説明

合成樹脂製キャップ成形用の金型構造

【課題】ストリッパーが係止する位置とネジコアの有効ネジ始め部対応位置間の軸方向距離を短くしてもネジ垂れを発生させることなく、合成樹脂製キャップを成形することができる金型構造を提供する。
【解決手段】スカート壁外周部の係合突起に係合してキャップを突き出して離型するストリッパー30を有し、該ストリッパーはネジコア24の有効ネジ始め部対応位置を含む所定範囲の真下に対向する天面内周部に切欠部32を形成してなり、型抜きに際して切欠部32はスカート壁101を拘束しないので、その部分のスカート壁は外方へ拡がりやすくなり、最も抵抗が大きいアンダーカット部分の型抜き抵抗を緩和する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネジ式合成樹脂製キャップ成形用の金型構造、特にそのストリッパーの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパーエビデントバンド(以下、TEバンドという)を有するネジ式合成樹脂製キャップの射出成形用又は圧縮成形用の金型は、上型と下型及びストリッパーとからなり、一般に下型はキャップ内周面の成形型であるコア型とTEバンド部外周面の成形型であるバンドコアから構成されている。そして、コア型は前記ネジ式合成樹脂製キャップ(以下、単にキャップという)の形状によって相違するが、例えば中心部の冷却コア、インナーリングコア、ネジコアからなっている。ネジコアのネジ成形部はアンダーカットになっているので、金型が割型でなければ離型に際して無理抜きが生じる。該無理抜きは多くの場合、キャップの弾性変形によって抵抗が緩和されてネジを損傷させることなく離型を可能にしているが、無理抜きの抵抗が強い場合は、キャップにネジ垂れ等の変形や損傷が生じる。そのため、従来無理抜きを緩和するために、キャップのネジ形状を工夫する(特許文献1〜3)、あるいは金型の材質面から工夫する(特許文献4参照)、さらには金型構造を工夫する(例えば、特許文献5)こと等種々の提案されているが、抜本的な解決策は未だ見出されていない。
【0003】
キャップが、図9に示すようにTEバンド102に接続する近傍のスカート壁101の下端近傍の外周部にストリッパーが係合できる係合突起103を有するキャップである場合、成形後の型抜きに際して図7に示すようにストリッパー110を突き出すことによって、ストリッパーの天面内周縁がスカート壁外周部の係合突起103に係合して該キャップをネジコア120の軸線方向に移動させて離型する。その場合、ネジコアのアンダーカット部121がキャップ100のネジ山106に対して無理抜きとなる。
【0004】
上記無理抜きは、従来ストリッパーが有効ネジ始め部と十分な距離がある係合位置で係合する場合は、該係合位置から上方外周面は自由状態で拘束されていないので、ネジコアとキャップのネジ部106との係合抵抗に対して、図7に示すように、スカート壁外周部が僅かに半径方向外方に変形することによって、無理抜きを緩和して、キャップのネジ垂れを生じさせることなく離型できる。しかしながら、スカート壁外周面にストリッパーが係合すると、該ストリッパー係合位置はストリッパーに拘束されて外方への変形は阻止されるので、有効ネジ始め部とストリッパーの係合位置との軸方向距離が短い場合は、スカート壁の有効ネジ始め部の外方への変形が殆どなくコア型のアンダーカットによる無理抜きが強くなり、図8に模式的に示すように有効ネジ始め部近傍にネジ垂れ108が生じ易くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−112444号公報
【特許文献2】特開2006−117290号公報
【特許文献3】特開平08−34455号公報
【特許文献4】特開2008−246724号公報
【特許文献5】特開平10−16017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記無理抜きに際して生じるネジ垂れは、本発明者の実験によれば、スカート壁外周部に係合突起を有する上記形状のキャップの場合、ストリッパーが係合する箇所と有効ネジ始め部が3.2mmよりも小さい場合に有効ネジ始め部にネジ垂れが発生することが多く見られた。そのため、従来ストリッパーの係合位置と有効ネジ始め部間の軸方向距離tを3.2mm以上にする必要があった。即ち、従来ネジ垂れを発生させずに型抜きできるようにするためには、ストリッパーの係合位置とネジコアの有効ネジ始め部対応位置の軸方向長さを所定距離t以上確保する必要があり、それがスカート壁の構造設計に種々の制約をもたらしていた。例えば、そのような制限がなければ、キャップの天壁からTEバンド下端までの軸方向高さが一定のキャップであっても、スカート壁の軸方向長さ目一杯にネジを形成することが可能となり、また、用途によっては、TEバンド部の軸方向長さを長くすることが可能となる。さらに、キャップ全体の高さを低くして軽量なキャップを提供することが可能となる。
