合成ヘパリン結合成長因子類似体
【課題】医療用デバイスのための表面被覆剤としての、ヘパリン結合成長因子の新たなペプチド類似体、特に、アゴニストとして機能する合成ペプチドアゴニスト、及び医療用デバイスの提供。
【解決手段】ペプチド鎖または複数の鎖が、ヘパリン結合成長因子レセプターを結合し、そして特に、疎水性リンカーでありうるリンカーによって、ヘパリン結合ドメインを含む非シグナル発生ペプチドに共有結合で結合されるものである、少なくとも1個のペプチド鎖、好ましくは2つの三官能アミノ酸残基から構成されるジペプチド分岐部位から分岐した2個のペプチド鎖を有する合成ヘパリン結合成長因子類似体及び合成ヘパリン結合成長因子類似体を表面被覆剤とした医療用デバイス。
【解決手段】ペプチド鎖または複数の鎖が、ヘパリン結合成長因子レセプターを結合し、そして特に、疎水性リンカーでありうるリンカーによって、ヘパリン結合ドメインを含む非シグナル発生ペプチドに共有結合で結合されるものである、少なくとも1個のペプチド鎖、好ましくは2つの三官能アミノ酸残基から構成されるジペプチド分岐部位から分岐した2個のペプチド鎖を有する合成ヘパリン結合成長因子類似体及び合成ヘパリン結合成長因子類似体を表面被覆剤とした医療用デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘパリン結合成長因子の合成ペプチドおよび類似体、特に、非成長因子ヘパリン結合領域と都合によりリンカーをさらに有し、そのリンカーは、疎水性でありうる類似体の分野に関する。本発明は、さらに、可溶性薬剤として、そして医療用デバイスのための被覆剤としてこのような類似体の医療用途に関する。
【0002】
関連出願に対する関連文献
本出願は、2002年8月20日に提出された「合成ヘパリン結合成長因子類似体」と題される米国特許出願番号第10/224,268号の一部継続出願であり、そしてそれに対して優先権を主張し、そしてその明細書は、ここに参照して組み込まれる。
【0003】
連邦に支援される研究または開発に関する供述
本発明は、米国エネルギー省により授与される契約番号DE−AC02−98CH10886号の下に米国連邦政府支援を伴い発明された。米国連邦政府が本発明のあらゆる権利を有する。
【背景技術】
【0004】
以下の検討は、著者(ら)による多くの出版物および出版物の年度に関すること、そして最近の出版物の日付により、所定の出版物は、本発明に対する先行技術として評価されないことに注目すること。ここでのこのような出版物の検討は、さらに完全な背景について示され、そしてこのような出版物が、特許性決定の目的のための先行技術であると認めると解釈されるべきでない。
【0005】
ヘパリン結合成長因子(HBGF)は、現在までに同定された23の繊維芽細胞成長因子(FGF1−23)、HBBM(ヘパリン結合脳分裂促進剤)、HB−GAF(ヘパリン結合成長関連因子)、HB−EGF(ヘパリン結合EGF様因子)、HB−GAM(ヘパリン結合成長関連分子)、TGF−α(形質転換成長因子−α)、TGF−β(形質転換成長因子−β)、PDGF(血小板由来成長因子)、EGF(表皮成長因子)、VEGF(脈管内皮成長因子)、IGF−1(インスリン様成長因子−1)、IGF−2(インスリン様成長因子−2)、HGF(肝細胞成長因子)、IL−1(インターロイキン−1)、IL−2(インターロイキン−2)、IFN−α(インターフェロン−α)、IFN−γ(インターフェロン−γ)、TNF−α(腫瘍壊死因子−α)、SDGF(神経鞘腫由来成長因子)および多くの他の成長因子を含む多数のクラスの成長因子、ヘパリンに親和性を示すサイトカイン、リンホカインおよびキモカインから構成される。
【0006】
ヘパリン結合成長因子レセプターを結合する天然のHBGFから得られるペプチドが、同定されてきた。例えば、Rayらによる、Proc.Natl.Acad.Sci.USA94巻:7047−7052頁(1997年)を参照。これらの著者らは、FGF−2から得られる2つのアミノ酸配列が、神経性先祖細胞上のFGF−2の有糸分裂活性を遮断するのに十分であることを示した。第一のペプチドは、アミノ酸65−74から得られる10個のアミノ酸配列であり、第二のペプチドは、アミノ酸115−129から伸長する。
【0007】
代替的アプローチでは、ヘパリン結合成長因子レセプターを結合する人工ペプチドは、ファージディスプレイ方法により同定された。BallingerらによるNature BioTechnology17巻:1199−1204頁(1999年)では、C19と呼ばれる28個のアミノ酸ペプチドを単離し、FGF−2レセプターを結合する技術を使用しているが、しかしそれ単独では、生物学的活性を刺激できない。ペプチドは、あらゆる既知FGFとアミノ酸配列同一性を有しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
広範な疾患および障害の防止または治療に有用なHBGFは、天然源から精製されるか、または組換えDNA法によって産生されうるが、しかし、このような調製は、高価であり、そして一般に調製することが困難である。
【0009】
ヘパリン結合成長因子類似体を発生するある程度の努力がなされた。例えば、天然のPDGFは、頭部から頭部(AAまたはBB)ホモ二量体、または(ABまたはBA)ヘテロ二量体に配列されたA鎖およびB鎖として生じる。したがって、Jehanliらに対する米国特許第6,350,731号は、2つの合成PDGFレセプター結合ドメインが、ポリグリシンまたはN−(4−カルボキシ−シクロヘキシルメチル)−マレイミド(SMCC)鎖を通して共有結合で連結されて、天然の活性ポリペプチド二量体を擬態するPDGF類似体を開示する。
【0010】
Ben−Sassonに対する米国特許第6,235,716号は、脈管形成因子の類似体を開示する。その類似体は、多リンカー骨格により連結された2個またはそれ以上の脈管形成相同領域を含む分岐した多価リガンドである。
【0011】
Godowskiに対する米国特許第5,770,704号(’704号特許)は、レセプターチロシンキナーゼ、サイトカインレセプターおよび神経成長因子レセプタースーパーファミリーの構成要素を活性化する接合体を開示する。接合体は、同族レセプターに結合する能力のある少なくとも2つのリガンドを含み、その結果、個々のリガンドの結合は、これらのレセプターのオリゴマー化を誘発する。’704号特許に開示されるリガンドは、種々の非タンパク質様高分子、特にポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンのような親水性高分子、およびポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールを含めたポリビニルアルケンエーテルへの共有結合付着によって連結される。リガンドは、各々HGFレセプターを結合し、それによりレセプターに、HGFレセプター二量体の生物学的活性の二量体化および活性化を引起させる肝細胞成長因子(HGF)ペプチド変異体を含む。
【0012】
Caldwellらに対する米国特許第6,284,503号(’503号特許)は、細胞付着、細胞成長、細胞分級および生物学的アッセイのための疎水性表面および疎水性被覆表面への細胞および生物分子の付着を調節する組成物および方法を開示する。組成物は、反応性末端基活性化高分子に接合した生体分子である。末端基活性化高分子は、ブロック共重合体界面活性剤骨格および活性化または反応性基を含む。ブロック共重合体は、疎水性表面に吸着する能力のある疎水性領域、および疎水性領域が、疎水性表面に吸着されるときに、表面から離れて伸長する親水性領域を有するあらゆる界面活性剤でありうる。’503号特許は、末端基活性化高分子に接合しうる生体分子が、PDGF、EGF、TGFα、TGFβ、NGF、IGF−I、IGF−II、GHおよびGHRFのような天然または組換え成長因子、並びに多CSF(II−3)、GM−CSF、G−CSF、およびM−CSFを含むことを開示する。
【0013】
他の研究者らは、繊維芽細胞成長因子(FGF)の相同体および類似体を含む組成物を記述した。例えば、LappiおよびBairdに対する米国特許第5,679,673号;Delsherらに対する米国特許第5,989,866号、およびFiddesらに対する米国特許第6,294,359号を参照。これらの開示は、毒性部分に接合され、そしてFGFレセプター担持細胞に標的にされるか、またはFGF相同体または類似体による結合により、FGFレセプターに伝達されるシグナルを通して生物学的経路を調節する相同体または類似体であるかのいずれかであるFGF相同体または類似体に関する。
【0014】
Kochendoerferらに対する一連の特許出願は、合成キモカインおよび造血刺激タンパク質を含めた高分子修飾タンパク質を開示する。例えば、国際公開番号02/04105号、02/19963号、および02/20033号を参照。これらは、ポリペプチド鎖が、タンパク質上の1つまたはそれ以上のグリコシル化部位に付着した水溶性高分子と一緒に生じるように、合成造血タンパク質のポリペプチド鎖の化学的に連結したペプチドセグメントを含む。これらの出願は、修飾高分子でもあり、そしてアンタゴニストと主張される合成キモカインも開示する。しかし、ヘパリン結合ドメインは開示されていない。Wrightonらに対する米国特許第5,773,569号および第5,830,851号に開示されるもののような他のエリスロポイエチン擬態が知られている。
【0015】
BallingerおよびKavanaughに対する国際公開番号00/18921号は、直接、または連結基を通してのいずれかで、「オリゴマー化ドメイン」に連動してFGFレセプター親和性を示す融合タンパク質から構成される組成物を開示する。オリゴマー化ドメインは、長さ約20から300残基までの範囲にあり、そして転写因子、IgGのFc部分、ロイシンジッパーなどのような構築物を含む。開示されるオリゴマー化ドメインは、単一FGFレセプター親和性融合タンパク質が、ロイシンジッパーのような単一ドメインに連結され、次に、各々単一FGFレセプター親和性融合タンパク質を有する2つの平行のロイシンジッパーが、ジスルフィド結合の手段により架橋されているように、ロイシンジッパーのアミノおよびカルボキシ末端の両方でシステイン残基の手段により、類似の分子に連結されているホモ二量体ドメインである。融合タンパク質が、ヘパリン結合ドメインであることを明らかに示す、多量体化ドメインとしてのjunの使用のようなヘパリン結合ドメインを含みうることも開示されている。したがって、BalingerおよびKavanaughによって開示される組成物は、全て、オリゴマー化ドメインに共有結合で付着され、それにより各々単一レセプター結合配列を有する2つまたはそれ以上の類似のオリゴマー化ドメインが、オリゴマー化ドメインにより供給された結合の手段により結合されるか、または代わりに、個別の成分の共有結合を供給するために化学的に架橋されるかのいずれかである単一レセプター結合配列から構成される。
【0016】
上述の相同体、類似体、接合体またはリガンドは、各々、レセプター結合ドメインを含む。しかし、開示された組成物の内で、さらに、ジペプチド配列に2つのレセプター結合ドメインの連結を供するリンカーを含み、そしてさらにヘパリン結合ドメインを含有する単一非シグナル発生ペプチドを供することの両方をするものはない。さらに、これらまたは他の既知ヘパリン結合成長因子類似体の内で、ここに後述される利点を供するものはない。HBGFの新たなペプチド類似体の、特に、アゴニストとして機能するものの必要性がなおある。特に、ヘパリン結合成長因子レセプターの費用効率の高い合成ペプチドアゴニスト、特に、医療用デバイスの被覆に、そして可溶性生物製剤として有益な合成ヘパリン結合成長因子アゴニストの必要性がなおある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
1つの実施態様では、本発明は、式Iで表されるHBGF類似体を提供する。
【0018】
【化1】
式I
各Xは、(i)最小3個のアミノ酸残基を有し、(ii)最大約50個のアミノ酸残基を有し、そして(iii)ヘパリン結合成長因子レセプター(HBGFR)を結合するペプチド鎖である;R1は、アミノ酸残基であり、Xは、R1のN末端を通して、またはR1の側鎖を通して共有結合で結合されている;R2は、三官能性アルファアミノ酸残基であり、Xは、R2の側鎖を通して共有結合で結合されている;Yは、n=0の場合、R1およびZに、またはn=1の場合、R2およびZに共有結合で結合された0個から約50個の原子までの鎖を包含するリンカーである;Zは、ヘパリン結合ドメインを包含する非シグナル発生ペプチド鎖であり、そして(i)最小1個のヘパリン結合モチーフ、(ii)最大約10個のヘパリン結合モチーフ、および(iii)最大約30個のアミノ酸を包含するアミノ酸配列を包含する;そしてnは、0または1であり、n=1の場合、ペプチド鎖Xは同一である。
【0019】
式Iで表されるHBGF類似体では、Yは、さらに、(i)疎水性であり、(ii)最小約9個、そして最大約50個の原子の鎖を包含し、そして(iii)Xが結合するHBGFRの天然リガンドに見られないリンカーを含みうる。式Iの1つの実施態様では、R1は、Xが、R1の側鎖を通して共有結合で結合されている三官能性アミノ酸残基である。
【0020】
式Iの1つの実施態様では、式IのHBGF類似体は、それが、0.15M NaCl中でヘパリンを結合するが、1M NaClによって溶出されるようにヘパリンについての結合活性を示すことで特徴づけられる。
【0021】
別の実施態様では、本発明は、式IIで表されるHBGF類似体を提供する。
【0022】
【化2】
式II
R3およびR5は、独立に、NH2;N末端NH2、NH3+、またはNH基あるいは対応のアシル化誘導体を含む、線状または分岐C1からC17までのアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニルまたはアラルキル鎖を有するアシル基であるか、またはN末端NH2、NH3+、NH基あるいは対応のアシル化誘導体を有するアミノ酸、ジペプチドまたはトリペプチドである;R4は、−OH、NH2、NH−R6であるか、またはC末端−OH、NH2、またはNH−R6を有するアミノ酸、ジペプチドまたはトリペプチドである;R6は、脂肪族C1からC17までの鎖である;各Xは、(i)最小3個のアミノ酸残基を有し、(ii)最大約50個のアミノ酸残基を有し、そして(iii)HBGFRを結合するペプチド鎖である;J1およびJ2は、各々独立に、各Xが、J1およびJ2の側鎖を通して共有結合で結合される三官能性アルファアミノ酸残基である;Yは、n=0である場合、J1およびZに、あるいはn=1である場合、J2およびZに共有結合で結合された0から約50個までの原子の鎖を包含するリンカーである;Zは、ヘパリン結合ドメインを包含する非シグナル発生ペプチドであり、そして(i)最小1個のヘパリン結合モチーフ、(ii)最大約10個のヘパリン結合モチーフ、および(iii)最大約30個のアミノ酸を包含するアミノ酸配列を包含する;そしてnは、0または1であり、n=1の場合、合成ペプチド鎖Xは同一である。
【0023】
式IIで表されるHGBF類似体では、Yは、さらに、(i)疎水性であり、(ii)最小約9個および最大約50個の原子の鎖を包含し、そして(iii)Xが結合するHBGFRの天然のリガンドには見られないリンカーを含む。
【0024】
1つの実施態様では、式IIで表されるHBGF類似体は、それが、0.15M NaCl中でヘパリンを結合するが、1M NaClによって溶出されるようにヘパリンについての結合活性を示すことで特徴づけられる。
【0025】
式IIで表されるHBGF類似体は、さらに、HBGFRへのその結合が、HBGFRによりシグナルを発生させること、あるいは代わりに、それが、HBGFRによりシグナル発生を阻止することを特徴としうる。
【0026】
式IIで表されるHBGF類似体の1つの実施態様では、J1および、n=1の場合には、J2は、ジアミンアミノ酸残基である。このようなジアミンアミノ酸残基は、2,3ジアミノプロピオニルアミノ酸残基、リシル残基またはオルニチニル残基でありうる。式IIで表されるHBGF類似体の代替的実施態様では、J1および、n=1の場合には、J2の側鎖は、反応性カルボキシル基を含む。
【0027】
式IIで表されるHBGF類似体の1つの実施態様では、XとJ1または、n=1の場合には、J2との間の共有結合は、アミド、ジスルフィド、チオエーテル、シッフ塩基、還元シッフ塩基、イミド、二級アミン、カルボニル、尿素、ヒドラゾンまたはオキシム結合を包含する。好ましい実施態様では、結合は、アミド結合である。
【0028】
そのような式IIで表されるHBGF類似体は、さらに、mは、1から約10までである、式IIIで表されるHBGF類似体を含む。
【0029】
【化3】
式III
そのような式IIIで表されるHBGF類似体は、さらに、pは、1から約10までであり、そしてqは、1から約20までである、式IVで表されるHBGF類似体を含む。
【0030】
【化4】
式IV
1つの特に好ましい実施態様では、pは、5であり、そしてqは、3である。
【0031】
1つの実施態様では、n=1である式IまたはIIで表されるか、または式IIIまたはIVで表されるいずれかのHBGF類似体では、ペプチド鎖Xは、架橋または環状化されている。このような架橋または環状化は、少なくとも1つのジスルフィド、ペプチド、アミドまたはチオエーテル結合を含めた共有結合を通しての可能性がある。
【0032】
別の実施態様では、式I、IIまたはIIIで表されるいずれかのHBGF類似体で、Yは、1と約33個の間のエチレングリコール(オキシエチレン)単位を含む。代わりに、Yは、1個と約20個の間の炭素原子の分岐または未分岐、飽和または不飽和アルキル鎖を含みうる。特に好ましい実施態様では、Yは、pは、1から約10までであり、そしてqは、1から約20までである[NH2−(CH2)pCO]qである。別の実施態様では、Yは、ペプチド配列を含み、そして好ましい実施態様では、1から約16個のGly残基を伴う。
【0033】
式I、II、IIIまたはIVのいずれかのHBGF類似体の別の実施態様では、Zの各ヘパリン結合モチーフは、BxBB、またはBBBxxBであり、各Bは、独立に、リシン、アルギニン、オルニチン、またはヒスチジンを表し、そしてxは、天然に生じるアミノ酸を表す。好ましい実施態様では、Zは、少なくとも2個のヘパリン結合モチーフを含み、さらに好ましくは、少なくとも5個のヘパリン結合モチーフを含む。
【0034】
本発明は、さらに、式I、II、IIIまたはIVのいずれかのHBGF類似体を含む医薬組成物、またはその医薬上許容しうる塩、および医薬上の担体を含む。
【0035】
本発明は、さらになお、有害用量の放射線または化学療法剤にさらされた哺乳類を処置する方法、哺乳類に、式I、II、IIIまたはIVのいずれかの有効用量のHBGF類似体を投与することを包含する方法を提供する。特に好ましくは、Xが、FGF HBGFRを結合するHBGFであり、さらに好ましくはFGF−7レセプターである。その方法は、哺乳類に、有効用量の合成ヘパリン結合成長因子類似体を投与して、粘膜炎、胃腸症候群、または放射線壊死を含みうる放射線または化学療法剤の有害な影響を改善することを含む。
【0036】
本発明は、活性ペプチドを哺乳類、特にヒトに送出する方法も提供する。その方法は、その表面に、式I、II、IIIまたはIVのいずれかのHBGF類似体との非共有結合を介して被覆した医療用デバイスを供し、そして哺乳類の表面上に医療用デバイスを載せるか、またはその上に医療用デバイスを移植することを含む。
【0037】
本発明の他の目的、利点および新規特性、およびさらなる範囲の適用性は、付随の図面と共に、続く詳細な説明で部分的に説明され、そして部分的に、以下のものの検査により、当業者に明らかになるか、または本発明の実施によって習得されうる。本発明の目的および利点は、装置および付随の請求項で特に指摘される組合わせの手段により認識および保持されうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明の各合成HBGF類似体は、特定のHBGFにより結合された1個またはそれ以上のレセプターに結合する特定のHBGFの類似体である。合成HBGF類似体は、ホルモン、サイトカイン、リンホカイン、キモカインまたはインターロイキンの類似体でありうる。
【0039】
1つの態様では、本発明の合成HBGF類似体は、式I、II、IIIまたはIVのいずれか1つの分子である。HBGFは、ヘパリンに選択的に結合するあらゆる成長因子を含む。例えば、HBGFは、既知FGF(FGF−1からFGF−23まで)、HBBM(ヘパリン結合脳分裂促進剤)、HB−GAF(ヘパリン結合成長関連因子)、HB−EGF(ヘパリン結合EGF様因子)、HB−GAM(ヘパリン結合成長関連分子;プレイオトロフィン、PTN、HARPとしても知られる)、TGF−α(トランスフォーミング成長因子−α)、TGF−β(トランスフォーミング成長因子−β)、VEGF(脈管内皮成長因子)、EGF(表皮成長因子)、IGF−1(インスリン様成長因子−1)、IGF−2(インスリン様成長因子−2)、PDGF(血小板由来成長因子)、RANTES、SDF−1、分泌フリーズルド関連タンパク質−1(SFRP−1)、小型誘導性サイトカインA3(SCYA3)、誘導性サイトカイン・サブファミリーAメンバー20(SCYA20)、誘導性サイトカイン・サブファミリーBメンバー14(SCYB14)、誘導性サイトカイン・サブファミリーDメンバー1(SCYD1)、支質細胞由来因子−1(SDF−1)、トロンボスポンジン1、2、3および4(THBS1−4)、血小板因子4(PF4)、水晶体上皮由来成長因子(LEDGF)、ミディカイン(midikine)(MK)、マクロファージ炎症性タンパク質(MIP−1)、モエシン(MSN)、肝細胞成長因子(HGF;SFとも称される)、胎盤成長因子、IL−1(インターロイキン−1)、IL−2(インターロイキン−2)、IL−3(インターロイキン−3)、IL−6(インターロイキン−6)、IL−7(インターロイキン−7)、IL−10(インターロイキン−10)、IL−12(インターロイキン−12)、IFN−α(インターフェロン−α)、IFN−γ(インターフェロン−γ)、TNF−α(腫瘍壊死因子−α)、SDGF(神経鞘腫由来成長因子)、神経成長因子、軸索成長促進因子2(NEGF2)、ニューロトロフィン、BMP−2(骨形成タンパク質2)、OP−1(骨形成タンパク質1;BMP−7とも称される)、ケラチノサイト成長因子(KGF)、インターフェロン−γ誘導性タンパク質−20、RANTES、およびHIV−tat−相互作用因子、アンフィレグリン(AREG)、脈管関連移行細胞タンパク質(AAMP)、アンギオスタチン、ベータセルリン(BTC)、結合組織成長因子(CTGF)、システイン富脈管形成インデューサー61(CYCR61)、エンドスタチン、フラクタルカイン/ニューロアクチン、または神経膠由来神経栄養因子(GDNF)、GRO2、肝癌由来成長因子(HDGF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)、およびヘパリンに親和性を示す多くの成長因子、サイトカイン、インターロイキンおよびキモカインのいずれかでありうる。
【0040】
これらおよび他のHBGFの多くのアミノ酸配列は、インターネットサイトhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrezで、医薬タンパク質データベースの国立図書館から入手可能である。前述のインターネットサイト上のこれらのHBGFアミノ酸配列は、参照してここに組み込まれる。これらおよび他のHBGFから得られるレセプター結合ドメインのアミノ酸配列を組み込む合成HBGF類似体の使用は、本発明で特に熟考される。
【0041】
本発明の特定の実施態様では、本発明の合成HBGF類似体は、基本的に、式I、II、IIIまたはIVのいずれか1つの分子から構成され、すなわち、式I、II、IIIまたはIVのいずれか1つの分子は、合成HBGF類似体組成物中の主要な活性成分である。
【0042】
他の特定の実施態様では、本発明の合成HBGF類似体は、全体的に、式I、II、IIIまたはIVのいずれか1つの分子から構成され、すなわち、式I、II、IIIまたはIVのいずれか1つの分子は、合成HBGF類似体組成物中の唯一の成分である。
式IからIVまでのヘパリン結合成長因子
式IからIVまでの合成HBGF類似体の領域XおよびZは、アミノ酸残基を含み、そして都合により領域Yは、アミノ酸残基を含む。アミノ酸残基は、Rが水素またはあらゆる有機基でありうる−NHRCO−として定義される。アミノ酸は、D−アミノ酸またはL−アミノ酸でありうる。さらに、アミノ酸は、アミノ酸の炭素鎖の長さによって、α−アミノ酸、β−アミノ酸、γ−アミノ酸、またはδ−アミノ酸などでありうる。
【0043】
本発明の合成HBGF類似体のX、YおよびZ成分領域のアミノ酸は、タンパク質中で天然に見られる20種のアミノ酸、すなわち、アラニン(ala、A)、アルギニン(Arg、R)、アスパラギン(Asn、N)、アスパラギン酸(Asp、D)、システイン(Cys、C)、グルタミン酸(Glu、E)、グルタミン(Gln、Q)、グリシン(Gly、G)、ヒスチジン(His、H)、イソロイシン(Ile、I)、ロイシン(Leu、L)、リシン(Lys、K)、メチオニン(Met、M)、フェニルアラニン(Phe、F)、プロリン(Pro、P)、セリン(Ser、S)、トレオニン(Thr、T)、トリプトファン(Trp、W)、チロシン(Tyr、Y)、およびバリン(Val、V)のいずれかを含むことができる。
【0044】
さらに、本発明の合成HBGF類似体のX、YおよびZ成分領域のアミノ酸は、タンパク質では天然に見られない天然に生じるアミノ酸、例えば、β−アラニン、ベタイン(N,N,N−トリメチルグリシン)、ホモセリン、ホモシステイン、γ−アミノ酪酸、オルニチン、およびシトルリンのいずれかを含みうる。
【0045】
さらに、本発明の合成HBGF類似体のX、YおよびZ成分領域のアミノ酸は、非生物学的アミノ酸のいずれか、すなわち、例えば、自然界で見られない直鎖アミノカルボン酸のような生物系で通常は見られないものを含みうる。自然界で見られない直鎖アミノカルボン酸の例は、6−アミノヘキサン酸、および7−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸などを含む。
【0046】
nが0である場合、式IまたはIIでは、本発明の分子は、単一X領域を含む。nが0である場合、式Iの分子は、その分子が、線状鎖または分岐されたもの(Xは、R1がジアミンアミノ酸残基であるアミド結合を通してのように、R1の側鎖を通してR1に共有結合で結合される)であるように、線状(Xは、ペプチド結合を通すように、R1のN末端を通してR1に共有結合で結合される)でありうる。式IまたはII中で、nが1である場合、その分子は、アミノ酸配列で同一である2つのX領域を含む。したがって、nが1である場合、その分子は、下に記述されるとおり2つのX領域の間の架橋によっても制約されうる分岐鎖であるか、または下に記述されるとおり環状化されうる。本実施態様では、本発明の各HBGF類似体は、2つのHBGFRを結合し、そしてレセプター二量体化を誘導できる。有利にも、二量体化は、すぐに、HBGFRの増強されたレセプター・シグナル発生活性を増強する。
【0047】
式I中、nが0である場合、本発明の合成HBGF類似体のX領域は、アミノ酸R1を通して、領域Yに共有結合で連結される。Yは、都合により、疎水性領域でありうる。同様に、式II中、nが0である場合、本発明の合成HBGF類似体のX領域は、アミノ酸J1を通して、領域Yに共有結合で連結されるが、ただしXが、J1の反応性側鎖を通して連結され、したがって、J1は、ジアミンアミノ酸のような三官能性アミノ酸残基を構築する。ここでも、Yは、都合により疎水性領域でありうる。
【0048】
式I中、nが1である場合、1つのX領域は、アミノ酸R1を通して、領域Yに共有結合で連結され、そしてそれは、次に、三官能性アルファアミノ酸、そして好ましくはジアミンアミノ酸である第二のアミノ酸R2に共有結合で連結される。R1は、R2の1つのアミノ基に連結される。第二のX領域は、ジアミンアミノ酸の第二のアミノ基のようなR2の第二の反応性基通して、R2に共有結合で連結される。その後、R2は、それのカルボキシ末端を通して、合成HBGF類似体のY領域に共有結合で連結される。同様に、式II中、nが1である場合、1つのX領域は、アミノ酸J1の反応性側鎖を通して、共有結合で連結され、そして、次に、第二のアミノ酸J2に共有結合で連結される。J1およびJ2の両方が、三官能性アミノ酸、好ましくはジアミンアミノ酸を構築する。第二のX領域は、ジアミンアミノ酸の第二のアミノ基のようなJ2の第二の反応性基を通して、J2に共有結合で連結される。その後、R2は、それのカルボキシ末端を通して、合成HBGF類似体のY領域に共有結合で連結される。
