吊下げ装置
【課題】建造物の外装面を点検、補修を行う作業者を安全に吊下げる、吊下げ装置を提供すること。
【解決手段】複数の略垂直の筋材2が所定間隔で内在するパラペット3に着脱自在に挟着固定される、吊下げ装置1において、挟着固定部5が、パラペット3の上面10に載置されるように本体枠部4に設けられた載置固定部11と、パラペット3を構成する建造物の外側の勾配面12に当接し、該勾配面12の勾配に応じて回動自在となるように本体枠部4に設けられた回動固定部13と、該回動固定部13とパラペット3を介して相対し、該パラペット3の内壁面14に接離自在にその開口部15が内壁面14側を向くように本体枠部4に設けられた取付部材16と、パラペット3の内壁面14と当接し且つパラペット3に内在する複数の筋材2の間隔よりも長尺となるように取付部材16に着脱自在に嵌着保持される固定棒17とを具備してなるものである。
【解決手段】複数の略垂直の筋材2が所定間隔で内在するパラペット3に着脱自在に挟着固定される、吊下げ装置1において、挟着固定部5が、パラペット3の上面10に載置されるように本体枠部4に設けられた載置固定部11と、パラペット3を構成する建造物の外側の勾配面12に当接し、該勾配面12の勾配に応じて回動自在となるように本体枠部4に設けられた回動固定部13と、該回動固定部13とパラペット3を介して相対し、該パラペット3の内壁面14に接離自在にその開口部15が内壁面14側を向くように本体枠部4に設けられた取付部材16と、パラペット3の内壁面14と当接し且つパラペット3に内在する複数の筋材2の間隔よりも長尺となるように取付部材16に着脱自在に嵌着保持される固定棒17とを具備してなるものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建造物に形成されたパラペットに挟着固定され、該建造物の外装面を点検、補修を行うために作業者を吊下げる、吊下げ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建造物に形成されたパラペットに挟着固定され、荷物等を吊下げる方法としては図13に示すように、支持アーム100の前方下側に前部支持部材101が直角に垂下配設されると共に、支持アーム100の後端側に後部支持部材102が摺動移動可能に嵌合配設されて構成されている。そして、前部支持部材101と後部支持部材102で建造物に形成されたパラペット103前後を挟んでその上面に支持アーム101を水平にパラペット103より突出させて位置させ、支持アーム100にワイヤ104を掛渡し、該ワイヤ104にて荷物等を懸垂支持する吊下げ具105がある(例えば特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−81206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述のような従来の吊下げ具105においては、建造物に形成されたパラペット103に挟着固定する際に、前部支持部材101や後部支持部材102がパラペット103と接触する面積が小さいため、懸垂支持する荷物等の重さや、該荷物等を引き上げる時に生じる衝撃により、作業中に吊下げ具105が外れるという問題が生じる可能性がある。また、パラペット103に作用する圧力が大きくなるため、例えば、低層プレハブ住宅等に形成された、所定間隔で筋材が略垂直に内在するようなパラペットにおいては、パラペットの内壁面が破損するという問題が生じる可能性がある。さらに、パラペットを構成する外壁面が勾配面となっている場合には、従来の吊下げ具を該パラペットに取付けることが困難である。また、前部支持部材101の角度を勾配面の勾配に対応させるように変化させ吊下げ具105を取付けたとしても、上述のような問題が生じると共に、作業者を吊上げる最中に、作業者やワイヤ104が前記勾配面の勾配下方に形成されている軒先に接触し、軒先が破損するという問題が生じる可能性がある。
【0005】
この発明は上記のような種々の課題を解決することを目的としてなされたものであって、パラペットを構成する外側面が勾配面となっているパラペットに該パラペットを破損することなく確実に取付けることができ、また、吊下げ作業中に軒先を破損するおそれのない吊下げ装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1記載の吊下げ装置は、建造物の屋上縁部に設けた複数の略垂直の筋材が所定間隔で内在するパラペットに着脱自在に挟着固定される、複数のフレーム片を架構してなる本体枠部に設けられた挟着固定部と、作業者を吊下げるための索条をガイドするガイド部材と、該索条を巻上げるための索条巻上機と、を具備する吊下げ装置において、前記挟着固定部が、前記パラペットの上面に載置されるように前記本体枠部に設けられた載置固定部と、前記パラペットを構成する前記建造物の外側の勾配面に当接し、該勾配面の勾配に応じて回動自在となるように前記本体枠部に設けられた回動固定部と、前記回動固定部と前記パラペットを介して相対し、該パラペットの内壁面に接離自在にその開口部が前記内壁面側を向くように前記本体枠部に設けられた取付部材と、前記パラペットの内壁面と当接し且つ前記パラペットに内在する前記複数の筋材の間隔よりも長尺となるように前記取付部材に着脱自在に嵌着保持される固定棒とを具備してなることを特徴としている。
【0007】
請求項2記載の吊下げ装置は、請求項1の吊下げ装置において、前記回動固定部と可撓体によって連結され勾配面と当接載置する傾斜部と、前記勾配面の勾配下方に形成されている軒先と所定間隔を有するように前記傾斜部の勾配下方に形成された略コの字型の軒先保護部と、を具備してなる軒先保護具が前記回動固定部の勾配下方に設けられることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の吊下げ装置は、挟着固定部における固定棒が、パラペットの内壁面と当接し且つパラペットに内在する複数の筋材の間隔よりも長尺となっている。これにより、吊下げ装置をパラペットに挟着固定した際に、固定棒を少なくとも2以上の筋材に渡って架設することができ、該吊下げ装置がその作業中等にパラペットに及ぼす力を2以上の筋材で支持することができる。また、固定棒が長尺に形成されていることから、その圧力も分散することができるためパラペットの内壁面が破損することもない。そして、吊下げ装置において作業者を吊下げる際に、固定棒には鉛直上方の力が作用する。しかし、固定棒が取付部材に着脱自在に嵌着保持されることで、取付部材と略一体となっているため、前述のように固定棒に鉛直上方の力が作用しても、該固定棒が取付部材から離脱することがなく、吊下げ装置を確実にパラペットに挟着固定することができる。
