説明

可燃性廃棄物からの水素ガス及び一酸化炭素ガスの製造方法、並びに製造装置

【課題】ガス分離工程の設備規模を大型化させずに可燃性廃棄物から水素ガスおよび一酸化炭素ガスを効率良く製造する方法を提供する。
【解決手段】可燃性廃棄物1を乾留して乾留ガス4及び乾留チャー5を生成した後、両者を分離する乾留工程と、前記分離後の乾留ガスに酸素含有ガス及び水蒸気7を供給し、部分燃焼反応及び改質反応させて水素ガスを含んだ改質ガス8を生成し、当該改質ガスから水素ガス14を分離して回収する水素ガス回収工程と、前記分離後の乾留チャーに酸素含有ガス25を供給し、部分燃焼反応させて一酸化炭素ガスを含んだチャーガス化ガス26を生成し、当該チャーガス化ガスから一酸化炭素ガス33を分離して回収する一酸化炭素ガス回収工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可燃性廃棄物を原料として水素ガスと一酸化炭素ガスを製造するための可燃性廃棄物からのガス製造方法、並びに製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般廃棄物系や産業廃棄物系の可燃性廃棄物の処理方法は従来単純焼却や埋立てが中心であったが、循環型社会促進が近年の大きな社会的課題となっており、これら可燃性廃棄物を資源として有効利用可能な廃棄物処理技術が求められている。
【0003】
可燃性廃棄物の有効利用を目的とした廃棄物処理方法としては、例えば特許文献1〜3、非特許文献1〜3に記載されているように、可燃性廃棄物を熱分解炉あるいは乾燥炉で前処理した後ガス化溶融炉に供給し、ガス化溶融炉内で1300〜1500℃程度の高温雰囲気下で酸素含有ガスとの部分燃焼反応やクラッキング(熱分解)反応を起こして水素ガス(H2)、一酸化炭素ガス(CO)を主成分とする低分子量のガス化溶融ガスを生成すると共に可燃性廃棄物中灰分は溶融スラグ化し、ガス化溶融ガスを冷却、精製して清浄ガスを製造する廃棄物ガス変換法が開発されている。
【0004】
精製後の清浄ガスは燃料ガスやガスエンジン発電に利用できるほか、クリーンエネルギーとして利用価値の高いH2や各種C1化学の主力原料であるCOを回収することも可能である。
【0005】
また、特許文献4に熱分解装置内で廃棄物を間接加熱して乾留ガス(熱分解ガス)を生成し、ガス改質装置内で乾留ガスと空気等の酸素含有ガスを反応させて高温雰囲気を形成し、高温雰囲気下で乾留ガスを低位炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、水蒸気に変換すると共に、チャー(残渣)を溶融ガス化装置内でガス化して低分子の炭素含有ガスを得る発明が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平10-128288号公報
【特許文献2】特開2001-254085号公報
【特許文献3】特開平10-132242号公報
【特許文献4】特開2004−195459号公報
【非特許文献1】「化学装置」1997年1月号、P26-P31(1997)、55頁、図1
【非特許文献2】「自動車研究」第23巻、第12号、P54-60(2001)、55頁図1および58頁表3および59頁表6
【非特許文献3】「第9回廃棄物学会研究発表会講演論文集」P597-P600(1998)、598頁、図1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら既存の廃棄物ガス変換法の抱える課題として、可燃性廃棄物からH2とCOを製造する場合、清浄後のガス化溶融ガスはH2濃度、CO濃度とも低いためにガス分離工程で処理するガス量が多くなりガス分離工程の設備規模が大型化してしまう点が挙げられる。
【0008】
2含有ガスからH2を回収するには吸着剤への吸着力差利用により特定ガスを吸着した後に圧力差を利用して脱着させるPSA法や特定ガスを膜に選択透過させる膜分離法等に基づいたH2分離装置で処理する必要があり、CO含有ガスからCOを回収するにはガス圧縮・冷却時の沸点差を利用して分離する深冷分離法や前述のPSA法、膜分離法等に基づくCO分離装置で処理する必要があり、H2とCOの両方を回収するには前述の方法によるH2分離装置とCO分離装置を各々準備する必要がある。
