説明

合成粉体製造方法、及び、粉体処理装置

【課題】 本発明の目的は、合成粉体を高効率且つ高品質に製造することができる合成粉体製造方法を実現し、更には、その合成粉体製造方法を好適に実施可能な粉体処理装置を実現する点にある。
【解決手段】 一種以上の希土類金属酸化物Aの粉体と、希土類金属ではない1種以上の他金属の酸化物B1又は炭酸塩B2の粉体とを混合してなる混合粉体M2を原料とし、混合粉体M2に対して機械的作用を印加することで固相反応を生じさせ、合成粉体を製造する際に、機械的作用が印加されている混合粉体M2に対して、水蒸気Sを供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一種以上の希土類金属酸化物の粉体と、希土類金属ではない1種以上の他金属の酸化物又は炭酸塩の粉体とを混合してなる混合粉体を原料とし、前記混合粉体に対して機械的作用を印加することで固相反応を生じさせ、合成粉体を製造する合成粉体製造方法、及び、その合成粉体製造方法を好適に実施するための粉体処理装置であって、原料となる粉体が内部に供給される有底円筒状の処理容器と、前記処理容器の内面である堆積面に対向配置され凸状に湾曲する処理面を有する処理部材と、前記処理容器及び前記処理部材を相対回転させる回転駆動手段とを備え、前記堆積面に対し前記処理面を前記堆積面に沿うように相対移動させることで、前記堆積面と前記処理面との間隙で、前記混合粉体に対して機械的作用を印加する粉体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような希土類金属酸化物の粉体と、希土類金属ではない他金属の酸化物又は炭酸塩の粉体とを混合してなる混合粉体を原料としその混合粉体を反応させて製造される合成粉体としては、電磁気材料等として利用されるペロブスカイト型酸化物がある。
【0003】
特に、SOFC(固体酸化物形燃料電池)の空気極材料等としては、触媒活性(即ち酸素の吸着・解離)と電子伝導性とを有するLaMnO(ランタンマンガン酸化物)や、そのLaMnO中のLaの一部をSr(ストロンチウム)で置換したLa1−xSrMnO(ランタンストロンチウムマンガン酸化物:LSM)等の希土類金属であるLaを含むペロブスカイト型酸化物が利用される(例えば、特許文献1を参照。)。
【0004】
SOFCの発電性能を向上させるためには、電極反応速度の向上が不可欠であり、LSM等のペロブスカイト型酸化物を利用した空気極における電極反応速度は、三相界面の長さに比例することから、ペロブスカイト型酸化物を微細化して比表面積を大きくすることが必須となる。尚、上記三相界面とは、電子導電性を有するLSM等のペロブスカイト型酸化物と、酸化物イオン導電性を有するYSZ(イットリア安定化ジルコニア)と、気相との界面である。
【0005】
上記のようなペロブスカイト型酸化物粉体等の合成粉体を製造する合成粉体製造方法としては、原料元素の酸化物粉体や炭酸塩粉体等の原料を混合しながら高温にして固相反応させる方法や、上記原料元素の硝酸塩や酢酸塩等の混合水溶液を蒸発乾固させて得られる前駆体を高温焼成して固相反応させる方法等がある。
しかし、このように高温で反応させる場合には、粒成長が促進されて均質且つ微細な合成粉体を製造することができないために、合成粉体の比表面積を十分に大きくすることができず、更には、蒸気圧が低い金属元素が揮発してしまい合成粉体の品質が低下するという問題があった。
【0006】
そこで、固相反応時の温度を比較的低くできる合成粉体製造方法として、希土類金属酸化物の粉体と希土類金属ではない他金属の酸化物粉体等との混合粉体を原料とし、その混合粉体に圧縮力、せん断力、衝撃力等の機械的作用を印加することで固相反応を生じさせ、合成粉体を製造するメカノケミカル法と呼ばれる方法が知られている(例えば、特許文献2及び3を参照。)。
【0007】
【特許文献1】特開平4−104470号公報
【特許文献2】特開平9−255893号公報
【特許文献3】特開平9−52773号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記のような従来のメカノケミカル法による合成粉体製造方法のように、原料の混合粉体に対して機械的作用のみを付与するだけでは、固相反応が十分に進行しないという問題があったため、原料の混合粉体に対して水酸化物等の助剤を添加して粉砕混合を行う場合があった。しかし、この場合でも、固相反応が不十分であるため、粉砕混合した粉体に対して例えば1000℃以上と高温で熱処理を行う必要があり、やはり合成粉体の比表面積を十分に大きくすることができなかった。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、希土類金属酸化物の粉体とその他の他金属の粉体との混合粉体に対して、圧縮力やせん断力等の機械的作用を印加することで固相反応を生じさせ、合成粉体を高効率且つ高品質に製造することができる合成粉体製造方法を実現し、更には、その合成粉体製造方法を好適に実施可能な粉体処理装置を実現する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る合成粉体製造方法は、一種以上の希土類金属酸化物の粉体と、希土類金属ではない1種以上の他金属の酸化物又は炭酸塩の粉体とを混合してなる混合粉体を原料とし、前記混合粉体に対して機械的作用を印加することで固相反応を生じさせ、合成粉体を製造する合成粉体製造方法であって、その第1特徴構成は、前記機械的作用が印加されている混合粉体に対して、水蒸気を供給する点にある。