【0009】
請求項2記載の吊下げ装置は、請求項1の効果に加えて、軒先保護具が前記回動固定部と可撓体によって連結され勾配面と当接載置する傾斜部を具備することにより、作業者を吊下げた際に勾配面に作用する圧力を分散することができ、該勾配面を破損することがない。また、軒先保護具が前記勾配面の勾配下方に形成されている軒先と所定間隔を有するように前記傾斜部の勾配下方に形成された略コの字型の軒先保護部を具備することにより、該軒先保護部が軒先を覆うため、作業者や索条等が軒先と接触することがなく、該軒先の破損を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この発明における吊下げ装置1の最良の実施形態について、以下図1及び図7に基づいて説明する。この実施例の吊下げ装置1は、建造物の屋上縁部に設けた複数の略垂直の筋材2が所定間隔で内在するパラペット3に着脱自在に挟着固定される、複数のフレーム片を架構してなる本体枠部4に設けられた挟着固定部5と、作業者6を吊下げるための索条7をガイドするガイド部材8と、該索条7を巻上げるための索条巻上機9とを具備する吊下げ装置1において、挟着固定部5が、パラペット3の上面10に載置されるように本体枠部4に設けられた載置固定部11と、パラペット3を構成する建造物の外側の勾配面12に当接し、該勾配面12の勾配に応じて回動自在となるように本体枠部4に設けられた回動固定部13と、該回動固定部13とパラペット3を介して相対し、該パラペット3の内壁面14に接離自在にその開口部15が内壁面14側を向くように本体枠部4に設けられた取付部材16と、パラペット3の内壁面14と当接し且つパラペット3に内在する複数の筋材2の間隔よりも長尺となるように取付部材16に着脱自在に嵌着保持される固定棒17とを具備してなるものである。
【0011】
そして、必要に応じて図1に示すように、前述の吊下げ装置1に、前記回動固定部13と可撓体Xによって連結され勾配面12と当接載置する傾斜部18と、前記勾配面12の勾配下方に形成されている軒先19と所定間隔を有するように前記傾斜部18の勾配下方に形成された略コの字型の軒先保護部20とを具備してなる軒先保護具21が、前記回動固定部13の勾配下方に設けられている。
【0012】
前記パラペット3は、図1及び図2に示すように、建造物の屋上縁部に設けた複数の略垂直の筋材2が所定間隔で内在するように形成されている。そして、本願実施例においては、例えば、筋材2に鉄骨フレームを用い、隣接する筋材2同士が、約1m間隔となるように設けられているが、筋材2に用いる材料は木材等の他の材料でもよく、又これらの間隔も、建造物、及びパラペット3の強度に影響がない程度で適宜変更することができる。また、パラペット3は、図6及び図7に示すように筋材2の周囲を、建造物の外側の勾配面12、建物の内側の内壁面14、及び該勾配面12と該内壁面14との間に略水平に形成された上面10に覆われるようにして構成されている。そして、勾配面12が水平面と成す勾配αは、本願実施例のように例えば、図6に示すα=90度となる場合や、図7に示すα=45度となる場合だけでなく、勾配αは適宜変更することができる。
【0013】
前記本体枠部4は、複数のフレーム片を架構してなるものであり、本願実施例においては、図10に示すように、架構部材22と、該架構部材22に取付けられ断面形状が略矩形である係止部23を具備する係止部材24と、該係止部23に着脱自在に係止され取付部材16を支持するための支持棒25とから構成されている。そして、図3及び図4に示すように、架構部材22の上部には、索条7を巻上げるための索条巻上機9が着脱自在に載置されていると共に、作業者6を吊下げるための索条7をガイドするガイド部材8が該架構部材22の幅方向の略中央部に設けられているため、作業者6を容易且つスムーズに昇降することが可能である。また、架構部材22のパラペット3を介して建造物外側には回動固定部13を支持するための回動支持板26が設けられている。
【0014】
そして、係止部材24は、図6及び図7に示すように、その連結部27おいて架構部材22のパラペット3を介して建造物内側に、ボルト28により該架構部材22と連結固定されている。また、連結部27においては長穴29が設けられていることから係止部材24が上下移動可能となっている。そして、係止部材24は、図10に示すように断面形状が略矩形の係止部23を具備しており、略同等の断面形状を有する支持棒25を着脱自在に係止している。そして、吊下げ装置1を使用する際には、係止部材24に回動自在に取付けられた回動棒部材30が溝部31により係止され、さらにボルト32により固定されているため、意に反して支持棒25が係止部材24から離脱することがない。しかし、吊下げ装置1の解体時には回動棒部材30をA方向に回動させることにより、支持棒25を係止部材24から容易に離脱することができる。
【0015】
また、図10に示すように、係止部材24の略中央部には取付片33が設けられており、該取付片33には建造物の屋上面34と当接し、吊下げ装置1を支持するための垂直支持部材35が上下移動可能となるように取付けられている。そして、垂直支持部材35は建造物の屋上面34と接するため、該屋上面34を損傷しないように、例えば窯業系材料からなる当接部36が設けられている。また、当接部36の材料は、これらの材料に限定されるものではなく合成樹脂材料や繊維材料等を適宜使用することができる。そして、垂直支持部材35を構成する棒部37にはネジ山が形成されており、ネジ38を回転させることにより該垂直支持部材35の高さを調節することが可能である。また、棒部37の一端には、回動自在に取付けられた略矩形の握持片39が取付けられているため、棒部37を中心軸とした円周方向に垂直支持部材35を回転することができる。
【0016】
前記載置固定部11は、図6及び図7に示すように、パラペット3の上面10に載置され本体枠部4を構成する架構部材22に設けられている。そして、載置固定部11は、前記垂直支持部材35と共に、吊下げ装置1が及ぼす鉛直下方の力を支持している。また、載置固定部11はパラペット3の上面10と接するため、該パラペット3の上面10を損傷しないように、例えば窯業系材料を使用することができるが、これらの材料に限定されるものではなく合成樹脂材料や繊維材料等を適宜使用することができる。そして、吊下げ装置1を使用する際に、パラペット3の上面10と載置固定部11の間に、さらに、例えば合成樹脂シート等を介在させることで、パラペット3の上面10を損傷することなく該吊下げ装置1の位置をパラペット3の上面10を滑らすように移動させることも可能である。
