい。
【0017】
本発明の可搬型放射線撮影システムは、放射線源から照射され被検体を透過した放射線を受けて前記被検体の放射線画像を検出する放射線画像検出器、及び一面に前記放射線が入射する入射面が形成され前記放射線画像検出器を収容する筐体を有する可搬型の電子カセッテと、前記入射面に対して前記放射線源が対向配置されるように前記放射線源を保持し、該放射線源を、立体視可能な視差を有する右眼用のR視点画像と左眼用のL視点画像の1組の画像のそれぞれを得るための右眼用照射位置及び左眼用照射位置に変位させる可搬型の保持アームと、前記放射線源を前記右眼用照射位置と左眼用照射位置の各位置に位置決めする位置決め機構とを備えている。なお、前記保持アームは、前記放射線源を着脱自在に取り付け可能であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、放射線源を、立体視可能な視差を有する右眼用のR視点画像と左眼用のL視点画像の1組の画像のそれぞれを得るための右眼用照射位置及び左眼用照射位置に変位させる可搬型の保持アームを備えるから、可搬型の放射線撮影システムにおいて、簡単に立体視可能な視差を有する画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係る可搬型X線撮影システムの概略斜視図である。
【図2】支柱に設けた位置決め機構を示す分解斜視図である。
【図3】電子カセッテのFPDの構成を示すブロック線図である。
【図4】電子カセッテから離して保持アームを配置した第2実施形態を示す全体斜視図である。
【図5】同側面図である。
【図6】アーム本体を180度は反転させるようにした第3実施形態を示す平面図である。
【図7】同正面図である。
【図8】アーム本体を鉛直面内で揺動するようにした第4実施形態を示す斜視図である。
【図9】同正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
図1において、本発明の第1実施形態に係るX線撮影システム10は、在宅診療や救急出動先で使用するのに適した可搬型のシステムである。X線撮影システム10は、X線発生装置11と、電子カセッテ12と、保持アーム13と、ノート型パーソナルコンピュータ(PC)14と、制御装置15と、これらを接続するケーブル16とから構成される。
【0021】
これらX線発生装置11、電子カセッテ12、保持アーム13、PC14及び制御装置15のそれぞれは分離して持ち運ぶことが可能であり、在宅診断を受ける患者の自宅や救急患者がいる現場等に持ち運び、その現場で組立やケーブル16の接続などを行って、X線撮影を行うことができる。
【0022】
X線発生装置11は、X線源17と、X線源17に高電圧を供給する高電圧発生器18と、照射スイッチ19とからなる。X線源17は、電子を放出する陰極(カソード)と、電子を受けてX線を発生する陽極(アノード)とからなるX線管(図示せず)と、X線管の焦点から放射状に照射されるX線の照射野を限定する照射野限定器(コリメータ)とかなる。コリメータは、例えば、X線を遮蔽する複数枚の鉛板を井桁状に配置した構成を有しており、鉛板を移動させることによりX線が透過する中央の照射開口の大きさを変化させることで、X線の照射野を限定する。
【0023】
X線管としては、特許第3090910号公報に記載されているような、陽極が固定された固定陽極型の小型のX線管が使用される。固定陽極型のX線管は、陽極を回転させる陽極回転型のX線管と比べて、陽極を回転させるための駆動機構が不要な分、小型化が可能である。
【0024】
また、特許第3090910号公報にも記載されているように、陰極として冷陰極を使用したX線管が好ましい。冷陰極を使用するX線管は、フィラメントをヒータで加熱して熱電子を放出させる熱陰極を使用するX線管と比べて、フィラメントやヒータが不要となる分、小型化が可能である。また、フィラメントやヒータによる予熱も不要なため、迅速にX線を照射でき、救急出動のときなど一刻を争う緊急の場面では利便性が高い。こうした冷陰極を使用するX線管としては、カーボンナノチューブ構造体を冷陰極として使用し、乾電池による駆動も可能とした超小型のX線管があり、例えば独立行政法人産業技術総合研究所などにより開発されている。冷陰極を使用したX線管の中でも、このような超小型のX線管を使用することが好ましい。
【0025】
高電圧発生器18は、X線源17とケーブル16を介して接続されており、X線源17に高電圧を供給する。高電圧発生器18は、照射されるX線のエネルギーを決定する管電圧や管電流、及び照射時間といった撮影条件を制御装置15から与えられて、撮影条件に応じた電気エネルギーをX線源17に供給する。また、高電圧発生器18には、照射開始の指示を入力する照射スイッチ19が接続されており、照射スイッチ19が押下されたときに出力する開始信号を受け取り、開始信号に基づいてX線源17への電気エネルギーの供給を開始する。照射スイッチ19から入力される開始信号は、高電圧発生器18から制御装置15に対して送信される。
