説明

含フッ素カルボン酸類の製造方法

【課題】本発明は、含フッ素スルフィン酸塩から、上記のような問題が生ずることなく高収率で含フッ素カルボン酸類を製造する方法を提供する。
【解決手段】一般式(3):
(COR) (3)
(式中、nは1又は2であり、Rはnが1のとき含フッ素アルキル基又はnが2のとき含フッ素アルキレン基であり、Rは水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいアラルキル基である。)で示される含フッ素カルボン酸類の製造方法であって、一般式(2):
(CFSOM) (2)
(式中、Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、n及びRは前記に同じ。)で示される含フッ素スルフィン酸塩を含む溶液に、触媒量のラジカル発生剤の存在下、酸素を含むガスを導入して反応させることを特徴とする製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化剤、界面活性剤等として非常に優れる含フッ素カルボン酸類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素カルボン酸類を製造する方法としては、含フッ素スルフィン酸塩を原料としてラジカル開始剤を用いて製造する方法が知られている。
【0003】
非特許文献1には、RCFSONaを(NH、Ce(SO、H/Fe2+などの酸化剤と反応させて、RCOOHを製造する方法が記載されている。しかし、非特許文献1では、原料の含フッ素スルフィン酸ナトリウムに対し、0.5〜1当量の無機ラジカル開始剤が必要であり、詳細な実施条件にも触れられていない。
【0004】
また、特許文献1には、例えば、CF(CFSONaから、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロリド等の有機ラジカル開始剤を用いて、CF(CFCOOHを合成する製造方法が記載されている。しかし、特許文献1ではラジカル開始剤の使用量を少なくした(原料に対して0.12当量以下)場合、反応が途中で停止して大量の原料が残存する問題が生じたり、反応濃度の低い条件(最終濃度:0.20モル/L未満)で長時間ラジカル開始剤を導入しつづける必要があり、大量生産には問題があった。
【特許文献1】国際公開第2005/121060号パンフレット
【非特許文献1】Journal of Fluorine Chemistry, 49, 1990, pp.433−437
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように特許文献1及び非特許文献1には、含フッ素スルフィン酸ナトリウム塩を、(NH、Ce(SO、H/Fe2+などの酸化剤(乃至ラジカル開始剤)を用いて含フッ素カルボン酸を製造する方法が記載されている。
【0006】
しかし、酸化剤の使用量を減らした場合は反応が完結せず、多量の原料が残存する問題が生じたり(例えば、本願明細書の比較例2、比較例4、比較例5〜8)、またこれらの手法で反応濃度(0.20モル/L以上)を高くした場合も多量の原料が残存したり、副反応が優先しやすくなる問題点が生じ(例えば、本願明細書の比較例1〜3、比較例5〜7)、さらには酸化剤を多量(0.5当量以上)に用いた場合には副反応が顕著となり、目的物の選択率が低くなる等の問題点が明らかとなった(例えば、本願明細書の比較例1および比較例3)。
【0007】
また、そのために反応濃度を低濃度に保つ必要があり、大量生産を行なう際には含フッ素カルボン酸を水中より有機溶剤を用いて抽出する必要があり、多量の有機溶剤の廃棄物とともに水系の廃棄物も多量に生じ、非常に問題となることが判明した。
【0008】
そこで、本発明は、含フッ素スルフィン酸塩から、上記のような問題が生ずることなく高収率で含フッ素カルボン酸類を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、従来法の問題点に鑑み、工業規模での生産に適した含フッ素カルボン酸類の製造方法について鋭意研究を行った。
【0010】
その結果、含フッ素スルフィン酸塩類の水溶液又はアルコール溶液に、酸素(空気などの酸素を含むガス)を継続的又は間欠的に導入して、ラジカル開始剤を用いて酸化分解することにより、非常に高い反応濃度(0.20モル/Lよりも高濃度)においても、高収率で含フッ素カルボン酸類を製造できることを見出した。
【0011】
さらに、非特許文献1では、含フッ素スルフィン酸塩類に対して、0.5〜1当量と比較的多量の無機ラジカル開始剤を使用するが、この場合多くの副生生物が生じ、目的とする含フッ素カルボン酸類の生成率が著しく悪化することも顕在化した。特に、反応濃度を高くした場合にはさらに著しくカルボン酸(エステル)の選択率が悪化する。
【0012】
加えて、特許文献1では、含フッ素スルフィン酸塩類に対して、0.01〜0.2当量と比較的少量の有機ラジカル開始剤を使用するが、この場合開始剤量が0.125当量程度までは比較的反応が進行しやすいが、0.125当量以下では多くの原料が残存し、目的とする含フッ素カルボン酸類の生成率が著しく悪化することも顕在化した。特に、反応濃度を高くした場合にはさらに著しくカルボン酸(エステル)の生成量が減少する。
【0013】
これに対し、上記の酸素導入条件下で、ラジカル開始剤の量を非常に少量にすることにより、副生成物を抑制して目的の含フッ素カルボン酸類を高選択率に製造できることも見いだした。
【0014】
かかる知見に基づきさらに検討を行った結果、本発明を完成するに至った。
【0015】
即ち、本発明は、以下に示す含フッ素カルボン酸類の製造方法に関する。
【0016】
項1. 一般式(3):
(COR) (3)