【0007】
キャップのネジ部の軸方向長さを長くすることによって、インナーリングを有するキャップの場合、ネジが噛み込んでからインナーリングを嵌合させることができ、インナーリングの噛み込み現象が起きず安定してキャッピングができる利点がある。即ち、インナーリングによる正常な密封が可能となる。他方、TEバンドの長さを長くすることによって、キャッピング時にキャップが傾き難くなりTEバンドのボトルの顎部への係止が周方向で均一となり、良好なTE性を得ることができる。逆にTEバンドが傾いた状態でキャッピングされて係止が偏ると開栓に際して弱化部が破断せずにスッポ抜け現象が生じる恐れがある。
【0008】
以上のように、従来の金型ではネジ式合成樹脂製ボトルの離型時のアンダーカットの無理抜きによるネジ垂れを防止するために、成形時にストリッパーが係合する位置と有効ネジ始め部の距離をスカート壁の有効ネジ始め部付近が外方へ膨らむことが可能な所定量以上確保する必要があり、キャップの構造に制限を受けているという問題点があった。
そこで、本発明は、合成樹脂製ボトルの成形に際して、ストリッパーが係止する位置と有効ネジ始め部の位置を従来よりも短くしてもネジ垂れを発生させることなく、合成樹脂製ボトルを成形することができる合成樹脂製ボトル成形用の金型構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本願請求項1に係る発明の合成樹脂製キャップの金型構造は、スカート壁内周面にネジが形成されたネジ式合成樹脂製キャップ成形用の金型構造であって、成形後の合成樹脂製キャップのスカート壁外周部に係合して該合成樹脂製キャップを離型するストリッパーを有し、該ストリッパーのネジコアの有効ネジ始め部対応位置を含む所定範囲の真下に対向する天面内周部に切欠部を形成してなることを特徴とする。
請求項1の上記構成により、ストリッパーのキャップ外周面の係合突起位置に関わらず良好に離型できるので、最も係合抵抗が大きくネジ垂れが発生しやすい箇所である有効ネジ始め部対応位置を含む所定範囲位置とストリッパーが係合する箇所との距離を小さくすることができる。その結果、キャップの天壁からTEバンド下端までの軸方向高さが一定のキャップにおいて、スカート壁の軸方向長さ目一杯にネジを形成することが可能となり、また、用途によっては、TEバンド部の軸方向長さを長くすることが可能となる。さらに、キャップ全体の高さを低くして軽量なキャップを提供することが可能となる。なお、前記有効ネジ始め部対応位置を含む所定範囲とは、少なくともネジ山が有効ネジとして作用開始するネジ形成コアの位置を含む所定範囲を指し、ネジ切り初め位置から有効ネジとして作用する場合は、該ネジ切り始め部を含むネジ切り方向に対応した位置を含む所定範囲、又はネジ切り始め部が有効ネジとして作用しない場合は、ネジ切り始め位置から次第にネジ山が高くなって有効ネジとして作用する位置からネジ切り方向に対応した位置を含む所定範囲を言い、成形した合成樹脂製キャップの離型に際して、最もネジ垂れが発生しやすい下方位置に対応する範囲である。
【0010】
また請求項2に係る発明の合成樹脂製キャップの金型構造は、請求項1に記載の発明において、前記切欠部が、前記天面内周部の90゜〜20゜の範囲に形成されていることを特徴とするものである。
切欠部の範囲が90゜よりも大きいとストリッパーがキャップの係合突起への非係合範囲が大きくなり、離型の際キャップ押し上げに偏荷重が作用して、良好な離型ができなくなる。一方、20゜よりも小さいと非拘束範囲が小さく、スカート壁の変形効果が少ない。望ましくは、50゜〜90゜の範囲である。
【0011】
さらに、請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の合成樹脂製キャップの金型構造において、前記切欠部は、前記ネジコアが多条ネジを有するものである場合、前記多条ネジの各有効ネジ始め部対応位置を含む所定範囲の真下に対向して複数個形成されてなることを特徴とするものである。
