説明

向上された耐アルカリ性と加工性を有するクロムフリー樹脂溶液組成物、これを用いた鋼板の表面処理方法及び表面処理された鋼板

【課題】向上された耐食性、耐アルカリ性、加工性及び電気伝導性、耐化学性に優れて、また、クロム成分を全く含まない鋼板表面処理用樹脂溶液組成物、これを用いた鋼板の製造方法及びこれから製造された表面処理鋼板を提供する。
【解決手段】軟質ウレタン系樹脂と硬質ウレタン系樹脂の混合物、TiまたはZr系有機酸化物、リン酸単一アルミニウム、リン酸二水素アルミニウム、第1リン酸亜鉛及び水和リン酸マンガンからなる群から選ばれた1種以上の化合物及び溶媒を含んだ樹脂溶液組成物を冷延鋼板、亜鉛メッキ鋼板等の上に付着量300乃至1,800mg/mでコーティングする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐アルカリ性と加工性に特に優れて、耐食性、電気伝導性及び耐化学性に優れ、クロム成分を全く含まない鋼板表面処理用樹脂溶液組成物、これを用いた鋼板の製造方法及びこれにより製造された表面処理鋼板に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、世界的に環境問題に対する関心が高まっている中、環境汚染物質、即ち、Cr、Pb、Cd、Hg、PBB、PBDE等に対する使用規制が厳しくなっている。特に、EUで導入した有害物質の使用制限指針(RoHS;Restriction of Hazardous Substances、’06.7.1施行)、廃電気・電子製品処理指針(WEEE;Waste from Electrical and Electronic Equipment、’06.7.1施行)、新環境規制管理法(REACH;Registration、Evaluation and Authorization of Chemicals)、廃車処理指針(ELV;End−of−Life Vehicles、’7.1.1施行)などが代表的な例で、これは全世界の全ての企業に環境にやさしい製品の開発、工場内の廃棄物削減、グリーン調達など新たな環境管理政策に対する積極的な対応を要求している。
【0003】
従来には、自動車材料、家電製品、建築材料等の用途として用いられている亜鉛メッキ鋼板及び亜鉛系合金メッキ鋼板、アルミニウムメッキ鋼板、アルミニウム系合金メッキ鋼板、冷延鋼板、熱延鋼板に耐食性及び塗装密着性等を与えるために、表面にクロムを主成分とするクロメート被膜をコーティングする表面処理法が一般的に行われた。主なクロメート処理としては電解型クロメートと塗布型クロメートがあり、このうち電解型クロメート処理は6価クロムを主成分とし、その他に硫酸、リン酸、ホウ酸及びハロゲン等の各種陰イオンを添加した処理液を利用して金属板を陰極電解する方法が一般的に行われている。一方、塗布型クロメート処理は、予め6価クロムの一部を3価に還元した溶液に無機コロイド、無機イオンを添加した処理液にし金属板をその中に沈積するか、または処理液を金属板にスプレーする方法が一般的に行われている。
【0004】
このような方法を使用する場合、クロメート処理液に含まれた6価クロムの有毒性により作業環境及び排水処理等で様々な対策が必要で、上記表面処理金属を使用した自動車、家電、建材製品等のリサイクル及び廃棄処理においても、人体有害性と環境汚染の問題が引き起こされる。また、3価クロムを適用する場合には、温度や微生物等の周辺環境により3価クロムの一部が6価クロムに転換されるという問題がある。
【0005】
従って、各鉄鋼社は6価クロムを含まなくても耐食性、耐アルカリ性、電気伝導性等を始め、求められる各種特性を満たすことができるクロムを含まない表面処理鋼板の開発に主力を注いでいる。従来は鋼板の表面にリン酸塩を主成分に組成した金属塩被膜を1次コーティングしてから、その上部に主にアクリル、エポキシ及びウレタン樹脂を主成分として組成した樹脂系被膜を2次コーティングさせ製造する方法、または上記1次被膜と2次被膜を夫々樹脂系被膜で形成させる方法を通じクロムを含まない表面処理金属鋼板を製造した。
【0006】
しかし、上記製品は金属塩または被膜厚により金属鋼板の電気伝導性と溶接性を低下させる場合が多いため、複写機、プリンター、VCR、コンピュータなど電子波抑制、内部ノイズ抑制及び加工性確保のための用途には適合しないという問題がある。
【0007】
最近は、また大部分の家電会社が電気伝導性に優れ、クロムを含まない表面処理鋼板を要求するに従って、上記樹脂系被膜を1次のみコーティングさせる方法でクロムを含まないコーティング鋼板を開発している。しかし、樹脂系表面処理組成物の組成が特別に優れた場合でない限り、耐食性等の品質特性が従来のクロム処理、或いはリン酸塩処理した下地コーティング鋼板に比べ大きく低下するという問題がある。しかし、最近になって海外及び国内の主要家電会社はクロムを含まない表面処理鋼板の場合、自社の環境にやさしい製品を開発するための方案として素材に対する独自的な品質規格を成立し、品質認証を獲得した製品のみを購買している。
【0008】
従来、6価クロムを全く含まないながらも電気伝導性を考慮したコーティング処理法としてポリアニリンを金属板上にコーティングする方法が特許文献1、特許文献2に開示されている。しかし、剛直性が高く、密着性の低いポリアニリンが金属と樹脂被膜間に存在するため、ポリアニリンと金属界面及びポリアニリンと樹脂界面で被膜が簡単に剥離されることができる。このため、鋼板に意匠性、さらに耐食性及びその他の機能を与えるために上部に塗装する場合に問題点が生じる。密着性の低い被膜は一般的に耐食性が低いと知られている。また、溶液安定性が低いため沈殿物の発生が多く、酷い臭いが発生し、全般的に作業環境の阻害等作業性が落ちるという問題もある。また、亜鉛メッキ層上に樹脂で1次のみコーティングさせる方法を用いて電気伝導性、耐食性、耐アルカリ性、耐高温高湿性等の特性を向上させる優れた効果を発揮したが、特に、酷く加工される部分に適用される一部製品は加工性が乏しく、加工摩擦部の樹脂層とメッキ層が一部損傷され樹脂層がなくなるか、表面が黒く変わるという問題が発生する。