(式中、nは1又は2であり、Rはnが1のとき含フッ素アルキル基又はnが2のとき含フッ素アルキレン基であり、Rは水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいアラルキル基である。)
で示される含フッ素カルボン酸類の製造方法であって、一般式(2):
(CFSOM) (2)
(式中、Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、n及びRは前記に同じ。)
で示される含フッ素スルフィン酸塩を含む溶液に、触媒量のラジカル発生剤の存在下、酸素を含むガスを導入して反応させることを特徴とする製造方法。
【0017】
項2. 前記一般式(2)及び(3)において、nが1である項1に記載の製造方法。
【0018】
項3. 前記ラジカル発生剤を、一般式(2)で示される含フッ素スルフィン酸塩1モルに対し0.0002〜0.20モル使用する項1又は2に記載の製造方法。
【0019】
項4. 前記ラジカル発生剤がアゾ化合物、有機過酸化物、過硫酸塩、セリウム塩、及び過酸化水素からなる群より選ばれる少なくとも一種である項1、2又は3に記載の製造方法。
【0020】
項5. Rが炭素数1〜11のペルフルオロアルキル基である項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【0021】
項6. 前記溶液中の溶媒が水及びアルコール類からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【0022】
項7. 前記溶液中の一般式(2)で示される含フッ素スルフィン酸塩の濃度が0.20モル/Lよりも高い濃度である項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【0023】
項8. 一般式(3):
(COR) (3)
(式中、nは1又は2であり、Rはnが1のとき含フッ素アルキル基又はnが2のとき含フッ素アルキレン基であり、Rは水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいアラルキル基である。)
で示される含フッ素カルボン酸類の製造方法であって、
(I)一般式(1):
(CFX) (1)
(式中、Xはハロゲン原子であり、R及びnは前記に同じ。)
で示される含フッ素アルキルハライドと亜ジチオン酸塩とを、塩基の存在下反応して、一般式(2):
(CFSOM) (2)
(式中、Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、R及びnは前記に同じ。)
で示される含フッ素スルフィン酸塩を製造する工程、及び
(II)得られた一般式(2)で示される含フッ素スルフィン酸塩を含む溶液に、触媒量のラジカル発生剤の存在下、酸素を含むガスを導入して反応させて、一般式(3)で示される含フッ素カルボン酸類を製造する工程、
を含むことを特徴とする製造方法。
【0024】
項9. 一般式(4):
(COY) (4)
(式中、nは1又は2であり、Rはnが1のとき含フッ素アルキル基又はnが2のとき含フッ素アルキレン基であり、Yはカチオン種である。)
で示される含フッ素カルボン酸塩の製造方法であって、
(I)一般式(2):
(CFSOM) (2)
(式中、Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、R及びnは前記に同じ。)
で示される含フッ素スルフィン酸塩を含む含水溶液に、触媒量のラジカル発生剤の存在下、酸素を含むガスを導入して反応させて、一般式(3a):
(COH) (3a)
(式中、R及びnは前記に同じ。)
で示される含フッ素カルボン酸を製造する工程、及び
(II)得られた一般式(3a)で示される含フッ素カルボン酸を中和して一般式(4)で示される含フッ素カルボン酸塩を製造する工程、
を含むことを特徴とする製造方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明の製造方法によれば、含フッ素スルフィン酸塩類を原料として、簡便且つ効率的に、高収率かつ項選択的に含フッ素カルボン酸類を製造することができる。このため本発明は、工業的な規模で含フッ素カルボン酸類を製造するための優れた方法である。得られた含フッ素カルボン酸類は、アンモニア水等と反応させると、容易に含フッ素カルボン酸塩類に誘導できる。
【0026】
また、本発明によれば、含フッ素アルキルハライドから含フッ素スルフィン酸塩類を経て、含フッ素カルボン酸類を製造することができる。この反応は、廃棄物の発生量も極めて少なく、また反応条件も温和な条件で実施できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。
【0028】
含フッ素カルボン酸類の製造
本発明は、一般式(3):
(COR) (3)
(式中、nは1又は2であり、Rはnが1のとき含フッ素アルキル基又はnが2のとき含フッ素アルキレン基であり、Rは水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいアラルキル基である。)
で示される含フッ素カルボン酸類の製造方法であって、一般式(2):
(CFSOM) (2)
(式中、Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、n及びRは前記に同じ。)
で示される含フッ素スルフィン酸塩を含む溶液に、触媒量のラジカル発生剤の存在下、酸素を含むガスを導入して反応させることを特徴とする。
【0029】
で示される含フッ素アルキル基(n=1の時)としては、直鎖又は分岐の炭素数1〜11(好ましくは1〜7)の含フッ素アルキル基が挙げられる。含フッ素アルキル基とは、アルキル基の少なくとも1個の水素原子がフッ素原子に置換された基であり、好ましくは全ての水素原子がフッ素原子に置換されたペルフルオロアルキル基である。
