説明

合成樹脂製の滑り軸受

【課題】摺動面への塵埃等の侵入を確実に防止し得て、塵埃等の侵入に起因する摺動特性の低下を生じさせることがなく、しかも、組立作業の時間を短縮できると共に振動等によって容易に脱落することがない合成樹脂製の滑り軸受を提供すること。
【解決手段】滑り軸受1は、取付部材を介して車体側に固定される合成樹脂製の上部ケース2と、上部ケース2に重ね合わされていると共にサスペンションコイルばね用のばね受け座面が形成されている合成樹脂製の下部ケース3と、上部ケース2及び下部ケース3間の環状空間4に配される合成樹脂製の滑り軸受片5と、環状空間4を外部に連通する上部ケース2及び下部ケース3間の径方向Xの内周側の環状隙間6及び径方向Xの外周側の環状隙間7の夫々を閉鎖する合成樹脂製の環状の内側シール部材8及び外側シール部材9を具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に四輪自動車におけるストラット型サスペンション(マクファーソン式)の滑り軸受として組み込まれて好適な合成樹脂製の滑り軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ストラット型サスペンションは、主として四輪自動車の前輪に用いられ、主軸と一体となった外筒の中に油圧式ショックアブソーバを内蔵したストラットアッセンブリにサスペンションコイルばねを組合せたものである。斯かるサスペンションにおいては、ステアリング操作においてストラットアッセンブリがコイルばねと共に回る際に、ストラットアッセンブリのピストンロッドが回る形式と、ピストンロッドが回らない形式のものがあるが、いずれの形式においてもストラットアッセンブリの回動を円滑に許容するべく、車体の取付部材とコイルばねの上部ばね座シートとの間に、転がり軸受に代えて、合成樹脂製の滑り軸受が使用される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−27227号公報
【特許文献2】特開2001−27228号公報
【特許文献3】特開2001−27229号公報
【0004】
合成樹脂製の下部ケースと、この下部ケースに重ねられた合成樹脂製の上部ケースと、上部及び下部ケース間の空間に配された合成樹脂製の滑り軸受手段とを具備した合成樹脂製の滑り軸受に関して、特許文献1においては、上部及び下部ケース間において外周側に配された外側弾性シール手段と、上部及び下部ケース間において内周側に配された内側弾性シール手段とを備えている合成樹脂製の滑り軸受が、特許文献2においては、上部及び下部ケース間の空間において外周側に配された外側シール手段と、上部及び下部ケース間の空間において内周側に配された内側ラビリンスシール手段とを備えている合成樹脂製の滑り軸受が、そして、特許文献3においては、下部ケースの外面を覆って配されていると共に両環状の端部で下部及び上部ケース間の空間の外側及び内側環状開口を閉塞した弾性シール手段を具備した合成樹脂製の滑り軸受が提案されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の滑り軸受では、上部及び下部ケース間において内、外周側の夫々の隙間をシールするために、別体の内側弾性シール手段と外側弾性シール手段とを当該各隙間に配しているために、組立作業に時間を要して製造コストの上昇を招来する虞を有しており、特許文献2の滑り軸受では、上部及び下部ケース間において内側の隙間をシールするために、ラビリンスシール手段を用いているために、弾性シール手段に比較して内周側の隙間からの塵埃、泥水等の侵入に対する防御性が若干劣っており、特許文献3の滑り軸受では、上部及び下部ケース間において内、外周側の夫々の隙間をシールする弾性シール手段が下部ケースの外面に配されているために、長期間の使用において下部ケースからの弾性シール手段の脱落等の虞を有しており、いずれの滑り軸受も、組立等の製造コストの問題と、技術的には耐久性及びシール性に関して未だ満足できるものではない。
【0006】
本発明は、前記諸点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、摺動面への塵埃等の侵入を確実に防止し得て、塵埃等の侵入に起因する摺動特性の低下を生じさせることがなく、しかも、組立作業の時間を短縮できると共に振動等によって容易に脱落することがなく、而して、製造コストを低減でき、耐久性及びシール性を向上できてステアリング操作時の円滑な操舵を長期間にわたって維持できる合成樹脂製の滑り軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の合成樹脂製の滑り軸受は、軸方向において円環状下面を有した円環状の上部ケース基部、この上部ケース基部の円環状下面の径方向の内周端部から垂下した内側円筒垂下部及び上部ケース基部の円環状下面の径方向の外周端部から垂下した外側円筒垂下部を夫々一体的に有した合成樹脂製の上部ケースと、この上部ケースに対して軸心の回りで回転自在となるように当該上部ケースに重ね合わされていると共に軸方向において円環状上面を有した円環状の下部ケース基部及びこの下部ケース基部の円環状上面から上部ケース基部の円環状下面に向かって突出した円筒状突部、この円筒状突部の円筒内面に円周方向に沿って一体的に形成されていると共に径方向内方に突出した複数個の内側内方