【0026】
制御装置15は、高電圧発生器18からの開始信号を受信すると、電子カセッテ12に対してX線の照射が開始されることを通知して、X線源17と電子カセッテ12の動作を同期させる同期制御を行う。また、制御装置15は、PC14から入力される撮影条件を高電圧発生器18及び電子カセッテ12に対して出力する。
【0027】
PC14は、撮影条件の設定を行うためのソフトウエアや、電子カセッテ12から受信する撮影画像のデータに対して画像処理を施し、撮影画像をPC14の表示部14aに表示するソフトウエアなどがインストールされており、X線撮影システム10のコンソールとして機能する。PC14において、撮影条件の設定を行う操作画面には、胸部撮影や腹部撮影といった撮影部位に応じた撮影メニューを選択する選択画面が表示される。キーボードやマウスなどの操作部14bの操作により、選択画面において撮影メニューが選択されると、それに応じた撮影条件が設定される。
【0028】
また、後述するように、X線撮影システム10は、立体視用の視差を有する1組の視差画像を得るステレオ撮影が可能となっている。PC14は、ステレオ撮影をするステレオ撮影モードが選択された場合には、そのモードが選択中に撮影された1組の視差画像を関連付けて記録する。立体視の方法としては、周知のように液晶シャッターメガネ方式、偏光メガネ方式、及びメガネを用いないインテグラルイメージング方式(光線再生方式)などがあり、いずれを選択してもよい。PC14は、関連付けて記録された立体視用の1組の視差画像を選択された方式に応じた方法で表示部14aに表示する。
【0029】
電子カセッテ12は、X線源17から照射され被検体Pを透過したX線を受けてX線画像を検出するX線画像検出器であるFPD39(図3参照)と、一面にX線が入射する入射面12aが形成され、FPD39を収容する略偏平な形状の筐体12bとを有している。筐体12bは、例えば、ステンレスなどのX線を遮蔽する材料で形成され、入射面12aに対応する部分に開口部が形成された枠体と、カーボンなどのX線を透過する材料で形成され、開口部に嵌め込まれて入射面12aを構成する透過板とからなる。筐体12bは、略矩形板状に形成されている。その一辺には、可搬に便利なように把手部24が形成されており、把手部24には、指が入る開口24aが形成されている。
【0030】
保持アーム13は、X線源17を入射面12aと平行な面上で移動自在に保持する。この保持アーム13は、被検体Pを配置する間隔を空けた状態で、入射面12aに対してX線源17を対向配置する。
【0031】
保持アーム13は、X線源17を一端部に有するアーム本体25と、このアーム本体25を前記入射面12aと平行な面内で揺動自在に保持する支柱26とを有する。この支柱26は、電子カセッテ12の近傍で鉛直方向に配置されており、前記アーム本体25を揺動自在に取り付けるための揺動軸22a(図2参照)を含む。
【0032】
支柱26には、位置決め機構22が設けられている。位置決め機構22は、支柱26を上下方向に上側支柱26bと、下側支柱26cとに二分割にした部分に構成されている。この位置決め機構22は、立体視が可能な視差を有する右眼用のR視点画像と左眼用のL視点画像の1組の視差画像を撮影するステレオ撮影がしやすいように、X線源17をステレオ撮影用の各照射位置RP,LPに位置決めする。なお、右眼用照射位置RPは、R視点画像を得るためのX線照射位置である。また、左眼用照射位置LPは、L視点画像を得るためのX線源照射位置である。
【0033】
図2に示すように、上側支柱26bには、中心に揺動軸22aが形成されており、この軸周りにはストッパ22bが突出して形成されている。また、下側支柱26cには、前記揺動軸22aを回転自在に保持する揺動孔22cと、この揺動孔22cの周りに形成され、前記ストッパ22bの移動を規制するための扇形状の移動規制溝22dとが形成されている。移動規制溝22dには、アーム本体25の第1方向への揺動を規制するために、前記右眼用照射位置RPにセットする第1移動規制端22eと、前記第1方向とは反対の第2方向への前記アーム本体25の揺動を規制して前記左眼用照射位置LPにセットする第2移動規制端22fとが形成されている。
【0034】