【0017】
前記回動固定部13は、図6及び図7に示すように、パラペット3を構成する建造物の外側の勾配面12と当接し、該勾配面12の勾配に応じて回動自在となるように本体枠部4に設けられている。そして、回動固定部13は、本願実施例においては、本体枠部4を構成する架構部材22のパラペット3を介して建造物外側に、回動支持板26の支点部41を中心として回動自在に取付けられた回動フレーム42と、該回動フレーム42の下方に取付けられ勾配面12と当接する当接部材43とからなるものである。これにより、図6や図7に示すように、勾配面12の勾配αの大きさが変化した際にも、回動フレーム42が支点部41を中心として回動すると共に、当接部材43も支点部41を中心として回動することで、回動固定部13が勾配面12の勾配に追随することができるのである。そして、本願実施例においては、回動支持板26の所定位置に固定孔44が設けられており、勾配面12の勾配に応じてボルト45により回動固定部13を固定することができる。また、これらの固定孔44の数、及び位置は勾配面12の勾配αに応じて適宜変更可能である。
【0018】
当接部材43が勾配面12と当接する際に、該勾配面12が損傷しないように、当接部材43の勾配面12と当接する側の面に、例えば窯業系材料からなる当接部46が設けられている。また、当接部46の材料は、これらの材料に限定されるものではなく、合成樹脂材料、繊維材料等を適宜使用することができる。さらに、回動固定部13には、軒先保護具21と連結するための結合部47、及び梯子48を取付けるための梯子係止部49及び梯子連結部50が設けられている。そして、回動固定部13に梯子48を取付ける際には、図2に示すように、梯子48の階段部51を梯子係止部49に設けられた凹部に係止した後に、梯子48の最上段の階段部51付近に設けられた連結部52と梯子連結部50とをボルト53によって連結固定するのである。
【0019】
前記取付部材16は、図9に示すように、回動固定部13とパラペット3を介して相対し、該パラペット3の内壁面14に接離自在にその開口部15が内壁面14側を向くように本体枠部4に設けられている。そして、本願実施例においては、図6に示すように、その断面形状がコの字型に形成された部材を用いることが好ましいが、その形状は、固定棒17を嵌着保持できる形状であればこれらの形状に限定されるものではない。また、該取付部材16を構成する棒部54が、本体枠部4を構成する前記支持棒25の両端近傍に該支持棒25を貫通するようにして取付部材16が設けられている。そして、棒部54にはネジ山が形成されており、ネジ55を回転させることにより、取付部材16がパラペット3の内壁面14に接離自在となっている。また、棒部54の一端には、回動自在に取付けられた略矩形の握持片56が取付けられているため、棒部54を中心軸とした円周方向に取付部材16の開口部15を容易に回転することができる。これにより、固定棒17を容易に取付部材16の開口部15に嵌着保持することができるのである。
【0020】
前記固定棒17は、パラペット3の内壁面14と当接し且つパラペット3に内在する複数の筋材2の間隔よりも長尺となるように取付部材16に着脱自在に嵌着保持されている。そして、本願実施例においては、図6及び図7に示すように、固定棒17が内壁面14と当接する際に、該内壁面14が損傷しないように、固定棒17の内壁面14と当接する側の面には、例えばゴム等の弾性を有する合成樹脂材料からなる当接部57が設けられている。さらに、これにより内壁面14と当接部57との間に摩擦力が生じるため、吊下げ装置1がパラペット3に強固に挟着固定され、作業中に該吊下げ装置1が該パラペット3から脱落することがない。また、当接部57の材料は、本願実施例のような合成樹脂材料に限定されるものではなく、その他に窯業系材料、繊維材料等を適宜使用することができる。
【0021】
また、固定棒17は、図1及び図2に示すように、筋材2の間隔よりも長尺に形成されているため、吊下げ装置1をパラペット3に挟着固定した際に、固定棒17を少なくとも2以上の筋材2に渡って架設することができ、該吊下げ装置1がその作業中等にパラペット3に及ぼす力を2以上の筋材2で支持することができる。そして、その圧力も分散することができるためパラペット3の内壁面14が破損することがない。また、吊下げ装置1により作業者6を吊下げる際には、固定棒17には鉛直上方の力が作用するが、該固定棒17は、図10に示すように、固定棒17が取付部材16に着脱自在に嵌着保持され、取付部材16と略一体となっている。これにより、固定棒17が取付部材16から離脱することがなく、吊下げ装置1を確実にパラペット3に挟着固定することができる。
【0022】
そして、以上のような、載置固定部11と、回動固定部13と、取付部材16と、固定棒17とから挟着固定部5が形成され、吊下げ装置1はパラペット3に該挟着固定部5により着脱自在に挟着固定されるのである。
【0023】
前記傾斜部18は、回動固定部13と可撓体によって連結され勾配面と当接載置するように形成されている。そして、傾斜部18は、本願実施例においては、図8に示すように、傾斜部18が勾配面12と当接載置する際に、該勾配面12が損傷しないように、傾斜部18の勾配面12と当接する側の面に、例えば窯業系材料等からなる当接部60が設けられている。また、当接部60の材料は、これらの材料に限定されるものではなく、合成樹脂材料、繊維材料等を適宜使用することができる。これにより、作業者6を吊下げる際に勾配面12に作用する圧力を分散することができ、該勾配面12を破損することがない。また、傾斜部18には、前記回動固定部13と連結するための結合部61が該傾斜部18の勾配上方に設けられており、これらを例えばロープ等の可撓体Xで該回動固定部13の結合部47と連結される。このように、回動固定部13に軒先保護具21を連結することで、該軒先保護具21を改めて軒先に固定することがなく、可撓体Xの撓みによって、自然に傾斜部18が勾配面12と当接載置するため該軒先保護具21の取付けが簡便である。
【0024】
