説明

同調可能な誘電率を有する複合材料、その製造方法、およびそれを備える物品

【課題】低い誘電率を有し且つ誘電率が同調可能である材料を提供する。
【解決手段】高分子材料、および非線形誘電セラミック充填剤を含む組成物が開示され、この非線形誘電セラミック充填剤は約100以上の誘電率を有し、この組成物の誘電率は同調可能である。高分子材料、およびペロブスカイトを含む組成物も開示され、この組成物の誘電率は同調可能であり、さらにこの組成物は約2から約100の誘電率を有する。組成物を形成するように高分子樹脂を非線形誘電セラミック充填剤とブレンドするステップを含む方法も開示され、この非線形誘電セラミック充填剤は約100以上の誘電率を有し、前記組成物の誘電率は同調可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は同調可能な誘電率を有する複合材料、その製造方法、およびそれを備える物品に関する。
【背景技術】
【0002】
強誘電性材料の誘電率は、それが測定される電圧によって変わる。この電圧依存性によって、強誘電性材料がマイクロ波周波数で動作する同調可能な装置に対して潜在的に有用である可能性がある。しかしながら、マイクロ波周波数で良好に機能するためには、この強誘電性材料が低い誘電損失を有することが望ましい。(強誘電性材料を備える)バリスターのリアクタンスを回路の残りの部分のインピーダンスに整合させるために、強誘電性材料のキャパシタンス値がマイクロ波周波数で低いことが望ましい。しかしながら、現在入手可能な強誘電性材料は全て、非常に高いキャパシタンス値を示す(すなわち、それらは約100以上の高い誘電率を有する)。
【0003】
高周波(例えば、無線周波数、マイクロ波周波数またはそれより高い)用途でうまく機能するためには、100以下の誘電率を有する材料を使用することが望ましい。これらの材料が無線周波数またはマイクロ波周波数範囲で同調可能であり、かつ低い誘電損失を有することがさらに望ましい。同調可能な材料とは、その誘電率が周波数または電圧によって変わることができるものである。無線周波数およびマイクロ波用途に対していくつかの低い誘電率材料が存在するけれども、これらの材料は同調可能ではない。例えば、CaCuTi12などの他の強誘電性材料は広い周波数範囲にわたり同調可能であるが、それらのセラミックバルク状態で高い誘電損失を有する。
【特許文献1】米国特許第5,650,031号公報
【特許文献2】米国特許第6,632,109 B2号公報
【特許文献3】米国特許第6,778,053 B1号公報
【特許文献4】米国特許第6,864,306 B2号公報
【特許文献5】米国特許出願公開第2003/0017351 A1号公報
【特許文献6】米国特許出願公開第2004/0265551 A1号公報
【特許文献7】米国特許出願公開第2005/0080175 A1号公報
【特許文献8】米国特許出願公開第2005/0161149 A1号公報
【特許文献9】国際公開第01/89827 A1号公報
【非特許文献1】JP58141222. Publication Date 1983-08-22. "High-Dielectric Film. (Abstract Only)
【非特許文献2】Colin Kydd Campbell. "Experimental and Theoretical Characterization of an Antiferroelectric Ceramic Capacitor for Power Electronics". IEEE Transactions on Component and Packaging Technologies, Vol. 25, No. 2, pages 211-216, June 2002
【非特許文献3】Jianwen Xu and C.P. Wong. "Low-loss percolative dielectric composite" Applied Physics Letters 87, 082907, pages 082907-1, 2, 3, 2005
【非特許文献4】Y. Bai, Z.-Y. Cheng, V. Gharti, H.S. Xu, and Q.M. Zhang. "High-dielectric-constant ceramic-powder polymer composites" Applied Physics Letters, Vol. 76, No. 25, pages 3804-3806, published April 28, 2000
【非特許文献5】E. Aulagner, J. Guillet, G. Seytre, C. Hantouche, P. Le Gonidec, G. Terzulli. "(PVDF/BaTiO3) AND (PP/BaTiO3) FILMS FOR ENERGY STORAGE CAPACITORS” 1995 IEEE 5th International Conference on Conduction and Breakdown in Solid Dielectrics. Pages 423-427. 1995
【非特許文献6】D. Dimos. "PEROVSKITE THIN FILMS FOR HIGH-FREQUENCY CAPACITOR APPLICATIONS1 ". Annual Review of Materials Science. Vol. 28:397-419 (Volume publication date August 1998)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
低いキャパシタンス値(例えば、低い誘電率)を有し、かつ周波数によってまたは電場によって直接同調させることができる材料は知られていない。したがって、低い誘電率を有し、かつその誘電率が同調可能である材料を製造することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で高分子材料、および非線形誘電セラミック充填剤を含む組成物が開示され、この非線形誘電セラミック充填剤は、約100以上の誘電率を有し、この組成物の誘電率は同調可能である。
