説明

合成樹脂製床材及び再生方法

【課題】化粧層と合成樹脂製基材を剥離可能に積層した合成樹脂製床材及びその再生方法の提供
【解決手段】合成樹脂製基材の表面に化粧層を積層してなる床材に於いて、合成樹脂製基材と化粧層の間に層間剥離可能な層を設けることを特徴とする合成樹脂製床材及び取り外し可能に下地へ敷設された該合成樹脂製床材が表面の化粧層の損傷により寿命を迎えた場合に下地より取り外して、新しい合成樹脂製床材と交換するとともに、回収した前記合成樹脂製床材について、損傷した化粧層を合成樹脂製基材から層間剥離可能な層の層間剥離により分離し、しかる後、分離された該合成樹脂製基材上の剥離面を必要に応じて研磨平滑化し、その表面に新たな化粧層を貼り合せることを特徴とする合成樹脂製床材の再生方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅、各種店舗や事務所、病院、老建施設、学校、その他の各種公共施設、展示場などの床に施工接着剤を使用しない置き敷きか或いは感圧接着剤や両面粘着テープなどにより床下地から容易に脱着可能に敷設される、化粧層と基材を剥離可能に積層した合成樹脂製床材及びその再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅、各種店舗や事務所、病院、老建施設、学校、その他の各種公共施設などの床には、合成樹脂製床材や木質及び石質床材が床下地の上に接着剤を使用して敷設されている。
【0003】
このような床材は、長期に亘る使用で傷つき汚れたり摩耗して寿命を迎えたり、或いは模様替えや改装の場合には貼り替えることが必要となるが、かかる貼り替え作業は、接着剤で床下地に固着されている床材を該下地より剥離する作業、該下地に固着している接着剤をケレンなどで除去する作業、ケレンにより損傷した下地をレベリング剤などで平滑化する下地調整作業、新しい床材の敷設作業を経て行われ、長時間の作業によるより多大の労力や多額の費用を要した。
【0004】
また、上記作業により剥離した床材の裏面には劣化した施工接着剤や破損した下地材の小塊が付着しており、そのままの状態ではリサイクルが困難であり、通常は産業廃棄物として埋め立て処分せざるを得ず環境面で大きな問題があった。
【0005】
そこで、接着剤を使用しないで敷設でき、しかも粘着剤などを使用して床タイルの表面に保護フィルムを剥離可能に設けて床タイルのリサイクルを可能にした構成の置き敷き床タイルが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−44272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、保護フィルムと床タイルとは粘着剤を主体とする接着剤で接着されている為、床使用時に剥離などの問題を起こさずしかも保護フィルムを床タイルから剥がす必要のある時容易に剥離できるように接着力を調整することが非常に困難であるばかりでなく、被着体の種類によっては、例えば床タイルとして最も汎用の塩化ビニル樹脂の場合には柔軟性を調整する為に添加される可塑剤が該接着剤の凝集力を著しく低下させ、床として使用されている時に保護フィルムが剥離してしまうなどの問題があった。そこで、当該可塑剤の影響を遮断する為、可塑剤の接着剤層への移行を抑制する層を形成することも可能であるが、余分な材料費や加工費がかかりコストアップとなる問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、合成樹脂製基材と化粧層の材質などに依存せず、且つ、使用中に該化粧層が部分的に剥離したり反ったりすることなく、床材が寿命を迎えるまでの長期間使用可能であり、寿命を迎え回収された後は該基材から摩耗した化粧層を容易に剥離しリサイクル出来る様にした合成樹脂製床材とその再生方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決しうる合成樹脂製床材及びその再生方法に関するものであり、1)合成樹脂製基材の表面に化粧層を積層してなる床材に於いて、合成樹脂製基材と化粧層の間に層間剥離可能な層を設けることを特徴とする合成樹脂製床材、
2)層間剥離可能な層の剥離強度は化粧層の層間強度より弱く且つ、該化粧層と該層間剥
離可能な層との間の接着強度及び該層間剥離可能な層と合成樹脂製基材との間の接着強度より弱いものであることを特徴とする前記1)記載の合成樹脂製床材、
3)層間剥離可能な層が2層抄き合わせにより抄き合わせ界面から剥離する無機質及び/又は有機質繊維不織布からなることを特徴とする前記1)記載の合成樹脂製床材、
4)層間剥離可能な層が再剥離性接着剤を介して貼り合せられた合成樹脂製フィルム及び/又は繊維質シートからなることを特徴とする前記1)記載の合成樹脂製床材、
5)層間剥離可能な層が無機質及び/又は有機質繊維不織布の表裏両面より合成樹脂を含浸させ該不織布の厚さ方向に強度勾配を付け、該不織布の中央部の強度を表裏面部の強度より弱めることで、該不織布の中央部より均一に剥離することを特徴とする前記1)記載の合成樹脂製床材、
6)取り外し可能に下地へ敷設された前記1)ないし5)の何れか1つに記載の合成樹脂製床材を、該合成樹脂製床材が表面の化粧層の損傷により寿命を迎えた場合に下地より取り外して、新しい合成樹脂製床材と交換するとともに、回収した前記合成樹脂製床材について、損傷した化粧層を合成樹脂製基材から層間剥離可能な層の層間剥離により分離し、しかる後、分離された該合成樹脂製基材上の剥離面を必要に応じて研磨平滑化し、その表面に新たな化粧層を貼り合せることを特徴とする合成樹脂製床材の再生方法、
7)貼り合せる新たな化粧層が分離された合成樹脂製基材の表面の寸法より大きい寸法を有するものであり、該新たな化粧層を該合成樹脂製基材の表面に貼り合せて、その端面からはみ出た辺縁部を該合成樹脂製基材の端面と面一になる様切断することを特徴とする前記6)記載の合成樹脂製床材の再生方法、