ストッパ22bの外周面と移動規制溝22dの内周面とにはクリック係止機構が設けられている。クリック係止機構は、ストッパ22bの外周面に配置され、内部のコイルバネにより外方に付勢されている係止球22gと、移動規制溝22dの内周面に形成される係止穴とから構成されており、ストッパ22bを前記各照射位置RP,LPと、これら各照射位置RP,LPの中間位置(基準位置BP)に位置決めする。これにより、ステレオ撮影時にX線源17の簡便な位置決めが可能となる。特に、各照射位置RP,LPの中間に位置する基準位置BPに位置決めすることができるので、被検体Pの撮影部位とX線源17との相対位置の位置合わせがしやすくなる。
【0035】
図1に示すように、基準位置BPは、保持アーム13に取り付けられるX線源17の初期位置であり、標準的な撮影を行う際の基準となる位置である。この基準位置BPは、保持アーム13を筐体12bの把手部24に取り付けたときに、X線源17の照射野の中心が、筐体12bの入射面12aの中心と一致する位置に配置されるように設定されている。このため、保持アーム13を筐体12bに取り付けときに、X線源17を基準位置BPに合わせると、X線源17の照射野の中心と入射面12aの中心を一致させることができる。なお、各照射位置RP,LPの距離は例えば40cmであるが、これに限定されるものではない。
【0036】
アーム本体25は垂直部25aと水平部25bとからL字形状に形成されている。垂直部25aは、支柱26の上端部に嵌合されて、鉛直方向でスライド自在に取り付けられる。水平部25bの先端には、X線源取付筒27により、X線源17が着脱自在に且つ水平方向でスライド自在に取り付けられる。また、水平部25b内には、クリック係止機構37が設けられる。このクリック係止機構37は、用いる電子カセッテ12の入射面12aのサイズが変更されたときに、X方向にX線源17を動かし、各サイズに対応した基準位置に入射面の中心を迅速に合わせるためのものであり、これら各基準位置に停止させることができる。これらスライド部とクリック係止機構37とにより、X線源17を入射面12aに平行な方向に移動させて水平方向の位置を調節する水平位置調節機構として機能する。
【0037】
支柱26の下部には嵌合部26aが形成されている。この嵌合部26aは、電子カセッテ12の把手部24の開口24aに挿入されて嵌合するように、開口形状に一致した形状に構成されている。この嵌合により、支柱26は筐体12bの入射面12aに対し垂直に取り付けられる。また、保持アーム13は、嵌合部26a及び把手部開口24aを介して、筐体12bに着脱自在に取り付けられる
【0038】
把手部24にはねじ孔28が形成してある。このねじ孔28は、把手部開口24aまで貫通している。ねじ孔28には、ロックねじ29が螺合する。ねじ孔28にロックねじ29を螺合することで、ロックねじ29の先端が嵌合部26aに係止し、把手部開口24aから支柱26が脱落することがなくなる。このねじ孔28とロックねじ29とにより保持アームロック装置30が構成される。
【0039】
保持アーム13は筐体12bに取り付けられるので、筐体12bが保持アーム13を支持する台座として機能する。筐体12bが台座として機能する分、保持アーム13の構成を簡素化することができる。また、保持アーム13を筐体12bに取り付けた状態で、保持アーム13が起立姿勢を安定して保つことができるように、保持アーム13及び筐体12bの重量配分や形状は決定されている。さらに、撮影時には、被検体Pは入射面12a上に載置されるので、被検体Pの体重が保持アーム13の起立状態を保つためのバランス用の重しにもなる。したがって、保持アーム13の安定性もより向上する。しかも、被検体Pの体重をバランス用重しとして積極的に利用するため、その分だけ台座となる電子カセッテ12を重くする必要もなく、可搬性が向上する。
【0040】
アーム本体25と支柱26とは円筒から形成されており、アーム本体25の垂直部25aと支柱26とは、図示しない回転規制部材(例えばキーとキー溝)により回転することなくスライド可能にされている。このスライド部分には、ラックアンドピニオン(図示せず)からなるアジャスト機構35が取り付けられている。アジャスト機構35は、支柱26に取り付けられるピニオンと、アーム本体25に取り付けられラックと、ピニオンを回すためのダイヤル36とから構成されている。そして、ダイヤル36を回すことにより、ピニオンを回転させ、ピニオンに噛み合っているラックを昇降させることで、アーム本体25が昇降する。また、ダイヤル36には図示しない係止機構が設けられており、アーム本体25を任意または所定の昇降位置で停止させることができる。このアジャスト機構により、入射面12aとX線源17との間の距離であるSID(Source Image Distance)を変更することができ、高さを調節する高さ調節機構として機能する。
【0041】