突部、該円筒状突部の円筒外面に円周方向に沿って一体的に形成されていると共に径方向外方に突出した複数個の外側外方突部を夫々一体的に有した合成樹脂製の下部ケースと、軸方向における円環状の上面及び径方向の円筒状の内周面で上部ケース基部の円環状下面及び内側円筒垂下部の径方向の外周面に摺動自在に接触する一方、軸方向における円環状の下面及び径方向の円筒状の外周面で円筒状突部の軸方向における環状上面及び径方向の円筒内面に接触するように、上部ケース基部の円環状下面及び円筒状突部の環状上面間の環状空間並びに内側円筒垂下部の外周面及び円筒状突部の円筒内面間の環状空間に配された合成樹脂製の滑り軸受片と、円筒状突部の複数個の内側内方突部を覆って当該円筒状突部の円筒内面に接合された円環状の内側シール基部並びに上部ケースの内側円筒垂下部の外周面及び内側シール基部の内周面間の隙間を閉鎖するように、この内側シール基部の内周面に連接されていると共に上部ケースの内側円筒垂下部の外周面に弾性的に撓み接触する可撓性の内側シール部を有した内側シール部材と、円筒状突部の複数個の外側外方突部を覆って当該円筒状突部の円筒外面に接合された円環状の外側シール基部並びに上部ケースの外側円筒垂下部の内周面及び外側シール基部の外周面間の隙間を閉鎖するように、この外側シール基部の外周面に連接されていると共に上部ケースの外側円筒垂下部の内周面に弾性的に撓み接触する可撓性の外側シール部を有した外側シール部材とを有する。
【0008】
本発明の合成樹脂製の滑り軸受によれば、内側シール部材の円環状の内側シール基部が下部ケース基部の円筒状突部の複数個の内側内方突部を覆って当該円筒状突部の円筒内面に接合されおり、外側シール部材の円環状の外側シール基部が下部ケース基部の円筒状突部の円筒外面に接合されているので、内側シール部材及び外側シール部材の脱落の虞をなくし得て耐久性を向上させることができ、加えて、上部ケースの内側円筒垂下部の外周面及び内側シール基部の内周面間の隙間を閉鎖する内側シール部が、内側シール基部の内周面に連接されていると共に上部ケースの内側円筒垂下部の外周面に弾性的に撓み接触しており、上部ケースの外側円筒垂下部の内周面及び外側シール基部の外周面間の隙間を閉鎖する外側シール部が、外側シール基部の外周面に連接されていると共に上部ケースの外側円筒垂下部の内周面に弾性的に撓み接触しているので、シール性をさらに向上させることができる。
【0009】
本発明の合成樹脂製の滑り軸受の好ましい例では、内側シール部材の内側シール部は、内側シール基部の厚みよりも小さい厚みを有していると共に内側シール基部の内周面から斜め下方に伸びており、外側シール部材の外側シール部は、外側シール基部の厚みよりも小さい厚みを有していると共に外側シール基部の外周面から斜め下方に伸びている。
【0010】
上部ケースは、上部ケース基部の軸方向における円環状上面の径方向中央部に一体的に形成されている円環状の台座部を更に有していてもよい。
【0011】
一つの好ましい例では、内側円筒垂下部は、軸方向の上端部で上部ケース基部の円環状下面の径方向の内周端部に連接された厚肉円筒部と、軸方向の上端部で厚肉円筒部の軸方向下端に連接されていると共に厚肉円筒部に対して薄肉の薄肉円筒部とを有しており、内側シール部は、内側円筒垂下部の薄肉円筒部の径方向の円筒状の外周面に弾性的に撓み接触しており、外側円筒垂下部は、軸方向の上端部で上部ケース基部の環状下面の径方向の外周端部に連接されていると共に軸方向において上部ケース基部の円環状下面から離れるに従って拡径した内周面を有した台形断面円筒部と、台形断面円筒部の軸方向下端に連接されている円筒部を有しており、外側シール部は、外側円筒垂下部の台形断面円筒部の内周面に弾性的に撓み接触している。
【0012】
下部ケースは、当該下部ケースの円筒状突部の環状上面の外周縁部に当該外周縁部に沿って立設された複数個の湾曲状の突起部を更に具備していてもよく、この場合、滑り軸受片は、上部ケース基部の円環状下面に摺動自在に接触する円環状の上面及び円筒状突部の環状上面に接触する円環状の下面を夫々有している円環状のスラスト滑り軸受片部と、一端部でスラスト滑り軸受片部の一端部から軸方向の下方に伸びて当該一端部に一体的に形成されていると共に内側円筒垂下部の外周面に摺動自在に接触する円筒状の内周面及び円筒状突部の円筒内面に接触する円環状の外周面を夫々有した円筒状のラジアル滑り軸受片部と、下部ケースに対して滑り軸受片が円周方向に回転しないように、スラスト滑り軸受片部の外周面から径方向外方に突出していると共に下部ケースの複数個の湾曲状の突起部間に配された複数個の径方向突板片部とを具備していてもよい。
【0013】
スラスト滑り軸受片部は、その円環状の上面の内周側に形成された円環状溝と、円環状溝に一端で開口している一方、他端でその外周面に開口していると共にその上面に円周方向に等間隔に離間して形成された複数個の径方向溝とを有しており、ラジアル滑り軸受片部は、両端で開口して円筒状の内周面に円周方向に等間隔に離間して設けられた複数個の軸方向溝を有していてもよく、これら円環状溝及び複数個の径方向溝は、グリース等の潤滑油剤の溜まり部となる。
【0014】
スラスト滑り軸受片部は、その円環状の上面に円周方向に沿い、かつ径方向に少なくとも内側列と外側列との二列にわたって形成されていると共に互いに円周方向に位相差をもって配列された複数個の内側凹部及び外側凹部を有していてもよい。