【0049】
式Iで表されるアミノ酸R1は、上に記述されるアミノ酸のいずれかでありうる。式Iで表されるR2、および式IIで表されるJ1およびJ2は、あらゆる三官能性アミノ酸残基、好ましくは三官能性アルファアミノ酸残基でありうる。好ましい実施態様では、三官能性アミノ酸残基は、例えば、リシンまたはオルニチン、または2個のアミノ基を有する他のあらゆるアミノ酸のようなジアミンアミノ酸である。
【0050】
本発明の合成HBGF類似体の式IからIVまでで表される領域Xは、HBGFRを結合する合成ペプチド鎖である。例えば、領域Xは、HBGFRを結合するあらゆるアミノ酸配列を有し、そしてHBGFのアミノ酸配列の部分と同一であるアミノ酸配列を含みうる。代わりに、Xは、HBGFのアミノ酸配列と同一なものよりむしろ相同なアミノ酸配列を有する。本発明の合成HBGF類似体によって結合される特定のHBGFRは、当初のHBGFの同族レセプターであっても、なくてもよく、すなわち、合成HBGF類似体は、異なるHBGFのレセプターに追加的に、または唯一結合しうる。
【0051】
ここで使用される場合、用語「相同性の」は、配列が配置されるときに、1つまたはそれ以上のアミノ酸位置にあるアミノ酸配列で異なるペプチドに該当する。例えば、2つの相同なペプチドのアミノ酸配列は、5から10個までのアミノ酸の配列されたアミノ酸配列内の1つのアミノ酸残基によってのみ異なる可能性がある。代わりに、10から15個までのアミノ酸の2個の相同なペプチドは、配列された場合、2個以下のアミノ酸残基によって異なる可能性がある。別の代替物では、15から20個まで、もしくはそれ以上のアミノ酸の2個の相同なペプチドは、配列された場合、3個までのアミノ酸残基により異なる可能性がある。長いペプチドについては、相同なペプチドは、2個のペプチド相同体のアミノ酸配列が配列される場合、およそ5%、10%、20%または25%までのアミノ酸残基により異なる可能性がある。
【0052】
式IからIVまでのX領域として特に有用なアミノ酸配列は、わずか1個または2個あるいは非常に少数の位置にある天然の成長因子のアミノ酸配列と異なる天然に生じるHBGFのフラグメントの相同体を含む。このような配列は、好ましくは、当初のアミノ酸が、周知原則;例えば、バリン、ロイシン、イソロイシンまたはプロリンを伴うアラニンのような非極性アミノ酸の置換、または他の同じ酸性または塩基性特徴を有する1つの酸性または塩基性アミノ酸の置換により類似の特徴のアミノ酸と置換される、控えめな変化を含む。
【0053】
別の代替例では、合成HBGF類似体のX領域は、あらゆるHBGFのアミノ酸配列に対して検出可能な相同性を示さないアミノ酸配列を含みうる。同族の成長因子とほとんどアミノ酸配列相同性を示さないか、またはまったく示さず、そして、なおHBGFRを結合する本発明の合成類似体のX領域の成分として有用なペプチドまたは、成長因子類似体は、例えば、ファージ表示による選択を含めた広範な範囲の方法のいずれかにより得ることができる。例として、Sidhuら、「新規結合ペプチドの選択のためのファージ・ディスプレイ」、Methods Enzymol.328巻:333−63頁(2000年)を参照。HBGFRを結合するこのようなペプチドが、あらゆる既知HBGFに相同性をまだ示さない例は、実施例1で後述されるC19ペプチド配列である。
【0054】
本発明の合成HBGF類似体のX領域は、HBGFRを有効に結合するアミノ酸配列を含むあらゆる長さを示す。好ましくは、合成HBGF類似体のX領域は、少なくともおよそ3個のアミノ酸残基の最小の長さを示す。さらに好ましくは、合成HBGF類似体のX領域は、少なくともおよそ6個のアミノ酸残基の最小の長さを示す。最も好ましくは、合成HBGF類似体のX領域は、少なくともおよそ10個のアミノ酸残基の最小の長さを示す。本発明の合成HBGF類似体のX領域は、好ましくは、およそ50個までのアミノ酸残基の最大の長さ、さらに好ましくは、およそ40個までのアミノ酸残基の最大の長さを示し、そして最も好ましくは、およそ30個までのアミノ酸残基の最大の長さを示す。
【0055】
2個のX領域を含む合成HBGF類似体の1つの実施態様では、X領域は、共有結合で架橋される。適切な架橋は、2個のX領域を連結するシステインのS−S架橋により形成されうる。代わりに、架橋は、ランチオニン(チオ−ジアラニン)残基を組み込んで、チオエーテル結合により一緒に共有結合で結合されるアラニン残基で、2つの同一のX鎖を連結させることによって、X領域アミノ酸鎖の同時および並行のペプチド合成の間に都合よく形成されうる。別の方法では、2個のX領域アミノ酸鎖は、ジカルボン酸、例えばスベリン酸(オクタン二酸)などのような架橋剤を導入し、それにより遊離アミノ、ヒドロキシまたはチオール基を有する2個の同一のX領域の間の炭化水素架橋を導入することによって架橋されうる。架橋X領域は、Xの末端アミノ酸が、反応性側鎖または末端基を通して、都合により架橋または他の連結で架橋される場合のような環状ペプチドを構成しうる。
【0056】
本発明の合成HBGF類似体では、1つの好ましい実施態様で、式IからIVまでのY領域は、HBGF類似体を、ポリスチレンまたはポリカプロラクトン表面などに非共有結合で結合させるのに十分に疎水性であるリンカーである。さらに、Y領域は、他の疎水性表面、特に医療用デバイスで使用される材料から形成される疎水性表面に結合しうる。このような表面は、一般的には疎水性表面である。適切な表面の例には、それに限定されないが、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、伸縮ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリエチルビニルアセテート、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(エチレン−コ−酢酸ビニル)、ポリカプロラクトン、ポリラクチド、ポリグリコライドおよび前述のいずれか2つまたはそれより多くの共重合体のような疎水性重合体;2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサンのようなシロキサン;天然および人工ゴム;ガラス;およびステンレス鋼、チタン、プラチナ、およびニチノールを含めた金属が挙げられる。好ましくは、疎水性表面へのHBGF類似体の結合は、酵素連結免疫アッセイまたは生物学的アッセイのような分析法により検出されるのに十分な量のものである。
【0057】
式IからIVまでのY領域は、原子の鎖または鎖を形成する原子の組合わせを含みうる。通常、その鎖は、例えばアミノ酸(例えば、上に列挙されるとおりタンパク質に見られるアミノ酸;オルニチンおよびシトルリンのようなタンパク質中に見られない天然に生じるアミノ酸;またはアミノヘキサン酸のような非天然アミノ酸;または前述のアミノ酸のいずれかの組合わせ)から形成される原子の鎖のような、都合により、酸素、窒素または硫黄原子を含みうる炭素原子の鎖である。
【0058】
式IのY領域の原子の鎖は、R1またはR2に、そしてペプチドZに共有結合で付着される。同様に、式IIのY領域の原子の鎖は、J1またはJ2に、そしてペプチドZに共有結合で付着される。共有結合は、例えば、ペプチド、アミドまたはエステル結合でありうる。好ましくは、Y領域は、最小約9個の原子の鎖を含む。さらに好ましくは、Y領域は、最小約12個の原子の鎖を含む。最も好ましくは、Y領域は、最小約15個の原子の鎖を含む。例えば、Y領域は、少なくとも4個、少なくとも5個または少なくとも6個のアミノ酸の鎖から形成されうる。代わりに、Y領域は、少なくとも1個、少なくとも2個、または少なくとも3個のアミノヘキサン酸残基の鎖から形成されうる。
【0059】
好ましくは、Y領域は、最大約50個の原子の鎖を含む。さらに好ましくは、Y領域は、最大約45個の原子の鎖を含む。最も好ましくは、Y領域は、最大約35個の原子の鎖を含む。例えば、Y領域は、約12個まで、約15個まで、または約17個までのアミノ酸の鎖から形成されうる。
【0060】
式IまたはIIのY領域のアミノ酸配列は、好ましくは、人工配列であり、すなわち、HBGFの天然のリガンドに見られる4個またはそれ以上のアミノ酸残基のアミノ酸配列をなんら含まない。
【0061】
特定の実施態様では、Y領域は、疎水性アミノ酸残基、または疎水性アミノ酸残基の鎖を含む。例えば、Y領域は、1個、2個、3個またはそれ以上のアミノヘキサン酸残基のような1個またはそれ以上のアミノヘキサン酸残基を含みうる。
【0062】
別の特定の実施態様では、式IまたはIIの分子のY領域は、1個と約20個の炭素原子の間にある分岐または未分岐の飽和または不飽和アルキル鎖を含みうる。さらに別の実施態様では、Y領域は、例えば、エチレングリコール残基のような疎水性残基の鎖を含むことができる。例えば、Y領域は、少なくとも約3個、または少なくとも約4個、または少なくとも約5個のエチレングリコール残基を含みうる。代わりに、Y領域は、約12個まで、約15個まで、または約17個までのエチレングリコール残基を含みうる。別の代替的実施態様では、Y領域は、アミノ酸疎水性残基の組合わせを含みうる。
【0063】
式IまたはIIの分子のZ領域は、ヘパリン結合領域であり、そしてVerrecchioら、J.Biol.Chem.275巻:7701頁(2000年)に記述されるとおり1つまたはそれ以上のヘパリン結合モチーフBBxBまたはBBBxxBを含みうる。代わりに、Z領域は、BBxBおよびBBBxxBモチーフ(Bは、リシン、アルギニン、またはヒスチジンを表し、そしてxは、天然に生じるか、または天然に生じないアミノ酸を表す)の両方を含みうる。例えば、ヘパリン結合モチーフは、リシンまたはアルギニンから各々独立に選択されるとおり最初の3個のアミノ酸、続いてあらゆる2個のアミノ酸およびリシンまたはアルギニンである6番目のアミノ酸を明記する配列[KR][KR][KR]X(2)[KR](配列番号:1)によって示されうる。
【0064】
ヘパリン結合モチーフの数は、重要ではない。例えば、Z領域は、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個または少なくとも5個のヘパリン結合モチーフを含みうる。代わりに、Z領域は、最大約10個までのヘパリン結合モチーフを含みうる。別の代替的実施態様では、Z領域は、少なくとも4個、少なくとも6個または少なくとも8個のアミノ酸残基を含む。さらに、Z領域は、約20個まで、約25個まで、または約30個までのアミノ酸残基を含みうる。部分的に、ヘパリンに関するZ領域の結合活性は、選択される特定のヘパリン結合モチーフ、およびZにおけるこのようなモチーフの数によって決定される。したがって、特定の用途について、このようなモチーフの選択および数の両方は、Z領域の最適なヘパリン結合を提供するために変化されうる。
【0065】
好ましい実施態様では、Z領域のアミノ酸配列は、RKRKLERIAR(配列番号:2)である。別の実施態様では、Z領域のアミノ酸配列は、RKRKLGRIAR(配列番号:3)である。さらに別の実施態様では、Z領域のアミノ酸配列は、RKRKLWRARA(配列番号:4)である。さらに別の実施態様では、Z領域のアミノ酸配列は、RKRKLERIARC(配列番号:5)である。末端システイン残基の存在は、都合により、Z領域に、フルオロクロム、ラジオアイソトープおよび他の検出可能なマーカーのような検出試薬を含めた他の分子を連結させる機会、並びに毒素、免疫原などを連結する機会をもたらす。
【0066】
既知ヘパリン結合ドメインにほとんど、またはまったく配列相同性を保持しないヘパリン結合ドメインも、本発明で達成される。ここで使用される場合、用語「ヘパリン結合」は、−NHSO3-およびスルフェート修飾多糖、ヘパリンに対する結合、および関連修飾多糖、ヘパランに対する結合をも意味する。
【0067】
本発明の合成HBGF類似体のZ領域は、低塩濃度、約0.15MまでのNaCl、都合により約0.48MまでのNaClでのヘパリンに対する結合の特性を付与して、ヘパリンと、因子類似体のZ領域の間の複合体を形成する。複合体を、1M NaCl中に解離させて、ヘパリン複合体から合成HBGF類似体を放出することができる。
【0068】
Z領域は、非シグナル発生ペプチドである。したがって、単独で使用される場合、Z領域は、HBGFのレセプターに結合されうるヘパリンに結合するが、しかしZ領域ペプチド単独の結合は、レセプターによるシグナル発生を開始、あるいは阻止しない。
【0069】
Z領域のC末端は、封鎖されるか、または遊離型でありうる。例えば、Z領域のC末端は、末端アミノ酸の遊離カルキシル基でありうるか、または代わりに、Z領域のC末端は、例えば、アミド基のような封鎖カルボキシル基でありうる。好ましい実施態様では、Z領域のC末端は、図1および2で示されるとおりアミド化アルギニンである。
【0070】
ここにおよび他の場所で使用される場合、以下の用語は、示された意味を示す。
【0071】
用語「アルケン」は、1つまたはそれ以上の炭素―炭素結合を含有する不飽和炭化水素を含む。このようなアルケン基の例は、エチレン、プロペンなどを含む。
【0072】
用語「アルケニル」は、2から6個までの炭素原子の線状一価炭化水素ラジカル、または少なくとも1個の二重結合を含有する3から6個までの炭素原子の分岐一価炭化水素残基を含む。その例は、エチニル、2−プロペニルなどを含む。
【0073】
ここで特定される「アルキル」基は、直鎖または分岐形態のいずれかにある指示された長さのアルキルラジカルのものを含む。このようなアルキルラジカルの例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、ターシャリー−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシルなどを含む。
【0074】
用語「アリール」は、6から12個までの環原子の、そして都合によりアルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルキチオ、ハロ、ニトロ、アシル、シアノ、アミノ、モノ置換アミノ、二置換アミノ、ヒドロキシ、カルボキシ、またはアルコキシ−カルボニルから選択される1個またはそれ以上の置換基で独立に置換された一価または二環芳香族炭化水素ラジカルを含む。アリール基の例は、フェニル、ビフェニル、ナフチル、1−ナフチル、および2−ナフチル、それらの誘導体などを含む。
【0075】
用語「アラルキル」は、ラジカル−RaRb(Raは、アルキレン(二価アルキル)基であり、そしてRbは、上に定義されるとおりのアリール基である)を含む。アラルキル基の例は、ベンジル、フェニルエチル、3−(3−クロロフェニル)−2−メチルペンチルなどを含む。用語「脂肪族」は、例えば、アルカン、アルケン、アルキン、およびそれらの誘導体のような炭化水素鎖を有する化合物を含む。
【0076】
用語「アシル」は、基RCO−(Rは、有機基である)を含む。例は、アセチル基CH3CO−である。
【0077】
ペプチドまたは脂肪族部分は、上に定義されるとおりのアルキルまたは置換アルキル基が、1個またはそれ以上のカルボニル{−(C=O)−}基を通して結合される場合、「アシル化」される。最も通常には、ペプチドは、N末端でアシル化される。
【0078】
「アミド」は、カルボニル基(−CO.NH2)に付着した三価窒素を有する化合物を含む。
【0079】
「アミン」は、アミノ基(−NH2)を含有する化合物を含む。
FGF合成類似体
別の特定の態様では、本発明は、合成FGFペプチド類似体を提供する。Xが、FGF類似体である、式IからIVまでのいずれかによって表される合成FGF類似体は、23のFGF−1からFGF−23まですべてを含めた既知FGFのいずれかのようなすべてのFGFでありうるFGFの類似体である。
【0080】
式IからIVまでの分子のX領域は、例えばFGF−2またはFGF−7のようなFGFに見られるアミノ酸配列を含みうる。代わりに、X領域は、分子で結合されるFGFRの天然リガンドに見られない配列を含みうる。
【0081】
式IからIVまでのいずれかの合成FGFペプチド類似体のY領域は、必ずしも疎水性でなく、したがって、存在する場合、極性、塩基性、酸性、親水性または疎水性でありうる。したがって、合成FGFペプチド類似体のY領域のアミノ酸残基は、あらゆるアミノ酸、または極性、イオン性、疎水性、または親水性基を含みうる。
【0082】
合成FGFペプチド類似体のX領域は、繊維芽細胞成長因子に見られるアミノ酸配列に100%同一であるアミノ酸配列か、または繊維芽細胞成長因子のアミノ酸配列に相同なアミノ酸配列を含みうる。例えば、X領域は、繊維芽細胞成長因子から得られるアミノ酸配列に少なくとも約50%、少なくとも75%、または少なくとも約90%の相同性であるアミノ酸配列を含みうる。繊維芽細胞成長因子は、既知、またはまだ同定されていない繊維芽細胞成長因子の全てを含めたあらゆる繊維芽成長因子でありうる。
【0083】
特定の実施態様では、本発明の合成FGF類似体は、HBGFRのアゴニストである。HBGFRに結合される場合、合成HBGF類似体は、HBGFRによりシグナルを始める。
【0084】
別の特定の実施態様では、本発明の合成FGF類似体は、HBGFRのアンタゴニストである。HBGFRに結合される場合、合成HBGF類似体は、HBGFRによりシグナル発生を阻止する。
【0085】
本発明の別の特定の実施態様では、合成FGF類似体は、FGF−2(塩基性FGF、またはbFGFとしても知られている)の類似体である。本発明の別の特定の実施態様では、FGFレセプターに対する合成FGF類似体の結合は、FGFレセプターによりシグナルを始める。別の特定の実施態様では、FGFレセプターに対する合成FGF類似体の結合は、FGFレセプターによりシグナル発生を阻止する。
【0086】
さらに別の特定の実施態様では、本発明は、FGFレセプター結合ドメインがヘパリン結合ドメインに疎水性リンカーを通して結合されるものであるFGF−2の合成FGF類似体を提供する。別の特定の実施態様では、本発明は、X領域のアミノ酸配列がFGF−2から得られるYRSRKYSSWYVALKR(配列番号:6)であるFGF−2の合成FGF類似体を提供する。さらに別の特定の実施態様では、本発明は、X領域のアミノ酸配列がNRFHSWDCIKTWASDTFVLVCYDDGSEA(配列番号:7)である合成FGF類似体を提供する。
【0087】
さらに別の特定の実施態様では、本発明は、X領域がYISKKHAEKNWFVGLKK(配列番号:8)であるFGF−1の合成FGF類似体を提供する。この配列は、FGF−1のベータ9およびベータ10ループを繋げるアミノ酸から誘導される。さらに別の特定の実施態様では、X領域が、HIQLQLSASEVGEVY(配列番号:9)であり、そしてFGF−1のβ−4およびβ−5領域から誘導されるアミノ酸に対応するFGF−1類似体を提供する。
【0088】
さらに別の特定の実施態様では、本発明は、X領域がYASAKWTHNGGEMFVALNQK(配列番号:10)であるFGF−7の合成FGF類似体を提供する。FGF−7の合成FGF類似体のさらに別の実施態様では、X領域は、アミノ酸配列YNIMEIRTVAVGIVA(配列番号:11)である。
【0089】
下の表1は、本発明の2つの合成FGF類似体F2A3およびF2A4の作用を、組換えFGF−2のものと比較する。成長研究では、使用された特異的セルラインは、マウスC3H10T1/2繊維芽細胞、A7R5マウス平滑筋細胞、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)、ウシ大動脈内皮細胞(BAE)、ラット微細血管内皮細胞(RMEC)、およびCG4神経膠腫細胞を含む。平滑筋アクチンおよびTGF−βRII(成長因子−ベータをトランスフォーミングするレセプター)における変化を、免疫化学により監視した。フルオロゲンとして2,4−ジアミノフルオレッセンを使用した蛍光顕微鏡法により、一酸化窒素(NO)生成を監視した。ラット筋肉における被覆縫合糸の導入に続いて、脈管形成を監視した。唾液生成を監視することによって、唾液腺刺激を測定した。ラット皮膚の全厚みの外傷で、外傷治癒を監視した。表1および以降で、「N.D.」は、測定されないことを意味する。
【0090】
【表1】
【0091】
VEGF合成類似体
別の特定の態様では、本発明は、合成VEGFペプチド類似体を提供する。示される合成VEGF類似体は、1つの実施態様では、X領域のアミノ酸配列がAPMAEGGGQNHHEVVKFMDV(配列番号:12)であるVEGF類似体を含む。別の実施態様では、X領域のアミノ酸配列がGATWLPPNPTK(配列番号:13)である合成VEGFペプチド類似体を提供する。さらに別の実施態様では、X領域のアミノ酸配列がNFLLSWVHWSLALLLYLHHA(配列番号:14)である合成VEGFペプチド類似体を提供する。
【0092】
下の表2は、本発明の2つの合成VEGFペプチド類似体VA01およびVA02の作用を、組換えVEGFのものと比較する。MAPキナーゼについては、ウシ大動脈内皮(BAE)細胞を、30または60分間、50ng/mLのVEGF、VA01またはVA02で刺激した。モノクローナル抗ホスホ44/42MAPキナーゼ抗体(Thr202およびTyr204)を用いたウエスタン・ブロッティングにより、細胞溶解液を分析し、そしてVEGF、VA01またはVA02を用いた刺激に続いて、対照に比べてERK−1およびERK−2のリン酸化が増大したことを検出した。成長については、VEGF、VA01またはVA02を用いた刺激に続いて、BAE細胞の相対的細胞数における増加が見出されたのに対して、平滑筋セルラインA7R5では、類似体の作用に特異性を示す成長刺激は見られなかった。
【0093】
【表2】
【0094】
BMP合成類似体
別の特定の態様では、本発明は、合成BMPペプチド類似体を提供する。合成骨形成タンパク質類似体は、X領域がアミノ酸配列LYVDFSDVGWNDW(配列番号:15)、AISMLYLDENEKVVL(配列番号:16)、ISMLYLDENEKVVLKNY(配列番号:17)、EKVVLKNYQDMVVEG(配列番号:18)、LVVKENEDLYLMSIAC(配列番号:19)、AFYCHGECPFPLADHL(配列番号:20)、またはPFPLADHLNSTNHAIVQTLVNSV(配列番号:21)である実施態様を含む。
【0095】
下の表3は、1つのBMP類似体B2A2の生化学的相互作用、およびC2C12細胞を使用して調節を監視したアルカリ性ホスファターゼの調節を要約する。
【0096】
【表3】
【0097】
ヘパリン結合成長因子類似体を合成する方法
本発明の類似体の合成は、当業界で周知である多様な化学的方法のいずれかにより達成されうる。このような方法は、ベンチスケールの固相合成および市販で入手可能な多くのペプチド合成機のいずれか1つでの自動ペプチド合成を含む。好ましくは、合成機は、99パーセントより大きな周期当たりのカップリング効率を示す。
【0098】
段階合成によるか、または類似の周知技術により結合されうる一連のフラグメントの合成により、本発明の類似体を生成しうる。例えば、Nyfeler、「Peptide synthesis via fragment condensation」、Methods Mol Biol 35巻:303−16(1994年);およびMerrifield、「Concept and early development of solid−phase peptide synthesis」,Methods in Enzymol 289巻:3−13頁(1997年)を参照。これらの方法は、個別のペプチドの調製のために日常的に使用される。そのX、YおよびZ成分を構築するペプチドのような成分部で本発明の類似体を構築し、そしてその後、このような成分部を繋げて、類似体を構築することは可能である。例えば、DawsonおよびKent、「Synthesis of native proteins by chemical ligation」,Annu.Rev.Biochem.69巻:923−960頁(2000年);およびEomら、「Tandem ligation of multipartite peptides with cell−permeable activity」、J.Am.Chem.Soc.125巻:73−82頁(2003年)を参照。
【0099】
有利には、本発明の式IからIVまでの類似体が2つの同一のX領域アミノ酸配列を含む場合には、これらの同一のX領域ペプチドの合成は、平行に行われうる。この方法により、添加の各々のサイクルは、X領域ペプチドの両方にアミノ酸を加え、そしてこれらの分岐分子の合成を大いに促進する。
【0100】
これらの方法の順化により、HBGFRに対する結合のような所望の特性についてスクリーニングするために使用されうるペプチドライブラリーを作製しうる。例えば、Fox、「Multiple peptide synthesis」、Mol.Biotechnol.3巻:249−58頁(1995年);およびWadaおよびTregear、「Solid phase peptide synthesis:recent advances and applications」,Austral.Biotechnol.3巻:332−6頁(1993年)を参照。
【0101】
特定の実施態様では、本発明の合成HBGF類似体は、HBGFRのアゴニストである。HBGFRに結合される場合、合成HBGF類似体は、HBGFRによりシグナルを始める。
【0102】
別の特定の実施態様では、本発明の合成HBGF類似体は、HBGFRのアンタゴニストである。HBGFRに結合される場合、合成HBGF類似体は、HBGFRによりシグナル発生を阻止する。
【0103】
特定の態様では、本発明は、細胞を、式IからIVまでによる合成HBGF類似体の有効量と接触させることによって、細胞中での成長因子レセプターシグナル発生を刺激する方法を提供する。有効量は、当業者によって容易に決定されうる。シグナル発生は、細胞からのサイトカイン放出、細胞の増殖または分化の刺激または阻害、細胞の化学走性、哺乳類の免疫系の刺激または阻害を生じうる。
【0104】
本発明のHBGFの使用の方法
本発明のHBGF類似体は、例えば、種々の疾患の予防または治療のための溶解性薬剤としての投与のように、溶解性予防薬または治療用医薬製剤としてを含めて、例えば癌療法および放射線防御での使用を含めて、多くの点で有用である生物学的に活性な分子の費用効率の高い、そして潜在的に制限のない源を提供する。
【0105】
本発明の合成HBGF類似体は、例えば細胞の成長および増殖、または外傷の治癒を刺激するために、または例えば縫合糸、移植片および生物学上の応答を促進する医療機器のような医療用デバイスの被覆剤のための生物学的活性剤としても有用である。
【0106】
1つの態様では、本発明は、有害線量の放射線にさらされた哺乳類を処置する方法を提供する。その方法は、FGF類似体である本発明の合成HBGF類似体の有効量を、哺乳類に投与することを含む。その処置は、粘膜炎、胃腸症候群、または放射線の照射から生じる可能性のあるような放射線壊死の防止または処置に特に有用である。HBGF類似体は、非経口で、経口で、または局所に投与されうる。代わりに、HBGF類似体は、例えば類似体被覆医療用デバイスで運動領域に送出されうる。関連の実施態様では、本発明は、哺乳類に化学療法剤の毒性を改善するために、1用量の化学療法剤を投与された哺乳類を処置する方法を提供する。上述の方法の特定の実施態様では、哺乳類は、ヒトである。本発明の別の特定の実施態様では、HBGF類似体は、FGF−2類似体またはFGF−7類似体である。
【0107】
ここに使用される場合、用語「医療用デバイス」は、生物、好ましくは哺乳類、特にヒトでの臓器、組織、血液または他の体液との接触で、1つまたはそれ以上の表面を有するデバイスを意味する。医療用デバイスは、例えば血中酸素発生装置、血液ポンプ、血液センサー、血液を運ぶために使用される管、および患者に戻される血液に接触するようなもののような手術で使用するための体外デバイスを含む。その用語は、血管移植片、ステント、ペースメーカーリード、心臓弁、および血管に、または心臓に移植されるようなもののような、ヒトまたは動物の体での血液接触で移植される内部プロテーゼ(内部人工器官)をも含みうる。その用語は、さらに、監視または修復の目的のための血管または心臓に入れられるカテーテル、ガイド線のような、一過性血管内用途のためのデバイスを含みうる。その用語は、さらに、神経電極、筋肉電極、移植可能なパルス波発生装置、移植可能な薬剤ポンプ、および除細動器を含みうる。さらに、用語の医療用デバイスは、縫合糸、移植片材料、外傷被覆材、神経ガイド、骨ワックス、動脈瘤コイル、塞栓形成粒子、微細ビーズ、歯科移植片、骨プロテーゼ、組織足場、人工関節または徐放性薬剤送出デバイスを含みうる。
