説明

合わせガラスの白化防止方法

【課題】白化の発生が少ない合わせガラスを提供すること。
【解決手段】合わせガラスの小口に、封止材料を1mm〜5mmの厚みで塗布又は接着することを特徴とする合わせガラスの白化防止方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合わせガラス製造後に行う白化防止のための小口処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合わせガラスは、2枚のガラス間に存在する中間膜の樹脂層が2枚のガラスの接着層として存在するものであり、透明性、耐候性及び接着性がよく、しかも耐貫通性がよく、ガラス破片が飛散しにくい等の合わせガラスに必要な基本性能を有し、例えば、自動車や建築物の窓ガラスに広く使用されている。
【0003】
合わせガラスは、製造方法によってフィルム合わせガラスと樹脂合わせガラスの2種類に分類される。
フィルム合わせガラスは、2枚のガラスの間に熱可塑性樹脂のフィルムをはさみ、加熱と加圧によって接合したガラスであり、樹脂注入合わせガラスは、液体の樹脂原料を2枚のガラス間に注入して反応硬化させ、接合したガラスである。
【0004】
合わせガラスは、2枚のガラスの間にある中間膜内部に水蒸気が拡散すると、光の乱反射が起こり、透明性が低下して白化することが知られている。すなわち、合わせガラスは、通常は、サッシ内部に四辺が囲まれる形式で使用されることが多く、ガラス周りのシーリング材の健全な間はサッシ内に水が浸透することは少なく、ガラス小口が湿潤状態になることも殆どないが、該シーリング材が劣化した状態になると、サッシ内部に水が浸透し、その水が直射日光によって暖められて、水蒸気となり、ガラスの小口が高湿度状態にさらされると水蒸気がガラス内部に拡散することにより、白化が引き起こされる。
【0005】
これに対し、フィルム合わせガラスでは、中間膜の成分を改良することによって白化を防止せんとする技術が報告されている(特許文献1参照)。しかしながら、もともと接着界面が外部に面した状態では、著しい湿潤状態に至った場合などは、中間膜とガラスの界面に水蒸気が浸透することを防止することは困難である。
【0006】
一方、樹脂注入合わせガラスでは、注型用液体樹脂を注入するために注入口を除いた四周が接着あるいは粘着性のあるテープ状の端部封止材料によって2枚のガラスが固定され、その内部に注入された樹脂が硬化することによって合わせガラスが得られる。この端部封止材料としては、ブチルテープやポリアクリレート粘着テープなどが使用されており、中でもポリアクリレートは、透明性を確保できることから、利用されることが多くなっている。
しかし、樹脂注入合わせガラスにおいても、端部封止材料とガラス界面を通して水蒸気が浸透して、白化現象が発生することが知られており、白化を防止するためには、周囲の水蒸気の透過を防止するための対策が必要である。
即ち、上記合わせガラスを湿度の高い雰囲気中に置いた場合、合わせガラスの周縁では中間膜が直接環境空気と接触しているため、周辺部の中間膜が白化してしまう問題が起こる。
【特許文献1】特開平10−273345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点を解決することを課題とする。すなわち、本発明は、上記合わせガラスの白化を防止する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
斯かる実状において、本発明者らは、鋭意研究を行った結果、合わせガラスの小口に、封止材料を1mm〜5mmの厚みで塗布又は接着すれば容易に合わせガラスの白化を防止し得ることを見出し本発明を完成した。
即ち本発明は、次の方法を提供するものである。
【0009】
<1> 合わせガラスの小口に、封止材料を1mm〜5mmの厚みで塗布又は接着することを特徴とする合わせガラスの白化防止方法。
【0010】
<2> 封止材料がガラス周りに用いるシーリング材である<1>記載の白化防止方法。
【0011】
<3> 封止材料が、ブチルテープとガラス周りに用いるシーリング材との組合せか、又はホットメルトブチルとガラス周りに用いるシーリング材との組合せである<1>記載の白化防止方法。
【0012】
