説明

可撓継手の固定構造

【課題】長期にわたって確実に水密性を維持して地下構造体を連結できる可撓継手の固定構造を提供する。
【解決手段】地下構造体の連結される対向端部10の周方向に沿って内周面10aに取付板9を固設し、この取付板9に沿って伸縮ゴム8を配設して、両端部8aをそれぞれの取付板9に当接させ、アンカー部5を対向端部10に埋設固定する固定手段1のアーム体4の弾性力によって伸縮ゴム8の両端部8aを押え板6を介して取付板9に圧着固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓継手の固定構造に関し、さらに詳しくは、長期にわたって確実に水密性を維持して地下構造体を連結できる可撓継手の固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、通信ケーブル、ガス管、水道管等を敷設する共同溝、地下道等の地下構造体は、図3に縦断面で示すように連結される対向端部10どうしが対向端部10の周方向に沿って内周面10aに配設される可撓継手で連結され、地下構造体に作用する温度変化による伸縮、地盤沈下、地震等によって生じる変位を吸収可能とするとともに、水密性をもって連結する構造となっている。尚、図3では可撓継手の固定構造の左右は対称となるので右側の固定手段は省略している。
【0003】
この可撓継手は、地下構造体の対向端部10の周方向に沿って内周面10aに固定される取付板9に伸縮ゴム8の端部8aを埋設固定されるアンカー部5と固定ボルト7との締結力によって、押え板6を介して圧着固定するように構成されている。
【0004】
しかしながら、この固定構造であると締結による圧着力によって経時的に伸縮ゴム8の端部8aに永久ひずみが生じて、徐々に圧着力が低下して水密性が確保できなくなるという問題があった。また、伸縮ゴム8の端部8aにアンカー部5を貫通させる貫通孔8bを設ける必要があり、伸縮ゴム8の耐久性や生産性等に対して不利な構造となっていた。
【0005】
また、伸縮ゴムの端部を構造体に圧着する圧着力が、伸縮ゴムのずれ移動によって低下することを防止する可撓継手の固定構造が提案されている(特許文献1参照)。この提案では、固定手段にテーパを設けて伸縮ゴムの端部を構造体に圧着し、伸縮ゴムがずれるとテーパによる楔効果によって圧着力を増加させるようにしている。しかしながら、伸縮ゴムがずれることなく、伸縮ゴムの端部に永久ひずみが生じると圧着力が低下することになり、長期にわたって水密性を確保するのは困難であった。
【特許文献1】特開平11−158984号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、長期にわたって確実に水密性を維持して地下構造体を連結できる可撓継手の固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明の可撓継手の固定構造は、連結される地下構造体の対向端部の周方向に沿って内周面に配設され、該対向端部どうしを連結する可撓継手の固定構造において、前記対向端部の周方向に沿って内周面に固定される取付板と、該取付板に沿って配設され、それぞれの端部をそれぞれの取付板に当接して前記対向端部どうしを連結する伸縮ゴムと、該伸縮ゴムのそれぞれの端部を前記それぞれの取付板に圧着固定する固定手段とを備え、前記固定手段は、一端部を前記対向端部に埋設固定し、他端部のアーム体の弾性力によって前記伸縮ゴムの端部を押え板を介して前記取付板に圧着固定することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の可撓継手の固定構造によれば、連結される地下構造体の対向端部の周方向に沿って内周面に配設され、この対向端部どうしを連結する可撓継手の固定構造において、対向端部の周方向に沿って内周面に固定される取付板と、取付板に沿って配設され、それぞれの端部をそれぞれの取付板に当接して対向端部どうしを連結する伸縮ゴムと、伸縮ゴムのそれぞれの端部をそれぞれの取付板に圧着固定する固定手段とを備え、固定手段は、一端部を対向端部に埋設固定し、他端部のアーム体の弾性力によって伸縮ゴムの端部を押え板を介して取付板に圧着固定するので、伸縮ゴムの端部に永久ひずみが生じても常に、アーム体の弾性力が伸縮ゴムの端部を圧着するように作用して、長期にわたって水密性を確保して地下構造体を連結することができる。
【0009】
また、従来の固定構造のように伸縮ゴムの端部に貫通孔を設ける必要がないので耐久性の向上を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の可撓継手の固定構造を図に示した実施形態に基づいて説明する。尚、従来構造と同一構成要素には、同一の符号を付している。