【0108】
医療用デバイスの表面は、例えば、ステンレス鋼、チタン、プラチナ、タングステン、セラミックス、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、伸縮ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリカプロラクトン、ポリラクチド、ポリグリコライド、ポリシロキサン(2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサンのような)、天然ゴム、または人工ゴム、またはブロック重合体または共重合体のような、医療用デバイスに使用するのに適切な一般に使用される材料のいずれかから形成されうる。
【0109】
医療用デバイスの表面上に生体分子を被覆する方法が知られている。例えば、Hendriksらに対する米国特許第5,866,113号を参照し、その明細書は、参照してここに組み込まれる。Tsangらは、米国特許第5,955,588号で、非トロンボゲン形成被覆剤組成物、およびそれを医療用デバイスに使用する方法を教示し、そして参照してここに組み込まれる。Zamoraらは、米国特許第6,342,591号で、細胞接着組成物を調節する医療用デバイスのための両親媒性被覆剤を教示し、そして参照してここに組み込まれる。
【0110】
最新の発明から離れて教示する他の被覆剤発明は、以下のものを含む:Ottersbachらは、米国特許第6,248,811号で、支持体の表面上に被覆剤を共有結合で固定する生物活性被覆剤を教示し、したがって、最新の発明から離れて教示する。Raghebらは、米国特許第6,299,604号で、生物活性材料が、被覆層の少なくとも一部に据えられ、そして多孔性層を通して拡散する構造物の一方の表面に据えられる被覆層を記述する。同様に、Chudzikらは、米国特許第6,344,035号で、高分子成分の混合物と組合せて生物活性剤を含む生物活性剤放出被覆剤を記述する。Spragueは、米国特許第6,140,127号で、内皮細胞接着剤5アミノ酸ペプチドで、血管内ステントを被覆する方法を記述する。この被覆剤は、好ましくは、プラズマグロー放電を使用して血管内ステントを活性化させ、別の層を塗布し、ピリジンおよびトレシルクロリドを含有するトレシル化溶液を塗布し、そして配列グリシン−アルギニン−グルタミン酸−アスパラギン酸−バリンを有する5個のアミノ酸ペプチドを塗布して、その表面にペプチドの化学的接合を生じることによって行われる。Steberらは、米国特許第5,801,141号で、コア混合物の総重量の重量ベースで、約20%から約80%までの成長因子、生物学上活性なフラグメントまたは誘導体;約10%から約75%までの脂質、ワックスまたはそれの混合物;0%から約25%までの緩衝液、塩、糖またはその混合物;および0%から約15%までのフィラーを包含する均質なコア混合物の1から3つまでの層を含有する小型化され、ぎざぎざを刻まれ、そして部分的に被覆された組成物を包含する必然的に均一で、そして継続量の生物学上活性なタンパク質、ペプチドまたはポリペプチドの非経口投与のための移植片を教示する。
【0111】
1つの実施態様では、本発明は、(i)式IからIVまでの合成HBGF類似体でその表面に被覆された医療用デバイスを供し、その合成HBGF類似体は、非共有結合により医療用デバイスの表面に結合され;そして(ii)哺乳類の表面上に医療用デバイスを置くか、またはそれに医療用デバイスを移植することを含む、哺乳類に活性ペプチドを送出方法を提供する。
【0112】
上の方法の特別の実施態様では、非共有結合は、合成HBGF類似体のヘパリン結合ドメインと、医療用デバイスの表面に結合したヘパリン含有化合物との間の結合である。医療用デバイスの表面に結合したヘパリン含有化合物は、例えばベンジル−ビス(ジメチルシリルメチル)オキシカルバモイルヘパリンのようなあらゆるヘパリン含有化合物でありうる。
【0113】
上の方法の別の特定の実施態様では、医療用デバイスは、式IからIVまでの合成HBGF類似体で被覆される前に、ヘパリン含有化合物で予め被覆されない。
【0114】
ヘパリン結合成長因子
繊維芽細胞成長因子FGFは、間葉、上皮、および神経外胚葉の細胞型の正常な成長および分化を制御する関連タンパク質のファミリーを構築する。相同体は、広範で多様な種で見られた。FGFは、ヘパリンに非常に高い親和性を示し、したがって、ヘパリン結合成長因子(HBGF)とも称される。ここで使用される場合、用語「HBGF」は、全てのFGFを含む。
【0115】
2つの主要な型のFGFが知られている。第一の型のFGFは、当初、脳組織から単離された。それは、3T3細胞のようなマウス繊維芽細胞についてのその増殖−増強活性により同定された。それの塩基性plにより、その因子は、塩基性FGF(bFGF、またはHBGF−2、ヘパリン結合成長因子−2)と名づけられ、そして現在、一般に、FGF−2と称される。これは、FGFファミリーのプロトタイプである。
【0116】
当初脳組織から単離された別の型のFGFも、酸性FGF(HBGF−1としても知られるaFGF、ヘパリン結合成長因子−1またはHBGF−α、ヘパリン結合成長因子−α)であり、現在、一般に、FGF−1と称される。それは、筋芽細胞についてのそれの増殖−増強活性により同定された。
【0117】
同じファミリーに属する他の繊維芽細胞成長因子は、FGF−3(またはHBGF−3、当初はint−2と称されたヘパリン結合成長因子−3;Fekete、「Trends in Neuroscl.」23巻:332頁(2000年)を参照)、FGF−4(HBGF−4、当初は癌遺伝子hstの産物として識別されたヘパリン結合成長因子−4;Sakamotoら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA91巻:12368−72)、およびFGF−5(当初はHBGF−5と称された、Batesら、「Biosynthesis of human fibroblast growth factor 5」、Mol.Cell. Biol.11巻1840−1845頁(1991年));BurgessおよびMaciag、「The heparin−binding(fibroblast)growth factor family of proteins」,Ann.Rev.Biochem.58巻:575−606頁(1989年);およびZhanら、「The human FGF−5 oncogene encodes a novel protein related to fibroblast growth factors」,Mol.Cell. Biol.8巻:3487−3495頁(1988年)を参照)を含む。
【0118】
FGF−6は、HBGF−6としても知られており、そしてしばしば、hst−2または癌遺伝子hst−1関連成長因子と称され、Iidaら、「Human hst−2(FGF−6) oncogene:cDNA cloning and characterization」,Oncogene 7巻:303−9頁(1992年);およびMaricsら、「Characterization of the HST−related FGF−6 gene,a new member of the fibroblast growth factor gene family」、Oncogene 4巻:335−40頁(1989年)を参照。
【0119】
FGF−7またはK−FGFは、KGFあるいはケラチノサイト成長因子(Aaronsonら、Keratinocyte growth factor.「A fibroblast growth factor family member with unusual target cell specificity」,Annals NY Acad.Sci.638巻:62−77頁(1991年);Finchら、「Human KGF is FGF−related with properties of a paracrine effector of epithelial cell growth」、Science 245巻:752−5頁(1989年);Marcheseら、「Human keratinocyte growth factor activity on proliferation and differentiation of human keratinocytes:differentiation response distinguishes KGF from EGF family」,J.Cellular Physiol. 144巻:326−32頁(1990年)を参照)としても知られている。
【0120】
FGF−8は、アンドロゲン誘発成長因子AIGFと同一であると見なされ、そして十分に研究されている(Bluntら、「Overlapping expression and redundant activation of mesenchymal fibroblast growth factor(FGF) receptors by alternatively spliced FGF−8 ligants.」、J.Biol.Chem.272巻:3733−8頁(1997年);Dubrulleら、「FGF signaling controls somite boundary position and regulates segmentation clock control of spatiotemporal Hox gene activation.」、Cell 106巻:219−232頁(2001年);Gemelら、「Structure and sequence of human FGF8.」、Genomics 35巻:253−257頁(1996年);Tanakaら、「A novel isoform of human fibroblast growth factor 8 is induced by androgens and associated with progression of esophageal carcinoma.」、Dig.Dis.Sci.46巻:1016−21頁(2001年)を参照)。
【0121】
FGF−9は、当初、神経膠活性化因子、またはHBGF−9と称された。Miyamotoら、「Molecular cloning of a novel cytokine cDNA encoding the ninth member of the fibroblast growth factor family, which has a unique secretion pattern.」,Mol.Cell.Biol.13巻:4251−9頁(1993年);およびNaruoら、「Novel secretory heparin−binding factors from human glioma cells(glia−activating factors) involved in glial cell growth.」、J.Biol.Chem.268巻:2857−64頁(1993年)を参照。
【0122】
FGF−10は、KGF−2、ケラチノサイト成長因子−2とも称される(Kokら、「Cloning and characterization of a cDNA encoding a novel fibroblast growth factor preferentially expressed in human heart」、Biochem.Biophys.Res.Comm.256巻:717−721頁(1999年)を参照)。
【0123】
数種のFGF関連因子は、繊維芽細胞成長因子相同体因子(FHF)と見なされてきて、そしてFGF−11(FHF−3)、FGF−12(FHF−1)、FGF−13(FGF−2、Greeneら、「identification and characterization of a novel member of the fibroblast growth factor family」、Eur.J.Neurosci.10巻:1911−1925頁(1998年))、およびFGF−14(FHF−4)とも称される。
【0124】
FGF−15は、開発中の神経系で発現され、そして転写因子E2A−Pbx1により調節される遺伝子と同定された。McWhirterら、「A novel fibroblast growth factor gene expressed in the developing nervous system is a downstream target of the chimeric homeodomain oncoprotein E2A−Pbx1」、Development 124巻:3221−3232頁(1997年)。
【0125】
FGF−16は、207アミノ酸のFGFを発現する相同性基本のポリメラーゼ連鎖反応によりラット心臓からcDNAクローンとして単離された。FGF−16は、FGF−9に73%同一である。Miyakeら、「Structure and expression of a novel member, FGF−16, of the fibroblast growth factor family」,Biochem.Biophys.Res.Commun.243巻:148−152頁(1988年)。
【0126】
FGF−17をコード化するcDNAを、ラット胚から単離した。そしてそれは、216アミノ酸のタンパク質をコード化する。3T3繊維芽細胞中で発現されたとき、マウスFGF−17は、トランスフォーミングである。胚形成の間、FGF−17は、前頭での、中脳−菱脳接合部、発達中の骨格、および発達中の動脈での特異的部位で発現される。Hoshikawaら、「Structure and expression of a novel fibroblast growth factor,FGF−17,preferentially expressed in the embryonic brain」,Biochem.Biophys.Res.Commun.244巻:187−191頁(1998年);およびXuら、「Genomic structure,mapping,activity and expression of fibroblast growth factor 17」、Mechanisms of Development 83巻:165−178頁(1999年)を参照。
【0127】
FGF−18をコード化するcDNAを、207アミノ酸のタンパク質をコード化するラット胚から単離した。FGF−18は、グリコシル化タンパク質であり、そしてFGF−8およびFGF−17に最も類似する。組換え体マウスFGF−18の注入は、上皮および間葉器官の両方の組織で、特に肝臓および小腸で増殖を誘発することが示された。組換え体ラットFGF−18は、PC12細胞での軸索生長を誘発する。組換え体マウスFGF−18タンパク質は、硫酸ヘパリン依存性手段でのインビトロでNIH3T3繊維芽細胞中での増殖を刺激する。全般的情報として、Huら、「FGF−18,a novel member of the fibroblast growth factor family,stimulates heparic and intestinal proliferation」、Mol.Cell.Biol.18巻:6063−6074頁(1998年);およびOhbayashiら、「Structure and expression of the mRNA encoding a novel fibroblast growth factor,FGF−18」、J.Biol.Chem.273巻:18161−18164頁(1998年)を参照。
【0128】
FGF−19は、遠く離れてFGFファミリーの他のメンバーと関連している。FGF−19mRNAは、胎児の軟骨、皮膚および網膜、並びに成体の胆嚢を含む数種の組織で発現される。それは、結腸腺癌セルラインで過剰発現される。FGF−19は、FGF−4レセプターについての高い親和性のあるヘパリン依存性リガンドである。Xieら、「FGF−19,a novel fibroblast growth factor with unique specificity for FGFR4」、Cytokine 11巻:729−735頁(1999年)を参照。
【0129】
FGF−20は、正常な脳、特に小脳で、そしてある種の癌セルラインで発現される。FGF−20mRNAは、黒質部緻密層で優先的に発現される。組換え体FGF−20タンパク質は、多様な細胞型でのDNA合成を誘発し、そして複数FGFレセプターにより認識される。FGF−20は、癌遺伝子のように機能し、そして3T3繊維芽細胞セルラインで発現される場合、形質転換された表現型を引き起こす。これらの形質転換された細胞は、ヌードマウスで腫瘍形成性である。Jeffersら、「Identification of a novel human fibroblast growth factor and characterization of its role in oncogenesis」,Cancer Res.61巻:3131−8頁(2001年);およびOhmachiら、「FGF−20,a novel neurotrophic factor,preferantially expressed in the substantia nigra pars compacta of rat brain」,Biochem.Biophys.Res.Commun.277巻:355−60頁(2000年)を参照。
【0130】
FGF−21を、マウス胚から単離させた。FGF−21mRNAは、肝臓で最も豊富で、そして胸腺中で低濃度である。FGF−21は、ヒトFGF−19に最も類似している。Nishimuraら、「Identification of a novel FGF、FGF−21、preferentially expressed in the liver」、Biochim.Biophys.Acta.1492巻:203−6頁(2000年)を参照。
【0131】
FGF−22をコード化するcDNA(170アミノ酸)を、ヒト胎盤から単離した。FGF−22は、FGF−10およびFGF−7に最も類似している。マウスFGF−22mRNAは、皮膚で優先的に発現される。皮膚中のFGF−22mRNAは、毛包の内毛根鞘で優先的に見られる。Nakatakeら、「Identification of a novel fibroblast growth factor,FGF−22,preferentially expressed in the inner root sheath of the hair follicle」、Biochim.Biophys.Acta1517巻:460−3頁(2001年)を参照。
【0132】
FGF−23は、FGF−21およびFGF−19に最も類似している。ヒトFGF−23遺伝子は、ヒトFGF−6遺伝子に連結した染色体12p13に位置づけられる。FGF−23mRNAは、主に脳(優先的に、外側腹側核で)で、そして低濃度で胸腺で発現される。FGF−23遺伝子でのミスセンス突然変異は、常染色体優性低ホスファターゼ血症性くる病を示す患者で見られた。FGF23の過剰産生は、腫瘍誘導骨軟化症、腎性リン酸塩るいそうにより引起される低リン酸塩血症によって特徴づけられる腫瘍随伴性疾患を引起す。Yamashitaら、「Identification of a novel fibroblast growth factor,FGF−23,preferentially expressed in the ventrolateral thalamic nucleus of the brain」、Biochem.Biophys.Res.Commun.277巻:494−8頁(2000年);およびShimadaら、「Cloning and characterization of FGF23 as a causative factor of tumor−induced osteomalacia」、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)98巻:6500−5頁(2001年)を参照。
【0133】
HBBF(ヘパリン結合脳分裂促進剤)は、当初、数種の脳組織からヘパリン結合タンパク質として単離され、そしてヘパリン結合軸索促進因子と同一である。Huberら、「Amino−terminal sequences of a novel heparin−binding protein with mitogenic activity for endothelial cells from human bovine,rat,and chick brain: high interspecies homology」、Neurochem.Res. 15巻:435−439頁(1990年)を参照。
【0134】
HB−GAF(ヘパリン結合成長関連因子)は、HBNF(ヘパリン結合軸索促進因子)と同一の神経作用性および有糸分裂性因子である。Kuoら、「Characterization of heparin−binding growth−associated factor receptor in NIH 3T3 cells」、Biochem.Biophys.Res.Commun.182巻:188−194頁(1992年)を参照。
【0135】
HB−EGF(ヘパリン結合EGF様因子)は、セルラインU937の調整培地中に見られ、そしてマクロファージおよびヒト血管の平滑筋細胞によっても合成される。HB−EGFは、86アミノ酸の単量体ヘパリン結合O−グリコシル化タンパク質であり、そして208アミノ酸の前駆体から加工される。数種の切断形態のHB−EFGは、記述されている。HB−EGFは、内皮細胞についてではなく、NIH3T3細胞、ケラチノサイトおよび平滑筋細胞についての有望な分裂促進剤である。平滑筋細胞における有糸分裂活性は、EGFについてよりいっそう強力であり、そして細胞表面ヘパランサルフェートプロテオグリカンとの相互作用に関与するように見える。HB−EGFは、外傷体液の主要な成長因子成分であり、そして外傷治癒で重要な役割を果たしうる。Abrahamら、「Heparin−binding EGF−like growth factor characterization of rat and mouse cDNA clones,protein domain conservation across species, and trascript expression in tissue」、Biochem.Biophys.Res.Commun.190巻:125−133頁(1993年);Higashiyamaら、「A heparin−binding growth factor secreted by macrophage like cells that is related to EGF」、Science 251巻:936−9頁(1991年);およびMarikovskyら、「Appearance of heparin−binding EGF−like growth factor in wound fluid as a responese to injury」、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)90巻:3889−93頁を参照。
【0136】
HBNF(ヘパリン結合軸索促進因子)とも称されるHB−GAM(ヘパリン結合成長関連分子)は、いくつかの種の脳組織からヘパリン結合タンパク質として単離された15.3kDaのタンパク質である。HB−GAMは、軟質寒天でのSW−13細胞の成長を促進する。Courtyら、「Mitogenic properties of a new endothelial cell growth factor related to pleiotrophin」、Biochem.Biophys.Res.Commun.180巻:145−151頁(1991年);およびHamptonら、「Structural and functional characterization of full−length heparin−binding growth associated molecule」、Mol.Biol.Cell.3巻:85−93頁(1992年)。
【0137】
TGF−ベータ(TGF−β)は、TGF−αに関連しない既知TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4およびTGF−β5の少なくとも5つの異型中に存在する。それらのアミノ酸配列は、およそ70−80パーセントの相同性を表示する。TGF−β1は、優勢な型であり、そしてほとんど偏在的に見られる一方で、他の異型は、さらに限定された特性の細胞および組織で発現される。
【0138】
TGF−ベータは、TGF−ベータスーパーファミリーとして知られるタンパク質のファミリーのプロトタイプである。このファミリーは、インヒビン、アクチビンA、MIS(ミュラー管活性化物質)およびBMP(骨形成タンパク質)を含む。Burt、「Evolutionary grouping of the transforming growth factor−beta superfamily」、Biochem.Biophys.Res.Commun.184巻:590−5頁(1992年)。
【図面の簡単な説明】
【0139】
明細書に組み込まれ、その一部を形成する付随の図面は、本発明の1つまたはそれ以上の実施態様を示し、そして説明と一緒に、本発明の原則を説明する役割を果たす。図面は、1つまたはそれ以上の本発明の好ましい実施態様を示す目的のためのみであり、本発明を限定すると見なされるべきでない。
【図1】合成ペプチド類似体F2A3の配列を描く。
【図2】合成ペプチド類似体F2A4の配列を描く。
【図3】ヘパリン親和性カラムからのF2A3の溶出のプロットである。
【図4A】HUVEC上でのFGFRへのF2A3の特異的結合を描くグラムである。
【図4B】C3H10T1/2繊維芽細胞上でのFGFRへのF2A3およびF2A4の特異的結合を描くグラムである。
【図5】MAPキナーゼ燐酸化および活性化における生来、組換えFGF−2に対するFGF−2類似体F2A3およびF2A4の平衡を示すブロットである。
【図6】繊維芽細胞培養物での生物増殖の刺激のグラフであり、そしてFGF−2に対するF2A3およびF2A4の有糸分裂の用量反応を示す。
【図7A】F2A3およびF2A4が、インビトロでの細胞付着についてFGF−2を擬態することを示し、2時間後、シリル−ヘパリン単独で、またはシリル−ヘパリンとFGF−2またはF2A3で被覆されたポリスチレンに対するCH310T1/2マウス繊維芽細胞の付着を示すプロットである。「*」は、0.05未満のpを示す。
【図7B】F2A3の被覆剤を用いた(左側パネル)および用いなかった(右側パネル)ポリカプロラクトン上で育成されたウシ大動脈内皮細胞の顕微鏡写真である。
【図8A】2週目のラット筋肉中の被覆ポリアクチド縫合糸を利用する毛細管/フィールドの比較を示し、被覆剤なしを、シリルヘパリンとF2A3で被覆された縫合糸との比較を示すプロットである。
【図8B】2週目のラット筋肉中の被覆ポリアクチド縫合糸の顕微鏡写真であり、パネルAは、被覆剤なしであり、パネルBは、シリルヘパリン被覆剤であり、パネルCは、F2A3被覆剤であり、そしてパネルDは、シリルヘパリンおよびF2A3被覆剤である。
【図9】50ng/mL FGF−2またはF2A3によって減じられる8Gy x線照射により誘導されるアポトーシスを用いた内皮細胞培養物中での放射線保護を示すプロットである。
【図10】対照としてFGF−2と共に、F2A3およびF2A4を利用した、インビボでの胃腸症候群からの放射線保護を示すプロットである。
【図11】B2A2を用いて、または用いずに、異なる濃度のBMP−2で、マウスC2C12細胞でのアルカリ性ホスファターゼの誘導を示すプロットである。
【図12】C3H10T1/2マウス細胞でのB2A2によるBMP−2の正の調節を示すプロットであり、そしてリン酸アルカリンによる検出を用いて、未被覆細胞を、B2A2被覆細胞を比較する。
【図13】VAO1、VAO2または組換えVEGFの添加の結果としてのウシ大動脈内皮細胞で誘発される新芽のプロットである。
【図14】VAO1、VAO2およびVEGFを用いたウシ大動脈内皮(BAE)細胞の成長の刺激のプロットである。
【実施例1】
【0140】
その構造が図1に示される合成HBGF類似体、F2A3を、標準固相ペプチド合成法により合成した。F2A3は、X領域のアミノ酸配列、NRFHSWDCIKTWASDTFVLVCYDDGSEA(配列番号:7)が、Bailingerら(Nature Biotechnology 17巻:1199頁(1999年))により同定されたC19ペプチド配列に対応するものである式IIによる構造を有する。配列番号:7の2つのX領域ペプチドの各々は、リシン残基にアミド結合により共有結合で連結され、そしてそのリシン残基は、J1およびJ2に対応する。J2Lysは、3つのアミノヘキサン酸残基から形成されるトリペプチドの一方の末端に結合した共有結合ペプチドの手段により結合され、そしてリンカーYに対応し、18個のアルキル炭素原子の疎水性種を提供する。アミノヘキサン酸トリペプチドの対峙末端は、領域Zに対応するヘパリン結合ペプチドRKRKLERAIR(配列番号:2)に結合したペプチドによって共有結合で結合される。
