説明

同期回路、及び、データ受信方法

【課題】同期ワードが少ない場合であっても、データサンプリングの精度を向上させる必要があった。
【解決手段】フレーム毎に同期ワードとデータとを含むベースバンド受信信号を受信し、受信したベースバンド受信信号からN(Nは2以上の整数)位相のサンプリングクロックを用いて同期ワードと期待値との一致の有無を検出する同期ワード検出部20と、同期ワード検出部20が検出した結果を複数フレーム分蓄積した位相情報を保持し、保持する位相情報に基づいて、サンプリングする位相を判定する位相情報保持部30と、位相情報保持部30の判定に基づいて、サンプリングクロックの位相を選択・決定する位相選択部と、前記位相選択部が選択した位相の前記ベースバンド受信信号から前記データをサンプリングして出力するFIFOバッファ50と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LSI間の高速同期通信におけるデータ受信の手法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、無線通信方式において、ベースバンド受信信号からデータをサンプリングするタイミングを最適化する技術が開発されている。例えば、特許文献1では、ベースバンド受信信号(シリアル信号)のシンボルを正しく復元するベースバンド受信信号の受信回路が開示されている。この技術では、一例としてBluetooth規格をベースとしており、同期ワードは64ビットを想定している。すなわち、受信回路は、64ビットの同期ワードを検出した結果に基づいて、最適な位相を判定している。
【0003】
図8に、従来の同期回路の構成例を示すブロック概略図を示す。ベースバンド信号は、同期ワード検出回路7pにおいて伝送レートのm(mは2以上の整数)倍の周波数でサンプリングされる。ここでは、同期ワードは、ベースバンド信号の先頭に付加されている。すなわち、同期ワード検出回路7pは、ベースバンド信号に含まれる同期ワードをm位相(1シンボル)毎に期待値と比較し、m位相の中で最も期待値と一致したビット数が多い位相を、最適な位相として周波数ドリフト補正回路5pへ伝える。FIFOバッファ6pは、この最適な位相を用いて、安定した受信シンボルを内部回路へ出力する。このように、同期ワード検出回路7pは、同期ワードに含まれたシンボルがどれだけ期待値と一致したかに基づいて、最適な位相を検出する。
【0004】
最適な位相の検出については、フレーム内でできるだけ広い範囲に対して位相比較を行うと精度を高めることができる。従って、特許文献1に開示された技術は、フレーム内の同期ワードの割合が高い場合や同期ワードがフレーム内に分散配置されている場合などでは有効な手段である。
【特許文献1】特開2003−333020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、同期ワードがベースバンド信号の先頭に付加されている場合、同期ワードのうちどれだけのシンボルが期待値と一致したかに基づいて判定された最適位相は、その後のペイロード等のデータ受信中に中心位相が変動することにより、誤ったデータを保持する可能性が出てくる。この傾向は、とりわけ、先頭部分の同期ワードのビット数が少なく、データ長が長いほど、より顕著に現れると考えられる。
【0006】
図9は、フレームのジッタ成分からサンプリングクロックを選択する従来技術を示す図である。図9においては、ベースバンド信号が伝送レートの8倍の周波数でサンプリングされているものとしている。すなわち、1シンボル当り8位相のサンプリングクロックを用いて、各位相を#0から#7をとして示している。また、図9では、ビット幅が少ない同期ワードがフレームヘッダ部分に付加され、且つデータ長(ペイロードデータ長)が長いフレーム規格を前提としている。ここで、同期ワードのシンボル境界のジッタ成分は位相#6において生じるものとし、符号91a、91bで示している。データを含むフレーム全体のジッタ成分は同期ワード検出中のジッタ成分よりも広がりを持ち、位相#6、#7、#0、#1、#2において生じるものとし、符号92a、92bで示している。ここで、ジッタ成分により同期ワードと期待値との一致が#6の位相でのみ検出できなかった場合、#6の位相から最も離れた位相、ここでは、4位相離れた#2の位相(矢印93)が、その後のデータ検出に適したサンプリングクロックとして判定される。一方、フレーム全体を考えるとジッタ成分は大きく広がりを持ち、位相#6、#7、#0、#1、#2の5位相に跨りデータを誤って保持する可能性がある。この時、同期ワードによって判定された位相(位相#2)では、フレーム全体として見た場合シンボルの境界になる可能性があり、誤ったデータを保持してしまう可能性がある。そのため、フレーム全体のジッタ成分の広がりも加味して位相を選択する必要があり、図9の場合では矢印94で示した#4の位相が真に求めるべき位相となる。
