説明

可燃性ガス検出装置

【課題】被検出雰囲気の絶対湿度の影響を補正して可燃性ガスの検出精度を高めるとともに、部品点数を低減してコスト低減や生産性向上を図った可燃性ガス検出装置を提供する。
【解決手段】被検出雰囲気内に曝され、被検出雰囲気中の可燃性ガスの濃度に応じて温度が変化する1つの発熱抵抗体と、発熱抵抗体が所定温度に保たれるよう該発熱抵抗体を通電制御し、該発熱抵抗体の端子間電圧を検出するガス検出部100と、可燃性ガスの濃度と端子間電圧との間の第1関係に基づき、端子間電圧から被検出雰囲気内の可燃性ガスの濃度をガス濃度算出値として算出する濃度算出手段3aと、被検出雰囲気の温度を検出する主温度検出手段3a、50と、ガス濃度算出値又は端子間電圧と、被検出雰囲気の温度との間の第2関係に基づき、主温度検出手段によって検出された温度からガス濃度算出値又は端子間電圧を補正する補正手段3aと、を備えた可燃性ガス検出装置1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可燃性ガスの濃度測定や漏洩検知等に用いられる可燃性ガス検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護や自然保護などの社会的要求から、高効率でクリーンなエネルギ源として、燃料電池の研究が活発に行われている。特に、低温で作動し、高出力で高密度な固体高分子型燃料電池(PEFC)や水素内燃機関は、家庭用途や車載用途に期待されている。但し、これらのエネルギ源は水素を燃料としているため、水素漏れの有無を検知する必要がある。
【0003】
従来、被検出雰囲気に含まれる可燃性ガス濃度の検出装置として、可燃性ガス濃度に応じて被検出雰囲気の熱伝導率が変化することを利用し、被検出雰囲気中に置いた発熱抵抗体の端子間電圧を測定するものが知られている。しかし、可燃性ガスの濃度が同一であっても、被検出雰囲気の相対湿度が変わるとその熱伝導率も変動し、可燃性ガスの検出精度に影響を与えるという問題がある。
そこで、2つの発熱抵抗体の各抵抗値を、それぞれ異なる一定温度に対応するように制御し、各発熱抵抗体の端子電圧の電圧比を求めて、被検出雰囲気の相対湿度をこの電圧比と温度との間の関係から決定する技術が開発されている(特許文献1参照)。この技術によれば、被検出雰囲気の相対湿度による被検出雰囲気の熱伝導率の変動を考慮し、可燃性ガスの検出精度を高くすることができる。
【0004】
【特許文献1】特開2006−10670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、水の発生を伴う燃料電池のように被検出雰囲気の相対湿度が安定している環境においても、絶対湿度の影響により検出精度が低下する事がある。また、上記特許文献1記載の技術の場合、ガス検出装置に2つの発熱抵抗体を設ける必要があるため部品点数が増加し、コスト低減や生産性の点で改善の余地がある。
そこで、本発明は、被検出雰囲気の絶対湿度の影響を補正して可燃性ガスの検出精度を高めるとともに、部品点数を低減してコスト低減や生産性向上を図ることができる可燃性ガス検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の可燃性ガス検出装置は、安定した相対湿度環境下における被検出雰囲気内に曝され、前記被検出雰囲気中の可燃性ガスの濃度に応じて温度が変化する1つの発熱抵抗体と、前記発熱抵抗体が所定温度に保たれるよう該発熱抵抗体を通電制御し、このときの該発熱抵抗体の端子間電圧を検出するガス検出部と、前記可燃性ガスの濃度と前記端子間電圧との間の第1関係に基づき、前記端子間電圧から前記被検出雰囲気内の前記可燃性ガスの濃度をガス濃度算出値として算出する濃度算出手段と、前記被検出雰囲気の温度を検出する主温度検出手段と、前記ガス濃度算出値又は前記端子間電圧と、前記被検出雰囲気の温度との間の第2関係に基づき、前記主温度検出手段によって検出された温度から前記ガス濃度算出値又は前記端子間電圧を補正する補正手段と、を備えている。