コリメータの照射開口によって規制されるX線源17の最大投影角(X線管の焦点を頂点として、照射開口の両端を結ぶ直線を底辺とした場合に形成される二等辺三角形の頂角)は、約12°程度である場合が多く、照射開口のサイズを変えずに、X線の照射野を変化させたい場合には、アーム本体25の昇降によりSIDが調節される。
【0042】
図3において、FPD39は、X線を電気信号に変換して画像データを生成する。FPD39は、受像部40、走査制御部41、信号変換部42、及び画像データ送信部43から構成されている。受像部40は、アクティブマトリクス基板上に画素を構成する複数の検出素子45をXY方向に沿って2次元配列して構成されている。受像部40は、筐体12b内において入射面12aに対応する位置に配置されており、入射面12aの中心と受像部40の中心は一致している。検出素子45は、X線を電荷に変換して蓄積する。走査制御部41は、受像部40からの電荷の読み出しタイミングを制御する。信号変換部42は、受像部40の各検出素子45に蓄積された電荷を読み出し、画像データに変換して記憶する。画像データ送信部43は、画像データをPC14の画像処理部に送信する。受像部40は、例えば、約43cm×43cmの矩形状であり、検出素子45の配列ピッチは、XY方向にそれぞれ約200μmである。
【0043】
走査制御部41と各検出素子45とは、検出素子45の行毎に走査線46によって接続されており、信号変換部42と各検出素子45とは、検出素子45の列毎に信号線47によって接続されている。なお、行はX方向、列はY方向に対応する。
【0044】
検出素子45としては、アモルファスセレン(a−Se)等の変換層でX線を入射線量に応じた電荷に直接変換し、変換された電荷を変換層の下部の電極に接続されたキャパシタに蓄積する直接変換型のものが用いられている。各検出素子45には、TFTスイッチ(図示せず)が接続され、TFTスイッチのゲート電極が走査線46、ソース電極がキャパシタ、ドレイン電極が信号線47に接続されている。
【0045】
TFTスイッチは、X線源17がX線を照射している間、OFFされており、その間、X線の入射線量に応じた信号電荷が検出素子45に蓄積される。X線の照射が終了すると、走査制御部41が走査線46に対してライン単位に順次駆動パルスを供給する。駆動パルスによってTFTスイッチがON状態になると、キャパシタに蓄積された電荷が信号線47に出力される。
【0046】
信号変換部42は、積分アンプ回路42a、A/D変換器42b、画像メモリ42cから構成されている。積分アンプ回路42aは、各信号線47の電荷を積分して電圧信号(画像信号)に変換し、A/D変換器42bに入力する。A/D変換器42bは、入力された画像信号をデジタルの画像データに変換して画像メモリ42cに入力する。
【0047】
なお、本形態では、X線を直接電荷に変換する変換層を有する直接変換型のFPD39を使用しているが、ガドリニウムオキシサルファイド(GOS)やヨウ化セシウム(CsI)等の蛍光体(シンチレータ)でX線を一旦可視光に変換し、変換された可視光をフォトダイオードで電荷に変換して蓄積する間接変換型のものを用いてもよい。
【0048】
以下、上記構成による作用について説明する。X線撮影システム10は、X線源17、保持アーム13、電子カセッテ12が分離された状態で保管されている。在宅診療や救急出動時にX線撮影システム10を使用する場合には、X線源17、保持アーム13、電子カセッテ12は分離した状態で運ばれる。各部を分離したコンパクトな状態で運べるため、運びやすい。この他に、PC14、制御装置15及び接続用のケーブル16も運ばれる。
【0049】
現場において、撮影準備として、X線撮影システム10のセットアップが行われる。図1に示すように、保持アーム13にX線源17を取り付けて、保持アーム13の支柱26を電子カセッテ12の把手部開口24aに嵌合させ、ロックねじ29により固定して取り付ける。この取り付けによって、筐体12bの入射面12aとX線源17が対向配置された状態でX線源17と電子カセッテ12が一体化される。次に、ケーブル16を介して、電子カセッテ12、PC14、制御装置15、X線源17、高電圧発生器18及び照射スイッチ19を接続する。
【0050】
X線撮影システム10のセットアップが完了すると、被検体Pと電子カセッテ12のポジショニングが行われる。被検体Pの撮影部位が入射面12aに載置されるように被検体Pの体勢が整えられる。保持アーム13により、電子カセッテ12とX線源17は対向配置された姿勢で一体化されているため、電子カセッテ12と被検体Pの位置を合わせれば、X線源17も電子カセッテ12と一緒に移動するので、特許文献2に記載のシステムのように、電子カセッテとX線源が分離した状態で使用されるシステムと比較して、電子カセッテ12とX線源17の位置合わせがしやすい。