【0007】
図9に一例として示すように、従来技術では、一部分のジッタ成分(符号91a、91b)に基づいてサンプリングクロック(矢印93で示す位相#2)を判断していたため、フレーム全体のジッタ成分(符号92a、92b)に基づいた最適位相(矢印94で示す位相#3)を選択することができなかった。このように、最適位相として誤った位相を選択してしまうという現象は、1フレームにおいて先頭部分の同期ワードのビット数が少なく且つデータ長が長い場合、即ちフレーム内の同期ワードの比率が低い場合、発生頻度が高まることが予想される。また近年の伝送レートの高速化に伴い、1シンボルあたりのジッタ成分比率が高まることによっても発生頻度が高まることが予想される。
【0008】
このように、フレーム内における同期ワードの占める割合が少ない場合であっても、データサンプリングの精度を向上させる必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る同期回路の一態様は、フレーム毎に同期ワードとデータとを含むベースバンド受信信号を受信し、受信した前記ベースバンド受信信号からN(Nは2以上の整数)位相のサンプリングクロックを用いて前記同期ワードと期待値との一致の有無を検出する同期ワード検出部と、前記同期ワード検出部が検出した結果を複数フレーム分蓄積した位相情報を保持し、保持した前記位相情報に基づいて、サンプリングする位相を判定する位相情報保持部と、前記位相情報保持部の判定に基づいて、サンプリングクロックの位相を選択・決定する位相選択部と、前記ベースバンド受信信号から前記データをサンプリングして出力するFIFOバッファと、を備える。
【0010】
また、本発明に係るデータ受信方法の一態様は、フレーム毎に同期ワードとデータとを含むベースバンド受信信号を受信し、受信したベースバンド受信信号からN(Nは2以上の整数)位相のサンプリングクロックを用いて同期ワードと期待値との一致の有無を検出し、検出した結果を複数フレーム分蓄積した位相情報を、記録領域に保持し、保持する位相情報に基づいて、サンプリングする位相を選択し、選択した位相の前記ベースバンド受信信号から前記データをサンプリングして出力する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、フレーム内に同期ワードの占める割合が少ない場合であっても、データサンプリングの精度を向上させることが可能となる。これにより、ビットエラー率を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。各図面において同一の構成または機能を有する構成要素および相当部分には、同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0013】
(実施形態1)
図1は、本発明に係る同期回路の一例を示す図である。同期回路1は、ベースバンド受信信号を受信する。ベースバンド受信信号は、RF(Radio Frequency)部3がアンテナ2から受信した受信信号を処理した信号である。同期回路1とRF部3とは、同期をとるために、同じ参照クロックを参照している。同期回路1とRF部3とは、それぞれPLL(Phase Locked Loop)を有し、高周波のクロックに置き換えてデータの送受信を行っている。
【0014】
図1に示す同期回路1は、同期ワード検出部20、位相情報保持部30、位相選択部40、及びFIFO(First-in First-out)バッファ50を備える。同期回路1は、次の機能を備えている。(1)ベースバンド受信信号を受信し、N(Nは2以上の整数)位相のサンプリングクロックを用いて複数フレームにおける同期ワード検出結果を保持する。(2)保持した同期ワード検出結果に基づいて、サンプリングする位相を判定する。(3)判定した結果に基づいてデータを出力する。
【0015】
ここで、ベースバンド受信信号は、複数フレームからなり、1フレームには、同期ワード領域とデータ領域とが含まれる。同期ワード領域には、予め決められたデータが設定される。データ領域は、伝送するデータが設定される。また、本明細書では、1シンボルは、1ビットと対応するものとする。
【0016】
