説明

可撓性線状体の圧縮力計測装置

【課題】管の中へ挿入される線状体を操作するときに、管内部における障害物の存在を管外部において検知できる、計測装置を提供する。
【解決手段】この計測装置2では、動脈瘤を塞栓するためのコイルが先端に付いたワイヤのように、線状体よりも太い鞘を有する線状体に作用する長手軸方向の圧縮力を、計測精度を低下させることなく計測できる、使い勝手のよい計測装置2を提供することができる。また、拘束部5、6の長さを最小限とし、計測装置2の小型化を実現することができる。さらに、線状体の座屈荷重の大小によらず線状体に作用する長手軸方向の圧縮力を計測可能な計測装置2を提供することができ、同一の計測装置2を種々の材質を有する線状体に適用できるので、経済的である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、力の計測装置に関し、特に、可撓性を有する線状体に作用する圧縮力の計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
可撓性を有する線状体は、体内の管の中へ挿入される線状の医療器具として実用化されている。たとえば、血管、尿管、気管支、消化管もしくはリンパ管などの体内にある管に挿入されるガイドワイヤやカテーテル、または、動脈瘤を塞栓するための塞栓用コイルが先端に付いたワイヤなどが知られている。これらの線状体を体内の管の中へ挿入し、体外からの操作によって目的部位まで誘導する。
【0003】
線状体が挿入される管は必ずしも直線状ではなく、部分的に屈曲や分岐をしている場合が多い。また、管の径は必ずしも一定ではなく、管自体が細くなっていたり、血管内に生じる血栓などの管内部にある障害物によって管の径が細くなっていたりする場合がある。しかし、従来の線状体では、線状体の進行方向前方の状況を検知する手段がなく、線状体の操作を操作者の勘に頼らざるを得ず、体外からの誘導操作には熟練が必要であった。そこで、線状体の進行方向前方における障害物の存在を検知する装置として、線状体の先端に圧力センサを設ける装置が開示されている(たとえば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−263089号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、線状体の先端に圧力センサを設ける装置は、特に極細の線状体については実現性に困難を伴う。たとえば脳血管に挿入するガイドワイヤの場合、その直径は0.35mm程度であり、このような極細の線状体の先端に小型の圧力センサを設けることは困難である。また、圧力センサの信号を外部に取り出すために、線状体の中に配線を挿通するのは、さらなる困難を要する。
【0005】
また、線状体が挿入される管が屈曲している場合や、管の径が細くなっている場合には、線状体の挿入抵抗は、管との摩擦の影響を受ける。よって、線状体の先端に設ける圧力センサの出力と、操作者の挿入時の力覚とが必ずしも一致しない場合がある。したがって、線状体の先端に圧力センサを設ける装置を用いる場合においても、操作者が外部において指先で把持した線状体の挿入抵抗の力覚情報に基づいて、すなわち操作者の勘に頼って、線状体の操作を実施することになる。その上、操作者の力覚は操作者しか知ることができないため、熟練操作者の手技を定量化し経験の少ない操作者へ伝授するのは困難である。
【0006】
さらに、異なる用途に適応するための種々の材質を有する線状体を用意し、それぞれに圧力センサを設けることは、不経済であり、製造コストの増大を招く。
【0007】
それゆえに、この発明の主たる目的は、管の中へ挿入される線状体を操作するときに、管内部における障害物の存在を管外部において検知できる、かつ種々の材質を有する線状体に適用できる、計測装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る計測装置は、可撓性を有する線状体に作用する長手軸方向の圧縮力を計測する計測装置であって、線状体が貫通する貫通孔が形成される本体を備え、線状体に長手軸方向の圧縮力が作用するとき、貫通孔の内部において線状体が所定の方向へ湾曲する。また、線状体の湾曲の度合いを検出するセンサを備える。また、センサによって検出される線状体の湾曲の度合いを、線状体に作用する長手軸方向の圧縮力へ変換する、変換回路を備える。そして、貫通孔の内壁には、貫通孔に沿って本体を貫通するように、溝が形成される。
【0009】
この場合は、貫通孔の内壁に、貫通孔の直径よりも大きい幅および深さを有する溝が形成される。動脈瘤を塞栓するためのコイルが先端に付いたワイヤにおいては、先端のコイルは柔らかいために鞘に収められており、鞘はワイヤよりも太い。よって、動脈瘤を塞栓するためのコイルが先端に付いたワイヤを血管内へ挿入する場合に、コイルが収められている鞘のみが通過できる溝が形成される計測装置を使用することで、ワイヤに作用する長手軸方向の圧縮力を計測できる。計測装置の内部においてワイヤは長手軸方向以外の移動を規制されるため計測精度を保持することができ、また、鞘を外した状態でワイヤを計測装置の貫通孔に挿入する必要のない使い勝手のよい計測装置を提供することができる。
【0010】
好ましくは、溝は、線状体が湾曲する貫通孔の内部において、線状体の湾曲の内側にある貫通孔の内壁に沿って形成される。また貫通孔は、線状体が湾曲する貫通孔の内部において、線状体の湾曲の外側にある貫通孔の内壁が、線状体の湾曲の内側にある貫通孔の内壁から、溝の幅と線状体の直径との合計を超える距離分離れ、空間を成すように形成される。