ここで、相対湿度が安定していれば、絶対湿度と温度には一定の関係がある為、被検出雰囲気の温度を用いて絶対湿度の影響を補正する事が可能である。そこで、安定した相対湿度環境下において検出雰囲気の温度を測定し、被検出雰囲気の温度とガス濃度算出値又は端子間電圧との間の第2関係に基づいて、可燃性ガス検出装置の出力の補正をすることでガス検出精度を向上する事ができる。
さらに、ガス検出素子の発熱抵抗体が1つで済むので、部品点数を低減してコスト低減や生産性向上を図ることができる。なお、安定した相対湿度環境下とは、相対湿度の変動が±5%以下の環境を例示できる。
【0007】
前記発熱抵抗体の結露を防止する結露防止ヒータをさらに備えてもよい。
このような構成とすると、例えば燃料電池の水素漏れを検出する場合等、被検出雰囲気が水蒸気の飽和状態又はそれに近い状態にあるときに、被検出雰囲気に曝される発熱抵抗体の結露による検出精度の低下を防止することができる。
【0008】
前記発熱抵抗体は、前記可燃性ガス検出装置に形成されて前記被検出雰囲気に連通する測定室内に設置され、かつ前記主温度検出手段は前記測定室の外に配置されており、前記測定室内に配置されて該測定室内の温度を検出する第2温度検出手段をさらに備え、前記濃度算出手段は、前記第2温度検出手段によって検出された温度に基づき、前記第1関係を変更してもよい。
このような構成とすると、発熱抵抗体近傍に結露防止ヒータを設けた場合等に、発熱抵抗体近傍の温度を反映した測定室内の温度を第2温度検出手段で測定し、この温度に応じて第1関係を変更するので、端子間電圧からガス濃度算出値を精度よく算出することができる。
又、第2関係による補正は、被検出雰囲気の温度を反映した測定室外の主温度検出手段の温度に基づくので、補正の精度も向上する。
【0009】
前記測定室を形成すると共に、前記測定室の外側に前記主温度検出手段を取り付けるための主温度検出手段取付部を一体に形成してなるケーシング部材をさらに備えてもよい。
このような構成とすると、ケーシング部材上に測定室と主温度検出手段とを容易に配置することができ、生産性が向上する。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、被検出雰囲気の絶対湿度の影響を補正して可燃性ガスの検出精度を高めるとともに、部品点数を低減してコスト低減や生産性向上を図ることができる可燃性ガス検出装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る可燃性ガス検出装置の断面図である。
【図2】ガス検出素子の平面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】制御部の構成を示す図である。
【図5】被検出雰囲気の温度と、湿度との関係を示す図である。
【図6】可燃性ガス検出装置の出力(水素ガス濃度)と、水蒸気量(湿度)との関係を示す図である。
【図7】可燃性ガス検出装置の出力と、温度との関係を示す図である。
【図8】発熱抵抗体の端子間電圧と、被検出雰囲気中の水素濃度との関係を示す図である。
【図9】マイクロコンピュータによる、被検出雰囲気中の水素ガス濃度の算出及び補正処理のフローを示す図である。
【図10】補正処理を行わなかったときの、可燃性ガス検出装置の出力と、モデルガス中の水素濃度との関係を示す図である。
【図11】補正処理を行ったときの、可燃性ガス検出装置の出力と、モデルガス中の水素濃度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る可燃性ガス検出装置1の断面図を示す。なお、可燃性ガス検出装置1は、後述するガス検出素子100を実装した回路基板2を収容している。図1は、回路基板2の表面に垂直な方向で切断した断面図である。
なお、可燃性ガス検出装置1は、被検出雰囲気中の水素濃度を測定するものである。又、可燃性ガス検出装置1の側面には、外部との信号の入出力を行うための図示しないコネクタが設けられている。
【0013】
可燃性ガス検出装置1は、プラスチック等から一体成形された略矩形箱状のケーシング部材11と、ケーシング部材11の背面を閉塞する背面板12とからなるケーシング10を備えている。ケーシング部材11の側壁の上部には、外側に向かって広がる段部11fが形成され、回路基板2の端縁を段部11fに係止しつつ回路基板2がケーシング部材11に取付けられている。回路基板2の下面(ケーシング部材11の表側で背面板12と反対の面)中央には、可燃性ガス検出装置1を制御する制御部3(マイコンを含む)が実装されている。制御部3については後述する。