【0011】
更に、本発明に係る合成粉体製造方法の第2特徴構成は、前記混合粉体が堆積する堆積面に対し、前記堆積面に対向配置され凸状に湾曲する処理面を、前記堆積面に沿うように相対移動させることで、前記堆積面と前記処理面との間隙で、前記混合粉体に対して前記機械的作用を印加する点にある。
【0012】
本願発明の発明者らは、希土類金属酸化物の粉体と、希土類金属ではない他金属の酸化物又は炭酸塩の粉体とを混合してなる混合粉体を原料とし、その混合粉体に対して圧縮力及びせん断力等の機械的作用を印加することで固相反応を生じさせ、合成粉体を製造する合成粉体製造方法において、その機械的作用が印加されている混合粉体に対して水蒸気を供給することで、混合粉体において良好に固相反応を生じさせて、複数の金属元素を含む単一相の合成粉体を、高効率且つ高品質に製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、上記原料となる混合粉体に対して強力な圧縮力及びせん断力等の機械的作用を印加すると共に、その混合粉体に対して水蒸気を供給することで、混合粉体に含まれる希土類金属酸化物の粉体の表面の少なくとも一部がその水蒸気と反応して、上記希土類金属酸化物よりも機械的強度が低い希土類金属の水酸化物が生成される。そして、その希土類金属酸化物の粉体表面に生成された水酸化物が上記機械的作用の印加により粉砕されて高活性且つ微細な希土類金属の水酸化物の粉体となり、更に、上記機械的作用の印加により、その希土類金属の水酸化物が他金属の粉体と脱水を伴って固相反応すると考えられる。
従って、本発明により、後に高温での熱処理を行うことなく、短時間で比表面積が非常に大きい合成粉体を製造することができる。
【0014】
更に、混合粉体が堆積する上記堆積面に対して処理面を堆積面に沿うように相対移動させることで、堆積面に堆積している粉体に対して、処理面との間隙で、非常に強力な圧縮力とせん断力との機械的作用を印加して摩砕することができ、混合粉体における固相反応を一層促進させ、更に、1μm未満のナノサイズの非常に小さい合成粉体を得ることができる。
【0015】
本発明に係る合成粉体製造方法の第3特徴構成は、機械的作用が印加されている前記混合粉体を収容する処理容器内の水蒸気分圧を1.2kPa以上に設定する点にある。
【0016】
即ち、上記処理容器内の水蒸気分圧を、例えば、飽和水蒸気圧以下の範囲内として混合粉体表面における水蒸気の結露を抑制しながら、室温(25℃)環境下において1.2kPa以上に設定することで、混合粉体に対して水酸化物が生成されるために十分な水蒸気を供給することができる。
【0017】
本発明に係る合成粉体製造方法の第4特徴構成は、前記機械的作用が印加されている混合粉体に対して放電する点にある。
【0018】
即ち、混合粉体に対して、機械的作用を印加しながら、上記のように放電を行うことで、混合粉体に含まれる希土類金属の粉体を一層高活性化することができ、例えば、希土類金属の粉体と他金属の粉体とを短時間で固相反応させて、合成粉体を製造することができる。
【0019】
本発明に係る合成粉体製造方法の第5特徴構成は、前記機械的作用が印加されている前記混合粉体の粉砕状態が所望の粉体状態に達したときに、前記混合粉体に印加する前記機械的作用を低減させる点にある。
【0020】
即ち、混合粉体に対して機械的作用を印加しながら水蒸気を供給する場合において、混合粉体の粉砕状態が所望の粉砕状態に達したときに、その機械的作用を低減させ、その状態を維持することにより、混合粉体の凝集等による粒成長を防止して、微細な混合粉体を維持しながら、その混合粉体に含まれる希土類金属の粉体と他金属の粉体との固相反応を十分に進行させることができるので、一層微細な合成粉体を製造することができる。
【0021】
本発明に係る合成粉体製造方法の第6特徴構成は、前記希土類金属酸化物が、La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Yb,Lu,Y,Scから選択される一種以上の酸化物である点にある。
【0022】
即ち、これまで説明してきた合成粉体製造方法においては、La(ランタン)、Ce(セリウム),Pr(プラセオジム),Nd(ネオジム),Sm(サマリウム),Eu(ユウロピウム),Gd(ガドリニウム),Yb(イッテルビウム),Lu(ルテチウム),Y(イットリウム),Sc(スカンジウム)から選択される一種以上の希土類金属の酸化物の粉体又は炭酸塩粉体を含む混合粉体を原料として、LaMnO(ランタンマンガン酸化物)、そのLaMnO中のLaの一部をSr(ストロンチウム)で置換したLa1−xSrMnO(ランタンストロンチウムマンガン酸化物:LSM)、又は、類似のペロブスカイト型酸化物を製造することができる。