サンプリングクロックは、ベースバンド受信信号をシンボル速度のN(Nは2以上の整数)倍の周期でサンプリングするクロックを用いる。換言すれば、サンプリングクロックは、1シンボルの1/Nずつ間隔を空けたN相のクロックを用いる。以降の説明では、N相のサンプリングクロックにおける各位相を、#0から#(N−1)として示す。
【0017】
同期ワード検出部20は、フレーム内に含まれる同期ワードとの一致の度合いを検出し、検出結果を位相情報保持部30と位相選択部40とへ出力する。具体的には、同期ワード検出部20は、ベースバンド受信信号からN相のサンプリングクロックを用いて同期ワードとの一致の度合いを検出する。Nの値は、任意に決定される。
【0018】
位相情報保持部30は、同期ワード検出部20が検出した結果を複数フレーム分蓄積する。この複数フレーム分蓄積した検出結果を以降では位相情報と呼ぶ。位相情報保持部30は、位相情報に基づいて、サンプリングする位相を判定し、判定した位相を位相選択部40へ出力する。サンプリングする位相の判定手法については後述する。また、位相情報保持部30は、位相情報を保持するカウンタを有する。
【0019】
位相選択部40は、位相情報保持部30が出力した位相に基づいてサンプリングする位相を選択する。また、位相選択部40は、同期ワード検出部20が出力する検出結果に基づいてサンプリングする位相を選択することもある。位相選択部40は、選択した位相をFIFOバッファ50へ出力する。
【0020】
FIFOバッファ50は、位相選択部40が選択した位相のベースバンド受信信号に含まれるデータ領域からデータをサンプリングし、出力する。出力されたデータは、データを処理する内部回路(データ処理部)などで用いられる。
【0021】
次に、位相情報保持部30の詳細を説明する。ここでは、図2を用いて、同期回路1をN=8のサンプリングクロックを用いる場合に適用する構成例を説明する。図2は、図1に示す同期回路1を、1シンボル8サンプリングクロックでサンプリングする場合に適用した構成例を示すブロック図である。
【0022】
同期回路11は、カウンタ310と判定部320とを備える。SCLKは、8位相のサンプリングクロックであり、MCLKは、ペイロード用マスタクロックである。
カウンタ310は、N個(サンプリングする位相の数)の値をカウントする記録領域が備えられる。カウンタ310は、同期ワード検出部20が同期ワードと期待値との一致を検出した回数、あるいは一致を検出しなかった回数のいずれかを、位相毎にカウントする。カウンタ310は、同期ワード検出部20が検出する検出結果を、複数フレーム分カウントする。
【0023】
このように、カウンタ310は、検出結果をカウント(加算)することによって、複数フレームの検出結果を蓄積した位相情報を保持する。また、カウンタ310は、オーバーフローする以前に全位相のカウンタ値に一定の除算(ビットシフト)を行う機能を有する。これにより、カウンタのオーバーフローを防止しつつ、各位相のカウント値を完全にリセットすることなく最大カウント数の計測を継続する。なお、除算の実行周期やシフト量はジッタの変動に応じて決定されるものとする。このように、カウンタ310は、複数フレームの検出結果をカウントするものであり、複数フレームにおける伝搬路状況を把握することができる。また、カウンタ310は、位相情報を記録する記録領域であるともいえる。
【0024】
判定部320は、カウンタ310がカウントアップした値に基づいて、サンプリングする位相を判定する。具体的には、判定部320は、複数フレームおいて同期ワードと期待値の一致が最も検出された正常位相をサンプリングする位相と判定する。さらに、複数の位相において、正常位相が検出されるように設計することにより、判定部320は、検出された複数の正常位相を用いて次のような手法で位相を判定することができる。
【0025】
第1の手法として、判定部320は、複数の前記正常位相のうち、中央の位相をサンプリングする位相として判定する。
第2の手法として、判定部320は、同期ワードと期待値との一致が検出されなかったフレーム数が最も多い不具合位相(誤り位相)から離れた位相をサンプリングする位相として判定する。
第1の手法において、複数(例えば、二つ)の位相がサンプリングする位相の候補となった場合、さらに、第2の手法を併用して、サンプリングする位相を判定してもよい。また、第2の手法において、不具合位相から最も離れた位相をサンプリングする位相として判定してもよい。
【0026】