【0051】
また、保持アーム13を取り付けたときに、X線源取付筒27の位置を基準位置BPに合わせれば、X線源17の照射野の中心と入射面12aの中心が一致するので、被検体Pの撮影部位と電子カセッテ12のポジショニングもしやすい。特に、電子カセッテ12の入射面12a上に被検体Pが載置された状態では、入射面12aが被検体Pによって覆われてしまうため、入射面12aの中心を確認することが困難になってしまうが、本形態のような構成であれば、被検体Pで入射面12aが隠れてしまっていても、X線源17の位置によって、入射面12aの中心がどこにあるかのおおよその見当がつけられるので、撮影部位を入射面12aの中心に合わせやすい。
【0052】
もちろん、据え置き型のX線源のように、レーザ光などの照明光を被検体Pに向けて照射して被検体Pの体表上で照射野を視認するための照準器をX線源17に設けてもよい。しかし、本形態の構成によれば、こうした照準器を設けなくても済むため、X線源17を小型化する場合に有利である。
【0053】
X線源17の水平方向の位置は、X線源取付筒27のスライドにより調節される。また、照射野の大きさの変更は、コリメータの照射開口の調節によって行われる他、アーム本体25を昇降させてX線源17の高さを調節することにより行われる。このように、保持アーム13を筐体12bに取り付けた状態でX線源17を変位させることができるので、撮影部位のポジショニングがしやすい。
【0054】
撮影部位のポジショニングが終了すると、技師により、PC14の操作部14bから撮影部位に応じた撮影条件が入力される。PC14から制御装置15を介して高電圧発生器18と電子カセッテ12とに撮影条件が設定される。これにより、撮影準備が完了する。
【0055】
撮影準備が完了して、技師により照射スイッチ19が押下されると、X線源17からX線が照射される。被検体Pを透過したX線は入射面12aに入射して、FPD39によって被検体Pの撮影画像が検出される。FPD39は、PC14に撮影画像を出力し、PC14は撮影画像に対して画像処理を施し、処理済みの撮影画像を表示部14aに表示する。こうして1回の撮影が行われる。撮影部位を変更する場合は、被検体Pの体勢を変更したり、X線源取付筒27のスライドによってX線源17の水平方向の位置を調節することで、撮影部位のポジショニングをし直して、撮影を行う。
【0056】
ステレオ撮影を行う場合には、PC14の操作部14bからステレオ撮影モードが選択される。ステレオ撮影モードを選択後に、アーム本体25を反時計方向に回転させ、X線源17を、右眼用照射位置RPにセットして撮影を行う。次に、アーム本体25を時計方向に回転させ、X線源17を左眼用照射位置LPにセットして撮影を行う。右眼用照射位置RPと左眼用照射位置LPでは位置決め機構22が作動するので、ステレオ撮影時のX線源17の位置決めが簡単に行える。電子カセッテ12は、各照射位置RP、LPで撮影されたR視点画像とL視点画像をPC14に出力する。PC14は、ステレオ撮影モードで撮影されたR視点画像とL視点画像の1組の視差画像を関連付けて記録し、立体視の方式に従って、各画像を表示部14aに表示する。これにより、撮影画像を立体視で観察することができる。
【0057】
この第1実施形態では、アーム本体を入射面に並行な面内で回転させているので、常にSIDを一定に保った状態で立体視用の各画像を撮影することができる。したがって、各眼用画像を用いて立体視したときに、違和感を与えることがない。
【0058】
また、本形態では、電子カセッテ12の把手部開口24aに支柱26を嵌合することで、X線源17を電子カセッテ12の上方で所定位置にセットすることができ、撮影を簡単に行うことができる。また、X線源17を有する保持アーム13と、電子カセッテ12と、PC14との3つの主要部に分けて運ぶことができ、楽に持ち運ぶことができる。もちろん、これらの部品をケースに一括して詰め込んで運搬してもよい。
【0059】
しかも、把手部開口24aを利用して保持アーム13を電子カセッテ12に取り付けているため、特別な取付手段を電子カセッテ12側に設ける必要がなく、構成が簡単になる。なお、保持アームロック装置30は、把手部開口24aから支柱26が脱落することがないようにしたものであればよく、例えば、ロック穴と、このロック穴に出没自在なロックピンと、ロックピンの出没機構とから構成したものであってもよい。
【0060】
