説明

合成アスファルトおよびそれを含む混合アスファルト

【課題】鉱油、植物油、動物油などの各種油から発生する廃油を有効利用して新しいアスファルト代替品、すなわち合成アスファルトの提供。
【解決手段】(A)鉱油、植物油、動物油およびそれらの廃油よりなる群から選ばれた少なくとも1種の油状物質および(B)JIS K2531に準拠して測定した軟化点が120℃以上である常温固体のポリオレフィンを含有し、20〜120℃の温度において複素弾性率(Pa)が10Pa以上を保持することを特徴とする合成アスファルト(アスファルト代替品)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な合成アスファルト(アスファルト代替品)およびそれを含む混合アスファルトに関する。
【背景技術】
【0002】
アスファルトは、道路舗装用や建築材料として広く用いられているが、アスファルト特有の臭いや色が黒いことなどが難点として広く認識されている。
しかしながら、石油からガソリンなどの重要成分を回収する際、必ず副生してくるものであるため、従来から、その難点は承知の上で広く使用されてきており、そのコストも安価なため、この代替品を求める声はほとんど聞かれていない。
唯一代替的なものがあるとすれば、歩道、公園、車道等において、赤色や青色に着色された道路を形成する場合のバインダー組成物である。
このようなバインダー組成物としては、特許文献1を挙げることができる。
特許文献1には、石油樹脂20〜50重量%、芳香族系重質鉱油34〜77重量%、熱可塑性エラストマー2〜10重量%、エチレンコポリマー2〜8重量%およびワックス性物質1〜8重量%を必須成分として含有することを特徴とするバインダー組成物が開示されており、前記ワックス性物質として低分子量ポリエチレンおよび/または低分子量ポリプロピレンで、その平均分子量が500〜15,000、軟化点が90°〜160℃、かつ160℃粘度が500cp以下のものが記載されている。
しかしながら、この技術は、ワックス成分である低分子量ポリエチレンや低分子量ポリプロピレンのほかに、石油樹脂、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体のような熱可塑性エラストマーおよびエチレンコポリマーを多量に併用するものであり、ワックス成分はわずか1〜8重量%を用いるのみである。そして必須原材料が多いため、混合技術も複雑であり、コスト高を免れることができない。
また、アスファルトの実使用温度条件は、−20℃から120℃程度と考えられる。
ストレートアスファルトやブローンアスファルトは、常温では複素弾性率が10の3乗Pa以上を保つことができるが、ストレートアスファルトでは60℃以上になると複素弾性率が10の3乗以下となる。また、ストレートアスファルト、ブローンアスファルトなどの石油アスファルトは、いずれも0℃以下では、10の7乗Pa以上の値を示し、−20℃では10の8乗(Pa)以上の値を示し、非常に硬く、感温性に乏しいという欠点をもつ。
【0003】
一方、使用済みの鉱油、植物油、動物油は、いわゆる廃油としてその処理や有効利用が問題となっているし、廃アスファルトの場合も同様である。
一般的な改質アスファルトの配合技術として、ストレートアスファルト中にアタクチックポリプロピレンなど柔かく流動性のあるポリオレフィンを30wt%程度添加する手法があるが、ポリマーブレンドにおける海の部分をアタクチックポリプロピレンが占めるまで添加量を増やした配合物であり、本発明とは考え方、使用するポリオレフィンの性質、添加量も全く異なるものである。
【0004】
【特許文献1】特開平5−302072号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、鉱油、植物油、動物油およびそれらの廃油を有効利用して新しいアスファルト代替品、すなわち合成アスファルトならびに前記合成アスファルトと石油アスファルト(ストレートアスファルトおよび/またはブローンアスァアルト)との混合物よりなる混合アスファルトを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1は、(A)鉱油、植物油、動物油およびそれらの廃油よりなる群から選ばれた少なくとも1種の油状物質
および
(B)JIS K2531に準拠して測定した軟化点が120℃以上である常温固体のポリオレフィン