【0009】
また、特許文献3には有機フィルム形成材とチタニウム、ジルコニウム等のヘキサフルオロ複合体、少なくとも1つの無機化合物等を水に混合した組成物が開示されているが、これはフッ素錯化物を含んでおり、環境に影響を与えることがあり、溶液が酸性で構成され取扱時に注意が必要である。また、特許文献4には混合樹脂にバナジウム化合物とZi及びTi等を混合した組成物が開示されているが、バナジウム化合物の還元過程及び密着力の確保のために酸性溶液を用いた鋼板表面のエッチング過程が伴わなければならない問題がある。また、特許文献5にはシランカップリング剤等を用いて有機樹脂と無機バインダー複合体を製造し、防錆剤、金属キレート剤を含む表面処理組成物が開示されているが、有機樹脂と無機バインダー複合体を予め製造しなければならないという短所がある。また、耐アルカリ性が要求される一部製品は耐アルカリ性が乏しく、アルカリ溶液と接触時樹脂層が一部損傷され樹脂層がなくなるか、表面が酷く変色するという問題が発生する。また、特許文献6には有機樹脂とリン酸アンモニウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウムから選ばれたリン酸化合物を含む樹脂組成物が開示されているが、これらリン酸化合物の使用目的は鋼板上部に不動態被膜層を形成して耐食性を向上させる役割をするものと限定されている。
【0010】
【特許文献1】日本国特開平8−92479号公報
【特許文献2】日本国特開平8−500770号公報
【特許文献3】米国公開特許第2004−54044号明細書
【特許文献4】日本国公開特許第2002−030460号公報
【特許文献5】大韓民国公開特許第2006−76953号明細書
【特許文献6】日本国特許第3706518号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の一目的は、鋼板に樹脂溶液組成物を被覆させる方法を通じ、特に、耐アルカリ性、加工性を向上させ、また、耐食性、電気伝導性、耐化学性等に優れ、クロムを含まないコーティング層を提供することができる金属表面処理組成物を提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、上記金属鋼板の表面処理組成物をコーティングした表面処理鋼板を提供することである。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、本発明による樹脂溶液組成物で樹脂溶液のコーティング層を形成させ表面処理鋼板を製造するための方法を提供することである。
【0014】
本発明の目的は、以上で述べた内容に制限されず、下記の記載から当業者が明確に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記のような目的を達成するために、本発明では鋼板及び/または亜鉛メッキ層上に適用される樹脂溶液組成物、これを用いる表面処理鋼板の製造方法及び上記方法で製造された表面処理鋼板を提供することである。
【0016】
このような本発明の第1見地としては、軟質ウレタン系樹脂と硬質ウレタン系樹脂の混合ウレタン樹脂と、TiまたはZr系有機酸化物と、リン酸単一アルミニウム、リン酸二水素アルミニウム、第1リン酸亜鉛及び水和リン酸マンガンからなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物と、溶媒とを含む、鋼板の表面処理用樹脂溶液組成物である。
【0017】
第2見地としては、軟質ウレタン系樹脂と硬質ウレタン系樹脂の混合ウレタン樹脂と、TiまたはZr系有機酸化物と、リン酸単一アルミニウム、リン酸二水素アルミニウム、第1リン酸亜鉛及び水和リン酸マンガンからなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物と、溶媒とを含み、全体樹脂溶液組成物の固形分重量を基準に、混合ウレタン樹脂10乃至90重量%と、TiまたはZr系有機酸化物1乃至20重量%と、リン酸単一アルミニウム、リン酸二水素アルミニウム、第1リン酸亜鉛及び水和リン酸マンガンからなる群から選ばれる化合物0.1乃至10.0重量%とを含む鋼板の表面処理用樹脂溶液組成物である。
【0018】
第3見地として、上記混合ウレタン樹脂は軟質ウレタン系樹脂5乃至95重量%及び硬質ウレタン系樹脂5乃至95重量%で構成される、鋼板の表面処理用樹脂溶液組成物である。
【0019】
第4見地として、上記軟質ウレタン系樹脂はイソフォレンジイソシアネート、アジピン酸及び多価アルコールから製造されるポリウレタン、またはアクリルポリオール及びポリイソシアネートから製造されるポリウレタンである、鋼板の表面処理用樹脂溶液組成物である。
【0020】
第5見地として、上記多価アルコールはアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィン系ポリオールまたはこれらの混合物から選ばれる、鋼板の表面処理用樹脂溶液組成物である。
【0021】
第6見地として、上記軟質ウレタン系樹脂は数平均分子量が5,000〜300,000である、鋼板の表面処理用樹脂溶液組成物である。
【0022】
第7見地として、上記硬質ウレタン系樹脂はポリカプロラクトンポリオールまたはポリカーボネートポリオールとジイソシアネートとから製造されたポリウレタン樹脂、4,4’−ビス(ω−ハイドロキシアルキレンオキシ)ビフェニルとメチル−2,6−ジイソシアネートヘキサノエートとから製造されるポリウレタン樹脂、及びアセタール結合を有するポリウレタン樹脂から選ばれる、鋼板の表面処理用樹脂溶液組成物である。
【0023】
第8見地として、上記硬質ウレタン樹脂は数平均分子量が200,000〜2,000,000である、鋼板の表面処理用樹脂溶液組成物である。
【0024】
第9見地として、上記硬質ウレタン樹脂はショアA硬度が40乃至90である、鋼板の表面処理用樹脂溶液組成物である。