【0023】
本発明に係る合成粉体製造方法の第7特徴構成は、前記希土類金属酸化物の粉体の粒子径が、前記他金属の酸化物又は炭酸塩の粉体の粒子径よりも大きい点にある。
【0024】
例えば、希土類金属としてのLaの酸化物粉体と、他金属としてのMnの酸化物粉体等とを含む混合粉体を原料として、粒子径が1μm未満(例えば100nm程度)のLaMnOである合成粉体を製造する場合を想定すると、Mnの酸化物粉体は、数十〜100nmの粒子径のものが工業用粉体として入手可能であるが、Laの酸化物粉体は、小さくても1μm程度の粒子径のものしか工業用粉体として入手できない。
そこで、上記特徴構成によれば、上記希土類金属酸化物の粉体は、機械的作用の印加及び水蒸気の供給により、非常に微細化されることになるので、原料として混合粉体に含まれる上記希土類金属酸化物の粉体として、上記他金属の粉体よりも粒子径が大きく容易に入手可能なものを利用しても、更に、このように粒子径が大きい上記希土類金属酸化物の粉体を用いても、粒子径が1μm未満(例えば100nm程度)と非常に小さい合成粉体を製造することができる。
【0025】
本発明に係る合成粉体製造方法の第8特徴構成は、前記混合粉体に、希土類金属の水酸化物粉体を添加する点にある。
【0026】
上記特徴構成によれば、混合粉体に対して希土類金属の水酸化物を添加することで、その水酸化物と他金属の粉体との固相反応により生成された水分(水蒸気)も、希土類金属酸化物の粉体の表面に供給されることになり、希土類金属の水酸化物の生成及び粉砕が促進されることになり、合成粉体を一層高効率且つ高品質に製造することができる。
【0027】
本発明に係る合成粉体製造方法の第9特徴構成は、前記合成粉体に対して熱処理を行う点にある。
【0028】
上記特徴構成によれば、混合粉体に対して機械的作用を印加すると共に水蒸気を供給することで、混合粉体に含まれる希土類金属の粉体と他金属の粉体とを良好に固相反応させて、複数の金属元素を含む単一相の合成粉体を製造することができるが、その合成粉体における金属元素の結合が不十分な場合には、その合成粉体に対して所定温度に加熱する熱処理を行うことで、金属元素を完全に結合させて、一層高品質な合成粉体を製造することができる。また、この熱処理前の合成粉体においては金属元素の結合が比較的進行しているので、熱処理における加熱温度を、焼結時における加熱よりも比較的低温とすることができ、例えば、熱処理における加熱温度を1000℃未満(例えば800℃程度)と比較的低温として、粒成長を抑制すると共に、高い蒸気圧の金属を扱う場合も、その揮発を抑制して所望の合成粉体を得ることができる。
また、合成粉体としての製造されたLSMを、燃料電池の電極を製造するべくYSZと混合した状態で、熱処理を行う場合でも、その熱処理における加熱温度を、ランタンのジルコニアへの拡散を抑制することができる1200℃未満として、高品質の燃料電池の電極を製造することができる。
【0029】
また、特に上記第1又は第2特徴構成を有する合成粉体製造方法を好適に実施可能な本発明に係る粉体処理装置は、原料となる粉体が内部に供給される有底円筒状の処理容器と、前記処理容器の内面である堆積面に対向配置され凸状に湾曲する処理面を有する処理部材と、前記処理容器及び前記処理部材を相対回転させる回転駆動手段とを備え、前記堆積面に対し前記処理面を前記堆積面に沿うように相対移動させることで、前記堆積面と前記処理面との間隙で、前記混合粉体に対して機械的作用を印加する粉体処理装置であって、その特徴構成は、前記処理容器内に水蒸気を供給可能な水蒸気供給手段を備えた点にある。
【0030】
即ち、上記回転駆動手段により上記処理容器及び上記処理部材を相対回転させて、処理容器内面の堆積面に対して処理部材に形成された処理面を堆積面に沿うように相対移動させることで、上記処理容器に供給され堆積面に堆積している粉体を、処理面との間隙で、圧縮力とせん断力との機械的作用を印加して摩砕して、粉体の粒径を均等なものとしながら、粉体が凝集することを抑制することができる。
そして、上記処理容器内に供給する粉体を、希土類金属酸化物の粉体と、希土類金属ではない他金属の酸化物又は炭酸塩の粉体とを混合してなる混合粉体として、堆積面と処理面との間隙でその混合粉体に圧縮力とせん断力との機械的作用を印加しながら、上記水蒸気供給手段により、上記混合粉体に対して水蒸気を供給することができるので、上述したように、短時間で比表面積が非常に大きい合成粉体を製造する上記第1又は第2特徴構成を有する合成粉体製造方法を好適に実施することができる粉体処理装置を実現することができる。
【0031】
また、特に上記第3特徴構成を有する合成粉体製造方法を好適に実施可能な本発明に係る粉体処理装置の特徴構成は、前記水蒸気供給手段が、前記処理容器内の水蒸気分圧を設定可能に構成されている点にある。
【0032】
