説明

同軸電線及び電線製造装置

【課題】 最外層の金属編組の電磁シールド性能を低下させること無く、端末加工の際に最外層の金属編組を容易に拡げる事ができる同軸電線を提供する。
【解決手段】この同軸電線1は、内部導体3と、内部導体3を被覆する絶縁層5と、絶縁層5を被覆する多重金属編組7と、多重金属編組7を被覆する外被9とを備え、多重金属編組7のうちの最外層金属編組7bは、当該同軸電線1の長手方向に沿って部分的に相対的に広いピッチ(広ピッチ部分7b−1)で編み組まれ、大部分を占めるその残部が相対的に狭いピッチ(狭ピッチ部分7b−2)で編み組まれて形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属編組を備えた同軸電線および電線製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
同軸電線は、一般に、内部導体と、前記内部導体を被覆する絶縁層と、前記絶縁層を被覆する多重金属編組と、前記多重金属編組を被覆する外被とを備えて構成される。
【0003】
かかる同軸電線では、端末加工の際、刃を当該同軸電線に対して同心円状に回転させて当該同軸電線の外被等を切除するタイプの皮剥装置を用いて、当該同軸電線の端部の外被および最外層の金属編組が切除されて、内層側の金属編組が露出される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の同軸電線においては、理想的には各金属編組および外被が同心円状に形成され、且つ各金属編組が入り乱れること無く均一に編み組まれている事が望ましいが、実際には各金属編組および外被には完全に同心円状になっていない箇所があったり、各金属編組には入り乱れて均一に編み組まれていない所がある。
【0005】
そのため、上記の様なタイプの皮剥装置を用いて端末加工を行った場合、外被や最外層の金属編組を切り残したり、また外被や最外層の金属編組を切り過ぎて内層側の金属編組に傷を付けてしまう場合があり、内層側の金属編組を傷付けない無い様にして最外層の金属編組を切除する事が困難である。
【0006】
そこで、最外層金属編組のみを上記の皮剥装置を用いずに手加工で切除する案が提案されている。最外層金属編組を手加工で切除するには、切除する部分の最外層金属編組を拡げる必要があるので、最外層金属編組を拡げ易くするべく最外層金属編組のピッチを広くしておく事が望ましい。
【0007】
しかしながら、最外層金属編組のピッチを広くすると、最外層金属編組の電磁シールド性能が低下するという欠点を招く。
【0008】
そこで、この発明の課題は、最外層金属編組の電磁シールド性能を低下させること無く、端末加工の際に最外層金属編組を容易に拡げる事ができる同軸電線および電線製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する為に、請求項1に記載の発明は、内部導体と、前記内部導体を被覆する絶縁層と、前記絶縁層を被覆する多重金属編組と、前記多重金属編組を被覆する外被とを備え、前記多重金属編組のうちの最外層金属編組は、当該同軸電線の長手方向に沿って部分的に相対的に広いピッチ(以後、広ピッチと称す)で編み組まれ、大部分を占めるその残部が相対的に狭いピッチ(以後、狭ピッチと称す)で編み組まれて形成されるものである。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記最外層金属編組の前記広ピッチ部分は、当該同軸電線の長手方向に沿って一定間隔置きに間欠的に形成されるものである。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記最外層金属編組の前記広ピッチ部分は、当該同軸電線における切断されて端末加工される部分だけに形成されるものである。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記外被の表面に、前記最外層金属編組の前記広ピッチ部分の位置を特定するためのマーキングが施されるものである。
【0013】