【0011】
この場合は、線状体が湾曲する貫通孔の内部の空間において、線状体に長手軸方向の圧縮力が作用して線状体が湾曲するとき、湾曲に伴う線状体の移動と関係しない位置である、線状体の湾曲の内側にある貫通孔の内壁に沿って、溝が形成される。よって、溝が線状体の湾曲と干渉して圧縮力の計測精度を低下させることを防止することができる。
【0012】
また好ましくは、貫通孔は、その両端部において線状体の長手軸方向以外への移動を規制する拘束部を有するように形成され、貫通孔に線状体を貫通させ線状体に重力以外の外力が加えられないとき、本体の線状体が貫通する出入口の外部において、線状体と拘束部とが平行になるように、形成される。この場合は、計測精度を低下させないために必要な拘束部の長さを、線状体と拘束部との平行によって規定する。よって、拘束部の長さを最小限とし、計測装置の小型化を実現することができる。
【0013】
また、貫通孔の内壁に、貫通孔に沿って本体を貫通するように溝が形成される場合は、拘束部の延在方向に垂直な断面の寸法は溝の断面寸法と同じとなる。このとき拘束部の長さが不十分であると、線状体が拘束部において長手軸方向以外へも移動し、計測精度低下の原因となる。よって、溝が形成される場合においても、線状体と拘束部との平行によって拘束部の長さを規定することで、計測精度の低下を防止することができる。
【0014】
また好ましくは、貫通孔は、線状体が湾曲する貫通孔の内部において、線状体の湾曲の外側にある貫通孔の内壁が、線状体の湾曲の内側にある貫通孔の内壁から離れ、空間を成すように形成される。また、線状体の湾曲の外側にある貫通孔の内壁は、貫通孔の内側に向かって凸の曲面形状となるよう、貫通孔が形成される。この場合は、線状体が湾曲する貫通孔の内部の空間において、線状体に長手軸方向の圧縮力が作用して線状体が湾曲するとき、線状体の湾曲の外側にある貫通孔の内壁に沿って線状体が湾曲するので、空間内部で線状体が座屈することを防止できる。よって、線状体に作用する長手軸方向の圧縮力を広範囲に精度よく計測することができる。
【0015】
また好ましくは、線状体に長手軸方向の圧縮力が作用し線状体が湾曲するとき、線状体の湾曲の外側にある貫通孔の内壁から線状体の一部が離れるように、貫通孔が形成される。また、圧縮力が増大するにつれて、線状体が内壁から離れる点である接点間の距離は減少するように、貫通孔が形成される。この場合は、座屈荷重の小さな線状体でも座屈することなく線状体に作用する長手軸方向の圧縮力を精度よく計測できる。よって、線状体の座屈荷重の大小によらず線状体に作用する長手軸方向の圧縮力を計測可能な計測装置を提供することができ、同一の計測装置を種々の材質を有する線状体に適用できるので、経済的である。
【0016】
また好ましくは、貫通孔は、その両端部において線状体の長手軸方向以外への移動を規制する拘束部を有するように形成され、拘束部の延長線が成す角度が30°以上50°以下となるように形成される。この場合は、拘束部の延長線が成す角度を規定することにより、線状体を計測装置へ挿入するとき容易に貫通させることができる。
【0017】
また好ましくは、拘束部の延長線と、上記延長線上における線状体の湾曲の外側にある貫通孔の内壁の接線とが成す角度が、100°以上130°以下となるよう貫通孔が形成される。この場合は、拘束部の延長線と、上記延長線上における線状体の湾曲の外側にある貫通孔の内壁の接線とが成す角度を規定することにより、線状体を計測装置へ挿入するとき容易に貫通させることができる。
【0018】
また好ましくは、上記計測装置は、医療機器に組み込まれて使用される。たとえばYコネクタに組み込まれて使用される場合は、Yコネクタの入力ポートから線状体を操作し、また他の入力ポートから薬剤を注入することができる。
【0019】
また好ましくは、上記計測装置は、人体を模擬する訓練用シミュレータに取付けられて使用される。この場合は、熟練操作者の手技を定量化し、経験の少ない操作者へ定量的な手技の伝授をすることができる。したがって、経験の少ない操作者の手技を早期に向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、この計測装置では、動脈瘤を塞栓するためのコイルが先端に付いたワイヤのように、線状体よりも太い鞘を有する線状体に作用する長手軸方向の圧縮力を、計測精度を低下させることなく計測できる、使い勝手のよい計測装置を提供することができる。また、拘束部の長さを最小限とし、計測装置の小型化を実現することができる。さらに、線状体の座屈荷重の大小によらず線状体に作用する長手軸方向の圧縮力を計測可能な計測装置を提供することができ、同一の計測装置を種々の材質を有する線状体に適用できるので、経済的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0022】
図1は、この発明の一実施の形態の計測装置の本体の外観を示す模式図である。図1において、この計測装置は、計測装置本体2を備え、計測装置本体2には可撓性を有する線状体1が貫通する貫通孔3が形成される。
【0023】
図2は、図1に示すII−II線による断面における、計測装置の本体の内部の構造を示す断面模式図である。図2において、貫通孔3は、線状体1が貫通する出入口を大きくして挿入性を向上させるために、出入口にテーパ状の入出力ポート4を形成する。貫通孔3は、その両端部において線状体1の長手軸方向以外への移動を規制する拘束部5、6を有するように形成される。
