説明

可溶性イミド骨格樹脂、可溶性イミド骨格樹脂溶液組成物、硬化性樹脂組成物、およびその硬化物

【課題】ポリイミド樹脂並みの低線膨張率を有し、かつエポキシ樹脂のように成形加工性に優れ、電気積層板用樹脂組成物に有用なイミド骨格樹脂を提供する。
【解決手段】イミド骨格含有ビスフェノールとエピクロルヒドリンの反応生成物、もしくは該反応生成物の末端エポキシ基を末端水酸基化したもので、ビスフェノール残基として、下記一般式(4−1)で表されるイミド骨格含有連結基を成分中の5モル%以上含有するイミド骨格樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イミド骨格構造を必須成分として含有する樹脂と、該樹脂を含む樹脂溶液組成物、該樹脂を含む硬化性樹脂組成物、その硬化物ならびにこの硬化物を含む積層体に関する。
【0002】
本発明の可溶性イミド骨格樹脂は、ガラス転移温度が高く、熱膨張係数が低いプリント配線板等の電気積層板の構成材料として好適な硬化性樹脂組成物を提供し得る。なお、ここでいう電気積層板とは、プリント配線板、ビルドアップ積層板やフレキシブル積層板やレジスト材やシール材などを含む、絶縁基板に用いられる積層板をさす。
【背景技術】
【0003】
エポキシ樹脂は、耐熱性、接着性、耐水性、機械的強度および電気特性等に優れていることから、接着剤、塗料、土木建築用材料、電気・電子部品の絶縁材料等、様々な分野で使用されている。特に、電気・電子分野では、絶縁注型、積層材料、封止材料等において幅広く使用されている。
【0004】
近年、電気・電子機器に使用されるプリント配線板は、機器の小型化、軽量化および高機能化が進んでおり、特に多層プリント配線板に対し、更なる高多層化、高密度化、薄型化、軽量化と、信頼性および成形加工性の向上等が要求されている。
このように、配線の微細化が進んでいく中で、基板材料となる樹脂側への特性としては、より一層の耐熱性の向上と、低線膨張率性が特に要求されてくる。
【0005】
現在、低線膨張性の熱硬化性樹脂としては、ポリイミド樹脂が挙げられ、フレキシブルプリント配線板分野では主流になっている。しかし、ポリイミド樹脂は、高耐熱性であるがゆえに成形加工が難しく、また、特殊な極性溶媒にしか溶解しないため、加工時の取り扱い性も非常に難しく、様々な制約を受けるものである。例えば、これまでに知られているイミド骨格化合物は、一般的な有機溶剤、例えばケトン系溶剤への溶解性が十分でなく、ジメチルホルムアミドやN−メチルピロリドンのような高極性溶剤にしか溶解しない(特許文献1)。
【0006】
これに対して、エポキシ樹脂は、ポリイミド樹脂よりも成形加工性、溶剤への溶解性に優れているものの、線膨張係数については、十分に満足のいくものではない。
従来、線膨張係数の低いエポキシ樹脂として、アントラセン骨格エポキシ樹脂、ビスフェノールS骨格エポキシ樹脂、ナフタレン骨格エポキシ樹脂があるが、その線膨張係数は未だポリイミド樹脂には及ばない。
【0007】
特許文献2、特許文献3には、イミド骨格のエポキシ樹脂が記載されているが、本発明の可溶性イミド骨格樹脂とは異なる構造を有している。
【0008】
特許文献1は、イミドフェノールとエポキシ樹脂を反応させてなる熱可塑性ポリマーに関するものであり、この熱可塑性ポリマーは、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等の極性溶剤へは溶解するが、ケトン系溶剤に対しては溶解しない。また、特許文献4にも、イミドフェノールとエポキシ樹脂を反応させた組成物の記載があるが、この樹脂は、高極性溶剤であるN−メチルピロリドンに対する溶解性が低く、まして、ケトン系溶剤には溶解しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】USP5,246,751
【特許文献2】特開平4−62522号公報
【特許文献3】特開平4−62991号公報
【特許文献4】特開昭62−292822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来のエポキシ樹脂を電気積層板用樹脂組成物に使用した場合、ポリイミド樹脂並の低線膨張率を達成することはできない。一方、ポリイミド樹脂では、一般的な有機溶剤に対する溶解性が低く、成形加工性が十分ではない。
【0011】
従って、本発明は、ポリイミド樹脂並みの低線膨張率を有し、かつエポキシ樹脂のように成形加工性に優れ、一般的なケトン系溶剤に十分な溶解性を有する、電気積層板用樹脂組成物に有用な可溶性イミド骨格樹脂を提供することを目的とする。
本発明はまた、このイミド骨格樹脂を含む可溶性イミド骨格樹脂溶液組成物および硬化性樹脂組成物、その硬化物並びにこの硬化物を含む積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は以下の発明を包含する。
【0013】
[1] 下記一般式(1)で表されるイミド骨格樹脂であって、シクロヘキサノンに対して、60℃で、1重量%以上の溶解度を有する可溶性イミド骨格樹脂。
【0014】
【化1】

【0015】
(式中、Aは、下記一般式(2−1)、下記一般式(3−1)、または下記一般式(4−1)で表される連結基であり、n+1個のAは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。ただし、全A成分中の5モル%以上は、下記一般式(4−1)で表されるイミド骨格含有連結基である。
Bは、水素原子、または下記構造式(5)で表される基であり、2個のBは互いに同一であっても、異なっていてもよい。
nは、0〜200の整数である。
但し、Bが両方とも水素原子である場合、nは1以上の整数である。)
【0016】
【化2】

【0017】
(式中、Rは、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、またはハロゲン元素であり、複数のRは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。また、ベンゼン環上の隣接した炭素原子に結合した2個のRは、互いに結合して炭素数4〜20の芳香環を含む環状基を形成してもよい。
mは、0または1である。
Xは、単結合、或いは炭素数1〜20の2価の炭化水素基、−O−、−S−、−SO−、またはCO−である。)
【0018】
【化3】

【0019】
(式中、Rは、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、またはハロゲン元素であり、複数のRは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。また、ナフタレン環上の隣接した炭素原子に結合した2個のRは、互いに結合して炭素数4〜20の芳香環を含む環状基を形成してもよい。)
【0020】
【化4】

【0021】
(式中、Rは、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、またはハロゲン元素であり、複数のRは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。また、ベンゼン環上の隣接した炭素原子に結合した2個のRは、互いに結合して炭素数4〜20の芳香環を含む環状基を形成してもよい。
、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、フェニル基、または炭素数1〜10の炭化水素基である。2個のR、R、Rは、それぞれ、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。また、ベンゼン環上の隣接した炭素原子に結合したRとRは、互いに結合して炭素数4〜20の芳香環を含む環状基を形成してもよい。
Yは単結合、−SO−、−O−、−CO−、−C(CF)−、−S−、または炭素数1〜20の2価の炭化水素基から選ばれる基である。)
【0022】
【化5】

【0023】
[2] [1]において、前記一般式(4−1)で表されるイミド骨格含有連結基が、下記一般式(6−1)で表されることを特徴とする可溶性イミド骨格樹脂。
【0024】
【化6】

【0025】
(式中、Rは、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、またはハロゲン元素であり、複数のRは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。また、ベンゼン環上の隣接した炭素原子に結合した2個のRは、互いに結合して炭素数4〜20の芳香環を含む環状基を形成してもよい。
Yは前記一般式(4−1)におけると同義である。)
【0026】
[3] [1]または[2]において、硬化剤と硬化促進剤のみを配合してなる硬化物のガラス転移温度が130℃以上で、ガラス転移温度以下における線膨張係数が75ppm/℃未満であることを特徴とする可溶性イミド骨格樹脂。
【0027】
[4] エポキシ基およびイミド基を有するイミド骨格樹脂であって、シクロヘキサノンに対して、60℃で、1重量%以上の溶解度を有し、硬化剤と硬化促進剤のみを配合してなる硬化物のガラス転移温度が130℃以上で、ガラス転移温度以下における線膨張係数が75ppm/℃未満であることを特徴とする可溶性イミド骨格樹脂。
【0028】
[5] [4]において、イミド基が、置換または無置換のフタルイミド基であることを特徴とする可溶性イミド骨格樹脂。
【0029】
[6] [4]または[5]において、主鎖上にイミド基およびヒドロキシエチレン基を有するイミド骨格樹脂であることを特徴とする可溶性イミド骨格樹脂。
【0030】
[7] 下記一般式(2−2)、下記一般式(3−2)、および下記一般式(4−2)のいずれかで表される2価フェノール化合物と、エピハロヒドリンとを、アルカリの存在下で反応させることを特徴とする[1]ないし[3]のいずれかに記載の可溶性イミド骨格樹脂の製造方法。
【0031】
【化7】

(式中、R、X、mは、それぞれ前記一般式(2−1)におけると同義である。)
【0032】
【化8】

(式中、Rは、前記一般式(3−1)におけると同義である。)
【0033】
【化9】

(式中、R、R、R、R、Yは、それぞれ前記一般式(4−1)におけると同義である。)
【0034】
[8] 下記一般式(7)、下記一般式(8)、および下記一般式(9)のいずれかで表される2官能エポキシ樹脂と、下記一般式(2−2)、下記一般式(3−2)、および下記一般式(4−2)のいずれかで表される2価フェノール化合物とを、触媒の存在下で反応させることを特徴とする[1]ないし[3]のいずれかに記載の可溶性イミド骨格樹脂の製造方法。
【0035】
【化10】