【0006】
本明細書ではまた高分子材料を備える組成物、およびペロブスカイトが開示され、この組成物の誘電率は同調可能であり、さらにこの組成物は約2から約100の誘電率を有する。
【0007】
本明細書ではまた、組成物を形成するために高分子樹脂を非線形誘電セラミック充填剤とブレンディングする段階を含む方法が開示され、この非線形誘電セラミックは約100以上の誘電率を有し、かつこの組成物の誘電率は同調可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本明細書で使用される用語「第1の」、「第2の」等は、はどんな順序、量、または重要性も示さず、1つの要素を他の要素から区別するために使用されることに留意されたい。用語「1つの」は量の限定を示さず、参照される品目の少なくとも1つが存在することを示す。量に関して使用される修飾語句「約」は、述べられた値を含み、文脈によって表される意味を有する(例えば、特定の量の測定に伴う誤差の程度を含む)。この明細書内で開示される全ての範囲はその数値を含んだものであり、かつ独立に組合せ可能である。
【0009】
本明細書で高分子材料および非線形誘電セラミック充填剤を含む組成物が開示され、この非線形誘電セラミック充填物は、約100以上の誘電率を有する。この組成物の誘電率は、バイアス電場(例えば、直流電流によって発生する電場)を組成物に加えることによって、あるいは組成物を周波数依存電場(例えば、交流電流によって、または放射線によって発生する電場)に曝すことによってのいずれによっても同調可能である。この充填剤は、ナノメートル範囲またはマイクロメートル範囲の微粒子寸法を有し、約2から約100の誘電率を伴う改善された機械的特性を有する組成物を製造できるように、高分子材料に分散させることができる。この組成物は、セラミック充填剤の非線形誘電挙動を高分子の絶縁特性と組み合わせるので有利である。この組成物は、セラミック充填剤の損失の多い粒界効果を回避するので有利である。この組成物は、2と100の間で調整される誘電率を有するので有利であり、無線周波数、マイクロ波周波数およびマイクロ波周波数より高い周波数の使用を含む用途で使用することができる。
【0010】
この組成物に使用される高分子材料は、多種多様の熱可塑性高分子、熱硬化性高分子、熱可塑性高分子のブレンド、または熱可塑性高分子の熱硬化性高分子とのブレンドから選択することができる。この高分子材料は、ホモポリマー、スターブロックコポリマー(star block copolymer)などのコポリマー、グラフトコポリマー(graft copolymer)、オルタネーティングブロック(alternating block)コポリマーまたはランダムコポリマー、アイオノマー(ionomer)、デンドリマー(dendrimer)、または前述のものの少なくとも1つを含む組合せから選択することができる。この高分子材料は、ポリマー、コポリマー、ターポリマー、等のブレンド、または前述のものの少なくとも1つを含む組合せであることもできる。
【0011】
高分子に使用できる熱可塑性高分子の例には、ポリアセタール(polyacetal)、ポリアクリル(polyacrylic)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリアルキッド(polyalkyd)、ポリスチレン(polystyrene)、ポリオレフィン(polyolefin)、ポリエステル(polyester)、ポリアミド(polyamide)、ポリアラミド(polyaramide)、ポリアミドイミド(polyamideimide)、ポリアリレート(polyarylate)、ポリウレタン(polyurethane)、エポキシ(epoxy)、フェノール(phenolic)、シリコン(silicon)、ポリアリールスルホン(polyarylsulfone)、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone)、ポリフェニレンサルファイド(polyphenylene sulfide)、ポリスルホン(polysulfone)、ポリイミド(polyimide)、ポリエーテルイミド(polyetherimide)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)、ポリエーテルケトン(polyetherketone)、ポリエーテルエーテルケトン(polyether etherketone)、ポリエーテルケトンケトン(polyether ketone ketone)、ポリベンゾオキサゾール(polybenzoxazole)、ポリオキサジアゾール(polyoxadiazole)、ポリベンゾチアジーノフェノチアジン(polybenzothiazinophenothiazine)、ポリベンゾチアゾール(polybenzothiazole)、ポリピラジンキノキサリン(polypyrazinoqquinoxaline)、ポリピロメリットイミド(polypyromellitimide)、ポリキノキサリン(polyquinoxaline)、ポリベンゾイミダゾール(polybenzimidazole)、ポリオキシインドール(polyoxindole)、ポリオキソイソインドール(polyoxoisoindoline)、ポリジオキソイソインドール(polydioxoisoindoline)、ポリトリアジン(polytriazine)、ポリピリダジン(polypyridazine)、ポリピペラジン(polypiperazine)、ポリピリジン(polypyridine)、ポリピペリジン(polypiperidine)、ポリトリアゾール(polytriazole)、ポリピラゾール(polypyrazole)、ポリカルボラン(polycarborane)、ポリオキサビシクロノナン(polyoxabicyclononane)、ポリジベンゾフラン(polydibenzofuran)、ポリフタリド(polyphthalide)、ポリアセタール、ポリアンヒドライド(polyanhydride)、ポリビニルエーテル(polyvjnyl ether)、ポリビニルチオエーテル(polyvinl