【0015】
複数個の内側凹部の夫々は、軸心を中心として円弧状に伸びた内側円弧状面と、該内側円弧状面に対して径方向外方で軸心を中心として円弧状に伸びた外側円弧状面と、該内側円弧状面及び該外側円弧状面の夫々に連接されていると共に互いに円周方向において対面する一対の半円状面と、該内側円弧状面、該外側円弧状面及び該一対の半円状面の夫々に連接された底面とによって規定されていてもよく、また複数個の外側凹部の夫々は、軸心を中心として円弧状に伸びた内側円弧状面と、該内側円弧状面に対して径方向外方で軸心を中心として円弧状に伸びた外側円弧状面と、該内側円弧状面及び該外側円弧状面の夫々に連接されていると共に互いに円周方向において対面する一対の半円状面と、該内側円弧状面、該外側円弧状面及び該一対の半円状面の夫々に連接された底面とによって規定されていてもよい。
【0016】
複数個の内側凹部及び外側凹部の開口面とスラスト滑り軸受片部の円環状の上面とを合わせた面に占める複数個の内側凹部及び外側凹部の開口面の総面積の割合は、20〜50%、好ましくは30〜40%である。
【0017】
グリース等の潤滑油剤を保持するこれら内側凹部及び外側凹部において、潤滑油剤の低摩擦性を良好に発揮させるために、複数個の内側凹部及び外側凹部の開口面とスラスト滑り軸受片部の円環状の上面とを合わせた面に占める複数個の内側凹部及び外側凹部の開口面の総面積の割合が、少なくとも20%であるとよく、これが、50%を超えるとスラスト滑り軸受片部の強度低下を来たし、クリープ等の塑性変形が生じやすくなる。
【0018】
好ましい例では、内側シール部材及び外側シール部材は、下部ケース基部の円筒状突部の円筒内面及び円筒外面に夫々インサート成形により形成されている。
【0019】
本発明の合成樹脂製の滑り軸受は、好ましくは、四輪自動車のストラット型サスペンションの滑り軸受として用いられる。
【0020】
上部ケースを形成する合成樹脂は、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂などの熱可塑性合成樹脂であってもよく、また、下部ケースを形成する合成樹脂は、ガラス繊維、炭素繊維等の補強繊維を含有したポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂などの熱可塑性合成樹脂であってもよく、滑り軸受片を形成する合成樹脂としては、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂などのポリオレフィン樹脂などの熱可塑性合成樹脂であってもよく、内側シール部材及び外側シール部材を形成する合成樹脂としては、ポリウレタン樹脂、ポリエステルエラストマーなどを好ましい例として挙げることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、上部ケース及び下部ケースと滑り軸受片との摺動面への塵埃等の侵入を確実に防止し得て、塵埃等の侵入に起因する摺動特性の低下を生じることがなく、しかも、組立作業の時間を短縮できると共に振動等によって容易に脱落することがなく、而して、製造コストの低減を図り得、耐久性及びシール性を向上できてステアリング操作時の円滑な操舵を長期間にわたって維持できる合成樹脂製の滑り軸受を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の実施の形態の好ましい例の図3に示すI−I線矢視断面説明図である。
【図2】図2は、図1に示す例の正面説明図である。
【図3】図3は、図1に示す例の平面説明図である。
【図4】図4は、図1に示す例の一部拡大断面説明図である。
【図5】図5は、図1に示す例の上部ケースの平面説明図である。
【図6】図6は、図1に示す例の図5に示す上部ケースのVI−VI線矢視断面説明図である。
【図7】図7は、図1に示す例の図6に示す上部ケースの一部拡大断面図である。
【図8】図8は、図1に示す例の下部ケースの平面説明図である。
【図9】図9は、図1に示す例の図8に示す下部ケースのIX−IX線矢視断面説明図である。
【図10】図10は、図8に示す下部ケースのX−X線矢視断面説明図である。
【図11】図11は、図8に示す下部ケースの一部拡大平面説明図である。
【図12】図12は、図8に示す下部ケースのXII−XII線矢視断面説明図である。
【図13】図13は、図1に示す例の図14に示す滑り軸受片のXIII−XIII線矢視断面説明図である。
【図14】図14は、図1に示す滑り軸受片の平面説明図である。
【図15】図15は、図1に示す滑り軸受片の底面説明図である。
【図16】図16は、図14に示す滑り軸受片のXVI−XVI線矢視断面説明図である。
【図17】図17は、図14に示す滑り軸受片のXVII−XVII線矢視断面説明図である。
【図18】図18は、図1に示す例の内側及び外側シール部材を具備した下部ケースの斜視説明図である。
【図19】図19は、図1に示す例の内側及び外側シール部材を具備した下部ケースの平面説明図である。
【図20】図20は、図19に示す内側及び外側シール部材を具備した下部ケースのXX−XX線矢視断面説明図である。
【図21】図21は、図19に示す内側及び外側シール部材を具備した下部ケースのXXI−XXI線矢視断面説明図である。
【図22】図22は、図19に示す内側及び外側環状シール部材を具備した下部ケースのXXII−XXII線矢視断面説明図である。