【0141】
反復性サイクルでのアミノ基の一過性保護のためにFmoc化学を使用して、置換ベンズヒドリルアミン樹脂上での固相合成により、ペプチドを、段階的に構築した。鎖の分岐は、連続リシル残基の側鎖アミノ基からの同一鎖の段階的成長によって達成された。完成したペプチド鎖を、酸加水分解によりC末端アミドから切断し、そしてそれは、酸不安定側鎖保護基も除去した。
【0142】
ヘパリン親和性クロマトグラフィーによって、最初に、粗ペプチド製剤を精製した。10mM HEPES(pH7.0)中で粗製剤を溶解化させ、HiTrap(登録商標)ヘパリンHPカラム(アメシャム・ファルマシ・バイオテク(Amersham Pharmacia Biotech)、米国ニュージャージー州ピスケートウエイ(Piscataway,NJ,USA))にかけ、そして10カラム量の10mM HEPES(pH7.0)で洗浄した。その後、そのペプチドを、10mM HEPES(pH7.0)中の2M NaClで溶出させ、280nm吸光度により監視した。ペプチドフラクションを、脱塩し、そしてSep−Pak(登録商標)C18カートリッジ(ウォーターズ(Waters)、米国マサチューセッツ州(MA)、ミルフォード(Milford))にかけることによって濃縮し、10カラム容量の水で洗浄し、そしてその後、80%アセトニトリルで溶出した。溶出されたフラクションを、凍結乾燥させ、水中に再溶解させ、そして参照としてウシ血清アルブミンを使用したBCA(登録商標)プロテインアッセイキット(ピールス・エンドゲン(Pierce Endogen)、米国イリノイ州ロックフォード(Rockford,IL,USA))によって、濃度を測定した。
【実施例2】
【0143】
標準固相ペプチド合成法によって、図2に示されるとおり合成HBGF類似体F2A4を、合成した。式IIの領域YおよびZに対応するF2A4のアミノ酸配列は、実施例1で記述されるF2A3のものに一致する。2つのX領域ペプチドのアミノ酸配列YRSRKYSSWYVALKR(配列番号:6)は、Rayら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94巻:7047−7052頁、1997年)により同定されたFGF−2のアミノ酸115−129に対応する。
【0144】
実施例1で上に記述したとおり、粗製剤を精製した。
【実施例3】
【0145】
図3は、ヘパリン親和性カラムからのF2A3の溶出プロファイルを示す。0.5mLヘパリン−アガロースを用いて、ミニカラムを作製し、そして水で集約的に洗浄した。F2A3を、カラムにかけ、そして水で洗浄した。示されるとおりNaClの濃度を段階的に増大することにより、F2A3を、カラムから溶出させた。
【実施例4】
【0146】
図4Aは、HUVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞)に対するF2A3の特異的結合を示す。125I−bFGFを、非標識F2A3の存在下で、無傷のHUVECとインキュベートした。緊縮洗浄の後、4℃でのこの結合した125I−bFGFフラクションを、可溶化HUVEC膜から回収し、そしてガンマー計数計で定量化した。F2A3は、HUVECのFGFレセプターに結合した125I−bFGF(FGF−2)を置換した一方で、非関連ヘパリン結合サイトカインVEGFは置換しなかった。図4Bは、F2A3およびF2A4が、125I−bFGF結合を、FGFレセプターを含有する第二の一連の細胞に競合的に置換した一方で、非関連ヘパリン結合サイトカインVEGFは置換しなかった。125I−bFGFを、氷上で20分間、冷F2A3およびF2A4の存在下で、培養C3H10T1/2繊維芽細胞とインキュベートした。緊縮洗浄の後、4℃で結合した125I−bFGFフラクションを、可溶化細胞膜から回収し、そしてガンマー計数計で定量化した。
【実施例5】
【0147】
図5は、MAPキナーゼ・リン酸化および活性化での生来、組換え体FGF−2に対するFGF−2類似体F2A3およびF2A4の平衡を示す。C3H10T1/2細胞を、10、30または60分間、3nMのFGF−2、F2A3またはF2A4で刺激し、そして溶解させた。細胞溶解液から得られる活性MAPキナーゼを、モノクローナル抗ホスホプ−44/42MAPキナーゼ(Thr202およびTyr204)で免疫沈降させた。生じた免疫沈降物を、ATPの存在下で、Elk−1融合タンパク質とインキュベートした。Ser383でのリン酸化Elk−1を、リン光体−Elk−1(Ser383)抗体を用いたウエスタンブロティングにより可視化した。MAPキナーゼのリン酸化を示すために、モノクローナル抗ホスホプ−44/42MAPキナーゼ(Thr202およびTyr204)抗体を用いたウエスタンブロッティングにより、細胞溶解液を分析した。結果は、F2A3およびF2A4の両方が、FGF−2がそうするように、10分でこれらのサンプルに存在し、そして未処理対照から不在であるリン酸化Ser383残基によって示されるおとり、Elk−1を活性化することを示す。リン酸化Ser383の濃度は、10分から30分に、そしてさらに60分でさえ、継続的に減少した。対照的に、リン光体−ERK−1およびリン光体−ERK−2の濃度は、10分、30分および60分で、F2A3、F2A4およびFGF−2処置サンプルで一貫して高かったのに対して、対照未処理サンプルは、リン光体−ERK−1およびリン光体−ERK−2の各々の際立って低い濃度を示した。これらの観察は、HBGF類似体F2A3およびF2A4が、これらのアッセイでFGF−2類似体として生物学的に活性であることを示す。
【実施例6】
【0148】
図6は、bFGF(FGF−2)と比較した場合、F2A3およびF2A4による分裂についてのアッセイの結果を示す。C3H10T1/2細胞を、10%FBS(胎児ウシ血清)で補足したDMEM培地で育成した。アッセイの2日前に、細胞培養培地を、低血清培地(0.1%FBSを有するDMEM)に交換した。アッセイの開始時に、細胞を、トリプシン処理し、そして単一細胞懸濁液を、1,000細胞/ウエルで、96穴培養プレート上に蒔いた。合成サイトカイン類似体ペプチドまたは組換え体ヒトFGF−2を、三部構成のウエルに添加し(100μ/ウエル最終容量)、そして培養プレートを、37℃インキュベーターに戻した。3日後、製造業者の指示によりXTT細胞増殖キットII(ロッシュ・アプライド・サイエンス(Roche Applied Science)、米国インディアナ州インディアナポリス(Indianapolis,IN,USA))により、細胞増殖を定量化した。
【0149】
類似体F2A3およびF2A4は、このアッセイの結果によって示されるとおり、FGF−2より低濃度で、高い特異的活性を供する。
【実施例7】
【0150】
図7は、F2A3によるインビトロでの付着の増強を示す。所定の濃度で、シリル−ヘパリン単独で、またはシリル−ヘパリンとbFGF(FGF−2)またはシリル−ヘパリンとF2A3で被覆したポリスチレン96穴組織培養プレートのウエルへのC3H10T1/2マウス繊維芽細胞の付着を、2時間後、595nmでの吸光度により測定した。
【0151】
F2A3の被覆剤を用いて、または用いずにポリカプロラクトン上で育成されたウシ大動脈内皮細胞(BEAC)の顕微鏡写真を得た。細胞を、結晶バイオレットで染色し、そして100×倍率で顕微鏡撮影した。F2A3被覆試験片上の付着細胞の実質的に高い細胞密度を観察した。
【実施例8】
【0152】
図8は、生物分解性縫合糸上のF2A3の運動領域送出により外傷治癒の促進を示した。シリル−ヘパリンおよびF2A3組合せで、飽和するまで被覆した、そしていかなる被覆剤なしに生物吸着性ビクリル(登録商標)ポリグリコライド/ラクチド縫合糸(エチコン・ジョンソン・アンド・ジョンソン(Ethicon Johnson & Johnson)、米国ニュージャージー州ソマービル(Somerville,NJ,USA))を、成体ラットの大腿部筋に導入した。2週後、移植領域を除去し、そして日常の方法により組織学の処理をした。100×の倍率で、毛細血管を定量化し、そしてデータは、フィールド当たりの平均として表された。図8に示されるとおり、Y軸は、フィールド当たりの毛細血管の数を描写する。エイチ・アンド・イー染色組織学断面を利用して、増大した造粒および脈管形成も観察した。顕微鏡試験は、未被覆縫合糸が導入されたラット筋肉組織の2週間後に中程度の量の造粒を示した。シリル−ヘパリン被覆縫合糸とF2A3被覆縫合糸の両方を用いて、低から中程度までの造粒を見出した。シリル−ヘパリンおよびF2A3で被覆した縫合糸を用いて、PGLA繊維が網目状になったことは、断面で明らかであり、横紋筋組織のフィールド内で、可変の厚みの造粒組織の環に囲まれた。シリル−ヘパリン単独、およびF2A3単独の両方の被覆剤は、対照と比べて、細胞質を減じた。しかし、シリル−ヘパリンおよびF2A3の組合せは、網目状になった縫合糸を囲み、そして浸透しながら、際立った繊維芽細胞増殖を引起し、そして造粒組織内の内皮細胞を増大させた。
【実施例9】
【0153】
図9は、培養物中の内皮細胞に照射し、そして未処理対照に比べた場合、FGF−2またはF2A3を用いた処理の後に、アポトーシス細胞率を測定した放射線保護実験の結果を示す。8Gy x線照射により、アポトーシスが誘発され、そして処理には、50ng/mL FGF−2またはF2A3を用いた。
【実施例10】
【0154】
図10は、DingおよびOkunieff(Okunieffら、Br.J.Cancer.Suppl.27巻:S105−8頁(1996年))によって開発されたモデルであるマウスモデルでのbFGF(FGF−2)に比べた、F2A3およびF2A4による胃腸症候群死からのインビボ放射線防御を示す。全体照射の直前に、成体C57BLxDBAマウスに、腹腔内キシラジン/ケタミン注射により麻酔をかけた。15μg/マウスのFGF−2(アール・アンド・ディー・システムズ(R & D Systems)、米国ミネソタ州ミネアポリス(Minneapolis,MN,USA))、5μg/マウスのF2A3、5μg/マウスF2A4、または対照ベヒクル溶液(0.9%NaCl中の100μLの0.2%ゼラチン)のいずれかを、静脈レトロ−眼窩注射により対象に投与し、その後、137Cs源(線量速度0.93Gy/分)による14Gyガンマ照射にかけた。30日間、毎日2回、動物を監視し、そしてカプラン−マイヤーの方法により、生存データの統計的解析を行った。
【実施例11】
【0155】
標準固相ペプチド合成法により、合成HBGF類似体、F1A1を合成した。式IIの領域YおよびZに対応するF1A1のアミノ酸配列は、実施例1で記述されるF2A3のものと一致する。2つのX領域配列のFGFレセプター結合アミノ酸配列は、YISKKHAEKNWFVGLKK(配列番号:8)である。この配列は、FGF−1のベータ9およびベータ10ループを架橋するアミノ酸から誘導される。
【0156】
実施例1で上に記述されるとおり、粗製剤を精製した。生じた類似体は、以下の構造を示した。
【0157】
【化5】
【実施例12】
【0158】
標準固相ペプチド合成法により、合成HBGF類似体、F1A2を合成した。式IIの領域YおよびZに対応するF1A2のアミノ酸配列は、実施例1で記述されるF2A3のものと一致する。2つのX領域配列のアミノ酸配列HIQLQLSASEVGEVY(配列番号:9)は、FGF−1のベータ−4およびベータ−5領域から誘導されるアミノ酸に対応する。この全般的領域は、FGF−1の結合にかかわりを示す(Sanzら、「Hints of nonhierarchial folding of acidic fibroblast growth factor」、Biochemistry 41:1923−1933頁(2002年))。
【0159】
実施例1で上に記述されるとおり、粗製剤を精製した。生じた類似体は、以下の構造を示した。
【0160】
【化6】
【実施例13】
【0161】
標準固相ペプチド合成法により、合成HBGF類似体、F7A1を合成した。式IIの領域YおよびZに対応するF7A1のアミノ酸配列は、実施例1で記述されるF2A3のものと一致する。2つのX領域ペプチドのアミノ酸配列YASAKWTHNGGEMFVALNQK(配列番号:10)は、FGF−7のベータ9およびベータ10ループから誘導されるアミノ酸に対応する。FGF−7のこのセグメントに含まれる残基91−110は、KimらのFGFR2IIbについての特異性を決定するのに重要であると見なされてきた(Kimら、「Colocalization of heparin and receptor binding sites on keratinocyte growth factor」、Biochemistry37巻:8853−8862頁(1998年))。
【0162】
実施例1で上に記述されるとおり、粗製剤を精製した。生じた類似体は、以下の構造を示した。
【0163】
【化7】
【実施例14】
【0164】
標準固相ペプチド合成法により、合成HBGF類似体、F7A2を合成した。式IIの領域YおよびZに対応するF7A2のアミノ酸配列は、実施例1で記述されるF2A3のものと一致する。2つのX領域ペプチドのアミノ酸配列YNIMEIRTVAVGIVA(配列番号:11)は、FGF−7のβ−4およびβ−5領域から誘導されるアミノ酸に対応する。FGF−7のβ4−β5鎖に繋がるループは、高い親和性レセプター結合に寄与し、そしてドメイン交換および部位指向性突然変異誘発実験(Sherら、「Identification of residues important both for primary receptor binding and specificity in fibroblast growth factor−7」、J Biol.Chem.275巻:34881−34886頁(2000年))で測定される場合、KGFR識別に重要である。
【0165】
実施例1で上に記述されるとおり、粗製剤を精製した。生じた類似体は、以下の構造を示した。
【0166】
【化8】
【実施例15】
【0167】
標準固相ペプチド合成法により、合成HBGF類似体、VA01を合成した。式IIの領域YおよびZに対応するVA01のアミノ酸配列は、実施例1で記述されるF2A3のものと一致する。2つのX領域ペプチドのアミノ酸配列APMAEGGGQNHHEVVKFMDV(配列番号:12)は、Binetruy−Tournaireら(Binetruy−Tournaireら、「Identification of a peptide blocking vascular endothelial growth factor (VEGF)−mediated angiogenesis」、Embo.J.19巻:1525−1533頁(2000年))により記述されるVEGF配列の最初の20アミノ酸から誘導される。
【0168】
実施例1で上に記述されるとおり、粗製剤を精製した。生じた類似体は、以下の構造を示した。
【0169】
【化9】
【実施例16】
【0170】
標準固相ペプチド合成法により、合成HBGF類似体、VA02を合成した。式IIの領域YおよびZに対応するVA02のアミノ酸配列は、実施例1で記述されるF2A3のものと一致する。2つのX領域ペプチドのアミノ酸配列GATWLPPNPTK(配列番号:13)は、科学文献で明確に記述または特徴付けされなかったが、しかし、むしろBinetruy−Tournaire(Binetruy−Tournaireら、「Identification of a peptide blocking vascular endothelial growth factor (VEGF)−mediated angiogenesis」、Embo.J.19巻:1525−1533頁(2000年))によって記述される短い配列から誘導される。
【0171】
実施例1で上に記述されるとおり、粗製剤を精製した。生じた類似体は、以下の構造:
【0172】
【化10】
を示した。
【実施例17】
【0173】
標準固相ペプチド合成法により、合成HBGF類似体、VEGF1−20を合成した。式IIの領域YおよびZに対応するVEGF1−20のアミノ酸配列は、実施例1で記述されるF2A3のものと一致し、そしてXアミノ酸配列NFLLSWVHWSLALLLYLHHA(配列番号:14)は、脈管内皮成長因子配列を形成する。
【0174】
実施例1で上に記述されるとおり、粗製剤を精製した。
【実施例18】
【0175】
標準固相ペプチド合成法により、合成HBGF類似体、B2A1を合成した。式IIの領域YおよびZに対応するB2A1のアミノ酸配列は、実施例1で記述されるF2A3のものと一致する。2つのX領域ペプチドのアミノ酸配列LYVDFSDVGWNDW(配列番号:15)は、BMP−2のアミノ酸301−313に対応する。
【0176】
実施例1で上に記述されるとおり、粗製剤を精製した。
【実施例19】
【0177】
標準固相ペプチド合成法により、合成HBGF類似体、B2A2を合成した。式IIの領域YおよびZに対応するB2A2のアミノ酸配列は、実施例1で記述されるF2A3のものと一致する。2つのX領域ペプチドのアミノ酸配列AISMLYLDENEKVVL(配列番号:16)は、BMP−2中の鎖ベータ7およびベータ8のアミノ酸91−105に対応する。この領域は、BMPR−IIの結合に関与するBMP−2のエピトープ2の一部であると考えられる。
【0178】
実施例1で上に記述されるとおり、粗製剤を精製した。
【実施例20】
【0179】
標準固相ペプチド合成法により、合成HBGF類似体、B2A2−1.2を合成した。式IIの領域YおよびZに対応するB2A2−1.2のアミノ酸配列は、実施例1で記述されるF2A3のものと一致する。2つのX領域ペプチドのアミノ酸配列ISMLYLDENEKVVLKNY(配列番号:17)は、BMP−2のベータ7およびベータ8領域に見られるアミノ酸に対応する。
【0180】
実施例1で上に記述されるとおり、粗製剤を精製した。
【実施例21】
【0181】
標準固相ペプチド合成法により、合成HBGF類似体、B2A2−1.4Eを合成した。式IIの領域YおよびZに対応するB2A2−1.4Eのアミノ酸配列は、実施例1で記述されるF2A3のものと一致する。2つのX領域ペプチドのアミノ酸配列EKVVLKNYQDMVVEG(配列番号:18)は、BMP−2のベータ8領域に見られるアミノ酸に対応する。
【0182】
実施例1で上に記述されるとおり、粗製剤を精製した。
【実施例22】
【0183】
標準固相ペプチド合成法により、合成HBGF類似体、B2A3を合成した。式IIの領域YおよびZに対応するB2A3のアミノ酸配列は、実施例1で記述されるF2A3のものと一致する。2つのX領域ペプチドのアミノ酸配列LVVKENEDLYLMSIAC(配列番号:19)は、BMP−2のベータ8領域に見られるアミノ酸に対応する。
【0184】
実施例1で上に記述されるとおり、粗製剤を精製した。
【実施例23】
【0185】
標準固相ペプチド合成法により、合成HBGF類似体、B2A4−1.1を合成した。式IIの領域YおよびZに対応するB2A4−1.1のアミノ酸配列は、実施例1で記述されるF2A3のものと一致する。2つのX領域ペプチドのアミノ酸配列AFYCHGECPFPLADHL(配列番号:20)は、BMP−2のベータ4およびベータ5領域に見られるアミノ酸に対応する。
【0186】
実施例1で上に記述されるとおり、粗製剤を精製した。
【実施例24】
【0187】
標準固相ペプチド合成法により、合成HBGF類似体、B2A4−1.3を合成した。式IIの領域YおよびZに対応するB2A4−1.3のアミノ酸配列は、実施例1で記述されるF2A3のものと一致する。2つのX領域ペプチドのアミノ酸配列PFPLADHLNSTNHAIVQTLVNSV(配列番号:21)は、BMP−2のベータ5およびベータ5a領域に見られるアミノ酸に対応する。
【0188】
実施例1で上に記述されるとおり、粗製剤を精製した。
【実施例25】
【0189】
標準固相ペプチド合成法により、合成HBGF類似体、F2A4−Linを合成した。この類似体は、n=0、Tは、R1であり、Xは、YRSRKYSSWYVALKR(配列番号:6)であり、そしてZは、配列番号:2であり、そしてXおよびZは、ペプチド結合により共有結合で結合される、式Iのペプチドであるアミノ酸配列NH2−YRSRKYSSWYVALKRT−HexHexHex−RKRKLERIAR−アミド(配列番号:22)の線状ペプチドであった。実施例1で上に記述されるとおり、粗製剤を精製した。
【実施例26】
【0190】
標準固相ペプチド合成法により、合成HBGF類似体、F2A4−Sinを合成した。この類似体は、n=0、J1は、Lysであり、Xは、配列番号:6であり、Zは、配列番号:2であり、そしてYは、Hex−Hex−Hexであり、そしてXは、以下の構造のJ1の側鎖にアミド結合によって共有結合で結合される、式IIの単一鎖で分岐されたペプチドである。
【0191】
【化11】
【実施例27】
【0192】
本実施例は、マウスC2C12細胞でのアルカリ性ホスファターゼの誘導においてB2A2の正の調節を示す。細胞を、96穴プレート上に104細胞/ウエルで蒔き、10%新生仔ウシ血清を含有する培地中で1日間インキュベートし、組換え体BMP−2(大腸菌)を用いた2%血清、またはそうでないものを含有する培地に交換し、そしてさらに3日間インキュベートした。使用される場合、B2A2を、1000ng/mLの最終濃度まで添加した。1%緩衝ホルマリン中の10分間の固定、0.3%トリトンX100でのインキュベーション、そして市販で入手可能なパラニトロフェノール(PNPP)キットを用いた60分間の色素原展開に続いて、アルカリ性ホスファターゼを測定した。図11で示されるとおりデータは、平均±S.D.(標準偏差)(式中、n=5)として表された。アルカリ性ホスファターゼの誘発は、BMP−2の生物学的活性についての特徴である。
【実施例28】
【0193】
本実施例は、被覆剤として使用される場合の、B2A2によるBMP−2活性の正の調節を示す。96穴プレートのウエルを、0.25%シリル−ヘパリン[ベンジル−テトラ(ジメチルシリルメチル)オキシカルバモイル−ヘパリン]を含有する60%水性イソプロパノールを使用して予備被覆し、続いて水中で洗浄して、未結合材料を除去した。その後、ウエルを、水(対照)で、または10μg/mLのB2A2を含有する水性溶液で処理した。処理溶液の除去の後、適量の2×104C3H10T1/2マウス細胞を、100μLの容量で添加し、続いて5μLでの10ngの組換え体BMP−2(大腸菌)の添加を行った。数日後、培養物を、アルカリ性ホスファターゼ(ALP)活性について、そして総タンパク質の量について評価した。図12に示されるとおりデータは、mgでのタンパク質の量による、ALPアッセイから得られる平均光学密度として表された。
【実施例29】
【0194】
本実施例は、脈管形成のインビトロモデルでのVEGF擬態ペプチドの効果を表す。ウシ大動脈内皮細胞を、コラーゲンゲルの層を含有する96穴プレートの個々のウエルに蒔いた。細胞を、ゲルに付着させ、そして続いて、未結合細胞を除去した。付着細胞を、添加なし(対照)か、または25ng/mLのVAO1、VAO2、または組換え体VEGFのいずれかを含有するコラーゲンゲルの第二の層で覆った。第二の層のゲルが硬化した後、培養物を、上で特定された濃度で試験材料を含有する100μLの培地で上に積層した。数日後、培養物を位相差顕微鏡法により実験し、そしてゲルに進出する芽の数を記録した。データは、平均±S.D.(n=6)で表された。結果は、図13に示される。発芽を刺激する薬剤の能力は、インビボ脈管形成の許容された推定モデルである。
【実施例30】
【0195】
本実施例は、培地に添加した48時間目でのVAO1およびVAO2によるウシ大動脈内皮(BAE)細胞の成長の刺激を表す。適量の103BAE細胞を96穴プレートのウエルに蒔き、そして24時間支持体に付着させた。その後、培地を、添加なし(対照)か、または上に指示される濃度で、VAO1、VAO2、または組換え体VEGFのいずれかを含有する2%新生仔ウシ血清を含有するものに交換した。48時間後、実施例6でのように市販で入手可能なXTTキットを使用して、細胞を解析した。吸光度は、対照値の百分率として表された。VEGFは、限定された濃度範囲より成長における適度の増大を発生した一方で、VAO1およびVAO2は、図14に示されるとおり広範な濃度範囲より成長刺激をさらに言明された。点線は、対照値を示す。
【0196】
先行する実施例は、反応体を包括的に、または特異的に脱着し、および/または先行する実施例で使用されるものについての本発明の状態を観察することによって類似の成果で繰り返されうる。
【0197】
本発明は、これらの好ましい実施態様で特定の資料で詳細に記述されたが、他の実施態様でも同じ結果を達成しうる。本発明の変動および修飾は、当業者に明らかであり、そしてそれは、全てのこのような修飾および等価物を、付随の請求項で網羅すると意図される。上に引用される全ての資料、出願、特許および公報の全開示は、参照してここに組み込まれる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘパリン結合成長因子の合成ペプチドおよび類似体、特に、非成長因子ヘパリン結合領域と都合によりリンカーをさらに有し、そのリンカーは、疎水性でありうる類似体の分野に関する。本発明は、さらに、可溶性薬剤として、そして医療用デバイスのための被覆剤としてこのような類似体の医療用途に関する。
【0002】
関連出願に対する関連文献
本出願は、2002年8月20日に提出された「合成ヘパリン結合成長因子類似体」と題される米国特許出願番号第10/224,268号の一部継続出願であり、そしてそれに対して優先権を主張し、そしてその明細書は、ここに参照して組み込まれる。
【0003】
連邦に支援される研究または開発に関する供述
本発明は、米国エネルギー省により授与される契約番号DE−AC02−98CH10886号の下に米国連邦政府支援を伴い発明された。米国連邦政府が本発明のあらゆる権利を有する。
【背景技術】
【0004】
以下の検討は、著者(ら)による多くの出版物および出版物の年度に関すること、そして最近の出版物の日付により、所定の出版物は、本発明に対する先行技術として評価されないことに注目すること。ここでのこのような出版物の検討は、さらに完全な背景について示され、そしてこのような出版物が、特許性決定の目的のための先行技術であると認めると解釈されるべきでない。
【0005】
ヘパリン結合成長因子(HBGF)は、現在までに同定された23の繊維芽細胞成長因子(FGF1−23)、HBBM(ヘパリン結合脳分裂促進剤)、HB−GAF(ヘパリン結合成長関連因子)、HB−EGF(ヘパリン結合EGF様因子)、HB−GAM(ヘパリン結合成長関連分子)、TGF−α(形質転換成長因子−α)、TGF−β(形質転換成長因子−β)、PDGF(血小板由来成長因子)、EGF(表皮成長因子)、VEGF(脈管内皮成長因子)、IGF−1(インスリン様成長因子−1)、IGF−2(インスリン様成長因子−2)、HGF(肝細胞成長因子)、IL−1(インターロイキン−1)、IL−2(インターロイキン−2)、IFN−α(インターフェロン−α)、IFN−γ(インターフェロン−γ)、TNF−α(腫瘍壊死因子−α)、SDGF(神経鞘腫由来成長因子)および多くの他の成長因子を含む多数のクラスの成長因子、ヘパリンに親和性を示すサイトカイン、リンホカインおよびキモカインから構成される。
【0006】
ヘパリン結合成長因子レセプターを結合する天然のHBGFから得られるペプチドが、同定されてきた。例えば、Rayらによる、Proc.Natl.Acad.Sci.USA94巻:7047−7052頁(1997年)を参照。これらの著者らは、FGF−2から得られる2つのアミノ酸配列が、神経性先祖細胞上のFGF−2の有糸分裂活性を遮断するのに十分であることを示した。第一のペプチドは、アミノ酸65−74から得られる10個のアミノ酸配列であり、第二のペプチドは、アミノ酸115−129から伸長する。
【0007】
代替的アプローチでは、ヘパリン結合成長因子レセプターを結合する人工ペプチドは、ファージディスプレイ方法により同定された。BallingerらによるNature BioTechnology17巻:1199−1204頁(1999年)では、C19と呼ばれる28個のアミノ酸ペプチドを単離し、FGF−2レセプターを結合する技術を使用しているが、しかしそれ単独では、生物学的活性を刺激できない。ペプチドは、あらゆる既知FGFとアミノ酸配列同一性を有しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