【0014】
ケーシング部材11の右側内面には、略円筒状の素子固定壁11aが立ち上がり、素子固定壁11aの軸方向中心にはガス導入口11bが形成されている。又、ケーシング部材11の左側には、内側に凹む凹部11cが形成されるとともに、凹部11cの底面からケーシング部材11の外側に向かって主温度センサ取付部(主温度検出手段取付部)11dが突出している。
主温度センサ取付部11dは、先端が半球状に閉じられた円筒状をなし、筒内には薄膜抵抗体からなる主温度センサ50が配置されている。主温度センサ取付部11dの先端は、ケーシング部材11の表面とほぼ面一になっている。そして、主温度センサ50から回路基板2側に向かって2本のピン状の端子51、52が突出し、各端子51、52を回路基板2のスルーホールに挿入してはんだ付けすることにより、主温度センサ50が回路基板2に実装されている。
なお、素子固定部11aに後述する素子ホルダ21を取り付けることにより、素子ホルダ21の内部空間が測定室21sを形成し、主温度センサ50が測定室21sの外側に位置することになる。つまり、この実施形態では、ケーシング部材11自体が測定室を形成せず、素子ホルダ21が測定室を形成しているが、本発明においてはのような場合も含め、測定室はケーシング部材に直接又は他部材(例えば素子ホルダ21)を介して形成されるものとする。
【0015】
素子ホルダ21は略円筒状をなし、素子固定壁11aの内面に同軸に嵌るようになっている。又、素子ホルダ21の側壁の上部には、外側に向かって広がる段部21fが形成され、円板状のターミナル板40の端縁が段部21fに係止されている。ターミナル板40の下面中央にはガス検出素子100が固定され、ガス検出素子100が有する後述の電極パッドに電気的に接続された3本のピン状の端子41〜43が突出している。各端子41〜43がターミナル板40と電気的に絶縁した状態でターミナル板40に挿通されている。そして、各端子41〜43を回路基板2のスルーホールに挿入してはんだ付けすることにより、ガス検出素子100が回路基板2に実装されている。
なお、詳しくは後述するが、ガス検出素子100は発熱抵抗体110と第2温度センサ(第2温度検出手段)130とを備えており、端子41、42はそれぞれ発熱抵抗体110と第2温度センサ130の正極側端子である。又、端子43は、発熱抵抗体110と第2温度センサ130の共通のグランドとなっている。
【0016】
そして、ターミナル板40の背面に、端子41〜43の挿通孔を有する円板状の素子ホルダ背面板22が被せられ、素子ホルダ背面板22をターミナル板40と共に、図示しないパッキン等を介して素子ホルダ21の上端に気密に嵌合することにより、ターミナル板40及びガス検出素子100が素子ホルダ21内に取付けられる。
【0017】
一方、素子ホルダ21の下面は、ガス導入口11bと連通した中心開口を有する環状をなし、素子ホルダ21の下面内側には、円板状の撥水フィルタ31と金網32とが積層して圧入され、撥水フィルタ31が外側に位置している。そして、素子ホルダ21の側壁と、金網32と、ターミナル板40の下面とによって囲まれる内部空間が測定室21sを形成し、ガス検出素子100が測定室21sに臨むようになっている。
撥水フィルタ31は、ガス導入口11cから測定室21s内への水滴や粉塵等の侵入を防止する。金網32は、ガス検出素子100が有する後述の発熱抵抗体110に通電した際、発熱抵抗体110の温度が水素ガスの下限爆発温度を上回って水素ガスが測定室21s内で発火した場合に、測定室21sから可燃性ガス検出装置1の外側へ引火することを防止し、防爆機能を有している。
【0018】
さらに、この実施形態では、素子ホルダ背面板22の上面(回路基板2に対向する面)に、発熱抵抗体からなる結露防止ヒータ60が載置され、結露防止ヒータ60から回路基板2側に向かって2本のピン状の端子61、62が突出している。各端子61、62を回路基板2のスルーホールに挿入してはんだ付けすることにより、結露防止ヒータ60が回路基板2に実装される。