【図23】図23は、図1に示す例の滑り軸受片の他の実施の形態の図24のXXIII−XXIII線矢視断面説明図である。
【図24】図24は、図23に示す滑り軸受片の平面説明図である。
【図25】図25は、図23に示す滑り軸受片の底面説明図である。
【図26】図26は、図23に示す滑り軸受片の一部拡大平面説明図である。
【図27】図27は、図24に示す滑り軸受片のXXVII−XXVII線断面説明図である。
【図28】図28は、図24に示す滑り軸受片のXXVIII−XXVIII線断面説明図である。
【図29】図29は、図1に示す滑り軸受をストラット型サスペンションに組込んだ断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に本発明を、図に示す好ましい実施の形態の例に基づいて更に詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例に何等限定されない。
【0024】
図1から図4において、四輪自動車におけるストラット型サスペンションに用いるための本例の滑り軸受1は、取付部材を介して車体側に固定される合成樹脂製の上部ケース2と、上部ケース2に対して軸心Oの回りで円周方向Rに回転自在となるように当該上部ケース2に重ね合わされていると共にサスペンションコイルばね用のばね受け座面が形成されている合成樹脂製の下部ケース3と、上部ケース2及び下部ケース3間の環状空間4に配される合成樹脂製の滑り軸受片5と、環状空間4を外部に連通する上部ケース2及び下部ケース3間の径方向Xの内周側の環状隙間6及び径方向Xの外周側の環状隙間7の夫々を閉鎖する合成樹脂製の環状の内側シール部材8及び外側シール部材9を具備している。
【0025】
上部ケース2は、図5から図7に示すように、軸方向Yにおいて円環状下面10を有する円環状の上部ケース基部11と、上部ケース基部11の円環状下面10の径方向Xの内周端部12から垂下した内側円筒垂下部13と、上部ケース基部11の円環状下面10の径方向Xの外周端部14から垂下した外側円筒垂下部15と、上部ケース基部11の円環状上面16の径方向Xの中央部に突出して形成された円環状の台座部17とを夫々一体的に有している。
【0026】
内側円筒垂下部13は、上端部18で上部ケース基部11の円環状下面10の内周端部12に連接された厚肉円筒部19と、内側円環状段部面20及び外側円環状段部面21を介して厚肉円筒部19の下端部22に上端部23で連接されていると共に厚肉円筒部19に対して薄肉の薄肉円筒部24とを有している。
【0027】
厚肉円筒部19及び薄肉円筒部24は、ストラット型サスペンションの軸部材が貫通する貫通孔25を規定する円筒状の内周面26及び27を有しており、厚肉円筒部19は、円筒状の外周面28を、薄肉円筒部24は、外周面28よりも小径であって、外側円環状段部面21から円環状端面29にかけて先細りとなる截頭円錐状の外周面30を夫々有している。
【0028】
円筒状の外周面31を有する外側円筒垂下部15は、上端部32で上部ケース基部11の円環状下面10の外周端部14に連接されていると共に上部ケース基部11の円環状下面10から離れるにしたがって拡径した内周面33を有した台形断面円筒部34と、上端部35で台形断面円筒部34の下端部に連接されている円筒部36とを夫々有しており、内周面33に連接した円筒状の内周面37を有する円筒部36の円環状端面38は、内側円筒垂下部13の薄肉円筒部24の円環状端面29よりも軸方向Yにおいて下方に位置している。
【0029】
下部ケース3は、図8から図12に示すように、上部ケース2に対して軸心Oの回りで円周方向Rに回転自在となるように当該上部ケース2に重ね合わされていると共に軸方向Yにおいて円環状上面39を有した円環状の下部ケース基部40と、下部ケース基部40の円環状上面39から軸方向Yの上方であって上部ケース基部11の円環状下面10に向かって突出した円筒状突部41と、下部ケース基部40の内周部42における円環状下面43から軸方向Yの下方に向かって突出した円筒部44と、円筒部44の端部45において円筒部44の円筒内面46から内方に突出した円環状の突出部47と、円筒部44の端部45において軸方向Yの下方に向かって突出した円筒突出部48と、円筒状突部41の環状上面49の外周縁部に円環状平面部50を残して軸方向Yの上方に向かって突出していると共に軸心Oの回りの円周方向Rで互いに離間して当該外周縁部に沿って立設された複数個の湾曲状の突起部51と、円筒状突部41の円筒内面52に円周方向Rに沿って互いに等間隔をもって離間して一体的に形成されていると共に径方向Xの内方に突出した複数個の平面視方形の内側内方突部53と、円筒状突部41の円筒外面54に円周方向Rに沿って互いに等間隔をもって離間して一体的に形成されていると共に径方向Xの外方に突出した複数個の平面視方形状の外側外方突部55とを一体的に有しており、円筒部44は、円弧状凹面56を介して円環状下面43に連接された円筒外面57を有しており、円筒突出部48は、円筒外面57に連接されたテーパ外面58を有している。
【0030】
下部ケース基部40は、円環状上面39に加えて、円筒内面46に連接されていると共に円筒内面46と面一の円筒内面61と、環状テーパ外面62を介して円環状下面43に連接された円筒外面63とを有しており、突出部47は、円筒内面64を有している。