<4> シーリング材が、2成分形シリコーン系シーリング材又はポリイソブチレン系シーリング材である<2>又は<3>記載の白化防止方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ガラスの小口部分に対して処理を行うため、透明性、耐候性、接着性、耐貫通性等の合わせガラスに必要な基本性能を損なうことなく、しかも、湿度の高い雰囲気中に置かれた場合でも合わせガラス周辺部から水蒸気の浸透が少なく、白化の発生が少ない合わせガラスを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、合わせガラスの小口に、封止材料を1mm〜5mmの厚みで塗布又は接着することを特徴とする合わせガラスの白化防止方法である。
以下、詳細に説明する。
【0015】
(封止材料)
本発明に用いる封止材料としては、ガラス周りに用いるシーリング材が挙げられる。
ここで用いるシーリング材の樹脂としては、ポリサルファイド、変性ポリサルファイド、ポリイソブチレン、シリコーン、ポリウレタン、エポキシ、アクリル、紫外線硬化ポリエステル、アクリルウレタン、スチレン/ブタジエン共重合体、ポリプロピレン及びブチルゴム等が挙げられ、特にシリコーン、ポリイソブチレンが好ましい。
上記樹脂は、1種でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。好ましい組合せとしては、ホットメルトブチルと上記シーリング材の組合せ等が挙げられる。
また、封止材料は、テープであってもよい。アクリルテープ、ブチルテープ、アルミテープ等が挙げられる。
【0016】
(合わせガラス)
本発明の合わせガラスに使用される無機ガラス板としては、特に限定されず一般建築用(窓用)に使用されるソーダライムガラス(たとえば、旭硝子社製、商品名:AS)が使用できる。その他、用途に応じて各種組成の無機ガラス板が使用できる。また、通常の板ガラスのみならず、強化ガラス、倍強化ガラス、半強化ガラス等の強化ガラスも使用できる。
本発明の合わせガラスに使用される中間膜としては、EVA系の樹脂シート、ポリウレタン系の樹脂シート、ポリビニルブチラール樹脂シート等が使用できる。その他、用途に応じて各種材質の樹脂製シートが使用できる。
また、本発明に使用できる合わせガラスとしては、上記フィルム合わせガラスの他、樹脂注入合わせガラスであってもよい。
【0017】
(封止方法)
本発明は、合わせガラスの小口に、上記封止材料を1mm〜5mmの厚みで塗布又は接着することを特徴とする。
塗布方法は、特に限定されないが、シーリング材の場合はシールガンを用いた塗布とへらによる押さえが挙げられ、2液混合の工場用シールの場合には、手元混合型の2液混合シールガンとへらによる押さえ、さらに塗料のような樹脂の場合にはローラーあるいは刷毛による塗布等が挙げられる。
また、接着とは主に上記テープを小口に接着することをいい、上記テープが粘着テープの場合は、そのまま小口に張りつければよい。
合わせガラスが面取りしたガラスである場合は、小口の中間膜部分が凹部となっているため、この凹部に封止材料を塗布又は接着すれば、より効果的に白化を防止することができる。
更に、合わせガラスの小口に樹脂を塗布した上に、テープを接着すれば、より一層白化を防止することができる。
このような樹脂とテープの組合せとしては、上記シーリング材とブチルテープの組合せ、アルミテープとシーリング材の組合せ、アクリルテープとシーリング材の組合せ等が好ましい。
合わせガラスは、1枚ずつサッシ内にいれてガラス小口が隠れる場合のみならず、意匠的にサッシの使用によって区切られることを嫌い、ガラスが繋がって見えるようにした場合がある。例えば、縦辺のサッシを無くして横にガラスを繋げる横連窓やサッシ枠を使用しないガラススクリーン工法で得られたものがある。本発明はこのような場合でも、小口を処理することにより白化を防止することができる。
【実施例】
【0018】
実施例1
厚さ6mmのガラス(旭硝子社製フロートガラス)とアクリル粘着テープ(住友3M社製、VHBアクリルフォーム構造用接合テープ)とアクリル樹脂(ケメタル社製、ナフトラン)を用いて300mm角の樹脂注入合わせガラスを製造し、その小口4辺を下記シリコーン系シーリング材、ポリイソブチレン系シーリング材を用いて1mm厚で封止した。また、ブチルテープ、アルミテープを用いて封止したガラスと、封止を行わなかった樹脂注入合わせガラスとともに比較を行った。これらの断面を図1に示す。
これらのガラスを70℃95%の恒温恒湿槽に入れて、白化の発生状況を比較した。結果を表1に示す。
【0019】
【表1】