結露防止ヒータ60は発熱抵抗体110近傍(この例では、測定室21s内)を加熱し、発熱抵抗体110の結露を防止する。特に、燃料電池の水素漏れを検出する場合、被検出雰囲気は水蒸気の飽和状態又はそれに近い状態にあり、被検出雰囲気に曝される発熱抵抗体110が結露し易くなって検出精度の低下を招くので、結露防止ヒータ60が有効である。
【0019】
次に、図2、図3を参照してガス検出素子100の構成について説明する。
図2は、ガス検出素子100の平面図を示す。ガス検出素子100は平面視矩形状をなし、シリコン基板からなる基体101を備えている。基体101の表面の中央部には、渦巻き状の発熱抵抗体110が配置され、発熱抵抗体110から2本のリード110a、110bが延びている。基体101下側の両隅部には、それぞれ矩形の電極パッド112、114が表出し、リード110aが電極パッド112に接続され、リード110bが電極パッド114に接続されている。
一方、基体101のうち発熱抵抗体110より上側の表面には、薄膜抵抗体からなり、基体101の上辺に沿って細長い矩形状の第2温度センサ(第2温度検出手段)130が配置され、第2温度センサ130から図示しない2本のリードが延びている。基体101上側の両隅部には、それぞれ矩形の電極パッド132、134が表出し、第2温度センサ130の各リードがそれぞれ電極パッド132、134に接続されている。
なお、電極パッド112、132は、例えばワイヤボンディングによりそれぞれ端子41、42に電気的に接続されている。電極パッド114、134は、例えばワイヤボンディングにより共通の端子43に電気的に接続されている。
又、発熱抵抗体110及び第2温度センサ130は、基体101表面に形成された図示しない内側保護層107内に埋設されている。
【0020】
図3は、図2のIII−III線に沿う断面図である。基体101の上下面には、それぞれ上側絶縁層105、下側絶縁層103が形成されている。上側絶縁層105は、基体101の上面に形成された酸化ケイ素膜105aと、酸化ケイ素膜105aの上面に積層された窒化ケイ素膜105bとから構成されている。同様に、下側絶縁層103は、基体101の下面に形成された酸化ケイ素膜103aと、酸化ケイ素膜103aの下面に積層された窒化ケイ素膜103bとから構成されている。
一方、基体101の下面の中央部は、厚み方向に沿った断面で見たときに台形状に除去されて開口部101aが形成され、開口部101aから上側絶縁層105が露出している。即ち、基体101は、開口部101aと上側絶縁層105とにより、ダイヤフラム構造を形成している。そして、開口部101aの上に位置する上側絶縁層105の上面に発熱抵抗体110を配置することで、発熱抵抗体110が周囲と熱的に遮断され、発熱抵抗体110の昇温や降温を短時間で行うことができ、発熱抵抗体110の消費電力を低減することができる。
【0021】
上側絶縁層105の上面には絶縁性の内側保護層107が形成され、内側保護層107の内部には、発熱抵抗体110、各リード部110a、110b(図示せず)、及び各リード部110a、110bの先端に接続されたコンタクト部112a、114aが埋設されている。内側保護層107上にこれら構成部分を形成した後、さらに内側保護層107の成分を成膜することで、各構成部分が内側保護層107内に埋設される。さらに、内側保護層107の表面に外側保護層109が積層されている。
なお、内側保護層107及び外側保護層109のうち、コンタクト部112a、114aの上側部分がエッチング等によって除去され、除去部分にそれぞれ電極パッド112、114が堆積されている。これにより、コンタクト部112a、114aと電極パッド112、114とがそれぞれ電気的に接続され、電極パッド112、114を介して発熱抵抗体110に通電可能になっている。
【0022】
発熱抵抗体110、第2温度センサ130、主温度センサ50、これらのリード部、及び電極パッド112、114、132、134は、白金(Pt)やPt合金等の導電材料から形成することができる。
