説明

可撓性基板の穴あけ加工方法、薄膜基板の貫通孔加工装置、および薄膜太陽電池の製造装置

【課題】 製品コストを低減できる可撓性基板の穴あけ加工方法、薄膜基板への貫通孔加工装置、および薄膜太陽電池の製造装置を提供する。
【解決手段】 金型ユニット5a,5bの可動金型は、それぞれ前後スライドユニット42a,42bの上に載置され、水平方向に移動可能となっている。金型ユニット5aの加工孔形成部51には、その上下方向に離間して互いに水平状態に保持された下部搬送ロール53aと上部搬送ロール52aが配置され、可撓性基板1が加工孔形成部51の下から上に、鉛直方向に搬送される。また、金型ユニット5bの加工孔形成部51には、その上下方向に離間して互いに水平状態に保持された上部搬送ロール52bと下部搬送ロール53bが配置され、可撓性基板1が加工孔形成部51の上から下に、鉛直方向に搬送される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理的加工による可撓性基板への穴あけ加工方法、具体的には薄膜基板への貫通孔加工装置、および薄膜太陽電池の製造装置に関し、とくに可撓性基板の所定位置に複数個の貫通孔を形成する穴あけ加工方法、薄膜基板への貫通孔加工装置、および薄膜太陽電池の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜太陽電池は、薄型で軽量、製造コストの安さ、大面積化が容易であることなどから、今後の太陽電池の主流となると考えられているものであって、業務用、一般住宅用として建物の屋根や窓などにとりつけて電力供給に利用されるなど、その需要が広がってきている。
【0003】
図7は、プラスチックフィルムを基板とした薄膜光電変換素子を示す斜視図である。基板71の表面に形成した単位光電変換素子72および基板71の裏面に形成した接続電極層73はそれぞれ複数の単位ユニットに分離され、それぞれの分離位置が表裏の各面でずらして形成されている。単位光電変換素子72には、基板71上に下電極層74とアモルファス半導体部分である光電変換層75が積層され、光電変換層75の一部分を覆うように透明電極層76が形成されている。
【0004】
このため、単位光電変換素子72の光電変換層75で発生した電流は、まず透明電極層76に集められる。単位光電変換素子72の透明電極形成領域には集電孔77が形成されていて、これらの集電孔77を介して背面の接続電極層73に電流が通じている。さらに、単位光電変換素子72の透明電極形成領域の外側には、基板71裏面の接続電極層73に達するように接続孔78が形成されている。これにより、光電変換層75で発生した電流が、この接続孔78を介して一方の接続電極層73から他方の単位光電変換素子72の下電極層74に流れるように、隣接する単位光電変換素子72,72が互いに直列接続されることになる。
【0005】
この薄膜太陽電池は、電気絶縁性を有する基板71の表面に下電極層74、光電変換層75、透明電極層76を順次積層してなる単位光電変換素子72と、基板71の裏面に形成した接続電極層73とを備えている。そして、単位光電変換素子72および接続電極層73は互いに位置をずらして単位部分に分離され、透明電極層76の形成領域外側に形成した電気的直列接続用の接続孔78および透明電極層76の形成領域内に形成した集電孔77を介して表面上の互いに分離され隣り合う単位光電変換素子72が電気的に直列に接続された薄膜光電変換素子として構成されている。
【0006】
つぎに、このような薄膜光電変換素子の一例として、穴あけなどを必要とする薄膜太陽電池の製造方法について説明する。
図8は、薄膜太陽電池の簡略化した製造工程を説明するための断面図である。同図(a)には基板としてのプラスチックフィルム81を示す。同図(b)では、プラスチックフィルム81に接続孔78となる貫通孔88を形成する。同図(c)では、接続電極層73および下電極層74として、それぞれプラスチックフィルム81の各面に第3電極層83と第1電極層84とを形成する。同図(d)では、第3電極層83と第1電極層84を貫通するように、貫通孔88と所定の距離離れた位置に集電孔77となる複数の貫通孔87を加工する。