を含有し、−20〜120℃の温度において複素弾性率(Pa)が10の3乗Pa以上を保持することを特徴とする合成アスファルト(アスファルト代替品)に関する。
本発明の第2は、前記常温固体のポリオレフィンが、160℃における粘度1400cP以上のものである請求項1記載の合成アスファルトに関する。
本発明の第3は、前記JIS K2531に準拠して測定した軟化点が120℃以上である常温固体のポリオレフィンが、前記油状物質中でゲルを形成しているものである請求項1または2記載の合成アスファルトに関する。
本発明の第4は、前記JIS K2531に準拠して測定した軟化点が120℃以上である常温固体のポリオレフィンが前記油状物質に対して0.1〜10重量%の割合で含有されている請求項1〜3いずれか記載の合成アスファルトに関する。
本発明の第5は、前記JIS K2531に準拠して測定した軟化点が120℃以上である常温固体のポリオレフィンがポリプロピレンである請求項1〜4いずれか記載の合成アスファルトに関する。
本発明の第6は、前記JIS K2531に準拠して測定した軟化点が120℃以上である常温固体のポリプロピレンがポリプロピレンの不飽和酸変性物である請求項5記載の合成アスファルトに関する。
本発明の第7は、前記油状物質に対して20〜60重量%の無機質粒子を含有するものである請求項1〜6いずれか記載の合成アスファルトに関する。
本発明の第8は、(イ)請求項1〜7いずれか記載の合成アスファルトと、(ロ)ストレートアスファルトおよび/またはブローンアスファルトを含有することを特徴とする混合アスファルトに関する。
【0007】
本発明における(A)成分の油状物質は、常温で液状、半固体状あるいは固体状のいずれのものであってもよい。
(A)成分のなかでも鉱油、植物油、動物油およびその廃油などの各種油の複素弾性率は、室温域で10〜100Paといった程度のオーダーで、傾けただけで自然に流動してしまうほどの極端に低い値である(図4においては、油の代表としてパラフィンオイルのケースを黒丸印で示した)。
一方、図1や図4に示すように、石油アスファルトすなわちストレートアスファルトやブローンアスファルトの室温域における複素弾性率は、10の3乗Pa程度以上で実用に耐える複素弾性率であり、常温において、ほとんど流動しないか、極くゆっくりとクリープする性状の物である。
しかし、ストレートアスファルトが複素弾性率10の3乗Pa以上を保つことができるのは、その温度が約60℃以下の場合である。
アスファルトの実使用温度条件は、−20℃から120℃程度と考えられる。
前記(A)成分を利用して、好適な合成アスファルトにするためには、得られた合成アスファルトが120℃位までの温度になっても複素弾性率が10の3乗Pa以上の数値を保持できることが必要である。
また、ストレートアスファルト、ブローンアスファルトなどの石油アスファルトの複素弾性率は、いずれも0℃以下では、10の7乗Pa以上の値を示し、−20℃では10の8乗(Pa)以上の値を示し、非常に硬く、感温性に乏しいという欠点をもつ。
前記(A)成分を利用して、好適な合成アスファルトにするためには、得られた合成アスファルトが−20℃位までの温度になっても複素弾性率が10の6乗Pa以下の数値を保持し、温度変化に対して弾性率の変化が小さいことが望ましい。
【0008】
(A)成分を多量に含有していても、その組成物が少なくとも120℃位まで10の3乗Pa程度のオーダーの複素弾性率を保持するようにするため、本発明者はいろいろと試行錯誤を重ねた結果、驚くべきことにJIS K2531に準拠して測定した軟化点が120℃以上の常温固体のポリオレフィンである(B)成分を少量(A)成分に配合することにより、前記目的を達成できることを見出したのである。
【0009】
このポリオレフィンは、鉱油、植物油、動物油などの(A)成分と溶解性パラメータ(SP値)が近いので、その融点以上においては、(A)成分の各種油中において均質分散状態とすることができる。高温状態で均質分散状態にある(A)成分と(B)成分の混合物を冷却すると、融点の高いポリオレフィンが先に析出し、ポリオレフィンの融点までは耐熱性を発揮する非常に微細な結晶あるいはゲル骨格を形成する。
【0010】
本発明における油状物質としては、例えば下記表の鉱油を挙げることができる。表中の「種類、製造元」の項は「商品名」の項の商品を説明するものである。
【表1】