【0030】
含フッ素アルキル基の具体例としては、例えば、式:C2m+1−又はHC2m−(mは1〜7の整数)で示される基、さらに式:F(CF−又は式:H(CF−(mは2〜7の整数)で示される基等が挙げられる。より具体的には、C−、C−、C−、C11−、C13−、C15−、C17−、HCFCF−、H(CFCF−等が例示される。
【0031】
で示される含フッ素アルキレン基(n=2の時)としては、直鎖又は分岐の炭素数1〜11(好ましくは1〜7)の含フッ素アルキレン基が挙げられる。含フッ素アルキレン基とは、アルキレン基の少なくとも1個の水素原子がフッ素原子に置換された基であり、好ましくは全ての水素原子がフッ素原子に置換されたペルフルオロアルキレン基である。
【0032】
含フッ素アルキレン基の具体例としては、例えば、−C−、−C−、−C−、−C10−、−C12−等が例示される。
【0033】
Rで示される置換されていてもよいアルキル基のアルキル基としては、直鎖、分岐又は環状の炭素数1〜7(好ましくは1〜6)のアルキル基が挙げられる。具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル等が挙げられる。
【0034】
アルキル基の置換基としては、炭素数1〜4のアルコキシ、ハロゲン原子、水酸基が挙げられ、該アルキル基はこれから選ばれる1〜3個の基で置換されていてもよい。
【0035】
Rで示される置換されていてもよいアリール基のアリール基としては、単環又は2環のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル、トルイル、キシリル、ナフチル等が挙げられる。
【0036】
アリール基の置換基としては、炭素数1〜4のアルコキシ、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基が挙げられ、該アリール基はこれから選ばれる1〜3個の基で置換されていてもよい。
【0037】
Rで示される置換されていてもよいアラルキル基のアラルキル基としては、ベンジル、フェネチル等が挙げられる。
【0038】
アラルキル基の置換基としては、炭素数1〜4のアルコキシ、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基が挙げられ、該アラルキル基はこれから選ばれる1〜3個の基で置換されていてもよい。
【0039】
Mで表されるアルカリ金属としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)などが挙げられ、好ましくはナトリウムである。Mで表されるアルカリ土類金属としては、1/2Mg、1/2Ca等が挙げられる。Mとして好ましくはアルカリ金属、特にナトリウムである。
【0040】
なお、nは1又は2であるが、特にnは1が好適である。つまり、一般式(3)で示される含フッ素カルボン酸が、一般式(3a):
COR (3a)
(式中、R及びRは前記に同じ。)
で示される含フッ素カルボン酸類であり、一般式(2)で示される含フッ素スルフィン酸塩が、一般式(2a):
CFSOM (2a)
(式中、R及びMは前記に同じ。)
で示される含フッ素スルフィン酸塩の場合である。
【0041】
反応溶媒としては、水及び/又はアルコール類を含む溶媒が好ましい。アルコール類としては、一般式:R’OH(式中、R’は置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいアラルキル基であり)で示される化合物が挙げられる。上記のR’で示される基は、Rで示されたものと同義である。該アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、ペンタノール、シクロペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等の炭素数1〜7の鎖状、分岐又は環状のアルキルアルコール;メトキシ基、ニトリル基、ニトロ基、ハロゲン原子等で置換されていてもよいフェノール;ベンジルアルコール等が挙げられる。
【0042】
上記のように水及び/又はアルコール類を含む溶媒であれば、反応に悪影響を与えない他の溶媒を含んでいてもよい。該他の溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の炭化水素化合物、ジエチルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒等などが挙げられる。また、単独溶媒であっても複数の溶媒を併用しても良い。
【0043】
なお、含水溶媒中では、通常、一般式(3)又は(3a)で示される含フッ素カルボン酸類のR=Hで示されるカルボン酸化合物を与える。即ち、一般式(2)で示される含フッ素スルフィン酸塩を含む含水溶液中で反応させた場合には、一般式(3a):
(COH) (3a)
(式中、R及びnは前記に同じ。)
で示される含フッ素カルボン酸が製造される。
【0044】
水を含まないアルコール類を含む溶媒中では、通常、該含フッ素カルボン酸とアルコール類とのステル化合物を与える。即ち、一般式(2)で示される含フッ素スルフィン酸塩を含むアルコール溶液中で反応させた場合には、一般式(3b):
(COR’) (3b)
(式中、R’は置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいアラルキル基であり、R及びnは前記に同じ。)
で示される含フッ素カルボン酸エステルが製造される。
【0045】
