説明

合金めっき方法および合金めっき装置

【課題】 可溶性陽極のみを用いて標準電極電位が異なる合金の電解めっきが可能な合金めっき方法および装置を提供する。
【解決手段】 めっき槽1内のめっき液2中に、被めっき材を陰極3に接続し、陰極3と標準電極電位が貴の金属からなる可溶性陽極4との間に整流器a1を、陰極3と標準電極電位が卑の金属からなる可溶性陽極5との間に整流器a2を接続する。可溶性陽極4と可溶性陽極5とに交互に電流を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合金の電解めっき方法とそれを実施するための合金めっき装置に関し、特に、半導体装置用リードフレームの外装めっき、半導体ウェハ上へのバンプめっきやプリント配線板などのパターンめっき等における鉛フリーめっきに代表される合金めっきの方法とそれを実施するための電解めっき装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保全への関心の高まりに伴い、電子部品の表面処理に従来使用されてきたSn−Pbはんだめっきは今後廃止される傾向にあり、これに代わって、Sn−Zn、Sn−Ag、Sn−Cu、Sn−Ag−Cu合金などの鉛フリーはんだめっきが主流となってきている。従来のSn−Pb(はんだ)めっきである場合、所定の組成比に調合した合金自体を可溶性陽極として電解めっきを行う方法や、Sn、Pbそれぞれの純物質からなる可溶性陽極を個別に使用し、それぞれの陽極に目的とする合金組成に対応した電流を流してめっきを行う方法が用いられてきた。Sn−Pb(はんだ)めっきの場合はSn、Pbの標準電極電位がほぼ等しいため、上記のいずれの方法を用いても合金めっきが可能である。
【0003】
しかしながら、鉛フリーはんだめっきをはじめ殆どの合金において、合金を構成する金属それぞれの標準電極電位は異なっており、その結果、上記のような方法ではいずれの方法を用いても標準電極電位が卑な金属が優先的にめっき液中に溶解し、標準電極電位が貴な金属は殆ど溶出しないため、被めっき材に対して目的とする組成で合金を析出させることができないという問題が発生する。このため、従来、標準電極電位が卑である(標準電極電位が低い)金属のみを純金属にて供給し、標準電極電位が貴である金属は化合物の溶液として供給する方法がとられている(第1の従来例:例えば、特許文献1、2参照)。あるいは、標準電極電位が貴である(標準電極電位が高い)金属は電解槽において純金属の陽極にて供給し、標準電極電位が卑である金属は別に設けられた電解槽ないし溶解槽において純金属にて供給しそれぞれの槽にて生成された溶液を混合して作製されためっき液が用いられる(第2の従来例:例えば、特許文献3、4参照)。
【特許文献1】特開平10−288000号公報
【特許文献2】特開2001−144240号公報
【特許文献3】特開2003−55798号公報
【特許文献4】特開2003−160900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
第1の従来例の方法では、可溶性陽極を使用していない標準電極電位が貴な金属のイオンは陽極の溶出により自動的に補給されることがないため、めっきにより金属イオンが消費されるとめっき液中の濃度が減少してしまう。このため、標準電極電位が貴な金属のイオンの薬液を用意しておき、めっき品質を一定に保つため、金属イオン濃度を監視して頻繁に標準電極電位が貴な金属のイオンを補給して溶液の濃度管理を行う必要があり、管理コストが増大してしまうという問題が発生する。
一方、第2の従来例の方法では、複数の電解槽を用意しておきそれらの間で薬液を循環させなければならず、多くのスペースを必要とするほか薬液循環システムの構築が必要になるなど装置の大規模化、複雑化を伴い、装置が高価なものになってしまう。