また、植物油や動物油は、新品が高価であるから、新品でも目的とする効果は充分達成できるが、本質的にはこれらの廃油が主として本発明の対象品となる。
【0011】
本発明における(B)成分の常温固体のポリオレフィンは、融点が120°以上、好ましくは130℃以上、とくに好ましくは140℃以上であり、また、160℃における粘度は1400cP以上、好ましくは2000cP以上、とくに好ましくは4000cP以上である。また前記(B)成分の常温固体のポリオレフィンの分子量は7000以上、好ましくは9000以上、とくに好ましくは12000以上であることが好ましい。
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、エチレン/プロピレン共重合体、ポリプロピレンなどを挙げることができるが、(B)成分は(A)成分中で融点の高いゲルあるいは結晶構造を形成しなければならないので、ポリオレフィンの中でも比較的融点が高く、結晶性のポリプロピレンが好ましい。
ポリプロピレンには、側鎖であるメチル基の立体規則性配置により、アイソタクチック、シンジオタクチック、アタクチックの3形態が存在するが、アイソタクチックとシンジオタクチックが本発明には適している。
汎用のポリプロピレンは、アイソタクチックポリプロピレンであり、分子組成からホモ、ランダム、ブロックの3種類に分類できるが、どの分子組成でも本発明に適している。
また、(B)成分であるポリオレフィンの(A)成分に対する配合量は0.1重量%以上10重量%以下が好ましい。
とくに本発明のポリオレフィンは、たとえば特許第3137352号公報〔0012〕に記載されているように、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などの無水不飽和酸により変性されたものであることが好ましい。その例としては、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン/プロピレン共重合体、無水イタコン酸変性ポリプロピレン、無水シトラコン酸変性ポリプロピレンなどを挙げることができる。
また、本発明の(B)成分は、無水酢酸、無水コハク酸、無水フタル酸、ナフタレン−1,8:4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン酸−1,2,3,4−テトラカルボン酸二3,4−無水物などの無水物、D,Lリンゴ酸、マロン酸、スクシン酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ガラクタル酸、イタコン酸なども樹脂に配合して使用できる。これら酸類の使用量は樹脂に対して0.2〜7重量%、好ましく0.5〜5重量%である。
ポリオレフィンの酸による変性方法は、ポリオレフィンと酸を150〜200℃で所定時間混合することにより達成できる。
たとえば、ポリオレフィンと所定の酸および有機過酸化物を混合し、これを所定の温度に調整したペレタイザーに入れてペレット化する。この間の時間は3〜5分であるが、この間に充分変性反応が進行する。
【0012】
本発明に用いることのできるポリオレフィンの1種であるポリプロピレンとその変性物とその物性を以下に列記する。表中の「種類、製造元」の項は「商品名」の項の商品を説明するものである。
【表2】


【表3】


【表4】

【表5】


【表6】

【0013】
本発明で用いる不飽和変性されたポリプロピレンは、驚くべきことに、無機粉体を混合した場合にその沈降を防ぎ、安定な混合物を得ることができる。
(A)成分:ナフテンオイル N−430 40wt%
(B)成分:無水マレイン酸変性したポリプロピレン 10wt%
添加物:炭酸カルシウム 50wt%
前記ナフテンオイルN−430は出光興産(株)の商品名:ダイアナフレシアN−430(動粘度/40℃=433.8mm/s)を指す。
前記無水マレイン変性したポリプロピレンは、ポリプロピレンを下表のようないろいろの量(ポリマー100重量部に対するwt%)の無水マレイン酸を用いて変性したものである。
【表7】

