説明

同一の回線から複数の発信先に対して同時に発信可能とした構内交換機

【課題】PBXに収容された複数の回線の一つの回線から第1の回線への発信要求の後に、同一の回線から第2の回線への発信要求があったときに、双方に発信要求することが可能なPBXを提供する。
【解決手段】複数の内線回線2a〜2nを収容するPBX1において、制御部13が、一つの内線回線から第1の発信要求があった後に同一の内線回線から第2以降の発信要求があったことを認識する複数発信要求認識手段と、複数の発信要求があったときに第2以降の発信要求を構内交換機内に設けた仮想の回線からの発信として発信先を呼び出す仮想回線発信手段と、複数の発信先の呼出しに対していずれかの発信先が応答したことを検出する応答検出手段とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、コールセンタなどに設けられる構内交換機(以下、PBXという)であって、同一の回線から同時に複数の回線(一つの回線を呼び出し中に他の回線)へ発信要求することを可能としたPBXに関する。すなわち、本発明は、PBXとコンピュータを連携したシステムにおいて、PBXが、自己に収容されている回線をモニタして同一の回線から同時に複数の回線への発信要求を行うことを可能にしたPBXに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、PBXに主要された内線電話機からの発信要求は、一つの発信要求に対応して行われており、この呼び出し中に同一の内線電話機から第2の発信要求をPBXに通知しても、無効とされている。したがって、一つの内線電話機から複数の内線電話機を呼び出して先に応答した内線電話機と通話することはできない。
【0003】
また、コールセンタなどにおいて、PBXと、内線電話機に対応付けられたパソコンと、構内交換機を制御するCTI管理装置とからなり、内線電話機とパソコンを連動させて電話関連業務を効率化するようにしたPBX/パソコン連動システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このPBX/パソコン連動システムは、パソコンからの発信要求があったときに、このパソコンに対応付けられた電話機から発信要求された発信先の電話機を呼び出すように構成されている。
【特許文献1】特開2000−324523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のシステムでは、内線電話機とパソコンを対応付けているため、同時に操作できる通話呼は、一つしか扱えず、複数の呼を操作することはできない。
【0006】
コールセンタのように、複数の内線回線に内線電話機が接続された構内交換機においては、外線からの着信を複数の内線電話機に発信(転送)し、いずれかの内線電話機で迅速に対応することが望まれる。
【0007】
本発明は、PBXに収容された複数の回線のうちいずれかの回線から発信(転送)要求があったときに、同時に複数の回線に発信要求し、いずれかの回線が応答したときに他の回線の発信(転送)要求を解放することができる構内交換機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、複数の内線回線を収容するPBXにおいて、一つの内線回線から第1の発信要求があった後に同一の内線回線から第2以降の発信要求があったことを認識する複数発信要求認識手段と、複数の発信要求があったときに第2以降の発信要求を構内交換機内に設けた仮想の回線からの発信として発信先を呼び出す仮想回線発信手段と、複数の発信先の呼出しに対していずれかの発信先が応答したことを検出する応答検出手段とを備えた。
【0009】
さらに、本発明は、上記PBXにおいて、いずれかの発信先が応答したときに他の発信先呼出しを解放する呼出解放手段を備えた。
【0010】
さらに、本発明は、上記PBXにおいて、前記複数発信要求認識手段に、複数の発信先に対する発信要求であることを特番によって認識する機能を備えた。また、上記PBXにおいて、前記複数の内線回線をそれぞれパソコンと対応付け、それぞれ対応付けられたパソコンに複数の発信要求を発信する機能を備えた。
【0011】
本発明は、上記PBXにおいて、前記複数の発信要求が、複数の回線に対する発信要求または複数の回線に対する転送要求とした。さらに、上記発信要求が、外線回線または内線回線への発信要求とした。
【0012】