8)貼り合せる新たな化粧層が分離された合成樹脂製基材の寸法と同一寸法を有するものであることを特徴とする前記6)記載の合成樹脂製床材の再生方法、
に関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の合成樹脂製床材を使用することにより、合成樹脂製基材や化粧層の材質に依存せず且つ、使用中に該化粧層が部分的に剥離したり反ったりすることなく、床材が寿命を迎えるまでの長期間使用可能であり、寿命を迎え回収された後は該合成樹脂製基材から摩耗した化粧層を容易に剥離しリサイクル可能とするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の合成樹脂製床材に使用する合成樹脂製基材は、単層又は複層の合成樹脂組成物からなり、寸法安定性を確保する目的で、繊維質シートの単層乃至複層を該合成樹脂組成物層間に介在させることができる。
【0011】
本発明の合成樹脂製床材を接着剤を使用し床下地材上に施工する場合は、前記繊維質シートを介在させない単層又は複層からなる通常の合成樹脂製基材を本発明の合成樹脂製床材に使用する合成樹脂製基材として使用できるが、粘着性の感圧接着剤による全面接着や、該感圧接着剤、両面粘着テープ、ホットメルト接着剤等による部分接着、或いは接着剤を使用しない置き敷きにより施工する場合は、寸法安定性を確保する為に繊維質シートの単層乃至は複層を、該合成樹脂製基材を構成する合成樹脂組成物シート間に介在させる事が必要である。
【0012】
また、繊維質シートは、本発明の合成樹脂製床材の上反りを防止するため、単層を介在させる場合は、該合成樹脂製床材の厚さの中心より表面側に、また複層を介在させる場合は、最上層の繊維質シートの表面側の合成樹脂層の厚さよりも、最下層の繊維質シートの裏面側の合成樹脂層の厚さが厚くなるように積層するのが好ましいが、使用する合成樹脂層の硬さや該合成樹脂層を成形する際の内部歪の程度などにより変化するため、繊維質シートを介在させる正確な位置は実際の製品で反りの状態を確認し設定するのが好ましい。
【0013】
更に、本発明の合成樹脂製床材を、粘着性の感圧接着剤による全面接着や、該感圧接着剤、両面粘着テープ、ホットメルト接着剤等による部分接着、或いは接着剤を使用しない置き敷きにより施工する場合、繊維質シートは、該床材の厚さ方向の上反りや逆反り、水平方向の寸法変化を抑制すると共に、該床材の施工時のカッティング性や敷設性の確保、更に使用中の移動荷重による捲れ等の防止のために剛性を調整する事が重要であり、単層よりも複層使用する事が好ましい。即ち、繊維質シートが単層の場合、構造的に厚さ方向に柔軟性があるため床下地になじみ易く下地の不陸がそのまま出てしまうばかりでなく、繊維質シートの介在位置を正確に設定しないと厚さ方向の反り(上反り、逆反り)が出やすい欠点があるが、2層以上介在させる事で構造的に厚さ方向で剛性が高くなり前述の下地の不陸をカバーすると共に、厚さ方向の反りも出難くなる。更に、繊維質シートを増やす事で本発明の合成樹脂製床材の合成や寸法安定性が向上するが、余りに剛性が高くなるとシート床材の場合は巻けなくなり、又、床タイルの場合は下地の不陸の影響で該床タイルの目地段差が発生したり、コスト高となるため、使用する繊維質シートの数は床としての機能面とコスト面より設定する必要がある。
【0014】
また、合成樹脂製基材は、表面にかかる局部荷重や動荷重などで凹み難く、凹み量を極力小さくする事が好ましく、特に、柔軟性のある合成樹脂組成物を使用した場合は、該合成樹脂製基材の表面及び/または該合成樹脂製基材に積層した化粧層の表面に、剛性が高く強靭な合成樹脂層を積層する事が望ましい。特に、表面保護層の最上層の塗膜硬度が高い場合は、より剛性が高く強靭な合成樹脂層を積層する事が望ましい。
【0015】
合成樹脂製基材に使用する合成樹脂組成物としては、塩化ビニル樹脂組成物、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−プロピレン共重合樹脂、エチレン−アクリル共重合樹脂、その他の共重合樹脂等の単独または複数混合した熱可塑性合成樹脂組成物の他、尿素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の単独または複数混合した熱硬化性合成樹脂組成物等通常床材として使用されるものが使用できる。
【0016】
また、柔軟性のある合成樹脂組成物を使用した場合にその表面に積層する剛性が高く強靭な合成樹脂層としては、硬質塩化ビニル樹脂組成物、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン−アクリル共重合樹脂等の熱可塑性合成樹脂組成物の他、尿素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性合成樹脂組成物等の透明乃至不透明なフィルムやシートを、柔軟性のある合成樹脂組成物層の表面に、加熱貼り合せ、接着剤を介して貼り合せ、被接着面が化学的に不活性な合成樹脂組成物はコロナ処理、プラズマ処理等通常の手段で表面を活性化して必要に応じてプライマー処理した後加熱貼り合せ及び/又は接着剤を介して貼り合せ等、通常の手段で積層することができる。
【0017】
合成樹脂製基材に使用する繊維質シートとしては、ガラス繊維、ロックウール、金属繊維、その他の無機繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ウレタン繊維、ポリプロビレン繊維、パルプ、コットン、レーヨンその他の有機繊維の少なくとも1種
以上からなる、無機質及び/又は有機質の織布、不織布、編布等や、該無機質及び/又は有機質の織布、不織布、編布等に液状合成樹脂組成物を含浸したもの、該無機質及び/又は有機質の織布、不織布、編布等に合成樹脂フィルムやシートを通常の手段で貼り合せたもの等が使用できる。
【0018】
合成樹脂製基材の厚さは0.5〜10mmの範囲が好ましい。0.5mm未満の場合、