【0025】
第10見地として、上記ジイソシアネートはパラフェニレンジイソシアネートである、鋼板の表面処理用樹脂溶液組成物である。
【0026】
第11見地として、上記TiまたはZr系有機酸化物はチタニウムジイソプロポキシドビス(アセチールアセトネート)、チタニウムオルソエステル、チタニウム(IV)ブトキシド、チタニウム(IV)(トリエタノールアミナト)イソプロポキシド、テトラキス(トリエタノールアミナト)ジルコニウム(IV)、チタニウム(IV)2−エチルヘキソキシド、チタニウム(IV)イソプロポキシド、ジルコニウム(IV)ビス(ジエチルシトラート)−ジプロポキシドまたはこれらの混合物から選ばれる、鋼板の表面処理用樹脂溶液組成物である。
【0027】
第12見地として、上記溶媒は水である、鋼板の表面処理用樹脂溶液組成物である。
【0028】
第13見地として、上記溶媒はエタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノール及びグリセロールから選ばれるアルコール溶媒、アミン化合物、N−メチルピロリドン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム及び水酸化アンモニウムから選ばれるアルカリ系水溶液またはこれらの混合物をさらに含む、鋼板の表面処理用樹脂溶液組成物である。
【0029】
第14見地として、湿潤剤、架橋剤、潤滑剤及び消泡剤からなる添加剤のうち、少なくとも1種以上をさらに含む、鋼板の表面処理用樹脂溶液組成物である。
【0030】
第15見地として、軟質ウレタン系樹脂と硬質ウレタン樹脂の混合ウレタン樹脂、TiまたはZr系有機酸化物、リン酸単一アルミニウム、リン酸二水素アルミニウム、第1リン酸亜鉛及び水和リン酸マンガンからなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物及び溶媒を含む樹脂溶液組成物を鋼板の上部に乾燥後の付着量300乃至1,800mg/mでコーティングする段階を含む鋼板の表面処理方法である。
【0031】
第16見地として、軟質ウレタン系樹脂と硬質ウレタン系樹脂の混合ウレタン樹脂と、TiまたはZr系有機酸化物と、リン酸単一アルミニウム、リン酸二水素アルミニウム、第1リン酸亜鉛及び水和リン酸マンガンからなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物と、溶媒とを含む樹脂溶液組成物を鋼板の上部に乾燥後の付着量300乃至1,800mg/mでコーティングする段階を含み、全体樹脂溶液組成物の固形分重量を基準に、混合ウレタン樹脂10乃至90重量%と、TiまたはZr系有機酸化物1乃至20重量%と、リン酸単一アルミニウム、リン酸二水素アルミニウム、第1リン酸亜鉛及び水和リン酸マンガンからなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物0.1乃至10.0重量%とを含む鋼板の表面処理方法である。
【0032】
第17見地として、上記混合ウレタン樹脂は軟質ウレタン系樹脂5乃至95重量%及び硬質ウレタン系樹脂5乃至95重量%で構成される、鋼板の表面処理方法である。
【0033】
第18見地として、樹脂溶液組成物でコーティングされた鋼板をPMT80〜200℃で乾燥する段階をさらに含む、表面処理鋼板の製造方法。
【0034】
第19見地として、上記鋼板は冷延鋼板、亜鉛メッキ鋼板、亜鉛系電気メッキ鋼板、溶融亜鉛メッキ鋼板、アルミニウムメッキ鋼板、メッキ層にコバルト、モリブデン、タングステン、ニッケル、チタン、アルミニウム、マンガン、鉄、マグネシウム、スズ、銅またはこれらの混合物である不純物または異種金属を含んだメッキ鋼板、シリコン、銅、マグネシウム、鉄、マンガン、チタン、亜鉛またはこれらの混合物を添加したアルミニウム合金板、リン酸塩が塗布された亜鉛メッキ鋼板、冷延鋼板及び熱延鋼板からなる群から選ばれる、鋼板の表面処理方法である。
【0035】
第20見地として、上記軟質ウレタン系樹脂は数平均分子量が5,000〜300,000で、イソフォレンジイソシアネート、アジピン酸及び多価アルコールから製造される、鋼板の表面処理方法。
【0036】
第21見地として、上記硬質ウレタン系樹脂は数平均分子量が200,000〜2,000,000で、ポリカプロラクトンポリオールまたはポリカーボネートポリオールとパラフェニレンジイソシアネートとから製造されたポリウレタン樹脂、4,4’−ビス(ω−ハイドロキシアルキレンオキシ)ビフェニルとメチル−2,6−ジイソシアネートヘキサノエートとから製造されるポリウレタン樹脂、及びアセタール結合を有するポリウレタン樹脂から選ばれる、鋼板の表面処理方法である。
【0037】
第22見地として、上記硬質ウレタン樹脂はショアA硬度が40乃至90である、鋼板の表面処理方法である。
【0038】
第23見地として、TiまたはZr系有機酸化物はチタニウムジイソプロポキシドビス(アセチールアセトネート)、チタニウムオルソエステル、チタニウム(IV)ブトキシド、チタニウム(IV)(トリエタノールアミナト)イソプロポキシド、テトラキス(トリエタノールアミナト)ジルコニウム(IV)、チタニウム(IV)2−エチルヘキソキシド、チタニウム(IV)イソプロポキシド、ジルコニウム(IV)ビス(ジエチルシトラート)−ジプロポキシドまたはこれらの混合物から選ばれる、鋼板の表面処理方法である。
【0039】
第24見地として、上記溶媒は水である、鋼板の表面処理方法である。
【0040】
第25見地として、上記溶媒はエタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノール及びグリセロールから選ばれるアルコール溶媒、アミン化合物、N−メチルピロリドン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム及び水酸化アンモニウムから選ばれるアルカリ系水溶液またはこれらの混合物をさらに含む、鋼板の表面処理方法である。