さらに、本発明は、上記目的を達成するために、複数の電話機を収容し呼制御を行うPBXと、パソコンからの電話機制御要求や応答を集約するCTI(Cpmputer Telephony Integration)管理装置と、パソコンで共通的に使用する電話帳を有するシステムとする。
【0013】
このCTI装置には、パソコンからの要求を集約し、PBXに通知およびPBXからの応答を個々のパソコンに通知する通信部を持ち、電話機の制御を中継する。
【0014】
また、PBXは、電話機の交換制御以外にもパソコンからCTI管理装置を経由した要求を受信したり応答する通信部を持ち、要求に応じた電話機の制御を実行する制御部を有するシステムとする。
【0015】
さらに、上記制御部は、同じパソコンから複数の発信要求があった場合に、構内交換機内部に仮想的な内線を生成し、あたかもクライアント所有の内線と同じように扱え、複数の呼を制御することが可能となる。また、同じ内線番号への発信要求が来た場合には発信中断となり、余計な呼び出しを停止することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、発信や転送の際に、複数の相手を同時に呼び出すことができ、任意のタイミングで発信相手先の追加および削除ができるため通話相手を探し出せる確率を高めることができる。
【0017】
本発明は、パソコン上の電話帳から発信する場合、連携している内線電話機以外にも複数の呼を操作することができ、電話を転送するときなどに転送できる可能性がある複数の相手を検索して発信することができる。このように複数の電話機を追加および削除して呼び出すことにより、対応可能な相手を短時間で探し出すことが可能となる。
【0018】
また、呼出し中の相手が長時間応答しない場合には、呼出し中の相手を再度選択することにより、この呼出しを中断したり、別な相手を呼出し先に追加したりすることができる。このとき、ピックアップグループなどの内線グループを呼び出すことで複数の内線番号を呼出し、応答した内線と接続することが可能であるが、このグループはシステム全体で固定登録であり、ユーザ単位では容易に変更することはできない。さらに、グループ全体の内線番号を呼び出すため、呼び出す必要がない内線番号も呼び出されてしまう。
【0019】
本発明では、パソコンに設けた電話帳からの発信要求された内線番号だけを呼び出し、仮に呼び出したとしても、必要ない内線番号は再度選択することで発信要求を中止することが可能となる。また、ユーザ個々に任意の相手を呼び出すことができ、システム側で設定されている内線グループに左右されないという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
[実施の形態1]以下、図1を用いて、本発明の第1の実施の形態が適用される構内交換システムの構成を説明する。第1の実施形態にかかる構内交換システムは、構内交換機(PBX)に仮想回線からの発信または転送を行う機能を設けることによって、同一の内線回線から複数の発信先に発信要求または複数の転送先に転送要求を行うことを可能とした例である。
【0021】
この構内交換システムは、PBX1と、該PBX1に外線回線を介して接続される通信網7と、前記PBX1に内線回線を介して接続される内線電話機2a〜2nとで構成される。
【0022】
PBX1は、スイッチ回路11と、様々なデータを記憶保持する記憶手段(RAM)12と、制御部13と、外線回線が接続される外線トランク14と、内線回線を介して内線電話機2a〜2nが収容される内線トランク15とを有して構成される。外線回線には、通信網7を介して外線電話機5a、5bが接続される。
【0023】
スイッチ回路11は、外線回線と内線回線とを接続するとともに内線回線同士を接続するスイッチ回路である。
【0024】
前記制御部13は、PBX1全体の動作を制御する手段であり、さらに、同一の内線回線から複数の回線への発信要求または転送要求があることを認識する機能と、同一の内線回線から複数の回線への発信要求または転送要求があったときに第2以降の発信要求または転送供給を仮想の内線回線からの発信要求または転送要求としてそれぞれの回線に通知する機能を有している。
【0025】
この構内交換システムにおける複数発信要求または複数転送要求の動作について、図2を用いて説明する。
【0026】
[外線への複数発信]発信者が、外線発信するために、内線電話機2aのハンドセットを上げると、PBX1にDTE−HOOK(オフフック情報)が送られる(S1)。PBX1は、ダイヤルトーン(DT)を内線電話機(内線回線)2aに送信する(S2)。ここで、第1の外線番号(5a)をダイヤルする(S3)と、第1の外線への発信を要求する発信要求5aがPBX1に送られる(S4)。PBX1は、外線を捕捉して、第1の発信先外線電話機(外線回線)5aに発呼する(S5)とともに、内線電話機2aに発信要求5a応答を通知する(S6)。内線電話機2aは外線電話機5aを呼び出し中となる(S7)。