【0007】
同図(e)の工程では、光電変換層75となる半導体層85を成膜する。同図(f)では、半導体層85の上に光を通過する透明電極層76として、第2電極層86を形成する。同図(g)では、第3電極層83の上に第2電極層86と電気的コンタクトをとるように、第4電極層89を形成する。この後、レーザビームを用いて、プラスチックフィルム81の両側の薄膜を分離加工して、図7に示すような直列接続構造の薄膜太陽電池が形成される。
【0008】
なお、図7においては、基板71の裏面の第3電極層83、第4電極層89を電気的に一層の接続電極層73として図示した。図8では、集電孔77となる貫通孔87内において第2電極層86に第4電極層89が重ねて形成され、それらが互いに接続された状態を示している。
【0009】
このような薄膜太陽電池の製造工程において、貫通孔88を形成する工程および複数の貫通孔87を形成する工程は、従来からポンチを用いた打ち抜き加工、またはレーザ光などのエネルギビームを用いるレーザ加工によって実施されていた。しかし、レーザ加工においてはYAGレーザなどの赤外レーザの場合には、熱加工により孔の内面と周辺に凹凸が形成され、電極層が分離しやすくなる問題があった。一方、エキシマレーザなど短波長レーザを用いることによって凹凸の形成されない加工が可能ではあるが、量産性に劣り、運転コストが高いことなどから適用が困難であった。
【0010】
そこで、ポンチを用いた打ち抜き加工に関して、本件の出願人は、後述する特許文献1に記載するような量産性に富む連続開孔加工装置を提案している。図9は、特許文献1に記載された薄膜太陽電池の製造装置における開孔装置の断面模式図であって、基板搬送手段と貫通孔加工手段と加工位置検出孔加工手段とを備えている。巻出しロールR1から送り出された可撓性基板1aは、まず所定位置に所定数の加工位置検出孔が加工位置検出用の孔開孔部P3で開けられる。つぎに加工位置検出器S2,S1を備えた集電孔開孔部P2、および接続孔開孔部P1により、順次に集電孔および接続孔が開けられる。その後、洗浄装置Wで洗浄され、巻取ロールR2に巻き取られる。基板搬送手段では、各種の孔位置に対応して、加工位置検出用の孔を基準にして、可撓性基板1aの搬送方向および搬送距離が制御される。
【0011】
図10は、従来の開孔装置の開孔部を拡大して示す模式図である。開孔部は、断面が基板1aの孔形状のポンチPと、ポンチPと同じ断面形状の開孔部(ポンチ孔)を有するストリッパプレートPsと、同じ開口部を有するダイDとからなる。ダイDとポンチPとは所定のクリアランスCを有するように構成されている。ダイDとストリッパプレートPs上に搬送され停止した可撓性基板1aを、ダイDとストリッパプレートPsにより押さえられた状態でポンチPにより打ち抜くことにより、可撓性基板1aの所定位置に貫通孔が開けられる。
【0012】
このような開孔装置では、ポンチPとダイDは1つの金型に多数個形成され、ポンチ間ピッチ、ダイ間ピッチおよびポンチ径・ダイ孔径は高精度に仕上げられる。すなわち、可撓性基板1aへの加工形状は3〔mm〕直径以下、あるいは四角形・多角形の16〔mm2〕以下の大きさで孔を形成することが可能である。また、この種の穴あけ機械の打ち抜き滓(スラグ)の排除方法には、ダイD側にエア導入ノズルを形成し、抜き滓をエア噴射力で排出する方法が知られている。
【0013】
また、市販の金型プレス装置は、通常ダイDとポンチPの構成でダイD側にポンチPの駆動をガイドするポストが固定され、ポンチPを形成する上型(可動金型)が上下動することによって打ち抜き加工が実施される。この金型プレス装置では、1分間に120回などの高速穴あけ加工を実施するために、可動金型をその自重に抗して所定の高さだけを持上げるなどの大きな動力が必要であり、プレス機自体のフレーム剛性が必要となるため、高価な大型プレス機の使用が必要となる。
