説明

吊下搬送装置

【課題】搬送用走行体から昇降自在に吊り下げられた昇降体の下側に荷支持用ハンガーが設けられた吊下搬送装置において、空の荷支持用ハンガーの移動空間下の床面上利用効率を高める。
【解決手段】搬送用走行体5から昇降自在に吊り下げられた昇降体14の下側に荷支持用ハンガー33が設けられた吊下搬送装置であって、前記荷支持用ハンガー33は、その下端荷支持具35a,35bにより前記昇降体14の下側で荷を支持できる全高伸長状態と、前記昇降体14の下側に下端荷支持具35a,35bが接近する全高縮小状態とに切り換え可能に垂直伸縮自在に構成され、この両状態に切り換えるための荷支持用ハンガー伸縮駆動手段36が併設された構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送用走行体から昇降自在に吊り下げられた昇降体の下側に荷支持用ハンガーが設けられた吊下搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の吊下搬送装置は、荷支持用ハンガーに対する被搬送物の積み下ろし時に搬送用走行体から昇降体を降下させて荷支持用ハンガーを被搬送物の積み下ろし作業レベルまで下げ、荷支持用ハンガーに積載した被搬送物を搬送するときは、昇降体を上昇限高さまで上昇させて荷支持用ハンガーを搬送用走行体の直下の搬送レベルまで上げておくものである。
【0003】
このような吊下搬送装置において、被搬送物を搬送する搬送経路と荷支持用ハンガーが空の状態で搬送用走行体が走行するリターン経路とを、搬送用走行体の走行レベルを変えないで並列配置させることができると、特許文献1で開示されるように、リターン経路を搬送経路の上側に配置させる場合よりも、両経路をつなぐターン経路を単純に水平のターン経路として構成できるので、搬送用走行体の推進機構に関係なくターン経路の実施が容易である。
【特許文献1】特開2003−341818
【0004】
しかしながら、リターン経路においても単に空の荷支持用ハンガーを搬送レベルまで吊り上げておくだけでは、リターン経路における空の荷支持用ハンガーの移動空間の下端レベルが搬送経路における荷支持用ハンガーの移動空間の下端レベルと同一になり、リターン経路における空の荷支持用ハンガーの移動空間下の床面上利用効率を高めることができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで荷支持用ハンガーが空のときは、その下端レベルを昇降体に対して更に上昇させることができるように構成することが考えられるが、例えば特許文献1に記載されているような構成、即ち、空の荷支持用ハンガーを後方に傾動させて、当該荷支持用ハンガーの下端レベルを上げる構成を採用したのでは、搬送経路において被搬送物を荷支持用ハンガーに積載した状態での走行時に当該荷支持用ハンガーが前後に揺れ動かないように確実にロックする必要があるだけでなく、空の荷支持用ハンガーを含む搬送用走行体の走行方向の全長が増大し、ストレージなどにも悪影響を及ぼす結果となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記のような従来の問題点を解消し得る吊下搬送装置を提供することを目的とするものであって、その手段を後述する実施形態の参照符号を付して示すと、搬送用走行体5から昇降自在に吊り下げられた昇降体14の下側に荷支持用ハンガー33が設けられた吊下搬送装置であって、前記荷支持用ハンガー33は、その下端荷支持具35a,35bにより前記昇降体14の下側で荷を支持できる全高伸長状態と、前記昇降体14の下側に下端荷支持具35a,35bが接近する全高縮小状態とに切り換え可能に垂直伸縮自在に構成され、この両状態に切り換えるための荷支持用ハンガー伸縮駆動手段36が併設された構成となっている。
【0007】
上記構成の本発明を実施するについて、具体的には請求項2に記載のように、前記荷支持用ハンガー33の下端荷支持具35a,35bは、前記昇降体14に支持されたハンガー本体34a,34bに設けられた昇降ガイド39a,39bによって直線的に昇降可能に案内される昇降ロッド40a,40bの下端に支持し、前記荷支持用ハンガー伸縮駆動手段36は、ハンガー本体34a,34bと荷支持具35a,35bとの間に介装された電動伸縮シリンダー42によって構成することができる。
【0008】
また、請求項3に記載のように、前記荷支持用ハンガー33のハンガー本体34a,34bは、前記昇降体14に対し開閉自在に左右一対並設し、各ハンガー本体34a,34bごとに前記荷支持具35a,35bと荷支持用ハンガー伸縮駆動手段36とを設けることができる。