前記軒先保護部20は、図8に示すように、勾配面12の勾配下方に形成されている軒先19と所定間隔を有するように傾斜部18の勾配下方に形成され、その形状は略コの字型となっている。これにより、該軒先保護具21が軒先19を覆うため、作業者6や索条7等が軒先19と接触することがなく、該軒先19の破損を防止することができる。また、軒先保護部20は、本願実施例においては、図5に示すように、梯子48を取付けるための梯子係止部62及び梯子連結部63が設けられており、軒先保護具21に梯子48を取付ける際には、図1に示すように、梯子48の階段部51を梯子係止部62に設けられた凹部に係止した後に、梯子48の最上段の階段部51付近に設けられた連結部52と梯子連結部63とをボルト64によって連結固定されている。さらに、軒先保護部20の上部であって、幅方向の略中央部に索条7をガイドするためのガイド部材65が設けられており、作業者6を吊下げた際に、作業者6の昇降をスムーズに行うことができる。
【0025】
そして、以上のような、傾斜部18と、軒先保護部20とから軒先保護具21が形成され、図8に示すように勾配面12の勾配下方に形成されている軒先19を保護するのである。
【0026】
以下、本願実施例に係る吊下げ装置1の使用法方法について説明する。
【0027】
この吊下げ装置1を、図6及び図7に示すように、建造物の屋上縁部に設けられたパラペット3に挟着固定する際には、まず吊下げ装置1自体を建造物の屋上に運び上げる必要がある。そして、その際には、上述したように、吊下げ装置1は複数の部材から構成されており、また、それらが分割可能となっているため、地上からそれらの分割された複数の部材を、ロープや、梯子等で引上げることが可能であり、その後各部材を組立ててパラペット3に取付けるのである。
【0028】
組立てられた吊下げ装置1は、図6及び図7に示すように、挟着固定部5にパラペット3を介在させ且つ載置固定部11をパラペット3の上面10に載置するようにして、パラペット3に取付けられる。そして、その際には、予め勾配面12の勾配に応じて回動固定部13を回動させておき、その後、該回動固定部13が回動しないようにボルト45により固定するのである。また、載置固定部11と共に、吊下げ装置1が及ぼす鉛直下方の力を支持する垂直支持部材35の高さを、適宜ネジ38を回転させることで、該垂直支持部材35が建造物の屋上面34に当接するように変化させる。そして、挟着固定部5の間隔を、適宜ネジ55を回転させることで変化させ、取付部材16に嵌着固定された固定棒17を、パラペット3の内壁面14に接離自在に移動させ内壁面14に当接させることにより、パラペット3に吊下げ装置1を挟着固定するのである。
【0029】
前述のようにパラペット3に挟着固定された吊下げ装置1において、該パラペット3が、図6に示すように、勾配αが例えばα=90度となる場合には、軒先保護具21を用いることなく吊下げ装置1を使用する。そして、その際には、図2に示すように、索条巻上機9から引出された索条7がカラビナ66等を介して作業者6の結束帯68と連結される。そして、作業者6は前述のように回動固定部13に取付けられた梯子48を伝うようにして、建造物外側へ降り、吊下げ装置1により吊下げられ、建造物の外装の点検や補修等を行うのである。また、その際には、作業者6の安全性を確保するために、その一端が建造物の屋上に固定された親綱67等がカラビナ66等を介して作業者6の結束帯68と連結されている。
【0030】
一方、前述のようにパラペット3に挟着固定された吊下げ装置1において、該パラペット3が、図7に示すように、勾配αが例えばα=45度となる場合には、図1に示すように、回動固定部13の勾配下方に軒先保護具21を設ける。そして、その際には、傾斜部18に設けられた結合部61と、回動固定部13に設けられた結合部47とを可撓体Xで連結するようにして該軒先保護具21を取付ける。また、その際には、パラペット3の上面10から軒先19までの距離に応じて、図8に示すように、軒先保護部20が軒先19を覆うように、適宜可撓体Xの長さを調節する。そして、図1に示すように、索条巻上機9から引出された索条7がカラビナ66等を介して作業者6の結束帯68と連結される。そして、作業者6は前述のように軒先保護部20に取付けられた梯子48を伝うようにして、建造物外側へ降り、吊下げ装置1により吊下げられ、建造物の外装の点検や補修等を行うのである。また、その際には、作業者6の安全性を確保するために、その一端が建造物の屋上に固定された親綱67等がカラビナ66等を介して作業者6の結束帯68と連結されている。
【産業上の利用可能性】
【0031】
この発明の吊下げ装置1は、作業者6を吊下げるだけでなく、例えばH鋼等の建設資材等の昇降にも使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本願実施例における吊下げ装置のパラペットへの取付け図
【図2】本願他の実施例における吊下げ装置のパラペットへの取付け図
【図3】本願他の実施例における吊下げ装置の斜視図
【図4】本願実施例における吊下げ装置の斜視図
【図5】本願実施例における軒先保護具の斜視図
【図6】本願他の実施例における吊下げ装置のパラペットへの取付け断面図
【図7】本願実施例における吊下げ装置のパラペットへの取付け断面図
【図8】本願実施例における軒先保護具の取付け断面図
【図9】本願実施例における吊下げ装置のパラペットへの取付け上視図
【図10】本願実施例における吊下げ装置の背面斜視図
【図11】本願実施例における固定棒分割時の斜視図
【図12】本願実施例における固定棒連結時の斜視図
【図13】従来技術を示す図
【符号の説明】
【0033】
1 吊下げ装置
2 筋材
3 パラペット
4 本体枠部
7 索条
9 索条巻上機
11 載置固定部
12 傾斜面
13 回動固定部
16 取付部材
17 固定棒
18 傾斜部
20 軒先保護部
21 軒先保護具
【技術分野】
【0001】