又、基体101は、シリコン基板に限られず、アルミナ(Al)や半導体材料から作製してもよい。
内側保護層107及び外側保護層109は、酸化ケイ素や窒化ケイ素等から形成することができる。
【0023】
次に、図4を参照して制御部3の構成について説明する。制御部3は、ガス検出素子回路(特許請求の範囲の「ガス検出部」に相当)310、第2温度測定回路320、主温度測定回路330、及びこれら回路からの信号が入力されるマイクロコンピュータ3aを備えている。マイクロコンピュータ3aは、公知のCPU(中央演算処理装置)、メモリ(ROM、RAM)を備え、ROM等に予め格納されたプログラムがCPUにより実行され、ガス濃度信号として外部に出力される。マイクロコンピュータ3a(のCPU)が、特許請求の範囲の「濃度算出手段」、「主温度検出手段」、「補正手段」に相当する。
なお、制御部3は、上記した端子41〜43、51、52、61、62を介して発熱抵抗体110、第2温度センサ130、主温度センサ50に接続されている。
【0024】
ガス検出素子回路310は、発熱抵抗体110、及び固定抵抗a1〜a3で構成されるホイートストーンブリッジ回路311と、ホイートストーンブリッジ回路311から得られる電位差を増幅するオペアンプ312と、トランジスタからなる一定温度制御回路314とを備える。ホイートストーンブリッジ回路311において、固定抵抗a2の一端と固定抵抗a3の一端とが接続され、固定抵抗a1の一端と発熱抵抗体110の一端とが接続されている。又、固定抵抗a3の他端と発熱抵抗体110の他端とがグランドに接続され、固定抵抗a2の他端と固定抵抗a1の他端とが一定温度制御回路314(トランジスタ)のコレクタに接続されている。
固定抵抗a2と固定抵抗a3の間の電位は、所定の抵抗を介してオペアンプ312の反転入力端子(-)に入力される。発熱抵抗体110と固定抵抗a1の間の電位は、所定の抵抗を介してオペアンプ312の非反転入力端子(+)に入力されると共に、マイクロコンピュータ3aに図示しないA/Dコンバータを介して入力される。オペアンプ312の出力はネガティブフィードバックされると共に、一定温度制御回路314のベースに入力される。一定温度制御回路314のエミッタには定電圧Vccが印加されている。
このように、オペアンプ312の出力に応じ、一定温度制御回路314は、発熱抵抗体110が一定温度に保たれるように電圧を制御する。又、このときの制御電圧がマイクロコンピュータ3aに出力され、発熱抵抗体110の端子間電圧(被検出雰囲気中の水素濃度に対応)が検出される。なお、この実施形態では、発熱抵抗体110が200℃に保たれるようにガス検出素子回路310が設定されている。
【0025】
第2温度測定回路320は、抵抗体からなる第2温度センサ130、及び固定抵抗b1〜b3で構成されるホイートストーンブリッジ回路321と、ホイートストーンブリッジ回路321から得られる電位差を増幅するオペアンプ322とを備える。ホイートストーンブリッジ回路321において、第2温度センサ130の一端と固定抵抗b3の一端とが接続され、固定抵抗b1の一端と固定抵抗b2の一端とが接続されている。又、第2温度センサ130の他端と固定抵抗b2の他端とがグランドに接続され、固定抵抗b3の他端と固定抵抗b1の他端とに定電圧Vccが印加されている。
第2温度センサ130と固定抵抗b3の間の電位は、所定の抵抗を介してオペアンプ322の反転入力端子(-)に入力される。固定抵抗b1と固定抵抗b2の間の電位は、所定の抵抗を介してオペアンプ322の非反転入力端子(+)に入力される。オペアンプ322の出力はネガティブフィードバックされると共に、マイクロコンピュータ3aに図示しないA/Dコンバータを介して入力される。
このようにして、第2温度センサ130の温度変化による電圧変化がオペアンプ322から出力され、第2温度センサ130の周囲の温度(測定室21s内の温度)が測定される。
【0026】
主温度測定回路330は、抵抗体からなる主温度センサ50、及び固定抵抗c1〜c3で構成されるホイートストーンブリッジ回路331と、ホイートストーンブリッジ回路331から得られる電位差を増幅するオペアンプ332とを備える。ホイートストーンブリッジ回路331において、主温度センサ50の一端と固定抵抗c3の一端とが接続され、固定抵抗c1の一端と固定抵抗c2の一端とが接続されている。又、主温度センサ50の他端と固定抵抗c2の他端とがグランドに接続され、固定抵抗c3の他端と固定抵抗c1の他端とに定電圧Vccが印加されている。