即ち、上記第3特徴構成を有する合成粉体製造方法を実施する場合において、上記水蒸気供給手段により、処理容器内の水蒸気圧を、例えば、飽和水蒸気圧以下の範囲内として混合粉体表面における水蒸気の結露を抑制しながら、室温(25℃)環境下において1.2kPa以上に設定することができ、堆積面と処理面との間隙で圧縮力とせん断力との機械的作用が印加されている混合粉体に対して、水酸化物が生成されるために十分な水蒸気を供給することができる。
【0033】
また、特に上記第4特徴構成を有する合成粉体製造方法を好適に実施可能な本発明に係る粉体処理装置の特徴構成は、前記堆積面に対向配置された放電部から前記堆積面に堆積している前記粉体に放電可能な放電手段を備えた点にある。
【0034】
即ち、上記第4特徴構成を有する合成粉体製造方法を実施する場合において、堆積面と処理面との間隙で混合粉体に対して機械的作用を印加しながら、上記放電手段により、その混合粉体に対して放電を行って、混合粉体に含まれる希土類金属の粉体を一層高活性化することができ、例えば、希土類金属の粉体と他金属の粉体とを短時間で固相反応させて、合成粉体を製造することができる。
【0035】
また、特に上記第5特徴構成を有する合成粉体製造方法を好適に実施可能な本発明に係る粉体処理装置の特徴構成は、前記粉体の粉砕状態を判定する粉砕状態判定手段と、
前記粉砕状態判定手段の判定結果に基づいて、前記回転駆動手段の動力を制御する動力制御手段とを備えた点にある。
【0036】
即ち、上記第5特徴構成を有する合成粉体製造方法を実施する場合において、上記粉砕状態判定手段により、混合粉体の粉砕状態が所望の粉砕状態に達したと判定したときに、その機械的作用を低減させ、その状態を維持するために、上記動力制御手段により、上記回転駆動手段の動力を低減させるように制御することができる。よって、混合粉体の凝集等による造粒を防止して、微細な混合粉体を維持しながら、その混合粉体に含まれる希土類金属の粉体と他金属の粉体との固相反応を十分に進行させることができるので、一層微細な合成粉体を製造することができる。
尚、上記粉砕状態判定手段は、粉体の粉砕の進行状態を判定するものであり、例えば、粉体の粉砕が進行した場合に、その粉体の比表面積が増加して、堆積面に対し処理面を堆積面に沿うように相対移動させるための抵抗力(摩擦力)が増加することを利用して、前記処理容器及び前記処理部材の相対回転における回転数、その相対回転のための回転軸にかかるトルク、粉体の温度等を検出し、その検出結果の変化状態から、上記粉体の粉砕状態が所望の粉砕状態に到達したか否かを判定するように構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明に係る合成粉体製造方法は、希土類金属酸化物の粉体と、希土類金属ではない1種以上の他金属の酸化物又は炭酸塩の粉体とを混合してなる混合粉体を原料とし、前記混合粉体に対して機械的作用を印加することで固相反応を生じさせ、合成粉体を製造する方法である。
【0038】
詳しくは、本発明に係る合成粉体製造方法は、図1に示すように、La(ランタン)等から選択される一種以上の希土類金属酸化物(以下、希土類金属酸化物Aと呼ぶ。)の粉体と、Mn(マンガン)等の他金属の酸化物又はSr(ストロンチウム)等の他金属の炭酸塩(以下、他金属Bと呼ぶ。)の粉体とを混合してなる混合粉体Mを原料とし、その混合粉体Mに対して、圧縮力及びせん断力等の機械的作用を印加することで、その混合粉体Mにおいて上記希土類金属酸化物Aと他金属Bとの固相反応を生じさせて、LaMnO(ランタンマンガン酸化物)、又は、そのLaMnO中のLaの一部をSr(ストロンチウム)で置換したLa1−xSrMnO(ランタンストロンチウムマンガン酸化物:LSM)等のペロブスカイト酸化物である合成粉体Cを製造する方法である。
【0039】
尚、混合粉体Mが堆積する堆積面3aに対し、堆積面3aに対向配置され凸状に湾曲する処理面5aを、堆積面3aに沿うように相対移動させることで、堆積面3aと処理面5aとの間隙で、混合粉体Mに対して機械的作用としての圧縮力とせん断力とを印加することができる。
【0040】
そして、本発明に係る合成粉体製造方法は、上記機械的作用が印加されている混合粉体Mに対して、水蒸気Sを供給することを特徴とし、希土類金属酸化物Aと他金属Bとを良好に固相反応させて、短時間で比表面積が非常に大きい合成粉体Cを製造することができるものである。
【0041】
即ち、図2に示すように、混合粉体Mとして、希土類金属酸化物A(例えばLa(酸化ランタン))の粉体と、ある他金属B(例えば、Mn(マンガン))の酸化物である他金属酸化物B1(例えば、Mn(酸化マンガン))の粉体とを混合してなる混合粉体M1を原料とし、上記機械的作用が印加されている混合粉体M1に対して水蒸気Sを供給すると、その混合粉体M1に含まれる希土類金属酸化物Aの粉体表面の少なくとも一部がその水蒸気と反応して、上記機械的強度が低い(即ち脆性の)上記希土類金属の水酸化物である希土類金属水酸化物A’(例えばLa(OH))が生成される。そして、希土類金属酸化物Aの粉体表面に生成された希土類金属水酸化物A’が、他金属酸化物B1又は他の希土類金属酸化物Aの粉体との間で圧縮力及びせん断力の機械的作用が印加されることにより粉砕され、そして、このような希土類金属水酸化物A’の生成及び粉砕、更には脱水を繰り返し生じることで、希土類金属水酸化物A’は高活性化且つ微細化して、他金属酸化物B1と良好に固相反応し、合成粉体Cとしてのペロブスカイト酸化物である合成粉体C1(例えば、LaMnO(ランタンマンガン酸化物))が生成される。