【特許文献1】特開平8−139352号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このようなポンチを用いてプラスチックフィルムなどの可撓性基板を打ち抜くために必要なプレス力は、1〔kN〕程度で十分である。ところが、ポンチを形成する金型の自重が大きく、それを高速に上下動作させるための力は200〔kN〕となるために、大型かつ高価な金型プレス装置が必要となる。また、金型プレス装置が大型であると、駆動装置(プレス装置)が大きくなり、建屋高さや設置スペースの点などでも問題となり、装置自体の価格が高くなるだけでなく、大型駆動装置であるためにその駆動時の騒音や振動も大きい。したがって、電気代などのランニングコストや安全面で作業環境が低下しやすく、これらの改善防止のために相当のコストを要するという問題があった。
【0015】
さらに従来の開孔装置は、11〔kW〕程度の大容量駆動モータを必要としていて、その使用電力が増大することにより装置のランニングコストが高くなる。また、開孔装置の設置スペースも、プレス機の大きさに応じた広さが必要となる。したがって、これらのコストが製品価格に反映されることになれば、薄膜太陽電池の価格が高くなってしまうという問題もあった。
【0016】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、快適かつ安全な製造現場での作業を可能にして、かつ製品コストを低減できる可撓性基板の穴あけ加工方法、薄膜基板への貫通孔加工装置、および薄膜太陽電池の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明では、上記問題を解決するために、可撓性基板を鉛直状態に保持して水平方向に搬送し、前記可撓性基板を挟むように、固定金型、可動金型を前記可撓性基板のそれぞれ表裏面側に配置し、前記可撓性基板の搬送方向とは直交する水平面内で、前記可動金型を往復駆動することによって、前記可撓性基板に穴あけ加工を施すようにしたことを特徴とする可撓性基板の穴あけ加工方法が提供される。
【0018】
また、本発明は送り部からロール状に巻かれた薄膜基板をステップ搬送して、前記薄膜基板に複数の貫通孔を連続して加工形成する貫通孔加工装置であって、前記薄膜基板を鉛直状態に保持して搬送する基板搬送手段と、前記基板搬送手段により搬送中の薄膜基板の所定位置に複数の貫通孔を同時に加工するためのダイ部とポンチ部を有する金型手段と、前記金型手段の可動金型を固定金型に対して、その自重を支えながら水平方向に前後移動可能とする摺動手段と、を備えたものである。
【0019】
さらに、本発明では、可撓性基板を貫通する接続孔および集電孔が形成される薄膜太陽電池を製造する薄膜太陽電池の製造装置が提供される。この薄膜太陽電池の製造装置は、前記可撓性基板を鉛直状態に保持して搬送する基板搬送手段と、前記可撓性基板の所定位置に前記接続孔および前記集電孔を順次に加工するためのダイ部とポンチ部を有する金型手段と、前記金型手段の可動金型を固定金型に対して、その自重を支えて水平方向に前後移動可能とする摺動手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、穴あけ加工に要する駆動力が大幅に低減できるから、製造装置を構成するためのフレームが小さくなって、装置自体の小型化・省スペース化が達成でき、さらに運転動力が低減できることから省電力化も達成できる。また、装置コスト・搬入コスト・ランニングコスト・建屋コストなどを大幅に低減できる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照してこの発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る薄膜太陽電池の製造装置を示す側面図である。