【0009】
既存の廃棄物ガス変換法で得られる精製後ガス化溶融ガスのH2濃度、CO濃度は原料廃棄物の性状によっても異なるが、例えば特許文献1の記載例では都市ごみに石炭を混ぜてカロリー調整した低位発熱量15MJ/kgの廃棄物を処理した場合でH2=47vol%、CO=30vol%であり、また例えば非特許文献2の記載例では低位発熱量10MJ/kgの産業廃棄物を処理した場合でH2=32vol%、CO=43vol%であり、また例えば特許文献3の記載例では低位発熱量7〜14MJ/kgの都市ごみと廃プラスチックの混合物を処理した場合でH2=24〜36vol%、CO=18〜37vol%程度であり、いずれの場合においてもH2濃度、CO濃度が低い。このためH2分離装置やCO分離装置で処理するガス量が多くなりガス分離工程の設備規模が大型化する。
【0010】
また、特許文献4に開示された発明は、H2ガスは炭化水素ガスやCOに比べて燃焼速度が大きいため、ガス改質装置に導入した酸素と優先的に反応してH2Oを生成し易く、高位炭化水素からH2への転化率があまり高くないという問題がある。
【0011】
そこで本発明はガス分離工程の設備規模を大型化させずに可燃性廃棄物からH2ガスおよびCOガスを効率良く製造するための方法並びに装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる課題を解決するため、本発明の要旨とするところは以下(1)〜(4)に示す通りである。
【0013】
(1)可燃性廃棄物を乾留して生成した乾留ガス及び乾留チャーを分離する乾留工程と、前記分離後の乾留ガスに水蒸気及び酸素含有ガスを供給し、水蒸気改質反応をさせて水素ガスを含んだ改質ガスを生成し、当該改質ガスから水素ガスを分離して回収する水素ガス回収工程と、前記分離後の乾留チャーに酸素含有ガスを供給し、部分燃焼反応をさせて一酸化炭素ガスを含んだチャーガス化ガスを生成し、当該チャーガス化ガスから一酸化炭素ガスを分離して回収する一酸化炭素ガス回収工程とを有し、前記水素ガス回収工程の水蒸気改質反応の水蒸気供給量を乾留ガス中炭素量に対してH2O/Cモル比1.1以上とすることを特徴とする可燃性廃棄物からの水素ガス及び一酸化ガスのガスの製造方法。
【0014】
(2)前記水素ガス回収工程において、改質ガスから水素ガスを分離して回収した後、残った水素分離後改質ガスを前記一酸化炭素ガス回収工程に供給し、チャーガス化ガスと共にガス中の一酸化炭素ガスを分離して回収することを特徴とする(1)記載の可燃性廃棄物からの水素ガス及び一酸化炭素ガスの製造方法。
【0015】
(3)前記一酸化炭素ガス回収工程において、一酸化炭素ガスの分離に深冷分離法を用い、且つ、前記チャーガス化ガス、又は前記チャーガス化ガス及び前記一酸化炭素ガス回収工程に供給される水素分離後改質ガスから二酸化炭素ガスを分離して回収し、当該回収した二酸化炭素ガスを、一酸化炭素ガス回収工程における前記乾留チャーの搬送ガス若しくはパージガス、又は前記水素ガス回収工程におけるパージガスの少なくともいずれかに使用することを特徴とする(1)または(2)記載の可燃性廃棄物からの水素ガス及び一酸化炭素ガスの製造方法。
【0016】
(4)可燃性廃棄物を乾留ガスと乾留チャーに分離する乾留炉と、その後段に前記乾留ガスを水蒸気改質反応をさせて水素ガスを含んだ改質ガスを生成する改質炉と、前記改質ガスから水素ガスを分離し回収する水素分離装置とを有し、更に、前記乾留炉の後段に前記乾留チャーを部分燃焼反応をさせて一酸化炭素ガスを含んだチャーガス化ガスを生成するチャーガス化炉と、前記チャーガス化ガスから一酸化炭素ガスを分離し回収する一酸化炭素分離装置とを有することを特徴とする可燃性廃棄物からの水素ガス及び一酸化炭素ガスの製造装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明によりガス分離工程の設備規模を大型化させずに可燃性廃棄物から水素ガスと一酸化炭素ガスとを効率良く製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明者らはガス分離工程の設備規模を大型化させずに可燃性廃棄物から水素ガス(H2)と一酸化炭素ガス(CO)とを効率良く製造する方法並びに装置を鋭意検討した結果、可燃性廃棄物を乾留処理して水素分と炭素分を分離した後、水素分を移行させた乾留ガスを水蒸気改質反応させて、H2リッチの改質ガスを生成して改質ガスからH2を回収し、炭素分を移行させた固体の乾留チャーを酸素含有ガスと部分燃焼反応をさせて、COリッチのチャーガス化ガスを生成して、チャーガス化ガスからCOを回収する方法並びに装置を発明した。
