説明

同軸ケーブル加工品

【課題】 同軸ケーブル加工品全体の幅寸法を縮小化し、細径丸孔部等狭いスペースにも設置可能で、尚且つ、インピーダンス整合した同軸ケーブル加工品を提供することにある。
【解決手段】同軸ケーブル群(1)が所定のピッチで引き揃えられてなる同軸ケーブル体の少なくとも一端で該同軸ケーブル群(1)が先端揃えされ、各ケーブルの切断端末を起点とする所定長さの中心導体群(5)、誘電体層群(4)、及びシールド層群(3)が順次露出し、該露出したシールド層群(3)が、金属グランドバー(7)でハンダ付けされている2本の端末加工同軸ケーブルを配線基板(9)と接続したケーブル加工品において、中心導体群(5)を全ての信号線が所定のインピーダンスにインピーダンス整合されている多層基板構造を有する該配線基板(9)の中心導体接続部(11)にハンダ接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パソコンの液晶ディスプレイ、携帯電話、小型通信機端末、更には電子機器内部配線などの用途に適した高速伝送用同軸ケーブル加工品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコンを始めとする各種電子機器の小型化に伴い、同軸ケーブル群を従来に比べてはるかに狭いスペースに高精度のピッチで、しかも、機器側の特性インピーダンスに整合するように配線することが要求されている。この要求に対処するためには、各同軸ケーブルの中心導体を所定のピッチのコネクタ端子や基板の回路に正確に接続する必要がある。
その一例として、ピッチ変換配線基板を使用して狭ピッチ化することが知られている(例えば、特許文献1参照)。この接続態様は、図3に示されるように、配線基板(9)、金属グランドバー接続部(10)、同軸ケーブル群(1)の各ケーブルの中心導体を接続した一括接続パッド(11)を含んでいる。その際、この態様は、配線基板(9)はその片面のみが利用された単層構造であり、これに伴ってグランドパターンである金属グランドバー接続部(10)も一箇所であることと配線基板(9)の途中からピッチが狭くなっていることに特徴がある。その結果、配線基板(9)に接続された同軸ケーブル群(1)をヒンジ部等の設置機器の狭い丸孔部を通す場合、次のような問題が生じる。すなわち、配線基板(9)の広幅部分の幅は通常3.0mm〜10.0mmにあり、該丸孔部の内径より大きい場合が殆どであるので、同軸ケーブル群(1)の設置不可という根本的な問題が生ずる。
上記問題を回避するためには、幅方向に変形が容易な配線基板が使用される。この場合には、配線基板を強制的に変形させて該丸孔部を通過させることは可能であるものの、該配線基板に塑性変形や亀裂が生じ、ひいては、ハンダ付部が剥離してしまう等の致命的損傷が惹起される。従って、これら従来法では、同軸ケーブル群(1)を設置機器の狭い丸孔部を通して設置しようとする場合の根本的な解決策とはなっていない。
又、前述の特許文献1の態様では、配線基板(9)にハンダ付けした後の同軸ケーブル群(1)を、一括接続パッド(11)を中心導体毎に一本ずつ切り離す必要がある。従って、この態様は、加工工数が掛かり過ぎるという問題も抱えている。又、この態様では、同軸ケーブル群(1)と配線基板(9)との接続損失が大きく、しかも信号変換効率が良くないという問題もある。
【0003】
【特許文献1】特開2003−309339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の課題は、同軸ケーブル加工品全体の幅寸法を縮小化し、細径の丸孔部等の狭いスペースにも設置可能で、尚且つ、インピーダンス整合した同軸ケーブル加工品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、上記課題は、配線基板として、該基板上の全ての信号線がこれに接続される同軸ケーブル群とインピーダンス整合するような多層基板構造を採用するとともに各層に中心導体接続部及び金属グランドバー接続部を配置し、そして、各層に同軸ケーブル群を接続することにより達成される。
【発明の効果】
【0006】
上記の構成を採る本発明によれば、以下のような顕著な作用・効果が奏される。
a.配線基板と同軸ケーブルとのインピーダンス整合がなされているので、接続ロスが無く、信号変換効率が改善される。