【0041】
第26見地として、鋼板及び樹脂溶液のコーティング層からなり、上記樹脂溶液のコーティング層は軟質ウレタン系樹脂と硬質ウレタン系樹脂の混合物と、TiまたはZr系有機酸化物と、リン酸単一アルミニウム、リン酸二水素アルミニウム、第1リン酸亜鉛及び水和リン酸マンガンからなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物と、溶媒とを含む樹脂溶液組成物を鋼板の上部に乾燥後の付着量300乃至1,800mg/mでコーティングした、表面処理鋼板である。
【0042】
第27見地として、鋼板及び樹脂溶液のコーティング層からなり、上記樹脂溶液のコーティング層は軟質ウレタン系樹脂と硬質ウレタン系樹脂の混合物と、TiまたはZr系有機酸化物と、リン酸単一アルミニウム、リン酸二水素アルミニウム、第1リン酸亜鉛及び水和リン酸マンガンからなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物と、溶媒とを含み、溶液組成物全体の固形分を基準にウレタン樹脂の量は軟質ウレタン系樹脂5乃至95重量%と硬質ウレタン系樹脂5乃至95重量%からなる10乃至90%で、TiまたはZr系有機酸化物は1乃至20重量%で、リン酸単一アルミニウム、リン酸二水素アルミニウム、第1リン酸亜鉛及び水和リン酸マンガンからなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物は0.1乃至10.0重量%である樹脂溶液組成物を鋼板の上部に乾燥後の付着量300乃至1,800mg/mでコーティングした、表面処理鋼板が提供される。
【発明の効果】
【0043】
上記のように、本発明の耐アルカリ性及び耐食性に優れて、また、クロム成分を含まないコーティング層を有する金属表面処理組成物及び表面処理鋼板は加工性、電気伝導性、耐水劣化性、溶液安定性等に優れて顧客者の加工用素材に容易に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0045】
本発明は、軟質ウレタン系樹脂と硬質ウレタン系樹脂の混合物、TiまたはZr系有機酸化物で構成された耐食性硬化剤、リン酸単一アルミニウム、リン酸二水素アルミニウム、第1リン酸亜鉛及び水和リン酸マンガンからなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物及び溶媒で構成されたクロムを含まない樹脂溶液組成物をメッキされた、またはメッキされていない鋼板上に被覆させることにより、耐アルカリ性と加工性を向上させて、また、電気伝導性、耐食性、耐化学性等が優れた金属鋼板を製造することができる表面処理用樹脂溶液組成物に関する。
【0046】
本発明の樹脂溶液組成物で上記軟質ウレタン系樹脂と硬質ウレタン系樹脂の混合ウレタン樹脂が用いられるが、上記ウレタン系樹脂は耐水性、耐薬品性、耐酸性及び耐アルカリ性に強く、塗膜が軟らかいながらも強いため、鋼板やアルミニウム板等に塗装し面のスクラッチを防ぐために用いるか、耐化学性を与えるために、広く用いられている。
【0047】
上記混合ウレタン樹脂は固形分濃度で、樹脂溶液組成物全体の固形分に対して10乃至90重量%である。上記ウレタン系樹脂全体の固形分含量が10重量%未満であれば、腐食イオンの浸透に対するウレタン樹脂の耐塩水性及び化学物質の浸透に対する耐薬品性が発揮されず耐化学性及び耐アルカリ性が低下される。これにより、pH10以上のアルカリ溶液で60℃で5分間脱脂をする場合、樹脂被膜が変色または剥離されるという問題があり、90重量%を超えると凝結の現象により溶液安定性が低下し、価格が上昇するという短所がある。
【0048】
しかし、ウレタン樹脂単独では、軟らかいながらも強い性質を具現することに限界があるため、本発明では軟質ウレタン樹脂と硬質ウレタン樹脂を混合した混合ウレタン樹脂を使用する。軟質ウレタン樹脂は混合ウレタン樹脂の固形分濃度を基準に5乃至95重量%である。上記軟質ウレタン樹脂の固形分濃度が5重量%未満であれば加工性は向上されるが、耐熱性及び耐水劣化性が低下され、95重量%を超えると加工性向上に効果がなく耐食性が大きく低下されるという問題がある。
【0049】
また、上記軟質ウレタン系樹脂の分子量は5,000乃至300,000が好ましい。上記軟質ウレタン系樹脂の分子量が5,000未満であれば加工性が大きく低下し、300,000を超えると溶液の安定性が減少するという問題がある。
【0050】
上記軟質ウレタン系樹脂はポリウレタンディスパージョン樹脂、ポリエチレン変性ポリウレタン樹脂等のようなイソフォレンジイソシアネート、アジピン酸及び多価アルコールから製造されるポリウレタン樹脂及びアクリル−ウレタン樹脂、ポリエチレン−アクリル変性ポリウレタン樹脂等のようなアクリルポリオールとポリイソシアネートから製造されるポリウレタン樹脂を用いることができる。ここで、上記多価アルコールとしてはアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィン系ポリオール等を使用することができる。
【0051】
また、上記硬質ウレタン系樹脂の分子量は200,000乃至2,000,000が好ましい。上記硬質ウレタン系樹脂の分子量が200,000未満であれば加工性の向上効果がなく、2,000,000を超えると溶液の安定性が減少し、樹脂溶液の粘度が上昇することで作業性が低下する問題がある。
【0052】
上記硬質ウレタン系樹脂は、ポリカプロラクトンポリオールまたはポリカーボネートポリオールとイソシアネート、特に、パラフェニレンジイソシアネートからと製造されたポリウレタン樹脂、4,4’−ビス(ω−ハイドロキシアルキレンオキシ)ビフェニルとメチル−2,6−ジイソシアネートヘキサノエートとから製造されるポリウレタン樹脂、アセタール結合を有するポリウレタン樹脂等を用いることができる。
【0053】
