説明

含フッ素共重合体溶液およびその製造方法

【課題】塗料原料として適切な溶解特性を示すと共に塗膜として長期耐久性を与える含フッ素共重合体溶液を提供すること。
【解決手段】フルオロオレフィン重合単位15〜85モル%に対し特定のエチレン系不飽和有機珪素化合物重合単位0.001〜50モル%を酢酸エチル、酢酸ブチル、キシレン、トルエン、メチルエチルケトンの内から選択された1種以上の溶媒による溶液重合法により共重合させることにより含フッ素共重合体溶液を製造する。該共重合体の構造にはアルキルビニルエーテル、アルキルアリルエーテル、メタクリル酸エステル及びアクリル酸エステルから選択される少なくとも1種の重合単位がさらに含まれてもよい。

【発明の詳細な説明】
【産業上の利用分野】
【0001】
本発明は、撥水撥油性に優れ、フッ素樹脂の特徴である耐薬品性、耐候性等の優れた特徴を有し、且つアクリル樹脂との相溶性に優れた新規な含フッ素共重合体およびそれを主成分とするフッ素樹脂塗料、ワニスに関するものである。
【従来の技術】
【0002】
溶剤可溶型のフッ素樹脂塗料は、一般的にヒドロキシアルキルビニルエーテルとフルオロオレフィン、また必要に応じてアルキルビニルエーテル、アルキルビニルエステル等を共重合し得られる。かかる含フッ素共重合体をベースとする塗料は、一般的な有機溶剤への溶解性を得るために、炭化水素モノマーを40%以上含んでいる。そのためフッ素樹脂中のフッ素含有量が低下し、含フッ素樹脂に求められる撥水撥油性、耐汚染性等の塗膜特性が充分に得られない。一方、該含フッ素共重合体に少量のシリコーンオイル等の有機珪素化合物を混合することにより、撥水撥油性が向上する。しかし、長期における撥水撥油特性を維持することは難しい。またさらに、用途によってはシリコーンオイルが塗膜表面よりブリードアウトしてしまうためシリコーンオイルが使用できないものもある。また、撥水撥油剤としてパーフルオロ基を有する含フッ素単量体とシリル基を含有する単量体との共重合体が検討されているが、共重合体の主骨格にフッ素原子を有していないため充分な耐候性が得られていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は上記のような問題点を解決する含フッ素共重合体を提供すること、つまりフッ素樹脂塗膜の優れた特徴(耐薬品性、耐候性等)を有し、長期における撥水撥油性、繰り返しの汚染除去性に優れる新規な含フッ素共重合体とその製造方法を提供し、さらにそれらを主成分とするフッ素系塗料、ワニス等として用いることができるというものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者等は、上記のような問題点を解決すべく鋭意検討を行った結果、一般式(1)、(2)、(3)及び(4)の内から選択される1種以上の有機珪素化合物とフルオロオレフィンの共重合体が、長期における撥水撥油性、繰り返しの汚染除去性に優れることを見出した。
【0005】
CH2=CH−Si(R1)R2 (1)

3
(ここで、R1、R2、R3は、それぞれ水素原子、メチル基、エチル基、ブチル基、フェニル基、−CF3、−C24CF3、−C(CH33または−OSi(CH33を示す。R1、R2、R3はそれぞれ同一または異なっていてもよい。)
【0006】
CH2=CR4−R5−(CH2n−Si(CH32
−〔O−Si(CH32m−OSi(CH33 (2)
【0007】
CH2=CR4−COO−(CH2n−Si(CH32
−〔O−Si(CH32m−OSi(CH326 (3)
(ここで、R4は水素原子またはメチル基、R5はエステル基、エーテル基または酸素原子、R6は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基、nは0〜10の整数、mは0〜160の整数。)
【0008】
CH2=CR7−COO−(CH2p−Si(R8)R9 (4)