【0019】
対象となる可燃性廃棄物としては塩化ビニル、熱硬化性プラスチック、廃タイヤなどをはじめとした加熱時に炭素主体の固体残渣を生成する廃棄物が挙げられる。
【0020】
図1および図2は本発明の可燃性廃棄物からの水素ガスおよび一酸化炭素ガスの製造方法並びに装置を実施するためのプロセス及び設備の例を示すブロック図である。
【0021】
図1に、本発明に関わる第一の実施形態を示す。
【0022】
可燃性廃棄物1は、まず廃棄物供給装置2を用いて乾留炉3内に供給され、可燃性廃棄物中の水素分と炭素分を分離する。
【0023】
乾留炉3内に供給された可燃性廃棄物は空気を断った雰囲気下で加熱され、熱分解反応を生じて可燃性廃棄物中の水素分が水素ガスや炭化水素ガス、タール類から成る乾留ガス4に移行すると共に炭素分主体の固体の乾留チャー5を生成する。
【0024】
乾留炉の方式は空気を断った雰囲気下で可燃性廃棄物を加熱し熱分解する方式であれば特に限定するところはなく、外熱キルン式や移動層式等のような既存の方式が適用可能である。乾留温度は処理対象となる可燃性廃棄物の熱分解温度によって異なるが、一般的に400〜600℃程度である。
【0025】
続いて乾留ガス4を改質炉6に導入し、酸素含有ガスおよび水蒸気7と反応させて改質ガス8を生成する。改質炉6内に導入された乾留ガスは酸素含有ガスと部分燃焼反応を起こして1000〜1200℃程度に昇温され、乾留ガス中タールと水蒸気とのCmn+mH2O→mCO+(n/2+m)H2、CO+H2O→H2+CO2等で表される水蒸気改質反応を生じさせてH2を生成する。改質炉ではタール中の水素分をH2ガスに変換するだけでなく、タール中炭素分もH2とCO2とに変換させるため、特許文献4のようなクラッキングによるガス改質に比べて多くのH2ガスを製造することが可能である。水蒸気改質反応に必要な水蒸気量は乾留ガス中炭素量に対してH2O/Cモル比1.1以上とすることが望ましく、H2O/Cモル比1.1未満になるとタールのクラッキング反応によるタール中炭素分のスート(すす)化が進行してタール中炭素分を効率良くH2ガスへ変換することが困難となる。スートは水蒸気改質反応速度が非常に遅いために1000〜1200℃の反応温度ではスート(C)+H2O→CO+H2反応は殆ど進行しない。
【0026】
改質炉の方式は乾留ガスの一部を酸素含有ガスで燃焼させて炉内温度を確保する部分燃焼炉方式であれば特に限定するところはなく、耐火物内壁構造を有した円筒型炉など既存の炉方式が適用可能である。酸素含有ガスとしては空気、酸素富化空気、純酸素等が使用可能であり、発熱量の高い改質ガスを得たい場合には高酸素濃度の酸素含有ガスを用いるのが望ましい。
【0027】
改質ガス8はガス冷却装置9、ガス精製装置10でそれぞれ処理して精製改質ガス11を得る。精製改質ガス11はH2分離装置13に送られH2ガス14を回収する。このように可燃性廃棄物の水素分を乾留ガスに移行させた後に改質炉で処理することによってH2が濃縮したガスが得られH2分離装置の処理ガス量を低減することができる。
【0028】
さらに改質炉内では水蒸気改質反応により水蒸気中水素分もH2に変換されるためH2生成量増加およびH2濃度上昇を図ることができる。
【0029】
また、既存の廃棄物ガス変換法のガス化溶融炉は可燃性廃棄物中灰分を溶融スラグ化するために1300〜1500℃程度の高温の反応温度を必要するのに対し、本発明のガス化改質炉は乾留ガス成分のみが処理対象であるため反応温度を1000〜1200℃程度に下げることができるため、冷ガス効率(廃棄物の発熱量に対する合成ガスの発熱量比率)が向上してH2の生成量増加を図ることができる。
【0030】
一方、可燃性廃棄物中の炭素分が移行した乾留チャー5は、不燃物分離装置16を用いて金属類や瓦礫類等の不燃物17を分離した後、不燃物分離後チャー18を分級装置19で分級し、塊状チャー20は破砕装置21で処理して破砕して非塊状チャーと共に貯留ホッパー22で一旦貯留し、チャー切出し装置23を用いて気流搬送でチャーガス化炉24に導入する。