反応溶液中の一般式(2)で示される含フッ素スルフィン酸塩の濃度は特に限定はないが、通常0.20モル/L以上、好ましくは0.30〜1.5モル/L程度、より好ましくは0.50〜1.00である。特に、本発明の方法では、0.20モル/L以上の高濃度にて反応することができるため、大量生産を行なう場合でも廃棄物の量を少なくすることができるという利点があり、環境負荷が少ない生産プロセスを実現することができる。また、生成したカルボン酸を水溶液から抽出しようとした場合、抽出効率が改善できるといった利点もある。
【0046】
ラジカル発生剤としては、アゾ化合物、有機過酸化物等の有機ラジカル開始剤、過硫酸塩、セリウム塩、過酸化水素等の無機ラジカル開始剤が挙げられる。
【0047】
アゾ化合物としては、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロリド、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、4,4’-アゾビス(4−シアノ吉草酸)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2−メチルプロパン)、2,2’-アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、α,α’-アゾジイソブチルアミジンジハイドロクロリド等が例示される。
【0048】
有機過酸化物としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル 4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレート、2,2−ジ(4,4−ジ−(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジイソブチリルパーオキサイド、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジラウロリルパーオキサイド、ジコハク酸パーオキサイド、ジ(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカノアート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノアート、t−ブチルパーオキシネオデカノアート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノアート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノアート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノアート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノマーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノアート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシ3−メチルベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、3,3‘、4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン等が例示される。
【0049】
過硫酸塩としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムが例示される。
【0050】
セリウム塩としては、セリウム(IV)アンモニウムナイトレイト、セリウム(IV)サルフェイト、セリウム(IV)アンモニウムサルフェイト、水酸化セリウム(IV)、酸化セリウム(IV)等が例示される。
【0051】
ラジカル発生剤は、これらからなる群より選ばれる少なくとも一種を用いることができる。このうち、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロリド、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)等のアゾ化合物が好ましい。
【0052】
ラジカル発生剤の配合量は、一般式(2)で示される含フッ素スルフィン酸塩に対して触媒量であればよく、含フッ素スルフィン酸塩1モルあたり0.0002〜0.20モル、好ましくは0.0005〜0.05モル、より好ましくは0.001〜0.01モルという非常に少量でよい。ラジカル発生剤の量が0.0002モル未満の場合反応速度が非常に遅くなる傾向にあり、0.12を越える場合、副生成物の生成が多くなる傾向にある。
【0053】
酸素を含むガスとしては、酸素を含む空気のような酸素以外のガスで希釈されたガスでも良い。本発明では、積極的に酸素含有ガスを反応液中に導入し、溶存酸素濃度を高めて反応を促進する点に特徴がある。該ガスの導入の方法としては反応液に酸素が溶けこむ手法であれば良く、具体的には差込管等を用いることで反応液中に酸素をバブリンブすることが好ましい。
【0054】
反応温度は通常20〜100℃であり、40〜80℃が好ましく、50〜70℃がより好ましい。反応温度が20℃未満では反応速度が遅く、100℃を越えて加熱しても反応速度に著しい増加は見られず、エネルギー効率の観点から経済的に好ましくない。反応時間は、通常2〜10時間程度である。
【0055】
本発明の方法の典型例としては、まず、含フッ素スルフィン酸塩類を水及び/又はアルコール類を含む溶媒に溶解し、これに酸素(酸素を含んだ空気などのガスでも差し支えない)を導入し、反応を加速するためにラジカル発生剤を投入する。その後上記の反応条件で反応させる。
【0056】