主温度センサ50と固定抵抗c3の間の電位は、所定の抵抗を介してオペアンプ332の反転入力端子(-)に入力される。固定抵抗c1と固定抵抗c2の間の電位は、所定の抵抗を介してオペアンプ332の非反転入力端子(+)に入力される。オペアンプ332の出力はネガティブフィードバックされると共に、マイクロコンピュータ3aに図示しないA/Dコンバータを介して入力される。
このようにして、主温度センサ50の温度変化による電圧変化がオペアンプ332から出力され、主温度センサ50の周囲の温度(被検出雰囲気の温度、つまりケーシング部材11周囲の温度)が測定される。
【0027】
次に、図5〜図7を参照して、被検出雰囲気の絶対湿度による可燃性ガス検出装置1の出力への影響について説明する。なお、絶対湿度は水蒸気量(vol.%)と同義として捉える事ができる為、以下は水蒸気量という記載も用いる。
図5は、被検出雰囲気の温度と、90%RHでの水蒸気量との関係を示す。なお、この実施形態では、可燃性ガス検出装置1が水の発生を伴う燃料電池へ適用されることを想定しているため、相対湿度が高い状態として、90%RHでの水蒸気量を用いている。
図6は、可燃性ガス検出装置1の出力に与える影響(具体的には発熱抵抗体110の端子間電圧から算出した水素ガス濃度)と、水蒸気量との関係を示す。この関係は、水蒸気量を変動させた時に、可燃性ガス検出装置1の出力の理想出力に対する誤差を測定し作成したものである。ここで、理想出力に対する誤差とは、例えば水素濃度が0%の環境において測定を行ったとすると、理想出力は水素濃度0%であるのに対し、実際の可燃性ガス検出装置1の出力が水素濃度1%であれば、理想出力に対する誤差(つまり出力に与える影響)が1%と規定される値である。
図6から、水蒸気量が変動すると可燃性ガス検出装置1の出力の誤差が変動することがわかる。
【0028】
図7は、図5の関係(温度と水蒸気量)と図6の関係(出力と水蒸気量)とから、可燃性ガス検出装置1の出力に与える影響と温度との関係を求めたグラフを示す。図7より、主温度センサ50によって被検出雰囲気の温度を測定することで、水蒸気量による可燃性ガス検出装置1の出力変動を見積もることができる。
ここで、被検出雰囲気の温度と、可燃性ガス検出装置1の出力変動との関係(より正確には、被検出雰囲気の水蒸気量(絶対湿度)と可燃性ガス検出装置1の出力変動との関係を、温度で表したもの)が、特許請求の範囲の「第2関係」に相当する。
そして、図7の関係、つまり、被検出雰囲気の温度と、可燃性ガス検出装置1の出力変動との関係から、実際の被検出雰囲気中の水素ガス(可燃性ガス)濃度を測定する際、被検出雰囲気の温度(絶対湿度)による出力への影響を補正することができる。なお、この実施例では、被検出雰囲気の温度と90%RHでの水蒸気量との関係と、可燃性ガス検出装置1の出力(具体的には発熱抵抗体110の端子間電圧から算出した水素ガス濃度)と水蒸気量との関係を元に、被検出雰囲気の温度と、可燃性ガス検出装置1の出力変動との関係である第2関係を求めたが、被検出雰囲気の温度と可燃性ガス検出装置1の出力変動との関係を直接求めたものを第2関係としても良い。
【0029】
図8は、発熱抵抗体110の端子間電圧と、被検出雰囲気中の水素濃度との関係(特許請求の範囲の「第1関係」に相当)を示す。第1関係は、例えば、予め水素濃度が既知のモデルガスを被検出雰囲気として用いて得られる検量線である。
ここで、第1関係は、発熱抵抗体110の周囲の温度(具体的には、第2温度センサ130で測定する測定室21s内の温度)によって変化し、測定室21s内の温度が高いほど、発熱抵抗体110の温度を一定に保つための電圧が少なくて済むので、第1関係も変化する。
このように、発熱抵抗体110に近接した第2温度センサ130の温度に基づき、第1関係を変更することにより、発熱抵抗体110の周囲の温度に応じた適切な第1関係を用いることができ、水素(可燃性ガス)の検出精度が向上する。