【0031】
チャーガス化炉24の方式は噴流床式や流動床式等の既存のガス化炉が適用可能であるが、乾留チャー中には灰分が含まれるケースが多いことから、灰分の再資源化も同時に行いたい場合には灰分を路盤材等として利用可能な溶融スラグに変換できる噴流床式の方が好適である。
【0032】
チャーガス化炉24に噴流床式を用いる場合には、分級装置19および破砕装置21で得る乾留チャーの粒度は、安定な気流搬送が可能な10mm以下程度であることが好ましい。
【0033】
チャーガス化炉24内へは乾留チャー5と共に酸素含有ガス25を吹き込み、炉内で乾留チャー中炭素分を酸素含有ガスと部分燃焼反応させてCOを主成分とするチャーガス化ガス26を生成する。チャーガス化炉24の反応温度は乾留チャー中灰分をスラグ化するため1300〜1500℃程度が適している。
【0034】
チャーガス化ガス26はガス冷却装置28、ガス精製装置29でそれぞれ処理して精製チャーガス化ガス30を得る。精製チャーガス化ガス30はCO分離装置32に送られCOガス33を回収する。
【0035】
尚、H2分離方法およびCO分離方法は特に限定することはなく、H2分離については前述のPSA法や膜分離法など、CO分離については前述の深冷分離法、PSA法、膜分離法など既存のガス分離方法が適用可能である。
【0036】
また、本発明に係る第二の実施形態を、図2のプロセス及び設備の例で示す。
【0037】
本実施形態は、前述のチャーガス化ガス26からCO33を回収するためのCO分離装置32に前記精製改質ガス11から水素ガス14を回収した後の水素分離後改質ガス15を導入して改質ガス15からもCO33を回収することを特徴とする。
【0038】
可燃性廃棄物中の炭素分が乾留チャーになる割合は廃棄物の種類によって異なり、特に熱可塑性プラスチックが多く含まれる可燃性廃棄物を処理対象とする場合には可燃性廃棄物中の炭素分が乾留ガスへ移行する割合が多くなる。そこで改質ガス(精製改質ガス)からH2を回収した後に水素分離後改質ガスをチャーガス化ガスからのCO分離装置へ導入することにより、CO分離装置での処理ガス量の削減とCO回収量の増加を図ることができる。
【0039】
また本発明に関わる第三の実施形態を図3〜図5のプロセス及び設備の例で示す。
【0040】
本実施形態では、前述のチャーガス化ガス26や改質ガス8から二酸化炭素36を分離回収し、回収した二酸化炭素36を一酸化炭素ガス回収工程における乾留チャー5の気流搬送ガス(チャー搬送ガス36と呼ぶ)、チャーガス化炉24やガス精製装置29等のパージガスの少なくともいずれかのガスとして使用することを特徴とする。
【0041】
既存の噴流床式ガス化法ではガス化原料の気流搬送ガス、チャーガス化炉内に設置したセンサー類や炉内監視用カメラ等の保護のためのパージガスを必要とし、また既存のガス精製法では逆洗等でパージガスを必要とし、これらガスには調達が容易な不活性ガスである窒素ガス(N2)が用いられている。
【0042】
本発明においても同様にチャーガス化炉への乾留チャー気流搬送ガス、チャーガス化炉へのパージガス、ガス精製時のパージガスを必要とし、特に乾留チャー気流搬送ガスに多くのガスを必要とする。
【0043】
しかしながらこれらガスにN2を用いる従来法を適用した場合、チャーガス化ガスから深冷分離法を用いてCO回収する際にCO分離が難しくなるという問題が生じる。深冷分離法はCO回収効率が高く大規模処理が可能なためチャーガス化ガスからC1化学原料等を狙った高純度COを多量製造する場合に適したCO分離法であるが、沸点差を利用したガス分離法であるためCOと沸点が近いN2が存在するとCO分離が難しくなったり大きな分離効率低下を生じる。
【0044】
第三の実施形態では、チャーガス化ガス26や改質ガス8から二酸化炭素ガス(CO2)36を分離回収して前述のN2ガス代替として使用することにより精製後チャーガス化ガス30中へのN2混入量を低減して深冷分離によるCO製造が容易となる。
【0045】