本発明の製造方法は、通常バッチ式反応装置において実施することができる。反応器は、例えば四フッ化エチレン樹脂、クロロトリフルオロエチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、PFA樹脂、ガラスなどを内部にライニングしたもの、グラス容器、ステンレス、もしくはハステロイで製作したもので実施することができるが、フッ化水素が発生することから四フッ化エチレン樹脂、クロロトリフルオロエチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、PFA樹脂を内部にライニングしたものやステンレス、ハステロイなどの耐酸性の良い反応器が好ましい。
【0057】
反応終了後は、蒸留、再結晶等の常法に従い、目的とする一般式(3)で示される含フッ素カルボン酸類を精製する。
【0058】
また、融点が高く、水に溶けにくいカルボン酸類は水洗しただけでも高純度のカルボン酸類を得ることができる。
【0059】
上記のように、本発明の製造方法によれば、一般式(2)で示される含フッ素スルフィン酸塩を出発原料として、特許文献1や非特許文献1の方法に比べ、廃棄物の量が少なく、効率的かつ収率良く一般式(3)で示される含フッ素カルボン酸類を製造することができる。
【0060】
なお、一般式(2)で示される含フッ素スルフィン酸塩は、一般式(1):
(CFX) (1)
(式中、Xはハロゲン原子であり、R及びnは前記に同じ。)
で示される含フッ素アルキルハライドと亜ジチオン酸塩とを、塩基の存在下反応して製造することができる。例えば、J. Org. Chem. 1991, 56, 2801-2804や特許文献1(国際公開第2005/121060号パンフレット)に示される方法により容易に製造することができる。
【0061】
Xで示されるハロゲン原子としては、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。一般式(1)で示される含フッ素アルキルハライドにおいて、nが1のものが好適である。
【0062】
反応は、例えば、一般式(1)で示される含フッ素アルキルハライドの水溶液に、塩基(例えば、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム等)の存在下、亜ジチオン酸塩(例えば、亜ジチオン酸ナトリウム等)を反応させて製造することができる。
【0063】
含フッ素カルボン酸塩の製造
更に、本発明は、上記一般式(3a)で示される含フッ素カルボン酸を中和して、一般式(4):
(COY) (4)
(式中、nは1又は2であり、Rはnが1のとき含フッ素アルキル基又はnが2のとき含フッ素アルキレン基であり、Yはカチオン種である。)
で示される含フッ素カルボン酸塩の製造方法をも提供する。
【0064】
一般式(3a)で示される含フッ素カルボン酸の中和に用いる塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;アンモニア;テトラアルキルアンモニウムハイドロキシド等が挙げられる。これらの塩基を用いた場合、Yで示されるカチオン種としては、アルカリ金属;アンモニウム;テトラアルキルアンモニウムなどが挙げられる。
【0065】
中和反応は常法に従えばよく特に限定はない。例えば、上記一般式(3a)で示される含フッ素カルボン酸の水溶液に、塩基、又はその水溶液等を滴下して中和すればよい。
【0066】
得られた一般式(4)で示される含フッ素カルボン酸塩は、界面活性剤、乳化剤等の用途に用いられる。
【実施例】
【0067】
つぎに本発明を合成例および実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0068】
以下の合成例および実施例及び比較例における、各成分の含有率(%)は、下記条件でGC測定したときの、各成分のピーク面積に基づき算出した。具体的には以下の手順により算出した。
【0069】
1)イソプロピルエーテル中に目的物を溶解させたサンプルをGC測定し、検量線を作成する。
2)反応液の所定量をサンプリンブし、所定量のジイソプロピルエーテルにて目的物を抽出する。
3)抽出液をGC分析し、検量線に基づき抽出液中に含まれる目的物の含有量を算出する。
4)サンプリング液中に含まれる目的物の含有量から目的物の生成量を算出する。
【0070】
また、GC分析は(株)島津製作所製GC−2010を用い、下記の条件でGC分析を行なった。
【0071】
【表1】

【0072】
また、NMRは以下の条件で測定した。
【0073】
NMR:BRUKER社製
1H−NMR測定条件:300MHz(テトラメチルシラン=0ppm)
19F−NMR測定条件:282MHz(トリクロロフルオロメタン=0ppm)
合成例1
還流冷却器、温度計、攪拌装置及び滴下漏斗を備えた1000ml容量の四つ口フラスコに水(369g)に炭酸ナトリウム(32.3g)を溶解させ、さらに亜ジチオン酸ナトリウム(107.7g)を加えた。この水溶液を50℃まで加熱し、エタノール(92.5g)のC13I(138.5g)溶液を滴下した。滴下には約1時間を要した。滴下後、バス温を85℃に上げ、還流(〜76℃)を2時間行った。
【0074】
反応終了後、酢酸エチル(277g)を加え、抽出した。次に、酢酸エチル層をさらに飽和食塩水(615g)で洗浄した。得られた酢酸エチル層は水(664g)を加えて、エバポレーターを用いて酢酸エチルを減圧留去した。この際、エタノールおよび酢酸エチルが0.05%以下となるまで減圧留去を続けた。得られた水溶液(481.5g)のスルフィン酸ナトリウムの濃度は14%であった。したがって、収量は122.3g(95%)であった。
19F−NMR(溶媒:d-Acetone/水, 基準物質:CClF);δ−83.1(t、J=10.1Hz、3F)、−123.2〜−123.8(m、4F)、−127.8〜−128.2(m、2F)、−131.4〜−131.6(m、2F)、−128.0〜−128.3(m、2F)
合成例2