多条ネジの場合、条数に応じて切欠部を設けることによって、多条ネジであってもネジ垂れを発生させることなく良好に離型することができる。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか記載の合成樹脂製キャップの金型構造において、前記ストリッパーの天面から、前記ネジコアの有効ネジ始め部対応位置を含む所定範囲における最下のアンダーカット位置までの軸線方向距離が3.2mm以下であることを特徴とするものである。
軸線方向距離tを3.2mm以下にすることによって、その分スカート壁のネジ形成領域を従来よりも長くとることができる。極端な場合、t=0であっても有効ネジ初め部位置を拘束しないから該部の変形効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1〜4に記載の各発明によれば、各有効ネジ始め部対応位置を含む所定範囲の真下に対向する天面内周部に切欠部を形成してあるので、離型に際してキャップのネジ垂れが発生し易い箇所の真下のキャップ外周面がストリッパーによる拘束を解除されている。従って、切欠部が形成されている上方部に位置するスカート壁は、、ストリッパーにより係合部が押し上げられることによって、スカート壁のネジ垂れが最も発生しやすい位置が外方へ変形し易くなりネジが抜けやすくなり、ネジ垂れの発生を有効に防止することができる。その結果、スカート壁は、ストリッパーが係合する箇所と有効ネジ始め部の軸線方向の距離が近くてもネジ垂れが起き難いので、その距離を小さくすることが可能となり、キャップの構造設計の自由度が拡がる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る金型構造の正面縦断面図である。
【図2】(a)は図1の金型構造において、上型及び下型のコア型を省いた状態の正面断面図、(b)はそのB部の拡大図である。
【図3】図2(a)におけるストリッパーとバンドコアのA−A矢視図である。
【図4】図2におけるC−C矢視図である。
【図5】他の実施形態に係る図4に対応する図面である。
【図6】離型途中における要部正面縦断面図である。
【図7】従来の金型構造における離型状態の説明図である。
【図8】従来の金型構造で成形したネジ垂れが発生したキャップの要部断面図である。
【図9】本発明の金型構造による成形したキャップの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る合成樹脂製キャップの金型構造の実施形態を図面を基に詳細に説明する。
図1は、本発明の金型構造の要部縦断面図である。本実施形態の金型構造1は、上型10、下型20及びストリッパー30から構成されている。上型はキャビティ型であり、射出成形の場合はゲートを有している。下型20は、コア型組立体21とバンドコア28とから構成されている。そして、コア型組立体21は、中央部から外方に順次クーリングコア22、インナーリングコア23、ネジコア24から構成されている。ネジコア24には成形するキャップのスカート壁内周面にネジを形成するためのネジ型がアンダーカット部25として形成されている。本実施形態における金型構造は、図9に示す形状の合成樹脂製キャップ100の成形用であり、該合成樹脂製キャップのネジは、所定範囲に亘ってネジ山106が軸線方向に切断されて複数の跳びネジとなっている。
【0016】
上記の金型構造において、本発明ではストリッパー30に、成形後の離型に際して、無理抜きによるキャップのネジ垂れの発生を防止する特別な工夫を図2、図3に示すように施した。即ち、本実施形態におけるストリッパー30は、図3に示すように、天面内周縁部31にネジコア24の有効ネジ始め部対応位置を含む所定範囲の真下に位置する部分に対向するように所定厚さの円弧状の切欠部32を形成した。そして、これに対応してキャップの裾部(TEバンド)を形成するバンドコア28の上面は、図2〜図4に示すように、ストリッパーの上記切欠部32に嵌合するように、切欠部の形状に合わせて円弧状の突部29が形成され、図2(b)に拡大して示すように、ストリッパーと組合わせた際に成形品との間に隙間ができないようになっている。
【0017】