図3のプロセス及び設備の例では精製チャーガス化ガス30をCO2分離装置35で処理してCO2 36を分離回収し、CO2供給装置38を用いて回収したCO2をチャー搬送ガス39、チャーガス化炉パージガス40、チャーガス化ガス精製工程パージガス41−aの少なくともいずれかのガスとして使用する。特にチャー搬送ガス39は使用量が多いため、CO2を用いることが好ましい。
【0046】
CO2分離後ガス37はCO分離装置32に送られCOガス33と一酸化炭素分離後ガス34とに分離される。
【0047】
また図4のプロセス及び設備例では、水素ガス回収工程における精製改質ガス11をCO2分離装置35で処理してCO2 36を分離回収し、CO2供給装置38を用いて回収したCO2を一酸化炭素ガス回収工程におけるチャー搬送ガス39、チャーガス化炉24のパージガス40、チャーガス化ガス精製装置29のパージガス41−a、改質ガス精製装置10のパージガス41−bの少なくともいずれかのガスとして使用する。
【0048】
また図5のプロセス及び設備の例では、一酸化炭素ガス回収工程における精製チャーガス化ガス30と水素ガス回収工程における水素分離後改質ガス15を、一酸化炭素ガス回収工程におけるCO2分離装置35で処理してCO2 36を分離回収し、CO2供給装置38を用いて回収したCO2をチャー搬送ガス39、チャーガス化炉パージガス40、チャーガス化ガス精製工程パージガス41−a、改質ガス精製工程パージガス41−bのいずれか一種類以上のガスとして使用する。
【0049】
尚、チャーガス化ガスや改質ガス(精製改質ガス)からのCO2分離方法としては特に限定するところはなく、化学吸収法や物理吸収法、吸着法など一般的に用いられている既存のCO2分離技術の適用が可能である。
【実施例】
【0050】
(実施例1)
図1のプロセス及び設備の例に示した本発明を用い、低位発熱量約34MJ/kgの廃タイヤ50t/日、低位発熱量約17MJ/kgの塩ビ系廃プラ40t/日、低位発熱量約34MJ/kgの一般廃プラ10t/日から成る可燃性廃棄物を同時に処理してH2ガスおよびCOガスを製造した例を示す。乾留炉3には外熱式ロータリーキルンを用い、改質炉6の酸素含有ガス及び水蒸気7の酸素含有ガスとしては純酸素を用い、チャーガス化炉24の酸素含有ガス25には純酸素を用い、改質ガスおよびチャーガス化ガスの冷却装置9、28には排熱回収ボイラを用い、改質ガスおよびチャーガス化ガスのガス精製装置10、29には、ダスト除去のためのバグフィルターおよび塩化水素除去と、硫化水素除去のための湿式スプレー塔を用い、精製改質ガス11からのH2分離装置13にはPSA法による装置を用い、精製後チャーガス化ガス30からのCO分離装置32にはPSA法による装置を用いた。
【0051】
各炉の運転温度は乾留炉600℃、改質炉1100℃、チャーガス化炉1400℃とし、改質炉の水蒸気量は乾留ガス中炭素量に対してH2O/Cモル比1.1に設定した。
【0052】
まず可燃性廃棄物中の水素分と炭素分の分離を目的として可燃性廃棄物1を乾留炉3で処理し、乾留ガス4約2.4t/hrと乾留チャー5約1.7t/hrを得た。乾留ガスは改質炉に導入して酸素および水蒸気と共に水蒸気改質反応させ、改質ガス8を冷却および精製してH2濃度約54vol%の精製改質ガス11約5300Nm3/hrを得た。精製ガス中H2量は約2850Nm3/hrであった。精製改質ガスはH2分離装置13に送られ、H2回収効率70%で純度99%のH2ガス14約2000Nm3/hrと水素分離後改質ガス15約3300Nm3/hrを得た。一方、炭素分が移行した乾留チャー5は不燃物分離装置16を用いてワイヤー鉄を主とする金属類17約0.25t/hrを分離後、振動篩式の分級装置19およびボールミル式破砕装置21で粒度10mm以下に整粒し、噴流床式のチャーガス化炉24に約1.45t/hr吹込んでチャーガス化炉内で酸素と反応させてガス化した。チャーガス化ガス26は冷却および精製してCO濃度70vol%の精製後チャーガス化ガス30約3400Nm3/hrを得た。精製後チャーガス化ガス30はCO分離装置32に送られ、CO回収効率90%で純度98%のCOガス33約2200Nm3/hrを得た。
(比較例1)