また、上記硬質ウレタン系樹脂は乾燥フィルム製造時、ショア(Shore)A硬度が40乃至90であるものを用いることが好ましい。ショアA硬度が40未満であれば加工性の向上に効果がなく、ショアA硬度が90を超えると塗膜が非常に硬くなり、加工時破砕されて加工性の向上に効果がないため、上記範囲の硬度を有することが好ましい。
【0054】
上記ウレタン樹脂には、耐食性硬化剤としてTiまたはZr系有機酸化物が添加される。上記耐食性硬化剤としては樹脂溶液組成物全体の固形分を基準に1乃至20重量%である。このとき、上記耐食性硬化剤の含量が1重量%未満であれば耐食性が低下され添加効果が殆どなく、20重量%を超える場合は濃度が飽和され沈澱物が多量に発生し、溶液安定性が低下されながら耐食性、耐アルカリ性及び耐水劣化性が減少するという問題が出る。
【0055】
上記TiまたはZr系有機酸化物の好ましい例としては、チタニウムジイソプロポキシドビス(アセチールアセトネート)、チタニウムオルソエステル、チタニウム(IV)ブトキシド、チタニウム(IV)(トリエタノールアミナト)イソプロポキシド、テトラキス(トリエタノールアミナト)ジルコニウム(IV)、チタニウム(IV)2−エチルヘキソキシド、チタニウム(IV)イソプロポキシド、ジルコニウム(IV)ビス(ジエチルシトラート)−ジプロポキシド等を挙げることができ、これらから選ばれる少なくとも1つの化合物を含むことができる。
【0056】
また、本発明の鋼板の表面処理用樹脂組成物はリン酸単一アルミニウム、リン酸二水素アルミニウム、第1リン酸亜鉛、水和リン酸マンガン等から1つまたはこれ以上から選ばれた化合物を含む。このような化合物は樹脂と鋼板、特に亜鉛メッキ層との密着力の向上のために添加され、亜鉛層上部に不動態被膜を形成して耐食性を向上させると共に金属塩の効果による電気伝導性及び耐熱性の向上効果が期待できる。
【0057】
リン酸単一アルミニウム、リン酸二水素アルミニウム、第1リン酸亜鉛、水和リン酸マンガン等の化合物は樹脂組成物全体固形分の0.1乃至10.0重量%添加することが好ましい。これら化合物が0.1重量%未満で添加されると鋼板との密着力が低下されアルカリ脱脂等の工程で樹脂の剥離が発生しやすく、10.0重量%を超えるこれら化合物が樹脂と鋼板との密着力を向上させることで樹脂の凝結の現象を促進させ溶液安定性が落ち、返って樹脂と鋼板との密着力を低下させるため好ましくない。
【0058】
樹脂溶液組成物から固形分を除いた成分は溶媒で、上記溶媒としては水を用いることができる。さらに、コーティング組成物の濡れ性、分散性等の特性を高めるために別途のアルコール類溶剤とアルカリ系水溶液をさらに添加することができる。上記アルコール類溶剤としてはエタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、グリセロール等を用いることができ、上記アルカリ系水溶液としてはアミン化合物、N−メチルピロリドン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化アンモニウム等を用いることができる。
【0059】
上記樹脂溶液組成物は、耐食性硬化剤の粒子が樹脂の有機官能基に均一に反応して分散されているため、樹脂溶液の安定性に優れて防食コーティング層の耐食性、電気伝導性、耐アルカリ性、耐高温高湿性等がさらに向上される。
【0060】
また、本発明の表面処理組成物は湿潤剤、架橋剤、潤滑剤、消泡剤等の添加剤を1種以上さらに含むことができる。上記湿潤剤は縞模様及び密着性に、架橋剤は耐食性及び耐アルカリ性に、潤滑剤は摩擦係数及び加工性に、消泡剤は作業性をさらに向上させることに効果がある。これら添加剤は樹脂溶液組成物の固形分を基準に5乃至25重量%の量で用いられることが好ましい。添加剤の含量が5重量%未満であれば耐食性、耐アルカリ性等添加剤の使用効果が示されず、25重量%を超えると効果が飽和されそれ以上の添加は無意味である上、溶液安定性を減少させるという問題がある。
【0061】
上記湿潤剤としては、脱凝集型湿潤分散剤、高分子型湿潤分散剤などがあり、これらの好ましい例としてはEFKA社とTego社等で市販する湿潤分散剤等があり、EFKA3580(Ciba社)、BW−W500(BUHMWOO化学)またはWET500(Ciba社)がある。
【0062】
上記架橋剤として、ビニルシラン、メトキシシラン、アクリルシラン、エポキシシラン、クロロシラン、アルコキシシラン、シラザン、シリル化剤、メラミン、メラミン樹脂、アルキルメラミン、アルキルメラミン樹脂、フッ素化メラミン及びフッ素化メラミン樹脂、ポリアミン系、アルキル化芳香族ポリアミン系、ポリアミド系または酸無水物系硬化剤などを用いることができる。
【0063】
上記潤滑剤として、シリコンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、アミドワックス、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ワックス、パラフィンワックス等がある。
【0064】
上記消泡剤として、オイル型、変性油型、溶液型、粉末型、エマルジョン型シリコン消泡剤を用いることができる。
【0065】
本発明の樹脂溶液の組成物でコーティングされたコーティング層の付着量は乾燥後の付着量としては300乃至1,800mg/mが好ましく、乾燥温度(PMT)は通常の樹脂系表面処理液の乾燥温度と類似な80℃乃至200℃である。このとき乾燥後の付着量が300mg/m未満であれば耐食性及び加工性の向上効果がなく、1,800mg/mを超えると耐食性に及ぼす効果が飽和される上、電気伝導性を失い価額上昇により経済性が低下される。また、乾燥温度が高い程樹脂被膜の耐食性が向上される傾向をみせるが、80−200℃であれば顧客者が求める品質を満たすことが可能である。
【0066】