図3を用いて、本実施形態のフレームとジッタ成分との関係を説明する。図3は、1シンボルあたり8位相のサンプリングクロックを用いた場合のフレームとジッタ成分との関係を示す図である。図9と同様に、図3では、1シンボル当り8位相のサンプリングクロックを用いた場合を考える。また、各位相を#0から#7を用いて示す。図3に示すように、ジッタ成分81a、81bは、フレーム毎の同期ワードのジッタ成分を示しており、それらのジッタ成分を加算したものを82a、82bとして示している。データ領域のジッタ成分を検出することはできないため、複数フレームについて同期ワードのジッタ成分を加算することにより、フレーム全体のジッタ成分を推定し、サンプリングに最適な位相を判定することが可能となる。
【0027】
これを実現するために、同期回路11では、カウンタ310において同期ワード検出結果を加算し、この加算結果に基づき、判定部320において複数フレームのシンボル境界のジッタ成分を把握しサンプリングに最適な位相を判定している。最適な位相とは、ジッタ成分が少ない位相、即ちシンボル境界から遠く、同期ワードが毎回検出され得ると期待される位相であり、例えば図3では矢印83で示す位相#4に相当する。
【0028】
次に、図2に示す同期回路11の動作例を、タイミングチャートを用いて具体的に説明する。ここでは、同期回路11は、期待値との一致が検出されなかった回数を蓄積(集計)する場合を用いて説明する。カウンタ310は、同期ワード検出部20から出力される信号を用い、その反転論理から期待値との一致を検出しなかった位相のカウントをカウントアップしていく。
【0029】
図4〜7は、期待値との一致を検出しなかった位相のカウントカウントアップする場合の同期回路の動作の一例を示すタイミングチャートである。図4は、同期ワード検出部20、図5は、位相情報保持部30、図6は、位相選択部40、図7は、FIFOバッファ50の動作を示す。ベースバンド受信信号DIは、同期ワードとデータとを含む。サンプリングクロック(SCLK0〜SCLK7)は、1シンボル当り、#0〜#7の8位相とする。図中、サンプリングクロックの順番を、一番上の0〜7の数値の繰り返しで示している。また、図4〜7中、符号A〜Cは、複数の図面間において信号を関連づける矢印を示す。従って、矢印A〜Cは、構成要素間の信号の関連を示す。
【0030】
まず、図4に示すように、同期ワード検出部20は、ベースバンド受信信号DIから、各位相のサンプリングのタイミングで同期ワードとデータとを初段レジスタ出力へ取り込む。同期ワード検出部20は、期待値に基づいて、同期ワードと期待値との一致を検出し、同期ワード検出信号SYNFLG0〜SYNFLG7を出力する。図4では、#3と#4の位相において期待値との一致が検出されないため、信号の立ち上がりが見られない。すなわち、シンボル境界がSCLK3とSCLK4との近傍にあるため、期待値との一致が検出されなかったものと推定できる。
【0031】
次に、位相情報保持部30について図5を用いて説明する。カウンタ310は、期待値との一致が検出されなかった#3、#4の位相のカウンタをカウントアップする。図5では、矢印A、Bで示すタイミングで、#3、#4の位相のカウンタNSYNCNT3、NSYNCNT4をカウントアップしている。このように、同期ワード検出信号SYNFLGx(x=0〜7、以下、xの値は同様)=Lowの場合、期待値との一致が検出されなかったとしてカウントアップする。続いて、判定部320は、カウンタ310の値に基づいて、サンプリングする位相を判定する。判定の手法は上述した通りである。ここでは、期待値との一致が検出されなかった場合の第1の手法、第2の手法の動作を説明する。
【0032】
判定部320は、まず、カウンタ310の値がゼロの位相を抽出する。通常、カウンタがゼロの位相は複数存在することから、判定部320は、上述した第1の手法と第2の手法との少なくともいずれかを用いて、位相を判定する。判定部320は、カウンタの値がゼロである複数の位相のうち、中央の位相をサンプリングする位相として判定する(第1の手法)。また、中央の位相が複数存在する場合には、カウンタ310の最大値、すなわち、期待値との一致が検出されなかった回数が多い位相から離れた位相を選択する(第2の手法)。あるいは、判定部320は、カウンタ310の値がゼロの位相のうち、カウンタ310の最大値の位相から離れた位相(特に、最も離れた位相)を選択する(第2の手法)。
【0033】