本発明の合成樹脂製床材の上反りを防止する為にその表面に積層する化粧層の厚さを薄くする必要があり、該合成樹脂製床材の製品厚さが薄くなり施工下地の不陸が表面に顕著に現れ、又、10mmを超えると合成樹脂製床材自体が重くなり取扱い難くなると共にコスト高となり好ましくない。
【0019】
合成樹脂製基材の表面側に層間剥離可能な層を介して積層する化粧層は、透明若しくは半透明の合成樹脂フィルムに、グラビア印刷、オフセット印刷、オフセットグラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスリーン印刷、ロータリースクリーン印刷、スパッタ塗装、インクジェット印刷等通常の方法で印刷した合成樹脂フィルムやシート、合成樹脂製着色粒状物及び/又はチップの単色や多色混合・焼結により形成したもの、合成樹脂製着色粒状物を圧延する事により流れ模様を形成したもの、無地又は任意の模様に合成樹脂製及び/又は無機質着色粒状物やチップ、箔状物等を散布する事により形成したもの等、通常の化粧方法により作成した合成樹脂フィルムやシートを積層したもの、或いは、グラビア印刷、オフセット印刷、オフセットグラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、ロータリースクリーン印刷、スパッタ塗装、インクジェット印刷等通常の方法で印刷した合成樹脂フィルムやシート、任意の色相に着色した半透明若しく不透明の合成樹脂シート、合成樹脂製着色粒状物及び/又はチップの単色や多色混合・焼結により形成したもの、合成樹脂製着色粒状物を圧延する事により流れ模様を形成したもの、無地又は任意の模様に合成樹脂製及び/又は無機質着色粒状物やチップ、箔状物等を散布する事により形成したもの等が使用できる。
【0020】
化粧層を構成する各層の厚さは、透明もしくは半透明の合成樹脂フィルムが0.01〜1mm、通常の方法で印刷する被印刷フィルムが0.05〜0.5mm、その他前記の方法で製造する模様シートが0.2〜2mmの範囲が好ましい。
【0021】
透明もしくは半透明の合成樹脂フィルムの厚さが0.01mm未満の場合耐久性が悪くなり、1mmを超えると床材が硬く上反りし易くなるばかりでなくコスト高となる問題がある。又、該被印刷フィルムの厚さが0.01mm未満の場合、印刷時にしわや切断が起こり易くなり、0.5mmを超えると被印刷シートの重量が重くなり、印刷作業の制御が難しくなるばかりでなく歩留まりが悪くコスト高となる問題がある。その
他前記の方法で製造する模様シートの厚さが0.2mm未満の場合、得られる模様が小さくなり意匠性が劣り、2mmを超えると上そり防止のため合成樹脂製床材の厚さを厚くする必要を生じコスト高となる問題がある。
【0022】
前記透明若しくは半透明の合成樹脂フィルムと前記通常の化粧方法により作成した合成樹脂フィルムやシートの積層は、透明もしくは半透明の液状合成樹脂組成物の塗布や、加熱ラミネート、接着剤を使用したウエットラミネートやドライラミネート、ホットメルトラミネートなど通常の積層方法が適用できる。
【0023】
化粧層を構成する透明若しくは半透明の合成樹脂フィルムやシート、任意の絵柄を印刷する被印刷フィルムやシート、その他の化粧シートに使用する合成樹脂組成物としては、塩化ビニル樹脂組成物、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−プロピレン共重合樹脂、エチレン−アクリル共重合樹脂、その他の共重合樹脂等の単独または複数混合した熱可塑性合成樹脂組成物の他、尿素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の単独または複数混合した熱硬化性合成樹脂組成物等より製造した合成樹脂フィルムやシートの単層及び複層フィルムやシート、或いは、ガラス繊維、ロックウール、金属繊維、その他の無機繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ウレタン繊維、ポリプロビレン繊維、パルプ、コットン、レーヨンその他の有機
繊維の少なくとも1種以上からなる、無機質及び/又は有機質の織布、不織布、編布等や
、該無機質及び/又は有機質の織布、不織布、編布等に液状合成樹脂組成物を含浸したもの、該無機質及び/又は有機質の織布、不織布、編布等に合成樹脂フィルムやシートを通常の手段で積層したもの等通常使用されるものが使用できる。
【0024】
該化粧層の表面には、床の清掃性を向上する目的で防汚層を設けることが出来る。
化粧層の表面に清掃性向上の目的で設ける防汚層としては、単層若しくは複層の常温硬化型や加熱硬化型、紫外線や電子線などの活性エネルギー線の照射により硬化する塗料により形成されるが、設備費用や硬化速度、高架橋密度により本発明の目的とする防汚性や耐擦傷性に優れた塗膜が得られる点で、活性エネルギー線の照射により硬化する塗料を使用するのが好ましい。
【0025】
特に、住宅以外の土足で使用される、例えば、各種店舗や事務所、病院、老建施設、学校、その他の各種公共施設、展示場など、耐摩耗性や耐擦傷性の要求される用途に使用する場合には、単層若しくは複層の塗膜を形成する塗料に減磨材を添加するのが好ましく、減磨材の添加で塗膜の光沢が低下する場合や、耐擦傷性向上のため高硬度の塗膜を形成する場合で被塗面の化粧層との硬度差が大きい場合には、両硬度差を緩衝させる目的でその中間的な硬度の塗料に減磨材を添加した層を設けるのが好ましい。該塗膜を減磨材添加と無添加に分けた方が、減磨材の添加量を増量し耐磨耗性や耐擦傷性を大幅に向上させることが出来より好ましいものである。
【0026】
塗膜厚さは、その硬度とコストにより適宜設定すればよいが、概ね、総塗膜厚さが2〜100μm、複層で減磨材を添加する場合は減磨材添加塗膜の厚さが2〜100μm、その表面の塗膜厚さが2〜50μmが好ましい。
【0027】