10
(ここで、R7は水素原子またはメチル基、R8、R9、R10はそれぞれ水素原子、メチル基、エチル基、ブチル基または−OSi(CH33を示す。R8、R9、R10はそれぞれ同一または異なっていてもよい。pは0〜10の整数。)
すなわち、本発明は、重合単位として、フルオロオレフィンを15〜85モル%、一般式(1)、(2)、(3)及び(4)の内から選択される1種以上の有機珪素化合物を0.001〜50モル%含むことを特徴とした長期における撥水撥油性、繰り返しの汚染除去性、耐薬品性、耐候性に優れた含フッ素共重合体に関するものである。また、本発明は上記重合単位に加えて残部がアルキルビニルエーテル、アルキルアリルエーテル、メタクリル酸エステル及びアクリル酸エステルの内から選択された1種以上の重合単位によって、構成されることを特徴とする含フッ素共重合体に関するものである。
【0009】
本発明の共重合体において、フルオロオレフィンとしては、分子中に一つ以上のフッ素原子を有するオレフィンであって、例えばフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等が好適である。これらのフルオロオレフィンは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合せてもよい。
【0010】
一般式(1)、(2)、(3)及び(4)で示される有機珪素化合物の具体例としては、ビニルペンタメチルジシロキサン、ビニルフェニルジメチルシラン、ビニルメチルビス(トリメチルシロキシ)シラン、ビニルトリエチルシラン、ビニル(トリフルオロメチル)ジメチルシラン、ビニル(3,3,3−トリフルオロプロピル)ジメチルシラン、ビニルトリメチルシラン、ビニルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、ビニル−t−ブチルジメチルシラン、ビニルジエチルメチルシラン、(3−アクロキシプロピル)メチルビス(トリメチルシロキシ)シラン、3−メタクロキシプロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、(3−アクロキシプルピル)トリス(トリメチルシロキシ)シラン、メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、メタクリロキシメチルトリメチルシラン、片末端がメタクリル変性された反応性シリコーンオイル、片末端がアクリル変性された反応性シリコーンオイル等が好適である。これらの有機珪素化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合せてもよい。これらの有機珪素化合物の分子量は、100〜6000が好ましい。
【0011】
アルキルビニルエーテルの具体例としては、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、グリシジルビニルエーテル、グリシジルオキシメチルビニルエーテル、グリシジルオキシエチルビニルエーテル、グリシジルオキシブチルビニルエーテル、グリシジルオキシぺンチルビニルエーテル、グリシジルオキシシクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、4−ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル等が挙げられる。
【0012】
アルキルアリルエーテルの具体例としては、エチルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、シクロヘキシルアリルエーテル、イソブチルアリルエーテル、n−プロピルアリルエーテル、アリルグリシジルエーテル、3−アリルオキシ−1,2−プロパンジオール、グリセロール−α−モノアリルエーテル等が挙げられる。
【0013】
アクリル酸エステルの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシブチル等が挙げられる。
【0014】
メタクリル酸エステルの具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル等が挙げられる。
【0015】
本発明の含フッ素共重合体は、長期における撥水撥油性、繰り返しの汚染除去性、耐薬品性、耐候性に優れた塗膜を形成することが出来るが、さらにこれらの単位に加えて、使用目的などに応じて20モル%を超えない範囲で他の共重合可能な単量体単位を含むこともできる。
【0016】
該共重合可能な単量体として、例えばエチレン、プロピレン等のオレフィン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロオレフィン類、酢酸ビニル、n−酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類が挙げられる。
【0017】
本発明の含フッ素共重合体は、必須成分として、フルオロオレフィンを15〜85モル%、及び一般式(1)、(2)、(3)及び(4)の内から選択される1種以上の有機珪素化合物を0.001〜50モル%含有することを特徴とする。
【0018】
該含フッ素共重合体において重合単位フルオロオレフィンが15モル%より少ない場合には、塗料ベースとして使用した場合に、十分な耐汚染性が得られず好ましくない。また85モル%より多い場合には各種溶剤に対する溶解性が低下し好ましくない。好ましくは30〜80モル%である。また、一般式(1)、(2)、(3)及び(4)の内から選択される有機珪素化合物の割合が0.001モル%より少ない場合には、長期における十分な撥水撥油性が得られず好ましくない。また50モル%より多い場合には十分な耐薬品性、耐候性が得られず好ましくない。好ましくは0.01〜30モル%である。
【0019】
本発明の含フッ素共重合体は、所定割合の単量体混合物を重合開始剤を用いて共重合させることにより製造することができる。該重合開始剤としては、重合形式や所望に応じて用いられる溶媒の種類に応じて、油溶性のものあるいは水溶性のものが適宜用いられる。
【0020】
油溶性開始剤としては、例えばt−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシアセテート等のパーオキシエステル型過酸化物、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジノルマルプロピルパーオキシジカーボネート等のジアルキルパーオキシジカーボネート、ベンゾイルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル等が用いられる。
【0021】