【0031】
円筒状突部41の円筒内面52は、円筒内面61と面一であって円筒内面61に連接された円筒内面65と、円筒内面65に円環状段部面66を介して隣接していると共に円筒内面65よりも大径の円筒内面67と、円筒内面67に円環状段部面68を介して隣接していると共に円筒内面67よりも大径の円筒内面69と、円筒内面69に円環状段部面70を介して隣接していると共に円筒内面69よりも大径であって内側内方突部53が一体的に形成されている円筒内面71と、円筒内面71に円環状段部面72を介して隣接していると共に環状上面49に連接されており、円筒内面71よりも大径の円筒内面73とを有している。
【0032】
円筒状突部41の円筒外面54は、環状上面49の円環状平面部50に連接していると共に外側外方突部55が一体的に形成されている円筒外面81と、円筒外面81に連接した円環状段部面82と、円環状段部面82に連接していると共に円環状段部面66を超えて軸方向Yの下方に伸びており、円筒外面81よりも大径であって円弧状凹面83を介して円環状上面39に連接した円筒外面84とを有している。
【0033】
円筒状突部41の円筒内面71に円周方向Rに沿って一体的に複数個形成された内側内方突部53の夫々は、円環状段部面70から軸方向Yの上方に向かって伸びて当該円環状段部面70に一体的に形成されており、各内側内方突部53の上端面85は、円環状段部面72の軸方向Yの下方に位置しており、各内側内方突部53の円弧凹状内面86は、円筒内面69と面一になっている。
【0034】
円筒状突部41の円筒外面81に円周方向Rに沿って一体的に複数個形成された外側外方突部55の夫々は、円環状段部面82から軸方向Yの上方に向かって伸びて当該円環状段部面82に一体的に形成されており、各外側外方突部55の上面87は、円環状平面部50の軸方向Yの下方に位置しており、各外側外方突部55の円弧凸状外面88は、円筒外面84よりも小径であって径方向Yにおいて内方に位置している。
【0035】
円筒状突部41の環状上面49には、円周方向Rに沿って複数個の穴部95が軸方向Yの下方に向かって形成されており、截頭円錐状の穴部95は、その円形開口部96から当該穴部95を規定する底面97にかけて先細りとなっており、穴部95は、截頭円錐状の内面98と、円形の底面97とで規定されており、これら穴部95は、下部ケース3の円筒状突部41の肉厚とその他の部位の肉厚とを均肉にして成形時のヒケ等の不具合を極力低下させるために設けられたものである。
【0036】
上部ケース基部11の円環状下面10及び円筒状突部41の環状上面49間の環状空間101、環状空間101に連通している内側円筒垂下部13における厚肉円筒部19の外周面28及び円筒状突部41の円筒内面73間の環状空間102、環状空間102に連通している内側円筒垂下部13における薄肉円筒部24の外周面30及び円筒状突部41の円筒内面73間の環状空間103、環状空間103に連通している内側円筒垂下部13における薄肉円筒部24の外周面30及び円筒状突部41の円筒内面71間の環状空間104、環状空間101に連通した外側円筒垂下部15における台形断面円筒部34の内周面33及び円筒状突部41の円筒外面81間の環状空間105並びに環状空間105に連通している外側円筒垂下部15における円筒部36の内周面37及び円筒状突部41の円筒外面84間の環状空間106を具備している環状空間4において環状空間101及び102に配された合成樹脂製の滑り軸受片5は、図13から図17に示すように、上部ケース基部11の円環状下面10に摺動自在に接触する円環状の上面111及び円筒状突部41の環状上面49に接触する円環状の下面112を夫々有している円環状のスラスト滑り軸受片部113と、一端部でスラスト滑り軸受片部113の一端部から軸方向Xの下方に伸びて当該一端部に一体的に形成されていると共に内側円筒垂下部13の厚肉円筒部19の外周面28に摺動自在に接触する円筒状の内周面114及び円筒状突部41の円筒内面73に接触する円筒状の外周面115を有して軸方向Yの下方に伸びた円筒状のラジアル滑り軸受片部116と、下部ケース3に対して滑り軸受片5が円周方向Rに回転しないように、スラスト滑り軸受片部113の外周面117から径方向Xの外方に突出していると共に円周方向Rにおいて突起部51間の切れ目118に配されて隣接する当該突起部51に挟持された複数個の径方向突板片部119とを具備している。
【0037】
軸方向Xにおける円環状の上面111及び径方向の円筒状の内周面114で上部ケース基部11の円環状下面10及び内側円筒垂下部13の径方向の外周面28に摺動自在に接触する一方、軸方向Xにおける円環状の下面112及び径方向Yの円筒状の外周面115で円筒状突部41の軸方向Xにおける環状上面49及び径方向Yの円筒内面73に接触するように、上部ケース基部11の円環状下面10及び円筒状突部41の環状上面49間の環状空間101並びに内側円筒垂下部13の外周面28及び円筒状突部41の円筒内面73間の環状空間102に配された合成樹脂製の滑り軸受片5において、スラスト滑り軸受片部113は、円環状の上面111の内周側に設けられた円環状溝121と、円環状溝121に一端で開口している一方、他端で外周面117で開口していると共に上面111に円周方向Rに等間隔に離間して設けられた複数個の径方向溝122とを有しており、ラジアル滑り軸受片部116は、両端で開口して円筒状の内周面114に円周方向Rに等間隔に離間して設けられた複数個の軸方向溝123を有しており、これら円環状溝121、径方向溝122及び軸方向溝123は、グリース等の潤滑油剤の溜まり部となっている。
