説明

向上した経済的条件で熱可塑性ポリマー粉末を顆粒化する方法

熱可塑性ポリマー、好ましくは熱可塑性ポリオレフィンを顆粒化する方法では、重合反応器で製造された熱可塑性ポリマーの粉末を押出機に導入し、溶融し、そして押出機内で均質化し、その後押出ダイを通して加圧し、そして粉砕、冷却することにより、熱可塑性ポリマー粉末を顆粒化する。本発明によれば、有機溶剤又は懸濁媒体を、押出機に導入する前に、0.001〜20質量%の範囲の量でポリマー粉末に添加する。本発明は、特にポリエチレン又はポリプロピレンの顆粒化に有用であり、これにより一定のエネルギー消費での処理量を増加させ、或いは一定のポリマー処理量でのエネルギー消費を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合反応器で製造された多峰性モル質量分布を有する熱可塑性ポリマー、好ましくは熱可塑性ポリオレフィン、特にポリエチレンの粉末を押出機に導入し、溶融し、そして押出機内で均質化し、その後押出ダイを通して加圧し、そして粉砕、冷却することにより、上記熱可塑性ポリマー粉末を顆粒化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリマーの顆粒化は公知であり、ポリマーを均質化し、安定剤、着色剤、機械的性質改良剤、フィラー等の助剤及び添加剤を、ポリマーに導入、一体化することにより行われる。加えて、搬送中の熱可塑性ポリマーの取扱い、及びそのほかの処理が、粉末の取扱いに比べて顆粒化により相当改善され得る。
【0003】
重合法により得られるポリマー粉末を乾燥し、その後直接押出機に供給する、重合と顆粒化が直結したものは別として、環境温度に対応する温度でポリマー粉末を押出機に導入することは、特に配合工程では、慣用的である。これは、特に、ポリマー粉末の貯蔵庫での中間的な保管と、粉末の環境温度への冷却が通常起こる空気圧式運搬システムを用いる搬送方法とのためである。
【0004】
従って、配合において、ポリマー粉末は、一般に、環境温度で、バラ材料のまま押出機に供給される。搬送領域の後、粉末は、機械的な摩擦力により徐々に加熱され、最終的には少しずつ溶融される。しかしながら、公知の顆粒化法は、その処理量、機械関連応力、及び顆粒化材料の生成物の品質の点で、なお改良の必要性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、所定の処理量において、顆粒化中の均質化の効果が向上し、又は機械への負荷が減少しており、これは低減されたエネルギー消費量そして修繕の必要性の減少若しくは中断の減少に反映され、或いは現実の顆粒化プラントの生成物処理量が向上し、その際均質化の品質及びエネルギー消費量が維持されている、熱可塑性ポリマーの顆粒化法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、冒頭で述べた一般的な方法であって、押出機に導入する前に、有機溶剤又は懸濁媒体を、ポリマー粉末と有機溶剤又は懸濁媒体との混合の合計質量に対して0.001〜20質量%の範囲の量で、ポリマー粉末に添加することを特徴とする方法により達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に従う有機溶剤又は懸濁媒体の添加は、重合反応器内の懸濁液中で製造されたポリマー粉末を、完全に乾燥せずに、むしろ、有機溶剤又は懸濁媒体の必要(所望)量がポリマー粉末中で自動的に確立する程度まで部分乾燥することのみにより、実施することが好ましい。本発明の有機溶剤又は懸濁媒体の好ましい量は、0.0015〜15質量%、特に好ましくは0.002〜10質量%、特に極めて好ましくは0.01〜5質量%である。
【0008】
本発明を用いて目的を達成する別の可能な方法として、予め乾燥ポリマー粉末を用意し、この粉末を適当量の有機溶剤又は懸濁媒体と混合し、その後この混合物を顆粒化のために押出機に供給する方法を挙げることができる。
【0009】
本発明によれば、有機溶剤又は懸濁媒体として、炭素原子を3〜18個、好ましくは4〜12個有する飽和、又は環式、又は多環式、又は芳香族の炭化水素、又はこれらの混合物を使用する。
【0010】
本発明に従う量の有機溶剤又は懸濁媒体が存在していることにより、ポリマー粉末の溶融のエンタルピーが減少し、所定のエネルギー入力での押出機における均質化が改善し、これによりポリマー中の微小粒(speck)の観察がより少なくなる。
【0011】
本発明の方法により特に良好に顆粒化される有利なポリマーは、特に、ポリオレフィン、ポリエステル又はポリアミド等の標準ポリマー、好ましくはポリエチレン又はポリプロピレンであることが分かっている。ポリエチレンの場合、ポリエチレンが多峰性モル質量分布(即ち、多峰性分子量分布)を有する場合、本発明の方法が特に有用である。それは、その後、この材料の場合に、さらなる膨潤効果が発生し、特に好都合な均質化がもたらされるためである。
【0012】
本発明の方法は、特に、向上した経済的条件で、顆粒化を工業的に行うことができるとの利点を有する。ポリマー粉末を乾燥するコストは、特別なエネルギー集中及び最後の5%の懸濁媒体を除去する高価な乾燥工程を省略することができるので、相当低減することができる。微小粒の発生が少なく、押出機において、ポリマーに加えられる熱的及び機械的な負荷をより少なくなるので、生成物の品質は改善される。ポリマー粉末の所定の処理量に対してエネルギーが少なくて済み、このため機械装置は少ない負荷しか受けず、従って修繕回数も少なくなるので、押出機の機械稼働時間が増加する。反対に、処理量は、機械を同じエネルギー入力で操作した場合には増加し、このため工業的製造において処理の収益性が向上する。
【実施例】
【0013】
[実施例1]