請求項5に記載の発明は、相対的に狭いピッチ(以後、狭ピッチと称す)で編み組まれた部分と相対的に広いピッチ(以後、広ピッチと称す)で編み組まれた部分とからなる金属編組を備えた同軸電線を製造する電線製造装置であって、電線を送出する送出手段と、前記送出手段からの前記電線の外周に金属編組を編み組む編組手段と、前記編組手段により金属編組が編み組まれた前記電線を巻き取る巻取手段と、前記巻取手段により巻き取られる前記電線の長さを測定する測長手段と、前記測長手段の測定結果に基づき前記巻取手段の巻取速度を変速する変速手段とを備え、前記変速手段は、交互に、前記巻取手段に前記電線が前記狭ピッチ部分の長さ分巻き取られる間は、前記巻取手段の巻取速度を相対的に遅くして前記編組手段により編み組まれる金属編組のピッチを狭ピッチにすることにより、前記編組手段により前記電線の外周に金属編組を狭ピッチで当該長さ分編み組ませ、前記巻取手段に前記電線が前記広ピッチ部分の長さ分巻き取られる間は、前記巻取手段の巻取速度を相対的に速くして前記編組手段により編み組まれる金属編組のピッチを広ピッチにすることにより、前記編組手段により前記電線の外周に金属編組を広ピッチで当該長さ分編み組ませるものである。
【0014】
請求項6に記載の発明は、相対的に狭いピッチ(以後、狭ピッチと称す)で編み組まれた部分と相対的に広いピッチ(以後、広ピッチと称す)で編み組まれた部分とからなる金属編組と、前記金属編組に被覆された外被とを備えた同軸電線の前記外被の表面に、前記金属編組の前記広ピッチ部分の位置を特定するためのマーキングを施す電線製造装置であって、前記同軸電線の外側から前記狭ピッチ部分と前記広ピッチ部分との境界を検出する渦電流センサと、前記渦電流センサの検出結果に基づき前記同軸電線の外被の表面に前記マーキングを施すマーキング手段と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、最外層金属編組は、当該同軸電線の長手方向に沿って部分的に広ピッチで編み組まれて形成されるので、その広ピッチ部分において切断して端末加工することにより、端末加工の際に最外層金属編組を容易に拡げる事ができる。また、最外層金属編組は、大部分を占めるその残部が狭ピッチで編み組まれて形成されるので、最外層金属編組の電磁シールド性能の低下を防止できる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、最外層金属編組の広ピッチ部分は、当該同軸電線の長手方向に沿って一定間隔置きに間欠的に形成されるので、請求項1の効果を損なわずに当該同軸電線の切断箇所の自由度を高める事ができる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、最外層金属編組の広ピッチ部分は、当該同軸電線における切断されて端末加工される部分だけに形成されるので、広ピッチ部分の割合を低減できて、最外層金属編組の電磁シールド性能をより向上できる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、外被の表面に、最外層金属編組の広ピッチ部分の位置を特定するためのマーキングが施されるので、当該同軸電線の切断の際に、外被の外側から容易に最外層金属編組の広ピッチ部分の位置を特定できる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、送出手段、巻取手段および編組手段からなる周知の電線製造装置において測長手段および変速手段を追加した構成なので、周知の電線製造装置を利用して低コストで、狭ピッチで編み組まれた部分と広ピッチで編み組まれた部分とからなる金属編組を備えた同軸電線を製造できる。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、渦電流センサにより同軸電線の外側から狭ピッチ部分と広ピッチ部分との境界を検出するので、容易に同軸電線の外側から狭ピッチ部分と広ピッチ部分との境界を検出できてマーキングを施す事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
<実施の形態1>
この実施の形態に係る同軸電線1は、図1および図2の様に、内部導体3と、内部導体3を被覆する絶縁層(例えば誘電体層)5と、絶縁層5を被覆する多重金属編組7と、多重金属編組7を被覆する外被9とを備えて構成される。
【0022】
多重金属編組7は、例えば絶縁層5を被覆する導電性金属編組(例えば銅編組)7aと、導電性金属編組7aを被覆する磁性金属編組(例えば鉄編組)7bとの2重金属編組として形成される。
【0023】
磁性金属編組(即ち多重金属編組7のうちの最外層金属編組)7bは、当該同軸電線1の長手方向に沿って部分的(部分7b−1)に相対的に広いピッチ(以後、広ピッチと称す)で編み組まれ、大部分を占めるその残部(部分7b−2)が相対的に狭いピッチ(以後、狭ピッチと称す)で編み組まれて形成される。より詳細には、最外層金属編組7bの広ピッチ部分7b−1は、当該同軸電線1の長手方向に沿って一定間隔置きに間欠的に形成される。その形成状態では、狭ピッチ部分7b−2の総和が最外層金属編組7bの全体の大部分を占める様に、各広ピッチ部分7b−1の長さは、各狭ピッチ部分7b−2の長さよりも短く形成される。
