説明

合板用接着剤組成物、合板の製造方法及び合板

【課題】接着剤組成物の調製後の粘度増加が抑制され、含水率が通常あるいは低い単板を使用した場合はもとより、たとえ高含水率の単板を使用した場合であっても、合板製造時のパンク現象が抑制され、かつ、ドライアウトの問題が抑制された合板用接着剤組成物、該合板用接着剤組成物を用いる合板の製造方法、及び、該製造方法により製造された合板を提供すること。
【解決手段】樹脂分が40〜50質量%のレゾール型フェノール樹脂水溶液100質量部に対し、アカシア樹皮粉末1〜15質量部と、無機充填材25〜70質量部と、水10〜50質量部とが添加されることにより調製された合板用接着剤組成物を単板に塗布し、複数の単板を重ね合わせ、加圧、加熱することにより合板を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合板用接着剤組成物、合板の製造方法及び合板の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、合板の製造に用いられる合板用接着剤組成物として、特許文献1に記載されるように、接着剤組成物の調製後の粘度増加を抑制するため、レゾール型フェノール樹脂の水溶液に、炭酸カルシウム等の無機充填材や木粉等の有機充填材を含有することが知られている。
【0003】
また、特許文献2に記載されるように、合板製造時のパンク現象を抑制するため、接着剤配合時に水の添加を極力減らす等の対策が講じられている。
【0004】
しかし、接着剤組成物において、水の添加を減らすと、接着剤組成物が単板に塗布されたときにドライアウトの状態になりやすく、接着力が低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−89677号公報(段落0024)
【特許文献2】特開2004−123781号公報(段落0001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、接着剤組成物の調製後の粘度増加が抑制され、含水率が通常あるいは低い単板を使用した場合はもとより、たとえ高含水率の単板を使用した場合であっても、合板製造時のパンク現象が抑制され、かつ、ドライアウトの問題が抑制された合板用接着剤組成物、該合板用接着剤組成物を用いる合板の製造方法、及び、該製造方法により製造された合板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面は、樹脂分が40〜50質量%のレゾール型フェノール樹脂水溶液100質量部に対し、アカシア樹皮粉末1〜15質量部と、無機充填材25〜70質量部と、水10〜50質量部とが添加されることにより調製されたことを特徴とする合板用接着剤組成物である。
【0008】
本発明の他の一局面は、樹脂分が40〜50質量%のレゾール型フェノール樹脂水溶液100質量部に対し、アカシア樹皮粉末1〜10質量部と、無機充填材25〜50質量部と、水25〜50質量部とが添加されることにより調製されたことを特徴とする合板用接着剤組成物である。
【0009】
本発明のさらに他の一局面は、樹脂分が40〜50質量%のレゾール型フェノール樹脂水溶液100質量部に対し、アカシア樹皮粉末1〜15質量部と、無機充填材25〜70質量部と、水10〜25質量部とが添加されることにより調製されたことを特徴とする合板用接着剤組成物である。
【0010】
前記合板用接着剤組成物において、アカシア樹皮粉末は、平均粒径が10〜150μmであることが好ましい。
【0011】
前記合板用接着剤組成物において、ポリビニルアルコール0.1〜3質量部がさらに添加されていることが好ましい。
【0012】
前記合板用接着剤組成物において、フュームドシリカ0.1〜2質量部がさらに添加されていることが好ましい。
【0013】
本発明のさらに他の一局面は、前記合板用接着剤組成物を単板に塗布し、複数の単板を重ね合わせ、加圧、加熱することを特徴とする合板の製造方法である。
【0014】
本発明のさらに他の一局面は、前記製造方法により製造されたことを特徴とする合板である。
【0015】
本発明のさらに他の一局面は、接着剤層が、硬化したフェノール樹脂40〜50質量部に対し、アカシア樹皮粉末1〜15質量部と、無機充填材25〜70質量部とを含むことを特徴とする合板である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、接着剤組成物の調製後の粘度増加が抑制され、含水率が通常あるいは低い単板を使用した場合はもとより、たとえ高含水率の単板を使用した場合であっても、合板製造時のパンク現象が抑制され、かつ、ドライアウトの問題が抑制された合板用接着剤組成物、該合板用接着剤組成物を用いる合板の製造方法、及び、該製造方法により製造された合板が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明者等は、アカシア植林事業から廃棄されるアカシア樹皮の有効利用を鋭意検討してきた。そして、レゾール型フェノール樹脂水溶液に、アカシア樹皮の粉末と、炭酸カルシウム等の無機充填材と、水とを加えることにより調製した糊液が、調製後の粘度増加が抑制されることを見出した。また、この糊液が、水の含有量が従来の合板用接着剤組成物に比べて相対的に多いので、ドライアウトの問題が抑制されつつ、合板製造時のパンク現象も抑制されることを見出した。さらに、本発明者等は、糊液の工業的使用の現場では想定以上の高含水率の単板(例えば含水率が10質量%から17質量%)が混入使用されることがあることを認め、たとえそのような場合であっても、十分な単板間の接着性を維持しつつ、ドライアウト問題を抑制し、合板製造時のパンク現象を抑制するのに必要な糊液組成を見出した。また、この糊液を用いて製造された合板は反りやうねりが抑制されることを見出した。そして、このような知見に基き、本発明を完成した。
【0018】
すなわち、本実施形態に係る合板用接着剤組成物は、樹脂分が40〜50質量%のレゾール型フェノール樹脂水溶液100質量部に対し、アカシア樹皮粉末1〜15質量部と、無機充填材25〜70質量部と、水10〜50質量部とが添加されることにより調製された、合板用接着剤組成物である。
【0019】
この合板用接着剤組成物は、従来の合板用接着剤組成物に比べて、調製後の粘度増加が抑制される。また、含水率が通常あるいは低い単板を使用した場合はもとより、たとえ高含水率の単板を使用した場合であっても、合板製造時のパンク現象が抑制される。また、ドライアウトの問題が抑制される。さらに、製造された合板の反りやうねりが抑制される。さらに、環境性、経済性に優れる。
【0020】
また、本実施形態に係る合板用接着剤組成物は、樹脂分が40〜50質量%のレゾール型フェノール樹脂水溶液100質量部に対し、アカシア樹皮粉末1〜10質量部と、無機充填材25〜50質量部と、水25〜50質量部とが添加されることにより調製された、合板用接着剤組成物である。
【0021】
この合板用接着剤組成物は、特に、含水率が通常あるいは相対的に低い単板(含水率が10質量%未満)を使用する場合に好適である。
【0022】
また、本実施形態に係る合板用接着剤組成物は、樹脂分が40〜50質量%のレゾール型フェノール樹脂水溶液100質量部に対し、アカシア樹皮粉末1〜15質量部と、無機充填材25〜70質量部と、水10〜25質量部とが添加されることにより調製された、合板用接着剤組成物である。