また、保持アーム13は、アーム本体25を昇降自在に保持するとともに、X線源取付筒27をアーム本体25の水平部25bから引き出し自在に設けることにより、X線源17の高さや水平方向の照射位置を簡単に変更することができる。これらのX線源17を変位させるための保持アーム13は、上述のとおり撮影部位のポジショニングやステレオ撮影時のX線源17の位置調節に使用される。また、こうした保持アーム13は、入射面12aのサイズが異なる電子カセッテ12を使用する場合にも利用することができる。電子カセッテ12の入射面12aのサイズが異なれば、それに応じて照射野も変更しなければならないが、X線源17の高さ調節を行えば、SIDが変化して照射野の大きさを変更することができる。また、保持アーム13は、電子カセッテ12の筐体12bの端部に取り付けられるので、電子カセッテ12の入射面12aのサイズが変わると、入射面12aの中心位置も変わる。その場合には、X線源17を水平方向に移動させることで対応が可能である。
【0061】
なお、第1実施形態では、基準位置BPを1つだけ設けた例で説明したが、入射面12aのサイズが異なる複数種類の電子カセッテ12に応じた複数の基準位置BPを設けてもよい。そして、各基準位置BPにおいてクリック係止機構37を作動させるようにすれば、電子カセッテ12のサイズが変わっても位置決めを簡単に行うことができる。
【0062】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、電子カセッテ12の把手部開口24aに、支柱26の嵌合部26aを挿入することで嵌合し、電子カセッテ12に保持アーム13を一体化させるようにしたが、これに代えて、図4及び図5に示すように、支柱26に三脚部50を用いて、独自に配置してもよい。この場合には、第1実施例のように、保持アーム13によって電子カセッテ12とX線源17とが一体化されないので、保持アーム51及び電子カセッテ12それぞれに、水準器52,53とアジャスト機構54,55とを設け、X線源17の移動面と、電子カセッテ12の入射面12aとが平行になるように調節する。なお、本形態以降の各実施形態において、第1実施形態と同一構成部材には同一符号を付して重複した説明を省略している。
【0063】
水準器52は、保持アーム51には、例えばアーム本体25の上面に設ける。また、電子カセッテ12では、把手部24に設ける。アジャスト機構54は、保持アーム51では、三脚部50の各脚50aの末端に設けたアジャストボルト58から構成する。また、電子カセッテ12では、筐体12bの裏面に設けた少なくとも3箇所のアジャストボルト59から構成する。そして、水準器52,53を見ながら、各アジャストボルト58,59を回転させることにより、アーム本体25の移動面と、入射面12aとを水平にすることができる。これらが水平になることにより、アーム本体25のX線源の移動面と、入射面12aとが平行になり、SIDを一定に保持した状態で両眼用画像が得られる。なお、図示は省略したが、三脚部50の二つの脚50aが位置決めされるブラケットを筐体12bに設けることで、保持アーム51の電子カセッテ12に対する位置決めを容易に行うことができる。
【0064】
なお、水準器52,53やアジャスト機構54,55は、アーム本体25や入射面12aを水平にすることができるものであればよく、図示例のものに限定されることなく、種々の態様が可能である。
【0065】
(第3実施形態)
図6及び図7に示すように、本形態では、反転アーム60を電子カセッテ12の入射面12aの中心位置上方で、入射面12aの中心を通る鉛直線を回転中心として180度の角度で反転可能に構成している。この場合には、図7に示すように反転アーム60の回転中心線CL上に、レーザーポインタ61を設けて、このポインタ61の指し示す点を入射面12aの中心位置に合わせるように、位置合わせする。支柱は、図1に示すような把手嵌合タイプ、図4に示すような三脚タイプのいずれかでも採用が可能である。なお、把手嵌合タイプを用いることにより、嵌合によって両者の位置合わせが完了するため、ポジショニングを簡単に行うことができる。
【0066】
X線源17は反転アーム60に首振り機構62を介して取り付けられている。反転アーム60の中心が入射面12aの中心に位置決めされているので、X線源17の照射域の中心を両眼用照射位置RP,LPのいずれかで一方で、首振り機構62により首振り角度を調節することにより、180度反転させた他方の照射位置では再度首振り角度を再調節する必要がなく、調節を簡単に行うことができる。しかも、各眼用照射位置RP、LPへの入射面12aに対する首振り傾斜角度を各照射位置RP,LPで同じ角度にすることができ、SIDのみならず照射角度も常に同じになるので、立体視したときに観察者に違和感を与えることがなくなる。本形態では、反転アーム60が180度回転して位置を変えるので、各位置が見た目に判りやすい。また、X線源17を傾けることができるので、各照射位置RP,LPの距離(反転アーム60の長さ)を短くすることができる他に、各位置における照射範囲が重なる重複領域を大きくとることができ、その分だけ立体視可能領域を広げることができる。