【0042】
また、上記合成粉体C1の生成時には、HOが生成されるので、そのHOも、上記希土類金属水酸化物A’の生成に寄与させることができる。
即ち、混合粉体Mへの水蒸気Sの供給は、混合粉体Mに対して機械的作用を印加している間継続して行っても構わないが、水蒸気Sの供給を途中で停止しても、希土類金属水酸化物A’の生成を継続させることができる。
【0043】
更に、図3に示すように、混合粉体Mとして、上述した混合粉体M1に、ある他金属B(例えば、Sr(ストロンチウム))の炭酸塩である他金属炭酸塩B2(例えば、SrCO(炭酸ストロンチウム))の粉体を更に加えた混合粉体M2を原料とし、上記機械的作用が印加されている混合粉体M2に対して水蒸気Sを供給すると、その他金属炭酸塩B2も、上記他金属酸化物B1と同様に作用して、合成粉体Cとしてのペロブスカイト酸化物である合成粉体C2(例えば、La0.8Sr0.2MnO(ランタンストロンチウムマンガン酸化物)が生成される。
【0044】
また、上記希土類金属酸化物Aとなる希土類金属としては、La以外に、Ce(セリウム),Pr(プラセオジム),Nd(ネオジム),Sm(サマリウム),Eu(ユウロピウム),Gd(ガドリニウム),Yb(イッテルビウム),Lu(ルテチウム),Y(イットリウム),Sc(スカンジウム)を利用しても、類似のペロブスカイト型酸化物を製造することができる。
【0045】
また、本発明に係る合成粉体製造方法において、この機械的作用が印加されている混合粉体Mに対して水蒸気Sを供給するに、その混合粉体Mが収容されている処理容器内の水蒸気分圧を、飽和水蒸気圧以下の範囲内として、混合粉体M表面における水蒸気Sの結露による、混合粉体Mの温度低下や摩擦抵抗の上昇等を抑制しながら、上記水蒸気の水蒸気圧を室温(25℃)環境下において1.2kPa以上に設定することで、混合粉体Mに対して水酸化物A’が生成されるための十分な水蒸気Sを供給することが好ましい。
【0046】
更に、図1に示すように、本発明の合成粉体製造方法において、例えば処理面5aから堆積面3aに対して放電する形態で、混合粉体Mに対して、上述した機械的作用を印加しながら、放電を行うと、例えば生成された希土類金属水酸化物A’の脱水を促進させて、混合粉体Mに含まれる希土類金属を一層高活性化することができ、例えば、希土類金属と他金属とを短時間で固相反応させて、合成粉体を製造することができる。
【0047】
更に、本発明の合成粉体製造方法において、混合粉体Mの粉砕状態が所望の粉砕状態に達したと判定した場合、即ち、希土類金属酸化物Aの殆どが微細な希土類金属水酸化物A’に粉砕されたと判定した場合には、例えば水蒸気Sの供給を停止した状態で、混合粉体Mに印加する機械的作用を低減させることが好ましい。即ち、希土類金属水酸化物A’に粉砕された後に機械的作用を低減させる状態を維持することにより、粒成長を防止して、微細な希土類金属水酸化物A’を維持しながら、その混合粉体Mに含まれる希土類金属水酸化物A’と他金属Bとの固相反応を十分に進行させることができる。
【0048】
また、本発明に係る合成粉体製造方法では、希土類金属酸化物Aは、機械的作用の印加及び水蒸気Sの供給により、微細な希土類金属水酸化物A’に粉砕されるので、その出発原料である希土類金属酸化物Aの粉体の粒子径を、他金属Bの粉体よりも大きい比較的入手容易なものとしながら、粒子径が1μm未満(例えば100nm程度)と非常に小さい合成粉体Cを製造することができる。
【0049】
更に、本発明に係る合成粉体製造方法において、原料となる混合粉体Mに、予め希土類金属水酸化物A’を、例えば混合粉体Mに対して1vol%以上添加しておくと、その添加された希土類金属水酸化物A’と他金属Bの粉体との固相反応により生成された水分も、別に供給される水蒸気Sと共に、希土類金属酸化物の粉体の表面に供給されることになるので、希土類金属水酸化物A’の生成及び粉砕が促進される。
【0050】
また、上記のような生成された合成粉体Cに対して、固相反応を促進させることができる温度以上で、且つ、例えば1000℃未満、好ましくは800℃程度で熱処理を行うことで、合成粉体Cに含まれる希土類金属と他金属とを完全に固相反応させて、一層高品質な合成粉体Cを製造することができる。
【0051】
〔粉体処理装置〕
次に、上述した本発明に係る合成粉体製造方法を好適に実行可能な本発明に係る粉体処理装置の構成について、図4及び図5に基づいて説明する。