広範な疾患および障害の防止または治療に有用なHBGFは、天然源から精製されるか、または組換えDNA法によって産生されうるが、しかし、このような調製は、高価であり、そして一般に調製することが困難である。
【0009】
ヘパリン結合成長因子類似体を発生するある程度の努力がなされた。例えば、天然のPDGFは、頭部から頭部(AAまたはBB)ホモ二量体、または(ABまたはBA)ヘテロ二量体に配列されたA鎖およびB鎖として生じる。したがって、Jehanliらに対する米国特許第6,350,731号は、2つの合成PDGFレセプター結合ドメインが、ポリグリシンまたはN−(4−カルボキシ−シクロヘキシルメチル)−マレイミド(SMCC)鎖を通して共有結合で連結されて、天然の活性ポリペプチド二量体を擬態するPDGF類似体を開示する。
【0010】
Ben−Sassonに対する米国特許第6,235,716号は、脈管形成因子の類似体を開示する。その類似体は、多リンカー骨格により連結された2個またはそれ以上の脈管形成相同領域を含む分岐した多価リガンドである。
【0011】
Godowskiに対する米国特許第5,770,704号(’704号特許)は、レセプターチロシンキナーゼ、サイトカインレセプターおよび神経成長因子レセプタースーパーファミリーの構成要素を活性化する接合体を開示する。接合体は、同族レセプターに結合する能力のある少なくとも2つのリガンドを含み、その結果、個々のリガンドの結合は、これらのレセプターのオリゴマー化を誘発する。’704号特許に開示されるリガンドは、種々の非タンパク質様高分子、特にポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンのような親水性高分子、およびポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールを含めたポリビニルアルケンエーテルへの共有結合付着によって連結される。リガンドは、各々HGFレセプターを結合し、それによりレセプターに、HGFレセプター二量体の生物学的活性の二量体化および活性化を引起させる肝細胞成長因子(HGF)ペプチド変異体を含む。
【0012】
Caldwellらに対する米国特許第6,284,503号(’503号特許)は、細胞付着、細胞成長、細胞分級および生物学的アッセイのための疎水性表面および疎水性被覆表面への細胞および生物分子の付着を調節する組成物および方法を開示する。組成物は、反応性末端基活性化高分子に接合した生体分子である。末端基活性化高分子は、ブロック共重合体界面活性剤骨格および活性化または反応性基を含む。ブロック共重合体は、疎水性表面に吸着する能力のある疎水性領域、および疎水性領域が、疎水性表面に吸着されるときに、表面から離れて伸長する親水性領域を有するあらゆる界面活性剤でありうる。’503号特許は、末端基活性化高分子に接合しうる生体分子が、PDGF、EGF、TGFα、TGFβ、NGF、IGF−I、IGF−II、GHおよびGHRFのような天然または組換え成長因子、並びに多CSF(II−3)、GM−CSF、G−CSF、およびM−CSFを含むことを開示する。
【0013】
他の研究者らは、繊維芽細胞成長因子(FGF)の相同体および類似体を含む組成物を記述した。例えば、LappiおよびBairdに対する米国特許第5,679,673号;Delsherらに対する米国特許第5,989,866号、およびFiddesらに対する米国特許第6,294,359号を参照。これらの開示は、毒性部分に接合され、そしてFGFレセプター担持細胞に標的にされるか、またはFGF相同体または類似体による結合により、FGFレセプターに伝達されるシグナルを通して生物学的経路を調節する相同体または類似体であるかのいずれかであるFGF相同体または類似体に関する。
【0014】
Kochendoerferらに対する一連の特許出願は、合成キモカインおよび造血刺激タンパク質を含めた高分子修飾タンパク質を開示する。例えば、国際公開番号02/04105号、02/19963号、および02/20033号を参照。これらは、ポリペプチド鎖が、タンパク質上の1つまたはそれ以上のグリコシル化部位に付着した水溶性高分子と一緒に生じるように、合成造血タンパク質のポリペプチド鎖の化学的に連結したペプチドセグメントを含む。これらの出願は、修飾高分子でもあり、そしてアンタゴニストと主張される合成キモカインも開示する。しかし、ヘパリン結合ドメインは開示されていない。Wrightonらに対する米国特許第5,773,569号および第5,830,851号に開示されるもののような他のエリスロポイエチン擬態が知られている。
【0015】
BallingerおよびKavanaughに対する国際公開番号00/18921号は、直接、または連結基を通してのいずれかで、「オリゴマー化ドメイン」に連動してFGFレセプター親和性を示す融合タンパク質から構成される組成物を開示する。オリゴマー化ドメインは、長さ約20から300残基までの範囲にあり、そして転写因子、IgGのFc部分、ロイシンジッパーなどのような構築物を含む。開示されるオリゴマー化ドメインは、単一FGFレセプター親和性融合タンパク質が、ロイシンジッパーのような単一ドメインに連結され、次に、各々単一FGFレセプター親和性融合タンパク質を有する2つの平行のロイシンジッパーが、ジスルフィド結合の手段により架橋されているように、ロイシンジッパーのアミノおよびカルボキシ末端の両方でシステイン残基の手段により、類似の分子に連結されているホモ二量体ドメインである。融合タンパク質が、ヘパリン結合ドメインであることを明らかに示す、多量体化ドメインとしてのjunの使用のようなヘパリン結合ドメインを含みうることも開示されている。したがって、BalingerおよびKavanaughによって開示される組成物は、全て、オリゴマー化ドメインに共有結合で付着され、それにより各々単一レセプター結合配列を有する2つまたはそれ以上の類似のオリゴマー化ドメインが、オリゴマー化ドメインにより供給された結合の手段により結合されるか、または代わりに、個別の成分の共有結合を供給するために化学的に架橋されるかのいずれかである単一レセプター結合配列から構成される。
【0016】
上述の相同体、類似体、接合体またはリガンドは、各々、レセプター結合ドメインを含む。しかし、開示された組成物の内で、さらに、ジペプチド配列に2つのレセプター結合ドメインの連結を供するリンカーを含み、そしてさらにヘパリン結合ドメインを含有する単一非シグナル発生ペプチドを供することの両方をするものはない。さらに、これらまたは他の既知ヘパリン結合成長因子類似体の内で、ここに後述される利点を供するものはない。HBGFの新たなペプチド類似体の、特に、アゴニストとして機能するものの必要性がなおある。特に、ヘパリン結合成長因子レセプターの費用効率の高い合成ペプチドアゴニスト、特に、医療用デバイスの被覆に、そして可溶性生物製剤として有益な合成ヘパリン結合成長因子アゴニストの必要性がなおある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
1つの実施態様では、本発明は、式Iで表されるHBGF類似体を提供する。
【0018】
【化1】
式I
各Xは、(i)最小3個のアミノ酸残基を有し、(ii)最大約50個のアミノ酸残基を有し、そして(iii)ヘパリン結合成長因子レセプター(HBGFR)を結合するペプチド鎖である;R1は、アミノ酸残基であり、Xは、R1のN末端を通して、またはR1の側鎖を通して共有結合で結合されている;R2は、三官能性アルファアミノ酸残基であり、Xは、R2の側鎖を通して共有結合で結合されている;Yは、n=0の場合、R1およびZに、またはn=1の場合、R2およびZに共有結合で結合された0個から約50個の原子までの鎖を包含するリンカーである;Zは、ヘパリン結合ドメインを包含する非シグナル発生ペプチド鎖であり、そして(i)最小1個のヘパリン結合モチーフ、(ii)最大約10個のヘパリン結合モチーフ、および(iii)最大約30個のアミノ酸を包含するアミノ酸配列を包含する;そしてnは、0または1であり、n=1の場合、ペプチド鎖Xは同一である。
【0019】
式Iで表されるHBGF類似体では、Yは、さらに、(i)疎水性であり、(ii)最小約9個、そして最大約50個の原子の鎖を包含し、そして(iii)Xが結合するHBGFRの天然リガンドに見られないリンカーを含みうる。式Iの1つの実施態様では、R1は、Xが、R1の側鎖を通して共有結合で結合されている三官能性アミノ酸残基である。
【0020】
式Iの1つの実施態様では、式IのHBGF類似体は、それが、0.15M NaCl中でヘパリンを結合するが、1M NaClによって溶出されるようにヘパリンについての結合活性を示すことで特徴づけられる。
【0021】
別の実施態様では、本発明は、式IIで表されるHBGF類似体を提供する。
【0022】
【化2】
式II
R3およびR5は、独立に、NH2;N末端NH2、NH3+、またはNH基あるいは対応のアシル化誘導体を含む、線状または分岐C1からC17までのアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニルまたはアラルキル鎖を有するアシル基であるか、またはN末端NH2、NH3+、NH基あるいは対応のアシル化誘導体を有するアミノ酸、ジペプチドまたはトリペプチドである;R4は、−OH、NH2、NH−R6であるか、またはC末端−OH、NH2、またはNH−R6を有するアミノ酸、ジペプチドまたはトリペプチドである;R6は、脂肪族C1からC17までの鎖である;各Xは、(i)最小3個のアミノ酸残基を有し、(ii)最大約50個のアミノ酸残基を有し、そして(iii)HBGFRを結合するペプチド鎖である;J1およびJ2は、各々独立に、各Xが、J1およびJ2の側鎖を通して共有結合で結合される三官能性アルファアミノ酸残基である;Yは、n=0である場合、J1およびZに、あるいはn=1である場合、J2およびZに共有結合で結合された0から約50個までの原子の鎖を包含するリンカーである;Zは、ヘパリン結合ドメインを包含する非シグナル発生ペプチドであり、そして(i)最小1個のヘパリン結合モチーフ、(ii)最大約10個のヘパリン結合モチーフ、および(iii)最大約30個のアミノ酸を包含するアミノ酸配列を包含する;そしてnは、0または1であり、n=1の場合、合成ペプチド鎖Xは同一である。
【0023】
式IIで表されるHGBF類似体では、Yは、さらに、(i)疎水性であり、(ii)最小約9個および最大約50個の原子の鎖を包含し、そして(iii)Xが結合するHBGFRの天然のリガンドには見られないリンカーを含む。
【0024】
1つの実施態様では、式IIで表されるHBGF類似体は、それが、0.15M NaCl中でヘパリンを結合するが、1M NaClによって溶出されるようにヘパリンについての結合活性を示すことで特徴づけられる。
【0025】
式IIで表されるHBGF類似体は、さらに、HBGFRへのその結合が、HBGFRによりシグナルを発生させること、あるいは代わりに、それが、HBGFRによりシグナル発生を阻止することを特徴としうる。
【0026】
式IIで表されるHBGF類似体の1つの実施態様では、J1および、n=1の場合には、J2は、ジアミンアミノ酸残基である。このようなジアミンアミノ酸残基は、2,3ジアミノプロピオニルアミノ酸残基、リシル残基またはオルニチニル残基でありうる。式IIで表されるHBGF類似体の代替的実施態様では、J1および、n=1の場合には、J2の側鎖は、反応性カルボキシル基を含む。
【0027】
式IIで表されるHBGF類似体の1つの実施態様では、XとJ1または、n=1の場合には、J2との間の共有結合は、アミド、ジスルフィド、チオエーテル、シッフ塩基、還元シッフ塩基、イミド、二級アミン、カルボニル、尿素、ヒドラゾンまたはオキシム結合を包含する。好ましい実施態様では、結合は、アミド結合である。
【0028】
そのような式IIで表されるHBGF類似体は、さらに、mは、1から約10までである、式IIIで表されるHBGF類似体を含む。
【0029】
【化3】
式III
そのような式IIIで表されるHBGF類似体は、さらに、pは、1から約10までであり、そしてqは、1から約20までである、式IVで表されるHBGF類似体を含む。
【0030】
【化4】
式IV
1つの特に好ましい実施態様では、pは、5であり、そしてqは、3である。
【0031】
1つの実施態様では、n=1である式IまたはIIで表されるか、または式IIIまたはIVで表されるいずれかのHBGF類似体では、ペプチド鎖Xは、架橋または環状化されている。このような架橋または環状化は、少なくとも1つのジスルフィド、ペプチド、アミドまたはチオエーテル結合を含めた共有結合を通しての可能性がある。
【0032】
別の実施態様では、式I、IIまたはIIIで表されるいずれかのHBGF類似体で、Yは、1と約33個の間のエチレングリコール(オキシエチレン)単位を含む。代わりに、Yは、1個と約20個の間の炭素原子の分岐または未分岐、飽和または不飽和アルキル鎖を含みうる。特に好ましい実施態様では、Yは、pは、1から約10までであり、そしてqは、1から約20までである[NH2−(CH2)pCO]qである。別の実施態様では、Yは、ペプチド配列を含み、そして好ましい実施態様では、1から約16個のGly残基を伴う。
【0033】
式I、II、IIIまたはIVのいずれかのHBGF類似体の別の実施態様では、Zの各ヘパリン結合モチーフは、BxBB、またはBBBxxBであり、各Bは、独立に、リシン、アルギニン、オルニチン、またはヒスチジンを表し、そしてxは、天然に生じるアミノ酸を表す。好ましい実施態様では、Zは、少なくとも2個のヘパリン結合モチーフを含み、さらに好ましくは、少なくとも5個のヘパリン結合モチーフを含む。
【0034】
本発明は、さらに、式I、II、IIIまたはIVのいずれかのHBGF類似体を含む医薬組成物、またはその医薬上許容しうる塩、および医薬上の担体を含む。
【0035】
本発明は、さらになお、有害用量の放射線または化学療法剤にさらされた哺乳類を処置する方法、哺乳類に、式I、II、IIIまたはIVのいずれかの有効用量のHBGF類似体を投与することを包含する方法を提供する。特に好ましくは、Xが、FGF HBGFRを結合するHBGFであり、さらに好ましくはFGF−7レセプターである。その方法は、哺乳類に、有効用量の合成ヘパリン結合成長因子類似体を投与して、粘膜炎、胃腸症候群、または放射線壊死を含みうる放射線または化学療法剤の有害な影響を改善することを含む。
【0036】
本発明は、活性ペプチドを哺乳類、特にヒトに送出する方法も提供する。その方法は、その表面に、式I、II、IIIまたはIVのいずれかのHBGF類似体との非共有結合を介して被覆した医療用デバイスを供し、そして哺乳類の表面上に医療用デバイスを載せるか、またはその上に医療用デバイスを移植することを含む。
【0037】
本発明の他の目的、利点および新規特性、およびさらなる範囲の適用性は、付随の図面と共に、続く詳細な説明で部分的に説明され、そして部分的に、以下のものの検査により、当業者に明らかになるか、または本発明の実施によって習得されうる。本発明の目的および利点は、装置および付随の請求項で特に指摘される組合わせの手段により認識および保持されうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明の各合成HBGF類似体は、特定のHBGFにより結合された1個またはそれ以上のレセプターに結合する特定のHBGFの類似体である。合成HBGF類似体は、ホルモン、サイトカイン、リンホカイン、キモカインまたはインターロイキンの類似体でありうる。
【0039】
1つの態様では、本発明の合成HBGF類似体は、式I、II、IIIまたはIVのいずれか1つの分子である。HBGFは、ヘパリンに選択的に結合するあらゆる成長因子を含む。例えば、HBGFは、既知FGF(FGF−1からFGF−23まで)、HBBM(ヘパリン結合脳分裂促進剤)、HB−GAF(ヘパリン結合成長関連因子)、HB−EGF(ヘパリン結合EGF様因子)、HB−GAM(ヘパリン結合成長関連分子;プレイオトロフィン、PTN、HARPとしても知られる)、TGF−α(トランスフォーミング成長因子−α)、TGF−β(トランスフォーミング成長因子−β)、VEGF(脈管内皮成長因子)、EGF(表皮成長因子)、IGF−1(インスリン様成長因子−1)、IGF−2(インスリン様成長因子−2)、PDGF(血小板由来成長因子)、RANTES、SDF−1、分泌フリーズルド関連タンパク質−1(SFRP−1)、小型誘導性サイトカインA3(SCYA3)、誘導性サイトカイン・サブファミリーAメンバー20(SCYA20)、誘導性サイトカイン・サブファミリーBメンバー14(SCYB14)、誘導性サイトカイン・サブファミリーDメンバー1(SCYD1)、支質細胞由来因子−1(SDF−1)、トロンボスポンジン1、2、3および4(THBS1−4)、血小板因子4(PF4)、水晶体上皮由来成長因子(LEDGF)、ミディカイン(midikine)(MK)、マクロファージ炎症性タンパク質(MIP−1)、モエシン(MSN)、肝細胞成長因子(HGF;SFとも称される)、胎盤成長因子、IL−1(インターロイキン−1)、IL−2(インターロイキン−2)、IL−3(インターロイキン−3)、IL−6(インターロイキン−6)、IL−7(インターロイキン−7)、IL−10(インターロイキン−10)、IL−12(インターロイキン−12)、IFN−α(インターフェロン−α)、IFN−γ(インターフェロン−γ)、TNF−α(腫瘍壊死因子−α)、SDGF(神経鞘腫由来成長因子)、神経成長因子、軸索成長促進因子2(NEGF2)、ニューロトロフィン、BMP−2(骨形成タンパク質2)、OP−1(骨形成タンパク質1;BMP−7とも称される)、ケラチノサイト成長因子(KGF)、インターフェロン−γ誘導性タンパク質−20、RANTES、およびHIV−tat−相互作用因子、アンフィレグリン(AREG)、脈管関連移行細胞タンパク質(AAMP)、アンギオスタチン、ベータセルリン(BTC)、結合組織成長因子(CTGF)、システイン富脈管形成インデューサー61(CYCR61)、エンドスタチン、フラクタルカイン/ニューロアクチン、または神経膠由来神経栄養因子(GDNF)、GRO2、肝癌由来成長因子(HDGF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)、およびヘパリンに親和性を示す多くの成長因子、サイトカイン、インターロイキンおよびキモカインのいずれかでありうる。
【0040】
これらおよび他のHBGFの多くのアミノ酸配列は、インターネットサイトhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrezで、医薬タンパク質データベースの国立図書館から入手可能である。前述のインターネットサイト上のこれらのHBGFアミノ酸配列は、参照してここに組み込まれる。これらおよび他のHBGFから得られるレセプター結合ドメインのアミノ酸配列を組み込む合成HBGF類似体の使用は、本発明で特に熟考される。
【0041】
本発明の特定の実施態様では、本発明の合成HBGF類似体は、基本的に、式I、II、IIIまたはIVのいずれか1つの分子から構成され、すなわち、式I、II、IIIまたはIVのいずれか1つの分子は、合成HBGF類似体組成物中の主要な活性成分である。
【0042】
他の特定の実施態様では、本発明の合成HBGF類似体は、全体的に、式I、II、IIIまたはIVのいずれか1つの分子から構成され、すなわち、式I、II、IIIまたはIVのいずれか1つの分子は、合成HBGF類似体組成物中の唯一の成分である。
式IからIVまでのヘパリン結合成長因子
式IからIVまでの合成HBGF類似体の領域XおよびZは、アミノ酸残基を含み、そして都合により領域Yは、アミノ酸残基を含む。アミノ酸残基は、Rが水素またはあらゆる有機基でありうる−NHRCO−として定義される。アミノ酸は、D−アミノ酸またはL−アミノ酸でありうる。さらに、アミノ酸は、アミノ酸の炭素鎖の長さによって、α−アミノ酸、β−アミノ酸、γ−アミノ酸、またはδ−アミノ酸などでありうる。
【0043】
本発明の合成HBGF類似体のX、YおよびZ成分領域のアミノ酸は、タンパク質中で天然に見られる20種のアミノ酸、すなわち、アラニン(ala、A)、アルギニン(Arg、R)、アスパラギン(Asn、N)、アスパラギン酸(Asp、D)、システイン(Cys、C)、グルタミン酸(Glu、E)、グルタミン(Gln、Q)、グリシン(Gly、G)、ヒスチジン(His、H)、イソロイシン(Ile、I)、ロイシン(Leu、L)、リシン(Lys、K)、メチオニン(Met、M)、フェニルアラニン(Phe、F)、プロリン(Pro、P)、セリン(Ser、S)、トレオニン(Thr、T)、トリプトファン(Trp、W)、チロシン(Tyr、Y)、およびバリン(Val、V)のいずれかを含むことができる。
【0044】
さらに、本発明の合成HBGF類似体のX、YおよびZ成分領域のアミノ酸は、タンパク質では天然に見られない天然に生じるアミノ酸、例えば、β−アラニン、ベタイン(N,N,N−トリメチルグリシン)、ホモセリン、ホモシステイン、γ−アミノ酪酸、オルニチン、およびシトルリンのいずれかを含みうる。
【0045】
さらに、本発明の合成HBGF類似体のX、YおよびZ成分領域のアミノ酸は、非生物学的アミノ酸のいずれか、すなわち、例えば、自然界で見られない直鎖アミノカルボン酸のような生物系で通常は見られないものを含みうる。自然界で見られない直鎖アミノカルボン酸の例は、6−アミノヘキサン酸、および7−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸などを含む。
【0046】
nが0である場合、式IまたはIIでは、本発明の分子は、単一X領域を含む。nが0である場合、式Iの分子は、その分子が、線状鎖または分岐されたもの(Xは、R1がジアミンアミノ酸残基であるアミド結合を通してのように、R1の側鎖を通してR1に共有結合で結合される)であるように、線状(Xは、ペプチド結合を通すように、R1のN末端を通してR1に共有結合で結合される)でありうる。式IまたはII中で、nが1である場合、その分子は、アミノ酸配列で同一である2つのX領域を含む。したがって、nが1である場合、その分子は、下に記述されるとおり2つのX領域の間の架橋によっても制約されうる分岐鎖であるか、または下に記述されるとおり環状化されうる。本実施態様では、本発明の各HBGF類似体は、2つのHBGFRを結合し、そしてレセプター二量体化を誘導できる。有利にも、二量体化は、すぐに、HBGFRの増強されたレセプター・シグナル発生活性を増強する。
【0047】
式I中、nが0である場合、本発明の合成HBGF類似体のX領域は、アミノ酸R1を通して、領域Yに共有結合で連結される。Yは、都合により、疎水性領域でありうる。同様に、式II中、nが0である場合、本発明の合成HBGF類似体のX領域は、アミノ酸J1を通して、領域Yに共有結合で連結されるが、ただしXが、J1の反応性側鎖を通して連結され、したがって、J1は、ジアミンアミノ酸のような三官能性アミノ酸残基を構築する。ここでも、Yは、都合により疎水性領域でありうる。
【0048】
式I中、nが1である場合、1つのX領域は、アミノ酸R1を通して、領域Yに共有結合で連結され、そしてそれは、次に、三官能性アルファアミノ酸、そして好ましくはジアミンアミノ酸である第二のアミノ酸R2に共有結合で連結される。R1は、R2の1つのアミノ基に連結される。第二のX領域は、ジアミンアミノ酸の第二のアミノ基のようなR2の第二の反応性基通して、R2に共有結合で連結される。その後、R2は、それのカルボキシ末端を通して、合成HBGF類似体のY領域に共有結合で連結される。同様に、式II中、nが1である場合、1つのX領域は、アミノ酸J1の反応性側鎖を通して、共有結合で連結され、そして、次に、第二のアミノ酸J2に共有結合で連結される。J1およびJ2の両方が、三官能性アミノ酸、好ましくはジアミンアミノ酸を構築する。第二のX領域は、ジアミンアミノ酸の第二のアミノ基のようなJ2の第二の反応性基を通して、J2に共有結合で連結される。その後、R2は、それのカルボキシ末端を通して、合成HBGF類似体のY領域に共有結合で連結される。
【0049】
式Iで表されるアミノ酸R1は、上に記述されるアミノ酸のいずれかでありうる。式Iで表されるR2、および式IIで表されるJ1およびJ2は、あらゆる三官能性アミノ酸残基、好ましくは三官能性アルファアミノ酸残基でありうる。好ましい実施態様では、三官能性アミノ酸残基は、例えば、リシンまたはオルニチン、または2個のアミノ基を有する他のあらゆるアミノ酸のようなジアミンアミノ酸である。
【0050】
本発明の合成HBGF類似体の式IからIVまでで表される領域Xは、HBGFRを結合する合成ペプチド鎖である。例えば、領域Xは、HBGFRを結合するあらゆるアミノ酸配列を有し、そしてHBGFのアミノ酸配列の部分と同一であるアミノ酸配列を含みうる。代わりに、Xは、HBGFのアミノ酸配列と同一なものよりむしろ相同なアミノ酸配列を有する。本発明の合成HBGF類似体によって結合される特定のHBGFRは、当初のHBGFの同族レセプターであっても、なくてもよく、すなわち、合成HBGF類似体は、異なるHBGFのレセプターに追加的に、または唯一結合しうる。
【0051】
ここで使用される場合、用語「相同性の」は、配列が配置されるときに、1つまたはそれ以上のアミノ酸位置にあるアミノ酸配列で異なるペプチドに該当する。例えば、2つの相同なペプチドのアミノ酸配列は、5から10個までのアミノ酸の配列されたアミノ酸配列内の1つのアミノ酸残基によってのみ異なる可能性がある。代わりに、10から15個までのアミノ酸の2個の相同なペプチドは、配列された場合、2個以下のアミノ酸残基によって異なる可能性がある。別の代替物では、15から20個まで、もしくはそれ以上のアミノ酸の2個の相同なペプチドは、配列された場合、3個までのアミノ酸残基により異なる可能性がある。長いペプチドについては、相同なペプチドは、2個のペプチド相同体のアミノ酸配列が配列される場合、およそ5%、10%、20%または25%までのアミノ酸残基により異なる可能性がある。
【0052】
式IからIVまでのX領域として特に有用なアミノ酸配列は、わずか1個または2個あるいは非常に少数の位置にある天然の成長因子のアミノ酸配列と異なる天然に生じるHBGFのフラグメントの相同体を含む。このような配列は、好ましくは、当初のアミノ酸が、周知原則;例えば、バリン、ロイシン、イソロイシンまたはプロリンを伴うアラニンのような非極性アミノ酸の置換、または他の同じ酸性または塩基性特徴を有する1つの酸性または塩基性アミノ酸の置換により類似の特徴のアミノ酸と置換される、控えめな変化を含む。
【0053】
別の代替例では、合成HBGF類似体のX領域は、あらゆるHBGFのアミノ酸配列に対して検出可能な相同性を示さないアミノ酸配列を含みうる。同族の成長因子とほとんどアミノ酸配列相同性を示さないか、またはまったく示さず、そして、なおHBGFRを結合する本発明の合成類似体のX領域の成分として有用なペプチドまたは、成長因子類似体は、例えば、ファージ表示による選択を含めた広範な範囲の方法のいずれかにより得ることができる。例として、Sidhuら、「新規結合ペプチドの選択のためのファージ・ディスプレイ」、Methods Enzymol.328巻:333−63頁(2000年)を参照。HBGFRを結合するこのようなペプチドが、あらゆる既知HBGFに相同性をまだ示さない例は、実施例1で後述されるC19ペプチド配列である。
【0054】
本発明の合成HBGF類似体のX領域は、HBGFRを有効に結合するアミノ酸配列を含むあらゆる長さを示す。好ましくは、合成HBGF類似体のX領域は、少なくともおよそ3個のアミノ酸残基の最小の長さを示す。さらに好ましくは、合成HBGF類似体のX領域は、少なくともおよそ6個のアミノ酸残基の最小の長さを示す。最も好ましくは、合成HBGF類似体のX領域は、少なくともおよそ10個のアミノ酸残基の最小の長さを示す。本発明の合成HBGF類似体のX領域は、好ましくは、およそ50個までのアミノ酸残基の最大の長さ、さらに好ましくは、およそ40個までのアミノ酸残基の最大の長さを示し、そして最も好ましくは、およそ30個までのアミノ酸残基の最大の長さを示す。
【0055】
2個のX領域を含む合成HBGF類似体の1つの実施態様では、X領域は、共有結合で架橋される。適切な架橋は、2個のX領域を連結するシステインのS−S架橋により形成されうる。代わりに、架橋は、ランチオニン(チオ−ジアラニン)残基を組み込んで、チオエーテル結合により一緒に共有結合で結合されるアラニン残基で、2つの同一のX鎖を連結させることによって、X領域アミノ酸鎖の同時および並行のペプチド合成の間に都合よく形成されうる。別の方法では、2個のX領域アミノ酸鎖は、ジカルボン酸、例えばスベリン酸(オクタン二酸)などのような架橋剤を導入し、それにより遊離アミノ、ヒドロキシまたはチオール基を有する2個の同一のX領域の間の炭化水素架橋を導入することによって架橋されうる。架橋X領域は、Xの末端アミノ酸が、反応性側鎖または末端基を通して、都合により架橋または他の連結で架橋される場合のような環状ペプチドを構成しうる。