この発明は、建造物に形成されたパラペットに挟着固定され、該建造物の外装面を点検、補修を行うために作業者を吊下げる、吊下げ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建造物に形成されたパラペットに挟着固定され、荷物等を吊下げる方法としては図13に示すように、支持アーム100の前方下側に前部支持部材101が直角に垂下配設されると共に、支持アーム100の後端側に後部支持部材102が摺動移動可能に嵌合配設されて構成されている。そして、前部支持部材101と後部支持部材102で建造物に形成されたパラペット103前後を挟んでその上面に支持アーム101を水平にパラペット103より突出させて位置させ、支持アーム100にワイヤ104を掛渡し、該ワイヤ104にて荷物等を懸垂支持する吊下げ具105がある(例えば特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−81206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述のような従来の吊下げ具105においては、建造物に形成されたパラペット103に挟着固定する際に、前部支持部材101や後部支持部材102がパラペット103と接触する面積が小さいため、懸垂支持する荷物等の重さや、該荷物等を引き上げる時に生じる衝撃により、作業中に吊下げ具105が外れるという問題が生じる可能性がある。また、パラペット103に作用する圧力が大きくなるため、例えば、低層プレハブ住宅等に形成された、所定間隔で筋材が略垂直に内在するようなパラペットにおいては、パラペットの内壁面が破損するという問題が生じる可能性がある。さらに、パラペットを構成する外壁面が勾配面となっている場合には、従来の吊下げ具を該パラペットに取付けることが困難である。また、前部支持部材101の角度を勾配面の勾配に対応させるように変化させ吊下げ具105を取付けたとしても、上述のような問題が生じると共に、作業者を吊上げる最中に、作業者やワイヤ104が前記勾配面の勾配下方に形成されている軒先に接触し、軒先が破損するという問題が生じる可能性がある。
【0005】
この発明は上記のような種々の課題を解決することを目的としてなされたものであって、パラペットを構成する外側面が勾配面となっているパラペットに該パラペットを破損することなく確実に取付けることができ、また、吊下げ作業中に軒先を破損するおそれのない吊下げ装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1記載の吊下げ装置は、建造物の屋上縁部に設けた複数の略垂直の筋材が所定間隔で内在するパラペットに着脱自在に挟着固定される、複数のフレーム片を架構してなる本体枠部に設けられた挟着固定部と、作業者を吊下げるための索条をガイドするガイド部材と、該索条を巻上げるための索条巻上機と、を具備する吊下げ装置において、前記挟着固定部が、前記パラペットの上面に載置されるように前記本体枠部に設けられた載置固定部と、前記パラペットを構成する前記建造物の外側の勾配面に当接し、該勾配面の勾配に応じて回動自在となるように前記本体枠部に設けられた回動固定部と、前記回動固定部と前記パラペットを介して相対し、該パラペットの内壁面に接離自在にその開口部が前記内壁面側を向くように前記本体枠部に設けられた取付部材と、前記パラペットの内壁面と当接し且つ前記パラペットに内在する前記複数の筋材の間隔よりも長尺となるように前記取付部材に着脱自在に嵌着保持される固定棒とを具備してなることを特徴としている。
【0007】
請求項2記載の吊下げ装置は、請求項1の吊下げ装置において、前記回動固定部と可撓体によって連結され勾配面と当接載置する傾斜部と、前記勾配面の勾配下方に形成されている軒先と所定間隔を有するように前記傾斜部の勾配下方に形成された略コの字型の軒先保護部と、を具備してなる軒先保護具が前記回動固定部の勾配下方に設けられることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の吊下げ装置は、挟着固定部における固定棒が、パラペットの内壁面と当接し且つパラペットに内在する複数の筋材の間隔よりも長尺となっている。これにより、吊下げ装置をパラペットに挟着固定した際に、固定棒を少なくとも2以上の筋材に渡って架設することができ、該吊下げ装置がその作業中等にパラペットに及ぼす力を2以上の筋材で支持することができる。また、固定棒が長尺に形成されていることから、その圧力も分散することができるためパラペットの内壁面が破損することもない。そして、吊下げ装置において作業者を吊下げる際に、固定棒には鉛直上方の力が作用する。しかし、固定棒が取付部材に着脱自在に嵌着保持されることで、取付部材と略一体となっているため、前述のように固定棒に鉛直上方の力が作用しても、該固定棒が取付部材から離脱することがなく、吊下げ装置を確実にパラペットに挟着固定することができる。
【0009】
請求項2記載の吊下げ装置は、請求項1の効果に加えて、軒先保護具が前記回動固定部と可撓体によって連結され勾配面と当接載置する傾斜部を具備することにより、作業者を吊下げた際に勾配面に作用する圧力を分散することができ、該勾配面を破損することがない。また、軒先保護具が前記勾配面の勾配下方に形成されている軒先と所定間隔を有するように前記傾斜部の勾配下方に形成された略コの字型の軒先保護部を具備することにより、該軒先保護部が軒先を覆うため、作業者や索条等が軒先と接触することがなく、該軒先の破損を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この発明における吊下げ装置1の最良の実施形態について、以下図1及び図7に基づいて説明する。この実施例の吊下げ装置1は、建造物の屋上縁部に設けた複数の略垂直の筋材2が所定間隔で内在するパラペット3に着脱自在に挟着固定される、複数のフレーム片を架構してなる本体枠部4に設けられた挟着固定部5と、作業者6を吊下げるための索条7をガイドするガイド部材8と、該索条7を巻上げるための索条巻上機9とを具備する吊下げ装置1において、挟着固定部5が、パラペット3の上面10に載置されるように本体枠部4に設けられた載置固定部11と、パラペット3を構成する建造物の外側の勾配面12に当接し、該勾配面12の勾配に応じて回動自在となるように本体枠部4に設けられた回動固定部13と、該回動固定部13とパラペット3を介して相対し、該パラペット3の内壁面14に接離自在にその開口部15が内壁面14側を向くように本体枠部4に設けられた取付部材16と、パラペット3の内壁面14と当接し且つパラペット3に内在する複数の筋材2の間隔よりも長尺となるように取付部材16に着脱自在に嵌着保持される固定棒17とを具備してなるものである。
【0011】
そして、必要に応じて図1に示すように、前述の吊下げ装置1に、前記回動固定部13と可撓体Xによって連結され勾配面12と当接載置する傾斜部18と、前記勾配面12の勾配下方に形成されている軒先19と所定間隔を有するように前記傾斜部18の勾配下方に形成された略コの字型の軒先保護部20とを具備してなる軒先保護具21が、前記回動固定部13の勾配下方に設けられている。
【0012】