塗膜厚さが2μm未満の場合は、塗膜の耐久性が劣り、100μmを超えると床材が上反りを起こすばかりかコスト高となり好ましくない。又、減磨材を添加した塗膜の厚さが2μm未満の場合添加する減磨材の粒径が小さくなり耐擦傷性や耐摩耗性が悪くなり、100μmを超えると床材が上反りを起こすばかりかコスト高となり好ましくない。減磨材を添加した塗膜の表面に塗布する塗膜の厚さが2μm未満の場合は、該塗膜の耐久性が悪くなり、50μmを超えると耐擦傷性の効果が低下するばかりでなくコスト高となり好ましくないものである。
【0028】
防汚層を形成する方法としては、一般的な塗装方法が適用されるが、例えば、ロールコーター(ナチュラルロールコーター、リバースロールコーター)、ナイフコーター、カーテンフローコーター、ダイコーター、ディップコーター、リップコーター、コンマコーター、スプレー塗装等から任意に選択する事ができる。
【0029】
そして、透明若しくは半透明のフィルム、又は前記の通常の化粧方法により作成した合成樹脂フィルムやシートの表面に上記により適宜選定した塗装方法により防汚層を形成したものを合成樹脂性基材に層間剥離可能な層を介して積層するか、或いは、化粧層を合成樹脂性基材に層間剥離可能な層を介して積層した後に上記により適宜選定した塗装方法により防汚層を形成することが出来る。
【0030】
防汚層を形成するために使用する常温硬化型或いは加熱硬化型塗料としては、1液或いは2液型ウレタン塗料、1液或いは2液型アクリル・ウレタン塗料、メラミン樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、アクリル・シリコン系ハイブリット塗料、パーヒドロポリシラザン系無機塗料などの有機系、有機・無機系、無機系の無溶剤型、溶剤型、水性エマルジョン型塗料が挙げられる。
【0031】
又、防汚層を形成するために使用する紫外線や電子線などの活性エネルギー線の照射により硬化する塗料としては、該活性エネルギー線に照射により架橋硬化する二重結合を分子中に少なくとも1以上を有するオリゴマー及び/またはモノマーと、必要に応じて光開始剤、各種添加剤、溶剤などを適宜配合してなる。
【0032】
係るオリゴマーとしては、例えば、ウレタンアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー、メラミンアクリレートオリゴマー、ポリブタジエンアクリレートオリゴマー、シリコンアクリレートオリゴマー、アルキドアクリレートオリゴマー、ポリエーテルアクリレートオリゴマー、ポリオールアクリレートオリゴマー等のアクリレート系オリゴマー、ウレタンメタクリレートオリゴマー、ポリエステルメタクリレートオリゴマー、エポキシメタクリレートオリゴマー、メラミンメタクリレートオリゴマー、ポリブタジエンメタクリレートオリゴマー、シリコンメタクリレートオリゴマー、アルキドメタクリレートオリゴマー、ポリエーテルメタクリレートオリゴマー、ポリオールメタクリレートオリゴマー等のメタクリレート系オリゴマー、不飽和ポリエステル樹脂及び不飽和(メタ)アクリル樹脂等の1種または2種以上を使用することができる。
【0033】
モノマーとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1・6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールメタン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の脂肪族多価アルコールとアクリル酸又はメタクリル酸とから得られるアクリル又はメタクリル系単官能乃至多官能化合物、トリアリルイソシアヌレート、トリス−(2−メタクリロイルオキシエチル)−イソシアヌレート等のイソシアヌレート化合物、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等の1分子中に2
個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と不飽和一塩基酸とから得られるアクリル変成エポキシ樹脂、多価シクロアセタール化合物とグリコール不飽和モノカルボン酸エステルモノオールとの反応性生物である不飽和シクロアセタール化合物、ジアリルフタレート等のほか、スチレン系単量体、メタ
クリル酸エステル単量体、アクリル酸エステル単量体等の単官能化合物の1種または2種以上を使用することができる。
【0034】
又、前記塗料を紫外線照射により硬化させる場合は光開始剤を添加する必要がある。
光開始剤としては、ベンゾイン、α−メチルベンゾイン、α−アリルベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン化合物、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシ
クロヘキシルアセトフェノン等のアセトフェノン類、ベンゾフェノン、p−ブロムベンゾフェノン、4,4´−テトラメチルジアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、チオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類、ベンゾフェノン、P−ブロムベンゾフェノン、4,4’−テトラメチルジアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルメチルケタール等のケタール類、ジフェニルジスルフィド、ベンジル等通常使用されるものの1以上が使用できる。
【0035】
前記各種添加剤としては、増感剤、艶消し剤、充填剤、消泡剤、湿潤剤、レベリング剤、接着改良剤、分散剤、粘度調整剤、難燃剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、防黴剤、減磨剤、貯蔵安定剤等通常使用されるものが適宜使用される。
【0036】
減磨材としては、平均粒径が5〜100μmのアルミナ、珪砂、シリカ、カーボランダ