【0024】
ここで、図3に狭ピッチ部分7b−2のピッチと広ピッチ部分7b−1のピッチの設定値の一例を検討した結果を示す。図3は、鉄編組(最外層金属編組)7bのピッチの設定値が例えば10mm、18mm、27mm、36mmの場合の当該鉄編組7bの拡げ易さと電磁シールド性能との関係を示したものである。鉄編組7bの電磁シールド性能は、ピッチが狭いほど高くなるので、10mmの場合が最も良好となり、36mmの場合が最も劣ることになる。鉄編組7bの拡げ易さは、図3の各設定値での鉄編組7bの拡げ状態の写真図から分かる様に、10mmの場合および18mmの場合はあまり拡がらず(即ち拡げ難く「×」)、27mmの場合はまあまあ拡がり(即ちまあまあ拡げ易い「△」)、36mmの場合は最も良好に拡がる(即ち最も拡げ易い「○」)事が分かる。
【0025】
尚、鉄編組7bの拡げ方としては、同軸電線1の先端部1aの外被9を剥いで最外層金属編組7bを露出させる(図7参照)。そして、その最外層金属編組7bの先端部1aの基部をその周囲に渡ってラジオペンチなどの工具で挟み締め付けて行き、その挟み締め付けにより最外層金属編組7bの先端部1aが自発的にどの程度拡がるかという方法を採用している(図8参照)。
【0026】
尚、図3の各設定値(10mm、18mm、27mm、36mm)での鉄編組7bの拡げ状態の写真図はそれぞれ、左側の図が拡げられた状態の側面視図であり、右側の図は拡げられた状態の正面図(先端側から見た図)である。
【0027】
以上の事から、上記の設定値(10mm、18mm、27mm、36mm)のなかでは、狭ピッチ部分7b−2のピッチとしては、電磁シールド性能を確保する必要性から10mmの場合が最適であり、広ピッチ部分7b−1のピッチとしては、拡げ易さの観点から36mmの場合が最適である。尚、図3の設定値は一例であり、これらの設定値に限定されれるものではない。
【0028】
導電性金属編組(内層側の金属編組)7aは、従来同様に全体に渡って一定の狭ピッチ(例えば10mm)で編み組まれて形成される。
【0029】
外被9の表面には、最外層金属編組7bの広ピッチ部分7b−1の位置を特定するためのマーキング11が施されている。例えば、図4の様に、外被9の表面のうち、最外層金属編組7bの広ピッチ部分7b−1と狭ピッチ部分7b−2の境界上の部分にマーキング11がされる。この場合、広ピッチ部分7b−1の方が狭ピッチ部分7b−2より間隔(長さ)が短いので、間隔の短いマーキング11間が広ピッチ部分7b−1となる。または、図5の様に、外被9の表面に、最外層金属編組7bの広ピッチ部分7b−1間において当該同軸電線1の長手方向に沿ってライン状にマーキング11がされる。この場合は、マーキング11の区間が広ピッチ部分7b−1となる。
【0030】
次に、この同軸電線1の端末加工の手順を説明する。
【0031】
まず、同軸電線1を、その表面に施されたマーキング11に基づきその最外層金属編組7bの広ピッチ部分7b−1の中間で切断する(図1(切断前)、図6(切断後))。即ち、マーキング11が同軸電線1の外被9の表面に図4の様に施されている場合は、間隔の短いマーキング11間の中間が広ピッチ部分7b−1の中間になるので、間隔の短いマーキング11間の中間で同軸電線1を切断する。または、マーキング11が同軸電線1の外被9の表面に図5の様に施されている場合は、マーキング11の中間が広ピッチ部分7b−1の中間になるので、マーキング11の中間で同軸電線1を切断する。
【0032】
そして、この様に切断した同軸電線1の当該切断端に端末加工を行う。即ち、まず図7の様に、同軸電線1の当該切断端近傍1aの外被9を例えば手加工で切除して、当該切断端付近1aにおける最外層金属編組7bの広ピッチ部分7b−1を露出させる。
【0033】
そして、露出した当該最外層金属編組7bの広ピッチ部分7b−1を例えば手加工で拡げ(図8)、その拡げた広ピッチ部分7b−1を例えばニッパで切断して内層側の金属編組7aを露出させる。この様にして同軸電線1の当該切断端に端末加工を行う。
【0034】