前記パラペット3は、図1及び図2に示すように、建造物の屋上縁部に設けた複数の略垂直の筋材2が所定間隔で内在するように形成されている。そして、本願実施例においては、例えば、筋材2に鉄骨フレームを用い、隣接する筋材2同士が、約1m間隔となるように設けられているが、筋材2に用いる材料は木材等の他の材料でもよく、又これらの間隔も、建造物、及びパラペット3の強度に影響がない程度で適宜変更することができる。また、パラペット3は、図6及び図7に示すように筋材2の周囲を、建造物の外側の勾配面12、建物の内側の内壁面14、及び該勾配面12と該内壁面14との間に略水平に形成された上面10に覆われるようにして構成されている。そして、勾配面12が水平面と成す勾配αは、本願実施例のように例えば、図6に示すα=90度となる場合や、図7に示すα=45度となる場合だけでなく、勾配αは適宜変更することができる。
【0013】
前記本体枠部4は、複数のフレーム片を架構してなるものであり、本願実施例においては、図10に示すように、架構部材22と、該架構部材22に取付けられ断面形状が略矩形である係止部23を具備する係止部材24と、該係止部23に着脱自在に係止され取付部材16を支持するための支持棒25とから構成されている。そして、図3及び図4に示すように、架構部材22の上部には、索条7を巻上げるための索条巻上機9が着脱自在に載置されていると共に、作業者6を吊下げるための索条7をガイドするガイド部材8が該架構部材22の幅方向の略中央部に設けられているため、作業者6を容易且つスムーズに昇降することが可能である。また、架構部材22のパラペット3を介して建造物外側には回動固定部13を支持するための回動支持板26が設けられている。
【0014】
そして、係止部材24は、図6及び図7に示すように、その連結部27おいて架構部材22のパラペット3を介して建造物内側に、ボルト28により該架構部材22と連結固定されている。また、連結部27においては長穴29が設けられていることから係止部材24が上下移動可能となっている。そして、係止部材24は、図10に示すように断面形状が略矩形の係止部23を具備しており、略同等の断面形状を有する支持棒25を着脱自在に係止している。そして、吊下げ装置1を使用する際には、係止部材24に回動自在に取付けられた回動棒部材30が溝部31により係止され、さらにボルト32により固定されているため、意に反して支持棒25が係止部材24から離脱することがない。しかし、吊下げ装置1の解体時には回動棒部材30をA方向に回動させることにより、支持棒25を係止部材24から容易に離脱することができる。
【0015】
また、図10に示すように、係止部材24の略中央部には取付片33が設けられており、該取付片33には建造物の屋上面34と当接し、吊下げ装置1を支持するための垂直支持部材35が上下移動可能となるように取付けられている。そして、垂直支持部材35は建造物の屋上面34と接するため、該屋上面34を損傷しないように、例えば窯業系材料からなる当接部36が設けられている。また、当接部36の材料は、これらの材料に限定されるものではなく合成樹脂材料や繊維材料等を適宜使用することができる。そして、垂直支持部材35を構成する棒部37にはネジ山が形成されており、ネジ38を回転させることにより該垂直支持部材35の高さを調節することが可能である。また、棒部37の一端には、回動自在に取付けられた略矩形の握持片39が取付けられているため、棒部37を中心軸とした円周方向に垂直支持部材35を回転することができる。
【0016】
前記載置固定部11は、図6及び図7に示すように、パラペット3の上面10に載置され本体枠部4を構成する架構部材22に設けられている。そして、載置固定部11は、前記垂直支持部材35と共に、吊下げ装置1が及ぼす鉛直下方の力を支持している。また、載置固定部11はパラペット3の上面10と接するため、該パラペット3の上面10を損傷しないように、例えば窯業系材料を使用することができるが、これらの材料に限定されるものではなく合成樹脂材料や繊維材料等を適宜使用することができる。そして、吊下げ装置1を使用する際に、パラペット3の上面10と載置固定部11の間に、さらに、例えば合成樹脂シート等を介在させることで、パラペット3の上面10を損傷することなく該吊下げ装置1の位置をパラペット3の上面10を滑らすように移動させることも可能である。
【0017】
前記回動固定部13は、図6及び図7に示すように、パラペット3を構成する建造物の外側の勾配面12と当接し、該勾配面12の勾配に応じて回動自在となるように本体枠部4に設けられている。そして、回動固定部13は、本願実施例においては、本体枠部4を構成する架構部材22のパラペット3を介して建造物外側に、回動支持板26の支点部41を中心として回動自在に取付けられた回動フレーム42と、該回動フレーム42の下方に取付けられ勾配面12と当接する当接部材43とからなるものである。これにより、図6や図7に示すように、勾配面12の勾配αの大きさが変化した際にも、回動フレーム42が支点部41を中心として回動すると共に、当接部材43も支点部41を中心として回動することで、回動固定部13が勾配面12の勾配に追随することができるのである。そして、本願実施例においては、回動支持板26の所定位置に固定孔44が設けられており、勾配面12の勾配に応じてボルト45により回動固定部13を固定することができる。また、これらの固定孔44の数、及び位置は勾配面12の勾配αに応じて適宜変更可能である。
【0018】
当接部材43が勾配面12と当接する際に、該勾配面12が損傷しないように、当接部材43の勾配面12と当接する側の面に、例えば窯業系材料からなる当接部46が設けられている。また、当接部46の材料は、これらの材料に限定されるものではなく、合成樹脂材料、繊維材料等を適宜使用することができる。さらに、回動固定部13には、軒先保護具21と連結するための結合部47、及び梯子48を取付けるための梯子係止部49及び梯子連結部50が設けられている。そして、回動固定部13に梯子48を取付ける際には、図2に示すように、梯子48の階段部51を梯子係止部49に設けられた凹部に係止した後に、梯子48の最上段の階段部51付近に設けられた連結部52と梯子連結部50とをボルト53によって連結固定するのである。
【0019】