【0020】
シリコーン系シーリング材:横浜ゴム製 シリコーン70、プライマーNo.70
ポリイソブチレン系シーリング材:横浜ゴム製 マイレックス、プライマーNo.85
ブチルテープ:三ツ星ベルト製 ブチルテープ
アルミテープ:住友3M社製 アルミ箔テープ No.431
【0021】
この結果、シリコーン系シーリング材あるいはポリイソブチレン系シーリング材を用いて封止したものは、21日間白化の発生しなかったが、封止しなかったガラスは、3日で白化が発生した。アルミテープ及びブチルテープとも白化防止効果は認められるものの十分とは言えず、14日間で白化が発生した。
【0022】
実施例2
実施例1の白化防止機能をさらに高めるため、小口処理を合わせガラス小口の段差部の一次封止材料と表面に塗布する二次封止材料の2重にした試験体(図2参照)を作製して白化防止性能を評価した。
使用した合わせガラスは実施例1と同様の樹脂注入合わせガラスを用いた。
これらのガラスを70℃95%の恒温恒湿槽に入れて、白化の発生状況を比較した結果、28日までどのガラスも白化が認められなかった。
【0023】
【表2】

【0024】
ブチルテープ:ピーエムジー社 ナフトサームブチルテープ φ1.7mm
ホットメルトブチル:横浜ゴム HOTMELT M−145 厚さ1mm
シリコーン系シーリング材:横浜ゴム シリコーン70、プライマーNo.70
ポリイソブチレン系シーリング材:横浜ゴム マイレックス、プライマーNo.85
【0025】
実施例3
フィルム合わせガラスについても実施例1と同様の白化防止性能を評価した。
ここで用いたフィルム合わせガラスは、6mmのフロートガラスを2枚用いて、中間膜フィルムとして0.76mmのポリビニルブチラール(PVB)、エチレンビニルアセテート(EVA)を用いて製造したガラスである。ここで用いたガラスは日本板硝子社製のラミペーンであり、厚さ12.3mmであった。
28日間の70℃95%の恒温恒湿状態による白化促進試験の結果、白化したガラスは封止処理を行わなかったガラスであり、封止材料によって水蒸気透過を低減した試験体については白化の発生は無かった。
【0026】
【表3】

【0027】
実施例4
小口封止した合わせガラスを横連窓で使用することを考慮して、シーリング材の打ち継ぎ接着性試験を実施した。
接着性試験としてはシーリング材の打ち継ぎ用の試験となるH型試験体を作製して試験を実施した(図3参照)。5cm角のフロートガラスの表面に1mm厚となるように封止材料を塗布し、4週間経過した後、ガラス用のシーリング材を用いてガラス面との接着性試験体を作成して、4週間経過後に接着性試験を実施した。引張速度は5mm/minで行い、判断状況によって判定した。
封上材料としてシリコーン系シーリング材とポリイソブチレン系シーリング材の2種類とし、ガラス同士の接着用のシーリング材も同様の2種類とした。
【0028】
【表4】

【0029】
シリコーン系シーリング材:横浜ゴム製 シリコーン70、プライマーNo.70
ポリイソブチレン系シーリング材:横浜ゴム製 マイレックス、プライマーNo.85
【0030】
以上本発明の実施例について説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によれば、ガラスの小口部分に対して処理を行うため、透明性、耐候性、接着性、耐貫通性等の合わせガラスに必要な基本性能を損なうことなく、しかも、湿度の高い雰囲気中に置かれた場合でも合わせガラス周辺部から水蒸気の浸透が少なく、白化の発生が少ない合わせガラスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施例1の小口の断面を示す図である。
【図2】実施例2の小口の断面を示す図である。
【図3】実施例3の接着試験を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1 封止材料
2 ガラス
3 中間膜
4 ガラス用シーリング材
11 一次封止材料
12 二次封止材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合わせガラスの小口に、封止材料を1mm〜5mmの厚みで塗布又は接着することを特徴とする合わせガラスの白化防止方法。
【請求項2】
封止材料がガラス周りに用いるシーリング材である請求項1記載の白化防止方法。
【請求項3】
封止材料が、ブチルテープとガラス周りに用いるシーリング材との組合せか、又はホットメルトブチルとガラス周りに用いるシーリング材との組合せである請求項1記載の白化防止方法。
【請求項4】
シーリング材が、2成分形シリコーン系シーリング材又はポリイソブチレン系シーリング材である請求項2又は3記載の白化防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−103975(P2006−103975A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−288418(P2004−288418)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】