本発明の課題は、上述した従来技術の問題点を解決することであって、その目的は、鉛フリーはんだ等の合金めっきを、大規模で複雑な装置を必要とすることなく、かつ、管理コストの増大を招くことなく行い得るようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明によれば、電解めっき法にて被めっき対象に合金をめっきする合金めっき方法であって、合金を構成する全ての金属元素を個別の可溶性固体陽極として同一のめっき槽内に配置し、それぞれの可溶性固体陽極に間欠的に電流を供給することを特徴とする合金めっき方法、が提供される。
【0006】
また、上記の目的を達成するため、本発明によれば、電解めっき法にて被めっき対象に合金をめっきする合金めっき方法であって、合金を構成する全ての金属元素を個別の可溶性固体陽極として同一のめっき槽内に配置し、標準電極電位の高い金属元素の可溶性固体陽極には相対的に高い電圧を印加し標準電極電位の低い金属元素の可溶性固体陽極には相対的に低い電圧を印加することを特徴とする合金めっき方法、が提供される。
【0007】
また、上記の目的を達成するため、本発明によれば、電解めっき法にて被めっき対象に合金をめっきする合金めっき装置であって、合金を構成する全ての金属元素を個別の可溶性固体陽極として同一のめっき槽内に配置し、それぞれの可溶性固体陽極に間欠的に電流を供給することができる電源装置を具備したことを特徴とする合金めっき装置、が提供される。
【0008】
また、上記の目的を達成するため、本発明によれば、電解めっき法にて被めっき対象に合金をめっきする合金めっき装置であって、合金を構成する各金属元素よりそれぞれ構成された可溶性固体陽極が同一のめっき槽内に配置され、標準電極電位の高い金属元素の可溶性固体陽極には相対的に高い電圧の電源が接続され標準電極電位の低い金属元素の可溶性固体陽極には相対的に低い電圧の電源が接続されていることを特徴とする合金めっき装置、が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明による合金めっき方法は、各可溶性陽極に時間分離して独立に電流を供給するものであるので、あるいは各可溶性陽極にそれぞれの標準電極電位に応じた電圧印加するものであるので、電解槽(めっき槽)は1個のみで済ますことが可能になり、めっき装置を大幅に小型化、簡素化することが可能になる。また、本発明によれば、標準電極電位が貴な金属も化合物の溶液として供給する必要がなくなり、めっき液の管理が飛躍的に容易になる。よって、本発明によれば、容易にかつ低コストにて合金めっきを行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態のめっき装置の概略構成図であって、本実施の形態は、二元合金のめっき装置に係るものである。説明に先立ち、目的とする合金を構成する金属をM、Nとし、構成金属Mの方が、構成金属Nよりも標準電極電位が貴であるものとする。
めっき槽1内には、目的とするめっき合金に対応しためっき液2が満たされており、めっき液2の中には、被めっき材からなる陰極3、合金を構成する金属のうち標準電極電位が貴な方の金属Mの純物質からなる可溶性陽極4、および、合金を構成する金属のうち標準電極電位が卑な方の金属Nの純物質からなる可溶性陽極5が浸漬されている。陰極3と可溶性陽極4、陰極3と可溶性陽極5の間にはそれぞれ独立して整流器a1、a2が配置されている。
【0011】
ここで、整流器a1、a2は、制御極付き整流器であって、それぞれの可溶性陽極4、5に対して任意の波形の電流を供給することが可能となっている。そして、それぞれの可溶性陽極に対し、目的とする合金の組成に対応した積算電流値で電流を供給するために、電流値および通電時間を任意に制御することが可能である。また、整流器a1、a2は、互いに同期を取りながら各可溶性陽極に電流を供給することができるものである。
上記のめっき装置を用いて、合金めっきを行う場合にそれぞれの可溶性陽極に供給する電流が同時に重なることがないよう制御することにより、同時に複数の可溶性陽極に電流が供給されることを防止することができる。このように、各可溶性陽極に独立して電流を供給することにより、標準電極電位が貴な金属と、標準電極電位が卑な金属を任意の割合でめっき液中に溶出させることが可能となる。