thioether)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)、ポリビニルケトン(polyvinyl ketone)、ハロゲン化ポリビニル(polyvinyl halide)、ポリビニルニトリル(polyvinyl nitrile)、ポリビニルエステル(polyvinyl ester)、ポリスルホネート(polysulfonate)、ポリスルフィド(polysulfide)、ポリチオエステル(polythioester)、ポリサルフォン(polysulfone)、ポリサルフォンアミド(polysulfonamide)、ポリウレア(polyurea)、ポリホスファゼン(polyphosphazene)、ポリシラザン(polysilazane)、ポリプロピレン(polypropylene)、ポリエチレン(polyethylene)、ポリエチレンポリフタレート(polyethylene terephthalate)、ポリビニリデンフッ化物(polyvinylidene fluoride)、ポリシロキサン(polysiloxane)等、または前述の熱可塑性高分子のうちの少なくとも1つを含む組合せが含まれる。
【0012】
例示的な熱可塑性高分子には、ポリエーテルイミド、ポリビニリデンフッ化物、ポリビニリデンフッ化物−トリフルオロクロロエチレン(polyviylidine fluoride−trifluoroethylene)P(VDF−TrFE)、ポリビニリデン−テトラフルオロエチレンコポリマー(polyvinylidene−tetrafluoroethylene copolymers)P(VDF−TFE)、ポリビニリデン−トリフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレンコポリマー(polyvinylidine trifluoroethylene hexafluoropropylene copolymers)P(VDF−TFE−HFE)およびポリビニリデンヘキサフルオロプロピレンコポリマー(polyvinylidine hexafluoropropylene copolymers)P(VDF−HFE)、エポキシ、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリイミド、ポリアリラーテ(polyarylate)、ポリフェニルスルホン(polyphenylsulfone)、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone)、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリエーテルエーテルケトン、シリコン、等、または前述のうちの少なくとも1つを含む組合せが含まれる。1つの例示的な高分子は、General Electric Plasticsから市販で入手可能なポリエーテルイミド、ULTEM(登録商標)である。
【0013】
熱可塑性高分子のブレンドの例には、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン/ナイロン(acrylonitrile−butadiene−styren/nylon)、ポリカーボネート/アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(polycarbonate/acrylonitrile−butadiene−styrene)、ポリフェニレンエーテル/ポリスチレン(polyphenylene ether/polystyrene)、ポリフェニレンエーテル/ポリアミド(polyphenylene ether/polyamide)、ポリカーボネート/ポリエステル(polycarbonate/polyester)、ポリフェニレンエーテル/ポリオレフィン(polyphenylene ether/polyolefin)等、または前述のうちの少なくとも1つを含む組合せが含まれる。
【0014】
熱可塑性高分子とブレンドすることができる熱硬化性高分子の例には、エポキシ/アミン、エポキシ/アンヒドライド(epoxy/anhydride)、イソシアネート/アミン、イソシアネート/アルコール、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、不飽和ポリエステルとビニルエステルのブレンド、不飽和ポリエステル/ウレタンハイブリッド樹脂(unsaturated polyester/urethane hybridresins)、ポリウレタン−尿素(polyurethane−ureas)、反応性ジシクロペンタジエン(reactive dicyclopentadiene)(DCPD)樹脂、反応性ポリアミド(reactive polyamides)、等の樹脂または前述のうちの少なくとも1つを含む組合せが含まれる。
【0015】
一実施形態では、熱可塑性高分子とブレンドできる適切な熱硬化性高分子には、エネルギー活性化可能な熱硬化性高分子プレポリマー(prepolymer)組成物から作ることができる熱硬化性高分子が含まれる。例には、ウレタンポリエステル(urethane polyester)、シリコン高分子、フェノール高分子、アミノ高分子、エポキシ高分子、ビスマレイミド(bismaleimide)、ポリイミド、およびフラン高分子等が含まれる。エネルギー活性化可能な熱硬化性高分子プレポリマー成分は、高分子前駆体および硬化剤を含むことができる。この高分子前駆体は、触媒を必要としない熱活性化可能なものであることができる。選択される硬化剤は、熱硬化性高分子を形成するのに必要なエネルギーの種類を決めるのみならず、結果として得られる熱硬化性高分子の特性にも影響する。硬化剤の例には、脂肪酸アミン(aliphatic amine)、芳香族アミン(aromatic amine)、酸無水物(acid anhydride)等、または前述のものの少なくとも1つを含む組合せが含まれる。エネルギー活性化可能な熱硬化性プレポリマー組成物は、より高い処理能力およびより低い温度を含む押出しを容易にするために混合物の粘度を低下させるための溶媒または加工助剤を含むことができる。この溶媒は、架橋反応を遅らせるのを助けることができ、重合中または重合の後で部分的にまたは完全に蒸発させることができる。