本実施形態では、前記切欠部32は、ネジコアのネジ山が低く有効ネジとして作用しないネジ切り初め部106−1を除く有効ネジ始め部106−2を含む2〜4番目の飛びネジの真下のストリッパーを半径方向に略1.5mmの幅で円弧状に切り欠いた。切欠部32の半径方向の幅は、離型の際ストリッパーを突き出した場合、該切欠部が合成樹脂製キャップの係合突起103に係合しない幅以上が望ましい。切欠部32の円周方向範囲は、離型に際してアンダーカットの抵抗が大きくネジ垂れが発生し易い範囲の下方位置に対応しているのが望ましく、上記範囲に限らず例えば、図5に示すように、ネジ切り始め部から有効ネジ始め部として作用する場合は、ネジ切り始め部の下方位置に対応する部分から所定範囲に設けるなど、ネジキャップの種類や大きさによって、最適範囲を選択すればよい。切欠部の範囲は、一条ネジの場合は、有効ネジ始め部から又はネジ切り始め部近傍の上方部から30〜90゜の範囲に亘って形成するのが望ましい。30゜よりも小さい範囲では、後述するように離型時のスカート壁の外方への拡がり効果が弱く、90゜以上になるとストリッパーのスカート壁外周部への係合部が偏って軸方向に偏荷重となって、キャップが傾き型抜きが良好に行われなくなる。
【0018】
また、合成樹脂製キャップのスカート壁内周面に形成するネジが多条ネジである場合は、それぞれの有効ネジ始め部対応位置を含む所定範囲、即ち、有効ネジ始め部を含む又はネジ切り始め近傍の上方側の20〜80゜の範囲に亘って形成するのが望ましい。
【0019】
本実施形態の金型は、以上のように構成され、合成樹脂製キャップの成形が終了した図1に示す状態から型抜きは、次のようにして行われる。
上記金型構造が射出成形用金型である場合、まず、上型10を除去し、次いでコア組立体21のインナーリングコア23とバンドコア28を略同時に抜く。次いで、ネジコア24を抜くと共にストリッパー30を突き出すことによって、ストリッパー30とネジコア28が反対方向への相対変位によって、成形された合成樹脂製キャップ100の係合突起103がストリッパーの天面内周縁部31に支持されて、ネジ部がアンダーカット部25から抜けて離型される(図2参照)。その際、ストリッパーの天面内周縁部31にキャップの係合突起103への押圧力とキャップのネジ山105とネジコア24のアンダーカット部25との係合による抵抗によって、ストリッパー30の係合位置とネジコア24のアンダーカット部25(特に有効ネジ始め部)でキャップのスカート壁に圧縮荷重が作用するためスカート壁は外方へ膨らもうとするが、その位置間の距離が短いと外方に膨らむには大きな力を要するため、結局アンダーカット部に対して無理な力が作用して、ネジ垂れが発生する。
【0020】
しかしながら、本実施形態では、ネジ垂れが起こりやすい位置の下方部に位置するストリッパー30の内周縁部31は、前記のように切欠部32となっているため、その位置ではストリッパー30と係合突起103の係合がなく、ストリッパー30による拘束がないので、ストリッパー30の係合位置と有効ネジ始め部との距離が近い位置であっても、スカート壁の外方への変形を許容する。その結果、最も型抜き抵抗の大きい部位のスカート壁101が図6に模式的に示すように外方に拡がり易くなり有効ネジ始め部対応位置を含む所定範囲とアンダーカット部25との係合が緩和され、ネジ垂れを起こすことなく離型ができる。なお、上記実施形態はキャップのネジ山が飛びネジとなっている場合について説明したが、もちろん連続のネジ山であっても本発明の金型構造は有効である。
【0021】
以上の実施形態の金型構造は射出成形用金型の場合であるが、圧縮成形用金型の場合は、上型が溶融樹脂が通るスプル・ランナ・ゲートを有していない単一型構造になっている点を除き、同様な金型構造が採用できる。なお、圧縮成形の場合の離型は、上型10、インナーリングコア23、バンドコア28、ネジコア24、ストリッパー30の順に行われる。
【実施例】
【0022】
実施例1
ボトル口径28mm用で、スカート壁内周部に一条の飛びネジが形成されている図9に示す形状の合成樹脂製キャップであって、スカート壁外周部に形成された係合突起下面から有効ネジ始め部までの距離が従来よりも短い2.6 mmのキャップを射出成形する以下のような金型構造を形成した。図1に示す金型構造において、成形時におけるストリッパー天面からネジコアのアンダーカットの有効ネジ始め部に対応する位置までの軸線方向での距離が2.6mmの位置関係となるように形成した。そして、当該金型のストリッパーの天面内周縁に、ネジコアの有効ネジ始め部対応位置から90゜の範囲において、半径方向1.5mm幅の円弧状の切欠部を形成した。
以上のように形成された金型により、上記合成樹脂製キャップを100個射出成形した。その結果、全てのキャップにおいて、スカート壁内周面に形成されたネジにネジ垂れの発生はなく、良好に離型できたことが確認された。
【0023】
比較例1
ストリッパーの頂部内周縁に切欠部を設けなくて均一半径に形成され、且つそれに対応してバンドコアの内周縁にも凸部を設けなく均一内周縁に形成されている以外は、実施例1と同様な金型構造を用いて、実施例1と同様なキャップを100個射出成形した。