尚、ニッパを用いて当該拡げた広ピッチ部分7b−1を切断する代わりに、一対の円筒刃(その内径が同軸電線1の外径に略一致する外側円筒刃13aおよびその外径が外側円筒刃13aの内径に略一致する内側円筒刃13b(図9参照))を用いて当該拡げた広ピッチ部分7b−1を切断してもよい。即ち、図9の様に、同軸電線1の外被9の外周に外側円筒刃13aを装着し、広ピッチ部分7b−1を拡げて内層側の金属編組7aを露出させ、その露出させた内層側の金属編組7aの外周に内側円筒刃13bを装着する。そして、この状態で、外側円筒刃13aを内側円筒刃13bの外周に嵌合させる様にスライドさせることにより、外側円筒刃13aの開口の内径側エッジ13a−1と内側円筒刃13bの開口の外径側エッジ13b−1とにより、拡げた広ピッチ部分7b−1の基端を挟み込んで切断してもよい。
【0035】
以上の様に構成された同軸電線1によれば、最外層金属編組7bは、当該同軸電線1の長手方向に沿って部分的に広ピッチで編み組まれて形成されるので、その広ピッチ部分7b−1において切断して端末加工することにより、端末加工の際に最外層金属編組7bを容易に拡げる事ができる。また、最外層金属編組7bは、大部分を占めるその残部が狭ピッチで編み組まれて形成されるので、最外層金属編組7bの電磁シールド性能の低下を防止できる。
【0036】
また、最外層金属編組7bの広ピッチ部分7b−1は、当該同軸電線1の長手方向に沿って一定間隔置きに間欠的に形成されるので、上記の効果を損なわずに当該同軸電線1の切断箇所の自由度を高める事ができる。
【0037】
また、外被9の表面に、最外層金属編組7bの広ピッチ部分7b−1の位置を特定するためのマーキング11が施されるので、当該同軸電線1の切断の際に、外被9の外側から容易に最外層金属編組7bの広ピッチ部分7b−1の位置を特定できる。
【0038】
尚、この実施の形態では、最外層金属編組7bの広ピッチ部分7b−1を、当該同軸電線1の長手方向に沿って一定間隔置きに間欠的に形成する場合で説明したが、そうする代わりに、当該同軸電線1における切断されて端末加工される部分だけに形成してもよい。この様にすれば、この実施の形態の場合よりも、当該同軸電線1の全体に占める広ピッチ部分7b−1の割合を低減できるので、最外層金属編組7bの電磁シールド性能をより向上できる。
【0039】
<実施の形態2>
この実施の形態に係る電線製造装置は、上記実施の形態1の同軸電線1を製造するものである。
【0040】
この電線製造装置17は、図10の様に、電線(内部導体3の外周に順に絶縁層5、多重金属編組7a,7bのうちの最外層金属編組7b以外の内層側の金属編組7aが被覆されてなる未完電線)1’を送出する送出部(送出手段)19と、送出部19からの電線1’の外周に最外層金属編組7bを編み組む編組部(編組手段)21と、編組部21により編み組まれた最外層金属編組7bの外周に外被9を形成する外被形成部23と、外被形成部23からの電線1''に対し、その外被9の外側からの非接触検出により、その最外層金属編組7bにおける狭ピッチ部分7b−2と広ピッチ部分7b−1の境界を検出する渦電流センサ25と、渦電流センサ25の検出結果に基づき、電線1''の外被9の表面に最外層金属編組7bの広ピッチ部分7b−1の位置を特定するためのマーキングを施すマーキング部(マーキング手段)27と、各部21,23,27で処理されて製造された当該同軸電線1を巻き取る巻取部(巻取手段)29と、巻取部29により巻き取られる同軸電線1の長さを測定する測長部(例えば測長ローラ)(測定手段)31と、測長部31の測定結果に基づき巻取部29の巻取速度を変速する無断変速部(変速手段)33とを備える。
【0041】
無断変速部33は、測長部31の測長結果に基づき、巻取部29により同軸電線1が狭ピッチ部分7b−2の長さ分および広ピッチ部分7b−1の長さ分が交互に巻き取られる毎に、巻取部29により同軸電線1が狭ピッチ部分7b−2の長さ分巻き取られる間は、巻取部29の巻取速度を相対的に遅く制御して(即ち編組部21を通過する電線1’の速さを相対的に遅くして)編組部21により編み組まれる金属編組のピッチを狭ピッチにすることにより、編組部21により電線1’の外周に最外層金属編組7bを狭ピッチで当該長さ分編み組ませ、他方、巻取部29により同軸電線1が広ピッチ部分7b−1の長さ分巻き取られる間は、巻取部29の巻取速度を相対的に速く制御して(即ち編組部21を通過する電線1’の速さを相対的に速くして)編組部21により編み組まれる最外層金属編組7bのピッチを広ピッチにすることにより、編組部21により電線1’の外周に最外層金属編組7bを広ピッチで当該長さ分編み組ませる。これにより、最外層金属編組7bが、当該電線1’の長手方向に沿って部分的に広ピッチで編み組まれ、大部分を占めるその残部が狭ピッチで編み組まれ、且つ、その広ピッチ部分7b−1が、当該電線1’の長手方向に沿って一定間隔置きに間欠的に形成される。