また、本発明の適用が可能な金属板としては亜鉛メッキ鋼板、亜鉛ニッケルメッキ鋼板、亜鉛鉄メッキ鋼板、亜鉛チタンメッキ鋼板、亜鉛マグネシウムメッキ鋼板、亜鉛マンガンメッキ鋼板、亜鉛アルミニウムメッキ鋼板等の亜鉛系電気メッキ鋼板、溶融メッキ鋼板、アルミニウムメッキ鋼板、また、これらメッキ層に異種金属または不純物として、例えば、コバルト、モリブデン、タングステン、ニッケル、チタン、アルミニウム、マンガン、鉄、マグネシウム、スズ、銅等を含んだメッキ鋼板、またはこれらメッキ層にシリカ、アルミナ等の無機物を分散させたメッキ鋼板、またはシリコン、銅、マグネシウム、鉄、マンガン、チタン、亜鉛等を添加したアルミニウム合金板、またはリン酸塩が塗布された亜鉛メッキ鋼板、冷延鋼板、熱延鋼板等である。また、上記のメッキ中、2種類以上を順次に処理した多層メッキ板にも適用が可能である。
【0067】
以下、実施例を通じ本発明をより詳細に説明する。但し、下記実施例により本発明を限定するものではない。
[実施例1−13及び比較例1−14]
(1−1.樹脂溶液組成物の製造)
【0068】
軟質ウレタン系樹脂のモノマーとしてイソフォレンジイソシアネート、アジピン酸、多価アルコール単量体で構成された数平均分子量が100,000であるウレタン系樹脂を製造した。硬質ウレタン系樹脂のモノマーでパラフェニレンジイソシアネート、ポリカーボネートポリオール単量体から数平均分子量が1,000,000であるアクリル系樹脂を製造した。耐食性硬化剤としてDupont社のTi有機酸化物(商品名Tyzor TE(登録商標) チタニウム(IV)(トリエタノールアミナト)イソプロポキシド)を用いた。リン酸アルミニウムは純正化学のリン酸二水素アルミニウムを用いた。このとき軟質ウレタン系樹脂と硬質ウレタン系樹脂、Ti耐食性硬化剤、リン酸二水素アルミニウム及びその他添加剤の含量を表1のように調節し品質特性を評価した。
【0069】
上記添加剤としては、コロイダルシリカ(Nissan chemical社 スノーテックス−40)10重量%、シロキサン系湿潤剤(Ciba社 EFKA 3580)0.5重量%、シラン系架橋材(Aldrich、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)1.2重量%、アミン系硬化剤(Cytec社 Cymel 303)2.5重量%、ポリエチレン系潤滑材(Noveon社 Lanco PE 1500)1.5重量%を夫々バルク状態で添加した。表面処理組成物の固形分の濃度は約15重量%になるようにした。参考に固形分を除いた残りの主成分は水を用い、アルコール類溶剤としてはエタノール約3重量%とアルカリ性系水溶液としてはアミン化合物を約0.5重量%添加した。
(1−2.コーティング鋼板の製造)
【0070】
1)試片:表面処理組成物を塗布するための素材鋼板で付着量が片面基準20g/mである電気亜鉛メッキ鋼板(EG)を用いた。
2)塗布方法:樹脂溶液の塗布は連続Roll Coating simulatorを用い、試料の上部に樹脂溶液組成物を塗布し、PMT180℃で乾燥した。被膜の付着量は1,000mg/mであった。
(1−3.性能評価方法)
【0071】
(1)加工性:ドロービード摩擦試験機(荷重1,000kgf、速度1,000mm/min、距離100mm)を用いて摩擦係数の測定をした後、試片の樹脂被膜が摩擦試験機のビード面に引っかかり損傷された程度を下記の基準により評価した。
○:損傷面積5%未満
△:損傷面積5%以上、10%未満
×:損傷面積10%以上
【0072】
(2)耐食性:試片をJIS−Z2371に準ずる塩水噴霧試験を96時間行い、発錆の程度を下記の基準により評価した。
○:白錆5%以下
△:白錆5%以上、20%未満
×:白錆20%以上
【0073】
(3)電気伝導性:樹脂被膜がコーティングされた試片の表面を表面抵抗測定で(Loresta−GP)で測定し、下記の基準により評価した。
○:表面抵抗1mΩ以下
△:表面抵抗1Ω以下
×:表面抵抗1Ω超過で電気伝導性または溶接性が非常に不良な状態
【0074】
(4)耐アルカリ性:50℃アルカリ溶液(Gardoclean 4292L、pH12)に5分間沈積し、水洗してから樹脂コーティング層の色差変化と剥離の程度を肉眼で観察し、下記の基準により評価した。
○:剥離がなく、色差変化2.0以下
△:剥離はないが、色差変化2.0超過発生
×:剥離発生
【0075】
(5)耐水劣化性:水の中に30分間浸漬してから、指で30回往復摩擦した後、色差を測定し、下記の基準により評価した。
○:色差1.0以下
△:色差1.0超過
×:剥離発生
【0076】
(6)溶液安定性:表面処理組成物100gを50℃オーブンの中に放置し10日が経過してから、溶液の沈澱、ゲル化、分離現象が発生する程度を下記の基準により評価した。
○:沈澱、ゲル化、分離現象なし
△:沈澱、ゲル化、分離現象のうち1つが微細に発生
×:沈澱、ゲル化、分離現象のうち1つ以上がある程度以上発生
【0077】
上記評価結果を下記表1に示した。
【0078】
【表1】

[実施例14−19及び比較例15−17]
(2−1.コーティング鋼板の製造)
【0079】
1)試片:表面処理組成物を塗布するための素材鋼板で、付着量が片面基準20g/mである電気亜鉛メッキ鋼板(EG)を用いた。
2)塗布方法:実施例の前処理溶液の塗布は、上記試片を前処理溶液に3秒間浸漬させてから、表2のようなPMT条件で乾燥した。
また、樹脂溶液は表1の実施例4の組成で製造し、連続Roll Coating simulatorを用いて鋼板の上部に樹脂溶液組成物を塗布し、表2のような付着量とPMT条件で乾燥した。
(2−3.性能評価方法)
【0080】
上記条件で製造された試片の加工性、電気伝導性及び耐食性評価は[表1]に示した評価法を用いて評価した。
(2−4.評価結果)
【0081】
上記条件で金属表面処理組成物の性能を評価して表2に示した。
【0082】
【表2】

【0083】
上記表2に記載のように本発明による実施例14乃至19の表面処理鋼板は優れた品質特性を示すが、比較例17乃至19は劣化された特性を示した。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の一例で樹脂溶液のコーティング層を適用して製造された鋼板の概略構造図である。