図1において、薄膜太陽電池の製造装置は可撓性基板1がロール状に巻かれた送りコア21を備えた送り部2と、基板位置検出用のセンサユニット部3と、2台の金型ユニット5a,5bを備えた加工部4と、巻取コア62を備えた巻取部6とから構成されている。送り部2では、ロール状に巻かれた可撓性基板1が送りコア21にセットされ、複数の送りロール22a〜22dに掛け渡され、加工部4の下部搬送ロール53aに向かって水平に送り出されている。基板位置検出用のセンサユニット部3は送り部2と加工部4の間に配置され、加工部4に送り出される可撓性基板1の送り量を検出して、そのステップ搬送を制御している。
【0022】
加工部4には、ベース架台41上で2つの金型ユニット5a,5bがベースフレーム54を中心にして、図示左右方向にそれぞれ配置されている。それぞれの金型ユニット5a,5bは後述する可動金型を駆動するためのアクチュエータ45を備えるとともに、ダイとポンチを有する加工孔形成部51が設けられている。これらの金型ユニット5a,5bの可動金型は、それぞれ前後スライドユニット42a,42bの上に載置され、水平方向に移動可能となっている。
【0023】
これらの金型ユニット5a,5bに対して、2本の上部搬送ロール52a,52bと2本の下部搬送ロール53a,53bが設置され、それぞれの加工孔形成部51で可撓性基板1の所定位置に複数の貫通孔を同時に加工するように構成されている。すなわち、金型ユニット5aの加工孔形成部51には、その上下方向に離間して、互いに水平状態に保持された下部搬送ロール53aと上部搬送ロール52aが配置され、可撓性基板1が加工孔形成部51の下から上に、鉛直方向に搬送される。また、金型ユニット5bの加工孔形成部51には、その上下方向に離間して、互いに水平状態に保持された上部搬送ロール52bと下部搬送ロール53bが配置され、可撓性基板1が加工孔形成部51の上から下に、鉛直方向に搬送される。
【0024】
巻取部6は、動力軸が設けられた巻取ロール61と、可撓性基板1を巻き取る巻取コア62と、搬送時に可撓性基板1のテンションを調整するテンション調整ユニット63と、複数の巻取ロール64a〜64dとから構成されている。巻取部6には、加工部4での穴あけ加工が施された後、可撓性基板1が下部搬送ロール53bから水平に送り込まれ、巻取ロール64a〜64dを経由して巻取コア62に巻き取られる。
【0025】
図2は、図1に示す製造装置の上面図である。
加工部4の金型ユニット5a,5bは、固定金型55と可動金型56に分けられる。ここでは、ベース架台41の中央部にベースフレーム54が設けられており、それぞれ2台の金型ユニット5a,5bの固定金型55がベースフレーム54に固定されている。また、アクチュエータ45とともに金型ユニット5a,5bの可動金型56は、それぞれの自重が前後スライドユニット42a,42bによって支えられている。各金型ユニット5a,5bのアクチュエータ45は、それぞれ図の左右方向に配置されたプレスガイド58に沿って可動金型56を往復駆動したとき、固定金型55に対して可動金型56が並行に接離するように構成されている。
【0026】
すなわち、これらの前後スライドユニット42a,42bは、ベース架台41上で固定金型55に対して、可動金型56を水平方向に移動可能とする摺動手段を構成している。可撓性基板1は、送り部2の送りコア21と巻取部6の巻取コア62の間を左右方向に水平に搬送され、しかも各金型ユニット5a,5bの加工孔形成部51において、その搬送方向が鉛直方向に変更されている。したがって、可動金型56の自重を前後スライドユニット42a,42bによって受けとめるように構成した金型ユニット5a,5bでは、従来の金型プレス装置のように、可動金型をその自重に抗して所定の高さだけを持上げるなどの大きな動力が必要なくなる。
【0027】
また、可撓性基板1の搬送制御は、センサユニット部3やテンション調整ユニット63により、巻取部6の巻取コア62における巻取力を均一にして、巻きズレを防ぐようにして巻き取ることができる。
【0028】