【0027】
ここで、内線電話機2aが、第2の発信先外線電話機5bを複数発信要求特番#を付してダイヤル(#5b)する(S8)と、第2の発信要求(#5b)をPBX1に通知する(S9)。PBX1は、内線電話機2aからの第2の発信要求であることを認識して(S10)、第2の外線を捕捉して、外線電話機5bに発呼する(S11)とともに、内線電話機2aに、発信要求#5b受付を通知する(S12)。この処理によって、仮想内線電話機2vと外線電話機5bが呼び出し中となる(S13)。
【0028】
この状態で、外線電話機5aから発信要求#5aに対して応答があると(S14)、PBX1は、発信要求#5a応答を内線電話機2aに通知する(S15)とともに、外線電話機5bに対する呼び出しを解放する(S16)。内線電話機2aと外線電話機5aが通話状態となる(S17)。このようにして1台の内線電話機から複数の外線電話機へ同じときに発呼することが可能となり、先に応答した外線電話機との通話が可能となる。
【0029】
[転送要求]このような内線電話機2aと外線電話機5aとの通話中に、この通話を他の内線電話機に転送しようとするときには、内線電話機2aから保留要求を送出する(S18)と、この保留要求がPBX1に通知され(S19)、PBX1から外線電話機5aへ保留音が送出される(S20)とともに、内線電話機2aにも保留音が送られる(S21)。内線電話機2aから転送先の内線電話番号(#2b)を転送要求特番#を付してダイヤルする(S22)と、保留転送要求#2bがPBX1へ通知される(S23)。PBX1は呼出信号を内線電話機2bへ送出する(S24)とともに、保留転送要求#2b受付(RBT)を内線電話機2aに通知する(S25)。内線電話機2aは内線電話機2bを呼出中になる(S26)。この状態で、内線電話機2aから第2の転送先内線電話機2cを保留転送要求特番#を付してダイヤルすると(S27)、第2の転送先内線電話機2cへの保留転送要求#2cがPBX1へ通知される(S28)。PBX1は内線電話機2aから第2の転送要求#2cが送られてきたことを認識して(S29)、第2の転送先内線電話機2cへ呼出信号を送出する(S30)とともに、保留転送要求#2c受付(RBT)を内線電話機2aに通知する(S31)。仮想内線電話機2vと第2の転送先内線電話機2cは、呼出中となる(S32)。
【0030】
第1の転送先内線電話機2bが応答すると(S33)、PBX1は保留中の外線電話機5aに応答信号を通知する(S34)。その後、PBX1は、外線電話機5aとの通話を内線電話機2aから内線電話機2cへ転送する転送処理を行う(S35)。PBX1は、仮想内線2vと第2の転送先内線電話機2cを解放し(S36)、さらに、PBX1と内線電話機2aとを解放する(S37)。このようにして、外線電話機5aと内線電話機2bとが通話可能となる(S38)。
【0031】
このようにして、内線電話機2aと通話中の外線電話機5aを、内線電話機2b、2cのいずれかに転送することが可能となる。
【0032】
この実施の形態は、PBXに同一の内線電話機が発信要求中や転送要求中に新たな発信要求や転送要求があったことを認識する複数発信要求認識手段(複数発信要求/複数転送要求認識手段)と、仮想内線回線からの発信を行う仮想回線発信手段を備えたことにより、同一の内線電話機(内線回線)から複数の電話機に対して発信要求や転送要求があったときに、これらの要求に対処することができ、応答可能な発信先や転送先を迅速に捕捉することが可能となる。
【0033】
以上のように、本発明のPBXは、制御部13が、内線電話機からの発信要求を相手先に接続する通常の機能に加えて、同一の内線電話機が第1の発信要求により第1の電話機を呼出中に第2の呼出要求を受け取ると複数発信要求と認識する機能、複数発信要求が合ったときに第2以降の発信要求を仮想の内線回線からの発信として相手を呼び出す機能を有している。さらに、本発明のPBXは、制御部13が、内線電話機から保留要求があった後に転送要求があると転送先に転送する通常の機能に加えて、同一の内線電話機が第1の転送要求により第1の内線電話機を呼出中に第2の転送要求を受け取ると複数転送要求と認識する機能、複数転送要求が合ったときに第2以降の転送要求を仮想の内線回線からの転送要求として相手を呼び出す機能を有している。
【0034】