【0024】
計測装置本体2は、線状体1に長手軸方向の圧縮力が作用するときに、貫通孔3の内部における線状体1の湾曲方向を規定する。すなわち、貫通孔3は拘束部5、6の間で曲がっており、線状体1が貫通孔3を貫通すると湾曲形状となる。また貫通孔3は、その内部において、内壁8、9が内壁7から、後述する溝12の幅と線状体1の直径との合計を越える距離分離れ、空間11を成すように形成される。空間11では、線状体1が紙面と平行方向の動作を拘束しないようになっている。空間11において、貫通孔3の紙面と垂直方向の高さは線状体1の直径よりもわずかに大きく(たとえば線状体1の直径の105%〜120%)、線状体1に対して紙面と垂直方向の動作を拘束している。すなわち、空間11において、線状体1の長手軸方向に垂直な断面における貫通孔3の断面形状は、長方形状である。これらによって、貫通孔3の内部における線状体1の湾曲方向を規定し、線状体1に長手軸方向の圧縮力が作用するときの線状体1の湾曲の山の高さ、すなわち内壁7から線状体1までの距離が定まるように、線状体1を位置決めしている。
【0025】
そして、貫通孔3の内壁7に沿って計測装置本体2を貫通するように、溝12が形成される。溝12は、線状体1の直径よりも大きな径を持つ、すなわち線状体1の直径よりも大きな幅および深さを有するように、形成される。
【0026】
次に、図1および図2に示す計測装置によって長手軸方向の圧縮力を計測できる線状体の例として、動脈瘤塞栓用のワイヤの構造について説明する。図3は、動脈瘤を塞栓するためのコイルが先端に付いたワイヤの構造を示す模式図である。図3において、動脈瘤のコイル塞栓用のワイヤは、動脈瘤を塞栓するコイル13と、ワイヤを血管へ挿入するときに手で把持するデリバリーワイヤ14(この場合、デリバリーワイヤ14が線状体1に相当する)とに分かれている。先頭のコイル13は動脈瘤を塞栓するためのものであるから、非常に柔らかく、拘束するものがないときは所定の直径で巻かれるように製造されている。そのため、使用する前は鞘15に収められて巻かれないように拘束されている。鞘15は、デリバリーワイヤ14よりも大きな径を有する。
【0027】
次に、この発明の計測装置を動脈瘤塞栓用のワイヤに適用する例を説明する。図4は、計測装置に鞘を貫通させた状態を示す断面模式図である。図5は、計測装置に線状体を貫通させた状態を示す断面模式図である。動脈瘤塞栓用のワイヤが、カテーテルを経由して人体に挿入される場合、鞘15とカテーテルとの端部同士を接合した上でデリバリーワイヤ14を操作して、カテーテル内にコイル13を移動させる。ここで図2に示すように、拘束部5、6の延在方向に垂直な断面の寸法は、溝12の断面寸法と同じとして、形成される。よって、図4に示すように、デリバリーワイヤ14よりも大きな径を有する鞘15を、計測装置本体2の内部において拘束部6、溝12および拘束部5を経路として、計測装置本体2を貫通させることができる。そして、コイル13がカテーテル内に完全に移動したことを確認し、鞘15を計測装置本体2から抜出すと、計測装置本体2の内部には、図5に示すように、デリバリーワイヤ14だけが残ることになる。デリバリーワイヤ14は鞘15よりも径が小さく、貫通孔3の空間11内を移動することができる。よって、図5において、デリバリーワイヤ14は溝12に収まっておらず、空間11において湾曲している。
【0028】
このようにすれば、空間11において溝12以外は、紙面と垂直方向の高さが線状体1(すなわちデリバリーワイヤ14)の直径よりもわずかに大きく、線状体1に対して紙面と垂直方向の動作を拘束している。よって、線状体1に長手軸方向の圧縮力が作用するときの、線状体1の湾曲の山の高さを定めることができる。したがって、線状体1に作用する圧縮力の計測精度を低下させることなく、鞘15を計測装置本体2を通過させることも可能となる。
【0029】
また、図2において、溝12は、貫通孔3の内壁7に沿って形成されている。すなわち、空間11において、線状体1に長手軸方向の圧縮力が作用して湾曲するとき、線状体1は湾曲の外側へ移動するため、湾曲に伴う線状体1の移動と関係しない位置に、溝12が形成される。よって、溝12が線状体1の湾曲と干渉して圧縮力の計測精度を低下させることを防止することができる。
【0030】
貫通孔3に溝12が形成されていない計測装置において貫通孔3に鞘15が通過できるようにすると、鞘15はデリバリーワイヤ14よりも直径が大きいため、空間11においてデリバリーワイヤ14(線状体1)に対して紙面と垂直方向の動作を十分拘束できない。よって、線状体1に長手軸方向の圧縮力が作用するときに、線状体1の湾曲の山の高さが定まらず、圧縮力の計測精度は低下する。この計測精度低下を防ぐためには、貫通孔3に鞘15を通過させない必要があった。すなわち、動脈瘤のコイル塞栓用のワイヤを計測装置本体2から外した状態で、鞘15とカテーテルとの端部同士を接合しカテーテル内にコイル13を移動させてから、カテーテルと計測装置本体2とを接続するという方法をとる必要があり、使い勝手が悪かった。それに対して、溝12が貫通孔3に形成される計測装置本体2を用いることによって、鞘15を取付けた状態でワイヤを計測装置の貫通孔3に挿入できるので、使い勝手のよい計測装置を提供することができる。
【0031】