【図2】本発明の一実施例と既存発明材の加工特性をドロービード摩擦試験機で評価した後の表面損傷の程度を比較した図である。
【図3】本発明の一実施例と既存発明材の耐アルカリ特性を脱脂溶液で評価した後の表面外観の程度を比較した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質ウレタン系樹脂と硬質ウレタン系樹脂の混合ウレタン樹脂と、TiまたはZr系有機酸化物と、リン酸単一アルミニウム、リン酸二水素アルミニウム、第1リン酸亜鉛及び水和リン酸マンガンからなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物と、溶媒とを含む、鋼板の表面処理用樹脂溶液組成物。
【請求項2】
軟質ウレタン系樹脂と硬質ウレタン系樹脂の混合ウレタン樹脂と、TiまたはZr系有機酸化物と、リン酸単一アルミニウム、リン酸二水素アルミニウム、第1リン酸亜鉛及び水和リン酸マンガンからなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物と、溶媒とを含み、全体樹脂溶液組成物の固形分重量を基準に、混合ウレタン樹脂10乃至90重量%と、TiまたはZr系有機酸化物1乃至20重量%と、リン酸単一アルミニウム、リン酸二水素アルミニウム、第1リン酸亜鉛及び水和リン酸マンガンからなる群から選ばれる化合物0.1乃至10.0重量%とを含む鋼板の表面処理用樹脂溶液組成物。
【請求項3】
前記混合ウレタン樹脂は、軟質ウレタン系樹脂5乃至95重量%及び硬質ウレタン系樹脂5乃至95重量%で構成される、請求項2に記載の鋼板の表面処理用樹脂溶液組成物。
【請求項4】
前記軟質ウレタン系樹脂は、イソフォレンジイソシアネート、アジピン酸及び多価アルコールから製造されるポリウレタン、またはアクリルポリオール及びポリイソシアネートから製造されるポリウレタンである、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の鋼板の表面処理用樹脂溶液組成物。
【請求項5】
前記多価アルコールは、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィン系ポリオールまたはこれらの混合物から選ばれる、請求項4に記載の鋼板の表面処理用樹脂溶液組成物。
【請求項6】
前記軟質ウレタン系樹脂は、数平均分子量が5,000〜300,000である、請求項4に記載の鋼板の表面処理用樹脂溶液組成物。
【請求項7】
前記硬質ウレタン系樹脂は、ポリカプロラクトンポリオールまたはポリカーボネートポリオールとジイソシアネートとから製造されたポリウレタン樹脂、4,4’−ビス(ω−ハイドロキシアルキレンオキシ)ビフェニルとメチル−2,6−ジイソシアネートヘキサノエートとから製造されるポリウレタン樹脂、及びアセタール結合を有するポリウレタン樹脂から選ばれる、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の鋼板の表面処理用樹脂溶液組成物。
【請求項8】
前記硬質ウレタン樹脂は、数平均分子量が200,000〜2,000,000である、請求項7に記載の鋼板の表面処理用樹脂溶液組成物。
【請求項9】
前記硬質ウレタン樹脂は、ショアA硬度が40乃至90である、請求項7に記載の鋼板の表面処理用樹脂溶液組成物。
【請求項10】
前記ジイソシアネートは、パラフェニレンジイソシアネートである、請求項7に記載の鋼板の表面処理用樹脂溶液組成物。
【請求項11】
前記TiまたはZr系有機酸化物はチタニウムジイソプロポキシドビス(アセチールアセトネート)、チタニウムオルソエステル、チタニウム(IV)ブトキシド、チタニウム(IV)(トリエタノールアミナト)イソプロポキシド、テトラキス(トリエタノールアミナト)ジルコニウム(IV)、チタニウム(IV)2−エチルヘキソキシド、チタニウム(IV)イソプロポキシド、ジルコニウム(IV)ビス(ジエチルシトラート)−ジプロポキシドまたはこれらの混合物から選ばれる、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の鋼板の表面処理用樹脂溶液組成物。
【請求項12】
前記溶媒は、水である、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の鋼板の表面処理用樹脂溶液組成物。
【請求項13】
前記溶媒は、エタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノール及びグリセロールから選ばれるアルコール溶媒、アミン化合物、N−メチルピロリドン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム及び水酸化アンモニウムから選ばれるアルカリ系水溶液またはこれらの混合物をさらに含む、請求項12に記載の鋼板の表面処理用樹脂溶液組成物。
【請求項14】
湿潤剤、架橋剤、潤滑剤及び消泡剤からなる添加剤のうち、少なくとも1種以上をさらに含む、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の鋼板の表面処理用樹脂溶液組成物。
【請求項15】
軟質ウレタン系樹脂と硬質ウレタン樹脂の混合ウレタン樹脂、TiまたはZr系有機酸化物、リン酸単一アルミニウム、リン酸二水素アルミニウム、第1リン酸亜鉛及び水和リン酸マンガンからなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物及び溶媒を含む樹脂溶液組成物を鋼板の上部に乾燥後の付着量300乃至1,800mg/mでコーティングする段階を含む鋼板の表面処理方法。
【請求項16】