【発明の効果】
【0009】
上記構成の本発明に係る吊下搬送装置によれば、被搬送物の積み下ろしに際しては、搬送用走行体に対して昇降体を降下させて荷支持用ハンガーを被搬送物の積み下ろしレベルまで下げ、積み込んだ被搬送物を搬送するときは、搬送用走行体に対して昇降体を上昇させて荷支持用ハンガーを搬送レベルまで上げておくことができるのであるが、荷支持用ハンガーが空の状態で搬送用走行体を例えばリターン経路において走行させるときは、当該空の荷支持用ハンガーを、昇降体の下側に下端荷支持具が接近する全高縮小状態となるように荷支持用ハンガー伸縮駆動手段により垂直に縮小させ、空の荷支持用ハンガーの移動空間の下端レベルを上げておくことができる。
【0010】
従って、搬送用走行体のリターン経路など、荷支持用ハンガーが空の状態で搬送用走行体が走行する経路下の床上空間の利用効率を高めることができるのであるが、特に本発明の構成によれば、荷支持用ハンガーが垂直に伸縮するものであって、当該ハンガーの全高を縮小させても当該ハンガーを含む搬送用走行体の全長が長くなることはなく、ストレージなどに悪影響が及ぶことがない。また、荷支持用ハンガーが垂直に伸縮するものであって、当該ハンガーに走行方向の前後に揺動する関節部を設ける必要がなく、当該荷支持用ハンガーは走行方向に関して剛構造に構成することができ、自動車ボディなどの重量物を搬送する搬送装置としても、当該ハンガーの前後方向の揺れ動きを止めるロック手段なども不要であり、頑丈で安全性の高い構造とすることができる。
【0011】
尚、本発明装置を実施する場合には、請求項2や請求項3に記載の構成を採用することにより、正面視L字形の左右片持ち構造のハンガーや左右に開閉する正面視門形のハンガーなどとして簡単容易に実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明の具体的実施例を添付図に基づいて説明すると、図1及び図2において、1は搬送経路、2はリターン経路を示し、両経路1,2は、図2に示すように各経路1,2を構成するガイドレール3,4が同一レベルで隣り合うように並設されている。図示省略しているが、両経路1,2は無端循環経路を形成するようにつながっており、所要台数の搬送用走行体5を備えている。
【0013】
各搬送用走行体5は如何なる構造のものでも良いが、図示の実施形態に示される各搬送用走行体5は、本体6と当該本体6の前後両端部を吊り下げるロードトロリー7,8、前側ロードトロリー7に連結杆11を介して連結されたパワートロリー9、及び後側ロードトロリー8に連結杆12を介して連結されたフリートロリー10から構成されたもので、各トロリー7〜10がガイドレール3,4に支持され、パワートロリー9が備えるモーター駆動のパワーホイール13の回転駆動により、搬送用走行体5がガイドレール3,4に沿って自走する。
【0014】
搬送用走行体5には昇降体14がパンタグラフ機構15によって昇降自在に吊り下げられると共に、昇降駆動手段16が併設されている。パンタグラフ機構15は、昇降体14が水平姿勢を保って垂直に昇降移動するように規制するもので、搬送用走行体5の本体6と昇降体14との間に左右一対の互いに連動連結されたパンタグラフリンク17a,17bを、図5に示すように、上下両端の前側(または後ろ側)のリンク端を同心状の左右水平支軸18,19で軸支すると共に上下両端の後ろ側(または前側)のリンク端に同心状に軸支したローラー20,21をスライドガイド22,23を介して前後方向移動自在に支承して構成している。昇降駆動手段16は、昇降体14の四隅を吊り下げるチエン24a〜24dを搬送用走行体5の本体6側に軸支された案内輪25a〜25dを経由させてモーター26で一体駆動される4連駆動輪27に掛け渡し、搬送用走行体5の本体6側に係止された各チエン24a〜24dの遊端と4連駆動輪27との間の部分を昇降テークアップ手段28で常に緊張させておくように構成したものである。昇降テークアップ手段28は、重力で降下方向に付勢された重錘部29に軸支された昇降4連案内輪30,31と、両4連案内輪30,31間の上方位置で搬送用走行体5の本体6側に軸支された位置固定4連案内輪32とから構成されている。
【0015】
従って、4連駆動輪27をモーター26でチエン巻き上げ方向に正転駆動することにより、各チエン24a〜24dが巻き上げられて昇降体14が上昇する。このとき4連駆動輪27からの各チエン24a〜24dの巻き上げ量に応じて昇降テークアップ手段28の重錘部29に作用する付勢力で昇降4連案内輪30,31が降下し、4連駆動輪27から遊端までの各チエン24a〜24dが一定張力に保たれる。昇降体14を降下させるときは、4連駆動輪27をモーター26でチエン繰り出し方向に逆転駆動し、昇降テークアップ手段28側から各チエン24a〜24dを繰り出して、重力により昇降体14を降下させることができる。このとき、昇降テークアップ手段28の重錘部29は上昇する。