[実施例2]図3以降を用いて、本発明の第2の実施の形態を説明する。図3は、第2の実施の形態にかかる構内交換システムの概略構成を示す図である。本発明が適用される構内交換システムは、通信網7に接続される構内交換装置(PBX)1と、該PBX1に収容される複数の内線電話機2a〜2nと、複数の内線電話機2a〜2nにそれぞれ対応付けられた複数のパソコン3a〜3nと、該複数のパソコン3a〜3nにLAN(Local Area network)6を介して接続されるとともに前記PBX1に接続される接続されるCTI(Cpmputer Telephony Integration)管理装置4とから構成される。この構内交換システムは、例えば、コールセンタに適用される。
【0035】
PBX1は、複数の内線電話機を収容しかつ公衆回線や専用回線などの通信網7に接続されるとともに、外線着信時および外線発信時ならびに内線発信時に呼制御を行う呼制御装置として働く。さらに、本発明のPBX1は、例えば1台の内線電話機2aが第1の内線電話機2bへの発信要求を発した後に、この内線電話機2aからさらに第2の内線電話機2cおよび第3の内線電話機2dに対して追加の第2の発信要求および第3の発信要求があると、第2の発信要求および第3の発信要求をそれぞれ仮想の内線回線2vからの発呼として呼制御を行う機能を有している。
【0036】
内線電話機2a〜2nは、それぞれパソコン3a〜3nに対応付けられている。内線電話機2は、通常の発呼機能およびオンフック発信機能、保留機能、転送機能などを備えている。
【0037】
パソコン3a〜3nは、それぞれに内線電話機2a〜2n対応付けられている。さらに、パソコン3a〜3nは、それぞれ内線電話機および外線の電話番号が記述された固有の電話帳ファイルを有しており、画面に表示された電話帳ファイルに記述された内線番号をクリックして選択することにより発信要求をCTI管理装置4は通知する働きを有している。CTI管理装置4は、パソコン3からの発信要求があると内線電話機2からの発信要求として選択された相手内線電話機に発信要求を行う。
【0038】
CTI管理装置4は、内線電話機2a〜2nの状態を監視する働きを有している。CTI管理装置4は、パソコン3の画面に表示された電話番号をクリックしたときに、このパソコン3に対応する内線電話機2から選択された電話番号に発信要求する働きを有している。
【0039】
LAN6は、複数のパソコン3a〜3nとCTI管理装置4を相互に接続する。
【0040】
パソコン3が、対応付けられた内線電話機2の状態を監視するモニタ要求を、LAN5を経由してCTI管理装置4へ送出すると、CTI管理装置4は、PBX1へモニタ要求を中継する。PBX1は、当該内線電話機2の状態を監視して、状態通知情報をCTI管理装置を経由してパソコン3に通知する。この初期化後は、PBX1は、モニタ中の内線電話機の状態が変化するたびに状態通知情報をCTI管理装置4、パソコン3に通知する。
【0041】
パソコン3からの発呼などの要求は、CTI管理装置4を経由し、PBX1に送られ、PBX1が電話機2を制御する。
【0042】
図4を用いて、それぞれの装置の機能構成の概要を説明する。PBX1は、通常のPBXの機能構成に加えてCTI管理装置4と情報を送受信するCTI管理装置通信部11と、様々なデータを記憶保持するRAM12と、CTI管理装置通信部11で受信した情報を解釈し装置全体を制御する制御部13を有している。
【0043】
制御部13は、通常のPBXとしての制御機能として、接続されている内線電話機を制御する電話機制御部131と、内線回線同士または外線回線との発着信などを制御する呼制御部132とを有している。
【0044】
本発明にかかる制御部13は、通常のPBXの制御機能のほかに、さらに、同一の内線回線から複数の回線への発信要求または転送要求があることを認識する機能と、同一の内線回線から複数の回線への発信要求または転送要求があったときに第2以降の発信要求または転送供給を仮想の内線回線からの発信要求または転送要求としてそれぞれの回線に通知する機能を有している。
【0045】
パソコン3は、通常のパソコンとしての機能構成のほかに、CTI管理装置4と情報を送受信するCTI管理装置通信部31と、電話帳ファイルなどの様々なデータを記憶保持するRAM32と、CTI管理装置通信部31で受信した情報を解釈したりパソコン全体を制御する制御部33を有している。
【0046】
第2の実施の形態にかかるパソコンの制御部33は、電話帳ファイルに記載されている電話番号を認識する電話番号認識部331と、電話機を操作するためのコントロールを有する電話機制御司令部332を有している。