具体的に、図5において、第1の手法と第2の手法とを組み合わせる場合、判定部320は、次のように判定する。ここで、位相#3、#4以外の位相においてカウンタ310の値がゼロ、位相#3においてカウンタ310の値が最大値であるとすると、判定部320は、位相#3#4以外の位相の中から、サンプリングする位相のうち、中央にある位相#0、#7を抽出する(第1の手法)。続いて、判定部320は、位相#0、#7のうち、カウンタの値が最大である、NSYNCNT3から最も離れた位相#7をサンプリングする位相として判定する(第2の手法)。
【0034】
最もカウント数の多い位相というのは、シンボル境界に最もヒットする可能性が高く、そのため最もデータを誤って保持する危険性が高い位相と考えられる。このため、カウンタ310の最大値から離れた位相をサンプリングする位相として判定することが好ましい。
このようにして、判定部320は、判定結果に基づいて、位相判定信号SYNPK0〜SYNPK7のうち、判定した位相#7をSYNPK7=Highにして、位相選択部40へ出力する。
【0035】
次に、位相選択部40について図6を用いて説明する。位相選択部40は、同期ワード検出部20から同期ワード検出信号SYNFLG0〜SYNFLG7を入力し、判定部320から位相判定信号SYNPK0〜SYNPK7を入力する。位相判定信号SYNPK0〜SYNPK7のうち、判定部320で判定された位相がある場合、位相選択部40は、判定された位相をサンプリングする位相として選択する。ここでは、図5において、判定部320は、SYNPK7をHighにしている。よって、位相選択部40は、#7の位相をサンプリングする位相として選択する。位相選択部40は、図6に示すように、選択したサンプリングする位相のCLKSEL7をHighにして、CLKSEL0〜CLKSEL7をFIFOバッファへ出力する。
【0036】
一方、判定部320が判定した位相がない場合、すなわち、すべての位相判定信号SYNPKxがLowの場合、位相選択部40は、SYNFLGxに基づいて、サンプリングする位相を選択する。この場合は、従来と同様の手法を用いる。例えば、複数フレームの検出結果がカウントされていないため、位相情報が十分でなく(あるいは位相情報がない)、判定部320が判定できないなどの場合、従来の手法でサンプリングする位相を選択する。
【0037】
また、位相選択部40は、同期ワード検出部20からの同期ワード検出信号だけでは真に適切な位相が判定できない場合、位相判定信号から得た情報を元に、安全な位相(ジッタ成分の少ない位相)を算出する手法をとってもよい。
【0038】
次に、FIFOバッファ50について図7を用いて説明する。FIFOバッファ50は、ベースバンド受信信号DIから、各位相のサンプリングのタイミングで同期ワードとデータとをFIFO初段レジスタ出力DI0F〜DI7Fへ取り込む。続いて、FIFOバッファ50は、FIFO初段レジスタ出力DI0F〜DI7Fへ保持したデータを遅延させて遅延信号DI0D〜DI7Dへ取り込む。これはクロック選択論理演算待ち、すなわち、位相選択部40がサンプリングする位相を選択するまでの時間遅延させるため、FIFOバッファ50は、複数クロックの遅延を挿入している。続いて、FIFOバッファ50は、クロック選択信号CLKSEL0〜CLKSEL7に従って、位相#7のデータをマスタクロック(MCLK)に乗せる。
【0039】
このようにして、本実施形態では、複数フレームに跨る長いスパンにおける同期ワードの期待値との一致の検出結果に基づいて、同期ワードの部分に限らずフレーム全体にわたって適切な位相を選択する。従って、一つのフレームのヘッダに付加された同期ワードだけでは、フレーム全体における適切な位相を検出することができない場合でも、複数フレームの同期ワード検出結果を蓄積していくことによって、フレーム全体に適切な位相を求めることが期待できる。
【0040】
(その他の実施形態)
実施形態1では、具体例として、同期ワードが期待値と一致しなかった回数をカウントする一態様を説明した。しかしながら、カウンタは、期待値と一致した回数をカウントするものであってもよい。以下に、カウンタ310が同期ワードと期待値との一致を検出した回数をカウントする一態様を説明する。図2と同様の同期回路11を用いることができる。実施形態1とは、位相情報保持部30の機能が異なる。カウンタ310は、同期ワードと期待値との一致を検出した場合をカウントする。従って、同期ワード検出信号がHighの場合にカウンタ310をカウントアップすることになる。
【0041】
また、判定部320は、カウンタ310の値を用いて、次のように判定する。判定部320は、まず、カウンタの値が最大である位相からサンプリングする位相を抽出する。カウンタの値が最大であるということは、同期ワードと期待値との比較において、最も一致が検出された位相ということになる。通常、このような位相は複数あることから、判定部320は、実施形態1で説明した第1の手法と第2の手法の少なくとも一方を用いてサンプリングする位相を判定する。