【0016】
この高分子材料は、約150℃以上のガラス遷移温度を有する場合がある。一実施形態では、この高分子材料が約175℃以上のガラス繊維温度を有することが好ましい。別の実施形態では、この高分子材料が約200℃以上のガラス繊維温度を有することが好ましい。さらに別の実施形態では、この高分子材料が約225℃以上のガラス繊維温度を有することが好ましい。さらに別の実施形態では、この高分子材料が約250℃以上のガラス繊維温度を有することが好ましい。
【0017】
一実施形態では、この高分子材料は組成物の全重量の約5から約99.999%の量で使用される。別の実施形態では、この高分子材料は組成物の全重量の約10重量%から約99.99%の量で使用される。別の実施形態では、この高分子材料は組成物の全重量の約30重量%から約99.5%の量で使用される。別の実施形態では、この高分子材料は組成物の全重量の約50重量%から約99.3%の量で使用される。
【0018】
上記で記したように、このセラミック充填剤は、約100以上の誘電率を有する。一実施形態では、セラミック充填剤が約1000以上の誘電率を有することが一般に望ましい。別の実施形態では、セラミック充填剤が約10000以上の誘電率を有することが一般に望ましい。さらに別の実施形態では、セラミック充填剤が約20000以上の誘電率を有することが一般に望ましい。
【0019】
例示的なセラミック充填剤はペロブスカイトである。例示的なペロブスカイトおよびペロブスカイト派生物には、バリウムチタン酸塩(BaTiO)、ストロンチウムチタン酸塩(SrTiO)、バリウムストロンチウムチタン酸塩、ストロンチウムドープのランタンマンガン酸塩(strontium−doped lanthanum manganate)、ランタンアルミニウム酸化物(LaAlO)、ランタンストロンチウム銅酸化物(LSCO)、イットリウムバリウム銅酸化物(YBaCu)、鉛ジルコン酸塩チタン酸塩(lead zirconate titanate)、ランタン変性鉛ジルコン酸塩チタン酸塩(lanthanum−modified lead zirconate titanate)等、鉛マグネシウムニオブ酸塩−鉛チタン酸塩の組合せ、または前述のペロブスカイトおよびペロブスカイト派生物のうちの少なくとも1つを含む組合せが含まれる。化学式(I)を有する例えば、カルシウム−銅−チタン−酸化物(CCTO)などの大きな誘電現象を典型的に示すペロブスカイトも含むことができる。
【0020】
ACuTi12 (I)
ここでAは、カルシウム(Ca)またはカドミウム(Cd)である。
【0021】
別の実施形態では、化学式(II)を有するペロブスカイトも含むことができる。
【0022】
A’2/3CuTiFeO12 (II)
ここでA’はビスマス(Bi)、イットリウム(Y)である。
【0023】
さらに別の実施形態では、一般的な化学式(III)を有するリチウム・チタン共ドープニッケル酸化物(LTNO)と呼ばれるペロブスカイトも含むことができる。
【0024】
LiTiNi1−x−yO (III)
ここでxは約0.3以下であり、yは約0.1以下である。
【0025】
高誘電率を有するセラミック充填剤の他の例には、ジルコン酸塩(zirconate)、チタン酸塩(titanate)、アルミニウム酸塩(aluminate)、すず酸塩(stannate)、ニオブ酸塩(niobate)、タンタル酸塩(tantalate)、および希土類酸化物が含まれる。例示的なセラミック充填剤には、MgSiO、CaTiO、MgZrSrTiO、MgTiO、MgAl、WO、SnTiO、ZrTiO、CaSiO、CaSnO、CaWO、CaZrO、MgTa、MgZrO、CaZrO、BaZrO、SrZrO、BaSnO、CaSnO、MgSnO、Bi/2SnO、MgNb、SrNb、BaNb、MgTa、BaTa等、または前述の酸化物のうちの少なくとも1つを含む組合せが含まれる。適切な誘電率を有する例示的な金属酸化物には、MgSiO、CaTiO、MgZrSrTiO、MgTiO、MgAl、MgTa、MgZrO等、または前述の無機酸化物のうちの少なくとも1つを含む組合せが含まれる。
【0026】
一実施形態では、このセラミック充填剤は高分子材料との接合または接着を容易にするように適宜表面処理することができる。一実施形態では、この表面処理は、セラミック充填剤をシランカップリング剤(silane coupling agent)で被覆することを含む。適切なシランカップリング剤の例には、テトラメチルクロロシラン(tetramethylchlorosilane)、ヘキサジメチレンジシラザン(hexadimethylenedisilazane)、ガンマ−アミノプロポキシシラン(gamma−aminopropoxysilane)等、または前述のシランカップリング剤のうちの少なくとも1つを含む組合せを含む。シランカップリング剤は一般に、セラミック充填剤の高分子材料との混和性を高め、セラミック充填剤の高分子材料内への分散を改善する。
【0027】
上記に記したように、このセラミック充填剤はナノメートル(10−9メートル)範囲内で少なくとも1つの寸法を有する。一実施形態では、セラミック充填剤が約1000nm以下の平均最大寸法を有することが好ましい。この寸法は、直径、面の縁部、長さ、等であり得る。一実施形態では、セラミック充填剤の形状および幾何学的形状は基板のそれらと同じであることができる。別の実施形態では、セラミック充填剤の形状および幾何学的形状は基板のそれらと異なることができる。
【0028】
別の実施形態では、このセラミック充填剤は、マイクロメートル(10−6メートル)サイズの寸法を有することができる。約10マイクロメートルまでの微粒子寸法を有するセラミック充填剤を使用することが一般に望ましい。一実施形態では、約5マイクロメートルまでの微粒子寸法を有するセラミック充填剤を使用することが望ましい可能性がある。別の実施形態では、約2マイクロメートルまでの微粒子寸法を有するセラミック充填剤を使用することが望ましい可能性がある。ナノメートル寸法およびマイクロメートル寸法のセラミック充填剤も一緒に組成物に使用することができる。