この混合物の安定性は高く、200℃の溶融状態で24時間静置した場合でも無機粉体の沈降現象は全く起きていない。
一方、不飽和変性されていないポリプロピレンを用いた場合は、同条件で微量ではあるがはっきりとした沈降現象を確認でき、不飽和変性されたポリオレフィンの方が好ましいことが分かる。
不飽和変性率はポリプロピレン重量に対して0.5wt%程度の極くわずかな量でも無機粉体の沈降防止効果が発現する。
無機粉体の沈降防止効果は、加工上のメリットを発現するだけに留まらず、混合物の機械的物性の改善にも有効に働く重要な現象である。
また無水マレイン変性したポリプロピレンの添加量を0.5wt%にまで減少させても同様の効果が発現することが確認している(表8参照)。
(A)成分:前記ナフテンオイル N−430 49.5wt%
(B)成分:前記無水マレイン酸変性ポリプロピレン 0.5wt%
添加物:炭酸カルシウム 50.0wt%
【0014】
ブローンアスファルトなどアスファルトは、アスファルテン、レジン、芳香族分、飽和分といった成分から形成され、固体であるアスファルテン成分がレジン、芳香族分、飽和分といった液状成分中に均質に分散してマトリックスを形成していると考えられており、レジン、芳香族分、飽和分を総じてマルテン分という。
ブローンアスファルト中のアスファルテンとマルテン分は、ヘプタンに融けるか否かで分離することができる。マルテン成分は、室温で流動するチクソ性の高い粘調物質であり、一方、アスファルテンは比較的分子量の大きな固体の物質である。
マルテン成分だけを抽出し、粘度や性状を比較するとブローンアスファルトもスレートアスファルトも同様の性状で軟化点は50℃前後と低い物である。
ブローンアスファルトがある程度の耐熱性を有するのは、アスファルテンやレジン分を主成分とした比較的耐熱性の高い成分群がマルテン中にマトリックスを形成し、マルテンの流動を抑制していると考えられる。
これに対して、本発明の合成アスファルトにおいては、(B)成分のポリオレフィンは(A)成分の油状物質中にいわばゲル状で存在していると考えられる。(A)成分の油状物質が透明な油などの場合は、その透明な物質中のポリオレフィンはいわゆる結晶物として、光の屈折率の違いから偏光顕微鏡にて目視観測することができる。
図2は、ポリプロピレンをオイルに溶した後、冷却してゲル化させたものを、偏光顕微鏡で見た状態を示す。図2において、白い花のように写っているものが、ポリプロピレンの球晶である。球晶同士は必ずしも接触しているわけではない。本発明のポリプロピレンのマトリックスは、もっと細かい光学顕微鏡では見ずらいサイズのものと考えられる。むしろこの球晶は、余剰のポリプロピレンが部分的に析出したものである。
【0015】
ヒートステージを使うと顕微鏡下でサンプルをある一定温度条件で観察することができる。
本発明サンプルを偏光顕微鏡下でヒートステージを用いて130℃〜140℃まで加熱すると球晶が融け残ったまま急激に流動するポイントが確認できる。
これは、球晶の周りを囲っていたゲル状の非常に細かいポリプロピレンの結晶が融解したことを示す現象である。図3に本発明の合成アスファルトの示差走査熱量測定(Differential scanning Calorimetry; DSC)チャ−トを示す。ヒートステージで観測される急激な流動ポイントとほぼ同じ点にポリプロピレンの融解吸熱ピ−クが観測され、先の仮説を裏付ける現象である。
【0016】
石油アスファルトは、アスファテン成分がマトリックスを形成して、耐熱性を有するのに対して、本発明の合成アスファルトは、ポリオレフィンゲルが、この役割を果たしている。
アスファテンは、加温しても不融解性の固体状物質であるのに対して、本発明のポリオレフィンゲルは軟化点140℃前後の柔かいゲルであり、感温性も小さい物である。
【0017】
以下に鉱物油(商品名:ナフテンオイル N−430、出光興産の商品名)および植物オイル(サラダオイル)に未変性ポリプロピレン(ビスコ−ル330−P、三洋化成工業の商品名)を10wt%加えた合成アスファルトの試験管倒立法による外観観察の写真を図5に示す。これらの合成アスファルトは、試験管に入れ、逆さまにしても室温に置いて流動することはなく加えられたビスコ−ル330−Pによりゲル化していることが分かる。