【0016】
上記のように搬送用走行体5に対して昇降移動させることができる昇降体14には、その下側に荷支持用ハンガー33が吊り下げられている。この荷支持用ハンガー33は開閉自在な正面視門形構造のもので、左右一対のハンガー本体34a,34bと左右一対の荷支持具35a,35b、及び左右一対の伸縮駆動手段36から構成されている。左右一対のハンガー本体34a,34bのそれぞれは、昇降体14の左右両側辺に支承され且つそれぞれモーター37により正逆回転駆動される前後方向水平支軸38に上端部が固着され、当該ハンガー本体34a,34bの前後両側辺には、筒状の昇降ガイド39a,39bによって直線的に昇降可能に案内される前後一対の昇降ロッド40a,40bが設けられている。左右一対の荷支持具35a,35bは、それぞれの前後両端部が前記前後一対の昇降ロッド40a,40bの下端に固着されて、ハンガー本体34a,34bに対し昇降自在に支持されており、それぞれ内向きに突出する前後一対の荷支持部41を備えている。左右一対の伸縮駆動手段36は、各ハンガー本体34a,34bとこれらに支持された荷支持具35a,35bとの間に介装された電動伸縮シリンダー42によって構成されている。尚、電動伸縮シリンダー42は、ハンガー本体34a,34b側に上端部が軸支連結されたシリンダー本体42aと当該シリンダー本体42aに対し昇降自在に内装され且つ下端が荷支持具35a,35b側に軸支連結された昇降杆42b、及び昇降杆42bを昇降させるネジ機構を駆動するモーター42cから構成されている。
【0017】
上記構成の荷支持用ハンガー33は、モーター37により前後方向水平支軸38を正逆回転駆動することにより、左右一対の荷支持具35a,35bをハンガー本体34a,34bと共に開閉することができる。また、電動伸縮シリンダー42の縮小駆動によりハンガー本体34a,34bに対して荷支持具35a,35bを上昇させることにより、図1B及び図2の左側のリターン経路2で示すように、荷支持用ハンガー33を、荷支持具35a,35bが昇降体14の下側に接近する全高縮小状態にしたり、逆に電動伸縮シリンダー41の伸長駆動によりハンガー本体34a,34bに対して荷支持具35a,35bを下降させることにより、図1A及び図2の右側の搬送経路1で示すように、荷支持用ハンガー33を、荷支持具35a,35bにより昇降体14の下側で被搬送物Wを支持できる全高伸長状態とすることができる。
【0018】
以上のように構成された吊下搬送装置において、被搬送物Wを搬送するときは、搬送経路1の始端部などに設定された被搬送物積み込み位置において搬送用走行体5を停止させ、図3及び図4に示すように、昇降駆動手段16を稼働させ、昇降体14をパンタグラフ機構15により水平姿勢を保たせながら垂直に降下させ、荷支持用ハンガー33を被搬送物積み下ろしレベルまで降下させる。荷支持用ハンガー33に対する被搬送物Wの積み込みは、図4に仮想線で示すように、全高伸長状態にある荷支持用ハンガー33の左右一対の荷支持具35a,35bをハンガー本体34a,34bと共に昇降体14に対して左右外側に開動させ、係る状態で両荷支持具35a,35bによる支持レベルよりも高いレベルで荷支持用ハンガー33の内側所定位置に被搬送物Wを搬入させ、次に左右一対の荷支持具35a,35bをハンガー本体34a,34bと共に内側に閉動させ、両荷支持具35a,35bの荷支持部41を被搬送物Wの左右両側辺の下側に進入させる。この後、昇降駆動手段16を稼働させ、昇降体14をパンタグラフ機構15により水平姿勢を保たせながら垂直に上昇させることにより、左右一対の荷支持具35a,35bで被搬送物Wを掬い上げることができる。
【0019】
荷支持用ハンガー33に被搬送物Wを積み込んだならば、昇降駆動手段16により昇降体14を更に上昇させ、図1A及び図2の右側に示すように、荷支持用ハンガー33を上昇限位置まで上昇させた状態で搬送用走行体5を搬送経路1に沿って自走させることにより、当該搬送経路1中の目的場所まで被搬送物Wを搬送することができる。被搬送物Wを目的場所で下ろす作業は、上記の積み込み作業時とは逆の手順で行えることは明らかである。
【0020】
