説明

合成樹脂管の接続構造と接続方法

【課題】 作業性に優れ、長期に渡り安定した接合状態を保持することができる合成樹脂管の接続構造と接続方法を提供する。
【解決手段】 継手1の管端挿口4を合成樹脂管2の管端受口11に挿入して接続する合成樹脂管の接続方法において、管端受口11を加熱し、この加熱した管端受口に管端挿口4を圧入して管端受口11を拡口し、さらに、管端受口11と管端挿口4とを接着する。管端受口11と管端挿口4とが圧接状態で接着され、接続箇所において、高い接合強度を得ることができる。また、バンド22により接続箇所を締め付けることにより抜け止め効果が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂管の接続構造と接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、硬質塩化ビニル管などの合成樹脂管の接続には接着剤が用いられているが、作業に気象条件の影響を受け易く、挿入不足や養生不足などがあると、軸方向への引抜き強度が不足し、管内の水圧や他の引抜き力などにより、接続箇所が外れる虞があるため、屋内配管などでは合成樹脂管が敬遠される場合がある。
【0003】
そこで、プラスチック管を接合する管継手において、管軸を揃えて対向する2本のプラスチック管の管端を共通して継手本体へ挿入し、該管端から所望の距離を隔ててプラスチック管の外周面へ外嵌した移動フランジとの間でプラスチック管の外周面へ噛合するロックリングをプラスチック管と共に一定距離内で伸縮自在、かつ離脱不能に楔作用で圧接する付勢手段を介装して継手本体と移動フランジ間を締結したプラスチック管用の管継手(例えば特許文献1)が開示されている。
【0004】
また、樹脂管の差込時に樹脂管内面に密着して止水するシールパッキンを周設してなるスリーブを突設した継手本体と、一部を軸方向に切欠した割りリング状のチャックリングと、このチャックリングを縮径可能な内面形状を有する押圧リングと、この押圧リングを継手本体に向かって押し込むボルト・ナット等の締め込み手段とからなる樹脂管の継手構造(例えば特許文献2)が開示されている。
【0005】
また、ポリエチレン管などの軟質樹脂管の継手であって、前記軟質樹脂管の先端に挿通する挿通部を有するコアと、前記軟質樹脂管を挟んで挿通部の周囲から締め付けるバンドからなり、前記挿通部の外周面にはリング状の突条が設けられる一方、前記バンドの内周面にも前記突条と対応する位置に凸条が設けられた軟質樹脂管用の継手(例えば特許文献3)が開示されている。
【特許文献1】特開平11−101384号公報
【特許文献2】特開2002−106779号公報
【特許文献3】特開2000−220786号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献では、いずれもバンドなどを締め付けて接続箇所の抜け止めを図るメカニカル継手を用いており、このような接続方法では、ゴムなどのシール材の装着に注意を有し、締め付け力が不均一だったり、不十分だったりすると、抜け止め効果が低下し、さらに、経時的変化により、シール材や金属製のバンドが劣化すると、接続箇所の止水性が低下する虞がある。
【0007】
そこで、本発明は、作業性に優れ、長期に渡り安定した接合状態を保持することができる合成樹脂管の接続構造と接続方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、一方の合成樹脂管の管端挿口を他方の合成樹脂管の管端受口に挿入して接続する合成樹脂管の接続構造において、前記管端受口に前記管端挿口を圧入すると共に、前記管端受口と前記管端挿口とを接着したものである。
【0009】
また、請求項2の発明は、前記管端挿口側と前記管端受口側にそれぞれバンドを外装して係合すると共に、それら両バンド間を締付手段により締めたものである。
【0010】
請求項3の発明は、一方の合成樹脂管の管端挿口を他方の合成樹脂管の管端受口に挿入して接続する合成樹脂管の接続方法において、前記管端受口を加熱し、この加熱した管端受口に前記管端挿口を圧入して前記管端受口を拡口すると共に、前記管端受口と前記管端挿口とを接着する接続方法である。
【0011】
また、請求項4の発明は、前記管端挿口側と前記管端受口側にそれぞれ外装して係合するバンドと、それら両バンド間を締め付ける締付手段とを用い、この加熱した管端受口に前記管端挿口を圧入して拡口した前記管端受口の外周拡大部分に前記バンドを係合する接続方法である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の構成によれば、前記管端受口に前記管端挿口を圧入すると共に、前記管端受口と前記管端挿口とを接着することにより、管端受口と管端挿口とが圧接状態で接着され、接続箇所において、高い接合強度が得られる。