図3は、薄膜太陽電池の製造装置を構成する金型ユニットの一部分を示す側断面図である。図4は、図3の金型ユニットにおいて、可動金型56が後退した状態を示す側断面図である。いずれの図においても、2台の金型ユニット5a,5bのうちの1台のみを図示している。
【0029】
前後スライドユニット42bは、ベース架台41上に固定された前後ガイド(LMガイド)43とスライダ44によって構成され、アクチュエータ45は前後ガイド43に沿ってスライダ44を水平方向に駆動するように構成されている。また、ベース架台41上にはベースフレーム54が固定され、ベースフレーム54の左右両側には、それぞれ2台の金型ユニット5a,5bの固定金型55が固着されている。固定金型55の外面にはダイ55aが保持されており、その中央部分にダイ雌孔55bが形成されている。固定金型55のダイ55a側で水平方向に延出されたプレスガイド58,58には、可動金型56がブッシュ58aによって摺動自在に取り付けられている。金型ユニット5bの可動金型56には、固定金型55のダイ55aに対向する面に穴あけポンチ56aが設けられている。
【0030】
金型ユニット5bのアクチュエータ45は、これらのプレスガイド58,58の先端にナット58bにより締着されている。このアクチュエータ45は、サーボモータや油圧式シリンダおよびエア式シリンダなどであって、アクチュエータロッド46を伸縮することによって、スライダ44上に固着された可動金型56がプレスガイド58,58に沿って前進、後退するように駆動制御できる。したがって、図4に示す後退位置に可動金型56があるとき、可撓性基板1が加工孔形成部51の上下方向に搬送され、所定位置で可撓性基板1が停止した直後に図3に示す位置に前進して、固定金型55に可動金型56がプレスされて、可撓性基板1の所定箇所に穴あけ加工が施される。
【0031】
なお、ベース架台41に設けられたベースフレーム54には、固定金型55のダイ雌孔55bに連通して抜き滓排出口57が形成されている。したがって、ベースフレーム54に保持された固定金型55のダイ雌孔55b内から、可撓性基板1にプレス孔をあけた際の抜き滓をエア吸引などによって排出することができる。
【0032】
以上、この発明の薄膜太陽電池の製造装置は、送り部2からロール状に巻かれた可撓性基板1をステップ搬送して、可撓性基板1に複数の貫通孔を連続して加工形成するものであって、可撓性基板1を鉛直状態に保持して搬送する基板搬送手段と、この基板搬送手段により搬送中の可撓性基板1の所定位置に複数の貫通孔を同時に加工するためのダイ55aと穴あけポンチ56aを有する金型ユニット5a,5bと、これらの金型ユニット5a,5bの可動金型56を固定金型55に対して、その自重を支えながら水平方向に前後移動可能とする前後スライドユニット42a,42bとを備えている。
【0033】
また、基板搬送手段は可撓性基板1をロール状に巻回した送りコア21と、2台の金型ユニット5a,5bのそれぞれ上下方向に離間して配置され、互いに水平状態に保持された2本の上部搬送ロール52a,52bと2本の下部搬送ロール53a,53bとを備え、これらの上部搬送ロール52a,52bと下部搬送ロール53a,53bの間で可撓性基板1を鉛直方向に搬送することにより、金型の駆動部を水平に駆動するスライドユニットが構成され、金型駆動部の自重を支持し水平駆動に変換され、金型自重を低摩擦係数のスライドガイドで動かすことができるため、従来の1/10以下の駆動力で穴あけ加工が可能となる。したがって、この薄膜太陽電池の製造装置は、今後の産業界における環境対策・省エネルギ化の取組みを前進させるうえで、極めて有効なものである。
【0034】
図5は、本発明の第2の実施形態に係る薄膜太陽電池の製造装置を示す側面図であり、図6は、図5の製造装置を構成する1つの金型ユニットを示す側断面図である。