【0029】
このセラミック充填剤はその次元を整数で定義される形状を有することができ、例えば、このセラミック充填剤は形状が1、2または3次元のいずれかである。それらはその次元が整数によって定義されない形状を有することができる(例えば、それらはフラクタルの形状で存在することができる)。このセラミック充填剤は、球、フレーク、ファイバ、ホイスカー、等の形状で、または前述の形態の少なくとも1つを含む組合せで存在することができる。これらのセラミック充填剤は、円形、楕円形、三角形、長方形、多角形、または前述の幾何学的形状のうちの少なくとも1つを含む組合せの横断面幾何学的形状を有することができる。市販で入手可能なセラミック充填剤は、高分子材料に組み込む前、または高分子材料に組み込んだ後でさえ、凝集体(aggregate)または集塊体(agglomerate)の形態で存在する場合がある。凝集体は、互いに物理的に接触する2つ以上の微粒子を含み、一方集塊体は、互いに物理的に接触する2つ以上の凝集体を含む。
【0030】
セラミック充填剤の正確な寸法、形状および組成に関わらず、所望のときそれらを組成物の総重量の約0.0001から約50重量%の充填で高分子材料内に分散させることができる。一実施形態では、このセラミック充填剤は、組成物の総重量の約1重量%以上の量で存在する。別の実施形態では、このセラミック充填剤は、組成物の総重量の約1.5重量%以上の量で存在する。別の実施形態では、このセラミック充填剤は、組成物の総重量の約2重量%以上の量で存在する。一実施形態では、このセラミック充填剤は、組成物の総重量の40重量%以下の量で存在する。別の実施形態では、このセラミック充填剤は、組成物の総重量の約30重量%以下の量で存在する。別の実施形態では、このセラミック充填剤は、組成物の総重量の約25重量%以下の量で存在する。
【0031】
セラミック充填剤および任意の他の適宜に所望される充填剤と共にこの高分子材料は一般に、限定ではなく、溶融ブレンディング、溶液ブレンディング、等、またはブレンディングの前述の方法のうちの少なくとも1つを含む組合せなどのいくつかの異なる方法で処理される。組成物の溶融ブレンディングは、剪断力、伸長力、圧縮力、超音波エネルギー、電磁気エネルギー、熱エネルギーまたは前述の力またはエネルギーの形態のうちの少なくとも1つを含む組合せの使用を含み、前述の力が単軸スクリュー、多軸スクリュー、噛み合い共回転または逆回転スクリュー、非噛み合い共回転または逆回転スクリュー、往復動スクリュー、ピン付きスクリュー、ピン付きバレル、ロール、ラム、螺旋ロータ、または前述のもののうちの少なくとも1つを含む組合せによって加えられる処理装置で行われる。
【0032】
前述の力を含む溶融ブレンディングは、限定ではなく、単軸または多軸スクリュー押出し機、バス(Buss)混練機、ヘンシェル(Henschel)、ヘリコーン(helicone)、ロス(Ross)ミキサー、バンバリ(Banbury)、ロールミル、射出成形機、真空成形機、中空成型機等の成型機械、または前述の機械のうちの少なくとも1つを含む組合せで行うことができる。組成物の溶融または溶液ブレンディング中、約0.01から約10キロワット時/組成物キログラム(kwhr/kg)の特定のエネルギーを付与することが一般に望ましい。この範囲内で、約0.05以上、好ましくは約0.08以上の、かつより好ましくは0.09kwhr/kg以上のエネルギーが組成物をブレンディングするのに望ましい。約9以下の、好ましくは約8以下の、かつより好ましくは約7kwhr/kgの特定エネルギーの量も組成物をブレンディングするために望ましい。
【0033】
一実施形態では、押出し機またはバス混練機などの溶融ブレンディング装置内に供給するのに先立ち、粉体形態、ペレット形態、シート形態等の高分子材料は、最初にセラミック充填剤および他の適宜な充填剤と、所望の場合ヘンシェルまたはロールミルで乾式ブレンドすることができる。別の実施形態では、このセラミック充填剤は、親練りの形態で溶融ブレンディング装置内に導入される。そのような方法では、この親練りは、高分子材料の下流で溶融ブレンディング装置内に導入することができる。
【0034】
親練りが使用されるとき、このセラミック充填剤は親練りの総重量の約10から50重量%の量で親練り内に存在することができる。一実施形態では、セラミック充填剤は、親練りの総重量の約12.5重量%以上の量で使用される。別の実施形態では、セラミック充填剤は親練りの総重量の約15重量%以上の量で使用される。別の実施形態では、セラミック充填剤は親練りの総重量の約30重量%以上の量で使用される。一実施形態では、セラミック充填剤は親練りの総重量の約45重量%以下の量で使用される。別の実施形態では、セラミック充填剤は親練りの総重量の約40重量%以下の量で使用される。別の実施形態では、セラミック充填剤は親練りの総重量の約35重量%以下の量で使用される。親練りで使用することができる高分子材料の例には、ポリプロピレン、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリエステル等、または前述の高分子材料のうちの少なくとも1つを含む組合せが含まれる。
【0035】
高分子ブレンドでの親練りの使用に関連する別の実施形態では、組成物の連続相を形成する高分子材料と同じ高分子材料を含む親練りを有することが時には望ましい。
【0036】
高分子ブレンドでの親練りの使用に関連するさらに別の実施形態では、組成物に使用される他の高分子と化学的性質の異なる高分子材料を含む親練りを有することが望ましい場合がある。この場合、親練りの高分子材料は、ブレンド内で連続相を形成するであろう。
【0037】
この高分子材料およびセラミック充填剤を含む組成物は、望ましい場合、多段ブレンディングおよび成形段階に掛けることができる。例えば、この組成物を最初に押出し、ペレットに成形することができる。このペレットは次いで成形機に供給され、そこで別の所望の形状に成形することができる。この試料は、射出成形、圧縮成形、中空成型、真空成形、または前述の成形方法を組み合わせた製造方法に掛けることができる。別法として、単軸溶融ブレンダーから出て来る組成物をシートまたは束に成形し、アニ−リング、単軸または2軸延伸などの押出し後工程に掛けることができる。