【0013】
また、請求項2の構成によれば、バンドを用いて締め付けることにより、抜け止め効果が向上する。
【0014】
請求項3の構成によれば、管端受口と管端挿口とが圧接状態で接着され、接続箇所において、高い接合強度が得られる。
【0015】
また、請求項4の構成によれば、バンドを用いて締め付けることにより、抜け止め効果が向上する。また、管端受口の圧入により拡口した外周拡大部分にバンドが係合するから、他方の合成樹脂管の外周に別個に係合部を設ける必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。各実施例では、従来とは異なる合成樹脂管の接続構造と接続方法を採用することにより、従来にない合成樹脂管の接続構造と接続方法が得られ、その合成樹脂管の接続構造と接続方法を夫々記述する。
【実施例1】
【0017】
以下、本発明の防護柵の実施例1について図1〜図3を参照して説明する。同図に示すように、この例の接続構造は、一方の合成樹脂管である継手1と、他方の合成樹脂管2とを接続する構造であり、それら継手1及び合成樹脂管2は硬質塩化ビニルなどからなる。前記継手1は、前記合成樹脂管2より肉厚な本体3を有し、その本体3の両端にそれぞれ管端挿口4を有し、この管端挿口4は先端に向かって縮小する縮小外周部5を有し、また、この縮小外周部5の基端側に位置して、前記本体3の外面には、係合部たる係合段部6が膨出形成され、この係合段部6は帯状に周設された膨出部6Aの基端側に位置し、その膨出部6Aの先端側にはストッパとなる段部6Bが形成されている。さらに、前記管端挿口4の内周には、その先端側に保形部材7が設けられ、この保形部材7は、金属製リングなどからなり、前記管端挿口4の外周側から押し潰そうとする力に対向して管端挿口4を保形するものである。
【0018】
図3に示すように、前記他方の合成樹脂管2の外径D2は、前記継手1の本体3の外径D3とほぼ等しく、その合成樹脂管2の厚さは前記継手1の本体3の厚さより薄く、また、合成樹脂管2の管端には管端受口11が設けられ、この管端受口11の内径DNは、前記管端挿口4の先端外径DSとほぼ同一かやや広く形成されている。尚、合成樹脂管2の前記本体12と、前記管端受口11とは同形である。したがって、本体12の適宜位置で合成樹脂管2を切断することによりその切断端が管端受口11となる。
【0019】
次に、前記管端挿口4と管端受口11の接続箇所を抜け止め保持する抜け止め装置21について、説明する。この抜け止め装置21は、前記継手1と合成樹脂管2に外装するバンド22を備え、このバンド22は、周方向に二分割した二つ割バンド23,23を形成し、この二つ割りバンド23の端部に接合用フランジ部24,24を一体に設け、二つ割バンド23,23のフランジ部24,24同士をボルト25とナット26で締め付けることにより、二つ割バンド23,23を周方向に組み立てて、バンド22を継手1と合成樹脂管2に外装する。尚、その締め付け状態で、フランジ部24,24に隙間Sが発生するように二つ割りバンド23,23の寸法を設定することが好ましい。また、前記二つ割りバンド23には、継手1のバンド22と合成樹脂管2のバンド22とを締め付ける締め付け用フランジ部27を複数設け、継手1のバンド22ののフランジ部27と合成樹脂管2のバンド22のフランジ部27とに、両螺子ボルトである締め付け用ボルト28を挿通し、このボルト28の両端側にナット29,29を螺合してフランジ部27,27を締め付けることにより、接続箇所の抜け止めを図る。尚、継手1においては、バンド22は前記係合段部6に係合し、一方、合成樹脂管2においては、後述するように拡口した管端受口11の外周に係合する。即ち、係合段部6に係合したバンド22は、管端挿口4を合成樹脂管2側に押す力を伝達可能に係合し、拡口した管端受口11の外周に係合するバンド22は、合成樹脂管2の管端受口11を継手1側に押す力を伝達可能に係合する。尚、前記ボルト28とナット29,29が締付手段である。
【0020】