ム、ガラス、その他のセラミックなどの硬質物質の粉末が使用でき、特にガラスビーズは多量に添加しても塗料の塗工性に悪影響を与えない為より好ましい。
【0037】
又、溶剤としては、通常使用される有機溶剤のほか、環境面から水に前記オリゴマー及び/またはモノマー、光開始剤や各種添加剤等を分散したエマルジョンの形で使用される。該溶剤は塗料を塗布した後加熱により揮発除去した後、活性エネルギー線を照射し塗料を硬化させる事が望ましい。
【0038】
活性エネルギー線としては特に限定されないが、前記オリゴマー及び/またはモノマーや必要に応じ添加される光開始剤に作用して、硬化反応を開始せしめるに充分なエネルギーを有するものであれば良く、可視光線、紫外線、γ線、電子線、α線、β線等が利用できるが、照射装置の簡易性、基材に支障を与えない選択的硬化能力、処理コスト等の面から、最も実用性の高いものは紫外線又は電子線である。
【0039】
活性エネルギー線として紫外線を照射する場合、その光源としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク、マイクロ波のエネルギーにより水銀等の発光物質を励起する事で発生するプラズマの光エネルギーを利用する無電極UVランプ等の光源が使用できる。
【0040】
又、化粧層を製造する際の加工性向上、合成樹脂製床材の寸法安定性の確保などの目的で、該化粧層の裏面に合成樹脂製基材に使用する繊維質シートを積層することが出来る。該化粧層の裏面に繊維質シートを積層する場合は、上述の加工性向上及び寸法安定性の確保に加えて、層間剥離可能な層として機能させることも可能である。
【0041】
該化粧層の裏面に繊維質シートを積層する方法は、繊維質シートの表面に着色液状合成樹脂組成物を塗布し加熱ゲル化或いは硬化しこれを被印刷シートとして前記の方法で作成した化粧層、或いは、前記の如く通常の積層方法で積層した化粧層などの裏面に、加熱ラミネート、接着剤を使用したウエットラミネートやドライラミネートなど通常の積層方法で繊維質シートを積層することが出来る。
【0042】
本発明の合成樹脂製床材における層間剥離可能な層は、基本的に該層間剥離可能な層の剥離強度が化粧層の層間強度より弱く且つ、該化粧層と該層間剥離可能な層との間の接着強度及び該層間剥離可能な層と合成樹脂製基材との間の接着強度より弱く、加工の際に適用される加熱により変色や寸法変化などを起こさない程度の耐熱性、実用時の水や湿気などの影響を受けにくい耐湿・水性があれば何でも使用可能である。
【0043】
その代表的なものとしては、2層抄き合わせにより概ね抄き合わせ界面から剥離する無機質及び/又は有機質繊維不織布、再剥離性接着剤を介して貼り合せられた合成樹脂製シート及び/又は繊維質シート、層間剥離可能な無機質及び/又は有機質繊維不織布の表裏両面より合成樹脂を含浸させ該不織布の厚さ方向に強度勾配を付け該不織布の中央部の強度を表裏面部の強度より弱めることにより該不織布の概ね中央部より均一に剥離するように構成した繊維質シートなどを挙げることが出来る。
【0044】
層間剥離可能な層の剥離強度は、0.3〜4kg/25mm幅の範囲が好ましい。
接着強度が0.3kg/25mm幅未満の場合は、実用時に化粧層が剥離し目地部が上反りを起こし易く、又、4kg/25mm幅を超えると寿命を迎えた床材を回収し化粧層を剥離する際に化粧層が剥離し難いばかりでなく材料が破壊され部分的に残ってしまう為、剥離作業が著しく困難となり好ましくないものである。
【0045】
2層抄き合わせにより概ね抄き合わせ界面から剥離する無機質及び/又は有機質繊維不
織布としては、ガラス繊維、ロックウール、金属繊維、その他の無機繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ウレタン繊維、ポリプロビレン繊維、パルプ、コットン、レーヨンその他の有機繊維の少なくとも1種以上からなる、無機質及び/又は有機
質の繊維と合成樹脂バインダー、ワックスなどから成る組成物を、2層抄き合わせで抄紙した、両層が同種或いは異種の不織布が使用できる。
【0046】
再剥離性接着剤を介して貼り合せられた合成樹脂製フィルム及び/又は繊維質シートとしては、再剥離性接着剤の接着強度に影響を与える可塑剤やミネラルオイル、低揮発性溶剤などを多量に含有しない同種或いは異種の合成樹脂製フィルムやシート同士、該合成樹脂製フィルムやシートと繊維質シート、同種或いは異種の繊維質シート同士を再剥離性接着剤で接着したものが使用できる。
【0047】
再剥離性接着剤としては、前記層間剥離可能な層の条件を満足し該接着剤の凝集破壊強度又は被着体との接着強度が、被着体である該合成樹脂製シート及び/又は繊維質シートの層間強度より弱いものであれば何でも使用でき、代表的なものとして通常使用されているSBR、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合樹脂、スチレン−ブチレン−エチレン−スチレン共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、湿気硬化型ウレタン樹脂、2液硬化型ウレタン樹脂などの溶剤溶液、水性エマルジョン、ラテックス、ホットメルト型の接着剤や粘着剤などが使用できる。
【0048】
合成樹脂製フィルムとしては、前記接着剤や粘着剤との組合せで前述の条件の範囲で適宜選定できるが、その代表的なものは、多量の可塑剤を含まない塩化ビニル樹脂組成物、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−プロピレン共重合樹脂、エチレン−アクリル共重合樹脂、その他の樹脂や共重合樹脂等の単独または複数混合した熱可塑性合成樹脂組成物の他、尿素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の単独または複数混合した熱硬化性合成樹脂組成物等より製造した合成樹脂フィルムの単層及び複層フィルムなどが使用できる。