【0038】
溶液ブレンディングも、この組成物を製造するのに使用することができる。この溶液ブレンディングも剪断、圧縮、超音波振動、等などのセラミック充填剤の高分子材料との均一化を促進させる追加のエネルギーを使用する。一実施形態では、流体中に懸濁する高分子材料は、セラミック充填剤と共に超音波処理器内に導入される。この混合物は、セラミック充填剤を高分子材料内で分散させるのに効果的な時間、超音波処理によって溶液ブレンドすることができる。セラミック充填剤と共に高分子材料は所望の場合次いで乾燥し、押出し、成形することができる。流体が超音波処理中、高分子材料を膨潤させることが一般に望ましい。高分子材料を膨潤させることは一般に、溶液ブレンディング工程中、高分子材料を浸透させるセラミック充填剤の能力を改善し、結果として分散を改善する。
【0039】
溶液ブレンディングに関連する別の実施形態では、セラミック充填剤は高分子材料前駆体と共に超音波処理される。高分子材料前駆体は一般に、モノマー、二量体、三量体、等であり、反応させて高分子材料にすることができる。溶媒などの流体は、セラミック充填剤および高分子材料前駆体と共に超音波処理機内に適宜導入することができる。超音波処理の時間は一般に、高分子材料前駆体によるセラミック充填剤の封入を促進させるのに効果的な量である。封入後、この高分子材料前駆体は次いで、その中にセラミック充填剤が分散する高分子材料を形成するように高分子化される。
【0040】
封入および分散のこの方法を容易にするために使用できるモノマーの適切な例は、限定ではなく、ポリアセタール、ポリアクリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアリレート、ポリウレタン、ポリアリールスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレーンサルファイド(polyarylene sulfide)、ポリビニルクロライド(polyvinyl chloride)、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン等、または前述のもののうちの少なくとも1つを含む組合せなどの高分子の合成に使用されるものである。一実施形態では、高分子材料、高分子材料前駆体、流体および/またはセラミック充填剤の混合物は、約1分から24時間の間超音波処理される。別の実施形態では、この混合物は約5分以上の間超音波処理される。別の実施形態では、この混合物は約10分以上の間超音波処理される。別の実施形態では、この混合物は約15分以上の間超音波処理される。一実施形態では、この混合物は約15時間以下の間超音波処理される。別の実施形態では、この混合物は約10時間以下の間超音波処理される。別の実施形態では、この混合物は、より好ましくは約5時間以下の間超音波処理される。
【0041】
溶媒を組成物の溶液ブレンディングに使用することができる。この溶媒は、粘度改質剤として、あるいはセラミック充填剤の分散または懸濁を容易にするために使用することができる。プロピレンカーボネート(propylene carbonate)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate)、ブチロラクトン(butyrolactone)、アセトニトリル(acetonitrile)、ベンゾニトリル(benzonitrile)、ニトロメタン(nitromethane)、ニトロベンゼン(nitrobenzene)、スルホラン(sulfolane)、ジメチルホルムアミド(dimethylformamide)、N−メチルピロリドン(N−metylpyrrolidone)、等などの液体非プロトン性極溶媒、または前述の溶媒のうちの少なくとも1つを含む組合せを使用することができる。水、メタノール、アセトニトリル、ニトロメタン、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、等などの極プロトン性溶媒、または前述の極プロトン性溶媒のうちの少なくとも1つを含む組合せも使用することができる。ベンゼン、トルエン、塩化メチレン(methylene chloride)、四塩化炭素(carbon tetrachloride)、ヘキサン(hexane)、ジエチルエーテル(diethyl ether)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)、等などの他の無極性溶媒、または前述の溶媒のうちの少なくとも1つを含む組合せも所望の場合使用することができる。少なくとも1つの非プロトン極溶媒と少なくとも1つの無極性溶媒を含む共溶媒も使用することができる。一実施形態では、この溶媒はキシレン(xylene)、またはN−メチルピロリドンである。
【0042】
溶媒を使用する場合は、組成物の総重量の約1から約50重量%の量で使用することができる。一実施形態では、溶媒を使用する場合は、組成物の総重量の約3から約30重量%の量で使用することができる。さらに別の実施形態では、溶媒を使用する場合は、組成物の総重量の約5から約20重量%の量で使用することができる。溶媒を組成物のブレンディングの前、ブレンディング中かつ/またはブレンディング後に蒸発させることが一般に望ましい。
【0043】
溶液ブレンディングの後、所望の組成物を含む溶液は所望の基板の上に、成形(cast)、回転成形(spin cast)、浸漬被覆(dip coat)、スプレー塗装、ブラシ塗装(brush−paint)、かつ/または静電スプレー塗装(electrostatically spray paint)することができる。この溶液は次いで乾燥され、表面上に組成物をあとに残す。別の実施形態では、所望の組成物を含む溶液は、この組成物を含む物品を形成するように、回転成型(spin mold)、圧縮成型(compression mold)、射出成型(injection mold)、かつ/または中空成型(blow mold)することができる。
【0044】