【0067】
(第4実施形態)
図8及び図9に示すように、本形態では、保持アーム65の下端に、揺動軸67を介して取付ブラケット66を設け、この取付ブラケット66を電子カセッテ12の把手部24及び筐体12bの縁部に取り付けたものである。これにより、揺動軸67を中心として保持アーム65を入射面12aに直交する面内で揺動することができる。
【0068】
取付ブラケット66は2枚の挟持板70,71を有しており、これら挟持板70,71は、上下から電子カセッテ12の把手部24及び筐体12bの縁部を挟持する。また、取付ブラケット66はロックねじ73により把手部24に固定される。なお、ロックねじ73に代えて、係止機構により取付ブラケット66を電子カセッテ12に固定してもよい。
【0069】
取付ブラケット66には、1対の保持板75,76が立設され、これら保持板75,76で支柱77が挟持される。さらに、これらを貫通するように揺動軸67が水平方向に取り付けられる。
【0070】
図9に示すように、取付ブラケット66の内側面には、回転規制用のストッパ80,81が取り付けられている。この回転規制用ストッパ80,81は、右眼用照射位置RP及び左眼用照射位置LPに保持アーム65を位置決めする。これら回転規制用ストッパ80,81は、揺動軸67を中心とする同心円上で位置調整可能なアジャスト機能を備えることにより、各眼用照射位置RP,LPの位置を微調整することもできる。
【0071】
保持板75,76と支柱77との間には、図示しないクリック係止機構またはフリクション係止機構が設けられている。これら係止機構は、各照射位置RP,LPの中間位置である基準位置BPにX線源17を停止させる。なお、回転規制用ストッパ80,81で各眼用照射位置RP,LPへの位置決めを行う代わりにまたは加えて、上記クリック係止機構により、右眼用照射位置RP及び左眼用照射位置LPの各位置にX線源17を停止させてもよい。
【0072】
本形態では、基準位置BP、各照射位置RP,LPへのセットは、保持アーム65の入射面12aと直交する面内での揺動運動により行うことで、各照射位置へのX線源17の配置を簡単に行うことができる。また、基準位置BPにてX線源17の照射中心を、電子カセッテ12の受像部40の中心に位置決めすると、保持アーム65の揺動中心が受像部40の近くにあるため、どの揺動位置でも、X線源17の照射中心が受像部40のほぼ中心に位置することになり、X線源17の首振り角度の調節などが不要になる。なお、保持アーム65の揺動角度の変化に関わらず、X線源17の照射中心を入射面12aの中心に常に一致させたい場合には、保持アーム65の揺動中心(揺動軸67の中心)を、入射面12aを含む水平面上に位置させればよい。
【0073】
上記各実施形態では、X線源17を保持アーム13,51,65に着脱自在に取り付けたが、固定して取り付けてもよい。ただし、保持アーム13,51,65に着脱自在にX線源17を取り付ける場合には、持ち運ぶ現場の状況や撮影部位に応じて、最適なX線源を選択して取り付けることができるので、多様な撮影態様に簡単に対応することができる。また、X線源は既存のものを用いてもよい。この場合には、製品としては、X線源を省略してX線源を着脱自在に取り付けるための取付部を有する保持アームと、電子カセッテとの組み合わせで提供してもよい。
【0074】
上記実施形態では、L字型のアーム本体25を有し、全体がL字型に構成されているが、X線源17を保持することができる形状であればよく、例えば円弧状に湾曲したものでもよい。また、支柱は1個に限られず、複数設けてもよい。この場合にも、各支柱を電子カセッテ12に着脱自在に取り付ける。
【0075】
上記実施形態では、放射線としてX線を例に説明したが、本発明は、γ線など、X線以外の放射線を使用するものでもよい。
【符号の説明】
【0076】
10 X線撮影システム
11 X線発生装置
12 電子カセッテ(X線画像検出器)
13 保持アーム
14 PC
15 制御装置
17 X線源
18 高電圧発生器
22 位置決め機構
24 把手部
24a 把手部開口
25 アーム本体
26 支柱
50 三脚部
51 保持アーム
52,53 水準器
54,55 アジャスト機構
65 保持アーム
67 揺動軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を被検体に照射する放射線源と、
前記被検体を透過した放射線を受けて前記被検体の放射線画像を検出する放射線画像検出器、及び一面に前記放射線が入射する入射面が形成され前記放射線画像検出器を収容する筐体を有する可搬型の電子カセッテと、