【0047】
CTI管理装置4は、PBX1と情報を送受信するPBX通信部41と、パソコン3と発信もしくは着信などの情報を送受信するクライアント通信部42と、様々なデータを記憶保持するRAM43と、それぞれの通信部で受信した情報を解釈しCTI管理装置全体を制御する制御部44を有している。
【0048】
制御部44は、受信したデータをPBXまたはパソコンのそれぞれの装置で解釈できるようにデータを加工するデータ受信部441と、接続されているパソコン3を管理する接続クライアント管理部442を有している。
【0049】
図5を用いて、パソコン3の画面34に電話帳ファイルを表示した場合の画面表示例を説明する。画面34には、電話帳ファイル341と、電話コントロール342が表示される。電話帳ファイル341には、ユーザ名と対応する内線電話番号が記述されている。電話コントロール342には、発信処理中または転送処理中もしくは通信中の電話番号と状態を表示する情報表示と、発信・切断・保留・転送などの要求ボタン表示がなされる。
【0050】
電話帳ファイル341の中から所望の電話番号の数字の羅列を見つけ出し、カーソルを合わせると下線が引かれたリンク状態になる。この番号をクリックすることで、発信要求をCTI管理装置4に送信するとともに、電話コントロール342の情報表示部にCTI管理装置4から受信した発信要求受付に基づいて “1001を呼び出しています”などの状態が表示される。
【0051】
電話コントロール342には、このパソコン3に対応する内線電話機2を制御するためのボタンが配置されており、モニタ中の内線電話機2をCTI管理装置4を介して遠隔操作することができる。本発明の核となる機能は、この電話帳ファイルや電話コントロールにあるのではなく、PBX1とCTI管理装置4が連携した場合に有効となる。
【0052】
電話帳ファイル341は、単純に電話コントロール342側で電話番号と認識できるフォーマットであるだけでよく、電話コントロール342で指定された電話番号をクリックすることで、CTI管理装置4への発信を要求するという機能だけ有していればよい。
【0053】
PBX1の制御部13は、ある内線番号(発信)が他の第1の内線番号を呼び出し中に、同じ内線番号(発信)から異なる内線番号(第2の内線番号)への複数の発信要求をCTI管理装置4を経由して受信した場合に、該当する内線番号(発信)が使用中であるためにエラーで返すのではなく、PBX1内部の仮想内線回線(仮想内線電話機の電話番号)を使用して、第2の内線番号へ発信要求を滞りなく実施する。PBX1におけるこの処理により、パソコン3側は何も意識する必要がなしに、あたかも複数の回線を利用しているように発呼制御が行われる。
【0054】
また、PBX1は、上記の発信要求を受けた内線番号が呼出中に再度発信要求を受けた場合には、PBX1が発信要求の停止を求めたと判断して呼出しを停止する機能を有している。この機能は、第2の実施の形態では、CTI管理装置4からの要求時にのみ動作し、内線電話機端末単体で操作した場合には対応しない。
【0055】
[複数発信要求]上述した内容を図4、図5を用いて説明する。図6を用いてパソコン3の電話帳ファイルを利用して複数の発信先内線電話機に発信する発信処理シーケンスを説明する。図6において、発信者所有のパソコン3aの画面上に表示された電話帳ファイルから第1の発信先内線電話機2bの電話番号をクリックすることにより、発信者が所有している内線電話機2aは、クリックした第1の発信先内線電話機2bへ発信する。
【0056】
このとき、内部処理では、発信者のパソコン3aからの発信要求“2b”がCTI管理装置4へ送られ(S51)、CTI管理装置4はこの発信要求“2b”をPBX1へ通知する(S52)。PBX1は、発信要求2b受付をCTI管理装置4へ送る(S53)とともに、発信先内線電話機2bへ呼び出し信号を送る(S54)。CTI管理装置4は、この発信要求2b受付をパソコン3aに通知する(S55)。この状態で、発信者の内線電話機2aは、発信先内線電話機2bを呼出中になり(S56)、パソコン3aの画面の電話コントロール342には、“内線電話機2bを呼び出しています”との表示がなされる。これまでの処理の流れは、通常の発呼処理と同じである。
【0057】
この状態で、パソコン3aから発信先内線電話機2cへの発信を要求する発信要求“#2c”がCTI管理装置4へ送られる(S57)と、CTI管理装置4は、この発信要求“#2c”をPBX1へ通知する(S58)。PBX1は、呼び出し処理中の同一の内線電話機2aからの発信要求であることを認識する(S59)と、発信要求#2c受付をCTI管理装置4へ送る(S60)とともに、仮想内線電話機2vからの発呼として発信先内線電話機2cへ呼出信号を送る(S61)。CTI管理装置4は、発信要求#2c受付をパソコン3aに通知する(S62)。仮想内線電話機2vが発信先内線電話機2cを呼出中の状態となる(S63)。