【0018】
得られた合成アスファルトは、従来のストレートアスファルトに比べて−20℃の低温域でも柔軟でかつ120℃の高温領域でも耐熱性を有する優れた性能を保持している。
この様な優れた合成アスファルトに従来から使用されているアスファルト改質材や顔料、骨材等を添加してアスファルト由来の製品を調整することで、今までにない特性を発現できる。
【0019】
図1に示すとおり、本発明の合成アスファルトは、−20℃〜120℃の温度範囲における複素弾性率は、10の3乗(Pa)から10の6乗(Pa)の範囲である。
一方、ストレ−トアスファルトやブローンアスファルトは、10の2乗から10の8乗の範囲である。
つまり、本発明の合成アスファルトは、石油アスファルトに比べて、−20℃〜120℃の温度範囲における複素弾性率の変化が100倍以上小さく、安定した物性を発現できるものである。
【0020】
本発明の合成アスファルトに、耐久性を付与させるためにスレートアスファルトやブローンアスファルトのような石油アスファルトを任意の量で添加、着色して紫外線の影響を排除することができる。
【0021】
本発明の合成アスファルトは、石油アスファルトと異なり、黒色ではなく淡い色なので、着色することが可能である。
【0022】
本発明の合成アスファルトに従来から知られているアスファルト改質材であるスチレン−ブタジエン−スチレンブロックポリマー(SBS)、アタクチックポリプロピレン(APP)、アモルファスポリαオレフィン(AOAP)などを更に添加してより高性能の合成アスファルトとすることもできる。
【0023】
本発明の合成アスファルトに任意の量の骨材あるいは、任意の量の骨材と任意の量のSBS等の改質材を添加して道路工事用アスファルトコンクリートとすることができる。
【0024】
同用途に、着色を施した合成アスファルトを用いれば、カラーアスファルトコンクリートとすることもできる。
【0025】
天然アスファルトのなかでも、広い温度範囲で、その複素弾性率が10Paのオーダー以上を保つことができるブローンアスファルトと本発明の合成アスファルトを比較してみると、以下のことが言える。
(1)図1にみられるとおり、本発明の合成アスファルトは−20℃〜120℃の間においては、その複素弾性率はほぼ10のオーダーを保持しているのに対し、ブローンアスファルトの場合は、その複素弾性率が10のオーダーから10のオーダーまで大幅に変化する。
(2)ブローンアスファルトは、ストレートアスファルト中のマルテン分を酸化縮重合させてアスファルテンとすることにより、高い弾性率を得ているが、マルテン量が少ないためSBS等の改質材を加えても、充分に改質できない欠点がある。
一方、本発明の(A)成分である鉱油や植物油は、マルテン類似物質であるため、大量の改質材を添加できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、少なくとも−20〜120℃という広い温度範囲において、その複素弾性率が10Paのオーダー以上を保つことができる新しい合成アスファルトを提供することができた。
また、この合成アスファルトは、石油アスファルトに少量配合するだけで石油アスファルトの軟化点を向上させることができる。逆に本発明の合成アスファルトに10重量%以上の石油アスファルトを配合すると、本発明の合成アスファルトの紫外線に対する抵抗力を大幅に向上させることができる。この場合紫外線防止剤としての石油アスファルトは、石油アスファルトと本発明の合成アスファルトの合計量に対して、10〜70重量%、好ましくは40〜60重量%を配合するとよい。
さらに、本発明は、(A)成分の選択や(B)成分の選択、両者の配合量の調節により極めて幅広く物性を調整できる。
【実施例】
【0027】
以下に実施例、比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
【0028】