ブレンディングは、分散剤(dispersant)、結合剤(binder)、重合調整剤(modifier)、浄化剤(detergent)および添加剤(additive)などの様々な2次化学種を使用して助けることができる。2次化学種は組成物の1つまたは複数の特性を高めるために加えることもできる。ブレンディングは、セラミック充填剤を高分子材料の薄い層、または例えばシラン層などの高分子材料と相性が良い相で事前被覆することによって助けることもできる。
【0045】
高分子材料およびセラミック充填剤を含む組成物は、高分子材料単独より優れた利点を有する。一実施形態では、この組成物は、高分子材料単独を含む組成物より少なくとも10%大きな誘電率を有する。別の実施形態では、この組成物は、高分子材料単独を含む組成物より少なくとも50%大きな誘電率を有する。別の実施形態では、この組成物は、高分子材料単独を含む組成物より少なくとも100%大きな誘電率を有する。
【0046】
この組成物は、高分子材料単独より大きな絶縁破壊電圧も有するので有利である。一実施形態では、この組成物は、少なくとも150ボルト/マイクロメートル(V/マイクロメートル)の絶縁破壊電圧を有する。この絶縁破壊は一般にこの組成物の厚さによって決まる。別の実施形態では、この組成物は、少なくとも400V/マイクロメートルの絶縁破壊電圧を有する。別の実施形態では、この組成物は、少なくとも500V/マイクロメートルの絶縁破壊電圧を有する。
【0047】
この組成物は、高分子材料単独より大きな耐コロナ性も有するので有利である。一実施形態では、この組成物は約200時間から約2000時間加えられる約1000ボルトから5000ボルトの電流に耐性を示す耐コロナ性を有する。別の実施形態では、この組成物は約250時間から約1000時間加えられる約1000ボルトから5000ボルトの電流に耐性を示す耐コロナ性を有する。さらに別の実施形態では、この組成物は、約500時間から約900時間加えられる約1000ボルトから5000ボルトの電流に耐性を示す耐コロナ性を有する。
【0048】
この組成物は、約100から約10ヘルツ(Hz)の周波数で測定するとき、約3以上の誘電率を有する。一実施形態では、この組成物は、約100から約10ヘルツ(Hz)の周波数で測定するとき、約5以上の誘電率を有する。さらに別の実施形態では、この組成物は、約100から約10ヘルツ(Hz)の周波数で測定するとき、約10以上の誘電率を有する。さらに別の実施形態では、この組成物は、約100から約10ヘルツ(Hz)の周波数で測定するとき、約50以上の誘電率を有する。
【0049】
別の実施形態では、この組成物は、平方メートル当たり約5キロジュール(kJ/m)以上の切欠きアイゾッド衝撃強さも有する。別の実施形態では、この組成物は、約10kJ/m以上の切欠きアイゾッド衝撃強さを有する。別の実施形態では、この組成物は、約15kJ/m以上の切欠きアイゾッド衝撃強さを有する。別の実施形態では、この組成物は、約20kJ/m以上の切欠きアイゾッド衝撃強さを有する。
【0050】
セラミック充填剤を含む組成物は、光学的に透明であることもできる。一実施形態では、この組成物は約70%以上の可視光に対する透過率を有する。別の実施形態では、この組成物は約80%以上の可視光に対する透過率を有する。さらに別の実施形態では、この組成物は約90%以上の可視光に対する透過率を有する。さらに別の実施形態では、この組成物は約95%以上の可視光に対する透過率を有する。
【0051】
さらに別の実施形態では、この組成物は成型されるときAクラスの表面仕上げも有する。成型される物品は、射出成型、中空成型、圧縮成型等、または前述のもののうちの少なくとも1つを含む組合せによって製造することができる。
【0052】
上記で言及したように、この組成物はバイアス電場を使用することによって、または周波数依存電場を使用することによってのいずれによっても同調可能でありながら、約2から約100の誘電率を有するということで有利である。換言すれば、この組成物の誘電率は同調可能である。バイアス電場の一例は、直流電流によって発生する電場であり、一方周波数依存電場は、交流電流によって発生する電場である。この組成物は、非常に低い誘電損率を有するので有利である。この組成物は、キャパシタ、心臓細動除去器、プリント配線板、スパークプラグキャップ、スパークプラグ用構成部品、または他の物品に有利に使用することができる。
【0053】
例示的であり、限定するものではないことを意味する以下の実施例は、本明細書で開示するナノコンポジット組成物および製造方法の様々な実施形態のうちのいくつかの組成物および製造方法を示す。
【実施例】
【0054】
この実施例は、同調可能なキャパシタ素子に一般に使用される直流電流電場による電圧の代わりに周波数を使用して組成物の誘電率を同調させる能力を実証するために行われた。高分子材料はSolvay Solexis Inc.から市販で入手可能なフッ化ビニリデン樹脂(polyvinylidene chloride)(PVDF)である。微粒子は、組成物の重量に基づき、60重量%の量加えられたカルシウム−銅−チタン−酸化物(CCTO’s)である。0.25グラムのフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)が最初にフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)溶液を形成するように153グラムのNMP溶媒中に溶解された。CCTO’sがPVDF溶液に加えられた。フィルムがフード内のガラス表面上に成形され、室温でそのまま乾燥された。フィルムの厚さは20から150マイクロメートルであり、プラチナでスパッターコーティングされた。このプラチナは、誘電率分析器の電極との電気的接点を形成する。この組成物フィルムは、Hewlett Packardによって製造された誘電率分析器HP4285Aを使用して10から10Hzの周波数で室温で誘電率テストに掛けられた。この結果を図に示す。図から周波数が増加すると誘電率(K)が低下するのが分かる。したがって、この実施例は所与の組成物に対して、誘電率を交流電場の周波数を使用することによって同調できることを実証している。
【0055】