次に、前記継手1と合成樹脂管2との接続方法につき、説明すると、定法に従い、継手1の管端挿口4の外周及び合成樹脂管2の管端受口11に内周を乾いた布などで拭き、特に、油や水分を確実に除去するように拭き取る。そして、管端受口11の外周に帯状のヒータ30を巻き付け、適温になるまで加熱する。尚、帯状ヒータ30で加熱する換わりに、管端受口11をドライヤー(図示せず)の温風により加熱するようにしてもよい。また、管端挿口4の外周面である縮小外周面5と、管端受口11の内周に、接着剤31を薄く均一に素早く塗布する。接着剤31を塗り終えたら、直に、管端受口11内に管端挿口4を圧入し、帯状ヒータ30を外し、自然冷却するため、しばらく保持する。このように加熱した管端受口11内に管端挿口4を圧入すると、縮小外周部5の形状に倣って、管端受口11が拡口し、管端受口11が管端挿口4に圧着する。その場合、挿入後に、管端受口11内で管端挿口4を動かしたり、無理な力を加えたりしないように保持する。この後、継手1と合成樹脂管2の外周にそれぞれバンド22,22を外装し、これらバンド22,22を締め付け用ボルト28,ナット29により強く締め付け、抜け止めを施す。そして、外周形状が一定の合成樹脂管2を用いても、加熱を伴う接合により、管端受口11が拡口するから、その拡口した管端受口11の拡口した外周拡大部分にバンド22が係合して、接続箇所に所定の締め付け力を加えることができる。そして、少なくとも接着剤31の性能が安定するために必要な時間だけ養生した後、必要に応じて、水圧試験を行い、接続箇所の止水性を確認する。
【0021】
尚、端受口11内に管端挿口4を圧入する際、受口11の先端面が当接可能な段部6Bが形成されているため、管端挿口4の圧入量が規制されているが、通常は、管端受口11の先端先端面と段部6Bとの間に間隔を保つようにして接続する。
【0022】
尚、合成樹脂管2が硬質塩化ビニル製であれば、管端受口11を、70〜90℃、好ましくは80℃前後に加熱した後、直に接着剤31を塗布して、接続、養生する。
【0023】
上述した接続方法では、止水性に優れ、耐食、耐薬品性にも優れたものとなり、また、圧入と接着により接続強度が得られるため、抜け止め装置21への負荷も軽減され、機械的強度に優れ、しかも、取り扱い、施工が簡便となり、経済的にも安価で済む。
【0024】
このように本実施例では、請求項1に対応して、一方の合成樹脂管である継手1の管端挿口4を他方の合成樹脂管2の管端受口11に挿入して接続する合成樹脂管の接続構造において、管端受口11に管端挿口4を圧入すると共に、管端受口11と管端挿口4とを接着したから、管端受口11と管端挿口4とが圧接状態で接着され、接続箇所において、高い接合強度を得ることができる。
【0025】
また、このように本実施例では、請求項2に対応して、管端挿口4側と管端受口11側にそれぞれバンド22,22を外装して係合すると共に、それら両バンド22,22間を締付手段たるボルト28とナット29,29により締めたから、圧接状態の接着に加えて、バンド22,22を用いて締め付けることにより、抜け止め効果の向上を図ることができる。
【0026】
このように本実施例では、請求項3に対応して、一方の合成樹脂管である継手1の管端挿口4を他方の合成樹脂管2の管端受口11に挿入して接続する合成樹脂管の接続方法において、管端受口11を加熱し、この加熱した管端受口11に管端挿口4を圧入して管端受口11を拡口すると共に、管端受口11と管端挿口4とを接着するから、管端受口11と管端挿口4とが圧接状態で接着され、接続箇所において、高い接合強度を得ることができる。
【0027】
また、このように本実施例では、請求項4に対応して、管端挿口4側と管端受口11側にそれぞれ外装して係合するバンド22,22と、それら両バンド22,22間を締め付ける締付手段たるボルト28とナット29,29とを用い、加熱した管端受口11に管端挿口4を圧入して拡口した管端受口11の外周拡大部分に、バンド22を係合するから、バンド22を用いて締め付けることにより、抜け止め効果を向上することができる。また、圧入により拡口した管端受口4の外周拡大部分にバンド22が係合するから、他方の合成樹脂管2の外周に別個に係合部を設ける必要がなく、寸法合わせのために合成樹脂管2を現場で切断した場合でも、その切断端を管端受口11として接続作業を容易に行うことができる。
【0028】
また、実施例上の効果として、管端挿口4には縮小外周部5を形成したから、加熱した管端受口11を広げながらスムーズに挿入することができる。また、挿入時に管端挿口4を変形しようとする力が加わるが、保形部材7を設けたから、管端挿口4の変形を防止することができる。
【実施例2】
【0029】