【0023】
この合板用接着剤組成物は、特に、含水率が通常あるいは相対的に低い単板(含水率が10質量%未満)を使用する場合にも、また、含水率が相対的に高い単板(含水率が10質量%以上)を使用する場合にも、好適である。そのため、この合板用接着剤組成物は、含水率が通常の単板、相対的に低い単板及び相対的に高い単板が混在しているような場合に、特に有用である。ただし、単板の含水率が例えば20質量%などと高すぎると、パンク現象の発生だけでなく、フェノール樹脂の硬化や合板の接着性等にも悪影響が顕著となる。
【0024】
本実施形態においては、アカシア樹皮粉末は、平均粒径が10〜150μmであることが好ましい。アカシア樹皮粉末の平均粒径が10μm未満であると、アカシア樹皮粉末の接着剤組成物中への分散性が低下し、150μmを超えると、接着剤組成物の塗布装置が目詰まりし易くなるからである。
【0025】
本実施形態においては、ポリビニルアルコール0.1〜3質量部がさらに添加されていることが好ましい。ポリビニルアルコールは、単板の仮接着性を向上させたり、糊液のドライアウトを防止する効果があるからである。ポリビニルアルコールの添加量が0.1質量部未満であると、添加の有効性が低下し、3質量部を超えると、経済性が低下する。
【0026】
本実施形態においては、フュームドシリカ0.1〜2質量部がさらに添加されていることが好ましい。フュームドシリカは、糊液の塗布作業性を向上させたり、糊液のドライアウトを抑制する効果があるからである。フュームドシリカの添加量が0.1質量部未満であると、添加の有効性が低下し、2質量部を超えると、経済性が低下する。
【0027】
本実施形態に係る合板の製造方法は、前記合板用接着剤組成物を単板に塗布し、複数の単板を重ね合わせ、加圧、加熱する、合板の製造方法である。
【0028】
この合板の製造方法によれば、従来の合板用接着剤組成物に比べて調製後の粘度増加が抑制された合板用接着剤組成物を用いて合板が製造される。また、含水率が通常あるいは低い単板を使用した場合はもとより、たとえ高含水率の単板を使用した場合であっても、パンク現象が抑制される。また、ドライアウトの問題が抑制される。さらに、製造された合板の反りやうねりが抑制される。さらに、この合板の製造方法は、環境性、経済性に優れる。
【0029】
本実施形態に係る合板は、前記製造方法により製造された、合板である。
【0030】
この合板は、含水率が通常あるいは低い単板を使用した場合はもとより、たとえ高含水率の単板を使用した場合であっても、パンク現象又は接着剥離が抑制され、良好な接着力が確保され、反りやうねりが抑制された合板である。
【0031】
また、本実施形態に係る合板は、接着剤層が、硬化したフェノール樹脂40〜50質量部に対し、アカシア樹皮粉末1〜15質量部と、無機充填材25〜70質量部とを含む、合板である。
【0032】
この合板の接着剤層は、硬化したフェノール樹脂40〜50質量部に対し、アカシア樹皮粉末1〜15質量部と、無機充填材25〜70質量部とを含んでいる。これにより、樹脂分が40〜50質量%のレゾール型フェノール樹脂水溶液100質量部に対し、アカシア樹皮粉末1〜15質量部と、無機充填材25〜70質量部と、水10〜50質量部とが添加されることにより調製された合板用接着剤組成物が合板の製造に用いられたことが分かる。
【0033】
この合板の接着剤層の組成は、前記合板用接着剤組成物において、水を除く基本的な配合物であるレゾール型フェノール樹脂と、アカシア樹脂粉末と、無機充填材との配合比が規定されて硬化したものの組成である。一般に、合板製造においては、レゾール型フェノール樹脂を含む接着剤組成物に、水以外に例えば有機溶剤を添加すると、合板製造時に有機溶媒の大部分が気化し、蒸発するので、作業環境上も安全上も大きな問題を生じる。したがって、実質的に水以外の溶剤は使用されないのが通例であるから、合板の製造に用いられた水を除く接着剤組成物の組成と、製造された合板における硬化した接着剤層の組成とは、直接相関関係にあるのである。そして、もし、水10〜50質量部が添加されない場合は、糊液の粘度が高くなりすぎ、合板製造に困難が生じる。つまり、硬化後の接着剤層が、アカシア樹皮粉末を1〜15質量部、無機充填材を25〜70質量部というように、多量の固形分を含んだ状態で硬化するためには、接着剤組成物の段階で水を10〜50質量部程度含んでいないと、糊液の粘度が高くなりすぎ、接着剤組成物を単板に塗布することが困難になるのである。したがって、言い換えれば、硬化後の接着剤層が、フェノール樹脂40〜50質量部に対し、アカシア樹皮粉末を1〜15質量部、無機充填材を25〜70質量部というように、多量の固形分を含んだ状態で硬化しているということは、接着剤組成物の段階で水を10〜50質量部程度含んでいたということの証になるのである。
【0034】
パンク現象とは、合板製造時に単板の含水率が高い場合や接着剤組成物中の水の含有量が多い場合に、加圧、加熱時に発生する水蒸気により、解圧時に接着剤層に気泡が発生して接着剤層が膨らむ現象をいい、単板間の剥離が発生する現象である。
【0035】
ドライアウトとは、合板製造時に単板に塗布された接着剤組成物から水やフェノール樹脂水溶液が多く抜けた状態をいい、この状態で糊液の塗布された単板と塗布されていない単板とを重ね合わせても、接着剤の相手方単板への転写が十分行なわれず、接着力低下の原因となる現象である。
【0036】
本実施形態では、合板用接着剤組成物は、従来の合板用接着剤組成物に比べて、調製後の粘度増加が抑制される。これは、水添加の効果の他に、アカシア樹皮に含まれる成分が何等かの作用を及ぼしているものと考えられる。
【0037】
本実施形態では、合板用接着剤組成物は、含水率が通常あるいは低い単板を使用した場合はもとより、たとえ高含水率の単板を使用した場合であっても、合板製造時のパンク現象が抑制される。これは、アカシア樹皮の繊維質が親水性に優れるため、接着剤組成物に含有されている水がアカシア樹皮の繊維質に吸着水として固定されることが影響していると考えられる。そのため、解圧されても気泡が発生し難いと考えられる。
【0038】
本実施形態では、合板用接着剤組成物は、ドライアウトの問題が抑制される。これは、接着剤組成物の水の含有量が従来の合板用接着剤組成物に比べて相対的に多いことも影響していると考えられる。
【0039】
本実施形態では、前記合板用接着剤組成物を用いて製造された合板は反りやうねりが抑制される。これは、アカシア樹皮に含まれる可溶性成分の作用により、接着剤組成物に含有されている水が合板に浸透し難くなるからではないかと考えられる。
【0040】
さらに、本実施形態では、合板用接着剤組成物は、従来の合板用接着剤組成物に比べて相対的に多い多量の水で希釈され、無機充填材が多量に配合されているため、接着剤組成物の単位量当たりのレゾール型フェノール樹脂の含有量が相対的に少なくなり、環境負荷が小さい、環境性に優れた接着剤組成物となる。また、経済性にも優れた接着剤組成物となる。
【0041】
<レゾール型フェノール樹脂水溶液>