前記取付部材16は、図9に示すように、回動固定部13とパラペット3を介して相対し、該パラペット3の内壁面14に接離自在にその開口部15が内壁面14側を向くように本体枠部4に設けられている。そして、本願実施例においては、図6に示すように、その断面形状がコの字型に形成された部材を用いることが好ましいが、その形状は、固定棒17を嵌着保持できる形状であればこれらの形状に限定されるものではない。また、該取付部材16を構成する棒部54が、本体枠部4を構成する前記支持棒25の両端近傍に該支持棒25を貫通するようにして取付部材16が設けられている。そして、棒部54にはネジ山が形成されており、ネジ55を回転させることにより、取付部材16がパラペット3の内壁面14に接離自在となっている。また、棒部54の一端には、回動自在に取付けられた略矩形の握持片56が取付けられているため、棒部54を中心軸とした円周方向に取付部材16の開口部15を容易に回転することができる。これにより、固定棒17を容易に取付部材16の開口部15に嵌着保持することができるのである。
【0020】
前記固定棒17は、パラペット3の内壁面14と当接し且つパラペット3に内在する複数の筋材2の間隔よりも長尺となるように取付部材16に着脱自在に嵌着保持されている。そして、本願実施例においては、図6及び図7に示すように、固定棒17が内壁面14と当接する際に、該内壁面14が損傷しないように、固定棒17の内壁面14と当接する側の面には、例えばゴム等の弾性を有する合成樹脂材料からなる当接部57が設けられている。さらに、これにより内壁面14と当接部57との間に摩擦力が生じるため、吊下げ装置1がパラペット3に強固に挟着固定され、作業中に該吊下げ装置1が該パラペット3から脱落することがない。また、当接部57の材料は、本願実施例のような合成樹脂材料に限定されるものではなく、その他に窯業系材料、繊維材料等を適宜使用することができる。
【0021】
また、固定棒17は、図1及び図2に示すように、筋材2の間隔よりも長尺に形成されているため、吊下げ装置1をパラペット3に挟着固定した際に、固定棒17を少なくとも2以上の筋材2に渡って架設することができ、該吊下げ装置1がその作業中等にパラペット3に及ぼす力を2以上の筋材2で支持することができる。そして、その圧力も分散することができるためパラペット3の内壁面14が破損することがない。また、吊下げ装置1により作業者6を吊下げる際には、固定棒17には鉛直上方の力が作用するが、該固定棒17は、図10に示すように、固定棒17が取付部材16に着脱自在に嵌着保持され、取付部材16と略一体となっている。これにより、固定棒17が取付部材16から離脱することがなく、吊下げ装置1を確実にパラペット3に挟着固定することができる。
【0022】
そして、以上のような、載置固定部11と、回動固定部13と、取付部材16と、固定棒17とから挟着固定部5が形成され、吊下げ装置1はパラペット3に該挟着固定部5により着脱自在に挟着固定されるのである。
【0023】
前記傾斜部18は、回動固定部13と可撓体によって連結され勾配面と当接載置するように形成されている。そして、傾斜部18は、本願実施例においては、図8に示すように、傾斜部18が勾配面12と当接載置する際に、該勾配面12が損傷しないように、傾斜部18の勾配面12と当接する側の面に、例えば窯業系材料等からなる当接部60が設けられている。また、当接部60の材料は、これらの材料に限定されるものではなく、合成樹脂材料、繊維材料等を適宜使用することができる。これにより、作業者6を吊下げる際に勾配面12に作用する圧力を分散することができ、該勾配面12を破損することがない。また、傾斜部18には、前記回動固定部13と連結するための結合部61が該傾斜部18の勾配上方に設けられており、これらを例えばロープ等の可撓体Xで該回動固定部13の結合部47と連結される。このように、回動固定部13に軒先保護具21を連結することで、該軒先保護具21を改めて軒先に固定することがなく、可撓体Xの撓みによって、自然に傾斜部18が勾配面12と当接載置するため該軒先保護具21の取付けが簡便である。
【0024】
前記軒先保護部20は、図8に示すように、勾配面12の勾配下方に形成されている軒先19と所定間隔を有するように傾斜部18の勾配下方に形成され、その形状は略コの字型となっている。これにより、該軒先保護具21が軒先19を覆うため、作業者6や索条7等が軒先19と接触することがなく、該軒先19の破損を防止することができる。また、軒先保護部20は、本願実施例においては、図5に示すように、梯子48を取付けるための梯子係止部62及び梯子連結部63が設けられており、軒先保護具21に梯子48を取付ける際には、図1に示すように、梯子48の階段部51を梯子係止部62に設けられた凹部に係止した後に、梯子48の最上段の階段部51付近に設けられた連結部52と梯子連結部63とをボルト64によって連結固定されている。さらに、軒先保護部20の上部であって、幅方向の略中央部に索条7をガイドするためのガイド部材65が設けられており、作業者6を吊下げた際に、作業者6の昇降をスムーズに行うことができる。
【0025】
そして、以上のような、傾斜部18と、軒先保護部20とから軒先保護具21が形成され、図8に示すように勾配面12の勾配下方に形成されている軒先19を保護するのである。
【0026】
以下、本願実施例に係る吊下げ装置1の使用法方法について説明する。
【0027】
この吊下げ装置1を、図6及び図7に示すように、建造物の屋上縁部に設けられたパラペット3に挟着固定する際には、まず吊下げ装置1自体を建造物の屋上に運び上げる必要がある。そして、その際には、上述したように、吊下げ装置1は複数の部材から構成されており、また、それらが分割可能となっているため、地上からそれらの分割された複数の部材を、ロープや、梯子等で引上げることが可能であり、その後各部材を組立ててパラペット3に取付けるのである。
【0028】
組立てられた吊下げ装置1は、図6及び図7に示すように、挟着固定部5にパラペット3を介在させ且つ載置固定部11をパラペット3の上面10に載置するようにして、パラペット3に取付けられる。そして、その際には、予め勾配面12の勾配に応じて回動固定部13を回動させておき、その後、該回動固定部13が回動しないようにボルト45により固定するのである。また、載置固定部11と共に、吊下げ装置1が及ぼす鉛直下方の力を支持する垂直支持部材35の高さを、適宜ネジ38を回転させることで、該垂直支持部材35が建造物の屋上面34に当接するように変化させる。そして、挟着固定部5の間隔を、適宜ネジ55を回転させることで変化させ、取付部材16に嵌着固定された固定棒17を、パラペット3の内壁面14に接離自在に移動させ内壁面14に当接させることにより、パラペット3に吊下げ装置1を挟着固定するのである。
【0029】