【0038】
内側シール部材8は、円筒状突部41の複数個の内側内方突部53の外表面を覆って当該円筒状突部41の円筒内面69、71及び円環状段部面70並びに内側内方突部53の外表面に接合された円環状の内側シール基部131と、内側円筒垂下部13における薄肉円筒部24の外周面30及び内側シール基部131の内周面132間の隙間133を閉鎖するように、内側シール基部131の内周面132の上端部に連接されていると共に内側円筒垂下部13における薄肉円筒部24の截頭円錐状の外周面30に弾性的に撓み接触する可撓性を有する円環状の内側シール部134とを具備しており、内側シール部材8は、内側シール部134が薄肉円筒部24の截頭円錐状の外周面30に弾性的に撓み接触することにより、内側円筒垂下部13の軸方向端部である薄肉円筒部24の円環状端面29及び円筒状突部41の円環状段部面66間であって環状空間4の環状空間104を外部に連通する環状隙間6を閉鎖する。
【0039】
内側シール部134は、内側シール基部131の厚みよりも小さい厚みを有していると共に内側シール基部131の内周面132の上端部から斜め下方に伸びている。
【0040】
外側シール部材9は、円筒状突部41の複数個の外側外方突部55の外表面を覆って当該円筒状突部41の円筒外面81及び円環状段部面82並びに外側外方突部55の外表面に接合された円環状の外側シール基部141と、外側円筒垂下部15における台形断面円筒部34の内周面33及び外側シール基部141の外周面142間の隙間143を閉鎖するように、外側シール基部141の外周面142の上端部に連接されていると共に外側円筒垂下部15における台形断面円筒部34の截頭円錐状の内周面33に弾性的に撓み接触する外側シール部144を具備しており、外側環状シール部材9は、外側シール部144が外側円筒垂下部15の台形断面円筒部34の内周面33に弾性的に撓み接触することにより、外側円筒垂下部15の軸方向端部である円筒部36の円環状端面38及び下部ケース基部40の円環状上面39間であって環状空間4の環状空間106を外部に連通する環状隙間7を閉鎖する。
【0041】
外側シール部144は、外側シール基部141の厚みよりも小さい厚みを有していると共に外側シール基部141の外周面142の上端部から斜め下方に伸びている。
【0042】
外側シール基部141は、円環状平面部50を覆うようになっていてもよい。
【0043】
円環状の内側シール基部131と内側シール部134からなる内側シール部材8は、円筒内面71において円筒状突部41にインサート成形されて円筒状突部41の円筒内面71に、円環状の外側シール基部141と外側シール部144からなる外側シール部材9は、円筒外面81において円筒状突部41にインサート成形されて円筒状突部41の円筒外面81に夫々一体的に接合されて形成されている。
【0044】
以上の滑り軸受1は、上部ケース2に対する下部ケース3の円周方向Rの相対回転を、上部ケース基部11の円環状下面10に対するスラスト滑り軸受片部113の上面111及び厚肉円筒部19の外周面28に対するラジアル滑り軸受片部116の内周面114の夫々の円周方向Rの相対的な摺動でもって許容するようになっている。
【0045】
斯かる滑り軸受1によれば、内側シール部材8が下部ケース3の円筒状突部41の円筒内面71に、外側シール部材9が下部ケース3の円筒状突部41の円筒外面81に夫々インサート成形により一体的に接合されて形成されているため、部品点数を少なくでき、組立性に優れて製造費の低減を図り得、しかも、脱落の虞をなくし得て耐久性を向上させることができる。
【0046】
加えて、滑り軸受1によれば、上部ケース2の内側円筒垂下部13の円環状端面29及び下部ケース3の円筒状突部41の円環状段部面66間の環状隙間6を閉鎖する内側シール部材8を有し、上部ケース2の外側円筒垂下部15の円環状端面38及び下部ケース3の下部ケース基部40の円環状上面39間の環状隙間7を閉鎖する外側シール部材9を有しているために、シール性を向上させることができ、当該環状隙間6及び7から環状空間4の各摺動面への塵埃等異物の侵入を阻止することができる。
【0047】
ところで、図23から図28に示すように、上部ケース基部11の円環状下面10に摺動自在に接触する円環状の上面111及び円筒状突部41の環状上面49に接触する円環状の下面112を夫々有している円環状のスラスト滑り軸受片部113と、一端部でスラスト滑り軸受片部113の一端部に一体的に形成されていると共に上部ケース2の内側円筒垂下部13の厚肉円筒部19の外周面28に摺動自在に接触する円筒状の内周面114及び円筒状突部41の円筒内面73に接触する円筒状の外周面115を有して軸方向Yの下方に伸びた円筒状のラジアル滑り軸受片部116と、スラスト滑り軸受片部113の外周面117から径方向Xの外方向に突出していると共に下部ケース3に対して滑り軸受片5が円周方向Rに回転しないように円周方向Rにおいて円筒状突部41の環状上面49の外周縁部に沿って立設された複数個の湾曲状の突起部51間の切れ目118に配されて隣接する当該突起部51に挟持された複数個の径方向突板片部119とを具備している合成樹脂製の滑り軸受片5において、スラスト滑り軸受片部113は、円環状の上面111に円周方向Rに沿い、かつ径方向に少なくとも内側列と外側列の二列にわたって形成されていると共に互いに円周方向Rに位相差をもって配列された複数個の内側凹部151及び外側凹部152を有していてもよい。