【0049】
繊維質シートとしてはガラス繊維、ロックウール、金属繊維、その他の無機繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ウレタン繊維、ポリプロビレン繊維、パルプ、コットン、レーヨンその他の有機繊維の少なくとも1種以上からなる、無機質及び/
又は有機質の織布、不織布、編布等や、該無機質及び/又は有機質の織布、不織布、編布等に液状合成樹脂組成物を含浸したもの、該無機質及び/又は有機質の織布、不織布、編布等に前記の合成樹脂フィルムやシートを通常の手段で積層したもの等通常使用されるものが使用できる。
【0050】
同種或いは異種の合成樹脂製フィルム及び/又は繊維質シートの再剥離性接着剤による貼り合せは、加熱ラミネート、ウエットラミネートやドライラミネート、ホットメルトラミネートなど通常の積層方法が適用できる。
【0051】
層間剥離可能な無機質及び/又は有機質繊維不織布の表裏両面より液状合成樹脂を含浸させ該不織布の厚さ方向に強度勾配を付け該不織布の中央部の強度を表裏面部の強度より弱めることにより該不織布の概ね中央部より均一に剥離するように構成するための繊維質シートとしては、ガラス繊維、ロックウール、金属繊維、その他の無機繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ウレタン繊維、ポリプロビレン繊維、パルプ、コットン、レーヨンその他の有機繊維の少なくとも1種以上からなる、無機質及び/又は有
機質の不織布が使用できる。
【0052】
そして、該無機質及び/又は有機質の不織布の表裏両面より含浸させ不織布の厚さ方向に強度の勾配を付ける為の液状合成樹脂としては、SBR、MSBR、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−塩化ビニル共重合樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−プロピレン共重合樹脂、エチレン−アクリル共重合樹脂尿素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などの溶剤溶液、水性エマルジョン・ラテックス、ペーストなどの液状合成樹脂組成物の単独又は複数混合組成物、さらに前記合成樹脂の単独又は複数混合組成物を加熱により溶融・液状化したホットメルトなどが使用できる。
【0053】
該無機質及び/又は有機質の不織布の両面への液状合成樹脂組成物の含浸方法は、ナイフコーター、ロールコーター(ナチュラル、又はリバース)、ロータリースクリーン、シルクスクリーン、デッピング、ダイコーター、リップコーター、スプレーなど通常の塗布方法が適用できる。
【0054】
本発明の合成樹脂製床材は、層間剥離可能な層を合成樹脂製基材の表面に予め積層したものと化粧層を積層するか、或いは該層間剥離可能な層を化粧層の裏面に予め積層したものと合成樹脂製基材を積層するか、或いは化粧層と層間剥離可能な層と合成樹脂製基材とを一緒に積層するか、或いは又、化粧層を構成する各素材と層間剥離可能な層と合成樹脂製基材を構成する各素材とを重ねて一緒に積層するなどの方法で得られるが、これらの方法に限定されるものではない。
【0055】
積層する方法は、バッチ式或いは連続式の熱プレス、接着剤を使用したウェットラミネート、ドライラミネート、ホットメルトラミネートなどの貼り合せ方法の少なくとも1以上を組合せた方法が使用できるが、これらの方法に何ら限定されるものではない。
【0056】
層間剥離可能な層を接着剤を用いて積層する際の接着剤としては、通常使用される接着剤や粘着剤が使用できるが、代表的なものとしてSBR、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合樹脂、スチレン−ブチレン−エチレン−スチレン共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、湿気硬化型ウレタン樹脂、2液硬化型ウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などの溶剤溶液、水性エマルジョン、ラテックス、ホットメルト型の接着剤や粘着剤などが挙げられる。また、熱プレスの場合も、予め、化粧層、層間剥離可能な層、合成樹脂製基材などの被着体の少なくともいずれか一方に接着剤を塗布したものを熱プレスで貼り合せたり、接着剤の必要な被着体間にホットメルト接着剤の不織布や粉末などを挿入し熱プレスで貼り合せることが可能である。
【0057】
本発明の合成樹脂製床材の厚さは、概ね下地の状態(特に不陸の状態)によって設定する必要があり、例えば住宅で下地の平滑性が良い場合は薄くて問題ないが、店舗などのコンクリートスラブ下地で不陸が大きい場合は厚くする必要がある。
【0058】
そして、合成樹脂製床材の厚さが薄い場合は、敷設した床材がずれやすいので、寿命を迎えた合成樹脂製床材を下地より剥離し回収することが容易である程度の弱〜中粘着性の接着剤を使用し合成樹脂製床材を敷設し、また、合成樹脂製床材が厚い場合は接着剤を使用せず合成樹脂製床材を敷設することが出来るが、合成樹脂製床材上での重量物の移動が頻繁に行われる場合は剥離し回収することが容易な程度の弱〜中粘着性の接着剤を使用し合成樹脂製床材を敷設してもよい。
【0059】
該合成樹脂製床材の厚さは、シート物の場合は0.5〜5mm、タイル状の場合は0.5
〜10mmの範囲が好ましい。該合成樹脂製床材の厚さが0.5mm未満の場合は下地の凹凸が表面に現れ外観上好ましくなく、また、シート物で5mmを超えると巻き難くなると共に重量が重く施工性が低下するばかりかコスト高となり、床タイルで10mmを超えるとナイフなどによる切断が困難となると共に重量が重く施工性が低下しコスト高となるなどの問題がある。
【0060】
本発明の合成樹脂製床材が寿命を向かえた場合の回収・再生の方法について、タイル状床材(以降床タイルという)を対象に以下説明する。