本実施形態で使用可能なレゾール型フェノール樹脂水溶液は特に限定されない。一般に、接着剤用として工業的に製造、販売されているレゾール型フェノール樹脂水溶液を特に限定することなく使用することができる。そのようなレゾール型フェノール樹脂水溶液は、一般に、後述する実施例の合成例に示すように、主として、フェノール類とアルデヒド類とを水系で水酸化ナトリウム等による強アルカリ性条件下で加熱反応させて製造されるものである。これらのフェノール樹脂水溶液は、一般的に、水系溶媒に樹脂分(固形分、不揮発分)が40〜50質量%含まれた、粘性で、強アルカリ性の液体である。
【0042】
レゾール型フェノール樹脂水溶液の製造方法は、前述の特許文献の他、例えば特開2001−152120号公報等にも記載されている。レゾール型フェノール樹脂は自己反応性の官能基を有するため、加熱することによりそのまま硬化させることができる。レゾール型フェノール樹脂はそれ自体で硬化する。レゾール型フェノール樹脂は加熱によって硬化し、不溶・不融性になる。よって、合板製造用には、単に加熱するだけで硬化し、接着力及び耐水性に優れるレゾール型フェノール樹脂が好ましく用いられる。
【0043】
本実施形態で使用可能なフェノール類は特に限定されない。例えば、フェノール、クレゾール等のアルキルフェノール類;レゾルシノール、カテコール等の芳香族ジオール類;ビスフェノールA等のビスフェノール類;等が挙げられる。
【0044】
本実施形態で使用可能なアルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等が挙げられる。
【0045】
本実施形態で使用可能なアルカリ性反応触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等が挙げられる。
【0046】
フェノール類とアルデヒド類との配合比率は、得られるレゾール型フェノール樹脂の硬化速度が速くなるという観点から、(アルデヒド類/フェノール類)のモル比で1以上が好ましい。また、製造した合板からのアルデヒド類の放出が少なく、生産環境が良好となるという観点から、(アルデヒド類/フェノール類)のモル比で3.5以下が好ましい。本実施形態では、特に、(アルデヒド類/フェノール類)のモル比は、1.8〜2.8がより好ましい。
【0047】
本実施形態で使用可能なレゾール型フェノール樹脂は、耐水性の高い接着剤組成物を提供する。本実施形態では、レゾール型フェノール樹脂の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0048】
<アカシア樹皮粉末>
本実施形態で使用可能なアカシア樹皮粉末は特に限定されない。例えば、アカシアマンギューム樹皮、アカシアハイブリッド樹皮、モリシマアカシア樹皮等の粉末が挙げられる。これらのうちでは、アカシアマンギューム樹皮の粉末が好ましい。
【0049】
アカシア樹皮には、メタノール抽出分(メタノールで抽出されるポリフェノールであるタンニンを含む抽出分)の含有量が相対的に高い(例えば30%程度)外樹皮と、相対的に低い内樹皮とがあるが、本実施形態では、外樹皮と内樹皮との分離は必要ではない。使用するアカシア樹皮のタンニン含有量は、本発明者等の知見によれば、本発明の効果に大きな影響は与えない。すなわち、本実施形態では、外樹皮のみの粉末、内樹皮のみの粉末、外樹皮の粉末と内樹皮の粉末との混合物のいずれも好ましく使用可能である。工業的には、外樹皮と内樹皮とを分離することなく粉砕した平均粒径が150μm以下のアカシアマンギューム樹皮粉末であって、メタノール抽出分が20%程度のものが、経済的観点から好ましいものの1つである。
【0050】
アカシア樹皮粉末の製造方法の一工程である樹皮の粉砕方法は特に限定されない。例えば、ボールミル型粉砕機を用いる粉砕方法等が挙げられる。
【0051】
本実施形態では、アカシア樹皮粉末の平均粒径は、接着剤組成物の単板への塗布装置(例えばスプレッダー等)での目詰まりが防がれるという観点から、150μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、50μm以下がさらに好ましく、30μm以下がさらに好ましい。また、アカシア樹皮粉末の接着剤組成物中への分散が容易となるという観点から、10μm以上が好ましい。
【0052】
本実施形態では、アカシア樹皮粉末の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0053】
本実施形態では、アカシア樹皮粉末は、パンク現象の抑制にも寄与する。
【0054】
<無機充填材>
本実施形態で使用可能な無機充填材としては、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、珪藻土、カオリン、石膏、クレー、水酸化アルミニウム等が挙げられる。これらのうちでは、接着剤組成物の硬化物(すなわち合板となった後の接着剤層)の強度や硬度、及び経済性の観点から、炭酸カルシウムが好ましい。
【0055】
本実施形態では、無機充填材の平均粒径は、接着剤組成物の単板への塗布装置(例えばスプレッダー等)での目詰まりが防がれるという観点から、150μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、50μm以下がさらに好ましく、30μm以下がさらに好ましく、10μm以下がさらに好ましい。10μm以下の微粉末状の無機充填材は商業的に容易に入手できる。また、無機充填材の接着剤組成物中への分散が容易となるという観点から、1μm以上が好ましい。
【0056】
本実施形態では、無機充填材の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。その場合、炭酸カルシウムを必須成分としなくてもよいが、状況によっては、炭酸カルシウムを必須成分とすると良い結果が得られる場合が多い。
【0057】
<水>
本実施形態において、レゾール型フェノール樹脂水溶液100質量部に対して10〜50質量部と従来の合板用接着剤組成物に比べて相対的に多量に使用する水としては、イオン交換水が好ましい。接着剤組成物を含水率が通常あるいは相対的に低い単板(例えば10質量%未満、例えば8質量%等)に適用する場合は、パンク発生率抑制のため、水添加量はレゾール型フェノール樹脂水溶液100質量部に対して25〜50質量部が好ましく、含水率が相対的に高い単板(例えば10質量%以上、例えば10〜17質量%等)に適用する場合は、パンク発生率抑制のため、水添加量はレゾール型フェノール樹脂水溶液100質量部に対して10〜25質量部が好ましいことが見出された。ただし、水添加量が10〜25質量部の接着剤組成物を含水率が通常あるいは相対的に低い単板に適用しても構わない。また、水添加量が10〜50質量部の範囲にある接着剤組成物であれば、状況に応じて、単板の含水率に限定されず、含水率が通常あるいは相対的に低い単板に適用することもできるし、含水率が相対的に高い単板に適用することもできる。
【0058】
<作用機構>
本発明者等は、樹脂分が40〜50質量%のレゾール型フェノール樹脂水溶液に水を加え、この希釈溶液にアカシア樹皮粉末を加えると、希釈溶液の粘度が塗布するのに適した粘度までやや上昇し、硬化速度がやや増加するという知見を得た。すなわち、水で希釈された糊液が得られた。しかし、このフェノール樹脂含有量の相対的に低い糊液は、表面の粗度(凹凸)が相対的に大きい単板に塗布し接合したときは、十分な接着力を与えることができなかった。
【0059】