(式中、R、Xは、それぞれ前記一般式(2−1)におけると同義である。lは0または1であり、pは0〜10の整数である。)
【0036】
【化11】

(式中、Rは前記一般式(3−1)におけると同義である。qは0〜10の整数である。)
【0037】
【化12】

(式中、R、R、R、R、Yは、それぞれ前記一般式(4−1)におけると同義である。rは0〜10の整数である。)
【0038】
【化13】

(式中、R、X、mは、それぞれ前記一般式(2−1)におけると同義である。)
【0039】
【化14】

(式中、Rは、前記一般式(3−1)におけると同義である。)
【0040】
【化15】

(式中、R、R、R、R、Yは、それぞれ前記一般式(4−1)におけると同義である。)
【0041】
[9] [1]ないし[6]のいずれかに記載の可溶性イミド骨格樹脂1〜90重量%が、ケトン系溶剤および/またはジメチルアセトアミドを全溶媒成分中10重量%以上含有する溶媒に溶解していることを特徴とする可溶性イミド骨格樹脂溶液組成物。
【0042】
[10] [1]ないし[6]のいずれかに記載のイミド骨格樹脂を含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【0043】
[11] [10]において、更に、硬化剤および硬化促進剤を含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【0044】
[12] [10]または[11]において、更に、前記イミド骨格樹脂以外のエポキシ樹脂、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂、および無機充填剤よりなる群から選ばれる1種または2種以上を含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【0045】
[13] [10]ないし[12]のいずれかにおいて、プリント配線板に使用されることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【0046】
[14] [10]ないし[13]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を硬化してなる樹脂硬化物。
【0047】
[15] [14]に記載の樹脂硬化物と導電性金属との積層体。
【発明の効果】
【0048】
本発明の可溶性イミド骨格樹脂は、各種の溶剤に対する溶解性に優れ、この可溶性イミド骨格樹脂およびこれを含む硬化性樹脂組成物は、低線膨張率で、耐熱性(ガラス転移温度)、成形加工性に優れ、特に低線膨張率性が要求される電気積層板用途において有用である。
本発明によれば、電気積層板、とりわけプリント配線板に有用な樹脂硬化物および積層体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】ビルドアップ法の説明図である。
【図2】実施例6の可溶性イミド骨格樹脂のGPCチャートである。
【図3】実施例6の可溶性イミド骨格樹脂のIRチャートである。
【図4】実施例6の可溶性イミド骨格樹脂の特定硬化物のTMAチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0051】
[可溶性イミド骨格樹脂]
本発明の第1態様に係る可溶性イミド骨格樹脂は、下記一般式(1)で表され、かつシクロヘキサノンへの溶解性が、60℃で、1重量%以上の溶解度を有するものである。
また、本発明の第2態様に係る可溶性イミド骨格樹脂は、エポキシ基およびイミド基を有するイミド骨格樹脂であって、シクロヘキサノンに対して、60℃で、1重量%以上の溶解度(以下、この溶解性を「シクロヘキサノン溶解性」と称す場合がある。)を有し、硬化剤と硬化促進剤のみを配合してなる硬化物のガラス転移温度が130℃以上で、ガラス転移温度以下における線膨張係数が75ppm/℃未満となるものである。
【0052】
【化16】

【0053】
(式中、Aは、下記一般式(2−1)、下記一般式(3−1)、または下記一般式(4−1)で表される連結基であり、n+1個のAは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。ただし、全A成分中の5モル%以上は、下記一般式(4−1)で表されるイミド骨格含有連結基である。
Bは、水素原子、または下記構造式(5)で表される基であり、2個のBは互いに同一であっても、異なっていてもよい。
nは、0〜200の整数である。
但し、Bが両方とも水素原子である場合、nは1以上の整数である。)
【0054】
【化17】

【0055】
(式中、Rは、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、またはハロゲン元素であり、複数のRは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。また、ベンゼン環上の隣接した炭素原子に結合した2個のRは、互いに結合して炭素数4〜20の芳香環を含む環状基を形成してもよい。
mは、0または1である。
Xは、単結合、或いは炭素数1〜20の2価の炭化水素基、−O−、−S−、−SO−、またはCO−である。)
【0056】
【化18】

【0057】
(式中、Rは、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、またはハロゲン元素であり、複数のRは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。また、ナフタレン環上の隣接した炭素原子に結合した2個のRは、互いに結合して炭素数4〜20の芳香環を含む環状基を形成してもよい。)
【0058】
【化19】

【0059】
(式中、Rは、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、またはハロゲン元素であり、複数のRは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。また、ベンゼン環上の隣接した炭素原子に結合した2個のRは、互いに結合して炭素数4〜20の芳香環を含む環状基を形成してもよい。
、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、フェニル基、または炭素数1〜10の炭化水素基である。2個のR、R、Rは、それぞれ、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。また、ベンゼン環上の隣接した炭素原子に結合したRとRは、互いに結合して炭素数4〜20の芳香環を含む環状基を形成してもよい。
Yは単結合、−SO−、−O−、−CO−、−C(CF)−、−S−、または炭素数1〜20の2価の炭化水素基から選ばれる基である。)
【0060】
【化20】

【0061】
{第1態様に係る可溶性イミド骨格樹脂}
<A成分>
第1態様に係る可溶性イミド骨格樹脂を表す一般式(1)中のAは、前記一般(2−1)、前記一般式(3−1)、または前記一般式(4−1)で表される連結基であるが、一般式(2−1)において、Rは好ましくは水素原子またはメチル基であり、Xは好ましくは、単結合、或いは炭素数1〜6のアルキル基で置換されていてもよいメチレン基またはプロピレン基である。
【0062】
一般式(2−1)で表される連結基としては、特に好ましくは、下記構造式(2−3)、(2−4)、(2−5)で表されるものが挙げられる。構造式(2−5)で表される連結基は、特に下記構造式(2−5a)で表されるものが好ましい。
【0063】
【化21】

【0064】
また、一般式(3−1)において、Rは好ましくは水素原子、メチル基、またはナフタレン環上の隣接した炭素原子に結合した、炭素数4の環状基である。一般式(3−1)で表される連結基としては、特に好ましくは、下記構造式(3−2)、(3−3)で表されるものが挙げられる。
【0065】
【化22】

【0066】
また、一般式(4−1)において、Rは好ましくは水素原子またはメチル基であり、水素原子の場合、その結合手の位置はベンゼン環のイミド基が結合した位置に対してメタ位および/またはパラ位であることが好ましい。また、メチル基の場合、その結合手の位置はベンゼン環のイミド基が結合した位置に対してオルト位および/またはメタ位であることが主に溶解性の面から好ましい。
、R、Rは、それぞれ独立に、好ましくは水素原子またはメチル基である。
Yは好ましくは単結合、−SO2−、−O−、−CO−、またはC(CF)−である。
【0067】
特に一般式(4−1)で表されるイミド骨格含有連結基は、下記一般式(6−1)で表されることが好ましく、ここで、Rは好ましくは水素原子またはメチル基であり、その結合手の位置はベンゼン環のイミド基が結合した位置に対してメタ位および/またはパラ位であることが好ましい。
一般式(6−1)で表される連結基は特に下記一般式(10−1)で表される連結基であることが好ましい。
【0068】
【化23】

【0069】
(式中、Rは、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、またはハロゲン元素であり、複数のRは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。また、ベンゼン環上の隣接した炭素原子に結合した2個のRは、互いに結合して炭素数4〜20の芳香環を含む環状基を形成してもよい。
Yは前記一般式(4−1)におけると同義である。)
【0070】
【化24】

【0071】
(式中、Yは好ましくは単結合、−SO2−、−O−、−CO−、またはC(CF3)2−である。)
【0072】
<A中イミド骨格モル含率>
一般式(1)で表される第1態様に係る可溶性イミド骨格樹脂のA成分は、前記一般式(2−1)、一般式(3−1)、または前記一般式(4−1)で表される連結基であるが、一般式(1)中の全A成分中の一般式(4−1)で表されるイミド骨格含有連結基の割合(以下、この割合を「A中イミド骨格モル含率」と称す場合がある。)は5モル%以上であり、好ましくは10モル%以上、より好ましくは15モル%以上である。
【0073】
A中イミド骨格モル含率が5モル%より少ないと線膨張率および耐熱性が不十分となる。
なお、A中イミド骨格モル含率の上限は100モル%であるが、イミド骨格の含有率が高いと溶解性が悪くなるので、好ましくは、95モル%以下、より好ましくは、90モル%以下である。
【0074】
<B成分>
一般式(1)中のBは、水素原子、または下記構造式(5)で表される基であり、2個のBは互いに同一であっても、異なっていてもよい。
【0075】
【化25】