b.端末加工同軸ケーブル群の複数本が、多層構造の配線基板の各層に分散されるので、配線基板の幅が大幅に縮小される。その結果、端末加工同軸ケーブル全体の幅寸法、ひいては配線基板の幅がその層数(n)に対応して凡そn分の1に縮小され、微細丸孔部も通過し得るので、適用用途が大幅に拡大する。
因みに、図3の従来の態様では、配線基板の幅にほぼ近い幅を有する単一の金属グランドバー接続部(グランドパターン)(10)に一括ハンダ付けされるので、上記の効果は期待するべくもない。
c. 従来のように、一括接続パッドを一本ずつ切り離す必要がないので、生産性が格段に向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を、2層配線基板を用いた例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の同軸ケーブル加工品の一例を示す平面図である。
図2は、図1の側面図である。
図3は、従来の同軸ケーブル加工品を示す平面図である。
図1及び図2においては、図3の同軸ケーブル群(1)を2組(1a)、(1b)の同軸ケーブル群に分割し、一方を配線基板(9)の表面(9a)に、他方を配線基板(9)の裏面(9b)に接続した例が示されている。従って、本例では、図3の配線基板(9)の広幅部の幅は凡そ2分の1に縮小されている。
上記の態様において、同軸ケーブル群(1a)、(1b)は、夫々の先端部近傍で粘着テープにより所定のピッチで引き揃えられ且つ先端揃えされてフラット状ケーブルを構成している。そして、各ケーブルにおいては、各先端部を起点として、所定長さの中心導体群(5a)、誘電体層群(4b)、横巻きからなるシールド層群(3a)、そして、シース層群(2a)が順次露出している。その際、露出したシールド層群(3a)は金属グランドバー(7a)に一括ハンダ付けされたうえで、更に、配線基板(9)の表面(9a)の金属グランドバー接続部(10a)に接続されている。同様にして、露出したシールド層群(3b)も金属グランドバー(7b)に一括ハンダ付けされたうえで、更に、配線基板(9)裏面(9b)の金属グランドバー接続部(10b)に接続されている。更に、配線基板(9)表面(9a)では、露出した中心導体群(5a)が中心導体接続部(11a)に、そして、配線基板(9)裏面(9b)では、露出した中心導体群(5b)が中心導体接続部(11b)に接続されている。又、(6a)及び(6b)は、シールド層群(3a)、(3b)並びに中心導体群(5a)、(5b)を配線基板(9)に接続するためのハンダ、そして、(8a)及び(8b)は、図2に示すシース層群(2a)、(2b)の除去開始点である。
本発明においては、配線基板(9)が、これに接続される同軸ケーブルとインピーダンス整合していることが重要である。更に言えば、接続される同軸ケーブル群の全ての信号線と配線基板(9)上の全ての信号線とがインピーダンス整合している必要がある。インピーダンス整合の手段としては、配線基板(9)上あるいは基板内部にチップコンデンサ、チップインダクタンス、チップ抵抗等のLCR素子を配設するか、スルーホール付き多層基板の配線容量、配線インダクタンス、更には、配線抵抗を利用してインピーダンス整合させる態様が挙げられる。その際、同軸ケーブル群(1a)、(1b)とインピーダンス整合化させる配線基板(9)の特性インピーダンス値としては、これら同軸ケーブル群の特性インピーダンス値に応じて50Ω、80Ω、100Ω等各種の値に設定すればよい。
更に、この配線基板(9)について詳述する。
その層数としては、基板幅、面積、信号線数に応じて2層〜10層程度の範囲から適宜選択すればよい。構成材料としては、ガラスエポキシ、紙エポキシ、ベークライト、更にはポリイミド等各種材料が挙げられるが、その中でも、薄くて、強度も高いガラスエポキシ基板又はポリイミド基板からなる耐熱性基板がより好ましい。又、配線基板(9)の厚さはハンダ耐熱性及び寸法縮小化を考慮して0.5mm〜3.0mmであることが好ましい。
次に、配線基板(9)上に設けられた金属グランドバー接続部(10a)、(10b)については、強度等を考慮して厚さが0.01mm〜0.1mm、幅は金属グランドバー(7a)、(7b)の幅に合わせながら、0.5mm〜1.5mmとするのが好ましい。
一方、中心導体接続部(11a)、(11b)については、接続強度等を考慮し、厚さが0.01mm〜0.1mm、幅が0.3mm〜1.0mm、そして、ピッチは、同軸ケーブル群(1a)、(1b)のピッチに合わせて、0.2mm〜1.0mmとするのが好ましい。尚、パターンの材質としては、すずメッキ、ハンダメッキした銅等の金属からなる金属箔が常用されている。