特に、結露防止ヒータ60を用いて発熱抵抗体110近傍(この例では、測定室21s内)を加熱する場合、発熱抵抗体110近傍の温度が主温度センサ50の温度と異なる。このため、測定室21s内の温度を反映した第2温度センサ130の温度に基づき、第1関係を変更することが有効である。
【0030】
一方、この場合、発熱抵抗体110近傍(測定室21s内)の温度は被検出雰囲気の温度を必ずしも反映しない。従って、第2関係による出力補正を行う際には、測定室21sの外部に配置され、被検出雰囲気の温度を反映した主温度センサ50の温度に基づくことが好ましい。
【0031】
図9は、マイクロコンピュータ(のCPU、以下、単に「CPU」と称する)3aによる、被検出雰囲気中の水素ガス(可燃性ガス)濃度の算出及び補正処理のフローを示す。
CPUは、第2温度センサ130から測定室21s内の温度を取得し(ステップS2)、さらに発熱抵抗体110の端子間電圧を取得する(ステップ4)。次に、CPUは、マイクロコンピュータ3aのROM(以下、単に「ROM」と称する)に格納された第1関係テーブル3aから、測定室21s内の温度に応じた第1関係を参照し、上記端子間電圧に基づいて水素ガス濃度を算出する(ステップS6)。第1関係テーブル3aに基づき、ステップS6で算出された水素ガス濃度が、特許請求の範囲の「ガス濃度算出値」に相当する。
なお、この実施形態では、いくつかの温度(例えば、30℃と80℃)における発熱抵抗体110の端子間電圧と水素ガス濃度との間の第1関係が、第1関係テーブル3aに格納されている。第1関係は、いくつかの温度毎に、端子間電圧と水素ガス濃度を対応付けたテーブルであってもよく、又、例えば温度と端子間電圧を変数とする所定の数式であってもよい。
【0032】
次に、CPUは、主温度センサ50から被検出雰囲気の温度を取得する(ステップS8)。次に、CPUは、ROMに格納された第2関係テーブル3aを参照し、被検出雰囲気の温度に基づいてガス濃度算出値を補正する(ステップS10)。
なお、この実施形態では、第2関係は、いくつかの温度毎に、基準温度(-10℃)に対するガス濃度算出値の変化率を対応付けたテーブルであり、この変化率をステップS6で算出されたガス濃度算出値に乗ずることにより、補正値が得られる。第2関係を、例えば温度を変数とする所定の数式としてもよい。
さらに、CPUは、ステップS10で補正したガス濃度算出値を、ガス濃度信号として外部に出力する(ステップS12)。
【0033】
なお、この実施形態では、被検出雰囲気の温度と、可燃性ガス検出装置1の出力(端子間電圧を水素ガス濃度に換算した値)との関係を第2関係としているが、被検出雰囲気の温度と、発熱抵抗体110の端子間電圧との関係を第2関係としてもよい。この場合、CPUは、ステップS4で端子間電圧を取得すると、被検出雰囲気の温度に基づいて第2関係テーブル3a(但し、温度に対する端子間電圧の変化率のテーブル)を参照し、ステップS4の端子間電圧を補正する。そして、補正された端子間電圧に基づいて第1関係テーブル3aを参照し、上記ステップS6と同様に、ガス濃度算出値を算出し、この値をそのままガス濃度信号として外部に出力する。
【0034】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
例えば、上記実施形態においては、主温度センサ50と第2温度センサ130の2個の温度センサ(温度検出手段)を設けたが、いずれか1つの温度センサのみを設け、この温度センサの温度に基づいて第2関係から補正を行ってもよい。但し、上述のように、結露防止のために発熱抵抗体110近傍の温度と被検出雰囲気の温度とが異なる場合には、主温度センサ50と第2温度センサ130の2個の温度センサを設けると、可燃性ガスの検出精度が向上する。
【実施例】
【0035】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
図1〜図4に示した可燃性ガス検出装置1を製造した。この可燃性ガス検出装置1を用い、以下の測定条件で、水素ガス濃度が既知のいくつかのモデルガスを測定した。
測定条件
ガス組成:H2=0,2,4%、Air=bal.