その結果、有効ネジ始め部のネジ垂れが発生しているキャップが100個観察された。
【0024】
実施例2
実施例1と同様な金型構造において、切欠部をネジコアの有効ネジ始め部対応位置から70゜の範囲において、半径方向1.5mm幅に形成した。当該金型を用いて実施例1と同様なキャップを100個成形した。その結果、ネジ垂れが発生することなく、良好に成形することができた。
【0025】
実施例3
ボトル口径28mm用で、スカート壁内周部に一条の飛びネジが形成されている図9に示す形状の合成樹脂製キャップであって、スカート壁外周部に形成された係合突起下面から有効ネジ始め部までの距離が従来よりも短い3.0 mmのキャップを射出成形する以下のような金型構造を形成した。図1に示す金型構造において、成形時におけるストリッパー天面からネジコアのアンダーカットの有効ネジ始め部に対応する位置までの軸線方向での距離が3.0mmの位置関係となるように形成した。そして、当該金型のストリッパーの天面内周縁に、ネジコアの有効ネジ始め部対応位置から20゜の範囲において、半径方向1.5mm幅の円弧状の切欠部を形成した。
以上のように形成された金型により、上記合成樹脂製キャップを100個射出成形した。その結果、全てのキャップにおいて、スカート壁内周面に形成されたネジにネジ垂れの発生はなく、良好に離型できたことが確認された。
【0026】
比較例2
実施例3の金型構造において、切欠部をネジコアの有効ネジ始め部対応位置から15゜の範囲において、半径方向1.5mm幅に形成した。当該金型を用いて実施例2と同様なキャップを100個成形した。その結果、離型時にキャップが傾き、全てのキャップが離型不良となりスカート壁に変形が生じた。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の合成樹脂製キャップ成形用の金型構造は、合成樹脂製ボトルの成形に際して、ストリッパーが係止する位置と有効ネジ始め部の位置を従来よりも短くしてもネジ垂れを発生させることなく離型できるので、キャップの構造設計の自由度が拡がり、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0028】
1 合成樹脂製キャップ成形用の金型構造
10 上型
20 下型
21 コア型組立体
22 クーリングコア
23 インナーリングコア
24 ネジコア
25 アンダーカット部
26 ネジ切り開始部
28 バンドコア
29 突起部
30 ストリッパー
31 内周縁部
32 切欠部
100 合成樹脂製キャップ
101 スカート壁
102 タンパーエビデント(TE)バンド
103 係合突起
106 ネジ山
106−1 ネジ切り始め部
106−2 有効ネジ始め部
108 ネジ垂れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スカート壁内周面にネジが形成された合成樹脂製キャップを成形する合成樹脂製キャップ成形用の金型構造であって、成形後の合成樹脂製キャップのスカート壁外周部に係合して該合成樹脂製キャップを離型するストリッパーを有し、該ストリッパーはネジコアの有効ネジ始め部対応位置を含む所定範囲の真下に対向する天面内周部に切欠部を形成してなることを特徴とする合成樹脂製キャップの金型構造。
【請求項2】
前記切欠部は、前記天面内周部の20゜〜90゜の範囲に形成されている請求項1に記載の合成樹脂製キャップの金型構造。
【請求項3】
前記切欠部は、前記ネジコアが多条ネジを有するものである場合、前記多条ネジの各有効ネジ始め部対応位置を含む所定範囲の真下に対向して複数個形成されてなる請求項1又は2に記載の合成樹脂製キャップの金型構造。
【請求項4】
前記ストリッパーの天面から、前記ネジコアの有効ネジ始め部対応位置を含む所定範囲における最下のアンダーカット位置までの軸線方向距離が3.2mm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の合成樹脂製キャップの金型構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−206466(P2012−206466A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75452(P2011−75452)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000228442)日本クラウンコルク株式会社 (382)
【Fターム(参考)】