【0048】
内側列に形成された内側凹部151の夫々は、軸心Oを中心として円弧状に伸びた内側円弧状面153と、内側円弧状面153に対して径方向Yの外方で軸心Oを中心として円弧状に伸びた外側円弧状面154と、内側円弧状面153及び外側円弧状面154の両端部に連接されていると共に互いに円周方向Rにおいて対面する一対の半円状面155と、内側円弧状面153、外側円弧状面154、及び一対の半円状面155の夫々に連接された底面156とによって規定されている。
【0049】
外側列に形成された外側凹部152の夫々は、軸心Oを中心として円弧状に伸びた内側円弧状面161と、内側円弧状面161に対して径方向Yの外方で軸心Oを中心として円弧状に伸びた外側円弧状面162と、内側円弧状面161及び外側円弧状面162の夫々に連接されていると共に互いに円周方向Rにおいて対面する一対の半円状面163と、内側円弧状面161、外側円弧状面162及び一対の半円状面163の夫々に連接された底面164によって規定されており、外側凹部152は、内側凹部151間の円周方向Rの切れ目165に径方向Yにおいて対応する位置に配列されている。
【0050】
円周方向Rに沿って各60°間隔で配列された小円形部171は、滑り軸受片5の成形時の金型からの突き出しピン位置を示し、内側凹部151には配列されていない。
【0051】
複数個の内側凹部151及び外側凹部152は、当該複数個の内側凹部151及び外側凹部152の開口面175及び176とスラスト滑り軸受片部113の円環状の上面111とを合わせた面に占める複数個の内側凹部151及び外側凹部152の開口面175及び176の総面積の割合が20〜50%、好ましくは30〜40%となるように形成されている。
【0052】
図23から図28に示すラジアル滑り軸受片部116も、軸方向Yの両端で開口して円筒状の内周面114に円周方向Rに等間隔に離間して設けられた複数個の軸方向溝123を有していてもよい。
【0053】
スラスト滑り軸受片部113の円環状の上面111に円周方向Rに沿うと共に径方向Xに少なくとも内側列と外側列の二列にわたって形成された複数個の内側凹部151及び外側凹部152並びにラジアル滑り軸受片部116の内周面114に形成された軸方向溝123は、グリース等の潤滑油剤の溜まり部となる。
【0054】
このように形成された滑り軸受1のスラスト滑り軸受片部113では、円環状の上面111に形成された内側凹部151及び外側凹部152により、スラスト滑り軸受片部113の円環状の上面111と上部ケース2の円環状下面10との軸心O回りでの円周方向Rの相対回転において、スラスト滑り軸受面であって摺動面となる円環状の上面111と相手材、すなわち上部ケース2の円環状下面10との接触面積を減少させて、円環状の上面111に作用する面圧(単位面積あたりの荷重)を高めることにより、合成樹脂同士の摩擦による低摩擦化と内側凹部151及び外側凹部152に充填された潤滑油剤の摺動面への介在による低摩擦化とが相俟って一層の低摩擦化を図ることができる。
【0055】
例えば、図29に示すように、ストラット型サスペンション、車体側の取付部材181の車体側座面182に上部ケース2の円環状上面16の台座部17を当接させ、サスペンションコイルばね183の上端部に下部ケース3の円環状下面43をばね座面184として当接させて、本例の合成樹脂製の滑り軸受1を車体側の取付部材181の車体側座面182とサスペンションコイルばね183との間に配して、当該本例の合成樹脂製の滑り軸受1を四輪自動車におけるストラット型サスペンションに適用してもよい。
【0056】
図29に示すストラット型サスペンションでは、車体側の取付部材181に対するサスペンションコイルばね183の円周方向Rの相対回転は、滑り軸受1の上部ケース基部11の円環状下面10に対するスラスト滑り軸受片部113の上面111及び厚肉円筒部19の外周面28に対するラジアル滑り軸受片部116の内周面114の夫々の円周方向Rの相対的な摺動で許容される。
【符号の説明】
【0057】
1 滑り軸受
2 上部ケース
3 下部ケース
4 環状空間
5 滑り軸受片
6、7 環状隙間
8 内側環状シール部材
9 外側環状シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向において円環状下面を有した円環状の上部ケース基部、この上部ケース基部の円環状下面の径方向の内周端部から垂下した内側円筒垂下部及び上部ケース基部の円環状下面の径方向の外周端部から垂下した外側円筒垂下部を夫々一体的に有した合成樹脂製の上部ケースと、この上部ケースに対して軸心の回りで回転自在となるように当該上部ケースに重ね合わされていると共に軸方向において円環状上面を有した円環状の下部ケース基部及びこの下部ケース基部の円環状上面から上部ケース基部の円環状下面に向かって突出した円筒状突部、この円筒状突部の円筒内面に円周方向に沿って一体的に形成されていると共に径方向内方に突出した複数個の内側内方突部、該円筒状突部の円筒外面に円周方向に沿って一体的に形成されていると