【0042】
判定部320は、カウンタ310の値が最大である複数の位相のうち、中央の位相をサンプリングする位相として判定する(第1の手法)。また、中央の位相が複数存在する場合には、カウンタ310の最小値、すなわち、期待値との一致が検出されなかった回数が多い位相から離れた位相を選択する(第2の手法)。あるいは、判定部320は、カウンタ310の値が最大値の位相のうち、カウンタ310の最小値の位相から離れた位相(特に、最も離れた位相)を選択する(第2の手法)。このようにして、判定部320は、サンプリングする位相を判定する。
【0043】
このように、上記実施形態1と異なり、同期ワードを検出した結果を蓄積した位相情報であっても、複数フレームに跨る長いスパンにおける同期ワードと期待値との一致を検出した結果に基づいて、フレーム全体に適切な位相を選択することができる。
【0044】
なお、上記各実施形態では、位相選択部40は、位相情報保持部30が出力する判定結果に基づいて、サンプリングする位相を選択している。しかし、判定部320の機能を位相選択部40が実行するようにしてもよい。具体的には、位相情報保持部30は、保持している位相情報を位相選択部40へ出力し、位相選択部40は、位相情報に基づいて、サンプリングする位相を判定する。また、上記各実施形態では、同期ワードが複数フレームにおける期待値との比較において、最も一致していることが検出された位相を正常位相としたが、同期ワードが所定の数のフレームにおいて検出した位相を正常位相としてサンプリングする位相を判定してもよい。
【0045】
本発明は、同一クロックを参照し、同期をとりながらデータを送受信するLSI間通信を採用するマイクロコンピュータへ採用することができる。具体的には、フレーム先頭に同期ワードが固めて配置されているような通信規格をターゲットとし、これらの通信機器に導入されることが好ましい。例えば、携帯電話向けのDigRFなどの規格に準拠した通信機器に導入することが期待される。
【0046】
以上のように、本発明に係る好適な実施形態によれば、位相情報保持部は、同期ワードを検出した結果を複数フレーム分蓄積した位相情報を保持する。このため、位相情報保持部は、長い時間のサンプリング結果に基づいて判定した位相、あるいは、長い時間のサンプリング結果を位相選択部へ出力する。これにより、位相選択部は、長い時間のサンプリング結果に基づいてサンプリングする位相を選択する。このようにして、同期回路は、サンプリング位相の精度を向上させることができる。これは、受信したフレーム毎に同期動作を行う場合に比べ、伝搬路状況が変化している場合にもより適切なサンプリングする位相を選択することにつながる。従って、ビットエラー率が低減することが期待される。特に、フレーム内に含まれる同期ワードがデータに比べて少なく、かつ、同期ワードがフレームの一箇所に配置されている場合に、本発明の効果が大きいと考えられる。
【0047】
なお、本発明は上記に示す実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲において、上記実施形態の各要素を、当業者であれば容易に考えうる内容に変更、追加、変換することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る同期回路の一例を示す図である。
【図2】図1に示す同期回路を、1シンボル8サンプリングクロックでサンプリングする場合に適用した構成例を示すブロック図である。
【図3】実施形態1のフレームとジッタ成分との関係を示す図である。
【図4】期待値との一致を検出しなかった位相のカウントをカウントアップする場合の同期回路の同期ワード検出部の動作の一例を示すタイミングチャートである。
【図5】期待値との一致を検出しなかった位相のカウントをカウントアップする場合の同期回路の位相情報保持部の動作の一例を示すタイミングチャートである。
【図6】期待値との一致を検出しなかった位相のカウントをカウントアップする場合の同期回路の位相選択部の動作の一例を示すタイミングチャートである。
【図7】期待値との一致を検出しなかった位相のカウントをカウントアップする場合の同期回路のFIFOバッファの動作の一例を示すタイミングチャートである。
【図8】従来の同期回路の構成例を示すブロック概略図である。