本実施の形態により、合金を構成する金属材料M、Nそれぞれの供給を全て可溶性陽極にて行うことが可能となる。合金めっき皮膜生成に消費された金属イオンは可溶性陽極の溶出により補われ、化合物の溶液として補給せずともめっき液中の金属イオン濃度はほぼ一定に保たれるため、めっき液管理は格段に容易になる。また、本発明によれば、一つのめっき槽1内において、両方の金属イオンを供給することができるため、めっき装置を極めて簡素に構成することができる。よって、本発明によれば、合金めっきに係る装置コストおよびランニングコストを大幅に削減することができる。
【0012】
図2は、図1に示した第1の実施の形態のめっき装置に対する電流供給の一例を示す電流プロファイルである。同図に示されるように、可溶性陽極4および可溶性陽極5それぞれに電流が供給される時間が重複しないように整流器a1、a2が制御されており、かつ、可溶性陽極4と可溶性陽極5にはそれぞれ貴な金属Mと卑な金属Nとの組成比に従った時間幅の電流が供給されている。
図2に示した例では矩形波を各陽極に印加していたが、可溶性陽極4および可溶性陽極5に供給する電流プロファイルは矩形波に限らず任意の曲線で表される波形に変更してもよい。また、供給する電流は必ずしも1方向のみに流れる必要はなく、一時的にマイナス方向に流れる場合があってもよい。また、本実施の形態においては、それぞれの可溶性陽極に供給する電流が時間的に重なることがないようにすることが基本であるが、若干の時間両方の電極へ同時に電流の供給が行われることを排除するものではない。この場合に、複数の電極に同時に電流が供給されている時間の合計が、一の電極にのみ電流を供給している時間の合計の1/10以下とすることが望ましい。また、電流供給の切り換えは同期して行うことが基本であるが、若干の時間いずれの陽極に対しても電流が供給されることがないように制御してもよい。
【0013】
図3は、本発明の第2の実施の形態の二元合金めっき装置の概略構成図である。図3において、図1に示した第1の実施の形態の装置と同等の部分には同一の参照記号が付せられているので、重複する説明は省略する。本実施の形態においては、陰極3と可溶性陽極4との間には電源b1とスイッチs1が、また陰極3と可溶性陽極5との間には電源b2とスイッチs2が接続されている。ここで、スイッチs1とs2とは相補的に動作する。従って、可溶性陽極4と可溶性陽極5に供給される電流のプロファイルは図2に示す通りである。
【0014】
図4は、本発明の第3の実施の形態の二元合金めっき装置の概略構成図である。図4において、図1に示した第1の実施の形態の装置と同等の部分には同一の参照記号が付せられているので、重複する説明は省略する。本実施の形態においては、陰極3と可溶性陽極4および可溶性陽極5との間には電源b1とスイッチs3が共通に接続されている。ここで、スイッチs3の可動接点は可溶性陽極4と可溶性陽極5とのいずれかに選択的に接続されるように構成されている。従って、可溶性陽極4と可溶性陽極5に供給される電流のプロファイルは図2に示す通りである。
【0015】
図5は、本発明の第4の実施の形態の二元合金めっき装置の概略構成図である。図5において、図1に示した第1の実施の形態の装置と同等の部分には同一の参照記号が付せられているので、重複する説明は省略する。本実施の形態においては、陰極3と可溶性陽極4との間には電源b1とスイッチs1が、また陰極3と可溶性陽極5との間には電源b1とスイッチs2が接続されている。すなわち、電源b1は、可溶性陽極4と可溶性陽極5の両方に共通に接続されている。ここで、スイッチs1とs2とは相補的に動作する。従って、可溶性陽極4と可溶性陽極5に供給される電流のプロファイルは図2に示す通りである。