比較例1として、改質炉の水蒸気量を乾留ガス中炭素量に対してH2O/Cモル比1.0とした以外は実施1と同様な条件とし、実施例1と同じ低位発熱量約34MJ/kgの廃タイヤ50t/日、低位発熱量約17MJ/kgの塩ビ系廃プラ40t/日、低位発熱量約34MJ/kgの一般廃プラ10t/日から成る可燃性廃棄物を同時に処理してH2ガスおよびCOガスを製造した例を示す。改質ガス8を冷却および精製して得られた精製改質ガス11は、H2濃度約52%、精製改質ガス量約4850Nm3/hr、精製改質ガス中H2量は約2500Nm3/hrとなり、実施例1に比べてH2生成量が減少した。
(比較例2)
比較例2として図6のプロセス及び設備の例に示すような特許文献1の方法に基づく既存の廃棄物ガス変換法を用い、実施例1と同じ低位発熱量約34MJ/kgの廃タイヤ50t/日、低位発熱量約17MJ/kgの塩ビ系廃プラ40t/日、低位発熱量約34MJ/kgの一般廃プラ10t/日から成る可燃性廃棄物44を同時に処理してH2ガスおよびCOガスを製造した例を示す。
【0053】
2およびCOガスを製造するガス化溶融炉52〜54は一次燃焼室52、2次燃焼室53、スラグ分離室54から構成される旋回溶融炉方式を用い、ガス化溶融炉52〜54は純酸素及び水蒸気55を吹き込んで反応温度1400℃とした。精製ガス化溶融ガス60からのH2分離装置61には実施例1と同様にPSA法を用い、H2分離後ガス62からのCO分離装置64には実施例1と同様にPSA法を用いた。
【0054】
ガス化溶融炉52〜54の安定燃焼確保のためにまず可燃性廃棄物44を反応温度600℃の部分燃焼方式の流動床式熱分解炉47に導入して燃焼しやすい可燃性ガス成分を多く含んだ熱分解生成物50に変換し、不燃物51を取り除いた後、熱分解生成物50をガス化溶融炉52〜54に導入して酸素との部分燃焼反応および水蒸気との改質反応を起こさせ、H2、COを主成分とするガス化溶融ガス56を生成すると共に、灰分を溶融スラグ57に変換した。ガス化溶融ガス56は実施例1と同様に排熱回収ボイラ58で冷却後、バグフィルターおよび湿式スプレー塔59でガス精製してH2濃度約27vol%、CO濃度約30vol%の精製ガス化溶融ガス60を約7000Nm3/hr得た。精製ガス化溶融ガスはH2分離装置61に送り、H2回収効率70%で純度99%のH2ガス63約1300Nm3/hrと水素分離後ガス化溶融ガス62約5700Nm3/hrを得た。水素分離後ガス化溶融ガス62をCO分離装置64に導入してCO回収効率90%で処理し、純度98%のCOガス66約1900Nm3/hrが得られた。比較例ではH2分離装置処理ガス量(精製ガス化溶融ガス量)が実施例1のH2分離装置処理ガス量(精製改質ガス量)に比べて1.3倍に増え、CO分離装置処理ガス量(水素分離後ガス化溶融ガス量)が実施例1のCO分離装置処理ガス量(精製後チャーガス化ガス)に比べて1.7倍に増え、設備が大型化した。また、全廃棄物を1400℃のガス化溶融炉で処理したため冷ガス効率が低下してH2生成量が減少した。
(比較例3)
比較例3として図7に示すような特許文献4の方法に基づく既存の廃棄物ガス変換法を用い、実施例1と同じ低位発熱量約34MJ/kgの廃タイヤ50t/日、低位発熱量約17MJ/kgの塩ビ系廃プラ40t/日、低位発熱量約34MJ/kgの一般廃プラ10t/日から成る可燃性廃棄物44を同時に処理してH2ガスおよびCOガスを製造した例を示す。各炉の運転温度は実施例1と同様に乾留炉69が600℃、ガス改質装置71が1100℃、チャー溶融ガス化装置83が1400℃とした。ガス改質装置71の酸素含有ガスとしては空気を用い、チャー溶融ガス化装置83の酸素含有ガス84には純酸素を用い、また冷却後改質ガス75中に含まれるH2量は1700Nm3/hrであり、実施例1に比べ改質ガス中のH2量が減少した。
(実施例2)
図5のプロセス及び設備の例に示した本発明を用い、低位発熱量約34MJ/kgの廃タイヤ50t/日、低位発熱量約17MJ/kgの塩ビ系廃プラ40t/日、低位発熱量約34MJ/kgの一般廃プラ10t/日から成る可燃性廃棄物を同時に処理してH2ガスおよびCOガスを製造した例を示す。
【0055】