【0076】
一般式(1)において、全B成分中の上記構造式(5)で表される基の割合には特に制限はなく、水素原子の割合よりも多くてもよく、少なくてもよい。B成分はすべてが水素原子であっても、すべてが上記構造式(5)で表される基であってもよい。
Bが、両方とも水素原子である可溶性イミド骨格樹脂や、水素原子の割合の多い可溶性イミド骨格樹脂は、フェノール系硬化剤として使用できる。
また、Bが、両方とも上記構造式(5)で表される基である可溶性イミド骨格樹脂や、上記構造式(5)で表される基の割合の多い可溶性イミド骨格樹脂は、エポキシ樹脂として使用でき、この場合、エポキシ当量は、190g/eq.以上であることが好ましい。エポキシ当量の上限には特に制限はないが、通常100、000g/eq.以下である。
【0077】
第1態様に係る可溶性イミド骨格樹脂をフェノール系硬化剤として使用する場合は、全B成分中の水素原子の割合は、例えば、50〜100モル%、好ましくは70〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%であり、本発明の可溶性イミド骨格樹脂をエポキシ樹脂として使用する場合は、全B成分中の上記構造式(5)で表される基の割合は、例えば50〜100モル%、好ましくは70〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%である。
【0078】
{第2態様に係る可溶性イミド骨格樹脂}
<イミド基>
第2態様に係る可溶性イミド骨格樹脂が有するイミド基とは、イミドから誘導される残基をさし、イミドとは−CONHCO−を持つ環式化合物をさす。
【0079】
可溶性イミド骨格樹脂が有するイミド基としては、フタルイミド基、スクシンイミド基、マレイミド基、またはこれらのイミド基が、フェニル基または炭素数1〜10の炭化水素基等で置換されたものが挙げられ、好ましくは、これらの置換基で置換されたフタルイミド基または無置換のフタルイミド基である。
【0080】
このイミド基は、第2態様において規定されるシクロヘキサノン溶解性、ガラス転移温度および線膨張係数を満たすものであれば、2価の有機基として可溶性イミド骨格樹脂の主鎖上に存在してもよいし、1価の有機基として側鎖に存在してもよい。
また、可溶性イミド骨格樹脂中のイミド基の含有割合についても、第2態様において規定されるシクロヘキサノン溶解性、ガラス転移温度および線膨張係数を満たすものであれば、特に制限はない。
【0081】
<エポキシ基>
第2態様に係る可溶性イミド骨格樹脂が有するエポキシ基としてはグリシジル基が好ましい。即ち、エポキシ基はグリシジル基の一部として存在することが好ましい。
エポキシ基は主鎖の末端に存在していても側鎖に存在していてもよい。
可溶性イミド骨格樹脂中のエポキシ基の含有割合は、第2態様において規定されるシクロヘキサノン溶解性、ガラス転移温度および線膨張係数を満たすものであれば、特に制限はない。
【0082】
<好適構造>
第2態様に係る可溶性イミド骨格樹脂としては、主鎖上に前述のイミド基およびヒドロキシエチレン基を有することが好ましい。イミド基およびヒドロキシエチレン基は直接結合していてもよいが、酸素等のヘテロ原子や他の原子団を介して結合していてもよい。
また、ヒドロキシエチレン基は、例えば、2−ヒドロキシトリメチレン基等のヒドロキシポリメチレン基の一部として主鎖上に存在していてもよい。
【0083】
{nの値・数平均分子量}
本発明の可溶性イミド骨格樹脂の数平均分子量は、通常300以上であり、より好ましくは350以上であるが、数平均分子量が120,000を超えると、樹脂が極めて高粘度となり樹脂の取り扱いが困難になり、好ましくない。耐熱性、樹脂の取り扱い性の両面からみて、本発明の可溶性イミド骨格樹脂の数平均分子量は好ましくは100,000以下であり、より好ましくは80,000以下である。
【0084】
このような数平均分子量の可溶性イミド骨格樹脂は、通常、一般式(1)におけるnの値として、0〜200である。
nが10未満である可溶性イミド骨格樹脂は、エポキシ樹脂またはフェノール樹脂として扱え、樹脂粘度が低く扱いやすい。nが10以上である可溶性イミド骨格樹脂は、フィルム化が可能になり、製膜成形性に優れる。また、熱可塑性樹脂として使用することも可能になる。
なお、本発明の可溶性イミド骨格樹脂は、前記一般式(1)において、Bが両方とも水素原子の場合、nは1以上である。Bが両方とも水素原子の場合は、n=0であると結晶性が強くなり、扱いにくい。
【0085】
本発明の可溶性イミド骨格樹脂の数平均分子量は、後述の可溶性イミド骨格樹脂の製造方法において、エピハロヒドリンと2価フェノール化合物の仕込みモル比、あるいは2官能エポキシ樹脂と2価フェノール化合物の仕込みモル比、を調整することで目的の値のイミド骨格樹脂として製造することができる。
【0086】
なお、イミド骨格樹脂の数平均分子量、nの値およびその平均値は、後述の実施例の項に記載される方法で求めることができる。
【0087】
{ケトン系溶剤に対する溶解度}
本発明の可溶性イミド骨格樹脂は、シクロヘキサノンに対して、60℃で、1重量%以上の溶解度を示すものであり、好ましくは、1.5重量%以上の溶解度、更に好ましくは、2.0重量%以上の溶解度を示し、特に好ましいものは、2.5重量%以上の溶解度を示し、最も好ましいものは、3.0重量%以上の溶解度を示す。
【0088】
本発明の可溶性イミド骨格樹脂に、このような溶解性を発現させるためには、前記一般式(4−1)における、R、R、R、RおよびYの種類、数と位置、一般式(2−1)、(3−1)、および(4−1)の組み合わせ、一般式(1)における一般式(4−1)で表されるイミド骨格含有連結基の割合、nの数、Bの種類等を調整する必要がある。その調整は、前述の<A成分>、<A中のイミド骨格モル含率>、<B成分>、<nの値・数平均分子量>で記載したとおりである。
【0089】
なお、本発明の可溶性イミド骨格樹脂のシクロヘキサノンに対する溶解度の測定方法は、以下の通りである。
【0090】
(溶解度の測定方法)
サンプル瓶に、イミド骨格樹脂とシクロヘキサノンを入れ、時々手で振り混ぜながら、油浴中で60℃で2時間加熱した際の溶解性を目視で確認する。高濃度から測定を開始し、解け残りがある場合には少量ずつ溶剤を足して濃度を下げ、完全に溶解した時点の濃度を溶解度とする。
【0091】
{特定硬化物のガラス転移温度・線膨張係数}
本発明の可溶性イミド骨格樹脂は、当該可溶性イミド骨格樹脂に、硬化剤と硬化促進剤のみを配合してなる硬化物(以下、この硬化物を「特定硬化物」と称す場合がある。)のガラス転移温度(Tg)が130℃以上で、ガラス転移温度以下における線膨張係数(CTE)が75ppm/℃未満であることが好ましい。
【0092】
このガラス転移温度および線膨張係数の測定に供される特定硬化物は、可溶性イミド骨格樹脂のエポキシ当量に応じて、具体的には次のようにして製造される。
【0093】
硬化方法I:エポキシ当量が5000g/eq.以上の可溶性イミド骨格樹脂の場合
可溶性イミド骨格樹脂の固形分100gと、硬化剤:jER 157S70(ジャパンエポキシレジン(株)商品名、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量210(g/eq.))5gと、jERキュアYLH129(ジャパンエポキシレジン(株)商品名、ビスフェノールAノボラック樹脂、水酸基当量117(g/eq.)、軟化点115(℃))2gと、硬化促進剤:2−エチル−4−メチルイミダゾール0.5gと、シクロヘキサン80gと、ジメチルアセトアミド80gとを1000mlビーカーに仕込んで混合し、スリット幅300μmのアプリケーターを用いて、テフロンフィルム(ニチアス(株):テフロンテープ TOMBO9001)上に塗膜を引き、熱風乾燥機にて170℃で30分間保持し、更に200℃で90分間保持して、60〜100μmの厚みの特定硬化物を得る。
【0094】
硬化方法II:エポキシ当量が5000g/eq.未満の可溶性イミド骨格樹脂の場合
可溶性イミド骨格樹脂の固形分100gと、硬化剤:jERキュアYLH129(ジャパンエポキシレジン(株)商品名、ビスフェノールAノボラック樹脂、水酸基当量117(g/eq.)、軟化点115(℃))[(100×117)÷(イミド骨格樹脂のエポキシ当量)]gと、硬化促進剤:2−エチル−4−メチルイミダゾール0.3gを200mlビーカーに仕込み、260℃のホットプレート上で加熱、溶融混合し、溶融混合樹脂を減圧脱泡した後、セーフベンドライヤー内で、170℃で30分加熱後、200℃で90分加熱し、特定硬化物を得る。
【0095】
このようにして得られる特定硬化物のガラス転移温度および線膨張係数は、後述の実施例の項に示される方法で測定される。
【0096】
このガラス転移温度が130℃未満では、本発明で目的とする高耐熱性樹脂が得られない。このガラス転移温度は好ましくは140℃以上であり、より好ましくは150℃以上である。なお、ガラス転移温度は高い程好ましいが、通常250℃以下である。
【0097】
また、上記線膨張係数が75ppm/℃以上では、本発明で目的とする低線膨張係数の樹脂が得られない。この線膨張係数は低い程好ましく、より好ましくは70ppm/℃以上、更に好ましくは65ppm/℃以下である。
線膨張係数は低い程好ましいが、通常30ppm/℃以上である。
【0098】
{可鹸化塩素量}
本発明の可溶性イミド骨格樹脂の製造に当たり、後述の一段法で製造した可溶性イミド骨格樹脂は、反応にエピハロヒドリンを使用するため、末端基不純物として、ハロゲン、特にエピクロルヒドリンを用いた場合には可鹸化塩素が残留する。この可鹸化塩素量は少ないことが好ましく、可溶性イミド骨格樹脂中の可鹸化塩素量は900ppm以下であることが好ましく、700ppm以下であることが好ましい。可鹸化塩素量が高く、例えば1000ppmを超えると、電気特性の悪化の原因となり、好ましくない。可鹸化塩素量は低い程好ましいが、通常工業製品としては10ppm以上である。ただし、それよりも低い場合、例えば、2〜4ppmの場合もあり得る。
【0099】
[可溶性イミド骨格樹脂の製造方法]
本発明の可溶性イミド骨格樹脂の製造方法としては特に制限はないが、以下の一段法または二段法により製造することができる。
【0100】
<一段法>
下記一般式(2−2)、下記一般式(3−2)、および下記一般式(4−2)のいずれかで表される2価フェノール化合物と、エピクロルヒドリンやエピブロムヒドリン等のエピハロヒドリンとを、アルカリの存在下で反応させる方法。
【0101】
【化26】

(式中、R、X、mは、それぞれ前記一般式(2−1)におけると同義である。)
【0102】
【化27】

(式中、Rは、前記一般式(3−1)におけると同義である。)
【0103】
【化28】

(式中、R、R、R、R、Yは、それぞれ前記一般式(4−1)におけると同義である。)
【0104】
<二段法>
下記一般式(7)、下記一般式(8)、および下記一般式(9)のいずれかで表される2官能エポキシ樹脂と、上記一般式(2−2)、上記一般式(3−2)、および上記一般式(4−2)のいずれかで表される2価フェノール化合物とを、触媒の存在下で反応させる方法。
【0105】
【化29】