第2の実施形態に係る薄膜太陽電池の製造装置が、第1の実施形態のものと異なる点は、可撓性基板1を予め垂直になるように、送り部2、加工部4、巻取部6が構成されている点である。すなわち、加工部4は、2つの金型ユニット5c,5dを垂直に立てて左右に並べる構成とし、可撓性基板1は送りコア23から巻取コア65まで垂直に搬送し加工と巻取を行うようにしている。金型ユニット5c,5dを垂直に立てたことによって、金型ユニット5c,5dの可動金型56を前後スライドユニット42c,42dで保持することが可能になり、可動金型56を前後方向に駆動して、可撓性基板1に穴あけ加工を行う構成としている。
【0035】
また、固定金型55には複数のダイ雌孔55bが形成されたダイ55aが設置され、可動金型56には複数の穴あけポンチ56a〜56fからなるポンチユニット59が構成されている。ダイ55aと穴あけポンチ56a〜56fの間には、可撓性基板1が通過する加工孔形成部51が構成されている。可撓性基板1は加工孔形成部51に搬送されてきたとき、穴あけポンチ56a〜56fの前後駆動により、ダイ55a側に抜き滓が誘導されるとともに、所定の穴を連続して可撓性基板1に形成できる。
【0036】
以上、本発明の2つの実施形態について説明したところから明らかなように、金型ユニット5a〜5dの駆動側、すなわち穴あけポンチ56aやポンチユニット59を含む可動金型56の自重を水平に駆動可能なように、前後スライドユニット42a,42b,42c,42dによって支え、この支え部分には低摩擦の摺動部材で構成したことによって、大型かつ高価な金型プレス装置が不要になる。すなわち、前後スライドユニット42a,42b,42c,42dに低摩擦の摺動部材を用いることにより、例えばポンチ部の自重が200〔kg〕あり、摺動部材の摩擦係数が0.1であるとき、200〔kg〕の金型ポンチ部の駆動力は約200〔N〕程度の小さい力によって駆動できる。
【0037】
なお、実用的なアクチュエータ45の推力は駆動速度を早くするため約20〔kN〕程度となるが、その場合でも、従来の上下駆動方式のものに比べれば、駆動装置の駆動力は10分の1以下ですむ。したがって、金型装置の小型化、それに伴う省スペース・低騒音・低振動、ランニングコストの低減を実現することができる。また、本発明は金属材料をスパッタ法などで貫通孔に成膜して、表裏の電気的コンタクトを得る装置にも応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る薄膜太陽電池の製造装置を示す側面図である。
【図2】図1に示す製造装置の上面図である。
【図3】薄膜太陽電池の製造装置を構成する金型ユニットの一部分を示す側断面図である。
【図4】図3の金型ユニットにおいて、可動金型が後退した状態を示す側断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る薄膜太陽電池の製造装置を示す側面図である。
【図6】図5の製造装置を構成する1つの金型ユニットを示す側断面図である。
【図7】プラスチックフィルムを基板とした薄膜光電変換素子を示す斜視図である。
【図8】薄膜太陽電池の簡略化した製造工程を説明するための断面図である。
【図9】従来の薄膜太陽電池の製造装置における開孔装置の断面模式図である。
【図10】従来の開孔装置の開孔部を拡大して示す模式図である。
【符号の説明】
【0039】
1 可撓性基板
2 送り部
3 基板位置検出用のセンサユニット部
4 加工部
5a,5b 金型ユニット
6 巻取部
21 送りコア
22a〜22d 送りロール
41 ベース架台
42a,42b 前後スライドユニット
43 前後ガイド(LMガイド)
44 スライダ
45 アクチュエータ
46 アクチュエータロッド
51 加工孔形成部
52a,52b 上部搬送ロール
53a,53b 下部搬送ロール
54 ベースフレーム
55 固定金型
55a ダイ
55b ダイ雌孔
56 可動金型
56a〜56f 穴あけポンチ
57 抜き滓排出口
58 プレスガイド
58a ブッシュ
58b ナット
59 ポンチユニット
61 巻取ロール
62 巻取コア
63 テンション調整ユニット