次に、線状体に長手軸方向の圧縮力が作用するときの計測装置の具体的な動作について説明する。図6は、線状体に圧縮力を作用させる状態を示す断面模式図である。図6において、デリバリーワイヤ14(線状体1)に圧縮力を作用するとき、デリバリーワイヤ14は貫通孔3の空間11において湾曲し、圧縮力の増加に伴って湾曲の山の高さ、すなわち内壁7から線状体1までの距離が増加する。たとえば、圧縮力p1を作用させるときデリバリーワイヤ14aのように湾曲し、デリバリーワイヤ14に圧縮力が作用していない状態から湾曲の山の高さがh1増加する。同様に、p1よりも大なる圧縮力p2を作用させるとき、デリバリーワイヤ14bのように湾曲し、デリバリーワイヤ14に圧縮力が作用していない状態から湾曲の山の高さがh2増加する。このようにして、湾曲の山の高さ、すなわち湾曲の度合いをセンサによって検出する。そして予め決定された湾曲の山の高さとデリバリーワイヤ14(線状体1)に作用する圧縮力との相関関係に基づき、湾曲の度合いを図示しない変換回路によってデリバリーワイヤ14(線状体1)に作用する圧縮力へ変換することによって、圧縮力を計測することが可能となる。
【0032】
図7は、図2に示すVII−VII線による断面における、計測装置に線状体を貫通させるときの線状体の湾曲の度合いを検出する光学系を示す断面模式図である。湾曲の度合いを検出するセンサとしては、たとえばラインセンサ16(光を受ける受光素子を複数有し、複数の受光素子が一列に配置される、1次元の光学式のアレイセンサ)を用いることができる。空間11を挟んでラインセンサ16と対向する位置に配置される図示しない光源器が発する光をラインセンサ16が受けるとき、ある受光素子の上にデリバリーワイヤ14があり、光源器が発する光をデリバリーワイヤ14が遮ることによりその受光素子の受ける光量が小さくなる。その受光素子の位置を検出することにより、デリバリーワイヤ14の位置を特定し、デリバリーワイヤ14の湾曲の山の高さ、すなわち湾曲の度合いを検出することができる。デリバリーワイヤ14の像をラインセンサ16へ適切に結像させるために、レンズやスリットまたは外光を遮断するフィルタなどの光学的要素を、本光学系に設置してもよい。たとえば図7においては、たとえばセルフォック(R)レンズのようなレンズ17が、空間11とラインセンサ16との間に配されている。
【0033】
なお上述の通り、コイル13が収められた鞘15を、計測装置本体2を貫通させるときには溝12が経路となる。図7において、紙面の上下方向に溝12の幅が示され、紙面の左右方向に溝12の深さが示される。すなわち、溝12において、貫通孔3の内部において線状体1が湾曲する方向における寸法が溝12の幅であり、貫通孔3の内部において線状体1が湾曲する方向と略直交する方向における寸法が溝12の高さを示す。空間11は、溝12の幅とデリバリーワイヤ14(線状体1)の直径との合計を越える距離分、内壁8、9が内壁7から離れるように形成される。デリバリーワイヤ14は、長手軸方向の圧縮力が作用するとき、その湾曲の外側、すなわち図7の上方向へ向かって、移動することができる。空間11においてデリバリーワイヤ14は、図7の左右方向への動作を拘束されるため、デリバリーワイヤ14に長手軸方向の圧縮力が作用するときの、空間11におけるデリバリーワイヤ14の位置を位置決めすることができる。また図7において、鞘15は、溝12において長手軸方向以外への移動を規制されるため、空間11へ移動することができない様子が示される。
【0034】
ただし、線状体1を操作するときに、線状体1の長手軸方向に沿って力が加えられるとは限らない。図8は、線状体に圧縮力とともにR方向またはL方向の力を作用させる状態を示す断面模式図である。図8において、操作者25が線状体1を操作するときに、たとえばR方向やL方向に線状体1を曲げながら力を加えていることが考えられる。図2に示すように貫通孔3に沿って溝12が形成される計測装置においては、拘束部5、6の延在方向に垂直な断面の寸法が、溝12の断面寸法と同じとして形成される。この場合、線状体1を貫通孔3に貫通するとき、紙面に対して垂直方向に曲げながら操作しても、線状体1は空間11において拘束されるため影響は少ない。しかし、図8に示すR方向やL方向のように、紙面に対して水平方向に曲げながら線状体1を操作するとき、線状体1は貫通孔3内部の拘束部5、6の延在方向の端部の4箇所(S1a、S2a、S1b、S2b)において点接触となることがある。その場合、線状体1に圧縮力を作用させるときの線状体1の湾曲の度合いが一意に定まらなくなり、計測精度の低下をもたらす。そこで、R方向やL方向への曲げがもたらす圧縮力の計測精度への影響をできる限り小さくできるような構造とする必要がある。
【0035】
すなわち、拘束部5、6において、拘束部5、6と線状体1とが平行となるように拘束部5、6の延在方向長さLを決定する必要がある。図9は、拘束部が短い計測装置を示す断面模式図である。図10は、拘束部が短い計測装置における圧縮力の計測誤差要因を示す断面模式図である。図9において、拘束部5、6の延在方向長さは不十分な長さLoであり、線状体1は貫通孔3内部の4箇所(S1a、S2a、S1b、S2b)において点接触となっている。そのため、拘束部5、6と線状体1とが平行ではなく、角度εを成している。このとき、図10に示すように、L方向に線状体1を曲げるように力を作用させると、計測装置本体2の外部における線状体1のL方向への移動によって、空間11において線状体1が湾曲し、線状体1の位置は空間11の中央部においてΔhずれることとなる。したがって、線状体1の湾曲の山の高さに対する誤差が大きくなり、圧縮力の計測精度が低下する。
【0036】