軟質ウレタン系樹脂と硬質ウレタン系樹脂の混合ウレタン樹脂と、TiまたはZr系有機酸化物と、リン酸単一アルミニウム、リン酸二水素アルミニウム、第1リン酸亜鉛及び水和リン酸マンガンからなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物と、溶媒とを含む樹脂溶液組成物を鋼板の上部に乾燥後の付着量300乃至1,800mg/mでコーティングする段階を含み、全体樹脂溶液組成物の固形分重量を基準に、混合ウレタン樹脂10乃至90重量%と、TiまたはZr系有機酸化物1乃至20重量%と、リン酸単一アルミニウム、リン酸二水素アルミニウム、第1リン酸亜鉛及び水和リン酸マンガンからなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物0.1乃至10.0重量%とを含む鋼板の表面処理方法。
【請求項17】
前記混合ウレタン樹脂は、軟質ウレタン系樹脂5乃至95重量%及び硬質ウレタン系樹脂5乃至95重量%で構成される、請求項16に記載の鋼板の表面処理方法。
【請求項18】
樹脂溶液組成物でコーティングされた鋼板をPMT80〜200℃で乾燥する段階をさらに含む、請求項15乃至請求項17のいずれかに記載の鋼板の表面処理方法。
【請求項19】
前記鋼板は冷延鋼板、亜鉛メッキ鋼板、亜鉛系電気メッキ鋼板、溶融亜鉛メッキ鋼板、アルミニウムメッキ鋼板、メッキ層にコバルト、モリブデン、タングステン、ニッケル、チタン、アルミニウム、マンガン、鉄、マグネシウム、スズ、銅またはこれらの混合物である不純物または異種金属を含んだメッキ鋼板、シリコン、銅、マグネシウム、鉄、マンガン、チタン、亜鉛またはこれらの混合物を添加したアルミニウム合金板、リン酸塩が塗布された亜鉛メッキ鋼板、冷延鋼板及び熱延鋼板からなる群から選ばれる、請求項15乃至請求項17のいずれかに記載の鋼板の表面処理方法。
【請求項20】
前記軟質ウレタン系樹脂は、数平均分子量が5,000〜300,000で、イソフォレンジイソシアネート、アジピン酸及び多価アルコールから製造されるポリウレタン、またはアクリルポリオール及びポリイソシアネートから製造されるポリウレタンである、請求項15乃至請求項17のいずれかに記載の鋼板の表面処理方法。
【請求項21】
前記硬質ウレタン系樹脂は、数平均分子量が200,000〜2,000,000で、ポリカプロラクトンポリオールまたはポリカーボネートポリオールとパラフェニレンジイソシアネートとから製造されたポリウレタン樹脂、4,4’−ビス(ω−ハイドロキシアルキレンオキシ)ビフェニルとメチル−2,6−ジイソシアネートヘキサノエートとから製造されるポリウレタン樹脂、及びアセタール結合を有するポリウレタン樹脂から選ばれる、請求項15乃至請求項17のいずれかに記載の鋼板の表面処理方法。
【請求項22】
前記硬質ウレタン樹脂は、ショアA硬度が40乃至90である、請求項21に記載の鋼板の表面処理方法。
【請求項23】
前記TiまたはZr系有機酸化物はチタニウムジイソプロポキシドビス(アセチールアセトネート)、チタニウムオルソエステル、チタニウム(IV)ブトキシド、チタニウム(IV)(トリエタノールアミナト)イソプロポキシド、テトラキス(トリエタノールアミナト)ジルコニウム(IV)、チタニウム(IV)2−エチルヘキソキシド、チタニウム(IV)イソプロポキシド、ジルコニウム(IV)ビス(ジエチルシトラート)−ジプロポキシドまたはこれらの混合物から選ばれる、請求項15乃至請求項17のいずれかに記載の鋼板の表面処理方法。
【請求項24】
前記溶媒は、水である、請求項15乃至請求項17のいずれかに記載の鋼板の表面処理方法。
【請求項25】
前記溶媒はエタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノール及びグリセロールから選ばれるアルコール溶媒、アミン化合物、N−メチルピロリドン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム及び水酸化アンモニウムから選ばれるアルカリ系水溶液またはこれらの混合物をさらに含む、請求項24に記載の鋼板の表面処理方法。
【請求項26】
鋼板及び樹脂溶液のコーティング層からなり、前記樹脂溶液のコーティング層は軟質ウレタン系樹脂と硬質ウレタン系樹脂の混合物と、TiまたはZr系有機酸化物と、リン酸単一アルミニウム、リン酸二水素アルミニウム、第1リン酸亜鉛及び水和リン酸マンガンからなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物と、溶媒と、を含む樹脂溶液組成物を鋼板の上部に乾燥後の付着量300乃至1,800mg/mでコーティングした、表面処理鋼板。
【請求項27】
鋼板及び樹脂溶液のコーティング層からなり、前記樹脂溶液のコーティング層は軟質ウレタン系樹脂と硬質ウレタン系樹脂の混合物と、TiまたはZr系有機酸化物と、リン酸単一アルミニウム、リン酸二水素アルミニウム、第1リン酸亜鉛及び水和リン酸マンガンからなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物と、溶媒とを含み、溶液組成物全体の固形分を基準にウレタン樹脂の量は軟質ウレタン系樹脂5乃至95重量%と硬質ウレタン系樹脂5乃至95重量%からなる10乃至90重量%で、TiまたはZr系有機酸化物は1乃至20重量%で、リン酸単一アルミニウム、リン酸二水素アルミニウム、第1リン酸亜鉛及び水和リン酸マンガンからなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物は0.1乃至10.0重量%である樹脂溶液組成物を鋼板の上部に乾燥後の付着量300乃至1,800mg/mでコーティングした、表面処理鋼板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−120951(P2009−120951A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−289577(P2008−289577)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(592000691)ポスコ (130)
【Fターム(参考)】