前述のようにパラペット3に挟着固定された吊下げ装置1において、該パラペット3が、図6に示すように、勾配αが例えばα=90度となる場合には、軒先保護具21を用いることなく吊下げ装置1を使用する。そして、その際には、図2に示すように、索条巻上機9から引出された索条7がカラビナ66等を介して作業者6の結束帯68と連結される。そして、作業者6は前述のように回動固定部13に取付けられた梯子48を伝うようにして、建造物外側へ降り、吊下げ装置1により吊下げられ、建造物の外装の点検や補修等を行うのである。また、その際には、作業者6の安全性を確保するために、その一端が建造物の屋上に固定された親綱67等がカラビナ66等を介して作業者6の結束帯68と連結されている。
【0030】
一方、前述のようにパラペット3に挟着固定された吊下げ装置1において、該パラペット3が、図7に示すように、勾配αが例えばα=45度となる場合には、図1に示すように、回動固定部13の勾配下方に軒先保護具21を設ける。そして、その際には、傾斜部18に設けられた結合部61と、回動固定部13に設けられた結合部47とを可撓体Xで連結するようにして該軒先保護具21を取付ける。また、その際には、パラペット3の上面10から軒先19までの距離に応じて、図8に示すように、軒先保護部20が軒先19を覆うように、適宜可撓体Xの長さを調節する。そして、図1に示すように、索条巻上機9から引出された索条7がカラビナ66等を介して作業者6の結束帯68と連結される。そして、作業者6は前述のように軒先保護部20に取付けられた梯子48を伝うようにして、建造物外側へ降り、吊下げ装置1により吊下げられ、建造物の外装の点検や補修等を行うのである。また、その際には、作業者6の安全性を確保するために、その一端が建造物の屋上に固定された親綱67等がカラビナ66等を介して作業者6の結束帯68と連結されている。
【産業上の利用可能性】
【0031】
この発明の吊下げ装置1は、作業者6を吊下げるだけでなく、例えばH鋼等の建設資材等の昇降にも使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本願実施例における吊下げ装置のパラペットへの取付け図
【図2】本願他の実施例における吊下げ装置のパラペットへの取付け図
【図3】本願他の実施例における吊下げ装置の斜視図
【図4】本願実施例における吊下げ装置の斜視図
【図5】本願実施例における軒先保護具の斜視図
【図6】本願他の実施例における吊下げ装置のパラペットへの取付け断面図
【図7】本願実施例における吊下げ装置のパラペットへの取付け断面図
【図8】本願実施例における軒先保護具の取付け断面図
【図9】本願実施例における吊下げ装置のパラペットへの取付け上視図
【図10】本願実施例における吊下げ装置の背面斜視図
【図11】本願実施例における固定棒分割時の斜視図
【図12】本願実施例における固定棒連結時の斜視図
【図13】従来技術を示す図
【符号の説明】
【0033】
1 吊下げ装置
2 筋材
3 パラペット
4 本体枠部
7 索条
9 索条巻上機
11 載置固定部
12 傾斜面
13 回動固定部
16 取付部材
17 固定棒
18 傾斜部
20 軒先保護部
21 軒先保護具
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物の屋上縁部に設けた複数の略垂直の筋材が所定間隔で内在するパラペットに着脱自在に挟着固定部によって挟着固定される、複数のフレーム片を架構してなる本体枠部に設けられた挟着固定部と、作業者を吊下げるための索条をガイドするガイド部材と、該索条を巻上げるための索条巻上機と、を具備する吊下げ装置において、
前記挟着固定部が、
前記パラペットの上面に載置されるように前記本体枠部に設けられた載置固定部と、
前記パラペットを構成する前記建造物の外側の勾配面に当接し、該勾配面の勾配に応じて回動自在となるように前記本体枠部に設けられた回動固定部と、
前記回動固定部と前記パラペットを介して相対し、該パラペットの内壁面に接離自在にその開口部が前記内壁面側を向くように前記本体枠部に設けられた取付部材と、
前記パラペットの内壁面と当接し且つ前記パラペットに内在する前記複数の筋材の間隔よりも長尺となるように前記取付部材に着脱自在に嵌着保持される固定棒と、
を具備してなることを特徴とする吊下げ装置。
【請求項2】
請求項1の吊下げ装置において、
前記回動固定部と可撓体によって連結され勾配面と当接載置する傾斜部と、
前記勾配面の勾配下方に形成されている軒先と所定間隔を有するように前記傾斜部の勾配下方に形成された略コの字型の軒先保護部と、
を具備してなる軒先保護具が前記回動固定部の勾配下方に設けられることを特徴とする吊下げ装置。
【請求項1】
建造物の屋上縁部に設けた複数の略垂直の筋材が所定間隔で内在するパラペットに着脱自在に挟着固定部によって挟着固定される、複数のフレーム片を架構してなる本体枠部に設けられた挟着固定部と、作業者を吊下げるための索条をガイドするガイド部材と、該索条を巻上げるための索条巻上機と、を具備する吊下げ装置において、
前記挟着固定部が、
前記パラペットの上面に載置されるように前記本体枠部に設けられた載置固定部と、
前記パラペットを構成する前記建造物の外側の勾配面に当接し、該勾配面の勾配に応じて回動自在となるように前記本体枠部に設けられた回動固定部と、
前記回動固定部と前記パラペットを介して相対し、該パラペットの内壁面に接離自在にその開口部が前記内壁面側を向くように前記本体枠部に設けられた取付部材と、
前記パラペットの内壁面と当接し且つ前記パラペットに内在する前記複数の筋材の間隔よりも長尺となるように前記取付部材に着脱自在に嵌着保持される固定棒と、
を具備してなることを特徴とする吊下げ装置。
【請求項2】
請求項1の吊下げ装置において、
前記回動固定部と可撓体によって連結され勾配面と当接載置する傾斜部と、
前記勾配面の勾配下方に形成されている軒先と所定間隔を有するように前記傾斜部の勾配下方に形成された略コの字型の軒先保護部と、
を具備してなる軒先保護具が前記回動固定部の勾配下方に設けられることを特徴とする吊下げ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−45363(P2008−45363A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−223899(P2006−223899)
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【Fターム(参考)】
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