そこで、貫通孔3に線状体1を貫通させ線状体に重力以外の外力が加えられないとき、計測装置本体2の線状体1が貫通する出入口の外部において、線状体1と拘束部5、6とが平行になるような拘束部の長さLとなるように、貫通孔3を形成する。線状体1と拘束部5、6との平行を測定するためには、拘束部5、6における貫通孔3の中心線に沿って定規を当て、計測装置本体2の出入口の外部の適当な位置において線状体1と定規とのずれ量を計測する。このずれ量は、定規に対して直角方向の線状体1までの距離である。そのずれ量Jと、計測装置本体2の出入口と計測点との距離Kとを用いて、角度εを逆正接関数により求める。すなわち、ε=arctan(J/K)によって角度εを求める。求められた角度εによって、線状体1と拘束部5、6とが平行かどうかを判定する。
【0037】
より具体的には、たとえば、ヤング率130GPa、直径0.014inch(0.356mm)、長さ180cmの線状体を用いる。そして、計測装置本体2の出入口と計測点との距離K=10cmにおいて、ずれ量Jを計測し、角度εを求める。角度εが1°以下であれば線状体1と拘束部5、6とが平行であると判定する。このようにして、線状体1と拘束部5、6とが平行になるように貫通孔3が形成される計測装置とすることができる。そして、貫通孔3の内壁に貫通孔3に沿って計測装置本体2を貫通するように溝12が形成される場合においても、線状体1と拘束部5、6との平行によって拘束部5、6の長さを規定することで、線状体1に作用する長手軸方向の圧縮力の計測精度の低下を防止することができる。
【0038】
または、動脈瘤を塞栓するためのコイルが先端に付いたワイヤの使用を考慮する必要のない場合は、貫通孔3の内壁に溝を形成する必要がない。その場合は、拘束部5、6における貫通孔3の直径を線状体1の直径よりもわずかに大きく(たとえば線状体1の直径の105%以上120%以下)、かつ拘束部5、6の長さLを線状体1の直径の数倍以上とすることで、拘束部5、6において線状体1の長手軸方向以外への動作を拘束することができる。そのとき、上記の方法によって、角度εを1°以下とできる拘束部5、6の長さLの最小値を決定し、決定された長さLを有するよう貫通孔3が形成される計測装置とする。これにより、圧縮力の計測精度を低下させることなく、計測装置の小型化を達成することができる。
【0039】
次に、種々の材質を有する線状体に同一の計測装置を適用するときの、最適な貫通孔の形状について説明する。図11は、種類の異なる線状体に圧縮力を作用させる状態を示す断面模式図である。図12は、線状体に作用する圧縮力と、接点間の距離との関係を示すグラフである。ここで接点とは、線状体1に長手軸方向の圧縮力を作用させ線状体1が湾曲するとき、線状体1が貫通孔3の内壁8および内壁9から離れる点である。すなわち接点間の距離Wは、線状体1が内壁8と接する点と、線状体1が内壁9と接する点との距離を示す。
【0040】
直径が略同一である異種の線状体1は、同一の計測装置に挿入することができる。このとき、異種の線状体1は、そのヤング率が異なる可能性がある。異種の線状体において、ヤング率が異なると、同一の圧縮力に対する撓みが異なることになる。すなわち、ヤング率が小さく撓みが大きな線状体1は、座屈しやすいため、接点間の距離Wを小さくして座屈しないようにする必要がある。一方、ヤング率が大きく撓みが小さな線状体1においては、十分な精度で圧縮力を計測するためには接点間の距離Wを大きくする必要がある。
【0041】
そこで、空間11の内壁8および内壁9は、貫通孔3の内側に向かって凸の曲面形状となるよう、貫通孔3が形成される。図11において、拘束部5における貫通孔3の内壁に接するように、曲率半径はr1、曲率半径の中心はc1である内壁8の曲面部分が形成されている。また、上記の曲率半径r1の曲面部分に接して、曲率半径はr2、曲率半径の中心はc2である曲面形状が形成されている。内壁8および内壁9の形状は上記に限られるものではなく、貫通孔3の内側に向かって凸であって、拘束部5における貫通孔3の内壁と接するような曲面形状であればよい。
【0042】
ここで、ヤング率の異なる2種類の線状体に等しい圧縮力を作用させる場合を考える。図12において、ヤング率が大きければ図12の実線で示すような圧縮力Pと接点間の距離Wの関係が得られ、たとえば圧縮力p1を作用させるときの接点間の距離Wはw1となる。またヤング率が小さければ、図12の破線で示すような関係が得られ、同じ圧縮力p1を作用させるときの接点間の距離Wはより小さくなり、より線状体の湾曲の度合いが大きくなる。このとき、空間11において、線状体1の湾曲の外側にある貫通孔3の内壁8および内壁9に沿って線状体が湾曲するので、空間11内部で線状体1が座屈することを防止できる。すなわち、ヤング率の小さな線状体に長手軸方向の圧縮力が作用するとき、線状体が空間11において座屈することなく湾曲するため、線状体の湾曲の度合いを検出することができる。検出される湾曲の度合いを線状体に作用する長手軸方向の圧縮力に変換することにより、線状体に作用する圧縮力を計測することができる。これにより、同一の計測装置でヤング率の大小に関わらず線状体に作用する長手軸方向の圧縮力を広範囲に精度よく計測することができる。
【0043】
また図11において、空間11の内壁8と内壁9との間には凹部10が形成される。これによって、さらに広範囲の圧縮力を精度よく計測することが可能となる。すなわち、空間11における線状体1の湾曲の山の高さを検出することによって線状体1に作用する圧縮力を計測することができるので、空間11内にある線状体1の湾曲の山の頂点、すなわち空間11内にある線状体1において内壁7から最も離れた点が、空間11の内壁に接触していなければ、線状体1に作用する圧縮力を計測することができる。そこで、凹部10が形成されることによって、線状体1の湾曲の山の頂点を空間11の内壁へ接触させるためにはより大きな長手軸方向の圧縮力が作用することが必要となる。したがって、圧縮力の計測範囲を広げることができる。