図3〜図5に示される実施の形態では、陰極3−陽極4、5間の電流の供給は直流電源によって行っていたが、これを整流器に置き換えてもよい。この場合、必ずしも制御極付きの整流器を用いなくてもよい。
【0016】
図6は、本発明の第5の実施の形態のめっき装置の概略構成図であって、本実施の形態は、三元合金のめっき装置に係る。ここで、三元合金は金属M、R、Nにより構成されており、この内Mが標準電極電位が最も貴な金属であり、Nが標準電極電位が最も卑な金属である。そして、RはMより卑でNより貴な金属である。めっき槽1内には、金属M、R、Nのイオンを含むめっき液2が満たされており、めっき液2の中には、被めっき材からなる陰極3、合金を構成する金属のうち標準電極電位が最も貴な金属Mの純物質からなる可溶性陽極4、合金を構成する金属のうち標準電極電位が最も卑な金属Nの純物質からなる可溶性陽極5、および、合金を構成する金属のうち標準電極電位がMより卑でNより貴の金属Rの純物質からなる可溶性陽極6が浸漬されている。陰極3と可溶性陽極4、陰極3と可溶性陽極5、および、陰極3と可溶性陽極6の間にはそれぞれ整流器a1、a2、a3が配置されている。
【0017】
ここで、整流器a1、a2およびa3は、制御極付き整流器であって、それぞれの可溶性陽極4、5および6に対して任意の波形の電流を供給することが可能となっている。そして、それぞれの可溶性陽極に対し、目的とする合金の組成に対応した積算電流値で電流を供給するために、電流値および通電時間を任意に制御することが可能である。また、各整流器a1〜a3は、互いに同期を取りながら各可溶性陽極に電流を供給することができるものである。
【0018】
図7は、図6に示した第5の実施の形態のめっき装置に対する電流供給の一例を示す電流プロファイルである。同図に示されるように、可溶性陽極4、可溶性陽極5および可溶性陽極6それぞれに電流が供給される時間が重複しないように整流器a1、a2、a3が制御されており、かつ、可溶性陽極4と可溶性陽極5と可溶性陽極6にはそれぞれ金属Mと金属Nと金属Rとの組成比に従った時間幅の電流が供給されている。
図7に示した例では矩形波を各陽極に印加していたが、可溶性陽極4ないし可溶性陽極6に供給する電流プロファイルは矩形波に限らず任意の曲線で表される波形に変更してもよい。また、供給する電流は必ずしも1方向のみに流れる必要はなく、一時的にマイナス方向に流れる場合があってもよい。また、本実施の形態においては、それぞれの可溶性陽極に供給する電流が時間的に重なることがないようにすることが基本であるが、若干の時間両方の電極へ同時に電流の供給が行われることを排除するものではない。この場合に、複数の電極に同時に電流が供給されている時間の合計が、一の電極にのみ電流を供給している時間の合計の1/10以下とすることが望ましい。また、電流供給の切り換えは同期して行うことが基本であるが、若干の時間いずれの陽極に対しても電流が供給されることがないように制御してもよい。
【0019】
図8は、本発明の合金めっき方法の他の一例を示す電流プロファイルである。この電流供給形態では、標準電極電位が卑な金属Nの可溶性陽極表面に標準電極電位が貴な金属Mが置換析出するのを抑えるため、標準電極電位が卑な金属Nからなる可溶性陽極5にはめっきのための電流供給を行っていない時にも微弱な電流を供給する。そして、可溶性陽極4への電流の供給が行われないときに可溶性陽極5へのめっきのための電流の供給が行われる。図8に示される電流プロファイルは、例えば図1に示されるめっき装置において、整流器a2と並列に微弱電流を流す直流電源を接続することによって実現が可能である。
【0020】
図9は、本発明の第6の実施の形態の二元合金めっき装置の概略構成図である。本実施の形態のめっき装置は、図8に示される電流プロファイルを実現するための、上述した第1の実施の形態の変更例とは異なる構成の装置である。図9において、図1に示した第1の実施の形態の装置と同等の部分には同一の参照記号が付せられているので、重複する説明は省略する。本実施の形態においては、陰極3と可溶性陽極4との間には電源b1とスイッチs1が接続されている。そして、陰極3と可溶性陽極5との間には、電源b2とスイッチs2との直列回路と微弱電流を供給するための電源b3とが並列に接続されている。ここで、スイッチs1とs2とは相補的に動作する。