【0058】
ステップS61の呼出しに対して第2の発信先内線電話機2cが応答すると応答信号がPBX1へ通知される(S64)。PBX1は、発信要求“#2c”に対する応答をCTI管理装置4へ通知する(S65)とともに、第1の発信先電話機2bへ切断信号を送信する(S66)。CTI管理装置4は、発信要求#2c応答をパソコン3aに転送する(S67)。
【0059】
ステップS66の処理をしたPBX1は、不要となった発信要求“2b”を切断する通知をCTI管理装置4へ通知する(S68)。CTI管理装置4は、発信要求2b切断通知をパソコン3aに転送する(S69)。この状態で、仮想内線電話機2vと第2の内線電話機2cが通話中になる(S70)。PBX1は、通話を仮想内線電話機2vから発信者の内線電話機2aに転送する処理を行い(S71)、発信者の内線電話機2aと第2の発信先内線電話機2cとの間が通話中となる(S72)。
【0060】
パソコン3aの画面34の電話コントロール342には、“内線電話機2cが通話中です”が表示され、“内線電話機2bを呼び出しています”の表示が消滅する。
【0061】
このようにして、発信者のパソコンから複数の送信先内線電話機に対して発信要求があったときにも、それぞれの送信先内線電話機に対して呼出しを行い、最初に応答した発信先内線電話機と通話するとともに、他の内線電話機への呼出しを切断することができる。
【0062】
通常であれば、同一の発信者内線電話機からは、最初の発信要求の呼が終了するまでは新しい呼を生成することができないが、本発明により、発信先を増やすことが可能になり、ステップS57〜S63の操作を繰り返すことにより、さらに多くの内線電話機を呼び出せるようになる。すなわち、本発明は、ピックアップグループのような内線グループに関係なく、任意の内線電話機を複数呼び出すことが可能となる。
【0063】
図6においては、第2の発信先内線電話機2cが応答したため、仮想内線電話機2vと、第2の発信先内線電話機2cの通話をもともとの発信者内線電話機2aへ、呼を転送して(S71)いるが、ステップS64〜S69で第1の発信先内線電話機2bが応答した場合には、仮想内線電話機2vが呼出中だった第2の発信先内線電話機2cへの呼(S61)を中断するだけの処理となり、通常の処理になる。
【0064】
[複数転送要求]図7を用いて例えば通話中の接続を、他の内線電話機へ転送する転送処理を説明する。図7において、通話相手2nと通話中状態にある転送者所有の内線電話機2aから転送処理を実施するため、パソコン3aから通話中(S81)の呼の保留を要求する(S82)と、保留要求はCTI管理装置4へ通知され、CTI管理装置4は保留要求をPBX1に通知する(S83)。PBX1は、保留通知受付をCTI管理装置4に通知し(S84)、CTI管理装置4は、保留通知受付を転送者所有のパソコン3aに通知する(S85)。PBX1は、CTI管理装置4に保留通知を通知し(S86)、CTI管理装置4は、パソコン3aに対して保留通知を通知する(S87)。このときパソコン3aでは、通話が保留されたことを示す表示を行ない、CTI管理装置4では、通話中の呼が保留状態となったことを管理する。また、PBX1は、転送者所有の内線電話機2aと通話相手2nとの通話中の呼を保留にする(S88)。
【0065】
その後、転送者所有のパソコン3aの画面に表示されている電話帳ファイルから第1の転送先内線電話機2bをクリックすることにより、第1の発信(転送)先内線電話機2bへの発信要求#2bがCTI管理装置4に通知され(S89)、CTI管理装置4は、発信要求#2bをPBX1へ通知する(S90)。PBX1は、発信要求#2b受付をCTI管理装置4へ通知する(S91)ともに、第1の転送先内線電話機2bへ呼出信号を送出する(S92)。CTI管理装置4は、発信要求#2b受付を転送者所有のパソコン3aへ通知する(S93)。PBX1は、転送者所有の内線電話機2aが第1の発信先内線電話機2bを呼出中の状態にする(S94)。
【0066】