還流冷却器、温度計、攪拌装置及び滴下漏斗を備えた1000ml容量の四つ口フラスコに水に水酸化ナトリウム(24.0g)を溶解し、さらに亜ジチオン酸ナトリウム(140.0g)を加えた。この水溶液を50℃まで加熱し、C13I(180.0g)のメタノール(90.0g)溶液を滴下した。滴下後、バス温を85℃まで上げ、還流(〜75℃)を2時間行なった。
【0075】
反応終了後、飽和食塩水(800g)と酢酸エチル(360g)を加え、抽出した。次に、酢酸エチル層をさらに飽和食塩水(800g)で洗浄した。得られた酢酸エチル層は無水硫酸ナトリウム(80g)で乾燥、ろ過した後にエバポレーターを用いて減圧留去し、スルフィン酸ナトリウム(151.0g)を得た。収率は92%であった。
【0076】
実施例1
還流冷却器、温度計及び攪拌装置(回転子)を備えた500ml容量の四つ口フラスコにC13SONa(40g、98.5mmol)を水(245g)に溶解し、過硫酸アンモニウム(2.2g、9.6mmol)を加え、差し込み管より空気をバブリングさせながら60℃に加熱した。空気をバブリングさせたまま60℃にて5時間反応を継続した。反応停止後、得られた反応液を19F−NMRにて測定を行なったところ、目的の2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロへキサン酸は91%で生成していた。
【0077】
反応停止後、濃硫酸(62g)を加えた。下層に生成した2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロへキサン酸を沈降させ、分液した。さらにカルボン酸層は40gの20%硫酸水で洗浄した。得られたカルボン酸層はそのまま減圧蒸留(真空度:10mmHg)し、目的の2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロへキサン酸を22.3g得た。収率は72%であった。
H−NMR(溶媒:d-Acetone, 基準物質:TMS);δ9.56(bs, 1H)、19F−NMR(溶媒:d-Acetone, 基準物質:CClF);δ−83.3(t、J=10.0Hz、3F)、−120.9(t、J=12.6Hz、2F)、−124.0〜−124.6(m、4F)、−128.0〜−128.3(m、2F)
実施例2
還流冷却器、温度計及び攪拌装置(回転子)を備えた500ml容量の四つ口フラスコにC13SONa(40g、98.5mmol)を水(145g)に溶解し、過硫酸アンモニウム(0.22g、0.96mmol)を加え、差し込み管より空気をバブリングさせながら60℃に加熱した。空気をバブリングさせたまま60℃にて7.5時間反応を継続した。反応停止後、得られた反応液を19F−NMRにて測定を行なったところ、目的の2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロへキサン酸は94%で生成していた。
【0078】
反応停止後、硫酸(62g)を加えた。下層に生成した2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロへキサン酸を沈降させ、分液した。さらにカルボン酸層は40gの20%硫酸水で洗浄した。得られたカルボン酸層はそのまま減圧蒸留(真空度:10mmHg)し、目的の2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロへキサン酸を23.2g得た。収率は75%であった。
【0079】
実施例3
還流冷却器、温度計及び攪拌装置(回転子)を備えた30ml容量の三つ口フラスコにC13SONa(4g、9.9mmol)を水(20g)に溶解し、過硫酸アンモニウム(0.22g、0.96mmol)を加え、反応器内を酸素で置換した。
【0080】
次に、この反応液を60℃に加熱した。60℃にて3.0時間反応を継続した。反応停止後、得られた反応液をサンプリングしてジイソプロピルエーテルで抽出し、抽出したジイソプロピルエーテル溶液に含まれるカルボン酸量をGCにて定量した結果、目的の2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロへキサン酸は89%で生成していた。
【0081】
実施例4
還流冷却器、温度計及び攪拌装置(回転子)を備えた30ml容量の三つ口フラスコにC13SONa(4g、9.9mmol)を水(15g)に溶解し、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロリド(0.028g、0.10mmol)を加え、差し込み管より空気をバブリングさせながら60℃に加熱した。空気をバブリングさせたまま60℃にて2.5時間反応を継続した。反応停止後、得られた反応液を19F−NMRにて測定を行なったところ、目的の2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロへキサン酸は82%で生成していた。
【0082】
実施例5
還流冷却器、温度計及び攪拌装置(回転子)を備えた30ml容量の三つ口フラスコにC13SONa(4g、9.9mmol)をメタノール(15mL)、N,N-ジメチルアセトアミド(5g)に溶解し、過硫酸アンモニウム(0.02g、0.096mmol)を加え、酸素で置換した。その後、55℃に加熱した。3.0時間反応を継続した。反応停止後、得られた反応液を19F−NMRにて測定を行なったところ、目的の2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロへキサン酸メチルエステルは41%で生成していた。副生成物は14%、原料のC13SONaが45%残存していた。
【0083】