【0044】
また、空間11が、貫通孔3の内側に向かって凸の曲面形状である内壁8、9と、凹部10とを組み合わせた形状に成形される。この空間11の形状によって、線状体1に圧縮力が作用し線状体1が空間11において湾曲するとき、線状体1の湾曲の外側にある貫通孔3の内壁(内壁8および内壁9)から、線状体1の一部(図11における接点間の距離w1またはw2に相当する一部)が離れている。そして、圧縮力が増大するにつれて、線状体1が内壁から離れる点である接点間の距離は減少している。すなわち、圧縮力Pと接点間の距離Wとの関係は、図12のグラフのように示される。たとえば図12において実線で示される圧縮力Pと接点間の距離Wとの関係を有する線状体に、圧縮力p1を作用させるとき線状体1aのように湾曲し、そのときの接点間の距離はw1となる。また、線状体にp1よりも大なる圧縮力p2を作用させるとき線状体1bのように湾曲し、そのときの接点間の距離は、w1よりも小なるw2となっている。
【0045】
このような空間11の構造によって、線状体1が湾曲する貫通孔3の内部の空間11において、線状体1に長手軸方向の圧縮力が作用して線状体1が湾曲するとき、線状体1の湾曲の外側にある貫通孔3の内壁(内壁8および内壁9)に沿って線状体1が湾曲できる。また線状体1の一部は内壁8および内壁9から離れるように湾曲できる。また圧縮力が増大するにつれて、線状体1が内壁から離れる点である接点間の距離は減少する。よって、空間11内部で線状体1が座屈することを防止できるので、座屈荷重の小さな線状体でも座屈することなく線状体の湾曲の度合いを精度よく検出することができる。検出される湾曲の度合いを線状体に作用する長手軸方向の圧縮力に変換することにより、線状体に作用する圧縮力を計測することができる。そして、ヤング率の異なる種々の線状体について、圧縮力と湾曲の度合いとの相関関係を予め計測し、これらの相関関係を変換回路に記憶しておき、使用する線状体に合わせてどの相関関係を用いるのか選択する。これにより、線状体1の座屈荷重の大小によらず線状体1に作用する長手軸方向の圧縮力を計測可能な計測装置を提供することができ、同一の計測装置を種々の材質を有する線状体1に適用できるので、経済的である。
【0046】
さらに、線状体1を計測装置本体2へ挿入するとき容易に貫通させることができるように、貫通孔3の形状を規定する。図13は、貫通孔の拘束部の成す適切な角度を示す断面模式図である。図14は、貫通孔の拘束部と内壁との成す適切な角度を示す断面模式図である。図13において、貫通孔3は、その両端部において線状体1の長手軸方向以外への移動を規制する拘束部5、6を有するように形成され、図13中に破線で示される、拘束部5の延長線(すなわち拘束部5の中心線の延長線)と、拘束部6の延長線(すなわち拘束部6の中心線の延長線)との成す角度をαとする。また、図14において破線で示される、拘束部6の延長線と、線状体1の湾曲の外側にある貫通孔3の内壁、すなわち内壁8における、拘束部6の延長線上にある点の接線とが成す角度をβとする。角度α、βの範囲とその理由について以下説明する。
【0047】
α+β≦160°・・・(A)
α+β=180°とは、線状体1の湾曲の外側にある貫通孔3の内壁、たとえば内壁8が、拘束部5の延長線上にある状態である。このとき、線状体1の湾曲の外側に空間がなくなってしまうため、線状体1に長手軸方向の圧縮力が作用するときの線状体1の変位がほぼ零となる。よって、圧縮力に対応する線状体1の湾曲の度合いを検出することができないため、計測装置として成立しない。そこで、20°の余裕を見て、α+β≦160°とする。
【0048】
β≧100・・・(B)
ヤング率130GPa、直径0.014inch(0.356mm)の線状体を用い、実験的にβの範囲を決定した。β=90°とは、線状体1が、線状体1の湾曲の外側にある貫通孔3の内壁に直角に接触する状態であり、βが90°以下では線状体1を貫通孔3へ案内することができない。そこで、線状体と内壁とによる摩擦を考慮して、β≧100°とする。好ましくはβ≧110°とすれば、より容易に線状体1を貫通孔3へ貫通することができる。
【0049】
30°≦α≦50°・・・(C)
ヤング率130GPa、直径0.014inch(0.356mm)の線状体およびヤング率90GPa、直径0.012inch(0.305mm)の線状体を用い、実験的にαの範囲を決定した。αを大きくすると、線状体1の、線状体1の湾曲の外側にある貫通孔3の内壁に接触する点での摩擦力が無視できなくなり、圧縮力の計測精度が低下する。一方、αを小さくすると、線状体1に圧縮力を作用させるときの湾曲の度合いが小さくなり、圧縮力に対する計測装置の感度が低下する。そこで、30°≦α≦50°とする。αが35°以下では摩擦力の低減は小さく、またαが45°以上で摩擦力の増大が顕著になるため、好ましくは35°≦α≦45°とする。
【0050】
上記の(A)、(B)、(C)式より、以下の関係が導かれる。
30°≦α≦50°
100°≦β≦130°
したがって、拘束部5の延長線と、拘束部6の延長線との成す角度αを規定し、また、拘束部6の延長線と、線状体1の湾曲の外側にある貫通孔3の内壁、すなわち内壁8における、拘束部6の延長線上にある点の接線とが成す角度βを規定することにより、線状体を計測装置へ挿入するとき容易に貫通させることができる。