本発明者等は、このフェノール樹脂含有量の相対的に低い糊液に、無機充填材を加えると、一般的な単板に対する糊液塗布量(35〜40g/ft、すなわち37〜43mg/cm)において、良好な接着力が得られることを見出した。
【0060】
<配合比率>
本実施形態に係る合板用接着剤組成物において、最適の配合比率は適用する単板の含水率に応じて変わることが認められるが、好ましい配合比率は、樹脂分が40〜50質量%のレゾール型フェノール樹脂水溶液100質量部に対し、アカシア樹皮粉末1〜15質量部、無機充填材25〜70質量部、水10〜50質量部である。単板の含水率が通常あるいは相対的に低い場合(例えば10質量%未満)は、水の添加量は多く、アカシア樹皮粉末の添加量は少なく、無機充填材の添加量は少ないことが、パンク発生を抑制しつつ、高い接着力が得られる等、好ましい性能が得られることが見出され、一方、単板の含水率が相対的に高い場合(例えば10質量%以上)は、水の添加率は少なく、アカシア樹皮粉末の添加量は多く、無機充填材の添加量は多いことが、パンク発生を抑制しつつ、高い接着力が得られる等、好ましい性能が得られることが見出された。このような配合比率で調製した糊液は、経済性、糊液粘度、糊液粘度の経時安定性、合板用接着剤組成物としての高い耐水性及び高い接着性等の種々の性能がバランスよく発揮される。
【0061】
レゾール型フェノール樹脂水溶液に添加して良好な性能が発揮される3種類の成分(アカシア樹皮粉末、水、無機充填材)の配合量は相互に関連しているので、添加する各成分の量と発揮される性能とを個別に明らかにすることは困難であるが、以下のことが明らかである。
【0062】
(アカシア樹皮粉末の配合量)
樹脂分が40〜50質量%のレゾール型フェノール樹脂水溶液100質量部に対し、アカシア樹皮粉末の配合量を1質量部以上とすることにより、糊液の粘度が塗布するのに適した粘度まで上昇することがより一層確実となる。また、アカシア樹皮粉末の配合量を一般的には10質量部以下とすることにより、糊液の経済性が確保されるが、高含水率の単板が混入使用される場合には、パンクを抑制して接着力の向上を図るため、アカシア樹皮粉末の配合量を15質量部以下まで増加することも選択可能である。アカシア樹皮粉末の配合量を15質量部超えにすることは経済性から好ましくない。一般的には、レゾール型フェノール樹脂水溶液100質量部に対するアカシア樹皮粉末の好ましい配合量は2〜6質量部である。
【0063】
(水の配合量)
レゾール型フェノール樹脂水溶液にアカシア樹皮粉末を配合することにより多量の水を配合できるようになったことは、本発明の特徴の1つである。樹脂分が40〜50質量%のレゾール型フェノール樹脂水溶液100質量部に対し、一般的な単板の使用時には、水の配合量を25質量部以上とすることにより、ドライアウト抑制効果、環境負荷低減効果、経済性向上効果等が発揮される。一方、高含水率の単板が混入使用される場合には、水の配合量を10〜25質量部とすることにより、これらの効果を維持することができる。水の配合量が10質量部未満となると、本発明の目的の1つである経済性が十分に発揮できない。また、水の配合量を50質量部以下とすることにより、無機充填材の大量配合を回避することができる。つまり、レゾール型フェノール樹脂水溶液100質量部に対する水の配合量が50質量部を超えると、その糊液は、一般的な糊液塗布量では、単板上に固形分が確保され難くなるのである。そして、その場合は、無機充填材を大量に配合することにより、単板上に固形分が確保されるように対処するのであるが、無機充填材の大量配合は糊液の塗工性を損ない、接着力低下を招き易くなる。また、糊液塗布後、短時間で、接合、加圧、加熱を行なっても、接着力不足が生じ易くなる。すなわち、レゾール型フェノール樹脂水溶液100質量部に対する水の配合量を50質量部以下とすることにより、無機充填材の大量配合が回避でき、糊液塗工性を維持し、十分な接着力を得ることができる。
【0064】
(無機充填材の配合量)
無機充填材の適切な配合量は、単板の含水量による他、アカシア樹皮粉末の配合量や水の配合量に相関する。そして、レゾール型フェノール樹脂水溶液100質量部に対し、無機充填材の配合量を25質量部以上とすることにより、フェノール樹脂含有量が相対的に低いにも拘らず、一般的な単板に対する糊液塗布量で良好な接着力が得られるという前述の効果がより一層発揮される。また、高含水率単板であっても、無機充填材の配合量を70質量部以下の高配合量とすることにより、前述したように、ドライアウトに起因する接着力低下、樹脂の硬化不良に起因する接着力不足の問題が回避される。糊液の塗工性がよく、接着力を高く維持するためには無機充填材の配合量を60質量部以下とすることが一層好ましい。レゾール型フェノール樹脂水溶液100質量部に対する無機充填材のより好ましい配合量は、通常の単板の場合は、25〜50質量部、より好ましくは30〜45質量部であるが、高含水率単板が混入使用されるような場合は、水、アカシア樹皮粉末の配合量によっては、45〜60質量部、さらには45〜55質量部、さらには35〜55質量部が好ましい場合がある。
【0065】
(好ましい配合の具体例)
以上のような理由により、本実施形態に係る合板用接着剤組成物の好ましい配合の具体例は、例えば含水率8質量%程度の通常含水率の単板に対しては、樹脂分が40〜50質量%のレゾール型フェノール樹脂水溶液100質量部に対し、平均粒径が10〜30μmでメタノール抽出分が20%程度のアカシアマンギューム樹皮粉末2〜6質量部と、平均粒径が1〜10μmの炭酸カルシウム30〜45質量部と、水25〜50質量部とが添加されることにより調製された合板用接着剤組成物である。一方、含水率10質量%以上の高含水率単板を含む単板を使用する場合には、樹脂分が40〜50質量%のレゾール型フェノール樹脂水溶液100質量部に対し、平均粒径が10〜30μmでメタノール抽出分が20%程度のアカシアマンギューム樹皮粉末3〜10質量部と、平均粒径が1〜10μmの炭酸カルシウム30〜60質量部と、水15〜25質量部とが添加されることにより調製された合板用接着剤組成物が好ましい配合の具体例である。含水率10質量%以上の高含水率単板を含む単板を使用する場合の一層好ましい配合の具体例は、アカシアマンギューム樹皮粉末5〜10質量部、炭酸カルシウム35〜55質量部、水15〜20質量部を含むものである。
【0066】
(3種類の成分の配合量の相関式)
本実施形態においては、レゾール型フェノール樹脂水溶液100質量部に対する3種類の成分の適切な配合量は相関関係にあり、含水率8質量%程度の通常含水率の単板に対しては、およそ以下のような配合量の組合せが、糊液性能、接着性能の観点から好ましい。
・アカシア樹皮粉末 0.1X±2質量部
・無機充填材 X質量部(X:25〜50、好ましくは30〜45)
・水 X±5質量部
【0067】
一方、含水率10質量%以上の高含水率単板が混入する場合は、以下のような数式で与えられる配合量の組み合わせの中にある配合量が、パンク発生の抑制、糊液性能、接着性能の観点から好ましい。
・アカシア樹皮粉末 0.2X±2質量部
・無機充填材 X質量部(X:25〜70、好ましくは35〜55)
・水 0.4X±5質量部
【0068】
<その他の添加剤>
(ポリビニルアルコール)