本発明で使用する同軸ケーブルとしては、外径が0.2mm〜1.0mmの細径化ないし極細化ケーブルが好ましく用いられる。このとき、中心導体群(5a)、(5b)としては、通常、直径が0.02mm〜0.15mmのスズ入り銅合金、銀銅合金線、あるいは軟銅線等からなる導線の単線又はそれら単線を撚り合わせた、外径が0.06mm〜0.6mmの細線が好ましく用いられる。これら中心導体群を被覆する誘電体層群(4a)、(4b)は、絶縁性を有する任意の合成樹脂、例えば、ポリエチレン、フッ素樹脂などで構成される。同軸ケーブルの信号伝送特性及びハンダ固定を行う際の耐熱性の点では、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素樹脂が好ましく用いられる。これらの誘電体層は、その同軸ケーブルの特性インピーダンスを考慮し、0.03mm〜0.3mmの厚さに調整すればよい。
誘電体層に被覆されるシールド層群(3a)、(3b)としては、通常、スズ入り銅合金線、銀銅合金線や軟銅線などの横巻きや編組、縦添え等が用いられる。そのなかでも、シールド素線束の仕分けが容易で生産性と加工性に優れた横巻が好ましく採用される。これらのシールド層群を構成する各シールド素線の素線径は、シールド層の凹凸を少なくし、同時に、仕分け作業のし易さ及び機械的強度を考慮して、0.01mm〜0.1mmの範囲から適宜設定すればよい。尚、同軸ケーブル群の捻り防止のため、隣合う同軸ケーブルのシールド層の巻き方向が互いに逆方向であることが好ましい。
更に、シース層群(2a)、(2b)は、ポリエステルフィルムやフッ素樹脂等で構成される。
なお、上記の説明では、配線基板(9)から同軸ケーブルを除く外部機器への接続方法については割愛したが、配線基板(9)上にコネクタを配設する接続方法あるいは、配線基板(9)の端部に接続パターン部を設けて接続する方法等各種接続方法がある。
【実施例】
【0008】
以下は、図1〜図2に示した同軸ケーブル加工品の製造例である。
A. 端末加工同軸ケーブル群(1a)の作成:
(A−1) 直径0.03mmのスズ入り銅合金線を7本撚り合わせてなる、外径が0.09mmの中心導体の外周に、厚さ0.075mmのPFA樹脂を誘電体層として被覆した。次いで、誘電体層の外周に、素線径が0.03mmのスズ入り銅合金線1本を横巻きしてシールド層を形成し、更に、その周りにシース層として着色ポリエステルフィルムを巻き付けて、ケーブル長100mm、外径0.4mmの同軸ケーブルを10本作成した。次いで、以降の作業がやり易くするため、これら10本の同軸ケーブルの先端部近傍を粘着テープにより0.5mmピッチで平行に配列してフラット状ケーブルを得た後、更に、先端揃えした。
(A−2) 上記フラット状ケーブルの先端部から5mmの位置、すなわちシース除去開始点(8)に炭酸レーザー光を照射して切れ目を入れてから、前記5mmの長さの粘着テープ及びシース層群(2a)を該ケーブル先端方向に引き抜いて、シールド層群(3a)を露出させた。この状態ではシールド層群(3a)は5mmの長さで露出したことになる。この後、露出シールド層群(3a)を該ケーブル先端部から4.2mmの長さに亘って解して誘電体層群(4a)から取り除いた。このときに残存するシールド層群(3a)の露出長さは0.8mmである。
次に、露出したシールド層群(3a)を、幅1mm、長さ5mm、厚さ0.1mmの錫板からなる金属グランドバー(7a)上にハンダ付けした。その後、露出した誘電体層群(4a)とシールド層群(3a)とからなる線状部分を再度引き揃えて0.5mmのピッチで、それらの全面に亘って粘着テープに張り付けた。引き続いて、各ケーブルの先端から3.5mmの位置に炭酸レーザー光を照射して誘電体層群(4a)に切れ目を入れてから、一度に取り除いて、中心導体群(5a)を露出させた。この結果、各ケーブル(1)について、露出長さが3.5mmの中心導体群(5a)が得られた。
B. 端末加工同軸ケーブル群(1b)の作成:
(A−1)の手順で、同一仕様のフラット状ケーブルを作成した後、(A−2)の手順を経て、端末加工同軸ケーブル群(1b)を作成した。
C. 2層配線基板の作成:
配線基板(9)としては、幅5.5mm、長さ15mm、厚さ1.5mmの両面ガラスエポキシ基板を使用した。又、配線基板(9)の表面(9a)には幅が1.0mm、長さが5.0mm、の金属グランドバー接続部(10a)が、一方、その裏面(9b)には幅が1.0mm、長さが5.0mmの金属グランドバー接続部(10b)を設けた。更に、配線基板(9)の表面(9a)には幅が0.2mm、長さが3.0mmの中心導体接続部(11a)を、一方、その裏面(9b)には幅が0.2mm、長さが3.0mmの中心導体接続部(11b)を設けた。これらの金属グランドバー接続部及び中心導体接続部は、厚さ0.05mmの銅箔にハンダメッキを施して得られたものである。以上の配線基板(9)の特性インピーダンスは、各同軸ケーブルの特性インピーダンス50Ωに合わせて、全ての信号線パターンにおいて50オームとして、インピーダンス整合を行った。
D.同軸ケーブル加工品の完成:
グランドバー(7a)が接続された状態の同軸ケーブル群(1a)を配線基板(9)の表面(9a)に、一方、グランドバー(7b)が接続された状態の同軸ケーブル群(1b)を配線基板(9)の裏面(9b)にハンダ付けにより固定した。このとき、配線基板(9)の表面(9a)の金属グランドバー接続部(10a)にシールド層群(3a)をハンダ(6a)にてハンダ付けし、更に、中心導体接続部(11a)に、中心導体群(5a)の中心導体を一本ずつハンダ付けした。
同様にして、配線基板(9)の裏面(9b)の金属グランドバー接続部(10b)にシールド層群(3b)をハンダ(6b)にてハンダ付けし、更に、中心導体接続部(11b)に、中心導体群(5b)の中心導体を一本ずつハンダ付けして、本発明の同軸ケーブル加工品を完成した。
【産業上の利用可能性】
【0009】
本発明の同軸ケーブル加工品は極細径ケーブル及び極狭ピッチのフラットケーブルにも対応できるので、携帯電話、パソコン、更にはPDA(携帯型データ端末)等に特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の同軸ケーブル加工品の一例を示す平面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】従来の同軸ケーブル加工品を示す平面図である。
【符号の説明】
【0011】
1 同軸ケーブル群(従来の態様)
1a、1b 同軸ケーブル群(本発明の態様)
2a、2b シース層群
3a、3b シールド層群
4a、4b 誘電体層群
5a、5b 中心導体群
6a、6b ハンダ
7a、7b 金属グランドバー
8a、8b シース除去開始点
9 配線基板
9a 配線基板(9)の表面
9b 配線基板(9)の裏面
10a、10b 金属グランドバー接続部(グランドパターン)
11a、11b 中心導体接続部


















【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のピッチで引き揃えられてなる同軸ケーブル群の少なくとも一端が先端揃えされ、該先端を起点として所定長さの中心導体群、誘電体層群、及びシールド層群が順次露出し、該露出したシールド層群が金属グランドバーにハンダ付けされている端末加工同軸ケーブルを、
配線基板に設けた中心導体接続部及び金属グランドバー接続部にハンダ接続した同軸ケーブル加工品において、
該配線基板として、該露出した中心導体群がハンダ接続される配線基板上の全ての信号線が同軸ケーブル群の全ての信号線のインピーダンスにインピーダンス整合されている多層配線基板が用いられ、その際、該多層配線基板の各層には、中心導体接続部及び金属グランドバー接続部が配置され、そして、該各層毎に個々の端末加工同軸ケーブルがハンダ接続されていることを特徴とする同軸ケーブル加工品。
【請求項2】
該インピーダンス整合が、該多層配線基板上あるいは基板内部に配設されるLCR素子によりなされた請求項1に記載の同軸ケーブル加工品。
【請求項3】
該インピーダンス整合が、スルーホール付き多層基板の配線容量、配線インダクタンス、又は配線抵抗を利用してなされた請求項1に記載の同軸ケーブル加工品。
【請求項4】
該配線基板の層数が2〜10層である請求項1〜3のいずれかに記載の同軸ケーブル加工品。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−48639(P2007−48639A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−232647(P2005−232647)
【出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【出願人】(000226932)日星電気株式会社 (98)
【Fターム(参考)】