共に径方向外方に突出した複数個の外側外方突部を夫々一体的に有した合成樹脂製の下部ケースと、軸方向における円環状の上面及び径方向の円筒状の内周面で上部ケース基部の円環状下面及び内側円筒垂下部の径方向の外周面に摺動自在に接触する一方、軸方向における円環状の下面及び径方向の円筒状の外周面で円筒状突部の軸方向における環状上面及び径方向の円筒内面に接触するように、上部ケース基部の円環状下面及び円筒状突部の環状上面間の環状空間並びに内側円筒垂下部の外周面及び円筒状突部の円筒内面間の環状空間に配された合成樹脂製の滑り軸受片と、円筒状突部の複数個の内側内方突部を覆って当該円筒状突部の円筒内面に接合された円環状の内側シール基部並びに上部ケースの内側円筒垂下部の外周面及び内側シール基部の内周面間の隙間を閉鎖するように、この内側シール基部の内周面に連接されていると共に上部ケースの内側円筒垂下部の外周面に弾性的に撓み接触する可撓性の内側シール部を有した内側シール部材と、円筒状突部の複数個の外側外方突部を覆って当該円筒状突部の円筒外面に接合された円環状の外側シール基部並びに上部ケースの外側円筒垂下部の内周面及び外側シール基部の外周面間の隙間を閉鎖するように、この外側シール基部の外周面に連接されていると共に上部ケースの外側円筒垂下部の内周面に弾性的に撓み接触する可撓性の外側シール部を有した外側シール部材とを有する合成樹脂製の滑り軸受。
【請求項2】
内側シール部は、内側シール基部の厚みよりも小さい厚みを有していると共に内側シール基部の内周面から斜め下方に伸びている請求項1に記載の合成樹脂製の滑り軸受。
【請求項3】
外側シール部は、外側シール基部の厚みよりも小さい厚みを有していると共に外側シール基部の外周面から斜め下方に伸びている請求項1又は2に記載の合成樹脂製の滑り軸受。
【請求項4】
下部ケースは、当該下部ケースの円筒状突部の環状上面の外周縁部に当該外周縁部に沿って立設された複数個の湾曲状の突起部を更に具備しており、滑り軸受片は、上部ケース基部の円環状下面に摺動自在に接触する円環状の上面及び円筒状突部の環状上面に接触する円環状の下面を夫々有している円環状のスラスト滑り軸受片部と、一端部でスラスト滑り軸受片部の一端部から軸方向の下方に伸びて当該一端部に一体的に形成されていると共に内側円筒垂下部の外周面に摺動自在に接触する円筒状の内周面及び円筒状突部の円筒内面に接触する円筒状の外周面を夫々有した円筒状のラジアル滑り軸受片部と、下部ケースに対して滑り軸受片が円周方向に回転しないように、スラスト滑り軸受片部の外周面から径方向外方に突出していると共に下部ケースの複数個の湾曲状の突起部間に配された複数個の径方向突板片部とを具備している請求項1から3のいずれか一項に記載の合成樹脂製の滑り軸受。
【請求項5】
スラスト滑り軸受片部は、その円環状の上面の内周側に形成された円環状溝と、円環状溝に一端で開口している一方、他端でその外周面で開口していると共にその上面に円周方向に等間隔に離間して形成された複数個の径方向溝とを有しており、ラジアル滑り軸受片部は、両端で開口して円筒状の内周面に円周方向に等間隔に離間して設けられた複数個の軸方向溝を有している請求項4に記載の合成樹脂製の滑り軸受。
【請求項6】
スラスト滑り軸受片部は、その円環状の上面に円周方向に沿い、かつ径方向に少なくとも内側列と外側列との二列にわたって形成されていると共に互いに円周方向に位相差をもって配列された複数個の内側凹部及び外側凹部を有しており、ラジアル滑り軸受片部は、両端で開口して円筒状の内周面に円周方向に等間隔に離間して形成された複数個の軸方向溝を有している請求項4に記載の合成樹脂製の滑り軸受。
【請求項7】
複数個の内側凹部の夫々は、軸心を中心として円弧状に伸びた内側円弧状面と、該内側円弧状面に対して径方向外方で軸心を中心として円弧状に伸びた外側円弧状面と、該内側円弧状面及び該外側円弧状面の夫々に連接されていると共に互いに円周方向において対面する一対の半円状面と、該内側円弧状面、該外側円弧状面及び該一対の半円状面の夫々に連接された底面とによって規定されている請求項6に記載の合成樹脂製の滑り軸受。
【請求項8】
複数個の外側凹部の夫々は、軸心を中心として円弧状に伸びた内側円弧状面と、該内側円弧状面に対して径方向外方で軸心を中心として円弧状に伸びた外側円弧状面と、該内側円弧状面及び外側円弧状面の夫々に連接されていると共に互いに円周方向において対面する一対の半円状面と、該内側円弧状面、該外側円弧状面及び当該一対の半円状面の夫々に連接された底面とによって規定されている請求項6又は7に記載の合成樹脂製の滑り軸受。
【請求項9】
複数個の内側凹部及び外側凹部の開口面とスラスト滑り軸受片部の円環状の上面とを合わせた面に占める複数個の内側凹部及び外側凹部の開口面の総面積の割合は、20〜50%である請求項6から8のいずれか一項に記載の合成樹脂製の滑り軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2013−83303(P2013−83303A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223476(P2011−223476)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000103644)オイレス工業株式会社 (384)
【Fターム(参考)】