【0042】
マーキング部27は、渦電流センサ25の検出結果に基づき、電線1''の外被9の表面上での最外層金属編組7bの広ピッチ部分7b−1と狭ピッチ部分7b−2との境界P1,P2の位置を特定し、その位置に図4の様にマーキング11を施す。
【0043】
または、そうする代わりに、マーキング部27は、渦電流センサ25の検出結果に基づき、電線1''の外被9の表面上での最外層金属編組7bの広ピッチ部分7b−1から狭ピッチ部分7b−2への変わり目P1(図5参照)の位置および狭ピッチ部分7b−2から広ピッチ部分7b−1への変わり目P2の位置を特定し、その特定結果に基づき、図5の様に電線1''の外被9の表面上での最外層金属編組7bの広ピッチ部分7b−1間に当該電線1''の長手方向に沿ってライン状にマーキング11を施す。
【0044】
次に、図10を参照してこの電線製造装置17の動作を説明する。
【0045】
この電線製造装置17では、送出部19から未完電線(即ち内部導体3の外周に順に絶縁層5、多重金属編組7a,7bのうちの最外層金属編組7b以外の内層側の金属編組7aが被覆されてなる電線)1'が送出され、編組部21によりその未完電線1'の外周に最外層金属編組7bが編み組まれ、外被形成部23によりその最外層金属編組7bの外周に外被9が形成され、マーキング部27によりその外被9の表面にマーキング11が施されて、完成品としての同軸電線1に仕上げられて巻取部29に巻き取られて行く。
【0046】
その際、測長部31により巻取部29により巻き取られる電線1の長さが測定されており、その測定結果に基づき、無断変速部33により、電線1が広ピッチ部分7b−1の長さ分および狭ピッチ部分7b−2の長さ分交互に巻取部29に巻き取られる毎に、上記の様に巻取部29の巻取速度が速くまたは遅く変速され(即ち編組部21を通過する電線1'の通過速度が速くまたは遅くなる様に制御され)、これにより編組部21により編み組まれる最外層金属編組7bのピッチが狭ピッチまたは広ピッチに調整されて、未完電線1'の外周に、最外層金属編組7bが、当該電線1'の長手方向に沿って部分的に広ピッチで編み組まれると共に大部分を占めるその残部が狭ピッチチで編み組まれ、且つその広ピッチ部分7b−1が当該電線1'の長手方向に沿って一定間隔置きに間欠的に形成されて行く。
【0047】
また、その際、渦電流センサ25により、外被形成部23からの電線1''に対し、その外被9の外側からの非接触検出によりその最外層金属編組7bにおける狭ピッチ部分7b−2と広ピッチ部分7b−1の境界が検出され、その検出結果に基づき、マーキング部27により、図4または図5の様に電線1''の外被9の表面上に最外層金属編組7bの広ピッチ部分7b−1の位置を特定するためのマーキング11が施されて行く。
【0048】
この様にして、電線製造装置17により上記の実施の形態1に係る同軸電線1が製造される。
【0049】
以上の様に構成された電線製造装置17によれば、送出部19、巻取部29および編組部21からなる周知の電線製造装置において測長部31および無断変速部33を追加した構成なので、周知の電線製造装置を利用して低コストで、狭ピッチで編み組まれた部分7b−2と広ピッチで編み組まれた部分7b−1とからなる金属編組7bを備えた同軸電線1を製造できる。
【0050】
また、渦電流センサ25により同軸電線1の外側から狭ピッチ部分7b−2と広ピッチ部分7b−1との境界を検出するので、容易に同軸電線1の外側から狭ピッチ部分7b−2と広ピッチ部分7b−1との境界を検出できてマーキング11を施す事ができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本願発明に係る同軸電線は、産業上の編組スリーブを用いるシールド電線や自動車のワイヤーハーネスやコンピュータやオーディオ等のシールド対策の必要なあらゆる電線に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態1に係る同軸電線の側面視断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る同軸電線の正面視断面図である。
【図3】狭ピッチ部分のピッチと広ピッチ部分のピッチの設定値の一例を検討した結果を示す図である。
【図4】マーキングの具体例の一例図である。