【0021】
図10は、本発明の第7の実施の形態の二元合金めっき装置の概略構成図である。本実施の形態のめっき装置は、図8に示される電流プロファイルを実現するための別の構成の装置である。図10において、図1に示した第1の実施の形態の装置と同等の部分には同一の参照記号が付せられているので、重複する説明は省略する。本実施の形態においては、陰極3と可溶性陽極4との間には電源b1とスイッチs1が接続されている。そして、陰極3と可溶性陽極5との間には、電源b2と、スイッチs2と抵抗Rとからなる並列回路と、の直列回路が接続されている。ここで、抵抗Rの回路は、可溶性陽極5に常時微弱電流を供給するためのものである。また、スイッチs1とスイッチs2とは相補的に動作する。
【0022】
図11は、本発明の第8の実施の形態の二元合金めっき装置の概略構成図である。本実施の形態のめっき装置は、図8に示される電流プロファイルを実現するための更に別の構成の装置である。図11において、図1に示した第1の実施の形態の装置と同等の部分には同一の参照記号が付せられているので、重複する説明は省略する。本実施の形態においては、陰極3には、電源b1の負極側が接続されている。そして、電源b1の正極側と可溶性陽極4との間にはスイッチs1が接続されている。また、電源b1の正極側と可溶性陽極5との間には、スイッチs2と抵抗Rとからなる並列回路が接続されている。ここで、抵抗Rの回路は、可溶性陽極5に常時微弱電流を供給するためのものである。また、スイッチs1とスイッチs2とは相補的に動作する。
図9〜図11に示される実施の形態では、陰極3−陽極4、5間の電流の供給は直流電源によって行っていたが、これを整流器に置き換えてもよい。この場合、必ずしも制御極付きの整流器を用いなくてもよい。
【0023】
図12は、本発明の第9の実施の形態の二元合金めっき装置の概略構成図である。図12において、図1に示した第1の実施の形態の装置と同等の部分には同一の参照記号が付せられているので、重複する説明は省略する。
被めっき物が半導体リードフレームのように表裏がありしかも比較的面積が広い場合、可溶性陽極4および可溶性陽極5が1個ずつの第1の実施の形態のめっき装置では、均一の合金組成を実現することが困難になる。本実施の形態は、これに対処したものであって、貴な金属用の可溶性陽極および卑な金属用の可溶性陽極を、それぞれ可溶性陽極4〜4および可溶性陽極5〜5の6個ずつの陽極に分割し、それらを交互に配置しかつ陰極3を中心としてこれを取り囲むように陽極群を配置さする。このように構成することにより、被めっき物の部位による合金めっきの品質のばらつきを抑えることができる。なお、本実施の形態において可溶性陽極の分割数や形状などは、被めっき物の形状等に応じて適宜変更できるものである。また、可溶性陽極の供給方式も適宜に変更できるものである。例えば、チタンケースにボール状の可溶性陽極を入れ、ケース側に整流器を接続することにより間接的に陽極に電流を供給するようにしてもよい。この点は、他の実施の形態についても同様である。
【0024】
図13は、本発明の第10の実施の形態の二元合金めっき装置の概略構成図である。図13において、図12に示した第9の実施の形態の装置と同等の部分には同一の参照記号が付せられているので、重複する説明は省略する。
合金を構成するそれぞれの金属からなる陽極に交互に電流を印加する場合、電気が流れていない側(電気回路的に浮いている電極)には電流が流れている側から溶出した金属が析出してしまう場合がある(すなわち、陽極間で電流が流れてしまう)。連続的にこの現象が続くと、本来純物質からなるはずの陽極が2種の金属の合金と同じような状態となり、液中の金属濃度を安定に保つことができなくなる。この対策として、本実施の形態のめっき装置では、合金を構成するそれぞれの金属からなる可溶性陽極4〜4および可溶性陽極5〜5の間にそれぞれ絶縁壁7を配置し、陽極同士の間で電流が流れ別の金属が析出するのを防止する。