本発明を例示的な実施形態を参照して説明してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更を行い、かつその要素に対し均等物に置き換えることができることを当業者は理解するであろう。さらに、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、本発明の教示に対し特定の状況または材料を適用するように多くの改変を行うことができる。したがって、本発明はこの発明を実施するために企図された最良の方法として開示された特定の実施形態に限定されず、本発明は添付の特許請求の範囲内に含まれる全ての実施形態を含むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】フッ化ビニリデン樹脂およびカルシウム−銅−チタン−酸化物(CCTO)を含む組成物に対する、誘電率(K)の周波数依存性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0057】
K 誘電率

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子材料と、
非線形誘電セラミック充填剤とを含む組成物であって、前記非線形誘電セラミック充填剤は100以上の誘電率を有し、かつ前記組成物の誘電率が同調可能である
組成物。
【請求項2】
2から100の誘電率を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物の前記誘電率が前記組成物に電場を加えることによって同調可能である、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
前記非線形誘電セラミック充填剤が1000以上の誘電率を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
前記非線形誘電セラミック充填剤が10000以上の誘電率を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
前記非線形誘電セラミック充填剤がペロブスカイトであり、前記ペロブスカイトが化学式(I)を有するカルシウム−銅−チタン−酸化物を含む、請求項1記載の組成物。
ACuTi12 (I)
ここでAは、カルシウムまたはカドミウムである。
【請求項7】
前記ペロブスカイトが化学式(II)を有する、請求項6記載の組成物。
A’2/3CuTiFeO12 (II)
ここでA’はビスマスまたはイットリウムである。
【請求項8】
前記ペロブスカイトが一般的な化学式(III)を有するリチウム・チタン共ドープニッケル酸化物(LTNOs)である、請求項7記載の組成物。
LiTiNi1−x−yO (III)
ここでxは0.3以下であり、かつyは0.1以下である。
【請求項9】
前記非線形誘電セラミック充填剤が、MgSiO、CaTiO、MgZrSrTiO、MgTiO、MgAl、WO、SnTiO、ZrTiO、CaSiO、CaSnO、CaWO、CaZrO、MgTa、MgZrO、CaZrO、BaZrO、SrZrO、BaSnO、CaSnO、MgSnO、Bi/2SnO、MgNb、SrNb、BaNb、MgTa、BaTa、BaTiO、SrTiO、バリウムストロンチウムチタン酸塩、ストロンチウム−ドープランタンマンガン酸塩、ランタンアルミニウム酸化物LaAlO、ランタンストロンチウム銅酸化物LSCO、イットリウムバリウム銅酸化物、または前述の酸化物のうちの少なくとも1つを含む組合せを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物の誘電率が、前記組成物を直流電流電場および/または交流電流電場に掛けることによって同調可能である、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物の誘電率が、前記組成物を電場からの電圧または周波数に掛けることによって同調可能である、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
高分子材料と、
ペロブスカイトとを含む組成物であって、前記組成物の誘電率が同調可能であり、さらに前記組成物が2から100の誘電率を有する組成物。
【請求項13】
前記ペロブスカイトが化学式(I)を有するカルシウム−銅−チタン−酸化物を含み、
ACuTi12 (I)
ここでAは、カルシウムまたはカドミウムであり、
または前記ペロブスカイトが化学式(II)を有し、
A’2/3CuTiFeO12 (II)
ここでA’はビスマスまたはイットリウムであり、
または前記ペロブスカイトが一般的な化学式(III)を有するリチウム・チタン共ドープニッケル酸化物(LTNOs)であり、
LiTiNi1−x−yO (III)
ここでxは0.3以下であり、かつyは0.1以下である、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
請求項13記載の組成物を備える物品。
【請求項15】
組成物を形成するために高分子樹脂を非線形誘電セラミック充填剤とブレンドするステップを含む方法であって、前記非線形誘電セラミック充填剤が100以上の誘電率を有し、かつ前記組成物の誘電率が同調可能である、方法。
【請求項16】
前記組成物を成型するステップをさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記組成物を射出成型するステップをさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項18】
請求項15記載の方法によって製造される物品。

【図1】
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【公開番号】特開2007−191689(P2007−191689A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−316430(P2006−316430)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】