【0011】
図1は実施形態の可撓継手の固定構造を一部拡大して示した平面図であり、図2は図1のA−A断面図に相当し、縦断面図として示したものである。尚、図2では左右の構造が対称となるので右側の固定手段1を省略している。
【0012】
連結される共同溝等の地下構造体のそれぞれの対向端部10の周方向に沿って内周面10aには、金属製の取付板9が固定されている。この取付板9に沿って両対向端部10を跨ぐように伸縮ゴム8が配設されている。
【0013】
伸縮ゴム8の断面形状は両端部8aに平面を有する円弧状となっており、内部に補強層を有している。伸縮ゴム8の両端部8aは地下構造体のそれぞれの対向端部10の内周面10aに固定された取付板9に当接し、固定手段1によって圧着固定される。
【0014】
固定手段1は、対向端部10の内周面10aに周方向に所定間隔をあけて固設され、一端部をアンカー部5として対向端部10に埋設固定し、アンカー部5の上部をヘッド部2として、ヘッド部2からは他端部となるアーム体4が伸縮ゴム8の端部8aに延びている。ヘッド部2は伸縮ゴム8の端部8a端面に隣接した位置に配置されている。
【0015】
アーム体4は、ばね鋼等の弾性力に富む金属や同等の弾性力を有する材質からなり、一端をヘッド部2の挿入孔3に挿入して固定されている。アーム体4の他端は自由端となっていて伸縮ゴム8の端部8aを押え板6を介して、その弾性力によって圧着している。
【0016】
この固定手段1によって、アーム体4の弾性力が押え板6で広範囲に均一に伝達されて、伸縮ゴム8の端部8aを取付板9に圧着固定して、地下構造体の対向端部10どうしが水密性を保って連結される。アーム体4の形状や材質はスペースや圧着力等の条件から適宜、決定することができる。
【0017】
伸縮ゴム8の端部8aは、常に、アーム体4の弾性力によって取付板9に圧着され、経時的に永久ひずみが生じても圧着され続けるので、長期にわたって水密性を確保することが可能となる。また、この固定手段1では、従来構造のように伸縮ゴム8の端部8aにアンカー部5を貫通させるための貫通孔8bを設ける必要がないので、貫通孔8bに起因する亀裂の発生等がなく、伸縮ゴム8の耐久性を向上させることができる。また、伸縮ゴム8の製造も容易となり、コスト削減を図ることも可能となる。
【0018】
この実施形態では、押え板6にヘッド部2と係合する係合部6aを設けて押え板6の前後左右のずれを規制している。これによって、振動等によってずれを生じることなく、さらに確実な圧着力の伝達を確保している。ずれを規制する係合部6aは、図示したものに限定されず、他の一般的な構造を採用することができる。また、アーム体4と押え板6とを溶接等で一体化することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の可撓継手の固定構造を例示する一部拡大平面図である。
【図2】本発明の可撓継手の固定構造を例示する縦断面図である(図1のA―A断面図に相当)。
【図3】従来の可撓継手の固定構造を例示する縦断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 固定手段
2 ヘッド部
3 挿入孔
4 アーム体
5 アンカー部
6 押え板 6a 係合部
7 固定ボルト
8 伸縮ゴム 8a 端部 8b 貫通孔
9 取付板
10 (地下構造体の)対向端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結される地下構造体の対向端部の周方向に沿って内周面に配設され、該対向端部どうしを連結する可撓継手の固定構造において、前記対向端部の周方向に沿って内周面に固定される取付板と、該取付板に沿って配設され、それぞれの端部をそれぞれの取付板に当接して前記対向端部どうしを連結する伸縮ゴムと、該伸縮ゴムのそれぞれの端部を前記それぞれの取付板に圧着固定する固定手段とを備え、前記固定手段は、一端部を前記対向端部に埋設固定し、他端部のアーム体の弾性力によって前記伸縮ゴムの端部を押え板を介して前記取付板に圧着固定することを特徴とする可撓継手の固定構造。
【請求項2】
前記固定手段と前記押え板の少なくとも一方に前記押え板のずれを規制する係合部を設けた請求項1に記載の可撓継手の固定構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−241925(P2006−241925A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−62288(P2005−62288)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】