【0025】
図14は、本発明の第11の実施の形態の二元合金めっき装置の概略構成図である。図14において、図13に示した第10の実施の形態の装置と同等の部分には同一の参照記号が付せられているので、重複する説明は省略する。
図14に示されるように、本実施の形態においては、陰極3と可溶性陽極4〜4との間には電源b1とスイッチs1が、また陰極3と可溶性陽極5〜5との間には電源b2とスイッチs2が接続されている。可溶性陽極を構成する2種の金属の標準電極電位差が大きい場合、標準電極電位が貴な金属側にはより高い電圧を印加することが望ましい。そこで、本実施の形態では、貴な金属の可溶性陽極4〜4に電流を供給する電源b1の電源電圧の方が、卑な金属の可溶性陽極5〜5に電流を供給する電源b2の電源電圧より高く設定されている。スイッチs1とs2とは相補的に動作させてもよい。また、両方のスイッチを閉成させておくこともできる。更には、一方のスイッチのみを開・閉動作させるようにしてもよい(他方のスイッチは連続閉成)。
スイッチs1を常時閉成させるように動作させる場合、貴な金属の可溶性陽極4〜4と卑な金属の可溶性陽極5〜5とを同一の配置構成とすると、所望の組成比の合金が得られない可能性がある。この点に対処には、可溶性陽極4〜4−陰極間の抵抗を可溶性陽極5〜5−陰極間のそれより高くして電流を調整するようにすればよい。具体的方策としては、下記の(a)、(b)のいずれかあるいは両方の手段を講じることが考えられる。
(a)図14に示されるように、可溶性陽極4〜4を囲むように絶縁壁を設ける。
(b)可溶性陽極4〜4の形状や分割個数を可溶性陽極5〜5のそれとは異ならせる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の合金めっき装置の第1の実施の形態を示す構成図。
【図2】本発明の第1の実施の形態のめっき装置の一例の電流プロファイル。
【図3】本発明の合金めっき装置の第2の実施の形態を示す構成図。
【図4】本発明の合金めっき装置の第3の実施の形態を示す構成図。
【図5】本発明の合金めっき装置の第4の実施の形態を示す構成図。
【図6】本発明の合金めっき装置の第5の実施の形態を示す構成図。
【図7】本発明の第5の実施の形態のめっき装置の一例の電流プロファイル。
【図8】本発明のめっき方法の他の一例の電流プロファイル。
【図9】本発明の合金めっき装置の第6の実施の形態を示す構成図。
【図10】本発明の合金めっき装置の第7の実施の形態を示す構成図。
【図11】本発明の合金めっき装置の第8の実施の形態を示す構成図。
【図12】本発明の合金めっき装置の第9の実施の形態を示す構成図。
【図13】本発明の合金めっき装置の第10の実施の形態を示す構成図。
【図14】本発明の合金めっき装置の第11の実施の形態を示す構成図。
【符号の説明】
【0027】
1 めっき槽
2 めっき液
3 被めっき物からなる陰極
4、4〜4 標準電極電位が貴な金属Mからなる可溶性陽極
5、5〜5 標準電極電位が卑な金属Nからなる可溶性陽極
6 標準電極電位が中間的な金属Rからなる可溶性陽極
7 絶縁壁
a1〜a3 整流器
b1〜b3 電源
s1〜s3 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解めっき法にて被めっき対象に合金をめっきする合金めっき方法であって、合金を構成する全ての金属元素を個別の可溶性固体陽極として同一のめっき槽内に配置し、それぞれの可溶性固体陽極に間欠的に電流を供給することを特徴とする合金めっき方法。
【請求項2】
複数の可溶性固体陽極に同時に間欠的電流が供給されている時間の和は、一つの可溶性固体陽極にのみ間欠的電流が供給されている時間の和の1/10以下であることを特徴とする請求項1に記載の合金めっき方法。
【請求項3】