【0051】
次に、本発明の計測装置を実用化する例として、体内の管の中へ挿入される線状の医療器具である線状体に作用する長手軸方向の圧縮力を計測する計測装置が、他の医療機器に組み込まれて使用される例を示す。図15は、計測装置本体がYコネクタに組み込まれて使用される例を示す模式図である。図15において、Yコネクタ18は、入力ポート19と他の入力ポート20と出力ポート21とを備える。計測装置本体2は、Yコネクタ18の内部の、入力ポート19と出力ポート21とを連通する通路に組み込まれている。線状体1は、たとえば、血管や尿管などの体内の管に挿入されるガイドワイヤやカテーテル、動脈瘤を塞栓するためのコイルが先端に付いたワイヤなどの、線状の医療器具であり、入力ポート19側からの操作によって体内の目的部位まで誘導される。
【0052】
これにより、体内の管の中へ挿入される線状の医療器具に作用する長手軸方向の圧縮力の増加を計測することによって、圧縮力の反力として、医療器具が体内の管に作用する荷重を計測することができる。すなわち、医療器具の先端が管の内壁に接触することを検知することができる。したがって、体内の管に過大な荷重が作用することを防止することができる。また、本発明の計測装置がYコネクタ18に組み込まれているので、Yコネクタ18の入力ポート19から線状の医療器具を操作し、また他の入力ポート20から薬剤を注入することができる。たとえば、カテーテルとガイドワイヤとの摩擦を低減するための生理食塩水を他の入力ポート20から注入することができる。またたとえば、血管の中に挿入したカテーテルを人体外部から目的部位まで誘導した後に、他の入力ポート20から血管造影剤を注入して、血管造影剤を体内の目的部位に注入することができる。
【0053】
図16は、人体を模擬する訓練用シミュレータに計測装置を取付けて使用する例を示す模式図である。図16において、シミュレータ26は、線状の医療器具が挿入される人体の管の透視画像と同等の、模擬透視画像27を表示する。計測装置本体2にカテーテル24が接続され、カテーテル24の中には、計測装置本体2の貫通孔3を貫通するガイドワイヤ23がある。訓練している操作者25は、模擬透視画像27を見ながらガイドワイヤ23を操作する。シミュレータ26は、挿入されたガイドワイヤ23に対して、挿入抵抗を変化させる。ガイドワイヤ23を把持する操作者25が、ガイドワイヤ23に長手軸方向に力を加えるとき、挿入抵抗があると、ガイドワイヤ23には長手軸方向に圧縮力が作用する。操作時の抵抗力、すなわち計測装置によって計測されるガイドワイヤ23に作用する圧縮力は、視覚化器具22に表示されるとともに、ケーブル28を通してシミュレータ26にも伝えられ、シミュレータ26内部でのガイドワイヤ23の挿入抵抗変更に寄与している。図16において、計測装置本体2とシミュレータ26は分離されているが、計測装置本体2がシミュレータ26と一体に組み込まれてもよい。また、視覚化器具22を備える代わりに、シミュレータ26の模擬透視画像27に、ガイドワイヤ23に作用する圧縮力を表示しても良い。
【0054】
これにより、熟練操作者の手技を定量化し、経験の少ない操作者へ定量的な手技の伝授をすることができる。したがって、経験の少ない操作者の手技を早期に向上させることができる。
【0055】
なお、以上の説明においては、線状体の湾曲の度合いを検出するセンサとしてラインセンサを例に挙げたが、ラインセンサのような1次元のアレイセンサの代わりに、平面上に複数の受光素子をたとえばマトリクス状に並べて配置してなる2次元のアレイセンサを用いても、線状体の湾曲の度合いの検出が可能である。さらに、線状体の湾曲の度合いを検出できればよいのであるから、たとえば湾曲の山の高さを検出する非接触の距離センサ、または線状体の位置を検出する位置センサなどを使用することもできる。
【0056】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0057】
この発明の計測装置は、体内の管の中へ挿入される線状の医療器具などの、可撓性を有する線状体に作用する圧縮力の計測装置に、特に有利に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】この発明の一実施の形態の計測装置の本体の外観を示す模式図である。
【図2】図1に示す計測装置の本体の内部の構造を示す断面模式図である。
【図3】動脈瘤を塞栓するためのコイルが先端に付いたワイヤの構造を示す模式図である。
【図4】計測装置に鞘を貫通させた状態を示す断面模式図である。
【図5】計測装置に線状体を貫通させた状態を示す断面模式図である。
【図6】線状体に圧縮力を作用させる状態を示す断面模式図である。
【図7】計測装置に線状体を貫通させるときの線状体の湾曲の度合いを検出する光学系を示す断面模式図である。
【図8】線状体に圧縮力とともにR方向またはL方向の力を作用させる状態を示す断面模式図である。
【図9】拘束部が短い計測装置を示す断面模式図である。
【図10】拘束部が短い計測装置における圧縮力の計測誤差要因を示す断面模式図である。
【図11】種類の異なる線状体に圧縮力を作用させる状態を示す断面模式図である。
【図12】線状体に作用する圧縮力と、接点間の距離との関係を示すグラフである。
【図13】貫通孔の拘束部の成す適切な角度を示す断面模式図である。
【図14】貫通孔の拘束部と内壁との成す適切な角度を示す断面模式図である。