【図5】マーキングの具体例の他の一例図である。
【図6】広チップ部分の中央で切断した状態の同軸電線の側面視断面図である。
【図7】先端部の外被を剥いだ状態の同軸電線の側面視断面図である。
【図8】最外層金属編組の先端部を拡げた状態の同軸電線の側面視断面図である。
【図9】円筒刃を用いての最外層金属編組の先端部の切断の仕方を説明する図である。
【図10】本発明の実施の形態2に係る電線製造装置の構成概略図である。
【符号の説明】
【0053】
1 同軸電線
1’ 未完電線
7 多重金属編組
7a 導電性金属編組、銅編組、内層側の金属編組
7b 磁性金属編組、鉄編組、最外層金属編組
7b−1 広ピッチ部分
7b−2 狭ピッチ部分
9 外被
11 マーキング
17 電線製造装置
19 送出部
21 編組部
23 外被形成部
25 渦電流センサ
27 マーキング部
29 巻取部
31 測長部
33 無断変速部
P1 広ピッチ部分から狭ピッチ部分への変わり目の位置
P2 狭ピッチ部分から広ピッチ部分への変わり目の位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部導体と、前記内部導体を被覆する絶縁層と、前記絶縁層を被覆する多重金属編組と、前記多重金属編組を被覆する外被とを備え、
前記多重金属編組のうちの最外層金属編組は、当該同軸電線の長手方向に沿って部分的に相対的に広いピッチ(以後、広ピッチと称す)で編み組まれ、大部分を占めるその残部が相対的に狭いピッチ(以後、狭ピッチと称す)で編み組まれて形成されることを特徴とする同軸電線。
【請求項2】
前記最外層金属編組の前記広ピッチ部分は、当該同軸電線の長手方向に沿って一定間隔置きに間欠的に形成されることを特徴とする請求項1に記載の同軸電線。
【請求項3】
前記最外層金属編組の前記広ピッチ部分は、当該同軸電線における切断されて端末加工される部分だけに形成されることを特徴とする請求項1に記載の同軸電線。
【請求項4】
前記外被の表面に、前記最外層金属編組の前記広ピッチ部分の位置を特定するためのマーキングが施されることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載の同軸電線。
【請求項5】
相対的に狭いピッチ(以後、狭ピッチと称す)で編み組まれた部分と相対的に広いピッチ(以後、広ピッチと称す)で編み組まれた部分とからなる金属編組を備えた同軸電線を製造する電線製造装置であって、
電線を送出する送出手段と、
前記送出手段からの前記電線の外周に金属編組を編み組む編組手段と、
前記編組手段により金属編組が編み組まれた前記電線を巻き取る巻取手段と、
前記巻取手段により巻き取られる前記電線の長さを測定する測長手段と、
前記測長手段の測定結果に基づき前記巻取手段の巻取速度を変速する変速手段とを備え、
前記変速手段は、交互に、前記巻取手段に前記電線が前記狭ピッチ部分の長さ分巻き取られる間は、前記巻取手段の巻取速度を相対的に遅くして前記編組手段により編み組まれる金属編組のピッチを狭ピッチにすることにより、前記編組手段により前記電線の外周に金属編組を狭ピッチで当該長さ分編み組ませ、前記巻取手段に前記電線が前記広ピッチ部分の長さ分巻き取られる間は、前記巻取手段の巻取速度を相対的に速くして前記編組手段により編み組まれる金属編組のピッチを広ピッチにすることにより、前記編組手段により前記電線の外周に金属編組を広ピッチで当該長さ分編み組ませることを特徴とする電線製造装置。
【請求項6】
相対的に狭いピッチ(以後、狭ピッチと称す)で編み組まれた部分と相対的に広いピッチ(以後、広ピッチと称す)で編み組まれた部分とからなる金属編組と、前記金属編組に被覆された外被とを備えた同軸電線の前記外被の表面に、前記金属編組の前記広ピッチ部分の位置を特定するためのマーキングを施す電線製造装置であって、
前記同軸電線の外側から前記狭ピッチ部分と前記広ピッチ部分との境界を検出する渦電流センサと、
前記渦電流センサの検出結果に基づき前記同軸電線の外被の表面に前記マーキングを施すマーキング手段と、
を備えることを特徴とすることを特徴とする電線製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−324172(P2006−324172A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−147769(P2005−147769)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】