一つの可溶性固体陽極には、常時微弱電流が流されており、この微弱電流に重畳されて間欠的電流が供給されることを特徴とする請求項1または2に記載の合金めっき方法。
【請求項4】
標準電極電位の高い金属元素の可溶性固体陽極には相対的に高い電圧を印加し標準電極電位の低い金属元素の可溶性固体陽極には相対的に低い電圧を印加することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の合金めっき方法。
【請求項5】
電解めっき法にて被めっき対象に合金をめっきする合金めっき方法であって、合金を構成する全ての金属元素を個別の可溶性固体陽極として同一のめっき槽内に配置し、標準電極電位の高い金属元素の可溶性固体陽極には相対的に高い電圧を印加し標準電極電位の低い金属元素の可溶性固体陽極には相対的に低い電圧を印加することを特徴とする合金めっき方法。
【請求項6】
めっきされる合金が鉛フリー半田であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の合金めっき方法。
【請求項7】
めっきされる合金がSn−Bi、Sn−Ag、Sn−Cu、Sn−Ag−Cuの中のいずれかであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の合金めっき方法。
【請求項8】
電解めっき法にて被めっき対象に合金をめっきする合金めっき装置であって、合金を構成する全ての金属元素を個別の可溶性固体陽極として同一のめっき槽内に配置し、それぞれの可溶性固体陽極に間欠的に電流を供給することができる電源装置を具備したことを特徴とする合金めっき装置。
【請求項9】
前記電源装置が、陰極と各可溶性固体陽極との間に接続された制御極付整流器により、または、整流器とその整流器の接続を各可溶性固体陽極に切り換えるスイッチにより構成されていることを特徴とする請求項8に記載の合金めっき装置。
【請求項10】
前記電源装置が、各可溶性固体陽極毎に設けられた直流電源、または、全可溶性固体陽極に共通に設けられた直流電源と、その直流電源の各可溶性固体陽極への接続を制御するスイッチを備えていることを特徴とする請求項8に記載の合金めっき装置。
【請求項11】
一つの可溶性固体陽極には、常時微弱電流を流す電源が備えられていることを特徴とする請求項8から10のいずれかに記載の合金めっき方法。
【請求項12】
各可溶性固体陽極間には、可溶性固体陽極相互間に流れる電流を抑制する絶縁壁が配置されていることを特徴とする請求項8から11のいずれかに記載の合金めっき装置。
【請求項13】
電解めっき法にて被めっき対象に合金をめっきする合金めっき装置であって、合金を構成する各金属元素よりそれぞれ構成された可溶性固体陽極が同一のめっき槽内に配置され、標準電極電位の高い金属元素の可溶性固体陽極には相対的に高い電圧の電源が接続され標準電極電位の低い金属元素の可溶性固体陽極には相対的に低い電圧の電源が接続されていることを特徴とする合金めっき装置。
【請求項14】
各可溶性固体陽極の形状および大きさ並びに各可溶性固体陽極と陰極との間に配置される絶縁壁の形状を調整することにより各可溶性固体陽極に流れる電流が調整されることを特徴とする請求項13に記載の合金めっき装置。
【請求項15】
各可溶性固体陽極が複数に分割されていることを特徴とする請求項8から14のいずれかに記載の合金めっき装置。
【請求項16】
陰極を囲むように複数に分割された可溶性固体陽極が配置されていることを特徴とする請求項8から15のいずれかに記載の合金めっき装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−257492(P2006−257492A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−76356(P2005−76356)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】