H−NMR(溶媒:d-Acetone, 基準物質:TMS);δ4.05(s, 1H)、19F−NMR(溶媒:d-Acetone, 基準物質:CClF);δ−80.6(t, J=8.7Hz、3F)、−118.1(t, J=12.4Hz、2F)、−121.8〜−122.6(m、4F)、−125.6〜−125.8(m、2F)
比較例1
還流冷却器、温度計、攪拌装置(回転子)を備えた30ml容量の三つ口フラスコにC13SONa(4g、9.9mmol)を水(15g)に溶解し、過硫酸アンモニウム(2.2g、9.6mmol)を加えて60℃に加熱し、3時間反応させた。得られた反応液を19F−NMRにて測定を行なったところ、目的のカルボン酸は25%、副生成物が45%で生成し、原料のC13SONaが30%残存していた。
【0084】
比較例2
還流冷却器、温度計、攪拌装置(回転子)を備えた100ml容量の四つ口フラスコにC13SONa(4g、9.9mmol)を水(20g)に溶解し、過硫酸アンモニウム(0.2g、0.96mmol)を加え、60℃に加熱した。3時間反応させた後、得られた反応液をサンプリングしてジイソプロピルエーテルで抽出し、抽出したジイソプロピルエーテル溶液に含まれる2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロへキサン酸の量を定量した結果、目的の2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロへキサン酸は31%で生成していた。そのまま反応を継続し、反応開始してから7.5時間後に再び反応液をサンプリングしてジイソプロピルエーテルで抽出し、抽出したジイソプロピルエーテル溶液に含まれる2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロへキサン酸の量を定量した結果、目的の2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロへキサン酸の生成量は31%であり、生成量は増加していなかった。
【0085】
比較例3
還流冷却器、温度計、攪拌装置(回転子)を備えた500ml容量の四つ口フラスコにC13SONa(40g、98.5mmol)を水(245g)に溶解し、過硫酸アンモニウム(44.0g、193.0mmol)を加えて60℃に加熱し、差し込み管より空気をバブリングさせながら60℃に加熱した。空気をバブリングさせたまま5時間反応させた。得られた反応液をアセトン−d6に溶解して19F−NMRの測定を行なったところ、目的の2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロへキサン酸は36%で生成し、原料のC13SONaが0%、副生成物が64%生成していた。
【0086】
比較例4
還流冷却器、温度計、攪拌装置(回転子)を備えた100ml容量の四つ口フラスコにC13SONa(4g、9.9mmol)を水(60g)に溶解し、過硫酸アンモニウム(0.02g、0.09mmol)を加えて60℃に加熱し、6時間反応させた。得られた反応液をアセトン−d6に溶解して19F−NMRの測定を行なったところ、目的の2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロへキサン酸は43%で生成し、原料のC13SONaが51%残存し、副生成物が6%生成していた。
【0087】
比較例5
還流冷却器、温度計、攪拌装置(回転子)を備えた30ml容量の四つ口フラスコにC13SONa(4g、9.9mmol)を水(15g)に溶解し、過硫酸アンモニウム(0.02g、0.09mmol)を加えて60℃に加熱し、6時間反応させた。得られた反応液をアセトン−d6に溶解して19F−NMRの測定を行なったところ、目的の2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロへキサン酸は22%で生成し、原料のC13SONaが74%残存し、副生成物が4%生成していた。
【0088】
比較例6
還流冷却器、温度計及び攪拌装置(回転子)を備えた30ml容量の四つ口フラスコにC13SONa(4g、9.9mmol)を水(15g)に溶解し、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロリド(0.028g、0.10mmol)を加え、60℃に加熱した。60℃にて2.5時間反応を継続した。得られた反応液を19F−NMRにて測定を行なったところ、目的の2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロへキサン酸は26%で生成し、原料のC13SONaが69%残存し、副生成物が5%生成していた。
【0089】
さらに、60℃にて反応を継続し、60℃にて5.0時間反応を継続した。得られた反応液を19F−NMRにて測定を行なったところ、目的の2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロへキサン酸は29%で生成し、原料のC13SONaが67%残存し、副生成物が4%生成していた。
【0090】
比較例7
還流冷却器、温度計及び攪拌装置(回転子)および滴下漏斗を備えた30ml容量の四つ口フラスコにC13SONa(4g、9.9mmol)を水(10g)に溶解し、55℃に加熱した。次に、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロリド(0.35g、1.25mmol)を水(5g)に溶解した溶液を1.5時間かけて滴下した。滴下後、反応液は60℃に加熱した。60℃にて3.0時間反応を継続した。得られた反応液を19F−NMRにて測定を行なったところ、目的の2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロへキサン酸は37%で生成し、原料のC13SONaが57%残存し、副生成物が6%生成していた。