(式中、R、Xは、それぞれ前記一般式(2−1)におけると同義である。lは0または1であり、pは0〜10の整数である。)
【0106】
【化30】

(式中、Rは前記一般式(3−1)におけると同義である。qは0〜10の整数である。)
【0107】
【化31】

(式中、R、R、R、R、Yは、それぞれ前記一般式(4−1)におけると同義である。rは0〜10の整数である。)
【0108】
上記の一段法および二段法の製造で使用される2価フェノール化合物は、前記一般式(2−2)、前記一般式(3−2)、および前記一般式(4−2)で表される2価フェノール化合物のいずれかであり、本発明においては、これらの1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、本発明の目的を損なわない限り、これらの2価フェノール化合物以外の、分子内に芳香族環に結合した水酸基を2個持つ2価フェノール化合物を併用しても良い。
【0109】
前記一般式(2−2)で表される2価フェノール化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールアセトフェノン、ビスフェノールフルオレノン、ビスフェノールB、ビスフェノールADなどのビスフェノール類、4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノールなどのビフェノール類、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノンなどが挙げられるが、特にビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール、ビスフェノールアセトフェノン、ビスフェノールフルオレノンが好ましい。
【0110】
前記一般式(3−2)で表される2価フェノール化合物としては、例えば、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシアントラセン、ジヒドロキシジヒドロアントラセンなどが挙げられるが、特にジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシジヒドロアントラセンが好ましい。
【0111】
前記一般式(4−2)で表される2価フェノール化合物としては、下記一般式(6−2)で表される化合物が好ましく、更に下記一般式(10−2)で表される化合物がより好ましく、特に下記構造式(10−3)、(10−4)、(10−5)、(10−6)、(10−7)、(10−8)で表される化合物が好ましい。
【0112】
【化32】