64a〜64d 巻取ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性基板を鉛直状態に保持して水平方向に搬送し、
前記可撓性基板を挟むように、固定金型、可動金型を前記可撓性基板のそれぞれ表裏面側に配置し、
前記可撓性基板の搬送方向とは直交する水平面内で、前記可動金型を往復駆動することによって、前記可撓性基板に穴あけ加工を施すようにしたことを特徴とする可撓性基板の穴あけ加工方法。
【請求項2】
送り部からロール状に巻かれた薄膜基板をステップ搬送して、前記薄膜基板に複数の貫通孔を連続して加工形成する貫通孔加工装置であって、
前記薄膜基板を鉛直状態に保持して搬送する基板搬送手段と、
前記基板搬送手段により搬送中の薄膜基板の所定位置に複数の貫通孔を同時に加工するためのダイ部とポンチ部を有する金型手段と、
前記金型手段の可動金型を固定金型に対して、その自重を支えながら水平方向に前後移動可能とする摺動手段と、
を備えたことを特徴とする薄膜基板の貫通孔加工装置。
【請求項3】
前記金型手段は、前記ダイ部と前記ポンチ部がそれぞれ円筒状のガイドポストによって支持され、前記ポンチ部が前記摺動手段により水平方向に可動する前記可動金型に設けられていることを特徴とする請求項2記載の薄膜基板の貫通孔加工装置。
【請求項4】
前記基板搬送手段は、
前記薄膜基板をロール状に巻回した送りコアと、
前記金型手段のそれぞれ上下方向に離間して配置され、互いに水平状態に保持された2本のロールと、
を備え、前記2本のロールの間で前記薄膜基板を鉛直方向に搬送することを特徴とする請求項2記載の薄膜基板の貫通孔加工装置。
【請求項5】
前記基板搬送手段は、送出側と巻取側における搬送ロールを垂直に立てた状態でロールツーロール搬送するものであって、前記薄膜基板を前記金型手段の貫通孔形成部において鉛直状態に通過させるようにしたことを特徴とする請求項2記載の薄膜基板の貫通孔加工装置。
【請求項6】
可撓性基板を貫通する接続孔および集電孔が形成される薄膜太陽電池を製造する薄膜太陽電池の製造装置において、
前記可撓性基板を鉛直状態に保持して搬送する基板搬送手段と、
前記可撓性基板の所定位置に前記接続孔および前記集電孔を順次に加工するためのダイ部とポンチ部を有する金型手段と、
前記金型手段の可動金型を固定金型に対して、その自重を支えて水平方向に前後移動可能とする摺動手段と、
を備えたことを特徴とする薄膜太陽電池の製造装置。
【請求項7】
前記薄膜太陽電池は、
絶縁性を有する可撓性基板の一面に光電変換層、前記光電変換層を挟んで前記可撓性基板側に第1電極層、および反対面に透明な第2電極層がそれぞれ設けられており、
前記第1電極層と前記可撓性基板の他面上に形成されている第3電極層とは、前記可撓性基板を貫通する接続孔の内面で接続され、
前記第2電極層と前記可撓性基板の他面上に形成されている第4電極層とは、前記可撓性基板を貫通する集電孔の内面で接続されていることを特徴とする請求項6記載の薄膜太陽電池の製造装置。
【請求項8】
前記薄膜太陽電池は、前記光電変換層および前記第3電極層が互いに位置をずらして単位部分に分離されており、
前記第2電極層の形成領域の外側に前記接続孔を形成するとともに、前記第2電極層の形成領域内に前記集電孔を形成することによって、前記可撓性基板の表面上で互いに分離され、隣り合う単位部分の光電変換層が前記集電孔を介して電気的に直列に接続したことを特徴とする請求項7記載の薄膜太陽電池の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−123124(P2006−123124A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−316744(P2004−316744)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000005234)富士電機ホールディングス株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】