前記の方法により製造した床タイルを、コンビニエンスストアに接着剤を使用せずに敷設した場合を想定し、特に人の歩行が集中する入り口及びレジ周り、重量物の入ったコンテナーや段ボール箱を使用し商品の棚入れ作業が行われる飲料水、弁当コーナーの表面損傷の大きい床タイルを下地より剥離し、その箇所に新しい床タイルを敷設し、交換・回収する。
【0061】
回収した床タイルを工場へ送り返し、必要に応じて床タイルを洗浄し、層間剥離可能な層の部分から化粧層を合成樹脂製基材から剥離し、化粧層と合成樹脂製基材を分別する。そして、該合成樹脂製基材の剥離面を研磨・平滑化した後、新たな化粧シート(化粧層)を接着剤を使用して貼り合せる。
【0062】
この際使用する接着剤は、前記の本発明の層間剥離可能な層を化粧層や合成樹脂製基材に貼り合せるための接着剤が使用でき、貼り合せ方法も前記同様の方法が適用できるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
又新たな化粧層を該合成樹脂製基材に貼り合せる場合の形態は、幅が該合成樹脂製基材よりやや大きめの長尺に巻き込んだシート状の化粧層(化粧シート)を巻き出し、該化粧層の裏面か或いは任意の間隔で搬送される該合成樹脂製基材の表面の少なくとも一方に接着剤を塗布し必要に応じて乾燥した後両材料を貼り合せた後、シートの長手方向の該合成樹脂製基材同士の間の該化粧シートを切断し、該合成樹脂製基材からはみ出た辺縁部を該合成樹脂製基材の端面に合わせて面一になる様切断する方法、或いは、新たな化粧層を該合成樹脂製基材と同一寸法に予め裁断し、該化粧層の裏面か或いは該合成樹脂性基材の表面の少なくとも一方に接着剤を塗布し必要に応じて乾燥した後、該合成樹脂製基材に正確に位置を合わせて化粧層を貼り合せる方法、或いは又、新たな化粧層を該合成樹脂製基材よりやや大きめに予め裁断し、該化粧層の裏面か或いは該合成樹脂性基材の表面の少なくとも一方に接着剤を塗布し必要に応じて乾燥した後、化粧層の辺縁部が何れも該合成樹脂製基材の端面から突出する様に、化粧層を該合成樹脂製基材に貼り合せ、突出した化粧層の辺縁部を該合成樹脂製基材の端面に合わせて面一なる様切断する方法などにより再生される。
再生された合成樹脂製床材は同一の店舗か或いは同一絵柄の床材を使用している別の店舗に使用されるものである。
【0064】
一方、同時に分別された表面が損傷した化粧層は、一定の量になるまで収集され破砕或いは粉砕され適切な方法により再資源化され本発明の合成樹脂製床材などに使用される。
【0065】
本発明の合成樹脂製床材の再生方法における具体的な実施態様としては、例えば、以下のような態様を挙げることができる。
1)店舗に本発明の合成樹脂製床材を床タイルとして敷設し、特に表面の傷や光沢低下が目立つようになった床タイルを新しい床タイルと交換・回収し、店舗以外の周辺の場所で、床タイルの表面を洗浄し、必要に応じて研磨を行い傷などを修復した後、UV塗料又は通常使用されている樹脂ワックスを塗布し、固有の方法・条件で乾燥する等の「修復」を施し、同じ店舗又は別の店舗で再使用する。
2)店舗に特定の被覆剤が塗布された本発明の合成樹脂製床材を床タイルとして敷設し、特に表面の傷や光沢低下が目立つようになった床タイルを新しい床タイルと交換・回収し、任意に設定した単位で梱包し工場へ搬送する。工場の塗装ラインで特定の方法により剥離・洗浄、必要に応じて乾燥した後、特定の被覆剤を塗布し、固有の方法・条件で乾燥し、同じ店舗又は別の店舗で再使用する。
尚、上記の特定の被覆剤及び特定の方法は、特開昭63−308076号公報に記載の特定の被覆剤及び特定の方法又はそれに類する被覆剤及び方法で行うことができる。
3)店舗に通常の床用樹脂ワックスが塗布された本発明の合成樹脂製床材を床タイルとして敷設し、特に表面の傷や光沢低下が目立つようになった床タイルを新しい床タイルと交換・回収し、任意に設定した単位で梱包し工場へ搬送する。工場の塗装ラインでメンテナンス業者が一般的に床タイルの敷設現場で行っているメンテナンス方法を踏襲し、剥離剤を使用し樹脂ワックス皮膜を剥離・洗浄、必要に応じて乾燥した後、床用樹脂ワックスを塗布し、固有の方法・条件で乾燥し、同じ店舗又は別の店舗で再使用する。
【0066】
以上の方法により、合成樹脂製床材の製造から実用後寿命を迎えるまでの全ての工程で廃棄物を発生させない環境負荷の極めて小さい床面の維持管理のクローズドシステムが確立されることになる。
【実施例】
【0067】
次に本発明を具体的に説明する為に実施例を揚げるが、本発明はなんらこれに限定されるものではない。
実施例1
グラビア印刷機にて石目の絵柄を印刷した厚さ0.07mmの半硬質塩化ビニル樹脂フィルムと両面に易接着処理を施した厚さ0.125mmのポリエステルフィルムを反応型ウレタン系接
着剤を使用してドライラミネートし化粧フィルムを得た。
ガラス繊維不織布(三菱製紙製、0.2mm厚、2層抄き合わせ法により抄紙)の表面に塩化ビニル樹脂ペーストを0.4mm厚さで塗布し、直ちに前記化粧フィルムの塩ビ側を該塩化ビニ
ル樹脂ペーストに接するようにして加熱圧着し塩化ビニル樹脂ペーストをゲル化せしめ、該化粧フィルムとガラス繊維不織布を接着一体化した化粧シートを得た。
次に、全て52cm角に予め裁断した、軟質塩化ビニル再生材を使用して得た厚さ0.8mmの
再生塩化ビニル樹脂シート1枚/上記と同一仕様のガラス繊維不織布1枚/厚さ0.8mmの再
生塩化ビニル樹脂シート4枚/上記により得た化粧シート1枚を積載し、プレス機を使用して加熱・加圧後冷却して、厚さ5mmのシートを油圧裁断機を使用して50cm×50cmの寸法に
裁断し正方形の床タイルを得た。
こうして得た床タイルの表面側の4辺を面取り加工した後、ロールコーターを使用して
次の条件で防汚層を形成した。