通常であれば、転送者内線電話機2aは、前述の発信要求の呼(S92)を切断するまでは新しい呼を生成することができないが、本発明を使用することにより、転送先を増やすことが可能になる。すなわち、転送者所有のパソコン3aに表示された電話帳ファイルから第2の転送先内線電話機2cをクリックすることにより、パソコン3aは、第2の転送先内線電話機2cへの発信要求#2cをCTI管理装置4へ通知する(S95)。CTI管理装置4は第2の内線電話機2cへの発信要求#2cをPBX1へ通知する(S96)。PBX1は、発信要求#2c受付をCTI管理装置4へ通知する(S97)とともに、同一の内線電話機2aから第2の発信要求があったことを認識する(S98)。PBX1は、第2の転送先内線電話機2cへ呼出信号を送信する(S99)。CTI管理装置4は、発信要求#2c受付をパソコン3aへ通知する(S100)。そして、仮想内線電話機2vと第2の転送先内線電話機2cが、呼出中の状態になる(S101)。
【0067】
このようにして、通話を転送しようとする内線電話機2aは、複数の転送先内線電話機2b、2c…を順次呼び出すことが可能となり、内線電話機を呼出中に転送先を増やすことができる。
【0068】
この状態で、例えば第2の転送先内線電話機2cが応答すると、図6のステップS64〜S72の処理が行われ、複数の転送先内線電話機のいずれかひとつへの転送が可能となる。
【0069】
[発信要求の停止]第1の転送先内線電話機2bと第2の転送先内線電話機2cを呼び出しているステップS101の状態で、例えば第1の転送先内線電話機2bへの呼び出しを停止する場合には、パソコン3aの画面に表示された電話帳ファイルおよび電話コントロールを参照して呼び出し中の転送先内線電話機から呼び出しを停止しようとする第1の転送先内線電話機2bをクリックすると、発信要求#2bがCTI管理装置4へ通知される(S102)。CTI管理装置4は、発信要求#2bをPBX1へ通知する(S103)。PBX1は、発信要求#2b受付をCTI管理装置4へ通知し(S104)、CTI管理装置4は、発信要求#2b受付をパソコン3aへ通知する(S105)。PBX1は、発信要求#2bが同一の転送元内線電話機2aから呼出中の第1の転送先内線電話機2bへの発信要求#2bと同一であると認識すると発信要求#2の取り消しを要求されたと認識して(S106)、第1の転送先内線電話機2bへ切断信号を送信して第1の転送先内線電話機2bへの発呼を停止する(S107)。第1の転送先内線電話機2bを切断したPBX1は、発信要求#2b切断通知をCTI管理装置4へ通知し(S108)、CTI管理装置4は発信要求#2b切断通知をパソコン3aに通知する(S109)。
【0070】
呼出中状態にある第2の転送先内線電話機2cが応答する(S110)と、PBX1は、発信要求#2c応答通知をCTI管理装置4へ通知し(S111)、CTI管理装置4は、パソコン3aに発信要求#2cを通知する(S112)。仮想内線電話機2vと第2の転送先内線電話機2cが通話中の状態になる(S113)。PBX1は、転送信号を仮想内線電話機2vに送り(S114)、転送者所有の内線電話機2aと第2の転送先内線電話機2cを通話中に移行させる(S115)。
【0071】
[転送要求]発信要求#2c応答通知を受けたパソコン3aから電話機2nとの通話を内線電話機2cへ転送する転送要求をCTI管理装置に通知する(S116)と、CTI管理装置4は、PBX1へ転送要求を通知する(S117)。PBX1は、転送要求受付をCTI管理装置4へ通知し(S118)、CTI管理装置4は、転送要求受付をパソコン3aに通知する(S119)。PBX1は、転送者の内線電話機2aの通話を通話相手2nに転送して通話相手2nと第2の転送先内線電話機2cとの間で通話が行われる(S120)。
【0072】
このようにして、通話中の着信を複数の第1転送先内線電話機2bまたは第2の転送先内線電話機2cのいずれかに転送することが可能となる。
【0073】
発信要求の停止において説明したように、転送先として呼出中になっている呼を中断する場合には、パソコンの電話帳ファイルに示された呼出中の第1の転送先内線電話機2bの電話番号を再度クリックすることにより、転送者からCTI管理装置経由でたどり着いた発信要求を、PBX1が同じ転送者から同じ転送先内線電話機への発信と識別することで、発信停止と認識し、呼出中の呼を切断することができる。
【0074】
図6と同様に第2の第2の転送先内線電話機2cが応答したことにより、仮想内線電話機2vと第2の転送先内線電話機2cの通話をもともとの転送者の内線電話機2aへ呼を転送しているが、ステップS101までの第1の転送先内線電話機2bと第2の転送先内線電話機2cを呼出中の時点で、第1の内線電話機2bが応答した場合には、仮想内線電話機2vが呼出中であった呼(S101)を切断するだけの処理となり、通常の転送処理になる。