【0091】
比較例8
還流冷却器、温度計及び攪拌装置を備えた30ml容量の四つ口フラスコにC13SONa(4g、9.9mmol)を水(60g)に溶解し、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロリド(0.028g、0.10mmol)を加え、60℃に加熱した。60℃にて2.5時間反応を継続した。得られた反応液を19F−NMRにて測定を行なったところ、目的の2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロへキサン酸は30%で生成し、原料のC13SONaが64%残存し、副生成物が6%生成していた。
【0092】
さらに、60℃にて反応を継続し、60℃にて5.0時間反応を継続した後に得られた反応液を19F−NMRにて測定を行なったところ、目的の2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロへキサン酸は37%で生成し、原料のC13SONaが58%残存し、副生成物が5%生成していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(3):
(COR) (3)
(式中、nは1又は2であり、Rはnが1のとき含フッ素アルキル基又はnが2のとき含フッ素アルキレン基であり、Rは水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいアラルキル基である。)
で示される含フッ素カルボン酸類の製造方法であって、一般式(2):
(CFSOM) (2)
(式中、Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、n及びRは前記に同じ。)
で示される含フッ素スルフィン酸塩を含む溶液に、触媒量のラジカル発生剤の存在下、酸素を含むガスを導入して反応させることを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記一般式(2)及び(3)において、nが1である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ラジカル発生剤を、一般式(2)で示される含フッ素スルフィン酸塩1モルに対し0.0002〜0.20モル使用する請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ラジカル発生剤がアゾ化合物、有機過酸化物、過硫酸塩、セリウム塩、及び過酸化水素からなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項1、2又は3に記載の製造方法。
【請求項5】
が炭素数1〜11のペルフルオロアルキル基である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記溶液中の溶媒が水及びアルコール類からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記溶液中の一般式(2)で示される含フッ素スルフィン酸塩の濃度が0.20モル/Lよりも高い濃度である請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
一般式(3):
(COR) (3)
(式中、nは1又は2であり、Rはnが1のとき含フッ素アルキル基又はnが2のとき含フッ素アルキレン基であり、Rは水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、又は置換されていてもよいアラルキル基である。)
で示される含フッ素カルボン酸類の製造方法であって、
(I)一般式(1):
(CFX) (1)
(式中、Xはハロゲン原子であり、R及びnは前記に同じ。)
で示される含フッ素アルキルハライドと亜ジチオン酸塩とを、塩基の存在下反応して、一般式(2):
(CFSOM) (2)
(式中、Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、R及びnは前記に同じ。)
で示される含フッ素スルフィン酸塩を製造する工程、及び
(II)得られた一般式(2)で示される含フッ素スルフィン酸塩を含む溶液に、触媒量のラジカル発生剤の存在下、酸素を含むガスを導入して反応させて、一般式(3)で示される含フッ素カルボン酸類を製造する工程、
を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項9】
一般式(4):
(COY) (4)
(式中、nは1又は2であり、Rはnが1のとき含フッ素アルキル基又はnが2のとき含フッ素アルキレン基であり、Yはカチオン種である。)
で示される含フッ素カルボン酸塩の製造方法であって、
(I)一般式(2):
(CFSOM) (2)
(式中、Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、R及びnは前記に同じ。)
で示される含フッ素スルフィン酸塩を含む含水溶液に、触媒量のラジカル発生剤の存在下、酸素を含むガスを導入して反応させて、一般式(3a):
(COH) (3a)
(式中、R及びnは前記に同じ。)
で示される含フッ素カルボン酸を製造する工程、及び
(II)得られた一般式(3a)で示される含フッ素カルボン酸を中和して一般式(4)で示される含フッ素カルボン酸塩を製造する工程、
を含むことを特徴とする製造方法。

【公開番号】特開2009−40708(P2009−40708A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−206092(P2007−206092)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】