本実施形態においては、状況に応じて、合板用接着剤組成物に、ポリビニルアルコール(PVAと記す場合がある)を配合してもよい。PVAは、単板に糊液を塗布し、単板を重ね合わせて接合し、冷間(室温)において加圧し(冷圧)するときの仮接着性を向上させ、仮接着の作業性を向上させる観点から好ましい添加剤である。また、後述する実施例における合板の接着力評価(接着試験)からは、糊液のドライアウトを防止して接着力を確保する効果のあることが認められる。
【0069】
PVAの重合度は、例えば1700程度まで大きいことが、接着力確保の効果が発現され易いという観点から好ましい。ただし、PVAの溶解時間や溶解作業性を考慮すると、重合度が500程度の部分ケン化物の細粒が好ましい。そのようなものとしては、例えば、クラレ社製の「PVA−205S」(ケン化度:86.5〜89モル%)等が好適である。
【0070】
レゾール型フェノール樹脂水溶液100質量部に対するPVAの配合量は、有効性と経済性とのバランスの観点から、0.1〜3質量部が好ましく、0.1〜1質量部がより好ましく、0.2〜0.6質量部がさらに好ましい。
【0071】
(フュームドシリカ)
本実施形態においては、状況に応じて、合板用接着剤組成物に、フュームドシリカを配合してもよい。フュームドシリカは、単板に糊液を塗布するときの塗布作業性を向上させ、かつ、糊液のドライアウトを抑制する観点から好ましい添加剤である。フュームドシリカには、比表面積が100〜400m/g程度までのものがあり、また、各種の表面処理が施されたものがある。本実施形態では、親水性表面で、比表面積が200m/g程度のものが好ましい。そのようなものとしては、例えば、日本アエロジル社製の親水性フュームドシリカ「AEROSIL(登録商標)200」等が好適である。
【0072】
レゾール型フェノール樹脂水溶液100質量部に対するフュームドシリカの配合量は、有効性と経済性とのバランスの観点から、0.1〜2質量部が好ましく、0.3〜1質量部がより好ましく、0.3〜0.6質量部がさらに好ましい。
【0073】
(粘度調整剤)
本実施形態においては、状況に応じて、合板用接着剤組成物に、例えば小麦粉等の粘度調整剤を配合してもよい。
【0074】
(硬化促進剤)
本実施形態においては、状況に応じて、合板用接着剤組成物に、例えば炭酸ナトリウムや重炭酸ナトリウム等の硬化促進剤を配合してもよい。
【0075】
(その他)
本実施形態においては、状況に応じて、合板用接着剤組成物に、例えばヤシガラ粉末等の有機系充填材や、ホルムアルデヒドの放散を抑制するためのホルムアルデヒドキャッチャ等を配合してもよい。
【0076】
<合板用接着剤組成物の調製方法>
一般に、レゾール型フェノール樹脂は、合成直後から硬化が始まり、合板工場で使用されるまでの期間中に、粘度上昇が起き易い。そのような粘度が上昇したレゾール型フェノール樹脂に、アカシア樹皮粉末や無機充填材等の粉体成分を順に添加し、混合することは作業性に劣る。そこで、本実施形態においては、粉体成分(アカシア樹皮粉末、無機充填材、PVA、フュームドシリカ、小麦粉等)を予め混合しておき、合板工場では、レゾール型フェノール樹脂と、水と、予め混合しておいた粉体成分とを混合することにより、糊液を調製することが作業効率の観点から好ましい。その場合、経時変化し、粘度が上昇したレゾール型フェノール樹脂の粘度に応じて、粘度調整剤としての小麦粉等を別に添加するようにしてもよい。
【0077】
工業的に製造、販売されるレゾール型フェノール樹脂は、一般に、樹脂分が40〜50質量%に調整されている。これを用いて接着剤組成物を調製する場合、レゾール型フェノール樹脂の合成の後工程において、本実施形態で規定される一部の水又は全部の水を予め加えて、接着剤組成物の調製現場に輸送し、ここで残りの成分を加えて接着剤組成物を完成してもよい。このような調製方法は、輸送や保管期間中の樹脂粘度上昇を抑制する利点が存在する。さらに、レゾール型フェノール樹脂の合成後に、本実施形態で規定される一部の水又は全部の水の他、その他の成分を一部加えてもよい。また、水を含む全成分をレゾール型フェノール樹脂に添加して接着剤組成物を調製し、これを合板工場に輸送して合板工場でそのまま使用してもよい。
【0078】
<合板の製造方法>
本実施形態においては、前記合板用接着剤組成物を用いて合板を製造する。すなわち、前記合板用接着剤組成物を単板に塗布し、複数の単板を重ね合わせ、加圧、加熱することにより、合板を得ることができる。まず、例えばスプレッダー等の塗布装置を用いて前記接着剤組成物を単板に塗布する。次に、所定の枚数の単板同士を重ね合わせる。冷間(室温)において、例えば1.0MPaに加圧し(冷圧)、仮接着した複数の単板を、例えば1.0MPaに加圧しつつ、例えば120〜140℃に加熱し(熱圧)、接着剤組成物を硬化させる方法が挙げられる。熱圧時の加熱温度が不足すると、接着剤組成物の硬化に時間がかかり過ぎ、合板の生産効率が低下し、経済性が低下する。熱圧時の加熱温度が高すぎると、パンク現象が起こり易くなる。平地での熱圧時の好ましい加熱温度は、例えば125〜130℃である。
【実施例】
【0079】
以下、実施例を通して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
【0080】
[レゾール型フェノール樹脂水溶液の合成]
フェノール658g(7モル)と、37%ホルムアルデヒド水溶液1135g(ホルムアルデヒド14モル)と、水250gとを、還流冷却装置の付いた反応器内に仕込み、攪拌しつつ、40%水酸化ナトリウム水溶液490g(水酸化ナトリウム4.9モル)を徐々に加え、82℃まで昇温し、82℃を維持しながら4時間反応させることにより、レゾール型フェノール樹脂水溶液を得た。ここに水を加えて樹脂分が42%となるように調整した。得られたレゾール型フェノール樹脂水溶液の30℃での粘度は、75cP(75mPa・s)、pHは12.5であった。
【0081】
[実施例1]
表1に示す配合により実施例1の接着剤組成物を調製した。レゾール型フェノール樹脂としては、上記で合成したフェノール樹脂(レゾール型フェノール樹脂A)を用いた。アカシア樹皮粉末としては、アカシアマンギューム樹皮の外樹皮をボールミル型粉砕機で粉砕したもの(アカシア樹皮粉末A)を用いた(粒径:10〜30μm、メタノール抽出分:約30%)。炭酸カルシウムとしては、和光純薬株式会社製の試薬一級の製品(平均粒径:1μm)を用いた。水は、イオン交換樹脂を通過させた純水(イオン交換水)を用いた。PVAとしては、クラレ社製の「PVA−205S」(ケン化度:86.5〜89モル%)を用いた(以下例において同じ)。フェノール樹脂増量倍率(用いたフェノール樹脂の質量部に対する調製した接着剤組成物の質量部の倍率)は1.90倍であった。
【0082】
[比較例1]
表1に示す配合により比較例1の接着剤組成物を調製した。アカシア樹皮粉末に代えてヤシガラ粉末を用いた。PVAは配合していない。水による希釈を行なっていないので、フェノール樹脂増量倍率は1.42倍であった。
【0083】
(粘度測定)
実施例1の接着剤組成物及び比較例1の接着剤組成物について、調製直後の粘度(30℃)、35℃で2時間保管後の粘度(30℃)、35℃で4時間保管後の粘度(30℃)を測定した。結果を表1に示す。比較例1では、粘度が経時的に急増しているのに対し、実施例1では、比較例1に比べて粘度の経時的変化(粘度増加)が少ないことが観察された。
【0084】
(接着試験)