図4〜図5は本発明の実施例2を示し、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述すると、この例では、接着剤31の変形例であり、接着剤31に、直径が1〜2ミリ程度のほぼ球状の金属粒子たるアルミ粒子32を混入している。尚、接着剤31に予めアルミ粒子32を混入してもよいし、あるいは塗布面に塗布された接着剤31にアルミ粒子32を振り掛けるようにして混入してもよい。尚、アルミ粒子32は、アルミニウム又はアルミニウム合金の粒子である。
【0030】
したがって、アルミ粒子32を混合した接着剤31を塗布した後、管端受口11に管端挿口4を圧入すると、接着剤31により溶解した部分にアルミ粒子32が食い込み、接着剤31が硬化することにより、管端受口11と管端挿口4とが強固に一体化されて接着される。
【実施例3】
【0031】
図6は本発明の実施例3を示し、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述すると、この例では、管端挿口4の外周面である縮小外周部5と、管端受口11の内周面とに、抜け止め防止用の溝部33を周設し、複数の溝部33が長さ方向にほぼ等間隔に設けられている。尚、図6では断面角形の溝部33を示したが、半円形など形状は適宜選定可能である。
【0032】
したがって、溝部33が形成された縮小外周部5と管端受口11の内周面に、接着剤31を塗布して接合することにより、接着剤31の硬化後、引抜き強度が向上し、また、圧入に伴う接着むらがおき難くなるため、一層確実な接着を行うことができる。
【0033】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、実施例では、一方の合成樹脂管として継手を例示したが、他方の合成樹脂管と同じ本体を有し、管端に前記管端挿口及び係合部を設けたものを一方の合成樹脂管としてもよい。また、接着剤は合成樹脂管の材質に合わせて接着力が得られるものであれば各種のものを用いることができる。但し、実施例2では、合成樹脂管を溶かして接着するタイプの接着剤を用いることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施例1を示す接続構造の一部切欠き断面図である。
【図2】同上、接続構造の直径方向の断面図である。
【図3】同上、接続方法を説明する断面図である。
【図4】本発明の実施例2を示す接続構造の要部の拡大断面図である。
【図5】同上、接着状態を説明する断面図である。
【図6】本発明の実施例3を示す接続構造の要部の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 継手(一方の合成樹脂管)
2 合成樹脂管(他方の合成樹脂管)
4 管端挿口
6 係合段部(係合部)
11 管端受口
22 バンド
23 二つ割りバンド
28 締め付け用ボルト(締付手段)
29 ナット(締付手段)
31 接着剤


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の合成樹脂管の管端挿口を他方の合成樹脂管の管端受口に挿入して接続する合成樹脂管の接続構造において、前記管端受口に前記管端挿口を圧入すると共に、前記管端受口と前記管端挿口とを接着したことを特徴とする合成樹脂管の接続構造。
【請求項2】
前記管端挿口側と前記管端受口側にそれぞれバンドを外装して係合すると共に、それら両バンド間を締付手段により締めたことを特徴とする請求項1記載の合成樹脂管の接続構造。
【請求項3】
一方の合成樹脂管の管端挿口を他方の合成樹脂管の管端受口に挿入して接続する合成樹脂管の接続方法において、前記管端受口を加熱し、この加熱した管端受口に前記管端挿口を圧入して前記管端受口を拡口すると共に、前記管端受口と前記管端挿口とを接着することを特徴とする合成樹脂管の接続方法。
【請求項4】
前記管端挿口側と前記管端受口側にそれぞれ外装して係合するバンドと、それら両バンド間を締め付ける締付手段とを用い、この加熱した管端受口に前記管端挿口を圧入して拡口した前記管端受口の外周拡大部分に前記バンドを係合することを特徴とする請求項3記載の合成樹脂管の接続方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−300150(P2006−300150A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−120397(P2005−120397)
【出願日】平成17年4月18日(2005.4.18)
【出願人】(505142137)有限会社瀬戸川工業所 (3)
【Fターム(参考)】