(式中、R、Yは、前記一般式(6−1)におけると同義である。)
【0113】
【化33】

(式中、Yは好ましくは単結合、−SO−、−O−、−CO−、または−C(CF)−である。)
【0114】
【化34】

【0115】
上記二段法の製造で使用される2官能エポキシ樹脂は、前記一般式(7)、前記一般式(8)、および前記一般式(9)で表されるエポキシ樹脂であり、本発明においては、これらの1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、本発明の目的を損なわない限り、これら2官能エポキシ樹脂以外の、分子内に2個のエポキシ基を持つ2官能エポキシ樹脂を併用しても良い。
【0116】
前記一般式(7)で表される2官能エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールアセトフェノン型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレノン型エポキシ樹脂、カテコール、レゾルシン、ハイドロキノンなどの単環2価フェノールのジグリシジルエーテルなどが挙げられる。これらのエポキシ樹脂の中で特に好ましいものは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、4,4’−ビフェノール型エポキシ樹脂、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール型エポキシ樹脂である。
【0117】
前記一般式(8)で表される2官能エポキシ樹脂としては、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0118】
前記一般式(9)で表される2官能エポキシ樹脂としてはイミド骨格型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0119】
前記一般式(7)、(8)、(9)で表される2官能エポキシ樹脂以外の併用してもよい2官能エポキシ樹脂としては、脂環式エポキシ樹脂、2価アルコールのジグリシジルエーテル、フタル酸、イソフタル酸、テトラハイドロフタル酸、ヘキサハイドロフタル酸などの2価カルボン酸のジグリシジルエステル等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂はアルキル基、アリール基、エーテル基、エステル基などの悪影響のない置換基で置換されていても良い。これらのエポキシ化合物は複数種を併用して使用することもできるが、その使用量は、全2官能エポキシ樹脂中30重量%以下とすることが好ましい。
【0120】
上記原料化合物(ないし原料樹脂)は、目的とする化学構造、A中イミド骨格モル含率、数平均分子量および溶剤溶解性のイミド骨格樹脂が得られるように、所定の割合で使用される。
【0121】
前記一段法で使用し得るアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の1種または2種以上を用いることができ、これらは通常20〜50重量%程度の水溶液として、通常フェノール化合物に対するモル比で0.2〜2.0程度使用される。
【0122】
一方、前記二段法で使用する触媒としては、エポキシ基とフェノール性水酸基との反応を促進させる触媒能を持つ化合物であればどのようなものでもよいが、例えば、アルカリ金属化合物、有機リン化合物、第3級アミン、第4級アンモニウム塩、環状アミン類、イミダゾール類等が挙げられる。好ましくは、有機リン化合物、第4級アンモニウム塩である。
【0123】
アルカリ金属化合物の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、塩化カリウム等のアルカリ金属塩;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属アルコキシド;アルカリ金属フェノキシド、水素化ナトリウム、水素化リチウム等;酢酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム等の有機酸のアルカリ金属塩が挙げられる。
【0124】
有機リン化合物の具体例としては、トリ−n−プロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、テトラメチルホスフォニウムブロマイド、テトラメチルホスフォニウムアイオダイド、テトラメチルホスフォニウムハイドロオキサイド、トリメチルシクロヘキシルホスホニウムクロライド、トリメチルシクロヘキシルホスホニウムブロマイド、トリメチルベンジルホスホニウムクロライド、トリメチルベンジルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、トリフェニルメチルホスホニウムブロマイド、トリフェニルメチルホスホニウムアイオダイド、トリフェニルエチルホスホニウムクロライド、トリフェニルエチルホスホニウムブロマイド、トリフェニルエチルホスホニウムアイオダイド、トリフェニルベンジルホスホニウムクロライド、トリフェニルベンジルホスホニウムブロマイドなどが挙げられる。
【0125】
第3級アミンの具体例としては、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリエタノールアミン、ベンジルジメチルアミンなどが挙げられる。
【0126】
第4級アンモニウム塩の具体例としては、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、トリエチルメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムアイオダイド、テトラプロピルアンモニウムブロマイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムアイオダイド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムハイドロオキサイド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、フェニルトリメチルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。
【0127】
環状アミン類の具体例としては、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7,1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5等が挙げられる。
【0128】
イミダゾール類の具体例としては、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールなどが挙げられる。
【0129】
これらの触媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を使用してもよい。
【0130】
これらの触媒の使用量は、反応固形分に対して0.001〜1重量%とすることが好ましい。
【0131】
一段法においても、二段法においても、その製造時の合成反応の工程において溶媒を用いてもよく、その溶媒としては、イミド骨格樹脂を溶解し、反応に悪影響のないものであればどのようなものでもよい。例えば、芳香族系炭化水素、非プロトン性極性溶剤、アルコール類、ケトン類、グリコールエーテル類などが挙げられる。好ましくは、非プロトン性極性溶剤、アルコール類、ケトン類、アミド系溶媒である。
【0132】
芳香族系炭化水素の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどが挙げられる。
ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジイソプロピルケトン、ジ−tert−ブチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−オクタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘキシルメチルケトン、アセトフェノン、アセチルアセトン、ジオキサン等が挙げられる。
非プロトン性極性溶剤の具体例としては、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、2−ピロリドン、N−メチルピロリドンなどが挙げられる。
グリコールエーテル類の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。
【0133】
これらの溶媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0134】
使用する溶媒の量は反応条件に応じて適宜選択することができるが、例えば、二段法製造時の場合は固形分濃度が35〜95重量%となるようにすることが好ましく、一段法製造時の場合は、エピハロヒドリンに対して、モル比で0.2〜2.0程度用いることが好ましい。また、反応中に高粘性生成物が生じる場合は反応途中で溶媒を添加して反応を続けることができる。反応終了後、溶媒は必要に応じて蒸留等により除去することもできるし、更に追加することもできる。
【0135】
本発明の可溶性イミド骨格樹脂の一段法製造時の反応温度は、40〜130℃程度の温度範囲で行う。反応温度は、好ましくは40〜80℃、より好ましくは45〜70℃である。
反応時間は通常30〜240分程度である。
【0136】
本発明の可溶性イミド骨格樹脂の二段法製造時の反応温度は、使用する触媒が分解しない程度の温度範囲で行う。反応温度は、好ましくは50〜230℃、より好ましくは120〜200℃である。アセトンやメチルエチルケトンのような低沸点溶媒を使用する場合には、オートクレーブを使用して高圧下で反応を行うことで反応温度を確保することができる。
反応時間は通常1〜12時間程度である。
【0137】
[可溶性イミド骨格樹脂溶液組成物]
本発明の可溶性イミド骨格樹脂は、溶剤溶解性に優れることから、可溶性イミド骨格樹脂溶液組成物として取り扱うことが出来る。
この場合、用いる溶媒としては、ケトン系溶媒および/またはジメチルアセトアミドを全溶媒成分中10重量%以上含有する溶媒であり、好ましくはケトン系溶媒および/またはジメチルアセトアミドを20重量%以上含有する溶媒であり、より好ましくは30重量%以上含有する溶媒である。溶媒中のケトン系溶媒および/またはジメチルアセトアミドの含有量が少なすぎると溶液の安定性が悪化することがある。
【0138】
ここで、ケトン系溶媒とは、ケトン基を有する液体を指す。例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジイソプロピルケトン、ジ−tert−ブチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−オクタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘキシルメチルケトン、アセトフェノン、アセチルアセトン、ジオキサン等が挙げられる。この中でも、好ましくは、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロペンタノン、シクロヘキサノンであり、より好ましくは、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノンである。これらのケトン系溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0139】
なお、可溶性イミド骨格樹脂溶液組成物の溶媒のうち、ケトン系溶媒および/またはジメチルアセトアミド以外の溶媒としては、前述の、本発明の可溶性イミド骨格樹脂の製造方法において、合成反応工程で用いてもよい溶媒として例示した溶媒の1種または2種以上が挙げられる。
【0140】
可溶性イミド骨格樹脂溶液組成物中の可溶性イミド骨格樹脂濃度は1〜90重量%であり、好ましくは10〜90重量%であり、より好ましくは20〜80重量%であり、更に好ましくは25〜75重量%である。可溶性イミド骨格樹脂濃度が低すぎると溶媒の使用量が多くなりすぎて不経済であり、高すぎると粘度が高くなるため取り扱いが困難となる。また、可溶性イミド骨格樹脂溶液組成物は、長期保存中に溶液がゲル化(固化)しないことも重要である。
【0141】
[硬化性樹脂組成物]
本発明の硬化性樹脂組成物は、本発明の可溶性イミド骨格樹脂を含むものである。本発明の硬化性樹脂組成物は、本発明の可溶性イミド骨格樹脂の他、更に、当該イミド骨格樹脂以外のエポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂、溶媒、無機充填剤、繊維基材、その他の種々の添加成分を含むことができる。
【0142】
<可溶性イミド骨格樹脂以外のエポキシ樹脂>
本発明の硬化性樹脂組成物が含み得る可溶性イミド骨格樹脂以外のエポキシ樹脂としては、特に制限はなく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、フェノール類とグリオキサールやヒドロキシベンズアルデヒドやクロトンアルデヒド等のアルデヒド類との縮合ノボラック類にエピハロヒドリンを反応させて得られるエポキシ樹脂などのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂等の種々のエポキシ樹脂が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0143】
本発明の硬化性樹脂組成物が、本発明の可溶性イミド骨格樹脂以外のエポキシ樹脂を含む場合、その含有量は、硬化性樹脂組成物の用途、硬化性樹脂組成物に要求される特性等によって異なるが、通常、全エポキシ樹脂(イミド骨格樹脂とイミド骨格樹脂以外のエポキシ樹脂との合計)100重量部中、40重量部以下、例えば20〜30重量部とすることが好ましい。本発明の可溶性イミド骨格樹脂以外のエポキシ樹脂を配合することにより、可撓性や相溶性の向上という効果が奏されるが、その配合量が多過ぎると、本発明の可溶性イミド骨格樹脂による耐熱性と低線膨張性、特に低線膨張性の効果が損なわれる恐れがある。
【0144】
<硬化剤>
可溶性イミド骨格樹脂の硬化剤としては、可溶性イミド骨格樹脂の末端基がエポキシ基である場合は、一般のエポキシ樹脂用硬化剤が用いられ、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ハイドロキノン、レゾルシン、メチルレゾルシン、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシジフェニルエーテル、チオジフェノール類、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、テルペンフェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ビフェニルフェノール樹脂、臭素化ビスフェノールA、臭素化フェノールノボラック樹脂などの種々の多価フェノール類や、種々のフェノール類とベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、グリオキザールなどの種々のアルデヒド類との縮合反応で得られる多価フェノール樹脂類、重質油またはピッチ類とフェノール類とホルムアルデヒド類との共縮合樹脂等の各種のフェノール樹脂類、それら各種のフェノール(樹脂)類のフェノール性水酸基の全部もしくは一部をベンゾエート化あるいはアセテート化などのエステル化することによって得られる活性エステル化合物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ピロメリット酸、メチルナジック酸等の酸無水物類、ジエチレントリアミン、イソホロンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミド、脂肪族ポリアミン、ポリアミド等のアミン類などが挙げられる。
【0145】
また、エポキシ基の重合を開始するタイプの硬化剤としては、例えば、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートなどのホスホニウム塩、2−メチルイミダゾ−ル、2−フェニルイミダゾ−ル、2−エチル−4−メチルイミダゾ−ル、2−ウンデシルイミダゾ−ル、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾ−ル、2,4−ジシアノ−6−[2−メチルイミダゾリル−(1)]−エチル−S−トリアジンなどのイミダゾ−ル類、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテ−ト、2−メチルイミダゾリウムイソシアヌレ−ト、2−エチル−4−メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレ−ト、2−エチル−1,4−ジメチルイミダゾリウムテトラフェニルボレ−トなどのイミダゾリウム塩、2,4−6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノ−ル、ベンジルジメチルアミンなどのアミン類、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレ−トなどのアンモニウム塩、1,5−ジアザビシクロ(5,4,0)−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)−5−ノネンなどのジアザビシクロ化合物などが挙げられる。また、これらジアザビシクロ化合物のテトラフェニルボレ−ト、フェノール塩、フェノールノボラック塩、2−エチルヘキサン酸塩など、さらにはトリフル酸(Triflic acid)塩、三弗化硼素エーテル錯化合物、金属フルオロ硼素錯塩、ビス(ペルフルオルアルキルスルホニル)メタン金属塩、アリールジアゾニウム化合物、芳香族オニウム塩、周期表第IIIa〜Va族元素のジカルボニルキレート、チオピリリウム塩、MF6陰イオン(ここでMは燐、アンチモンおよび砒素から選択される)の形の周期表第VIb族元素、アリールスルホニウム錯塩、芳香族ヨードニウム錯塩、芳香族スルホニウム錯塩、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド−ビス−ヘキサフルオロ金属塩(例えば燐酸塩、砒酸塩、アンチモン酸塩等)、アリールスルホニウム錯塩、ハロゲン含有錯イオンの芳香族スルホニウムまたはヨードニウム塩等を用いることができる。
【0146】
カチオン系重合開始剤もエポキシ樹脂の硬化剤として使用することができ、そのカチオン系重合開始剤としては、活性エネルギー線によりカチオン種またはルイス酸を発生する、活性エネルギー線カチオン系重合開始剤、または熱によりカチオン種またはルイス酸を発生する熱カチオン重合開始剤を用いることができる。
【0147】
活性エネルギー線カチオン系重合開始剤としては、米国特許第3379653号に記載されるような金属フルオロ硼素錯塩および三弗化硼素錯化合物;米国特許第3586616号に記載されるようなビス(ペルフルオルアルキルスルホニル)メタン金属塩;米国特許第3708296号に記載されるようなアリールジアゾニウム化合物;米国特許第4058400号に記載されるような周期表第VIa族元素の芳香族オニウム塩;米国特許第4069055号に記載されるような周期表第Va族元素の芳香族オニウム塩;米国特許第4068091号に記載されるような周期表第IIIa〜Va族元素のジカルボニルキレート;米国特許第4139655号に記載されるようなチオピリリウム塩;米国特許第4161478号に記載されるようなMF6陰イオン(ここでMは燐、アンチモンおよび砒素から選択される)の形の周期表第VIb族元素;米国特許第4231951号に記載されるようなアリールスルホニウム錯塩;米国特許第4256828号に記載されるような芳香族ヨードニウム錯塩および芳香族スルホニウム錯塩;W.R.Wattらによって「ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス(Journal of Polymer Science)、ポリマー・ケミストリー(Polymer Chemistry)版」、第22巻、1789頁(1984年)に記載されるようなビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド−ビス−ヘキサフルオロ金属塩(例えば燐酸塩、砒酸塩、アンチモン酸塩等)の一種以上が包含される。その他、鉄化合物の混合配位子金属塩およびシラノール−アルミニウム錯体も使用することが可能である。
【0148】
好ましい活性エネルギー線カチオン系重合開始剤には、アリールスルホニウム錯塩、ハロゲン含有錯イオンの芳香族スルホニウムまたはヨードニウム塩並びに周期表第II族、V族およびVI族元素の芳香族オニウム塩が包含される。これらの塩のいくつかは、FX−512(3M社)、UVR−6990およびUVR−6974(ユニオン・カーバイド(Union Carbide)社)、UVE−1014およびUVE−1016(ジェネラル・エレクトリック(General Electric)社)、KI−85(デグッサ(Degussa)社)、SP−150およびSP−170(旭電化社)並びにサンエイドSI−60L、SI−80LおよびSI−100L(三新化学工業社)として商品として入手できる。