図4及び図5に示す粉体処理装置には、主に、基台1に設置された略円筒形状のケーシング2と、このケーシング2の内部に配置され筒軸心を中心に回転自在な有底略円筒状の処理容器3と、処理容器3の内部に配置されケーシング2に固定された処理部材としてのプレスヘッド5とが設けられている。また、プレスヘッド5は、処理容器3の円筒軸心側から、処理容器3の内面である堆積面3a側に突出し、そして、プレスヘッド5の先端部には、堆積面3aに対向して凸状に湾曲した処理面5aが形成されている。
【0052】
処理容器3は、ケーシング2に軸受けされた軸体15に固定され、その軸体15の軸心周りに回転自在に構成されている。更に、軸体15を回転駆動するモータ、プーリー、及び、ベルト等からなる回転駆動手段16が設けられている。
【0053】
回転駆動手段16は、軸体15を回転駆動することで、処理容器3を、ケーシング2に固定されたプレスヘッド5に対して相対回転させて、処理容器3の内面である堆積面3aに対し、プレスヘッド5の処理面5aを、堆積面3aに沿うように相対移動させる。
【0054】
この回転駆動手段16により、堆積面3aに対し処理面5aを堆積面3aに沿うように相対移動させることで、堆積面3aと処理面5aとの間隙7にある混合粉体Mに対して、非常に強力な圧縮力とせん断力との機械的作用を印加することができる。
【0055】
更に、この粉体処理装置には、処理容器3内に水蒸気Sを供給可能な水蒸気供給手段24として、バブリング装置等の水蒸気発生装置25と、その水蒸気発生装置25で発生した水蒸気Sをケーシング2内に供給する供給管26とが設けられている。
【0056】
更に、ケーシング2内の水蒸気分圧を検出すると共に、その検出される水蒸気分圧が所望の目標水蒸気分圧になるように、水蒸気発生装置25の水蒸気発生量を制御する水蒸気分圧制御装置27が設けられている。そして、この水蒸気分圧制御装置27により、ケーシング2内の水蒸気分圧を、飽和水蒸気圧以下の範囲内において1.2kPa以上の好適な水蒸気分圧に維持することができる。
【0057】
そして、このように構成された粉体処理装置により、希土類金属酸化物の粉体と、希土類金属ではない他金属の酸化物又は炭酸塩の粉体とを混合してなる混合粉体Mを処理容器3内に供給して、上記処理容器3に供給され堆積面3aに堆積している混合粉体Mに対して、上記回転駆動手段16による堆積面3aと処理面5aとの相対移動により、圧縮力とせん断力との機械的作用を印加しながら、水蒸気供給手段25により水蒸気Sを供給して、合成粉体Cを製造することができる。
【0058】
更に、粉体処理装置には、堆積面3aに対向配置された放電部としての処理面5aから堆積面3aに堆積している混合粉体Mに放電可能な放電手段20が設けられている。
【0059】
詳しくは、放電手段20は、ケーシング2に対して絶縁状態とされたプレスヘッド5に接続された導線22と、ケーシング2に対して接続された導線23との間に、電源部21により電圧を印加することにより、プレスヘッド5の処理面5aと、ケーシング2に対して導通状態である処理容器3の堆積面3aとの間隙7に、グロー放電等により放電プラズマを発生させるように構成されている。よって、堆積面3aと処理面5aとの間隙7で機械的作用が印加されている混合粉体Mに対して、上記放電手段20により放電を行うことができる。
【0060】
尚、この放電手段20により放電を行う場合には、上記堆積面3a及び処理面5aを、混合粉体Mと同じ材料等でコーティングすることで、上記堆積面3a及び処理面5aのエッチングによる汚染を抑制することができる。
【0061】
また、放電手段20は、処理面3aに対して放電を行う部分をプレスヘッド5の処理面5aとしたが、上記プレスヘッド5の処理面5aとは別の放電部から処理面3aに対して放電を行っても構わない。
【0062】
更に、処理装置には、処理容器M内で処理されている混合粉体Mの粉砕状態を判定する粉砕状態判定手段29と、前記粉砕状態判定手段29の判定結果に基づいて、前記回転駆動手段16の動力を制御する動力制御手段30とが設けられている。
【0063】
詳しくは、上記粉砕状態判定手段29は、処理容器3内で機械的作用が印加されて粉砕している混合粉体Mの粉砕状態が進行するほど、混合粉体Mの比表面積が大きくなって処理面5aと堆積面3aとの相対移動における抵抗が大きくなることを利用して、軸体15の回転数や軸体15にかかるトルクが所定値以上に大きくなった場合に、混合粉体Mの粉砕状態が所望の粉砕状態に達したと判定するように構成されている。
【0064】
そして、上記動力制御手段30は、粉砕状態判定手段29が混合粉体Mの粉砕状態が所望の粉砕状態に達したと判定したときに、回転駆動手段16の動力を低減させることで、処理面5aと堆積面3aとの相対移動速度を低下させるように構成されている。
【0065】
尚、上記粉砕状態判定手段29は、混合粉体Mの粉砕状態が進行するほど、混合粉体Mの比表面積が大きくなって、摩擦熱の発生量が大きくなることを利用して、混合粉体Mの温度が所定値以上に大きくなった場合に、混合粉体Mの粉砕状態が所望の粉砕状態に達したと判定するように構成しても構わない。
【実施例】
【0066】