【0056】
本発明の合成HBGF類似体では、1つの好ましい実施態様で、式IからIVまでのY領域は、HBGF類似体を、ポリスチレンまたはポリカプロラクトン表面などに非共有結合で結合させるのに十分に疎水性であるリンカーである。さらに、Y領域は、他の疎水性表面、特に医療用デバイスで使用される材料から形成される疎水性表面に結合しうる。このような表面は、一般的には疎水性表面である。適切な表面の例には、それに限定されないが、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、伸縮ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリエチルビニルアセテート、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(エチレン−コ−酢酸ビニル)、ポリカプロラクトン、ポリラクチド、ポリグリコライドおよび前述のいずれか2つまたはそれより多くの共重合体のような疎水性重合体;2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサンのようなシロキサン;天然および人工ゴム;ガラス;およびステンレス鋼、チタン、プラチナ、およびニチノールを含めた金属が挙げられる。好ましくは、疎水性表面へのHBGF類似体の結合は、酵素連結免疫アッセイまたは生物学的アッセイのような分析法により検出されるのに十分な量のものである。
【0057】
式IからIVまでのY領域は、原子の鎖または鎖を形成する原子の組合わせを含みうる。通常、その鎖は、例えばアミノ酸(例えば、上に列挙されるとおりタンパク質に見られるアミノ酸;オルニチンおよびシトルリンのようなタンパク質中に見られない天然に生じるアミノ酸;またはアミノヘキサン酸のような非天然アミノ酸;または前述のアミノ酸のいずれかの組合わせ)から形成される原子の鎖のような、都合により、酸素、窒素または硫黄原子を含みうる炭素原子の鎖である。
【0058】
式IのY領域の原子の鎖は、R1またはR2に、そしてペプチドZに共有結合で付着される。同様に、式IIのY領域の原子の鎖は、J1またはJ2に、そしてペプチドZに共有結合で付着される。共有結合は、例えば、ペプチド、アミドまたはエステル結合でありうる。好ましくは、Y領域は、最小約9個の原子の鎖を含む。さらに好ましくは、Y領域は、最小約12個の原子の鎖を含む。最も好ましくは、Y領域は、最小約15個の原子の鎖を含む。例えば、Y領域は、少なくとも4個、少なくとも5個または少なくとも6個のアミノ酸の鎖から形成されうる。代わりに、Y領域は、少なくとも1個、少なくとも2個、または少なくとも3個のアミノヘキサン酸残基の鎖から形成されうる。
【0059】
好ましくは、Y領域は、最大約50個の原子の鎖を含む。さらに好ましくは、Y領域は、最大約45個の原子の鎖を含む。最も好ましくは、Y領域は、最大約35個の原子の鎖を含む。例えば、Y領域は、約12個まで、約15個まで、または約17個までのアミノ酸の鎖から形成されうる。
【0060】
式IまたはIIのY領域のアミノ酸配列は、好ましくは、人工配列であり、すなわち、HBGFの天然のリガンドに見られる4個またはそれ以上のアミノ酸残基のアミノ酸配列をなんら含まない。
【0061】
特定の実施態様では、Y領域は、疎水性アミノ酸残基、または疎水性アミノ酸残基の鎖を含む。例えば、Y領域は、1個、2個、3個またはそれ以上のアミノヘキサン酸残基のような1個またはそれ以上のアミノヘキサン酸残基を含みうる。
【0062】
別の特定の実施態様では、式IまたはIIの分子のY領域は、1個と約20個の炭素原子の間にある分岐または未分岐の飽和または不飽和アルキル鎖を含みうる。さらに別の実施態様では、Y領域は、例えば、エチレングリコール残基のような疎水性残基の鎖を含むことができる。例えば、Y領域は、少なくとも約3個、または少なくとも約4個、または少なくとも約5個のエチレングリコール残基を含みうる。代わりに、Y領域は、約12個まで、約15個まで、または約17個までのエチレングリコール残基を含みうる。別の代替的実施態様では、Y領域は、アミノ酸疎水性残基の組合わせを含みうる。
【0063】
式IまたはIIの分子のZ領域は、ヘパリン結合領域であり、そしてVerrecchioら、J.Biol.Chem.275巻:7701頁(2000年)に記述されるとおり1つまたはそれ以上のヘパリン結合モチーフBBxBまたはBBBxxBを含みうる。代わりに、Z領域は、BBxBおよびBBBxxBモチーフ(Bは、リシン、アルギニン、またはヒスチジンを表し、そしてxは、天然に生じるか、または天然に生じないアミノ酸を表す)の両方を含みうる。例えば、ヘパリン結合モチーフは、リシンまたはアルギニンから各々独立に選択されるとおり最初の3個のアミノ酸、続いてあらゆる2個のアミノ酸およびリシンまたはアルギニンである6番目のアミノ酸を明記する配列[KR][KR][KR]X(2)[KR](配列番号:1)によって示されうる。
【0064】
ヘパリン結合モチーフの数は、重要ではない。例えば、Z領域は、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個または少なくとも5個のヘパリン結合モチーフを含みうる。代わりに、Z領域は、最大約10個までのヘパリン結合モチーフを含みうる。別の代替的実施態様では、Z領域は、少なくとも4個、少なくとも6個または少なくとも8個のアミノ酸残基を含む。さらに、Z領域は、約20個まで、約25個まで、または約30個までのアミノ酸残基を含みうる。部分的に、ヘパリンに関するZ領域の結合活性は、選択される特定のヘパリン結合モチーフ、およびZにおけるこのようなモチーフの数によって決定される。したがって、特定の用途について、このようなモチーフの選択および数の両方は、Z領域の最適なヘパリン結合を提供するために変化されうる。
【0065】
好ましい実施態様では、Z領域のアミノ酸配列は、RKRKLERIAR(配列番号:2)である。別の実施態様では、Z領域のアミノ酸配列は、RKRKLGRIAR(配列番号:3)である。さらに別の実施態様では、Z領域のアミノ酸配列は、RKRKLWRARA(配列番号:4)である。さらに別の実施態様では、Z領域のアミノ酸配列は、RKRKLERIARC(配列番号:5)である。末端システイン残基の存在は、都合により、Z領域に、フルオロクロム、ラジオアイソトープおよび他の検出可能なマーカーのような検出試薬を含めた他の分子を連結させる機会、並びに毒素、免疫原などを連結する機会をもたらす。
【0066】
既知ヘパリン結合ドメインにほとんど、またはまったく配列相同性を保持しないヘパリン結合ドメインも、本発明で達成される。ここで使用される場合、用語「ヘパリン結合」は、−NHSO3-およびスルフェート修飾多糖、ヘパリンに対する結合、および関連修飾多糖、ヘパランに対する結合をも意味する。
【0067】
本発明の合成HBGF類似体のZ領域は、低塩濃度、約0.15MまでのNaCl、都合により約0.48MまでのNaClでのヘパリンに対する結合の特性を付与して、ヘパリンと、因子類似体のZ領域の間の複合体を形成する。複合体を、1M NaCl中に解離させて、ヘパリン複合体から合成HBGF類似体を放出することができる。
【0068】
Z領域は、非シグナル発生ペプチドである。したがって、単独で使用される場合、Z領域は、HBGFのレセプターに結合されうるヘパリンに結合するが、しかしZ領域ペプチド単独の結合は、レセプターによるシグナル発生を開始、あるいは阻止しない。
【0069】
Z領域のC末端は、封鎖されるか、または遊離型でありうる。例えば、Z領域のC末端は、末端アミノ酸の遊離カルキシル基でありうるか、または代わりに、Z領域のC末端は、例えば、アミド基のような封鎖カルボキシル基でありうる。好ましい実施態様では、Z領域のC末端は、図1および2で示されるとおりアミド化アルギニンである。
【0070】
ここにおよび他の場所で使用される場合、以下の用語は、示された意味を示す。
【0071】
用語「アルケン」は、1つまたはそれ以上の炭素―炭素結合を含有する不飽和炭化水素を含む。このようなアルケン基の例は、エチレン、プロペンなどを含む。
【0072】
用語「アルケニル」は、2から6個までの炭素原子の線状一価炭化水素ラジカル、または少なくとも1個の二重結合を含有する3から6個までの炭素原子の分岐一価炭化水素残基を含む。その例は、エチニル、2−プロペニルなどを含む。
【0073】
ここで特定される「アルキル」基は、直鎖または分岐形態のいずれかにある指示された長さのアルキルラジカルのものを含む。このようなアルキルラジカルの例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、ターシャリー−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシルなどを含む。
【0074】
用語「アリール」は、6から12個までの環原子の、そして都合によりアルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルキチオ、ハロ、ニトロ、アシル、シアノ、アミノ、モノ置換アミノ、二置換アミノ、ヒドロキシ、カルボキシ、またはアルコキシ−カルボニルから選択される1個またはそれ以上の置換基で独立に置換された一価または二環芳香族炭化水素ラジカルを含む。アリール基の例は、フェニル、ビフェニル、ナフチル、1−ナフチル、および2−ナフチル、それらの誘導体などを含む。
【0075】
用語「アラルキル」は、ラジカル−RaRb(Raは、アルキレン(二価アルキル)基であり、そしてRbは、上に定義されるとおりのアリール基である)を含む。アラルキル基の例は、ベンジル、フェニルエチル、3−(3−クロロフェニル)−2−メチルペンチルなどを含む。用語「脂肪族」は、例えば、アルカン、アルケン、アルキン、およびそれらの誘導体のような炭化水素鎖を有する化合物を含む。
【0076】
用語「アシル」は、基RCO−(Rは、有機基である)を含む。例は、アセチル基CH3CO−である。
【0077】
ペプチドまたは脂肪族部分は、上に定義されるとおりのアルキルまたは置換アルキル基が、1個またはそれ以上のカルボニル{−(C=O)−}基を通して結合される場合、「アシル化」される。最も通常には、ペプチドは、N末端でアシル化される。
【0078】
「アミド」は、カルボニル基(−CO.NH2)に付着した三価窒素を有する化合物を含む。
【0079】
「アミン」は、アミノ基(−NH2)を含有する化合物を含む。
FGF合成類似体
別の特定の態様では、本発明は、合成FGFペプチド類似体を提供する。Xが、FGF類似体である、式IからIVまでのいずれかによって表される合成FGF類似体は、23のFGF−1からFGF−23まですべてを含めた既知FGFのいずれかのようなすべてのFGFでありうるFGFの類似体である。
【0080】
式IからIVまでの分子のX領域は、例えばFGF−2またはFGF−7のようなFGFに見られるアミノ酸配列を含みうる。代わりに、X領域は、分子で結合されるFGFRの天然リガンドに見られない配列を含みうる。
【0081】
式IからIVまでのいずれかの合成FGFペプチド類似体のY領域は、必ずしも疎水性でなく、したがって、存在する場合、極性、塩基性、酸性、親水性または疎水性でありうる。したがって、合成FGFペプチド類似体のY領域のアミノ酸残基は、あらゆるアミノ酸、または極性、イオン性、疎水性、または親水性基を含みうる。
【0082】
合成FGFペプチド類似体のX領域は、繊維芽細胞成長因子に見られるアミノ酸配列に100%同一であるアミノ酸配列か、または繊維芽細胞成長因子のアミノ酸配列に相同なアミノ酸配列を含みうる。例えば、X領域は、繊維芽細胞成長因子から得られるアミノ酸配列に少なくとも約50%、少なくとも75%、または少なくとも約90%の相同性であるアミノ酸配列を含みうる。繊維芽細胞成長因子は、既知、またはまだ同定されていない繊維芽細胞成長因子の全てを含めたあらゆる繊維芽成長因子でありうる。
【0083】
特定の実施態様では、本発明の合成FGF類似体は、HBGFRのアゴニストである。HBGFRに結合される場合、合成HBGF類似体は、HBGFRによりシグナルを始める。
【0084】
別の特定の実施態様では、本発明の合成FGF類似体は、HBGFRのアンタゴニストである。HBGFRに結合される場合、合成HBGF類似体は、HBGFRによりシグナル発生を阻止する。
【0085】
本発明の別の特定の実施態様では、合成FGF類似体は、FGF−2(塩基性FGF、またはbFGFとしても知られている)の類似体である。本発明の別の特定の実施態様では、FGFレセプターに対する合成FGF類似体の結合は、FGFレセプターによりシグナルを始める。別の特定の実施態様では、FGFレセプターに対する合成FGF類似体の結合は、FGFレセプターによりシグナル発生を阻止する。
【0086】
さらに別の特定の実施態様では、本発明は、FGFレセプター結合ドメインがヘパリン結合ドメインに疎水性リンカーを通して結合されるものであるFGF−2の合成FGF類似体を提供する。別の特定の実施態様では、本発明は、X領域のアミノ酸配列がFGF−2から得られるYRSRKYSSWYVALKR(配列番号:6)であるFGF−2の合成FGF類似体を提供する。さらに別の特定の実施態様では、本発明は、X領域のアミノ酸配列がNRFHSWDCIKTWASDTFVLVCYDDGSEA(配列番号:7)である合成FGF類似体を提供する。
【0087】
さらに別の特定の実施態様では、本発明は、X領域がYISKKHAEKNWFVGLKK(配列番号:8)であるFGF−1の合成FGF類似体を提供する。この配列は、FGF−1のベータ9およびベータ10ループを繋げるアミノ酸から誘導される。さらに別の特定の実施態様では、X領域が、HIQLQLSASEVGEVY(配列番号:9)であり、そしてFGF−1のβ−4およびβ−5領域から誘導されるアミノ酸に対応するFGF−1類似体を提供する。
【0088】
さらに別の特定の実施態様では、本発明は、X領域がYASAKWTHNGGEMFVALNQK(配列番号:10)であるFGF−7の合成FGF類似体を提供する。FGF−7の合成FGF類似体のさらに別の実施態様では、X領域は、アミノ酸配列YNIMEIRTVAVGIVA(配列番号:11)である。
【0089】
下の表1は、本発明の2つの合成FGF類似体F2A3およびF2A4の作用を、組換えFGF−2のものと比較する。成長研究では、使用された特異的セルラインは、マウスC3H10T1/2繊維芽細胞、A7R5マウス平滑筋細胞、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)、ウシ大動脈内皮細胞(BAE)、ラット微細血管内皮細胞(RMEC)、およびCG4神経膠腫細胞を含む。平滑筋アクチンおよびTGF−βRII(成長因子−ベータをトランスフォーミングするレセプター)における変化を、免疫化学により監視した。フルオロゲンとして2,4−ジアミノフルオレッセンを使用した蛍光顕微鏡法により、一酸化窒素(NO)生成を監視した。ラット筋肉における被覆縫合糸の導入に続いて、脈管形成を監視した。唾液生成を監視することによって、唾液腺刺激を測定した。ラット皮膚の全厚みの外傷で、外傷治癒を監視した。表1および以降で、「N.D.」は、測定されないことを意味する。
【0090】
【表1】
【0091】
VEGF合成類似体
別の特定の態様では、本発明は、合成VEGFペプチド類似体を提供する。示される合成VEGF類似体は、1つの実施態様では、X領域のアミノ酸配列がAPMAEGGGQNHHEVVKFMDV(配列番号:12)であるVEGF類似体を含む。別の実施態様では、X領域のアミノ酸配列がGATWLPPNPTK(配列番号:13)である合成VEGFペプチド類似体を提供する。さらに別の実施態様では、X領域のアミノ酸配列がNFLLSWVHWSLALLLYLHHA(配列番号:14)である合成VEGFペプチド類似体を提供する。
【0092】
下の表2は、本発明の2つの合成VEGFペプチド類似体VA01およびVA02の作用を、組換えVEGFのものと比較する。MAPキナーゼについては、ウシ大動脈内皮(BAE)細胞を、30または60分間、50ng/mLのVEGF、VA01またはVA02で刺激した。モノクローナル抗ホスホ44/42MAPキナーゼ抗体(Thr202およびTyr204)を用いたウエスタン・ブロッティングにより、細胞溶解液を分析し、そしてVEGF、VA01またはVA02を用いた刺激に続いて、対照に比べてERK−1およびERK−2のリン酸化が増大したことを検出した。成長については、VEGF、VA01またはVA02を用いた刺激に続いて、BAE細胞の相対的細胞数における増加が見出されたのに対して、平滑筋セルラインA7R5では、類似体の作用に特異性を示す成長刺激は見られなかった。
【0093】
【表2】
【0094】
BMP合成類似体
別の特定の態様では、本発明は、合成BMPペプチド類似体を提供する。合成骨形成タンパク質類似体は、X領域がアミノ酸配列LYVDFSDVGWNDW(配列番号:15)、AISMLYLDENEKVVL(配列番号:16)、ISMLYLDENEKVVLKNY(配列番号:17)、EKVVLKNYQDMVVEG(配列番号:18)、LVVKENEDLYLMSIAC(配列番号:19)、AFYCHGECPFPLADHL(配列番号:20)、またはPFPLADHLNSTNHAIVQTLVNSV(配列番号:21)である実施態様を含む。
【0095】
下の表3は、1つのBMP類似体B2A2の生化学的相互作用、およびC2C12細胞を使用して調節を監視したアルカリ性ホスファターゼの調節を要約する。
【0096】
【表3】
【0097】
ヘパリン結合成長因子類似体を合成する方法
本発明の類似体の合成は、当業界で周知である多様な化学的方法のいずれかにより達成されうる。このような方法は、ベンチスケールの固相合成および市販で入手可能な多くのペプチド合成機のいずれか1つでの自動ペプチド合成を含む。好ましくは、合成機は、99パーセントより大きな周期当たりのカップリング効率を示す。
【0098】
段階合成によるか、または類似の周知技術により結合されうる一連のフラグメントの合成により、本発明の類似体を生成しうる。例えば、Nyfeler、「Peptide synthesis via fragment condensation」、Methods Mol Biol 35巻:303−16(1994年);およびMerrifield、「Concept and early development of solid−phase peptide synthesis」,Methods in Enzymol 289巻:3−13頁(1997年)を参照。これらの方法は、個別のペプチドの調製のために日常的に使用される。そのX、YおよびZ成分を構築するペプチドのような成分部で本発明の類似体を構築し、そしてその後、このような成分部を繋げて、類似体を構築することは可能である。例えば、DawsonおよびKent、「Synthesis of native proteins by chemical ligation」,Annu.Rev.Biochem.69巻:923−960頁(2000年);およびEomら、「Tandem ligation of multipartite peptides with cell−permeable activity」、J.Am.Chem.Soc.125巻:73−82頁(2003年)を参照。
【0099】
有利には、本発明の式IからIVまでの類似体が2つの同一のX領域アミノ酸配列を含む場合には、これらの同一のX領域ペプチドの合成は、平行に行われうる。この方法により、添加の各々のサイクルは、X領域ペプチドの両方にアミノ酸を加え、そしてこれらの分岐分子の合成を大いに促進する。
【0100】
これらの方法の順化により、HBGFRに対する結合のような所望の特性についてスクリーニングするために使用されうるペプチドライブラリーを作製しうる。例えば、Fox、「Multiple peptide synthesis」、Mol.Biotechnol.3巻:249−58頁(1995年);およびWadaおよびTregear、「Solid phase peptide synthesis:recent advances and applications」,Austral.Biotechnol.3巻:332−6頁(1993年)を参照。
【0101】
特定の実施態様では、本発明の合成HBGF類似体は、HBGFRのアゴニストである。HBGFRに結合される場合、合成HBGF類似体は、HBGFRによりシグナルを始める。
【0102】
別の特定の実施態様では、本発明の合成HBGF類似体は、HBGFRのアンタゴニストである。HBGFRに結合される場合、合成HBGF類似体は、HBGFRによりシグナル発生を阻止する。
【0103】
特定の態様では、本発明は、細胞を、式IからIVまでによる合成HBGF類似体の有効量と接触させることによって、細胞中での成長因子レセプターシグナル発生を刺激する方法を提供する。有効量は、当業者によって容易に決定されうる。シグナル発生は、細胞からのサイトカイン放出、細胞の増殖または分化の刺激または阻害、細胞の化学走性、哺乳類の免疫系の刺激または阻害を生じうる。
【0104】
本発明のHBGFの使用の方法
本発明のHBGF類似体は、例えば、種々の疾患の予防または治療のための溶解性薬剤としての投与のように、溶解性予防薬または治療用医薬製剤としてを含めて、例えば癌療法および放射線防御での使用を含めて、多くの点で有用である生物学的に活性な分子の費用効率の高い、そして潜在的に制限のない源を提供する。
【0105】
本発明の合成HBGF類似体は、例えば細胞の成長および増殖、または外傷の治癒を刺激するために、または例えば縫合糸、移植片および生物学上の応答を促進する医療機器のような医療用デバイスの被覆剤のための生物学的活性剤としても有用である。
【0106】
1つの態様では、本発明は、有害線量の放射線にさらされた哺乳類を処置する方法を提供する。その方法は、FGF類似体である本発明の合成HBGF類似体の有効量を、哺乳類に投与することを含む。その処置は、粘膜炎、胃腸症候群、または放射線の照射から生じる可能性のあるような放射線壊死の防止または処置に特に有用である。HBGF類似体は、非経口で、経口で、または局所に投与されうる。代わりに、HBGF類似体は、例えば類似体被覆医療用デバイスで運動領域に送出されうる。関連の実施態様では、本発明は、哺乳類に化学療法剤の毒性を改善するために、1用量の化学療法剤を投与された哺乳類を処置する方法を提供する。上述の方法の特定の実施態様では、哺乳類は、ヒトである。本発明の別の特定の実施態様では、HBGF類似体は、FGF−2類似体またはFGF−7類似体である。
【0107】
ここに使用される場合、用語「医療用デバイス」は、生物、好ましくは哺乳類、特にヒトでの臓器、組織、血液または他の体液との接触で、1つまたはそれ以上の表面を有するデバイスを意味する。医療用デバイスは、例えば血中酸素発生装置、血液ポンプ、血液センサー、血液を運ぶために使用される管、および患者に戻される血液に接触するようなもののような手術で使用するための体外デバイスを含む。その用語は、血管移植片、ステント、ペースメーカーリード、心臓弁、および血管に、または心臓に移植されるようなもののような、ヒトまたは動物の体での血液接触で移植される内部プロテーゼ(内部人工器官)をも含みうる。その用語は、さらに、監視または修復の目的のための血管または心臓に入れられるカテーテル、ガイド線のような、一過性血管内用途のためのデバイスを含みうる。その用語は、さらに、神経電極、筋肉電極、移植可能なパルス波発生装置、移植可能な薬剤ポンプ、および除細動器を含みうる。さらに、用語の医療用デバイスは、縫合糸、移植片材料、外傷被覆材、神経ガイド、骨ワックス、動脈瘤コイル、塞栓形成粒子、微細ビーズ、歯科移植片、骨プロテーゼ、組織足場、人工関節または徐放性薬剤送出デバイスを含みうる。
【0108】
医療用デバイスの表面は、例えば、ステンレス鋼、チタン、プラチナ、タングステン、セラミックス、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、伸縮ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリカプロラクトン、ポリラクチド、ポリグリコライド、ポリシロキサン(2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサンのような)、天然ゴム、または人工ゴム、またはブロック重合体または共重合体のような、医療用デバイスに使用するのに適切な一般に使用される材料のいずれかから形成されうる。
【0109】
医療用デバイスの表面上に生体分子を被覆する方法が知られている。例えば、Hendriksらに対する米国特許第5,866,113号を参照し、その明細書は、参照してここに組み込まれる。Tsangらは、米国特許第5,955,588号で、非トロンボゲン形成被覆剤組成物、およびそれを医療用デバイスに使用する方法を教示し、そして参照してここに組み込まれる。Zamoraらは、米国特許第6,342,591号で、細胞接着組成物を調節する医療用デバイスのための両親媒性被覆剤を教示し、そして参照してここに組み込まれる。
【0110】
最新の発明から離れて教示する他の被覆剤発明は、以下のものを含む:Ottersbachらは、米国特許第6,248,811号で、支持体の表面上に被覆剤を共有結合で固定する生物活性被覆剤を教示し、したがって、最新の発明から離れて教示する。Raghebらは、米国特許第6,299,604号で、生物活性材料が、被覆層の少なくとも一部に据えられ、そして多孔性層を通して拡散する構造物の一方の表面に据えられる被覆層を記述する。同様に、Chudzikらは、米国特許第6,344,035号で、高分子成分の混合物と組合せて生物活性剤を含む生物活性剤放出被覆剤を記述する。Spragueは、米国特許第6,140,127号で、内皮細胞接着剤5アミノ酸ペプチドで、血管内ステントを被覆する方法を記述する。この被覆剤は、好ましくは、プラズマグロー放電を使用して血管内ステントを活性化させ、別の層を塗布し、ピリジンおよびトレシルクロリドを含有するトレシル化溶液を塗布し、そして配列グリシン−アルギニン−グルタミン酸−アスパラギン酸−バリンを有する5個のアミノ酸ペプチドを塗布して、その表面にペプチドの化学的接合を生じることによって行われる。Steberらは、米国特許第5,801,141号で、コア混合物の総重量の重量ベースで、約20%から約80%までの成長因子、生物学上活性なフラグメントまたは誘導体;約10%から約75%までの脂質、ワックスまたはそれの混合物;0%から約25%までの緩衝液、塩、糖またはその混合物;および0%から約15%までのフィラーを包含する均質なコア混合物の1から3つまでの層を含有する小型化され、ぎざぎざを刻まれ、そして部分的に被覆された組成物を包含する必然的に均一で、そして継続量の生物学上活性なタンパク質、ペプチドまたはポリペプチドの非経口投与のための移植片を教示する。
【0111】
1つの実施態様では、本発明は、(i)式IからIVまでの合成HBGF類似体でその表面に被覆された医療用デバイスを供し、その合成HBGF類似体は、非共有結合により医療用デバイスの表面に結合され;そして(ii)哺乳類の表面上に医療用デバイスを置くか、またはそれに医療用デバイスを移植することを含む、哺乳類に活性ペプチドを送出方法を提供する。
【0112】
上の方法の特別の実施態様では、非共有結合は、合成HBGF類似体のヘパリン結合ドメインと、医療用デバイスの表面に結合したヘパリン含有化合物との間の結合である。医療用デバイスの表面に結合したヘパリン含有化合物は、例えばベンジル−ビス(ジメチルシリルメチル)オキシカルバモイルヘパリンのようなあらゆるヘパリン含有化合物でありうる。
【0113】
上の方法の別の特定の実施態様では、医療用デバイスは、式IからIVまでの合成HBGF類似体で被覆される前に、ヘパリン含有化合物で予め被覆されない。
【0114】
ヘパリン結合成長因子
繊維芽細胞成長因子FGFは、間葉、上皮、および神経外胚葉の細胞型の正常な成長および分化を制御する関連タンパク質のファミリーを構築する。相同体は、広範で多様な種で見られた。FGFは、ヘパリンに非常に高い親和性を示し、したがって、ヘパリン結合成長因子(HBGF)とも称される。ここで使用される場合、用語「HBGF」は、全てのFGFを含む。
【0115】