【0149】
熱カチオン系重合開始剤としては、トリフル酸(Triflic acid)塩、三弗化硼素エーテル錯化合物、三弗化硼素等のようなカチオン系またはプロトン酸触媒を用いることができる。好ましい熱カチオン系重合開始剤としては、トリフル酸塩であり、例としては、3M社からFC−520として入手できるトリフル酸ジエチルアンモニウム、トリフル酸トリエチルアンモニウム、トリフル酸ジイソプロピルアンモニウム、トリフル酸エチルジイソプロピルアンモニウム等(これらの多くはR.R.Almによって1980年10月発行のモダン・コーティングス(Modern Coatings)に記載されている)がある。
【0150】
また一方、活性エネルギー線カチオン系重合開始剤としても用いられる芳香族オニウム塩のうち、熱によりカチオン種を発生するものがあり、これらも熱カチオン系重合開始剤として用いることができる。
【0151】
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0152】
本発明の可溶性イミド骨格樹脂の末端基がOH基である場合(即ち、一般式(1)におけるBが水素原子である場合)は、硬化剤としてエポキシ樹脂を用いるのが良く、そのエポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルフェノール型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂などの種々の多価フェノールノボラック型エポキシ樹脂類等などが挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0153】
硬化性樹脂組成物中の硬化剤の含有量は、用いる硬化剤の種類によっても異なるが、通常、全エポキシ樹脂100重量部に対して0.5〜100重量部、好ましくは1〜95重量部の範囲内である。
【0154】
<硬化促進剤>
硬化促進剤としては、一般のエポキシ樹脂組成物に用いられるものをいずれも用いることができ、例えば、ベンジルジメチルアミン、各種のイミダゾール系化合物等のアミン類、トリフェニルホスフィンなどの三級ホスフィン類等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0155】
硬化促進剤は、全エポキシ樹脂100重量部に対して、0.1〜5.0重量部配合することが好ましい。
【0156】
<エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂>
エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂としては、シアネートエステル樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、熱硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂などを使用することができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0157】
本発明の硬化性樹脂組成物がこれらの熱硬化性樹脂を含む場合、その含有量は、全エポキシ樹脂100重量部に対して40重量部以下、例えば10〜30重量部とすることが好ましい。硬化性樹脂組成物がエポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂を含むことにより、低吸水性とすることができるが、その含有量が多過ぎると、本発明の可溶性イミド骨格樹脂を用いることによる効果、更にはエポキシ樹脂の特性が損なわれる恐れがある。
【0158】
<溶媒>
本発明の硬化性樹脂組成物が含み得る溶媒としては、可溶性イミド骨格樹脂溶液組成物で用いられる溶媒と同様のものを用いても良く、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族類、酢酸エチル等のエステル類、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、メタノール、エタノール等のアルコール類などが挙げられる。成型性を良くするために、溶解性の良いケトン系溶媒が良い。
これらの溶媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0159】
溶媒の使用量は硬化性樹脂組成物の使用目的に応じて適宜決定され、例えば積層板用途で、ガラス繊維不織布に硬化性樹脂組成物を含浸させてプリプレグを作成する際には、溶媒以外の硬化性樹脂組成物中の全固形分濃度が40〜70重量%程度となるように用いられ、また、ビルドアップ用途においては、溶媒以外の硬化性樹脂組成物中の全固形分濃度が35〜75重量%程度となるように用いられる。
【0160】
<無機充填剤>
無機充填剤としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどの金属酸化物、微粉末シリカ、溶融シリカ、結晶シリカなどのケイ素化合物、ガラスビーズ等の透明フィラー、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物、その他、炭酸カルシウム、カオリン、マイカ、石英粉末、グラファイト、二硫化モリブデン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0161】
無機充填剤は、その粒径が大き過ぎると硬化物の表面形状が悪化し、小さ過ぎると凝集しやすくなり分散性が悪くなることから、平均粒径1〜30μm程度のものを用いることが好ましい。
【0162】
本発明の硬化性樹脂組成物がこれらの無機充填剤を含む場合、その含有量は、全エポキシ樹脂100重量部に対して80重量部以下、例えば10〜60重量部とすることが好ましい。硬化性樹脂組成物が無機充填剤を含むことにより、難燃性向上、低吸水性向上、低線膨張率化という効果が得られるが、その含有量が多過ぎると、成形性等が損なわれる恐れがある。
【0163】
<樹脂基材>
繊維基材としては例えばガラス繊維布等の無機繊維布、ガラス繊維不織布、有機繊維不織布等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0164】
これらの繊維基材を含む硬化性樹脂組成物は、例えば繊維基材への硬化性樹脂組成物の塗布、含浸など、種々な手法で形成することができ、その方法に応じて、様々な繊維基材含有量とすることができる。
【0165】
<その他の成分>
本発明の硬化性樹脂組成物は、その他、保存安定性向上のための紫外線防止剤、可塑剤、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤などのカップリング剤、着色剤や顔料、難燃性を付与するための、ハロゲン系、リン系、窒素系、シリコン系等の難燃剤、ガラス繊維等の補強材等、通常のエポキシ樹脂組成物に配合し得る、各種の添加物を、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
【0166】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上述の配合成分の所定量を混合することにより調製することができる。
【0167】
[用途]
本発明の可溶性イミド骨格樹脂を含む硬化性樹脂組成物は、接着剤、塗料、土木建築用材料、電気・電子部品の絶縁材料等、様々な分野で有効に利用することができるが、特にその優れた耐熱性と低線膨張性、並びに成形加工性から、多層電気積層板や、ビルドアップ法等の新方式プリント配線板に好適に使用される。特に、ビルドアップ法多層プリント配線板用材料として使用される樹脂付き銅箔、接着フィルム等の形態での使用が好ましい。また、フレキシブル積層板用途、レジスト材、シール材等にも使用できる。
本発明の可溶性イミド骨格樹脂は、アクリル酸、メタクリル酸等で変性して使用することも出来る。
【0168】
ビルドアップ法とは、図1に示すように、ガラスプリプレグを積層した内層回路板(コア基板、1Aは回路を示す。)1上に、厚さ40〜90μmのフィルム(絶縁層)あるいは、フィルム2上に銅箔2A(銅箔厚さ:9〜18μm)を積層形成した銅箔付きフィルム3を積層していく方法であり、一般的に、この積層プレス工程、穴あけ(レーザーまたはドリル)工程、デスミア/メッキ工程の2種を経て回路を形成するものである。ビルドアップ法は、得られる積層板が、従来の積層板に比べて同性能のもので、実装面積、重量ともに約1/4になる、小型、軽量化のための優れた工法である。
本発明の可溶性イミド骨格樹脂を含む硬化性樹脂組成物は、このビルドアップ法で用いられる銅箔付きフィルムまたはフィルムの樹脂材料として有用である。
【0169】
[樹脂硬化物]
本発明の樹脂硬化物は、本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させてなるものである。
本発明の硬化性樹脂組成物の硬化方法は、硬化性樹脂組成物中の配合成分や配合量によっても異なるが、通常、100〜200℃で60〜180分の加熱条件が挙げられる。この加熱は100〜130℃で10〜30分の一次加熱と、一次加熱温度よりも50〜80℃高い150〜200℃で60〜150分の二次加熱との二段処理で行うことが、硬化不良を少なくするという点で好ましい。
【0170】
[積層体]
本発明の積層体は、本発明の硬化性樹脂組成物を硬化してなる本発明の樹脂硬化体と導電性金属との積層体であり、好ましくは、前述のビルドアップ法に用いられるビルドアップ層としての導電性金属箔付きフィルムである。
【0171】
この導電性金属箔付きフィルムの導電性金属箔としては、銅、アルミニウム等の金属箔が用いられ、その厚さは通常9〜19μm程度である。また、フィルムとしては、通常40〜90μm程度の厚さのものが用いられる。
【0172】
この積層体は、後述の実施例の項に示すように、溶媒を用いて本発明の硬化性樹脂組成物を適度な粘度に調整した塗布液を調製し、この塗布液を銅箔等の金属箔に塗布して前述の一次加熱条件で加熱して半硬化させて製造することができる。樹脂側を半硬化させた積層体は、図1に示す如く、コア基板1上に必要枚数を積層し、その後、2〜5MPa程度の加圧下、前述の二次加熱条件で加熱して完全硬化、一体化させることにより、プリント配線板とすることができる。
【実施例】
【0173】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
【0174】
[実施例1]
温度計、撹拌装置、冷却管を備えた内容量2Lの三つ口フラスコに、前記構造式(10−3)で表されるイミド骨格フェノール化合物45g、ビスフェノールA149g、エピクロルヒドリン620g、2−プロパノール241g、および水90gを仕込み、50℃に昇温して溶解させた後、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液141gを1時間かけて滴下した。その間に徐々に昇温し、滴下終了時には系内が70℃になるようにした。その後、70℃で30分間保持して反応を行わせた。その反応終了後、水洗して副生塩および過剰の水酸化ナトリウムを除去した。次いで、生成物から減圧下で過剰のエピクロルヒドリンおよび2−プロパノールを留去して、粗製エポキシ樹脂を得た。
【0175】
この粗製エポキシ樹脂をメチルイソブチルケトン410gに溶解させ、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液7gを加え、70℃の温度で1時間反応させた。その反応終了後に、第一リン酸ナトリウムを加えて過剰の水酸化ナトリウムを中和し、水洗して副生塩を除去した。次いで、加熱しながら減圧下でメチルイソブチルケトンを完全に除去して、目的の可溶性イミド骨格エポキシ樹脂(I)を得た。
【0176】
[実施例2]
温度計、撹拌装置、冷却管を備えた内容量2Lの三つ口フラスコに、前記構造式(10−4)で表されるイミド骨格フェノール化合物75g、ビスフェノールA120g、エピクロルヒドリン550g、2-プロパノール241g、および水80gを仕込み、50℃に昇温して溶解させた後、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液125gを1時間かけて滴下した。その間に徐々に昇温し、滴下終了時には系内が70℃になるようにした。その後、70℃で30分間保持して反応を行わせた。その反応終了後、水洗して副生塩および過剰の水酸化ナトリウムを除去した。次いで、生成物から減圧下で過剰のエピクロルヒドリンおよび2-プロパノールを留去して、粗製エポキシ樹脂を得た。
【0177】
この粗製エポキシ樹脂をメチルイソブチルケトン400gに溶解させ、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液7gを加え、70℃の温度で1時間反応させた。その反応終了後に、第一リン酸ナトリウムを加えて過剰の水酸化ナトリウムを中和し、水洗して副生塩を除去した。次いで、加熱しながら減圧下でメチルイソブチルケトンを完全に除去して、目的の可溶性イミド骨格エポキシ樹脂(II)を得た。
【0178】
[実施例3]
温度計、撹拌装置、冷却管を備えた内容量2Lの三つ口フラスコに、前記構造式(10−5)で表されるイミド骨格フェノール化合物20g、ビスフェノールA167g、エピクロルヒドリン640g、2−プロパノール250g、および水90gを仕込み、50℃に昇温して溶解させた後、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液146gを1時間かけて滴下した。その間に徐々に昇温し、滴下終了時には系内が70℃になるようにした。その後、70℃で30分間保持して反応を行わせた。その反応終了後、水洗して副生塩および過剰の水酸化ナトリウムを除去した。次いで、生成物から減圧下で過剰のエピクロルヒドリンおよび2−プロパノールを留去して、粗製エポキシ樹脂を得た。
【0179】
この粗製エポキシ樹脂をメチルイソブチルケトン410gに溶解させ、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液7gを加え、70℃の温度で1時間反応させた。その反応終了後に、第一リン酸ナトリウムを加えて過剰の水酸化ナトリウムを中和し、水洗して副生塩を除去した。次いで、加熱しながら減圧下でメチルイソブチルケトンを完全に除去して、目的の可溶性イミド骨格エポキシ樹脂(III)を得た。
【0180】
[実施例4]
温度計、撹拌装置、冷却管を備えた内容量2Lの三つ口フラスコに、前記構造式(10−6)で表されるイミド骨格フェノール化合物40g、ビスフェノールA154g、エピクロルヒドリン417g、2−プロパノール163g、および水62gを仕込み、50℃に昇温して溶解させた後、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液143gを1時間かけて滴下した。その間に徐々に昇温し、滴下終了時には系内が70℃になるようにした。その後、70℃で30分間保持して反応を行わせた。その反応終了後、水洗して副生塩および過剰の水酸化ナトリウムを除去した。次いで、生成物から減圧下で過剰のエピクロルヒドリンおよび2−プロパノールを留去して、粗製エポキシ樹脂を得た。
【0181】
この粗製エポキシ樹脂をメチルイソブチルケトン420gに溶解させ、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液7gを加え、70℃の温度で1時間反応させた。その反応終了後に、第一リン酸ナトリウムを加えて過剰の水酸化ナトリウムを中和し、水洗して副生塩を除去した。次いで、加熱しながら減圧下でメチルイソブチルケトンを完全に除去して、目的の可溶性イミド骨格エポキシ樹脂(IV)を得た。
【0182】
[実施例5]
温度計、撹拌装置、冷却管を備えた内容量2Lの三つ口フラスコに、前記構造式(10−7)で表されるイミド骨格フェノール化合物200g、エピクロルヒドリン254g、2-プロパノール100gおよび水40gを仕込み、50℃に昇温して溶解させた後、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液58gを1時間かけて滴下した。その間に徐々に昇温し、滴下終了時には系内が70℃になるようにした。その後、70℃で30分間保持して反応を行わせた。その反応終了後、水洗して副生塩および過剰の水酸化ナトリウムを除去した。次いで、生成物から減圧下で過剰のエピクロルヒドリンおよび2-プロパノールを留去して、粗製エポキシ樹脂を得た。
【0183】
この粗製エポキシ樹脂をメチルイソブチルケトン351gに溶解させ、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液6gを加え、70℃の温度で1時間反応させた。その反応終了後に、第一リン酸ナトリウムを加えて過剰の水酸化ナトリウムを中和し、水洗して副生塩を除去した。次いで、加熱しながら減圧下でメチルイソブチルケトンを完全に除去して、目的の可溶性イミド骨格エポキシ樹脂(V)を得た。
【0184】
このイミド骨格樹脂(I)、(II)、(III)、(IV)、および(V)の構造、物性等を以下の方法で調べ、結果を表2,3に示した。
【0185】
<化学構造、A中イミド骨格モル含率>
仕込み原料割合より算出した。なお、nの値およびその平均値は、下記方法で測定される数平均分子量より算出した。
【0186】
<数平均分子量>
東ソー(株)製 HLC−8120GPC装置を使用し、標準ポリスチレンとして、TSK Standard Polystyrene:F-128(Mw1,090,000、Mn1,030,000)、F-10(Mw106,000、Mn103,000)、F-4(Mw43,000、Mn42,700)、F-2(Mw17,200、Mn16,900)、A-5000(Mw6,400、Mn6,100)、A-2500(Mw2,800、Mn2,700)、A-300(Mw453、Mn387)を使用した検量線を作成し、数平均分子量をポリスチレン換算値として測定した。カラム:東ソー(株)製 TSKGEL SuperHM-H+H5000+H4000+H3000+H2000。溶離液:THF。流速:0.6ml/min。検出:UV(254nm)。温度:40℃。試料濃度:0.1%。インジェクション量:10μl。
【0187】
<エポキシ当量>
JIS K 7236に準じて測定し、固形分換算値として表記した。
【0188】
<可鹸化塩素量>
JIS K 7242-2に準じて測定し、固形分換算値として表記した。
【0189】
<特定硬化物のガラス転移温度および線膨張係数>
(特定硬化物の作製)
以下の硬化方法IIで特定硬化物を作製した。
可溶性イミド骨格樹脂と、硬化剤:jERキュアYLH129(ジャパンエポキシレジン(株)商品名、ビスフェノールAノボラック樹脂、水酸基当量117(g/eq.)、軟化点115(℃))と、硬化促進剤:2−エチル−4−メチルイミダゾールをそれぞれ後述の表1に示す量200mlビーカーに仕込み、260℃のホットプレート上で加熱、溶融混合し、溶融混合樹脂を減圧脱泡した後、セーフベンドライヤー内で、170℃で30分加熱後、200℃で90分加熱し、特定硬化物を得た。
【0190】
この特定硬化物のガラス転移温度と平均線膨張係数を以下の方法で調べた。
【0191】
<ガラス転移温度>
TA Instruments(株)製 2010型DSC熱分析装置を使用し、20℃〜300℃まで10℃/min.で昇温し、Tgを測定した。
【0192】
<線膨張係数>
SII ナノテクノロジー(株)製 TMA/SS6100装置を使用し、圧縮モードにて、20〜250℃まで5℃/minで昇温し、30℃〜130℃の平均線膨張係数を測定した。
【0193】
<溶解性>
溶媒として、シクロヘキサノン(和光純薬工業(株)製、グレードS、純度99%以上)を用い、60℃に加熱した状態での溶解度を、前述の溶解度の測定方法に従って、目視で測定した。
【0194】
[比較例1]
2Lの三つ口フラスコへの仕込み原料として、ビスフェノールF188g、エピクロルヒドリン385g、および2−プロパノール149gを仕込んだこと以外は実施例1と同様にして、粗製エポキシ樹脂を得、この粗製エポキシ樹脂を実施例1と同様に精製して目的のエポキシ樹脂(VI)を得た。
【0195】
[比較例2]
温度計、撹拌装置、冷却管を備えた内容量2Lの三つ口フラスコに、下記構造式(11)で表されるイミド骨格フェノール化合物200g、エピクロルヒドリン290g、2-プロパノール100gおよび水40gを仕込み、50℃に昇温したが溶解しない為、更にN−メチルピロリドン100gを仕込み、50℃に昇温して溶解させた後、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液55gを1時間かけて滴下した。その間に徐々に昇温し、滴下終了時には系内が70℃になるようにした。その後、70℃で30分間保持して反応を行わせた。その反応終了後、水洗して副生塩および過剰の水酸化ナトリウムを除去した。次いで、生成物から減圧下で過剰のエピクロルヒドリンおよび2-プロパノールを留去して、粗製エポキシ樹脂溶液(N−メチルピロリドン含有)を得た。
【0196】
【化35】