次に、実際に、本発明に係る合成粉体製造方法(実施例1〜3)、及び、従来の合成粉体製造方法(比較例1)によって、LaMnO(ランタンマンガン酸化物)又はLa0.8Sr0.2MnO(ランタンストロンチウムマンガン酸化物)の合成粉体を製造する実験を行い、その夫々の実験により製造された合成粉体の組成をX線回折により測定した結果について説明する。
【0067】
尚、本実験では、上述した粉体処理装置と同様の装置を用いて、希土類金属酸化物としてのLa(酸化ランタン)の粉体と、他金属BとしてのMn(酸化マンガン)更にはSrCO(炭酸ストロンチウム)の粉体とを混合した混合粉体を原料とし、その混合粉体が堆積する堆積面に対し、堆積面に対向配置され凸状に湾曲する処理面を、堆積面に沿うように相対移動させることで、堆積面と処理面との間隙で、混合粉体に対して機械的作用としての圧縮力とせん断力とを印加する処理を行うものとする。
【0068】
尚、この実験における処理面と堆積面との相対移動の速度は、5〜30m/sec程度であり、堆積面と処理面との間隙の幅は、2mm程度であった。
【0069】
【表1】

【0070】
〔実施例1〕
実施例1では、上記の表1に記載の如く、Laの粉体とMnの粉体とをLaとMnとのモル比が1:1となるように混合した混合粉体を原料とし、室温25℃且つ水蒸気分圧2.4kPaの環境下として混合粉体に水蒸気を供給しながら、その混合粉体に対して圧縮力とせん断力との機械的作用を印加することで、合成粉体としてのLaMnOを製造した。
この実施例1において、図6に示すように、本処理を30分間行った際には、La(OH)の出現が確認され、更に、本処理を60分間行った際には、若干のLaとLa(OH)が確認されたものの、それ以外の混合粉体はLaMnOに合成されていることが確認できた。
【0071】
更に、上記実施例1において、図7に示すように、本処理を17分間行って得た合成粉体に対して、比較的低温の800℃の温度環境下で熱処理を行うことにより、略全ての混合粉体がLaMnOに合成されることを確認できた。
【0072】
〔実施例2〕
実施例2では、上記の表1に記載の如く、Laの粉体とLa(OH)の粉体とMnの粉体とをLaとMnとのモル比が1:1となるように混合した混合粉体を原料とし、室温25℃且つ水蒸気分圧2.4kPaの環境下として混合粉体に水蒸気を供給しながら、その混合粉体に対して圧縮力とせん断力との機械的作用を印加することで、合成粉体としてのLaMnOを製造した。
【0073】
この実施例2において、図8に示すように、上記混合粉体に対するLa(OH)の添加量を1vol%とした場合には、本処理を30分間行った際には、若干のLaとLa(OH)が確認されたものの、それ以外の混合粉体はLaMnOに合成され、更に、本処理を60分間行った際には、殆どの混合粉体がLaMnOに合成されていることが確認できた。
【0074】
更に、この実施例2において、上記混合粉体に対するLa(OH)の添加量を増加させると、殆どの混合粉体がLaMnOに合成されるまでにかかる処理時間が増加することが確認でき、例えば、La(OH)の添加量を80vol%とすると、殆どの混合粉体がLaMnOに合成されるまでにかかる処理時間は120分程度となることが確認できた。
【0075】
更に、この実施例2において、回転駆動手段16の動力を比較的高くして本処理を20分間行った後に、処理面と堆積面との相対移動の速度の低下により混合粉体Mの粉砕状態が所望の粉砕状態に達したと判定して、回転駆動手段16の動力を25%程度低下させて本処理を40分間行うと、図9に示すように、混合粉体の凝集等による粒成長を防止しながら、その混合粉体の固相反応を十分に進行させて、比表面積が8m/g程度と非常に大きいLaMnOを製造することができた。
【0076】
〔実施例3〕
実施例3では、上記の表1に記載の如く、Laの粉体とLa(OH)の粉体と、SrCO(炭酸ストロンチウム)の粉体と、Mnの粉体とを、LaとSrとMnとのモル比が0.8:0.2:1となるように混合した混合粉体を原料とし、室温25℃且つ水蒸気分圧2.4kPaの環境下として混合粉体に水蒸気を供給しながら、その混合粉体に対して圧縮力とせん断力との機械的作用を印加することで、合成粉体としてのLa0.8Sr0.2MnO(LSM)を製造した。
【0077】
この実施例3において、図10に示すように、本処理を80分間行った際には、若干の原料元素の存在が確認されたものの、本処理を120分間行った際には、殆どの混合粉体がLSMに合成されていることが確認できた。
【0078】
〔比較例〕
比較例では、上記の表1に記載の如く、Laの粉体とMnの粉体とをLaとMnとのモル比が1:1となるように混合した混合粉体を原料とし、室温25℃且つ真空度100Pa未満の真空環境下として、混合粉体に水蒸気を供給せずに、その混合粉体に対して圧縮力とせん断力との機械的作用を印加することで、合成粉体としてのLaMnOの製造を試みた。
しかし、この比較例では、図11に示すように、本処理を60分間行っても、LaMnOは生成されず、原料である混合粉体に起因するピークしか確認できなかった。よって、上記実施例1〜3においては、LaMnOを生成するために水蒸気を供給することが重要であることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】合成粉体製造方法の概要を説明する図