【0075】
この第2の実施の形態によれば、図6、図7ともに、着信する側、転送する側のユーザには何も影響がなく、パソコンを操作するユーザ(発信者、転送者)が自由に発信を制御できるという利点がある。
【0076】
なお、本発明の実施例では、第2の発信先を指定する場合に、複数発信要求特番#を付して説明したが、第2の発信先を指定する場合が特番#に限定されるものではないことはいうまでもない。例えば、内線電話機2が多機能電話機であれば、特定のボタン操作であっても良い。また、複数発信を可能とする内線電話機2を予めPBX1の局データとして特定しておくことにより、特番#を不要とすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかる構内交換システムの構成を模式的に示す図。
【図2】本発明の第1の実施の形態にかかる構内交換システムにおける複数発信要求・複数転送要求の処理を説明するシーケンス図。
【図3】本発明の第2の実施の形態にかかる構内交換システムの構成を模式的に示す図。
【図4】本発明の第2の実施の形態におけるPBX、パソコン、CTI管理装置の構成の概要を説明する図。
【図5】本発明の第2の実施の形態におけるパソコン画面の表示の例を示す図。
【図6】本発明の第2の実施の形態にかかる構内交換システムにおける複数発信要求の処理を説明する図。
【図7】本発明の第2の実施の形態にかかる構内交換システムにおける保留転送要求の処理を説明する図。
【符号の説明】
【0078】
1:PBX
11:スイッチ回路
12:記憶手段(RAM)
13:制御部
131:電話機制御部
132:呼制御部
14:外線トランク
15:内線トランク
2:内線電話機
3:パソコン
31CTI管理装置通信部
32:記憶装置(RAM)
33:制御部
331:電話番号認識部
332:電話機制御司令部
34:パソコン画面
341:電話帳ファイル
342:電話コントロール
4:CTI管理装置
41:PBX通信部
42:クライアント通信部
43:記憶装置(RAM)
44:制御部
441:データ受信部
442:接続クライアント管理部
5:外線電話機
6:LAN
7:通信網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の内線回線を収容する構内交換機において、
一つの内線回線から第1の発信要求があった後に同一の内線回線から第2以降の発信要求があったことを認識する複数発信要求認識手段と、
複数の発信要求があったときに第2以降の発信要求を構内交換機内に設けた仮想の回線からの発信として発信先を呼び出す仮想回線発信手段と、
複数の発信先の呼出しに対していずれかの発信先が応答したことを検出する応答検出手段とを備えた
ことを特徴とする構内交換機。
【請求項2】
請求項1記載の構内交換装置において、
いずれかの発信先が応答したときに他の発信先への呼出しを解放する呼出解放手段を備えた
ことを特徴とする構内交換機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の構内交換機において、
前記複数発信要求認識手段が、複数の発信先に対する発信要求であることを特番によって認識する機能を有する
ことを特徴とする構内交換機。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の構内交換機において、
前記複数の内線回線がそれぞれパソコンと対応付けられており、
それぞれ対応付けられたパソコンが、複数の発信先に対する発信要求を発信する機能を有する
ことを特徴とする構内交換機。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の構内交換機において、
前記複数の発信要求が、複数の回線に対する発信要求または複数の回線に対する転送要求である
ことを特徴とする構内交換機。
【請求項6】
請求項5記載の構内交換機において、
前記複数の発信要求が、外線回線または内線回線への発信要求である
ことを特徴とする構内交換機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−147728(P2009−147728A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−323741(P2007−323741)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(000153465)株式会社日立コミュニケーションテクノロジー (770)
【Fターム(参考)】