【0197】
この粗製エポキシ樹脂溶液に更にN−メチルピロリドン200g加え、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液6gを加え、70℃の温度で1時間反応させた。その反応終了後に、第一リン酸ナトリウムを加えて過剰の水酸化ナトリウムを中和し、水洗して副生塩を除去した。次いで、加熱しながら減圧下でN−メチルピロリドンを完全に除去して、イミド骨格エポキシ樹脂(VII)を得た。
【0198】
このエポキシ樹脂(VI)およびイミド骨格エポキシ樹脂(VII)について、実施例1と同様に測定、評価した構造、物性等は表3に示す通りである。
【0199】
【表1】

【0200】
【表2】

【0201】
【表3】

【0202】
[実施例6〜10、比較例3、4]
表4,5に示した配合で化合物(X)、化合物(Y)、触媒および溶媒を撹拌機付き耐圧反応容器に入れ、窒素ガス雰囲気下、180℃で5時間、反応を行い、イミド骨格樹脂溶液組成物を得た。得られた樹脂の性状を分析する為、イミド骨格樹脂溶液組成物から定法により溶媒を除去した後、樹脂の性状分析を次の方法で行い、結果を表4,5に示した。
【0203】
<数平均分子量>
東ソー(株)製 HLC−8120GPC装置を使用し、標準ポリスチレンとして、TSK Standard Polystyrene:F-128(Mw1,090,000、Mn1,030,000)、F-10(Mw106,000、Mn103,000)、F-4(Mw43,000、Mn42,700)、F-2(Mw17,200、Mn16,900)、A-5000(Mw6,400、Mn6,100)、A-2500(Mw2,800、Mn2,700)、A-300(Mw453、Mn387)を使用した検量線を作成し、数平均分子量をポリスチレン換算値として測定した。カラム:東ソー(株)製 TSKGEL SuperHM-H+H5000+H4000+H3000+H2000。溶離液:THF。流速:0.6ml/min。検出:UV(254nm)。温度:40℃。試料濃度:0.1%。インジェクション量:10μl。
実施例6の樹脂のGPCチャートを図2に示す。
【0204】
<A中イミド骨格モル含率>
仕込み原料割合より計算により算出した。
【0205】
<n>
一般式(1)におけるnの値およびその平均値は、数平均分子量より算出した。
【0206】
<エポキシ当量>
JIS K 7236に準じて測定し、固形分換算値として表記した。
【0207】
<可鹸化塩素量>
JIS K 7242-2に準じて測定し、固形分換算値として表記した。
【0208】
<赤外分析>
JAS.CO日本分光株式会社製;FT/IR−460Plusにて、実施例6の樹脂についてIR測定を実施した。このIRチャートを図3に示す。
【0209】
<特定硬化物のガラス転移温度および線膨張係数>
(特定硬化物の作製)
以下の硬化方法Iで特定硬化物を作製した。
イミド骨格樹脂の固形分100gと、硬化剤:jER 157S70(ジャパンエポキシレジン(株)商品名、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量210(g/eq.))5gと、jERキュアYLH129(ジャパンエポキシレジン(株)商品名、ビスフェノールAノボラック樹脂、水酸基当量117(g/eq.)、軟化点115(℃))2gと、硬化促進剤:2−エチル−4−メチルイミダゾール0.5gと、シクロヘキサン80gと、ジメチルアセトアミド80gとを1000mlビーカーに仕込んで混合し、スリット幅300μmのアプリケーターを用いて、テフロンフィルム(ニチアス(株):テフロンテープ TOMBO9001)上に塗膜を引き、熱風乾燥機にて170℃で30分間保持し、更に200℃で90分間保持して、60〜100μmの厚みの特定硬化物を得た。
【0210】
(ガラス転移温度および線膨張係数の測定)
得られた特定硬化物のガラス転移温度、線膨張係数(30〜130℃での平均値)を以下の方法で測定した。
SIIナノテクノロジー(株)製 TMA/SS6100装置を使用し、フィルム引っ張りモードにて、20℃〜250℃まで5℃/min.で昇温し、30℃〜130℃の平均線膨張係数およびガラス転移温度を測定した。実施例6の特定硬化物のTMAチャートを図4に示す。
【0211】
なお、表4,5において、a〜pは次のものを表す。
a:jER YX4000(ジャパンエポキシレジン(株)商品名、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂、エポキシ当量:186g/eq.、可鹸化塩素濃度:40ppm)
b:jER828(ジャパンエポキシレジン(株)商品名、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量:186g/eq、可鹸化塩素濃度:40ppm)
c:jER YX8800(ジャパンエポキシレジン(株)商品名、ジヒドロキシアントラセン型エポキシ樹脂、エポキシ当量:178g/eq、可鹸化塩素濃度:38ppm)
d:HP4032(大日本インキ工業(株)商品名、1,6−ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、エポキシ当量:142g/eq)
e:構造式(10−3)で表されるイミド骨格フェノール化合物(フェノール性水酸基当量:252g/eq.)
f:構造式(10−4)で表されるイミド骨格フェノール化合物(フェノール性水酸基当量:284g/eq.)
g:構造式(10−5)で表されるイミド骨格フェノール化合物(フェノール性水酸基当量:260g/eq.)
h:構造式(10−6)で表されるイミド骨格フェノール化合物(フェノール性水酸基当量:266g/eq.)
i:構造式(10−7)で表されるイミド骨格フェノール化合物(フェノール性水酸基当量:328g/eq.)
j:構造式(11)で表されるイミド骨格フェノール化合物(フェノール性水酸基当量:252g/eq.)
k:ビスフェノールA(フェノール性水酸基当量:114g/eq.)
l:シクロヘキサノン
m:N,N−ジメチルアセトアミド
n:ジメチルホルムアミド
0:50重量%テトラメチルアンモニウムクロライド水溶液(窒素含有量:6.39%)
p:29重量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液(窒素含有量:4.46%)
【0212】
【表4】