床タイルの表面(ポリエステルフィルム)にナチュラルロールコーターを使用し、ウレタンアクリレート系紫外線硬化型塗料(塗膜の鉛筆硬度:HB)100重量部に粒度#400のアルミナ粉末20重量部添加・混合し、液温約20℃に温調した塗料組成物を16μmの厚さになるよう塗布した後、塗布面を加熱し80W/cmのオゾンレスタイプ紫外線ランプ2灯で約7m/分の速度にて該塗料を硬化させ室温に放置し、室温まで冷却した。
そして、該減磨材を添加した塗料を塗布した床タイルの表面を#320のサンドペーパーで軽く研磨し、減磨材の突出の程度を平均粒径に合せて平均化した。
その後、該減磨材を添加した塗料の塗布面に前記と同様にロールコーターにてウレタンアクリレート系紫外線硬化型塗料(塗膜の鉛筆硬度:4H)を18μmの厚さになるよう塗
布した後、塗布面を加熱し80W/cmのオゾンレスタイプ紫外線ランプ2灯で約5m/分の速度にて該塗料を硬化させ室温に放置し、室温まで冷却する事により本発明の床タイルを得た。こうして得た床タイルをコンビニエンスストアの床に接着剤を使用せずに敷設し、約半年経過した時点で特に表面の損傷の大きな床タイルを新たなものと交換する形で回収した。
前記により回収した床タイルを簡単に水洗し汚れを除去し水切り・乾燥した後、損傷した化粧層を合成樹脂製基材から剥離した所、前記ガラス繊維不織布の概ね抄き合わせ界面から該化粧層を剥離することが出来た。
上記により化粧層を剥離・除去して得られた該合成樹脂製基材の剥離面をサンディングにより平滑化した後、前述の方法で化粧フィルムとガラス繊維不織布を塩化ビニル樹脂ペーストを接着剤として貼り合せ、幅約52cmにスリットしロール状に巻き込んだ化粧シートを巻き出しつつ、ガラス繊維不織布の裏面側に約200℃に加熱し溶融液状化した一液反応型ウレタン系接着剤をロールコーターにより塗布後直ちに該合成樹脂製基材のサンディング面に圧着した後冷却することで、該化粧層を該合成樹脂製基材に固着し、機械方向の該合成樹脂製基材間の該合成樹脂製基材に接着していない化粧シートを機械方向に対し直角方向に切断し、化粧層が合成樹脂性基材の4端面より外側に突出した積層物を得た。
こうして得た積層物の化粧層の4辺の突出部を該合成樹脂製基材の端面に沿って正確に
切断し、該化粧層の表面側の4辺を面取り加工した後、前記と同様の方法で防汚層を形成
して、寿命を迎え回収した床タイルの合成樹脂製基材を再使用することにより、新しい床タイルを再生することが出来た。そして、こうして再生した床タイルは、新たな製品としてなんら問題なく使用出来るものであった。
再生された床タイルの断面図を図1に示した。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】実施例で製造した再生された床タイルの断面図である。
【符号の説明】
【0069】
1 アルミナ粉末(減磨材)
2 ウレタンアクリレート系紫外線硬化型塗料(硬度:4H)
3 ウレタンアクリレート系紫外線硬化型塗料(硬度:HB)
4 ポリエステルフィルム
5 反応型ウレタン系接着剤
6 半硬質塩化ビニル樹脂フィルム
7 塩化ビニル樹脂ペースト
8 ガラス繊維不織布
9 反応型ウレタン系接着剤
10 再生塩化ビニル樹脂シート
11 ガラス繊維不織布
12 再生塩化ビニル樹脂シート
13 防汚層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製基材の表面に化粧層を積層してなる床材に於いて、合成樹脂製基材と化粧層の間に層間剥離可能な層を設けることを特徴とする合成樹脂製床材。
【請求項2】
層間剥離可能な層の剥離強度は化粧層の層間強度より弱く且つ、該化粧層と該層間剥離可能な層との間の接着強度及び該層間剥離可能な層と合成樹脂製基材との間の接着強度より弱いものであることを特徴とする請求項1記載の合成樹脂製床材。
【請求項3】
層間剥離可能な層が2層抄き合わせにより抄き合わせ界面から剥離する無機質及び/又は有機質繊維不織布からなることを特徴とする請求項1記載の合成樹脂製床材。
【請求項4】
層間剥離可能な層が再剥離性接着剤を介して貼り合せられた合成樹脂製フィルム及び/又は繊維質シートからなることを特徴とする請求項1記載の合成樹脂製床材。
【請求項5】
層間剥離可能な層が無機質及び/又は有機質繊維不織布の表裏両面より合成樹脂を含浸させ該不織布の厚さ方向に強度勾配を付け、該不織布の中央部の強度を表裏面部の強度より弱めることで、該不織布の中央部より均一に剥離することを特徴とする請求項1記載の合成樹脂製床材。
【請求項6】
取り外し可能に下地へ敷設された請求項1ないし5の何れか1項記載の合成樹脂製床材を、該合成樹脂製床材が表面の化粧層の損傷により寿命を迎えた場合に下地より取り外して、新しい合成樹脂製床材と交換するとともに、回収した前記合成樹脂製床材について、損傷した化粧層を合成樹脂製基材から層間剥離可能な層の層間剥離により分離し、しかる後、分離された該合成樹脂製基材上の剥離面を必要に応じて研磨平滑化し、その表面に新たな化粧層を貼り合せることを特徴とする合成樹脂製床材の再生方法。
【請求項7】
貼り合せる新たな化粧層が分離された合成樹脂製基材の表面の寸法より大きい寸法を有するものであり、該新たな化粧層を該合成樹脂製基材の表面に貼り合せて、その端面からはみ出た辺縁部を該合成樹脂製基材の端面と面一になる様切断することを特徴とする請求項6記載の合成樹脂製床材の再生方法。
【請求項8】
貼り合せる新たな化粧層が分離された合成樹脂製基材の寸法と同一寸法を有するものであることを特徴とする請求項6記載の合成樹脂製床材の再生方法。


【図1】
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【公開番号】特開2007−186865(P2007−186865A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−4175(P2006−4175)
【出願日】平成18年1月11日(2006.1.11)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】