乾留炉3には外熱式ロータリーキルンを用い、改質炉6の酸素含有ガス及び水蒸気7の酸素含有ガスとしては純酸素を用い、チャーガス化炉24の酸素含有ガス25には純酸素を用い、改質ガスおよびチャーガス化ガスの冷却装置9、28には排熱回収排熱回収ボイラを用い、改質ガスおよびチャーガス化ガスのガス精製装置10、29にはダスト除去のためのバグフィルターおよび塩化水素除去と硫化水素除去のための湿式スプレー塔を用い、精製改質ガス11からのH2分離装置13にはPSA法による装置を用い、精製後チャーガス化ガス30および精製改質ガス11から水素を分離した後に残った水素分離後改質ガス15からのCO2分離装置35には化学吸収法による装置を用い、CO2分離後ガス43からのCO分離装置32には深冷分離法による装置を用いた。各炉の運転温度は乾留炉600℃、改質炉1100℃、チャーガス化炉1400℃とし、改質炉の水蒸気量は乾留ガス中炭素量に対してH2O/Cモル比1.1に設定した。
【0056】
まず可燃性廃棄物中の水素分と炭素分の分離を目的として可燃性廃棄物1を乾留炉3で処理し、乾留ガス4約2.4t/hrと乾留チャー5約1.7t/hrを得た。乾留ガスは改質炉に導入して酸素および水蒸気と反応させて改質し、改質ガス8を冷却および精製してH2濃度約54vol%の精製改質ガス11約5300Nm3/hrを得た。精製改質ガスはH2分離装置13に送られ、H2回収効率70%で純度99%のH2ガス14約2000Nm3/hrと水素分離後改質ガス15約3300Nm3/hrを得た。一方、炭素分が移行した乾留チャー5は不燃物分離装置16を用いてワイヤー鉄を主とする金属類17約0.25t/hrを分離後、振動篩式の分級装置19およびボールミル式破砕装置21で粒度10mm以下に整粒し、噴流床式のチャーガス化炉24に約1.45t/hr吹込んでチャーガス化炉内で酸素と反応させてガス化した。チャーガス化ガス26は冷却および精製してCO濃度70vol%の精製後チャーガス化ガス30約3400Nm3/hrを得た。精製後チャーガス化ガス30は前述の改質ガスから水素分離後改質ガス15と共に処理ガス量約6700Nm3/hrでCO2分離装置35に送ってCO2回収効率90%で処理し、純度99%のCO2 ガス36約500Nm3/hrを分離した後、CO2分離後ガス43をCO分離装置32で処理ガス量6200Nm3/hr、CO回収効率90%で処理し純度99.5%のCOガス33約3700Nm3/hrが得られた。尚、CO2分離装置35で回収したCO2 36をCO2供給装置38を用いて乾留チャー搬送ガス39、チャーガス化炉のパージガス40、ガス精製装置の逆洗ガス41−a、41−bに用いたためチャーガス化ガス中N2濃度は0.5vol%以下と微量であり、深冷分離法を用いて高い回収効率でCOを製造することができた。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係る第1のプロセス及び設備の例を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る第2のプロセス及び設備の例を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る第3のプロセス及び設備の例を示すブロック図である。
【図4】本発明に係る第4のプロセス及び設備の例を示すブロック図である。
【図5】本発明に係る第5のプロセス及び設備の例を示すブロック図である。
【図6】比較例2に係るプロセス及び設備の例を示すブロック図である。
【図7】比較例3に係るプロセス及び設備の例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0058】
1 可燃性廃棄物
2 廃棄物供給装置
3 乾留炉
4 乾留ガス
5 乾留チャー
6 改質炉
7 酸素含有ガスおよび水蒸気
8 改質ガス
9 改質ガス冷却装置
10 改質ガス精製装置
11 精製改質ガス
12 改質ガス吸引ブロアー
13 H2分離装置
14 H2ガス
15 水素分離後改質ガス
16 不燃物分離装置
17 不燃物
18 不燃物除去後チャー
19 チャー分級装置
20 塊状チャー
21 チャー破砕装置
22 貯留ホッパー
23 チャー切出し装置
24 チャーガス化炉
25 酸素含有ガス
26 チャーガス化ガス
27 溶融スラグ
28 チャーガス化ガス冷却装置
29 チャーガス化ガス精製装置
30 精製チャーガス化ガス
31 チャーガス化ガス吸引ブロアー
32 CO分離装置
33 COガス