実施例1の接着剤組成物及び比較例1の接着剤組成物について、単板に対する接着試験を行なった。まず、接着片として、Yellow Speciesの単板3枚(中央2.5mm厚、表裏それぞれ1.45mm厚)を使用した。接着剤組成物の塗布量を片側20g/ft(21.5mg/cm)として、調製直後の接着剤組成物を単板に塗布し、重ね合わせた。直ちに冷圧1.0MPaで25分間、その後、実施例1については、125℃、比較例1については、130℃で、熱圧1.0MPaで4分間、加圧、加熱することにより、合板を作製した。
【0085】
作製した合板についてJASの規格に準拠してせん断引張試験及び木部破断率(木破率)を試験した。まず、作製した合板から試験片を切り出した。試験片を20℃の冷水中に24時間浸漬したもの、及び、100℃の煮沸水中に72時間浸漬したものを、せん断引張強度試験に供した。各10個の試験片について試験を行なった。その結果について、接着力と木部破断率の平均値を表1に示す。実施例1は比較例1に比べてフェノール樹脂増量倍率が大きく、環境性、経済性に有利であり、フェノール樹脂の含有量が相対的に少ないにも拘らず、実施例1は比較例1よりも接着力及び木部破断率に優れていた。
【0086】
また、合板の接着剤層を観察したところ、実施例1及び比較例1とも、パンク現象は生じていなかった。
【0087】
実施例1に加えて追加の試験を行った。すなわち、実施例1の配合を基準として、アカシア樹皮粉末Aの配合量のみを1〜15質量部の範囲内で種々変化させた接着剤組成物、炭酸カルシウムの配合量のみを25〜70質量部の範囲内で種々変化させた接着剤組成物、水の配合量のみを10〜50質量部の範囲内で種々変化させた接着剤組成物を調製し、それぞれ前記と同様に粘度測定及び接着試験を行った。また、実施例1の配合を基準として、アカシア樹皮粉末Aの配合量のみを0質量部とした接着剤組成物を調製し、前記と同様に粘度測定及び接着試験を行った。前者の接着剤組成物(実施例群)はいずれも後者の接着剤組成物(アカシア樹皮粉末Aを配合しなかったもの:比較例)に比べて優れる結果を示すことが確認された。また、実施例群は比較例に比べてパンク現象が抑制されていた。
【0088】
【表1】

【0089】
[実施例2]
表2に示す配合により実施例2の接着剤組成物を調製した。レゾール型フェノール樹脂としては、株式会社オーシカ製の「ディアノール D−117」(レゾール型フェノール樹脂B、樹脂分:43%、30℃での粘度:170cP)を用いた。アカシア樹皮粉末としては、外樹皮、内樹皮を分離することなく、ボールミル型粉砕機で粉砕した、メタノール抽出分が約17%、平均粒径が10〜50μm、最大粒径が100〜150μmのアカシアマンギューム樹皮粉末(アカシア樹皮粉末B)を用いた。その他の成分は、実施例1と同じものを用いた。硬化促進剤として炭酸ナトリウムを配合した。
【0090】
[比較例2]
表2に示す配合により比較例2の接着剤組成物を調製した。硬化促進剤として重炭酸ナトリウムを配合した。
【0091】
(接着試験)
実施例2の接着剤組成物及び比較例2の接着剤組成物について、単板に対する接着試験を行なった。まず、接着片として、ラジアータ松の単板3枚(それぞれ2.8mm厚、含水率5〜6%)を使用した。接着剤組成物の塗布量を片側20g/ft(21.5mg/cm)として、ドライアウト試験として、塗布後、40℃の乾燥機中に10分間放置し、さらに相手側単板を重ね合わせて加圧無しに10分間放置した。その後、室温で冷圧1.0MPaで25分間、その後、130℃で、熱圧1.0MPaで4.2分間、加圧、加熱することにより、合板を作製した。
【0092】
作製した合板から試験片を切り出した。試験片を20℃の冷水中に浸漬し、0.085MPa以上で減圧30分、0.45〜0.48MPaで加圧30分処理したものを、せん断引張強度試験に供した。各10個の試験片について試験を行なった。その結果について、接着力と木部破断率の平均値を表2に示す。実施例2は比較例2に比べてフェノール樹脂増量倍率が大きく、環境性、経済性に有利であり、フェノール樹脂の含有量が相対的に少ないにも拘らず、実施例2は比較例2よりも接着力に優れていた。
【0093】
また、合板の接着剤層を観察したところ、実施例2及び比較例2とも、パンク現象は生じていなかった。
【0094】
実施例2に加えて追加の試験を行った。すなわち、実施例2の配合を基準として、アカシア樹皮粉末Bの配合量のみを1〜15質量部の範囲内で種々変化させた接着剤組成物、炭酸カルシウムの配合量のみを25〜70質量部の範囲内で種々変化させた接着剤組成物、水の配合量のみを10〜50質量部の範囲内で種々変化させた接着剤組成物を調製し、それぞれ前記と同様に接着試験を行った。また、実施例2の配合を基準として、アカシア樹皮粉末Bの配合量のみを0質量部とした接着剤組成物を調製し、前記と同様に接着試験を行った。前者の接着剤組成物(実施例群)はいずれも後者の接着剤組成物(アカシア樹皮粉末Bを配合しなかったもの:比較例)に比べて優れる結果を示すことが確認された。また、実施例群は比較例に比べてパンク現象が抑制されていた。
【0095】
【表2】

【0096】
[実施例3]
表3に示す配合により実施例3の接着剤組成物を調製した。レゾール型フェノール樹脂としては、株式会社サンベーク製の「ユーロイド PL−255」(レゾール型フェノール樹脂C、樹脂分:44%、25℃での粘度:150cP)を用いた。アカシア樹皮粉末は、実施例2と同じものを用いた。その他の成分も、実施例2と同じものを用いた。
【0097】
[比較例3]
表3に示す配合により比較例3の接着剤組成物を調製した。
【0098】
(接着試験)
実施例3の接着剤組成物及び比較例3の接着剤組成物について、単板に対する接着試験を、ドライアウト試験を含め、実施例2及び比較例2と同様にして行なった。ただし、接着剤組成物の塗布量を片側17.5g/ft(18.8mg/cm)に減量した。結果を表3に示す。実施例3及び比較例3は実施例2及び比較例2に比べて接着剤組成物の塗布量を減量したためそれぞれ接着力が低下した。しかし、実施例3は比較例3に比べてフェノール樹脂増量倍率が大きく、環境性、経済性に有利であり、フェノール樹脂の含有量が相対的に少ないにも拘らず、実施例3は比較例3と同等の接着力であった。また、実施例3は比較例3よりも木部破断率に優れていた。
【0099】
また、合板の接着剤層を観察したところ、実施例3及び比較例3とも、パンク現象は生じていなかった。
【0100】
実施例3に加えて追加の試験を行った。すなわち、実施例3の配合を基準として、アカシア樹皮粉末Bの配合量のみを1〜15質量部の範囲内で種々変化させた接着剤組成物、炭酸カルシウムの配合量のみを25〜70質量部の範囲内で種々変化させた接着剤組成物、水の配合量のみを10〜50質量部の範囲内で種々変化させた接着剤組成物を調製し、それぞれ前記と同様に接着試験を行った。また、実施例3の配合を基準として、アカシア樹皮粉末Bの配合量のみを0質量部とした接着剤組成物を調製し、前記と同様に接着試験を行った。前者の接着剤組成物(実施例群)はいずれも後者の接着剤組成物(アカシア樹皮粉末Bを配合しなかったもの:比較例)に比べて優れる結果を示すことが確認された。また、実施例群は比較例に比べてパンク現象が抑制されていた。
【0101】
【表3】

【0102】
[実施例4〜6]
表4に示す配合により実施例4〜6の接着剤組成物を調製した。全成分とも、実施例1と同じものを用いた。