【図15】Yコネクタに組み込まれて使用される例を示す模式図である。
【図16】人体を模擬する訓練用シミュレータに取付けて使用する例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0059】
1,1a,1b 線状体、2 計測装置本体、3 貫通孔、4 入出力ポート、5,6 拘束部、7,8,9 内壁、10 凹部、11 空間、12 溝、13 コイル、14,14a,14b デリバリーワイヤ、15 鞘、16 ラインセンサ、17 レンズ、18 Yコネクタ、19 入力ポート、20 他の入力ポート、21 出力ポート、22 視覚化器具、23 ガイドワイヤ、24 カテーテル、25 操作者、26 シミュレータ、27 模擬透視画像、28 ケーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する線状体に作用する長手軸方向の圧縮力を計測する計測装置であって、
前記線状体が貫通する貫通孔が形成される本体を備え、
前記線状体に前記圧縮力が作用するとき、前記貫通孔の内部において前記線状体が所定の方向へ湾曲し、さらに、
前記湾曲の度合いを検出するセンサと、
検出される前記湾曲の度合いを、前記線状体に作用する前記圧縮力へ変換する、変換回路とを備え、
前記貫通孔の内壁には、前記貫通孔に沿って前記本体を貫通するように、溝が形成される、計測装置。
【請求項2】
前記溝は、前記線状体が湾曲する前記貫通孔の内部において、前記線状体の湾曲の内側にある前記貫通孔の前記内壁に沿って形成され、
前記貫通孔は、前記線状体が湾曲する前記貫通孔の内部において、前記線状体の湾曲の外側にある前記貫通孔の前記内壁が、前記線状体の湾曲の内側にある前記貫通孔の前記内壁から、前記溝の幅と前記線状体の直径との合計を超える距離分離れ、空間を成すように形成される、請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
可撓性を有する線状体に作用する長手軸方向の圧縮力を計測する計測装置であって、
前記線状体が貫通する貫通孔が形成される本体を備え、
前記線状体に前記圧縮力が作用するとき、前記貫通孔の内部において前記線状体が所定の方向へ湾曲し、さらに、
前記湾曲の度合いを検出するセンサと、
検出される前記湾曲の度合いを、前記線状体に作用する前記圧縮力へ変換する、変換回路とを備え、
前記貫通孔は、前記貫通孔の両端部において、前記線状体の前記長手軸方向以外への移動を規制する拘束部を有するように形成され、
前記貫通孔に前記線状体を貫通させ前記線状体に重力以外の外力が加えられないとき、前記本体の前記線状体が貫通する出入口の外部において、前記線状体と前記拘束部とが平行になるように、前記貫通孔が形成される、計測装置。
【請求項4】
前記貫通孔の内壁には、前記貫通孔に沿って前記本体を貫通するように、溝が形成される、請求項3に記載の計測装置。
【請求項5】
可撓性を有する線状体に作用する長手軸方向の圧縮力を計測する計測装置であって、
前記線状体が貫通する貫通孔が形成される本体を備え、
前記線状体に前記圧縮力が作用するとき、前記貫通孔の内部において前記線状体が所定の方向へ湾曲し、さらに、
前記湾曲の度合いを検出するセンサと、
検出される前記湾曲の度合いを、前記線状体に作用する前記圧縮力へ変換する、変換回路とを備え、
前記貫通孔は、前記線状体が湾曲する前記貫通孔の内部において、前記線状体の湾曲の外側にある前記貫通孔の内壁が、前記線状体の湾曲の内側にある前記貫通孔の前記内壁から離れ、空間を成すように形成され、
前記線状体の湾曲の外側にある前記貫通孔の前記内壁は、前記貫通孔の内側に向かって凸の曲面形状となるよう、前記貫通孔が形成される、計測装置。
【請求項6】
前記線状体に前記圧縮力が作用し前記線状体が湾曲するとき、前記線状体の湾曲の外側にある前記貫通孔の前記内壁から前記線状体の一部が離れるように、前記貫通孔が形成され、
前記圧縮力が増大するにつれて、前記線状体が前記内壁から離れる点である接点間の距離は減少するように、前記貫通孔が形成される、請求項5に記載の計測装置。
【請求項7】
前記貫通孔は、前記貫通孔の両端部において、前記線状体の前記長手軸方向以外への移動を規制する拘束部を有するように形成され、
前記拘束部の延長線が成す角度が、30°以上50°以下となるよう前記貫通孔が形成される、請求項5または請求項6に記載の計測装置。
【請求項8】
前記貫通孔は、前記貫通孔の両端部において、前記線状体の前記長手軸方向以外への移動を規制する拘束部を有するように形成され、
前記拘束部の延長線と、前記延長線上における前記線状体の湾曲の外側にある前記貫通孔の前記内壁の接線とが成す角度が、100°以上130°以下となるよう前記貫通孔が形成される、請求項5から請求項7のいずれかに記載の計測装置。
【請求項9】
医療機器に組み込まれて使用されることを特徴とする、請求項1から請求項8のいずれかに記載の計測装置。
【請求項10】
人体を模擬する訓練用シミュレータに取付けられて使用されることを特徴とする、請求項1から請求項9のいずれかに記載の計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−64508(P2008−64508A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−240607(P2006−240607)
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】