【0213】
【表5】

【0214】
以上の結果から、本発明の可溶性イミド骨格樹脂は耐熱性に優れ、また、低線膨張係数であることが分かる。
【0215】
[実施例11〜17、比較例5]
実施例1、5〜10、および比較例4で製造したイミド骨格樹脂を、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドに表6に示す割合で溶解させ、褐色透明なイミド骨格樹脂溶液組成物を調製した。
このイミド骨格樹脂溶液組成物を、それぞれサンプル瓶に入れ、40℃恒温の熱風循環式乾燥機中に30日間保存し、30日後に、イミド骨格樹脂溶液組成物がゲル化し、固化していないかを、手で振り混ぜながら、目視で確認し、結果を表6に示した。
【0216】
【表6】

【0217】
以上の結果から、本発明の可溶性イミド骨格樹脂溶液組成物は保存安定性に優れることが分かる。
【0218】
[実施例18〜23、比較例6]
実施例1、6〜10および比較例3で得られたイミド骨格樹脂および市販のエポキシ樹脂を使用して表7に示す配合割合でワニスを作成し、300μmのアプリケーターを用いて、銅箔(F3−WS)上に塗膜を引き、熱風乾燥機にて170℃で30分間保持し、更に200℃で90分間保持して、60〜100μmの厚みの銅箔付硬化樹脂を得た。
【0219】
別に、表7に示した配合割合のワニスを用い、300μmのアプリケーターを用いて、銅箔(F3−WS)上に、塗膜を引き、熱風乾燥機にて170℃で30分間保持し、銅箔付Bステージ状半硬化樹脂を作成し、この銅箔付Bステージ状半硬化樹脂を2枚重ね合わせ、加熱プレス機にて、200℃、2.9MPaの圧力で90分間保持し、積層体を作成した。
【0220】
なお、使用した市販エポキシ樹脂、硬化剤および銅箔等は下記の通りである。
jER YX4000:ジャパンエポキシレジン(株)商品名、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、エポキシ当量186(g/eq.)
jER 157S70:ジャパンエポキシレジン(株)商品名、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量210(g/eq.)
jERキュア YLH129:ジャパンエポキシレジン(株)商品名、ビスフェノールAノボラック樹脂、水酸基当量117(g/eq.)、軟化点115(℃)
B103:日本軽金属(株)商品名、水酸化アルミニウム、平均粒径8μm
AroCy B−30:Huntsuman(株)商品名、ビスフェノールA ジシアネート樹脂
F3−WS:古川サーキットホイル(株)商品名、電解銅箔、厚み18μm
【0221】
このようにして得られた銅箔付硬化樹脂の物性を次の方法で測定した。なお、銅箔ピール強度の測定には積層体を用い、それ以外の物性は、銅箔付硬化樹脂から銅箔を剥がした硬化樹脂のみで測定した。結果を表7に示す。
【0222】
<線膨張係数およびガラス転移温度>
SIIナノテクノロジー(株)製 TMA/SS6100装置を使用し、フィルム引っ張りモードにて、20℃〜250℃まで5℃/min.で昇温し、30℃〜130℃の平均線膨張係数およびガラス転移温度を測定した。
【0223】
<吸水率>
ESPEC製 EHS−211MD装置を使用し、測定条件85℃/85%RH/168時間にて、フィルムの吸水率の値を測定した。
【0224】
<銅箔ピール強度>
JIS C6481に準じて測定した。
【0225】
【表7】

【0226】
表7より、本発明の可溶性イミド骨格樹脂を用いた硬化フィルムは低線膨張率で耐熱性(ガラス転移温度)に優れていることが分かる。
【符号の説明】
【0227】
1 内層回路板
1A 回路
2 フィルム
2A 銅箔
3 銅箔付きフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるイミド骨格樹脂であって、シクロヘキサノンに対して、60℃で、1重量%以上の溶解度を有する可溶性イミド骨格樹脂。
【化1】

(式中、Aは、下記一般式(2−1)、下記一般式(3−1)、または下記一般式(4−1)で表される連結基であり、n+1個のAは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。ただし、全A成分中の5モル%以上は、下記一般式(4−1)で表されるイミド骨格含有連結基である。
Bは、水素原子、または下記構造式(5)で表される基であり、2個のBは互いに同一であっても、異なっていてもよい。
nは、0〜200の整数である。
但し、Bが両方とも水素原子である場合、nは1以上の整数である。)
【化2】

(式中、Rは、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、またはハロゲン元素であり、複数のRは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。また、ベンゼン環上の隣接した炭素原子に結合した2個のRは、互いに結合して炭素数4〜20の芳香環を含む環状基を形成してもよい。
mは、0または1である。
Xは、単結合、或いは炭素数1〜20の2価の炭化水素基、−O−、−S−、−SO−、またはCO−である。)
【化3】

(式中、Rは、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、またはハロゲン元素であり、複数のRは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。また、ナフタレン環上の隣接した炭素原子に結合した2個のRは、互いに結合して炭素数4〜20の芳香環を含む環状基を形成してもよい。)
【化4】

(式中、Rは、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、またはハロゲン元素であり、複数のRは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。また、ベンゼン環上の隣接した炭素原子に結合した2個のRは、互いに結合して炭素数4〜20の芳香環を含む環状基を形成してもよい。
、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、フェニル基、または炭素数1〜10の炭化水素基である。2個のR、R、Rは、それぞれ、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。また、ベンゼン環上の隣接した炭素原子に結合したRとRは、互いに結合して炭素数4〜20の芳香環を含む環状基を形成してもよい。
Yは単結合、−SO−、−O−、−CO−、−C(CF)−、−S−、または炭素数1〜20の2価の炭化水素基から選ばれる基である。)
【化5】

【請求項2】
請求項1において、前記一般式(4−1)で表されるイミド骨格含有連結基が、下記一般式(6−1)で表されることを特徴とする可溶性イミド骨格樹脂。
【化6】

(式中、Rは、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、またはハロゲン元素であり、複数のRは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。また、ベンゼン環上の隣接した炭素原子に結合した2個のRは、互いに結合して炭素数4〜20の芳香環を含む環状基を形成してもよい。
Yは前記一般式(4−1)におけると同義である。)
【請求項3】
請求項1または2において、硬化剤と硬化促進剤のみを配合してなる硬化物のガラス転移温度が130℃以上で、ガラス転移温度以下における線膨張係数が75ppm/℃未満であることを特徴とする可溶性イミド骨格樹脂。
【請求項4】
エポキシ基およびイミド基を有するイミド骨格樹脂であって、シクロヘキサノンに対して、60℃で、1重量%以上の溶解度を有し、硬化剤と硬化促進剤のみを配合してなる硬化物のガラス転移温度が130℃以上で、ガラス転移温度以下における線膨張係数が75ppm/℃未満であることを特徴とする可溶性イミド骨格樹脂。
【請求項5】
請求項4において、イミド基が、置換または無置換のフタルイミド基であることを特徴とする可溶性イミド骨格樹脂。
【請求項6】
請求項4または5において、主鎖上にイミド基およびヒドロキシエチレン基を有するイミド骨格樹脂であることを特徴とする可溶性イミド骨格樹脂。
【請求項7】
下記一般式(2−2)、下記一般式(3−2)、および下記一般式(4−2)のいずれかで表される2価フェノール化合物と、エピハロヒドリンとを、アルカリの存在下で反応させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の可溶性イミド骨格樹脂の製造方法。
【化7】

(式中、R、X、mは、それぞれ前記一般式(2−1)におけると同義である。)
【化8】

(式中、Rは、前記一般式(3−1)におけると同義である。)
【化9】

(式中、R、R、R、R、Yは、それぞれ前記一般式(4−1)におけると同義である。)
【請求項8】
下記一般式(7)、下記一般式(8)、および下記一般式(9)のいずれかで表される2官能エポキシ樹脂と、下記一般式(2−2)、下記一般式(3−2)、および下記一般式(4−2)のいずれかで表される2価フェノール化合物とを、触媒の存在下で反応させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の可溶性イミド骨格樹脂の製造方法。
【化10】

(式中、R、Xは、それぞれ前記一般式(2−1)におけると同義である。lは0または1であり、pは0〜10の整数である。)
【化11】

(式中、Rは前記一般式(3−1)におけると同義である。qは0〜10の整数である。)
【化12】

(式中、R、R、R、R、Yは、それぞれ前記一般式(4−1)におけると同義である。rは0〜10の整数である。)
【化13】

(式中、R、X、mは、それぞれ前記一般式(2−1)におけると同義である。)
【化14】

(式中、Rは、前記一般式(3−1)におけると同義である。)
【化15】

(式中、R、R、R、R、Yは、それぞれ前記一般式(4−1)におけると同義である。)
【請求項9】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の可溶性イミド骨格樹脂1〜90重量%が、ケトン系溶媒および/またはジメチルアセトアミドを全溶媒成分中10重量%以上含有する溶媒に溶解していることを特徴とする可溶性イミド骨格樹脂溶液組成物。
【請求項10】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の可溶性イミド骨格樹脂を含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項10において、更に、硬化剤および硬化促進剤を含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項12】
請求項10または11において、更に、前記可溶性イミド骨格樹脂以外のエポキシ樹脂、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂、および無機充填剤よりなる群から選ばれる1種または2種以上を含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項13】
請求項10ないし12のいずれか1項において、プリント配線板に使用されることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項14】
請求項10ないし13のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を硬化してなる樹脂硬化物。
【請求項15】
請求項14に記載の樹脂硬化物と導電性金属との積層体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−90360(P2010−90360A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182613(P2009−182613)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000246239)ジャパンエポキシレジン株式会社 (38)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】