ガス温度と湿度:25℃-0%RH, 20℃-90%RH(2.1%H2O), 52℃-90%RH(12.1%H2O), 66℃-90%RH(23.2%H2O)
ガス流量:5L/min
【0037】
図10は、ステップS10の補正処理を行わなかったときの、可燃性ガス検出装置1の出力(ガス濃度算出値)と、モデルガス中の水素濃度(既知の値)との関係を示す。モデルガスの温度(つまり絶対湿度)が変化すると、同じ水素濃度であってもセンサ出力(ガス濃度算出値)が変動し、絶対湿度の影響を受けていることがわかる。
一方、図11は、ステップS10の補正処理を行ったときの、可燃性ガス検出装置1の出力(ガス濃度算出値)と、モデルガス中の水素濃度(既知の値)との関係を示す。モデルガスの温度(つまり絶対湿度)が変化しても、同じ水素濃度であればセンサ出力(ガス濃度算出値)はほぼ同一であり、絶対湿度の影響を補正できることがわかる。
【符号の説明】
【0038】
1 可燃性ガス検出装置
3 制御部(ガス検出部)
3a マイクロコンピュータ(濃度算出手段、主温度検出手段、補正手段)
11 ケーシング部材
21s 測定室
50 主温度センサ(主温度検出手段)
60 結露防止ヒータ
110 発熱抵抗体
130 第2温度センサ(第2温度検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定した相対湿度環境下における被検出雰囲気内に曝され、前記被検出雰囲気中の可燃性ガスの濃度に応じて温度が変化する1つの発熱抵抗体と、
前記発熱抵抗体が所定温度に保たれるよう該発熱抵抗体を通電制御し、このときの該発熱抵抗体の端子間電圧を検出するガス検出部と、
前記可燃性ガスの濃度と前記端子間電圧との間の第1関係に基づき、前記端子間電圧から前記被検出雰囲気内の前記可燃性ガスの濃度をガス濃度算出値として算出する濃度算出手段と、
前記被検出雰囲気の温度を検出する主温度検出手段と、
前記ガス濃度算出値又は前記端子間電圧と、前記被検出雰囲気の温度との間の第2関係に基づき、前記主温度検出手段によって検出された温度から前記ガス濃度算出値又は前記端子間電圧を補正する補正手段と、
を備えた可燃性ガス検出装置。
【請求項2】
前記発熱抵抗体の結露を防止する結露防止ヒータをさらに備えた請求項1記載の可燃性ガス検出装置。
【請求項3】
前記発熱抵抗体は、前記可燃性ガス検出装置に形成されて前記被検出雰囲気に連通する測定室内に設置され、かつ前記主温度検出手段は前記測定室の外に配置されており、
前記測定室内に配置されて該測定室内の温度を検出する第2温度検出手段をさらに備え、
前記濃度算出手段は、前記第2温度検出手段によって検出された温度に基づき、前記第1関係を変更する請求項1又は2記載の可燃性ガス検出装置。
【請求項4】
前記測定室を形成すると共に、前記測定室の外側に前記主温度検出手段を取り付けるための主温度検出手段取付部を一体に形成してなるケーシング部材をさらに備えた請求項3記載の可燃性ガス検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−266265(P2010−266265A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116311(P2009−116311)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】