【表8】

前記表においては、
パラフィン系オイルとして表1記載の商品名「パラフィンオイルP−430」を
ナフテン系オイルとして表1記載の商品名「ナフテンオイルN−430」を
アロマ系オイルとして表1記載の商品名「アロマオイルAH−16」を
それぞれ使用した。
図1は、市販のストレートアスファルト(白四角印)、ブローンアスファルト(白三角印)および本発明の合成アスファルト(黒四角印)の温度と複素弾性率の関係を示す。複素弾性率は、Anton Paar GmbH のPhysica MCR 101 を用いて損失複素弾性率と貯蔵複素弾性率を求め、それから下記式に従って計算により求めた値である。
複素弾性率=〔(損失複素弾性率)+(貯蔵複素弾性率)1/2
なお、測定試料は厚さ0.3mmのものを用いた。
また、図1における本発明の合成アスファルトとしては、パラフィンオイル(出光興産株式会社の商品名:パラフィンオイルP−430を使用)90重量%とAC950P(米国、Honey Well社の商品名:無水マレイン酸変性ポリプロピレン)10重量%よりなる組成物を用いた。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】白三角印はブローンアスファルト(新日石製3種)〔d=0.3mm〕の複素弾性率と温度との関係を示し、白四角印は、ストレートアスファルト(新日石製:針入度180〜200)〔d=0.3mm〕の複素弾性率と温度との関係を示し、黒四角印は、実施例4のパラフィンオイル(出光興産、商品名:ダイナフレシアP−430)90%と変性ポリプロピレン(AC950P)10%との合成アスファルトの複素弾性率と温度との関係を示す。
【図2】パラフィンオイル(出光興産、商品名:ダイナフレシアP−430)に未変性ポリプロピレン(ビスコ−ル330−P、三洋化成工業の商品名)を10wt%加えた合成アスファルト中に形成されたポリプロピレンの球晶およびゲルの偏光顕微鏡写真である。
【図3】高温状態で均質な分散状態にある実施例の本発明組成物を冷却すると、融点の高いポリオレフィンが先に析出し、ポリマーの融点までは耐熱性を示す非常に微細な結晶あるいはゲル骨格を形成していることを示している。
【図4】黒丸印はパラフィンオイル(出光興産、商品名:パラフィンオイルP−430)〔d=0.5mm〕の複素弾性率と温度との関係を示し、白四角印は、ストレートアスファルト(新日石製:針入度180〜200)〔d=0.3mm〕の複素弾性率と温度との関係を示す。
【図5】左側のものは、鉱物油に10wt%の未変性ポリプロピレンを加えた合成アスファルト、右側のものは、植物油に10wt%の未変性ポリプロピレンを加えた合成アスファルトであり、いずれも、流動することなく、ゲル化していることが分る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)鉱油、植物油、動物油およびそれらの廃油よりなる群から選ばれた少なくとも1種の油状物質
および
(B)JIS K2531に準拠して測定した軟化点が120℃以上である常温固体のポリオレフィン
を含有し、−20〜120℃の温度において複素弾性率(Pa)が10の3乗Pa以上を保持することを特徴とする合成アスファルト(アスファルト代替品)。
【請求項2】
前記常温固体のポリオレフィンが、160℃における粘度1400cP以上のものである請求項1記載の合成アスファルト。
【請求項3】
前記JIS K2531に準拠して測定した軟化点が120℃以上である常温固体のポリオレフィンが、前記油状物質中でゲルを形成しているものである請求項1または2記載の合成アスファルト。
【請求項4】
前記JIS K2531に準拠して測定した軟化点が120℃以上である常温固体のポリオレフィンが前記油状物質に対して0.1〜10重量%の割合で含有されている請求項1〜3いずれか記載の合成アスファルト。
【請求項5】
前記JIS K2531に準拠して測定した軟化点が120℃以上である常温固体のポリオレフィンがポリプロピレンである請求項1〜4いずれか記載の合成アスファルト。
【請求項6】
前記JIS K2531に準拠して測定した軟化点が120℃以上である常温固体のポリプロピレンがポリプロピレンの不飽和酸変性物である請求項5記載の合成アスファルト。
【請求項7】
前記油状物質に対して20〜60重量%の無機質粒子を含有するものである請求項1〜6いずれか記載の合成アスファルト。
【請求項8】
(イ)請求項1〜7いずれか記載の合成アスファルトと、(ロ)ストレートアスファルトおよび/またはブローンアスファルトを含有することを特徴とする混合アスファルト。

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図2】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−13193(P2009−13193A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−173184(P2007−173184)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000217365)田島ルーフィング株式会社 (78)
【Fターム(参考)】