双峰性ポリエチレンを、連結された2基の反応器において、高活性チグラー触媒の存在下、懸濁媒体としてのヘキサン中で、懸濁液状態で調製した。双峰ポリエチレンは、48質量%の割合の低分子量単独重合体及び52質量%の割合の高分子量共重合体を有するものであった。双峰性ポリエチレンの密度は0.955g/cm3であり、そのMFI5は0.35dg/分であった。
【0014】
微粉状のポリエチレンは、反応器から取り出された後、通常の乾燥処理を受けた。しかしながら、その処理は、正確に2.2質量%のヘキサンがポリマー粉末中に残っている早い段階で中止した。
【0015】
この粉末は、押出機に導入され、一定のエネルギー入力で処理され、顆粒が製造された。次いで、厚さ25μmのフィルムを、ブロン・フィルム法(blown film process)によりこの顆粒から製造した。これらのフィルムを、顕微鏡で目視により、微小粒の存在について試験した。その結果を、下記の表に示す。
【0016】
[実施例2](比較例)
実施例1で得たポリエチレンは、反応器から取り出された後、通常の乾燥処理を受けた。しかしながら、その処理は、最後まで行い、0.001質量%未満のヘキサンがポリマー粉末中に残った。
【0017】
この様に乾燥した粉末は、実施例1と同じ押出機に導入され、正確に同じ条件で処理された顆粒が製造された。次いで、厚さ25μmのフィルムを、ブロン・フィルム・プラントでこの顆粒から製造した。これらのフィルムは、実施例1と同じ試験を受けた。
【0018】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合反応器で製造された熱可塑性ポリマー粉末を押出機に導入し、溶融し、そして押出機内で均質化し、その後押出ダイを通して加圧し、そして顆粒化することにより、熱可塑性ポリマー粉末を顆粒化する方法であって、
有機溶剤又は懸濁媒体を、押出機に導入する前に、ポリマー粉末と有機溶剤又は懸濁媒体との混合の合計質量に対して0.001〜20質量%の範囲の量で、ポリマー粉末に添加することを特徴とする方法。
【請求項2】
熱可塑性ポリマーとして、ポリオレフィンを使用する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ポリマーとして、多峰性モル質量分布を有するポリオレフィンを使用する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
有機溶剤又は懸濁媒体の添加を、重合反応器内において懸濁液で製造されたポリマー粉末を、完全に乾燥せずに、むしろ、有機溶剤又は懸濁媒体の必要量がポリマー粉末に対して0.001〜20質量%になる程度まで部分乾燥することにより、実施する請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
有機溶剤又は懸濁媒体の添加を、有機溶剤又は懸濁媒体の必要量がポリマー粉末に対して0.001〜20質量%となるように、乾燥ポリマー粉末に有機溶剤又は懸濁媒体を添加することにより実施する請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
有機溶剤又は懸濁媒体の添加を、有機溶剤又は懸濁媒体の必要量がポリマー粉末に対して0.001〜20質量%となるように、押出機に有機溶剤又は懸濁媒体を導入することにより実施する請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
熱可塑性ポリマー粉末中の有機溶剤又は懸濁媒体の量が、0.0015〜15質量%の範囲にある請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
熱可塑性ポリマー粉末中の有機溶剤又は懸濁媒体の量が、0.002〜10質量%の範囲にある請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
熱可塑性ポリマー粉末中の有機溶剤又は懸濁媒体の量が、0.01〜5質量%の範囲にある請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
有機溶剤又は懸濁媒体として、炭素原子を3〜18個、好ましくは4〜12個有する飽和、又は環式、又は多環式、又は芳香族の炭化水素を使用する請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
顆粒化中において、エネルギー消費量を維持しながら、熱可塑性ポリマー粉末を押出機に通す処理量を増加させる方法であって、有機溶剤又は懸濁媒体を、押出機に導入する前に、ポリマー粉末と有機溶剤又は懸濁媒体との混合の合計質量に対して0.01〜5質量%の範囲の量で、ポリマー粉末に添加することを特徴とする方法。
【請求項12】
顆粒化中において、熱可塑性ポリマー粉末を押出機に通す処理量を維持しながら、押出機のエネルギー消費量を減少させる方法であって、有機溶剤又は懸濁媒体を、押出機に導入する前に、ポリマー粉末と有機溶剤又は懸濁媒体との混合の合計質量に対して0.01〜5質量%の範囲の量で、ポリマー粉末に添加することを特徴とする方法。

【公表番号】特表2007−500088(P2007−500088A)
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521438(P2006−521438)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【国際出願番号】PCT/EP2004/007760
【国際公開番号】WO2005/014253
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(500585878)バーゼル、ポリオレフィン、ゲゼルシャフト、ミット、ベシュレンクテル、ハフツング (35)
【Fターム(参考)】