2つの主要な型のFGFが知られている。第一の型のFGFは、当初、脳組織から単離された。それは、3T3細胞のようなマウス繊維芽細胞についてのその増殖−増強活性により同定された。それの塩基性plにより、その因子は、塩基性FGF(bFGF、またはHBGF−2、ヘパリン結合成長因子−2)と名づけられ、そして現在、一般に、FGF−2と称される。これは、FGFファミリーのプロトタイプである。
【0116】
当初脳組織から単離された別の型のFGFも、酸性FGF(HBGF−1としても知られるaFGF、ヘパリン結合成長因子−1またはHBGF−α、ヘパリン結合成長因子−α)であり、現在、一般に、FGF−1と称される。それは、筋芽細胞についてのそれの増殖−増強活性により同定された。
【0117】
同じファミリーに属する他の繊維芽細胞成長因子は、FGF−3(またはHBGF−3、当初はint−2と称されたヘパリン結合成長因子−3;Fekete、「Trends in Neuroscl.」23巻:332頁(2000年)を参照)、FGF−4(HBGF−4、当初は癌遺伝子hstの産物として識別されたヘパリン結合成長因子−4;Sakamotoら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA91巻:12368−72)、およびFGF−5(当初はHBGF−5と称された、Batesら、「Biosynthesis of human fibroblast growth factor 5」、Mol.Cell. Biol.11巻1840−1845頁(1991年));BurgessおよびMaciag、「The heparin−binding(fibroblast)growth factor family of proteins」,Ann.Rev.Biochem.58巻:575−606頁(1989年);およびZhanら、「The human FGF−5 oncogene encodes a novel protein related to fibroblast growth factors」,Mol.Cell. Biol.8巻:3487−3495頁(1988年)を参照)を含む。
【0118】
FGF−6は、HBGF−6としても知られており、そしてしばしば、hst−2または癌遺伝子hst−1関連成長因子と称され、Iidaら、「Human hst−2(FGF−6) oncogene:cDNA cloning and characterization」,Oncogene 7巻:303−9頁(1992年);およびMaricsら、「Characterization of the HST−related FGF−6 gene,a new member of the fibroblast growth factor gene family」、Oncogene 4巻:335−40頁(1989年)を参照。
【0119】
FGF−7またはK−FGFは、KGFあるいはケラチノサイト成長因子(Aaronsonら、Keratinocyte growth factor.「A fibroblast growth factor family member with unusual target cell specificity」,Annals NY Acad.Sci.638巻:62−77頁(1991年);Finchら、「Human KGF is FGF−related with properties of a paracrine effector of epithelial cell growth」、Science 245巻:752−5頁(1989年);Marcheseら、「Human keratinocyte growth factor activity on proliferation and differentiation of human keratinocytes:differentiation response distinguishes KGF from EGF family」,J.Cellular Physiol. 144巻:326−32頁(1990年)を参照)としても知られている。
【0120】
FGF−8は、アンドロゲン誘発成長因子AIGFと同一であると見なされ、そして十分に研究されている(Bluntら、「Overlapping expression and redundant activation of mesenchymal fibroblast growth factor(FGF) receptors by alternatively spliced FGF−8 ligants.」、J.Biol.Chem.272巻:3733−8頁(1997年);Dubrulleら、「FGF signaling controls somite boundary position and regulates segmentation clock control of spatiotemporal Hox gene activation.」、Cell 106巻:219−232頁(2001年);Gemelら、「Structure and sequence of human FGF8.」、Genomics 35巻:253−257頁(1996年);Tanakaら、「A novel isoform of human fibroblast growth factor 8 is induced by androgens and associated with progression of esophageal carcinoma.」、Dig.Dis.Sci.46巻:1016−21頁(2001年)を参照)。
【0121】
FGF−9は、当初、神経膠活性化因子、またはHBGF−9と称された。Miyamotoら、「Molecular cloning of a novel cytokine cDNA encoding the ninth member of the fibroblast growth factor family, which has a unique secretion pattern.」,Mol.Cell.Biol.13巻:4251−9頁(1993年);およびNaruoら、「Novel secretory heparin−binding factors from human glioma cells(glia−activating factors) involved in glial cell growth.」、J.Biol.Chem.268巻:2857−64頁(1993年)を参照。
【0122】
FGF−10は、KGF−2、ケラチノサイト成長因子−2とも称される(Kokら、「Cloning and characterization of a cDNA encoding a novel fibroblast growth factor preferentially expressed in human heart」、Biochem.Biophys.Res.Comm.256巻:717−721頁(1999年)を参照)。
【0123】
数種のFGF関連因子は、繊維芽細胞成長因子相同体因子(FHF)と見なされてきて、そしてFGF−11(FHF−3)、FGF−12(FHF−1)、FGF−13(FGF−2、Greeneら、「identification and characterization of a novel member of the fibroblast growth factor family」、Eur.J.Neurosci.10巻:1911−1925頁(1998年))、およびFGF−14(FHF−4)とも称される。
【0124】
FGF−15は、開発中の神経系で発現され、そして転写因子E2A−Pbx1により調節される遺伝子と同定された。McWhirterら、「A novel fibroblast growth factor gene expressed in the developing nervous system is a downstream target of the chimeric homeodomain oncoprotein E2A−Pbx1」、Development 124巻:3221−3232頁(1997年)。
【0125】
FGF−16は、207アミノ酸のFGFを発現する相同性基本のポリメラーゼ連鎖反応によりラット心臓からcDNAクローンとして単離された。FGF−16は、FGF−9に73%同一である。Miyakeら、「Structure and expression of a novel member, FGF−16, of the fibroblast growth factor family」,Biochem.Biophys.Res.Commun.243巻:148−152頁(1988年)。
【0126】
FGF−17をコード化するcDNAを、ラット胚から単離した。そしてそれは、216アミノ酸のタンパク質をコード化する。3T3繊維芽細胞中で発現されたとき、マウスFGF−17は、トランスフォーミングである。胚形成の間、FGF−17は、前頭での、中脳−菱脳接合部、発達中の骨格、および発達中の動脈での特異的部位で発現される。Hoshikawaら、「Structure and expression of a novel fibroblast growth factor,FGF−17,preferentially expressed in the embryonic brain」,Biochem.Biophys.Res.Commun.244巻:187−191頁(1998年);およびXuら、「Genomic structure,mapping,activity and expression of fibroblast growth factor 17」、Mechanisms of Development 83巻:165−178頁(1999年)を参照。
【0127】
FGF−18をコード化するcDNAを、207アミノ酸のタンパク質をコード化するラット胚から単離した。FGF−18は、グリコシル化タンパク質であり、そしてFGF−8およびFGF−17に最も類似する。組換え体マウスFGF−18の注入は、上皮および間葉器官の両方の組織で、特に肝臓および小腸で増殖を誘発することが示された。組換え体ラットFGF−18は、PC12細胞での軸索生長を誘発する。組換え体マウスFGF−18タンパク質は、硫酸ヘパリン依存性手段でのインビトロでNIH3T3繊維芽細胞中での増殖を刺激する。全般的情報として、Huら、「FGF−18,a novel member of the fibroblast growth factor family,stimulates heparic and intestinal proliferation」、Mol.Cell.Biol.18巻:6063−6074頁(1998年);およびOhbayashiら、「Structure and expression of the mRNA encoding a novel fibroblast growth factor,FGF−18」、J.Biol.Chem.273巻:18161−18164頁(1998年)を参照。
【0128】
FGF−19は、遠く離れてFGFファミリーの他のメンバーと関連している。FGF−19mRNAは、胎児の軟骨、皮膚および網膜、並びに成体の胆嚢を含む数種の組織で発現される。それは、結腸腺癌セルラインで過剰発現される。FGF−19は、FGF−4レセプターについての高い親和性のあるヘパリン依存性リガンドである。Xieら、「FGF−19,a novel fibroblast growth factor with unique specificity for FGFR4」、Cytokine 11巻:729−735頁(1999年)を参照。
【0129】
FGF−20は、正常な脳、特に小脳で、そしてある種の癌セルラインで発現される。FGF−20mRNAは、黒質部緻密層で優先的に発現される。組換え体FGF−20タンパク質は、多様な細胞型でのDNA合成を誘発し、そして複数FGFレセプターにより認識される。FGF−20は、癌遺伝子のように機能し、そして3T3繊維芽細胞セルラインで発現される場合、形質転換された表現型を引き起こす。これらの形質転換された細胞は、ヌードマウスで腫瘍形成性である。Jeffersら、「Identification of a novel human fibroblast growth factor and characterization of its role in oncogenesis」,Cancer Res.61巻:3131−8頁(2001年);およびOhmachiら、「FGF−20,a novel neurotrophic factor,preferantially expressed in the substantia nigra pars compacta of rat brain」,Biochem.Biophys.Res.Commun.277巻:355−60頁(2000年)を参照。
【0130】
FGF−21を、マウス胚から単離させた。FGF−21mRNAは、肝臓で最も豊富で、そして胸腺中で低濃度である。FGF−21は、ヒトFGF−19に最も類似している。Nishimuraら、「Identification of a novel FGF、FGF−21、preferentially expressed in the liver」、Biochim.Biophys.Acta.1492巻:203−6頁(2000年)を参照。
【0131】
FGF−22をコード化するcDNA(170アミノ酸)を、ヒト胎盤から単離した。FGF−22は、FGF−10およびFGF−7に最も類似している。マウスFGF−22mRNAは、皮膚で優先的に発現される。皮膚中のFGF−22mRNAは、毛包の内毛根鞘で優先的に見られる。Nakatakeら、「Identification of a novel fibroblast growth factor,FGF−22,preferentially expressed in the inner root sheath of the hair follicle」、Biochim.Biophys.Acta1517巻:460−3頁(2001年)を参照。
【0132】
FGF−23は、FGF−21およびFGF−19に最も類似している。ヒトFGF−23遺伝子は、ヒトFGF−6遺伝子に連結した染色体12p13に位置づけられる。FGF−23mRNAは、主に脳(優先的に、外側腹側核で)で、そして低濃度で胸腺で発現される。FGF−23遺伝子でのミスセンス突然変異は、常染色体優性低ホスファターゼ血症性くる病を示す患者で見られた。FGF23の過剰産生は、腫瘍誘導骨軟化症、腎性リン酸塩るいそうにより引起される低リン酸塩血症によって特徴づけられる腫瘍随伴性疾患を引起す。Yamashitaら、「Identification of a novel fibroblast growth factor,FGF−23,preferentially expressed in the ventrolateral thalamic nucleus of the brain」、Biochem.Biophys.Res.Commun.277巻:494−8頁(2000年);およびShimadaら、「Cloning and characterization of FGF23 as a causative factor of tumor−induced osteomalacia」、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)98巻:6500−5頁(2001年)を参照。
【0133】
HBBF(ヘパリン結合脳分裂促進剤)は、当初、数種の脳組織からヘパリン結合タンパク質として単離され、そしてヘパリン結合軸索促進因子と同一である。Huberら、「Amino−terminal sequences of a novel heparin−binding protein with mitogenic activity for endothelial cells from human bovine,rat,and chick brain: high interspecies homology」、Neurochem.Res. 15巻:435−439頁(1990年)を参照。
【0134】
HB−GAF(ヘパリン結合成長関連因子)は、HBNF(ヘパリン結合軸索促進因子)と同一の神経作用性および有糸分裂性因子である。Kuoら、「Characterization of heparin−binding growth−associated factor receptor in NIH 3T3 cells」、Biochem.Biophys.Res.Commun.182巻:188−194頁(1992年)を参照。
【0135】
HB−EGF(ヘパリン結合EGF様因子)は、セルラインU937の調整培地中に見られ、そしてマクロファージおよびヒト血管の平滑筋細胞によっても合成される。HB−EGFは、86アミノ酸の単量体ヘパリン結合O−グリコシル化タンパク質であり、そして208アミノ酸の前駆体から加工される。数種の切断形態のHB−EFGは、記述されている。HB−EGFは、内皮細胞についてではなく、NIH3T3細胞、ケラチノサイトおよび平滑筋細胞についての有望な分裂促進剤である。平滑筋細胞における有糸分裂活性は、EGFについてよりいっそう強力であり、そして細胞表面ヘパランサルフェートプロテオグリカンとの相互作用に関与するように見える。HB−EGFは、外傷体液の主要な成長因子成分であり、そして外傷治癒で重要な役割を果たしうる。Abrahamら、「Heparin−binding EGF−like growth factor characterization of rat and mouse cDNA clones,protein domain conservation across species, and trascript expression in tissue」、Biochem.Biophys.Res.Commun.190巻:125−133頁(1993年);Higashiyamaら、「A heparin−binding growth factor secreted by macrophage like cells that is related to EGF」、Science 251巻:936−9頁(1991年);およびMarikovskyら、「Appearance of heparin−binding EGF−like growth factor in wound fluid as a responese to injury」、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)90巻:3889−93頁を参照。
【0136】
HBNF(ヘパリン結合軸索促進因子)とも称されるHB−GAM(ヘパリン結合成長関連分子)は、いくつかの種の脳組織からヘパリン結合タンパク質として単離された15.3kDaのタンパク質である。HB−GAMは、軟質寒天でのSW−13細胞の成長を促進する。Courtyら、「Mitogenic properties of a new endothelial cell growth factor related to pleiotrophin」、Biochem.Biophys.Res.Commun.180巻:145−151頁(1991年);およびHamptonら、「Structural and functional characterization of full−length heparin−binding growth associated molecule」、Mol.Biol.Cell.3巻:85−93頁(1992年)。
【0137】
TGF−ベータ(TGF−β)は、TGF−αに関連しない既知TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4およびTGF−β5の少なくとも5つの異型中に存在する。それらのアミノ酸配列は、およそ70−80パーセントの相同性を表示する。TGF−β1は、優勢な型であり、そしてほとんど偏在的に見られる一方で、他の異型は、さらに限定された特性の細胞および組織で発現される。
【0138】
TGF−ベータは、TGF−ベータスーパーファミリーとして知られるタンパク質のファミリーのプロトタイプである。このファミリーは、インヒビン、アクチビンA、MIS(ミュラー管活性化物質)およびBMP(骨形成タンパク質)を含む。Burt、「Evolutionary grouping of the transforming growth factor−beta superfamily」、Biochem.Biophys.Res.Commun.184巻:590−5頁(1992年)。
【図面の簡単な説明】
【0139】
明細書に組み込まれ、その一部を形成する付随の図面は、本発明の1つまたはそれ以上の実施態様を示し、そして説明と一緒に、本発明の原則を説明する役割を果たす。図面は、1つまたはそれ以上の本発明の好ましい実施態様を示す目的のためのみであり、本発明を限定すると見なされるべきでない。
【図1】合成ペプチド類似体F2A3の配列を描く。
【図2】合成ペプチド類似体F2A4の配列を描く。
【図3】ヘパリン親和性カラムからのF2A3の溶出のプロットである。
【図4A】HUVEC上でのFGFRへのF2A3の特異的結合を描くグラムである。
【図4B】C3H10T1/2繊維芽細胞上でのFGFRへのF2A3およびF2A4の特異的結合を描くグラムである。
【図5】MAPキナーゼ燐酸化および活性化における生来、組換えFGF−2に対するFGF−2類似体F2A3およびF2A4の平衡を示すブロットである。
【図6】繊維芽細胞培養物での生物増殖の刺激のグラフであり、そしてFGF−2に対するF2A3およびF2A4の有糸分裂の用量反応を示す。
【図7A】F2A3およびF2A4が、インビトロでの細胞付着についてFGF−2を擬態することを示し、2時間後、シリル−ヘパリン単独で、またはシリル−ヘパリンとFGF−2またはF2A3で被覆されたポリスチレンに対するCH310T1/2マウス繊維芽細胞の付着を示すプロットである。「*」は、0.05未満のpを示す。
【図7B】F2A3の被覆剤を用いた(左側パネル)および用いなかった(右側パネル)ポリカプロラクトン上で育成されたウシ大動脈内皮細胞の顕微鏡写真である。
【図8A】2週目のラット筋肉中の被覆ポリアクチド縫合糸を利用する毛細管/フィールドの比較を示し、被覆剤なしを、シリルヘパリンとF2A3で被覆された縫合糸との比較を示すプロットである。
【図8B】2週目のラット筋肉中の被覆ポリアクチド縫合糸の顕微鏡写真であり、パネルAは、被覆剤なしであり、パネルBは、シリルヘパリン被覆剤であり、パネルCは、F2A3被覆剤であり、そしてパネルDは、シリルヘパリンおよびF2A3被覆剤である。
【図9】50ng/mL FGF−2またはF2A3によって減じられる8Gy x線照射により誘導されるアポトーシスを用いた内皮細胞培養物中での放射線保護を示すプロットである。
【図10】対照としてFGF−2と共に、F2A3およびF2A4を利用した、インビボでの胃腸症候群からの放射線保護を示すプロットである。
【図11】B2A2を用いて、または用いずに、異なる濃度のBMP−2で、マウスC2C12細胞でのアルカリ性ホスファターゼの誘導を示すプロットである。
【図12】C3H10T1/2マウス細胞でのB2A2によるBMP−2の正の調節を示すプロットであり、そしてリン酸アルカリンによる検出を用いて、未被覆細胞を、B2A2被覆細胞を比較する。
【図13】VAO1、VAO2または組換えVEGFの添加の結果としてのウシ大動脈内皮細胞で誘発される新芽のプロットである。
【図14】VAO1、VAO2およびVEGFを用いたウシ大動脈内皮(BAE)細胞の成長の刺激のプロットである。
【実施例1】
【0140】
その構造が図1に示される合成HBGF類似体、F2A3を、標準固相ペプチド合成法により合成した。F2A3は、X領域のアミノ酸配列、NRFHSWDCIKTWASDTFVLVCYDDGSEA(配列番号:7)が、Bailingerら(Nature Biotechnology 17巻:1199頁(1999年))により同定されたC19ペプチド配列に対応するものである式IIによる構造を有する。配列番号:7の2つのX領域ペプチドの各々は、リシン残基にアミド結合により共有結合で連結され、そしてそのリシン残基は、J1およびJ2に対応する。J2Lysは、3つのアミノヘキサン酸残基から形成されるトリペプチドの一方の末端に結合した共有結合ペプチドの手段により結合され、そしてリンカーYに対応し、18個のアルキル炭素原子の疎水性種を提供する。アミノヘキサン酸トリペプチドの対峙末端は、領域Zに対応するヘパリン結合ペプチドRKRKLERAIR(配列番号:2)に結合したペプチドによって共有結合で結合される。
【0141】
反復性サイクルでのアミノ基の一過性保護のためにFmoc化学を使用して、置換ベンズヒドリルアミン樹脂上での固相合成により、ペプチドを、段階的に構築した。鎖の分岐は、連続リシル残基の側鎖アミノ基からの同一鎖の段階的成長によって達成された。完成したペプチド鎖を、酸加水分解によりC末端アミドから切断し、そしてそれは、酸不安定側鎖保護基も除去した。
【0142】
ヘパリン親和性クロマトグラフィーによって、最初に、粗ペプチド製剤を精製した。10mM HEPES(pH7.0)中で粗製剤を溶解化させ、HiTrap(登録商標)ヘパリンHPカラム(アメシャム・ファルマシ・バイオテク(Amersham Pharmacia Biotech)、米国ニュージャージー州ピスケートウエイ(Piscataway,NJ,USA))にかけ、そして10カラム量の10mM HEPES(pH7.0)で洗浄した。その後、そのペプチドを、10mM HEPES(pH7.0)中の2M NaClで溶出させ、280nm吸光度により監視した。ペプチドフラクションを、脱塩し、そしてSep−Pak(登録商標)C18カートリッジ(ウォーターズ(Waters)、米国マサチューセッツ州(MA)、ミルフォード(Milford))にかけることによって濃縮し、10カラム容量の水で洗浄し、そしてその後、80%アセトニトリルで溶出した。溶出されたフラクションを、凍結乾燥させ、水中に再溶解させ、そして参照としてウシ血清アルブミンを使用したBCA(登録商標)プロテインアッセイキット(ピールス・エンドゲン(Pierce Endogen)、米国イリノイ州ロックフォード(Rockford,IL,USA))によって、濃度を測定した。
【実施例2】
【0143】
標準固相ペプチド合成法によって、図2に示されるとおり合成HBGF類似体F2A4を、合成した。式IIの領域YおよびZに対応するF2A4のアミノ酸配列は、実施例1で記述されるF2A3のものに一致する。2つのX領域ペプチドのアミノ酸配列YRSRKYSSWYVALKR(配列番号:6)は、Rayら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94巻:7047−7052頁、1997年)により同定されたFGF−2のアミノ酸115−129に対応する。
【0144】
実施例1で上に記述したとおり、粗製剤を精製した。
【実施例3】
【0145】
図3は、ヘパリン親和性カラムからのF2A3の溶出プロファイルを示す。0.5mLヘパリン−アガロースを用いて、ミニカラムを作製し、そして水で集約的に洗浄した。F2A3を、カラムにかけ、そして水で洗浄した。示されるとおりNaClの濃度を段階的に増大することにより、F2A3を、カラムから溶出させた。
【実施例4】
【0146】
図4Aは、HUVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞)に対するF2A3の特異的結合を示す。125I−bFGFを、非標識F2A3の存在下で、無傷のHUVECとインキュベートした。緊縮洗浄の後、4℃でのこの結合した125I−bFGFフラクションを、可溶化HUVEC膜から回収し、そしてガンマー計数計で定量化した。F2A3は、HUVECのFGFレセプターに結合した125I−bFGF(FGF−2)を置換した一方で、非関連ヘパリン結合サイトカインVEGFは置換しなかった。図4Bは、F2A3およびF2A4が、125I−bFGF結合を、FGFレセプターを含有する第二の一連の細胞に競合的に置換した一方で、非関連ヘパリン結合サイトカインVEGFは置換しなかった。125I−bFGFを、氷上で20分間、冷F2A3およびF2A4の存在下で、培養C3H10T1/2繊維芽細胞とインキュベートした。緊縮洗浄の後、4℃で結合した125I−bFGFフラクションを、可溶化細胞膜から回収し、そしてガンマー計数計で定量化した。
【実施例5】
【0147】