被搬送物Wを降ろして荷支持用ハンガー33が空になった状態の搬送用走行体5がリターン経路2を走行するときは、図1B及び図2の左側に示すように、上記のように上昇限位置まで上昇させた状態の荷支持用ハンガー33を左右一対の伸縮駆動手段36により全高伸長状態から全高縮小状態に切り換える。即ち、両伸縮駆動手段36の電動伸縮シリンダー42をそれぞれ縮小方向に稼働させ、荷支持具35a,35bをそれぞれハンガー本体34a,34bに対して上昇限位置まで上昇させる。このとき各荷支持具35a,35bは、昇降ガイド39a,39bに対する昇降ロッド40a,40bの直線的な上昇運動により、水平姿勢を保って垂直に上昇することになる。
【0021】
上記のようにして上昇限位置まで上昇させた状態の荷支持用ハンガー33の全高を縮小させることにより、ガイドレール4と荷支持用ハンガー33の下端との間の垂直距離が当該荷支持用ハンガー33で被搬送物Wを支持して搬送している状態よりも短くなる。従って図2に示すように、並列状態で架設される搬送経路1のガイドレール3とリターン経路2のガイドレール4とを共通の水平梁材43に支持させた状態であっても、リターン経路2における荷支持用ハンガー33の移動空間の下側の床上空間高さを高くすることができ、当該リターン経路2における荷支持用ハンガー33の移動空間の下側に点検用通路を構成する床部材44を架設する場合でも、リターン経路2の下側の床上空間の利用効率を高めることができる。前記床部材44は、その左右両側辺が安全手摺り枠45a,45bを介して前記ガイドレール3,4を支持する水平梁材43に吊り下げられている。
【0022】
尚、本発明は、正面視でL字形の片持ち構造の荷支持用ハンガーを備えた搬送装置に対しても実施することができる。また、昇降体14から昇降自在に吊り下げられる荷支持用ハンガー33の揺れ動きを防止するパンタグラフ機構15を設けたが、場合によっては、パンタグラフ機構15などの荷支持用ハンガー揺れ動き防止手段は省くこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】A図は搬送経路での搬送状態を示す側面図、B図はリターン経路での空搬送用走行体の走行状態を示す一部切欠き側面図である。
【図2】並設された搬送経路とリターン経路とを示す正面図である。
【図3】被搬送物積み下ろし時の状態を示す側面図である。
【図4】同上正面図である。
【図5】昇降体の昇降機構を説明する概略側面図である。
【図6】荷支持用ハンガーの構成を説明する概略側面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 搬送経路
2 リターン経路
3,4 ガイドレール
5 搬送用走行体
14 昇降体
15 パンタグラフ機構
16 昇降駆動手段
17a,17b パンタグラフリンク
24a〜24d チエン
26 モーター
27 4連駆動輪
28 昇降テークアップ手段
33 荷支持用ハンガー
34a,34b ハンガー本体
35a,35b 荷支持具
36 伸縮駆動手段
37 ハンガー開閉用モーター
39a,39b昇降ガイド
40a,40b 昇降ロッド
41 荷支持部
42 電動伸縮シリンダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送用走行体から昇降自在に吊り下げられた昇降体の下側に荷支持用ハンガーが設けられた吊下搬送装置であって、前記荷支持用ハンガーは、その下端荷支持具により前記昇降体の下側で荷を支持できる全高伸長状態と、前記昇降体の下側に下端荷支持具が接近する全高縮小状態とに切り換え可能に垂直伸縮自在に構成され、この両状態に切り換えるための荷支持用ハンガー伸縮駆動手段が併設されている、吊下搬送装置。
【請求項2】
前記荷支持用ハンガーの下端荷支持具は、前記昇降体に支持されたハンガー本体に設けられた昇降ガイドによって直線的に昇降可能に案内される昇降ロッドの下端に支持され、前記荷支持用ハンガー伸縮駆動手段は、ハンガー本体と荷支持具との間に介装された電動伸縮シリンダーによって構成されている、請求項1に記載の吊下搬送装置。
【請求項3】
前記荷支持用ハンガーのハンガー本体は、前記昇降体に対し開閉自在に左右一対並設され、各ハンガー本体ごとに前記荷支持具と荷支持用ハンガー伸縮駆動手段とが設けられている、請求項1または2に記載の吊下搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−176085(P2006−176085A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−374066(P2004−374066)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(000003643)株式会社ダイフク (1,209)
【Fターム(参考)】