前記入射面に対して前記放射線源が対向配置されるように前記放射線源を保持し、該放射線源を、立体視可能な視差を有する右眼用のR視点画像と左眼用のL視点画像の1組の画像のそれぞれを得るための右眼用照射位置及び左眼用照射位置に変位させる可搬型の保持アームと、
前記放射線源を前記右眼用照射位置と左眼用照射位置の各位置に位置決めする位置決め機構とを備えていることを特徴とする可搬型放射線撮影システム。
【請求項2】
前記保持アームは、前記放射線源が取り付けられるアーム本体と、前記放射線源が前記右眼用照射位置と左眼用照射位置の各位置に選択的に変位するように前記アーム本体が変位自在に取り付けられる支柱とを有しており、
前記位置決め機構は、前記アーム本体の変位を規制して前記放射線源の位置決めを行うことを特徴とする請求項1記載の可搬型放射線撮影システム。
【請求項3】
前記アーム本体は、前記放射線源が取り付けられる端部とは反対側の端部を支点として前記入射面と平行な面内で回転し、前記放射線源を前記右眼用照射位置と前記左眼用照射位置との間で変位させることを特徴とする請求項2記載の可搬型放射線撮影システム。
【請求項4】
前記アーム本体は、前記支点から前記放射線源が取り付けられる取付位置までの長さが前記視差の1/2の長さを有しており、
前記右眼用照射位置と前記左眼用照射位置の一方から他方への回転角度が180度であることを特徴とする請求項3記載の可搬型放射線撮影システム。
【請求項5】
前記右眼用照射位置と前記左眼用照射位置の各位置において、前記放射線源の照射方向が前記各位置の間の中心に向けて傾斜するように、前記アーム本体は、前記照射方向が前記支点に向けて傾いた状態で前記放射線源を取り付ける首振り機構を有することを特徴とする請求項4記載の可搬型放射線撮影システム。
【請求項6】
前記保持アームは、前記放射線源が一端に取り付けられるアーム本体と、前記アーム本体の他端が取り付けられ、前記電子カセッテの近傍に配置されて、前記入射面に垂直な面内で揺動する支柱とを有しており、
前記位置決め機構は、前記支柱の揺動を規制して前記放射線源の位置決めを行うことを特徴とする請求項1記載の可搬型放射線撮影システム。
【請求項7】
前記位置決め機構は、さらに、前記右眼用照射位置及び左眼用照射位置の中間に位置する基準位置に前記放射線源を位置決めすることを特徴とする請求項1,2,3,6いずれか1項記載の可搬型X線撮影システム。
【請求項8】
前記保持アームは、前記放射線源を前記入射面との間隔が変化するように高さを調節する高さ調節機構と、前記放射線源を前記入射面と平行な方向に移動させて水平方向の位置を調節する水平位置調節機構とを含むことを特徴とする請求項1から7いずれか1項記載の可搬型放射線システム。
【請求項9】
前記保持アームは、前記筐体に着脱自在に取り付けられることを特徴とする請求項1から8いずれか1項記載の可搬型放射線撮影システム。
【請求項10】
前記保持アームは、自立型の三脚部を備えることを特徴とする請求項1から8いずれか1項記載の可搬型放射線撮影システム。
【請求項11】
前記保持アーム及び前記筐体に設けられる水準器と、前記三脚部に設けられ、前記右眼用照射位置及び左眼用照射位置の各位置での放射線源が同一水平面となるようにレベル調節するための三脚側アジャスト機構と、前記筐体に設けられ、前記入射面が水平面となるようにレベル調節するための筐体側アジャスト機構とを備えることを特徴とする請求項10記載の可搬型放射線撮影システム。
【請求項12】
放射線源から照射され被検体を透過した放射線を受けて前記被検体の放射線画像を検出する放射線画像検出器、及び一面に前記放射線が入射する入射面が形成され前記放射線画像検出器を収容する筐体を有する可搬型の電子カセッテと、
前記入射面に対して前記放射線源が対向配置されるように前記放射線源を保持し、該放射線源を、立体視可能な視差を有する右眼用のR視点画像と左眼用のL視点画像の1組の画像のそれぞれを得るための右眼用照射位置及び左眼用照射位置に変位させる可搬型の保持アームと、
前記放射線源を前記右眼用照射位置と左眼用照射位置の各位置に位置決めする位置決め機構とを備えていることを特徴とする可搬型放射線撮影システム。
【請求項13】
前記保持アームは、前記放射線源を着脱自在に取り付け可能であることを特徴とする請求項12記載の可搬型放射線撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−70885(P2012−70885A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217401(P2010−217401)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】