【0103】
(接着試験)
実施例4〜6の接着剤組成物について、単板に対する接着試験を行なった。まず、接着片として、ラジアータ松の単板3枚(それぞれ2.8mm厚、含水率7〜8%)を使用した。接着剤組成物の塗布量を片側20g/ft(21.5mg/cm)として、ドライアウト試験として、塗布後、40℃の乾燥機中に10分間放置し、さらに相手側単板を重ね合わせて加圧無しに10分間放置した。その後、室温で冷圧1.0MPaで25分間、その後、125℃で、熱圧1.0MPaで6分間、加圧、加熱することにより、合板を作製した。
【0104】
作製した合板から試験片を切り出した。試験片を20℃の冷水中に24時間浸漬したものを、せん断引張強度試験に供した。各10個の試験片について試験を行なった。その結果について、接着力と木部破断率の平均値を表4に示す。実施例4〜6はいずれもフェノール樹脂増量倍率が相対的に大きく、環境性、経済性に有利であり、フェノール樹脂の含有量が相対的に少ないにも拘らず、接着力及び木部破断率に優れていた。特に、実施例1と比べても、概ね、接着力及び木部破断率が向上した。これは、実施例4〜6は実施例1に比べて単板の樹種が異なり、かつアカシア樹皮粉末、炭酸カルシウム、水の配合量を増量したからと考えられる。
【0105】
また、合板の接着剤層を観察したところ、実施例4〜6は、いずれもパンク現象は生じていなかった。
【0106】
【表4】

【0107】
[実施例7、8]
表5に示す配合により実施例7、8の接着剤組成物を調製した。実施例7において、フュームドシリカとしては、日本アエロジル株式会社製の親水性フュームドシリカ「AEROSIL(登録商標)200」を用いた。実施例8において、珪藻土としては、昭和化学工業株式会社製の製品を用いた。その他の成分は、実施例1と同じものを用いた。
【0108】
(接着試験)
実施例7、8の接着剤組成物について、単板に対する接着試験を実施例4〜6と同様にして行なった。結果を表5に示す。実施例7,8はいずれもフェノール樹脂増量倍率が相対的に大きく、環境性、経済性に有利であり、フェノール樹脂の含有量が相対的に少ないにも拘らず、接着力及び木部破断率に優れていた。特に、実施例1と比べても、概ね、接着力及び木部破断率が向上した。フュームドシリカを配合した場合や、炭酸カルシウムと他の無機充填材とを併用した場合においても、接着力及び木部破断率が向上した。
【0109】
また、合板の接着剤層を観察したところ、実施例7、8は、いずれもパンク現象は生じていなかった。
【0110】
実施例7に加えて追加の試験を行った。すなわち、実施例7の配合を基準として、アカシア樹皮粉末Aの配合量のみを1〜15質量部の範囲内で種々変化させた接着剤組成物、炭酸カルシウムの配合量のみを25〜70質量部の範囲内で種々変化させた接着剤組成物、水の配合量のみを10〜50質量部の範囲内で種々変化させた接着剤組成物を調製し、それぞれ前記と同様に接着試験を行った。また、実施例7の配合を基準として、アカシア樹皮粉末Aの配合量のみを0質量部とした接着剤組成物を調製し、前記と同様に接着試験を行った。前者の接着剤組成物(実施例群)はいずれも後者の接着剤組成物(アカシア樹皮粉末Aを配合しなかったもの:比較例)に比べて優れる結果を示すことが確認された。また、実施例群は比較例に比べてパンク現象が抑制されていた。
【0111】
実施例8に加えて追加の試験を行った。すなわち、実施例8の配合を基準として、アカシア樹皮粉末Aの配合量のみを1〜15質量部の範囲内で種々変化させた接着剤組成物、炭酸カルシウム及び珪藻土の配合量のみを25〜70質量部の範囲内で種々変化させた接着剤組成物、水の配合量のみを10〜50質量部の範囲内で種々変化させた接着剤組成物を調製し、それぞれ前記と同様に接着試験を行った。また、実施例8の配合を基準として、アカシア樹皮粉末Aの配合量のみを0質量部とした接着剤組成物を調製し、前記と同様に接着試験を行った。前者の接着剤組成物(実施例群)はいずれも後者の接着剤組成物(アカシア樹皮粉末Aを配合しなかったもの:比較例)に比べて優れる結果を示すことが確認された。また、実施例群は比較例に比べてパンク現象が抑制されていた。
【0112】
【表5】

【0113】
[実施例9、10]
表6に示す配合により実施例9、10の接着剤組成物を調製した。レゾール型フェノール樹脂としては、冒頭で説明した合成法と同じ条件で合成したレゾール型フェノール樹脂D(30℃での粘度82cP(82mPa・s)、pH12.5)を用いた。その他の配合成分は、実施例1と同じものを用いた。
【0114】
(パンク試験)
実施例9、10の接着剤組成物について、合板熱圧時に起こるパンク現象を想定した試験を行った。まず、接着片として、高周波木材水分計値で12%、15%、16.5%に調整したラジアータ松の単板3枚(それぞれ2.8mm厚)を使用した。接着剤組成物の塗布量を片側17g/ft(18.8mg/cm)として、調製直後の接着剤組成物を単板に塗布し、重ね合わせた。直ちに、冷圧1.0MPaで30分間、その後、130℃で、熱圧1.0PMaで7分間、加圧、加熱し、解圧時パンクが発生するか否かを確認した。パンクの非発生率を下記式により算出した。各実施例において、10個の試験体で試験を行った。結果を表6に示す。
【0115】
パンク非発生率=(パンクが発生しなかった試験体の数/全試験体の数)×100
【0116】
実施例10は、実施例9と比べて、パンクの非発生率が高かった。すなわち、良好な結果であった。これは、実施例10の接着剤組成物は、実施例9の接着剤組成物に比べて、糊液中に含まれる水分量が少なかったためと考えられる。
【0117】
【表6】

【0118】
[実施例11〜14]
表7に示す配合により実施例11〜14の接着剤組成物を調製した。レゾール型フェノール樹脂としては、実施例9、10と同じもの(30℃での粘度90cP(90mPa・s)、pH12.5)を用いた。その他の配合成分も、実施例9、10と同じものを用いた。
【0119】
(パンク試験)
実施例11〜14の接着剤組成物について、合板熱圧時に起こるパンク現象を想定した試験を行った。まず、接着片として、高周波木材水分計値で13.5%に調整した南洋材の単板5枚(中央3.7mm厚、表裏それぞれ0.8mm厚)を使用した。接着剤組成物の塗布量を片側17g/ft(18.8mg/cm)として、調製直後の接着剤組成物を単板に塗布し、重ね合わせた。直ちに冷圧1.0MPaで30分間、その後、125℃で、熱圧1.0MPaで10分50秒間、加圧、加熱し、解圧時パンクが発生するか否かを確認した。パンクの非発生率を実施例9、10と同様の式により算出した。各実施例において、10個の試験体で試験を行った。結果を表7に示す。
【0120】
アカシア樹皮粉末の配合量が増えるに従いパンク非発生率が増加することが明らかになった。
【0121】
【表7】

【0122】
[実施例15〜18]
表8に示す配合により実施例15〜18の接着剤組成物を調製した。レゾール型フェノール樹脂としては、冒頭で説明した合成法と同じ条件で合成したレゾール型フェノール樹脂E(30℃での粘度80cP(80mPa・s)、pH12.5)を用いた。その他の配合成分は、実施例1と同じものを用いた。
【0123】
(パンク試験)