【図9】従来技術におけるフレームとジッタ成分との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1 同期回路
2 アンテナ
3 RF部
20 同期ワード検出部
30 位相情報保持部
40 位相選択部
50 FIFOバッファ
80 フレーム
81a、81b、82a、82b ジッタ成分
310 カウンタ
320 判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム毎に同期ワードとデータとを含むベースバンド受信信号を受信し、受信した前記ベースバンド受信信号からN(Nは2以上の整数)位相のサンプリングクロックを用いて前記同期ワードと期待値との一致の有無を検出する同期ワード検出部と、
前記同期ワード検出部が検出した結果を複数フレーム分蓄積した位相情報を保持し、保持した前記位相情報に基づいて、サンプリングする位相を判定する位相情報保持部と、
前記位相情報保持部の判定に基づいて、サンプリングクロックの位相を選択・決定する位相選択部と、
前記ベースバンド受信信号から前記データをサンプリングして出力するFIFOバッファと、を備える同期回路。
【請求項2】
前記位相情報保持部は、位相毎に前記位相情報を保持し、前記同期ワードと前記期待値との一致が前記複数フレームにおいて検出された正常位相からサンプリングする位相を判定することを特徴とする請求項1記載の同期回路。
【請求項3】
前記位相情報保持部は、複数の前記正常位相のうち、中央の位相をサンプリングする位相として判定することを特徴とする請求項2記載の同期回路。
【請求項4】
前記位相情報保持部は、前記同期ワードと前記期待値との一致が検出されなかったフレーム数が多い不具合位相から離れた位相をサンプリングする位相として判定することを特徴とする請求項2または3記載の同期回路。
【請求項5】
前記位相情報保持部は、
前記同期ワード検出部が検出した結果に基づいて、位相毎に前記同期ワードが検出されなかった場合をカウントするカウンタと、
前記カウンタの値がゼロの位相からサンプリングする位相を判定する判定部と、を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の同期回路。
【請求項6】
前記判定部は、前記カウンタの値がゼロである複数の位相のうち、中央の位相をサンプリングする位相として判定することを特徴とする請求項5記載の同期回路。
【請求項7】
前記判定部は、前記カウンタの最大値を示す位相から離れた位相をサンプリングする位相として判定することを特徴とする請求項5または6記載の同期回路。
【請求項8】
前記位相情報保持部は、
前記同期ワード検出部が検出した結果に基づいて、位相毎に前記同期ワードと前記期待値との一致が検出された場合をカウントするカウンタと、
前記カウンタの値が最大である位相からサンプリングする位相を判定する判定部と、を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の同期回路。
【請求項9】
前記判定部は、前記カウンタの値が最大である複数の位相のうち、中央の位相をサンプリングする位相として判定することを特徴とする請求項8記載の同期回路。
【請求項10】
前記判定部は、前記カウンタの最小値を示す位相から離れた位相をサンプリングする位相として判定することを特徴とする請求項8または9記載の同期回路。
【請求項11】
前記位相選択部は、さらに、前記同期ワード検出部が検出した結果に基づいて、サンプリングする位相を判定することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の同期回路。
【請求項12】
フレーム毎に同期ワードとデータとを含むベースバンド受信信号を受信し、
受信したベースバンド受信信号からN(Nは2以上の整数)位相のサンプリングクロックを用いて同期ワードと期待値との一致の有無を検出し、
検出した結果を複数フレーム分蓄積した位相情報を、記録領域に保持し、
保持する位相情報に基づいて、サンプリングする位相を選択し、
選択した位相の前記ベースバンド受信信号から前記データをサンプリングして出力するデータ受信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−38422(P2009−38422A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−198354(P2007−198354)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】