34 CO分離後ガス
35 CO2分離装置
36 CO2ガス
37 CO2分離後ガス
38 CO2供給装置
39 チャー搬送ガス(CO2
40 チャーガス化炉パージガス(CO2
41-a チャーガス化ガス精製工程パージガス(CO2
41-b 改質ガス精製工程パージガス(CO2
42 CO2分離後ガス
43 CO2分離後ガス
44 可燃性廃棄物
45 廃棄物貯留ホッパー
46 廃棄物切出し装置
47 流動床式熱分解炉
48 流動化ガス
49 流動化ガス供給装置
50 熱分解生成物
51 不燃物
52 一次燃焼室
53 ニ次燃焼室
54 スラグ分離室
55 酸素および水蒸気
56 ガス化溶融ガス
57 溶融スラグ
58 排熱回収ボイラ
59 バグフィルターおよび湿式スプレー塔
60 精製ガス化溶融ガス
61 H2分離装置
62 水素分離後ガス化溶融ガス
63 H2ガス
64 CO分離装置
65 CO分離後ガス
66 COガス
67 可燃性廃棄物
68 前処理装置
69 乾留炉
70 乾留ガス
71 ガス改質装置
72 空気
73 改質ガス
74 改質ガス冷却装置
75 冷却後改質ガス
76 ガス精製装置
77 精製ガス
78 精製ガス吸引ブロアー
79 ガスホルダー
80 乾留チャー
81 冷却・粉砕・分級装置
82 冷却・粉砕・分級後乾留チャー
83 チャー溶融ガス化装置
84 酸素含有ガス
85 溶融スラグ
86 チャーガス化ガス
87 チャーガス化ガス冷却装置
88 冷却後チャーガス化ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可燃性廃棄物を乾留して生成した乾留ガス及び乾留チャーを分離する乾留工程と、前記分離後の乾留ガスに水蒸気及び酸素含有ガスを供給し、水蒸気改質反応をさせて水素ガスを含んだ改質ガスを生成し、当該改質ガスから水素ガスを分離して回収する水素ガス回収工程と、前記分離後の乾留チャーに酸素含有ガスを供給し、部分燃焼反応をさせて一酸化炭素ガスを含んだチャーガス化ガスを生成し、当該チャーガス化ガスから一酸化炭素ガスを分離して回収する一酸化炭素ガス回収工程とを有し、前記水素ガス回収工程の水蒸気改質反応の水蒸気供給量を乾留ガス中炭素量に対してH2O/Cモル比1.1以上とすることを特徴とする可燃性廃棄物からの水素ガス及び一酸化ガスのガスの製造方法。
【請求項2】
前記水素ガス回収工程において、改質ガスから水素ガスを分離して回収した後、残った水素分離後改質ガスを前記一酸化炭素ガス回収工程に供給し、チャーガス化ガスと共にガス中の一酸化炭素ガスを分離して回収することを特徴とする請求項1記載の可燃性廃棄物からの水素ガス及び一酸化炭素ガスの製造方法。
【請求項3】
前記一酸化炭素ガス回収工程において、一酸化炭素ガスの分離に深冷分離法を用い、且つ、前記チャーガス化ガス、又は前記チャーガス化ガス及び前記一酸化炭素ガス回収工程に供給される水素分離後改質ガスから二酸化炭素ガスを分離して回収し、当該回収した二酸化炭素ガスを、一酸化炭素ガス回収工程における前記乾留チャーの搬送ガス若しくはパージガス、又は前記水素ガス回収工程におけるパージガスの少なくともいずれかに使用することを特徴とする請求項1または2記載の可燃性廃棄物からの水素ガス及び一酸化炭素ガスの製造方法。
【請求項4】
可燃性廃棄物を乾留ガスと乾留チャーに分離する乾留炉と、その後段に前記乾留ガスを水蒸気改質反応をさせて水素ガスを含んだ改質ガスを生成する改質炉と、前記改質ガスから水素ガスを分離し回収する水素分離装置とを有し、更に、前記乾留炉の後段に前記乾留チャーを部分燃焼反応をさせて一酸化炭素ガスを含んだチャーガス化ガスを生成するチャーガス化炉と、前記チャーガス化ガスから一酸化炭素ガスを分離し回収する一酸化炭素分離装置とを有することを特徴とする可燃性廃棄物からの水素ガス及び一酸化炭素ガスの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−277479(P2007−277479A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−108616(P2006−108616)
【出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】