実施例15〜18の各接着剤組成物について、合板熱圧時に起こるパンク現象を想定した試験を行った。まず、接着片として、高周波木材水分計値で16.5%に調整した南洋材の単板5枚(中央3.7mm厚、表裏それぞれ0.8mm厚)を使用した。接着剤組成物の塗布量を片側17g/ft(18.8mg/cm)として、調製直後の接着剤組成物を単板に塗布し、重ね合わせた。直ちに冷圧1.0MPaで30分間、その後、130℃で、熱圧1.0MPaで10分50秒間、加圧、加熱し、解圧時パンクが発生するか否かを確認した。パンクの非発生率を実施例9、10と同様の式によって算出した。各実施例において、10個の試験体で試験を行った。結果を表8に示す。
【0124】
(接着試験)
実施例15〜18の各接着剤組成物について、単板に対する接着試験を行なった。まず、接着片として、高周波木材水分計値で8%に調整した南洋材の単板5枚(中央3.7mm厚、表裏それぞれ1.2mm厚)を使用した。接着剤組成物の塗布量を片側17g/ft(18.8mg/cm)として、調製直後の接着剤組成物を単板に塗布し、重ね合わせた。直ちに冷圧1.0MPaで30分間、その後、130℃で、熱圧1.0MPaで10分50秒間、加圧、加熱することにより、合板を作製した。
【0125】
作製した合板についてJAS規格に準拠してせん断引張試験及び木部破断率(木破率)を試験した。まず、作製した合板から試験片を切り出した。試験片を100℃の煮沸水中に72時間浸漬したものを、せん断引張強度試験に供した。各10個の試験片について試験を行なった。その結果について、接着力と木部破断率の平均値を表8に示す。
【0126】
実施例16は実施例15に比べてパンク非発生率が高く、実施例18は実施例16に比べてパンク非発生率がさらに高く、また、実施例17も実施例16に比べてパンク非発生率が高かった。これは、実施例16は実施例15に比べて糊液中に含まれる水分量が少なく、実施例18は実施例16に比べて糊液中に含まれる水分量がさらに少なく、また、実施例17は実施例16に比べて糊液中に含まれるアカシア樹皮粉末の量が多かったためと考えられる。
【0127】
実施例15〜18は、いずれもフェノール樹脂の増量倍率が相対的に大きく、環境性、経済性に有利であり、フェノール樹脂の含有量が相対的に少ないにも拘らず、接着力及び木部破断率に優れていた。
【0128】
【表8】

【0129】
[実施例19]
表9に示す配合により実施例19の接着剤組成物を調製した。レゾール型フェノール樹脂としては、実施例2と同様の、株式会社オーシカ製の「ディアノール D−117」(レゾール型フェノール樹脂B、樹脂分:43%、30℃での粘度:200cP)を用いた。その他の配合成分は、実施例1と同じものを用いた。
【0130】
(接着試験)
実施例19の接着剤組成物について、単板に対する接着試験を実施例15〜18と同様にして行なった。まず、接着片として、高周波木材水分計値で8%に調整した南洋材の単板5枚を使用して、合板を作製した。
【0131】
作製した合板についてJAS規格に準拠してせん断引張試験及び木部破断率(木破率)を試験した。まず、作製した合板から試験片を切り出した。試験片を100℃の煮沸水中に72時間浸漬したものを、せん断引張強度試験に供した。各10個の試験片について試験を行なった。その結果について、接着力と木部破断率の平均値を表9に示す。
【0132】
実施例19は、フェノール樹脂の増量倍率が大きく、環境性、経済性に有利であり、フェノール樹脂の含有量が相対的に少ないにも拘らず、接着力及び木部破断率に優れていた。炭酸カルシウム増量のためと考えられるが、接着性能は高く、合板の接着剤層を観察したところ、パンク現象(剥離)は生じていなかった。
【0133】
【表9】

【0134】
[実施例20]
表10に示す配合により実施例20の接着剤組成物を調製した。レゾール型フェノール樹脂としては、実施例9、10と同じもの(30℃での粘度100cP(100mPa・s)、pH12.5)を用いた。その他の配合成分は、実施例1と同じものを用いた。
【0135】
(接着試験)
実施例20の接着剤組成物について、単板に対する接着試験を実施例19と同様にして行なった。ただし、接着片としては、高周波木材水分計値で16.5%に調整した南洋材の単板5枚を使用した。接着力と木部破断率の平均値を表10に示す。
【0136】
実施例20は、フェノール樹脂の増量倍率が比較的大きく、環境性、経済性に有利であり、フェノール樹脂の含有量が相対的に少ないにも拘らず、接着力及び木部破断率に優れていた。また、合板の接着剤層を観察したところ、パンク現象(剥離)は生じていなかった。
【0137】
【表10】

【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明は、合板用接着剤組成物、合板の製造方法及び合板の技術分野において、広範な産業上の利用可能性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂分が40〜50質量%のレゾール型フェノール樹脂水溶液100質量部に対し、アカシア樹皮粉末1〜15質量部と、無機充填材25〜70質量部と、水10〜50質量部とが添加されることにより調製されたことを特徴とする合板用接着剤組成物。
【請求項2】
樹脂分が40〜50質量%のレゾール型フェノール樹脂水溶液100質量部に対し、アカシア樹皮粉末1〜10質量部と、無機充填材25〜50質量部と、水25〜50質量部とが添加されることにより調製されたことを特徴とする合板用接着剤組成物。
【請求項3】
樹脂分が40〜50質量%のレゾール型フェノール樹脂水溶液100質量部に対し、アカシア樹皮粉末1〜15質量部と、無機充填材25〜70質量部と、水10〜25質量部とが添加されることにより調製されたことを特徴とする合板用接着剤組成物。
【請求項4】
アカシア樹皮粉末は、平均粒径が10〜150μmであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の合板用接着剤組成物。
【請求項5】
ポリビニルアルコール0.1〜3質量部がさらに添加されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の合板用接着剤組成物。
【請求項6】
フュームドシリカ0.1〜2質量部がさらに添加されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の合板用接着剤組成物。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の合板用接着剤組成物を単板に塗布し、複数の単板を重ね合わせ、加圧、加熱することを特徴とする合板の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の製造方法により製造されたことを特徴とする合板。
【請求項9】
接着剤層が、硬化したフェノール樹脂40〜50質量部に対し、アカシア樹皮粉末1〜15質量部と、無機充填材25〜70質量部とを含むことを特徴とする合板。

【公開番号】特開2011−251527(P2011−251527A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99640(P2011−99640)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(504296699)株式会社コシイウッドソリューションズ (1)
【Fターム(参考)】