【図2】合成粉体製造方法による合成状態を説明する図
【図3】合成粉体製造方法による合成状態を説明する図
【図4】粉体処理装置を示す概略立面図
【図5】図1に示す粉体処理装置の概略平面図
【図6】実施例1の合成粉体製造方法により得た合成粉体のX線回折装置による解析結果を示す図
【図7】実施例1の合成粉体製造方法により得た合成粉体のX線回折装置による解析結果を示す図
【図8】実施例2の合成粉体製造方法により得た合成粉体のX線回折装置による解析結果を示す図
【図9】実施例2の合成粉体製造方法における処理時間と比表面積との関係を示す図
【図10】実施例3の合成粉体製造方法により得た合成粉体のX線回折装置による解析結果を示す図
【図11】比較例の合成粉体製造方法により得た合成粉体のX線回折装置による解析結果を示す図
【符号の説明】
【0080】
3:処理容器
3a:堆積面
5:プレスヘッド
5a:処理面
16:回転駆動手段
20:放電手段
24:水蒸気供給手段
29:粉砕状態判定手段
30:動力制御手段
A:希土類金属酸化物
B:他金属
B1:他金属酸化物
B2:他金属炭酸塩
C,C1,C2:合成粉体
M,M2,M3:混合粉体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一種以上の希土類金属酸化物の粉体と、希土類金属ではない1種以上の他金属の酸化物又は炭酸塩の粉体とを混合してなる混合粉体を原料とし、前記混合粉体に対して機械的作用を印加することで固相反応を生じさせ、合成粉体を製造する合成粉体製造方法であって、
前記機械的作用が印加されている混合粉体に対して、水蒸気を供給する合成粉体製造方法。
【請求項2】
前記混合粉体が堆積する堆積面に対し、前記堆積面に対向配置され凸状に湾曲する処理面を、前記堆積面に沿うように相対移動させることで、前記堆積面と前記処理面との間隙で、前記混合粉体に対して前記機械的作用を印加する請求項1に記載の合成粉体製造方法。
【請求項3】
機械的作用が印加されている前記混合粉体を収容する処理容器内の水蒸気分圧を1.2kPa以上に設定する請求項1又は2に記載の合成粉体製造方法。
【請求項4】
前記機械的作用が印加されている混合粉体に対して放電する請求項1から3の何れか一項に記載の合成粉体製造方法。
【請求項5】
前記機械的作用が印加されている前記混合粉体の粉砕状態が所望の粉体状態に達したときに、前記混合粉体に印加する前記機械的作用を低減させる請求項1から4の何れか一項に記載の合成粉体製造方法。
【請求項6】
前記希土類金属酸化物が、La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Yb,Lu,Y,Scから選択される一種以上の酸化物である請求項1から5の何れか一項に記載の合成粉体製造方法。
【請求項7】
前記希土類金属酸化物の粉体の粒子径が、前記他金属の酸化物又は炭酸塩の粉体の粒子径よりも大きい請求項1から6の何れか一項に記載の合成粉体製造方法。
【請求項8】
前記混合粉体に、希土類金属の水酸化物粉体を添加する請求項1から7の何れか一項に記載の合成粉体製造方法。
【請求項9】
前記合成粉体に対して熱処理を行う請求項1から8の何れか一項に記載の合成粉体製造方法。
【請求項10】
原料となる粉体が内部に供給される有底円筒状の処理容器と、前記処理容器の内面である堆積面に対向配置され凸状に湾曲する処理面を有する処理部材と、前記処理容器及び前記処理部材を相対回転させる回転駆動手段とを備え、前記堆積面に対し前記処理面を前記堆積面に沿うように相対移動させることで、前記堆積面と前記処理面との間隙で、前記混合粉体に対して機械的作用を印加する粉体処理装置であって、
前記処理容器内に水蒸気を供給可能な水蒸気供給手段を備えた粉体処理装置。
【請求項11】
前記水蒸気供給手段が、前記処理容器内の水蒸気分圧を設定可能に構成されている請求項10に記載の粉体処理装置。
【請求項12】
前記堆積面に対向配置された放電部から前記堆積面に堆積している前記粉体に放電可能な放電手段を備えた請求項10又は11に記載の粉体処理装置。
【請求項13】
前記粉体の粉砕状態を判定する粉砕状態判定手段と、
前記粉砕状態判定手段の判定結果に基づいて、前記回転駆動手段の動力を制御する動力制御手段とを備えた請求項10から12の何れか一項に記載の粉体処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−21966(P2006−21966A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−202384(P2004−202384)
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(502360363)株式会社ホソカワ粉体技術研究所 (59)
【Fターム(参考)】