図5は、MAPキナーゼ・リン酸化および活性化での生来、組換え体FGF−2に対するFGF−2類似体F2A3およびF2A4の平衡を示す。C3H10T1/2細胞を、10、30または60分間、3nMのFGF−2、F2A3またはF2A4で刺激し、そして溶解させた。細胞溶解液から得られる活性MAPキナーゼを、モノクローナル抗ホスホプ−44/42MAPキナーゼ(Thr202およびTyr204)で免疫沈降させた。生じた免疫沈降物を、ATPの存在下で、Elk−1融合タンパク質とインキュベートした。Ser383でのリン酸化Elk−1を、リン光体−Elk−1(Ser383)抗体を用いたウエスタンブロティングにより可視化した。MAPキナーゼのリン酸化を示すために、モノクローナル抗ホスホプ−44/42MAPキナーゼ(Thr202およびTyr204)抗体を用いたウエスタンブロッティングにより、細胞溶解液を分析した。結果は、F2A3およびF2A4の両方が、FGF−2がそうするように、10分でこれらのサンプルに存在し、そして未処理対照から不在であるリン酸化Ser383残基によって示されるおとり、Elk−1を活性化することを示す。リン酸化Ser383の濃度は、10分から30分に、そしてさらに60分でさえ、継続的に減少した。対照的に、リン光体−ERK−1およびリン光体−ERK−2の濃度は、10分、30分および60分で、F2A3、F2A4およびFGF−2処置サンプルで一貫して高かったのに対して、対照未処理サンプルは、リン光体−ERK−1およびリン光体−ERK−2の各々の際立って低い濃度を示した。これらの観察は、HBGF類似体F2A3およびF2A4が、これらのアッセイでFGF−2類似体として生物学的に活性であることを示す。
【実施例6】
【0148】
図6は、bFGF(FGF−2)と比較した場合、F2A3およびF2A4による分裂についてのアッセイの結果を示す。C3H10T1/2細胞を、10%FBS(胎児ウシ血清)で補足したDMEM培地で育成した。アッセイの2日前に、細胞培養培地を、低血清培地(0.1%FBSを有するDMEM)に交換した。アッセイの開始時に、細胞を、トリプシン処理し、そして単一細胞懸濁液を、1,000細胞/ウエルで、96穴培養プレート上に蒔いた。合成サイトカイン類似体ペプチドまたは組換え体ヒトFGF−2を、三部構成のウエルに添加し(100μ/ウエル最終容量)、そして培養プレートを、37℃インキュベーターに戻した。3日後、製造業者の指示によりXTT細胞増殖キットII(ロッシュ・アプライド・サイエンス(Roche Applied Science)、米国インディアナ州インディアナポリス(Indianapolis,IN,USA))により、細胞増殖を定量化した。
【0149】
類似体F2A3およびF2A4は、このアッセイの結果によって示されるとおり、FGF−2より低濃度で、高い特異的活性を供する。
【実施例7】
【0150】
図7は、F2A3によるインビトロでの付着の増強を示す。所定の濃度で、シリル−ヘパリン単独で、またはシリル−ヘパリンとbFGF(FGF−2)またはシリル−ヘパリンとF2A3で被覆したポリスチレン96穴組織培養プレートのウエルへのC3H10T1/2マウス繊維芽細胞の付着を、2時間後、595nmでの吸光度により測定した。
【0151】
F2A3の被覆剤を用いて、または用いずにポリカプロラクトン上で育成されたウシ大動脈内皮細胞(BEAC)の顕微鏡写真を得た。細胞を、結晶バイオレットで染色し、そして100×倍率で顕微鏡撮影した。F2A3被覆試験片上の付着細胞の実質的に高い細胞密度を観察した。
【実施例8】
【0152】
図8は、生物分解性縫合糸上のF2A3の運動領域送出により外傷治癒の促進を示した。シリル−ヘパリンおよびF2A3組合せで、飽和するまで被覆した、そしていかなる被覆剤なしに生物吸着性ビクリル(登録商標)ポリグリコライド/ラクチド縫合糸(エチコン・ジョンソン・アンド・ジョンソン(Ethicon Johnson & Johnson)、米国ニュージャージー州ソマービル(Somerville,NJ,USA))を、成体ラットの大腿部筋に導入した。2週後、移植領域を除去し、そして日常の方法により組織学の処理をした。100×の倍率で、毛細血管を定量化し、そしてデータは、フィールド当たりの平均として表された。図8に示されるとおり、Y軸は、フィールド当たりの毛細血管の数を描写する。エイチ・アンド・イー染色組織学断面を利用して、増大した造粒および脈管形成も観察した。顕微鏡試験は、未被覆縫合糸が導入されたラット筋肉組織の2週間後に中程度の量の造粒を示した。シリル−ヘパリン被覆縫合糸とF2A3被覆縫合糸の両方を用いて、低から中程度までの造粒を見出した。シリル−ヘパリンおよびF2A3で被覆した縫合糸を用いて、PGLA繊維が網目状になったことは、断面で明らかであり、横紋筋組織のフィールド内で、可変の厚みの造粒組織の環に囲まれた。シリル−ヘパリン単独、およびF2A3単独の両方の被覆剤は、対照と比べて、細胞質を減じた。しかし、シリル−ヘパリンおよびF2A3の組合せは、網目状になった縫合糸を囲み、そして浸透しながら、際立った繊維芽細胞増殖を引起し、そして造粒組織内の内皮細胞を増大させた。
【実施例9】
【0153】
図9は、培養物中の内皮細胞に照射し、そして未処理対照に比べた場合、FGF−2またはF2A3を用いた処理の後に、アポトーシス細胞率を測定した放射線保護実験の結果を示す。8Gy x線照射により、アポトーシスが誘発され、そして処理には、50ng/mL FGF−2またはF2A3を用いた。
【実施例10】
【0154】
図10は、DingおよびOkunieff(Okunieffら、Br.J.Cancer.Suppl.27巻:S105−8頁(1996年))によって開発されたモデルであるマウスモデルでのbFGF(FGF−2)に比べた、F2A3およびF2A4による胃腸症候群死からのインビボ放射線防御を示す。全体照射の直前に、成体C57BLxDBAマウスに、腹腔内キシラジン/ケタミン注射により麻酔をかけた。15μg/マウスのFGF−2(アール・アンド・ディー・システムズ(R & D Systems)、米国ミネソタ州ミネアポリス(Minneapolis,MN,USA))、5μg/マウスのF2A3、5μg/マウスF2A4、または対照ベヒクル溶液(0.9%NaCl中の100μLの0.2%ゼラチン)のいずれかを、静脈レトロ−眼窩注射により対象に投与し、その後、137Cs源(線量速度0.93Gy/分)による14Gyガンマ照射にかけた。30日間、毎日2回、動物を監視し、そしてカプラン−マイヤーの方法により、生存データの統計的解析を行った。
【実施例11】
【0155】
標準固相ペプチド合成法により、合成HBGF類似体、F1A1を合成した。式IIの領域YおよびZに対応するF1A1のアミノ酸配列は、実施例1で記述されるF2A3のものと一致する。2つのX領域配列のFGFレセプター結合アミノ酸配列は、YISKKHAEKNWFVGLKK(配列番号:8)である。この配列は、FGF−1のベータ9およびベータ10ループを架橋するアミノ酸から誘導される。
【0156】
実施例1で上に記述されるとおり、粗製剤を精製した。生じた類似体は、以下の構造を示した。
【0157】
【化5】
【実施例12】
【0158】
標準固相ペプチド合成法により、合成HBGF類似体、F1A2を合成した。式IIの領域YおよびZに対応するF1A2のアミノ酸配列は、実施例1で記述されるF2A3のものと一致する。2つのX領域配列のアミノ酸配列HIQLQLSASEVGEVY(配列番号:9)は、FGF−1のベータ−4およびベータ−5領域から誘導されるアミノ酸に対応する。この全般的領域は、FGF−1の結合にかかわりを示す(Sanzら、「Hints of nonhierarchial folding of acidic fibroblast growth factor」、Biochemistry 41:1923−1933頁(2002年))。
【0159】
実施例1で上に記述されるとおり、粗製剤を精製した。生じた類似体は、以下の構造を示した。
【0160】
【化6】
【実施例13】
【0161】
標準固相ペプチド合成法により、合成HBGF類似体、F7A1を合成した。式IIの領域YおよびZに対応するF7A1のアミノ酸配列は、実施例1で記述されるF2A3のものと一致する。2つのX領域ペプチドのアミノ酸配列YASAKWTHNGGEMFVALNQK(配列番号:10)は、FGF−7のベータ9およびベータ10ループから誘導されるアミノ酸に対応する。FGF−7のこのセグメントに含まれる残基91−110は、KimらのFGFR2IIbについての特異性を決定するのに重要であると見なされてきた(Kimら、「Colocalization of heparin and receptor binding sites on keratinocyte growth factor」、Biochemistry37巻:8853−8862頁(1998年))。
【0162】
実施例1で上に記述されるとおり、粗製剤を精製した。生じた類似体は、以下の構造を示した。
【0163】
【化7】
【実施例14】
【0164】
標準固相ペプチド合成法により、合成HBGF類似体、F7A2を合成した。式IIの領域YおよびZに対応するF7A2のアミノ酸配列は、実施例1で記述されるF2A3のものと一致する。2つのX領域ペプチドのアミノ酸配列YNIMEIRTVAVGIVA(配列番号:11)は、FGF−7のβ−4およびβ−5領域から誘導されるアミノ酸に対応する。FGF−7のβ4−β5鎖に繋がるループは、高い親和性レセプター結合に寄与し、そしてドメイン交換および部位指向性突然変異誘発実験(Sherら、「Identification of residues important both for primary receptor binding and specificity in fibroblast growth factor−7」、J Biol.Chem.275巻:34881−34886頁(2000年))で測定される場合、KGFR識別に重要である。
【0165】
実施例1で上に記述されるとおり、粗製剤を精製した。生じた類似体は、以下の構造を示した。
【0166】
【化8】
【実施例15】
【0167】
標準固相ペプチド合成法により、合成HBGF類似体、VA01を合成した。式IIの領域YおよびZに対応するVA01のアミノ酸配列は、実施例1で記述されるF2A3のものと一致する。2つのX領域ペプチドのアミノ酸配列APMAEGGGQNHHEVVKFMDV(配列番号:12)は、Binetruy−Tournaireら(Binetruy−Tournaireら、「Identification of a peptide blocking vascular endothelial growth factor (VEGF)−mediated angiogenesis」、Embo.J.19巻:1525−1533頁(2000年))により記述されるVEGF配列の最初の20アミノ酸から誘導される。
【0168】
実施例1で上に記述されるとおり、粗製剤を精製した。生じた類似体は、以下の構造を示した。
【0169】
【化9】
【実施例16】
【0170】
標準固相ペプチド合成法により、合成HBGF類似体、VA02を合成した。式IIの領域YおよびZに対応するVA02のアミノ酸配列は、実施例1で記述されるF2A3のものと一致する。2つのX領域ペプチドのアミノ酸配列GATWLPPNPTK(配列番号:13)は、科学文献で明確に記述または特徴付けされなかったが、しかし、むしろBinetruy−Tournaire(Binetruy−Tournaireら、「Identification of a peptide blocking vascular endothelial growth factor (VEGF)−mediated angiogenesis」、Embo.J.19巻:1525−1533頁(2000年))によって記述される短い配列から誘導される。
【0171】
実施例1で上に記述されるとおり、粗製剤を精製した。生じた類似体は、以下の構造:
【0172】
【化10】
を示した。
【実施例17】
【0173】
標準固相ペプチド合成法により、合成HBGF類似体、VEGF1−20を合成した。式IIの領域YおよびZに対応するVEGF1−20のアミノ酸配列は、実施例1で記述されるF2A3のものと一致し、そしてXアミノ酸配列NFLLSWVHWSLALLLYLHHA(配列番号:14)は、脈管内皮成長因子配列を形成する。
【0174】
実施例1で上に記述されるとおり、粗製剤を精製した。
【実施例18】
【0175】
標準固相ペプチド合成法により、合成HBGF類似体、B2A1を合成した。式IIの領域YおよびZに対応するB2A1のアミノ酸配列は、実施例1で記述されるF2A3のものと一致する。2つのX領域ペプチドのアミノ酸配列LYVDFSDVGWNDW(配列番号:15)は、BMP−2のアミノ酸301−313に対応する。
【0176】
実施例1で上に記述されるとおり、粗製剤を精製した。
【実施例19】
【0177】
標準固相ペプチド合成法により、合成HBGF類似体、B2A2を合成した。式IIの領域YおよびZに対応するB2A2のアミノ酸配列は、実施例1で記述されるF2A3のものと一致する。2つのX領域ペプチドのアミノ酸配列AISMLYLDENEKVVL(配列番号:16)は、BMP−2中の鎖ベータ7およびベータ8のアミノ酸91−105に対応する。この領域は、BMPR−IIの結合に関与するBMP−2のエピトープ2の一部であると考えられる。
【0178】
実施例1で上に記述されるとおり、粗製剤を精製した。
【実施例20】
【0179】
標準固相ペプチド合成法により、合成HBGF類似体、B2A2−1.2を合成した。式IIの領域YおよびZに対応するB2A2−1.2のアミノ酸配列は、実施例1で記述されるF2A3のものと一致する。2つのX領域ペプチドのアミノ酸配列ISMLYLDENEKVVLKNY(配列番号:17)は、BMP−2のベータ7およびベータ8領域に見られるアミノ酸に対応する。
【0180】
実施例1で上に記述されるとおり、粗製剤を精製した。
【実施例21】
【0181】
標準固相ペプチド合成法により、合成HBGF類似体、B2A2−1.4Eを合成した。式IIの領域YおよびZに対応するB2A2−1.4Eのアミノ酸配列は、実施例1で記述されるF2A3のものと一致する。2つのX領域ペプチドのアミノ酸配列EKVVLKNYQDMVVEG(配列番号:18)は、BMP−2のベータ8領域に見られるアミノ酸に対応する。
【0182】
実施例1で上に記述されるとおり、粗製剤を精製した。
【実施例22】
【0183】
標準固相ペプチド合成法により、合成HBGF類似体、B2A3を合成した。式IIの領域YおよびZに対応するB2A3のアミノ酸配列は、実施例1で記述されるF2A3のものと一致する。2つのX領域ペプチドのアミノ酸配列LVVKENEDLYLMSIAC(配列番号:19)は、BMP−2のベータ8領域に見られるアミノ酸に対応する。
【0184】
実施例1で上に記述されるとおり、粗製剤を精製した。
【実施例23】
【0185】
標準固相ペプチド合成法により、合成HBGF類似体、B2A4−1.1を合成した。式IIの領域YおよびZに対応するB2A4−1.1のアミノ酸配列は、実施例1で記述されるF2A3のものと一致する。2つのX領域ペプチドのアミノ酸配列AFYCHGECPFPLADHL(配列番号:20)は、BMP−2のベータ4およびベータ5領域に見られるアミノ酸に対応する。
【0186】
実施例1で上に記述されるとおり、粗製剤を精製した。
【実施例24】
【0187】
標準固相ペプチド合成法により、合成HBGF類似体、B2A4−1.3を合成した。式IIの領域YおよびZに対応するB2A4−1.3のアミノ酸配列は、実施例1で記述されるF2A3のものと一致する。2つのX領域ペプチドのアミノ酸配列PFPLADHLNSTNHAIVQTLVNSV(配列番号:21)は、BMP−2のベータ5およびベータ5a領域に見られるアミノ酸に対応する。
【0188】
実施例1で上に記述されるとおり、粗製剤を精製した。
【実施例25】
【0189】
標準固相ペプチド合成法により、合成HBGF類似体、F2A4−Linを合成した。この類似体は、n=0、Tは、R1であり、Xは、YRSRKYSSWYVALKR(配列番号:6)であり、そしてZは、配列番号:2であり、そしてXおよびZは、ペプチド結合により共有結合で結合される、式Iのペプチドであるアミノ酸配列NH2−YRSRKYSSWYVALKRT−HexHexHex−RKRKLERIAR−アミド(配列番号:22)の線状ペプチドであった。実施例1で上に記述されるとおり、粗製剤を精製した。
【実施例26】
【0190】
標準固相ペプチド合成法により、合成HBGF類似体、F2A4−Sinを合成した。この類似体は、n=0、J1は、Lysであり、Xは、配列番号:6であり、Zは、配列番号:2であり、そしてYは、Hex−Hex−Hexであり、そしてXは、以下の構造のJ1の側鎖にアミド結合によって共有結合で結合される、式IIの単一鎖で分岐されたペプチドである。
【0191】
【化11】
【実施例27】
【0192】
本実施例は、マウスC2C12細胞でのアルカリ性ホスファターゼの誘導においてB2A2の正の調節を示す。細胞を、96穴プレート上に104細胞/ウエルで蒔き、10%新生仔ウシ血清を含有する培地中で1日間インキュベートし、組換え体BMP−2(大腸菌)を用いた2%血清、またはそうでないものを含有する培地に交換し、そしてさらに3日間インキュベートした。使用される場合、B2A2を、1000ng/mLの最終濃度まで添加した。1%緩衝ホルマリン中の10分間の固定、0.3%トリトンX100でのインキュベーション、そして市販で入手可能なパラニトロフェノール(PNPP)キットを用いた60分間の色素原展開に続いて、アルカリ性ホスファターゼを測定した。図11で示されるとおりデータは、平均±S.D.(標準偏差)(式中、n=5)として表された。アルカリ性ホスファターゼの誘発は、BMP−2の生物学的活性についての特徴である。
【実施例28】
【0193】
本実施例は、被覆剤として使用される場合の、B2A2によるBMP−2活性の正の調節を示す。96穴プレートのウエルを、0.25%シリル−ヘパリン[ベンジル−テトラ(ジメチルシリルメチル)オキシカルバモイル−ヘパリン]を含有する60%水性イソプロパノールを使用して予備被覆し、続いて水中で洗浄して、未結合材料を除去した。その後、ウエルを、水(対照)で、または10μg/mLのB2A2を含有する水性溶液で処理した。処理溶液の除去の後、適量の2×104C3H10T1/2マウス細胞を、100μLの容量で添加し、続いて5μLでの10ngの組換え体BMP−2(大腸菌)の添加を行った。数日後、培養物を、アルカリ性ホスファターゼ(ALP)活性について、そして総タンパク質の量について評価した。図12に示されるとおりデータは、mgでのタンパク質の量による、ALPアッセイから得られる平均光学密度として表された。
【実施例29】
【0194】
本実施例は、脈管形成のインビトロモデルでのVEGF擬態ペプチドの効果を表す。ウシ大動脈内皮細胞を、コラーゲンゲルの層を含有する96穴プレートの個々のウエルに蒔いた。細胞を、ゲルに付着させ、そして続いて、未結合細胞を除去した。付着細胞を、添加なし(対照)か、または25ng/mLのVAO1、VAO2、または組換え体VEGFのいずれかを含有するコラーゲンゲルの第二の層で覆った。第二の層のゲルが硬化した後、培養物を、上で特定された濃度で試験材料を含有する100μLの培地で上に積層した。数日後、培養物を位相差顕微鏡法により実験し、そしてゲルに進出する芽の数を記録した。データは、平均±S.D.(n=6)で表された。結果は、図13に示される。発芽を刺激する薬剤の能力は、インビボ脈管形成の許容された推定モデルである。
【実施例30】
【0195】
本実施例は、培地に添加した48時間目でのVAO1およびVAO2によるウシ大動脈内皮(BAE)細胞の成長の刺激を表す。適量の103BAE細胞を96穴プレートのウエルに蒔き、そして24時間支持体に付着させた。その後、培地を、添加なし(対照)か、または上に指示される濃度で、VAO1、VAO2、または組換え体VEGFのいずれかを含有する2%新生仔ウシ血清を含有するものに交換した。48時間後、実施例6でのように市販で入手可能なXTTキットを使用して、細胞を解析した。吸光度は、対照値の百分率として表された。VEGFは、限定された濃度範囲より成長における適度の増大を発生した一方で、VAO1およびVAO2は、図14に示されるとおり広範な濃度範囲より成長刺激をさらに言明された。点線は、対照値を示す。
【0196】
先行する実施例は、反応体を包括的に、または特異的に脱着し、および/または先行する実施例で使用されるものについての本発明の状態を観察することによって類似の成果で繰り返されうる。
【0197】
本発明は、これらの好ましい実施態様で特定の資料で詳細に記述されたが、他の実施態様でも同じ結果を達成しうる。本発明の変動および修飾は、当業者に明らかであり、そしてそれは、全てのこのような修飾および等価物を、付随の請求項で網羅すると意図される。上に引用される全ての資料、出願、特許および公報の全開示は、参照してここに組み込まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化1】
式I
R3およびR5は、各々独立に、NH2;N末端NH2、NH3+、NH基あるいは対応するアシル化誘導体を含む、直鎖または分岐C1からC17までのアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニルまたはアラルキル鎖を有するアシル基であるか、またはN末端NH2、NH3+、NH基あるいは対応するアシル化誘導体を有するアミノ酸、ジペプチドまたはトリペプチドである;
R4は、−OH、NH2、NH−R6であるか、またはC末端−OH、NH2、またはNH−R6を有するアミノ酸、ジペプチドまたはトリペプチドである;
R6は、脂肪族C1からC17までの鎖である;
各Xは、配列番号6〜22から選択され;
J1およびJ2は、各々独立に、三官能性アルファアミノ酸残基であり、各Xは、J1およびJ2の側鎖を通して共有結合で結合される;
Yは、3個のアミノヘキサン酸残基の鎖からなるリンカーある;
Zは、配列番号2、ヘパリン結合ドメインからなる非シグナルペプチド、
nは、0または1であり、n=1の場合、合成ペプチド鎖Xは同一である、
式IIで表されるヘパリン結合成長因子(HBGF)類似体を、その表面に、非共有結合を介して、被覆した医療用デバイスを供し、そして哺乳類の表面上に医療用デバイスを乗せるか、またはその中に医療用デバイスを移植することを包含する、活性ヘパリン結合成長因子類似体を哺乳類に送出するデバイス。
【請求項2】
医療用デバイスは、縫合糸、移植片材料、外傷被覆材、神経ガイド、骨ワックス、動脈瘤コイル、塞栓形成粒子、微細ビーズ、ステント、歯科移植片、または骨プロテーゼ、組織足場、または徐放性薬剤送出デバイスである請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
非共有結合は、合成ヘパリン結合成長因子類似体のヘパリン結合ドメインと、医療用デバイスの表面に結合したヘパリン含有化合物の間の結合である請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
ヘパリン含有化合物は、ベンジル−ビス(ジメチルシリルメチル)オキシカルバモイル−ヘパリンである請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
医療用デバイスの表面は、ステンレス鋼、チタン、プラチナ、タングステン、セラミックス、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、伸縮ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリカプロラクトン、ポリラクチド、ポリグリコライド、ポリシロキサン、天然ゴム、人工ゴム、ブロック重合体またはブロック重合体の共重合体である請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
ポリシロキサンが、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサンである請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
X及びZは合成ペプチド鎖である請求項1に記載の合成ヘパリン結合成長因子類似体。
【請求項1】
【化1】
式I
R3およびR5は、各々独立に、NH2;N末端NH2、NH3+、NH基あるいは対応するアシル化誘導体を含む、直鎖または分岐C1からC17までのアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニルまたはアラルキル鎖を有するアシル基であるか、またはN末端NH2、NH3+、NH基あるいは対応するアシル化誘導体を有するアミノ酸、ジペプチドまたはトリペプチドである;
R4は、−OH、NH2、NH−R6であるか、またはC末端−OH、NH2、またはNH−R6を有するアミノ酸、ジペプチドまたはトリペプチドである;
R6は、脂肪族C1からC17までの鎖である;
各Xは、配列番号6〜22から選択され;
J1およびJ2は、各々独立に、三官能性アルファアミノ酸残基であり、各Xは、J1およびJ2の側鎖を通して共有結合で結合される;
Yは、3個のアミノヘキサン酸残基の鎖からなるリンカーある;
Zは、配列番号2、ヘパリン結合ドメインからなる非シグナルペプチド、
nは、0または1であり、n=1の場合、合成ペプチド鎖Xは同一である、
式IIで表されるヘパリン結合成長因子(HBGF)類似体を、その表面に、非共有結合を介して、被覆した医療用デバイスを供し、そして哺乳類の表面上に医療用デバイスを乗せるか、またはその中に医療用デバイスを移植することを包含する、活性ヘパリン結合成長因子類似体を哺乳類に送出するデバイス。
【請求項2】
医療用デバイスは、縫合糸、移植片材料、外傷被覆材、神経ガイド、骨ワックス、動脈瘤コイル、塞栓形成粒子、微細ビーズ、ステント、歯科移植片、または骨プロテーゼ、組織足場、または徐放性薬剤送出デバイスである請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
非共有結合は、合成ヘパリン結合成長因子類似体のヘパリン結合ドメインと、医療用デバイスの表面に結合したヘパリン含有化合物の間の結合である請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
ヘパリン含有化合物は、ベンジル−ビス(ジメチルシリルメチル)オキシカルバモイル−ヘパリンである請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
医療用デバイスの表面は、ステンレス鋼、チタン、プラチナ、タングステン、セラミックス、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、伸縮ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリカプロラクトン、ポリラクチド、ポリグリコライド、ポリシロキサン、天然ゴム、人工ゴム、ブロック重合体またはブロック重合体の共重合体である請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
ポリシロキサンが、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサンである請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
X及びZは合成ペプチド鎖である請求項1に記載の合成ヘパリン結合成長因子類似体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−78806(P2011−78806A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262096(P2010−262096)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【分割の表示】特願2004−529777(P2004−529777)の分割
【原出願日】平成15年8月20日(2003.8.20)
【出願人】(503044709)バイオサーフェス エンジニアリング テクノロジーズ,インク. (5)
【出願人】(505061540)ブロークヘブン サイエンス アソシエイト,エルエルシー (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【分割の表示】特願2004−529777(P2004−529777)の分割
【原出願日】平成15年8月20日(2003.8.20)
【出願人】(503044709)バイオサーフェス エンジニアリング テクノロジーズ,インク. (5)
【出願人】(505061540)ブロークヘブン サイエンス アソシエイト,エルエルシー (3)
【Fターム(参考)】
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