水溶性開始剤としては、例えば過硫酸カリアウム等の過硫酸塩、過酸化水素、あるいはこれらと亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム等の還元剤との組み合わせからなるレドックス開始剤、さらには、これらに少量の鉄、第一鉄塩、硝酸銀等を共存させた無機系開始剤やコハク酸パーオキサイド、ジグルタル酸パーオキサイド、モノコハク酸パーオキサイド等の二塩基酸塩の有機系開始剤等が用いられる。
【0022】
これらの重合開始剤の使用量は、その種類、共重合反応条件等に応じて適宜選ばれるが、通常使用する単量体全量に対して、0.005〜5重量%、好ましくは0.1〜2重量%の範囲で選ばれる。また、重合方法については特に制限はなく、例えば塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法等を用いることが出来るが、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸ブチル等の酢酸エステル類、キシレン等の芳香族炭化水素類、t−ブタノール等のアルコール類、フッ素原子を一個以上有するハロゲン化飽和炭化水素類等を溶媒とする溶液重合法や水性溶媒中での乳化重合法が好ましい。
【0023】
本発明の含フッ素共重合体を溶液重合法により得るための特に好ましい溶媒としては酢酸エチル、酢酸ブチル、キシレン、トルエン、メチルエチルケトンが挙げられる。
【0024】
水性溶媒中で共重合させる場合には、通常分散安定剤として懸濁剤や乳化剤を用い、かつ塩基性緩衝剤を添加して、重合中の反応液のpH値を4以上、好ましくは6以上にすることが望ましい。該それぞれの共重合反応における反応温度は、通常−30℃〜150℃での範囲内で重合開始剤や重合媒体の種類に応じて適宜選ばれる。例えば溶媒中で共重合を行う場合には、通常0℃〜100℃、好ましくは10℃〜90℃の範囲で選ばれる。また、反応圧力については特に制限はないが、通常1〜100kg/cm2、好ましくは1〜50kg/cm2の範囲で選ばれる。さらに、該共重合反応は、適当な連鎖移動剤を添加して行うことができる。
【0025】
本発明の含フッ素共重合体が硬化部位としてヒドロキシル基を含有する場合、多価イソシアネート類を用いて常温で硬化させることができる。該多価イソシアネート類としては、例えばへキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの無黄変性ジイソシアネートやその付加物、イソシアヌレート類を有する多価イソシアネートが好ましく挙げられるが、これらの中でイソシアヌレート類を有する多価イソシアネートが特に有効である。イソシアネート類を用いて常温硬化を行わせる場合には、ジブチル錫ジラウレート等の公知触媒の添加によって硬化を促進させることもできる。
【0026】
さらに、メラミン硬化剤、尿素樹脂硬化剤、多基塩基酸硬化剤などを用いて加熱硬化させることもできる。該メラミン硬化剤としては、例えばブチル化メラミン、メチル化メラミン、エポキシ変性メラミン等が挙げられ、用途に応じて各種変性度の物が適宜用いられ、また自己縮合度も適宜選ぶことができる。尿素樹脂硬化剤としては、例えばメチル化尿素樹脂やブチル化尿素樹脂等が挙げられ、多基塩基酸硬化剤としては、例えば長鎖脂肪族ジカルボン酸、芳香族多価カルボン酸類およびこれらの酸無水物等が挙げられる。
【0027】
さらに、ブロック化多価イソシアネート類も硬化剤として好適に用いることができる。また、メラミン硬化剤または尿素樹脂硬化剤の使用に際しては、酸性触媒の添加によって硬化を促進させることもできる。
【0028】
また、本発明の含フッ素共重合体が硬化部位としてエポキシ基を含有する場合、通常の硬化性エポキシ塗料に用いられている硬化剤、例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のような脂肪族アミン類またはその変性物、メタフェニレンジアミン、p−p’−ジアミノジフェニルメタン、ジアミノフェニルスルホン等のような芳香族アミン類またはその変性物、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水シュウ酸、ヘキサヒドロフタル酸、ピメリン酸等の多価のカルボン酸またはその無水物等が挙げられる。
【0029】
本発明の含フッ素共重合体を主成分とするフッ素樹脂塗料又は硬化性フッ素樹脂塗料を製造する場合には種々の溶媒が使用可能であり、例えばキシレン、トルエン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、エチルセロソルブ等のグリコールエーテル類、市販の各種シンナー類等が挙げられるが、酢酸エチル、酢酸ブチル、キシレン、トルエンが特に好ましい。また、必要に応じてアクリル樹脂、エポキシ樹脂を添加することが可能で、これら他樹脂に対して含フッ素共重合体を塗料中に5〜80重量%、特に20〜60重量%含むように調節して使用するのが好ましい。
【0030】
塗料製造のための本発明の含フッ素共重合体と溶媒との混合は、ボールミル、ペイントシェーカー、サンドミル、三本ロールミル、ニーダー等の通常の塗料化に用いられる種々の機器を用いて行うことが出来る。この際、必要に応じてアクリル樹脂、顔料、分散安定剤、粘度調節剤、レベリング剤、紫外線吸収剤等を添加することもできる。
【実施例】
【0031】
次に実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
[実施例1]
【0032】
内容積1Lのステンレス製撹拌機付きオートクレーブ(耐圧100kg/cm2)に、脱気したのち、フッ化ビニリデン(以下VDFと略す)96g、テトラフルオロエチレン(以下TFEと略す)84g、エチルビニルエーテル(以下EVEと略す)10.8g、ヒドロキシブチルビニルエーテル(以下HBVEと略す)41.8g、ビニルジエチルシラン19.2g、酢酸ブチル400ml、およびt−ブチルパーオキシピバレート1.3gを入れ、撹伴しながら内温を60℃に昇温した。その後、撹拌しながら反応を続け、20時間後撹拌を停止し、反応を終了した。得られた共重合体を減圧乾燥により単離した。ポリマー収量は234g、モノマー反応率は93%であった。得られた共重合体の無水酢酸によるアセチル化法によって測定した水酸基価は86mgKOH/g樹脂、燃焼法によるフッ素含有量は48wt%、GPCで測定した数平均分子量は2.0×l04であった。このポリマーを酢酸ブチルに溶解させ50%の酢酸ブチル溶液とした。また上記共重合体の硬化塗膜の塗膜特性の次の方法で調べた。結果を[表1]に示す。
【0033】
[基材との密着性] 上記50%酢酸ブチル溶液に該ポリマーの水酸基/NCO基が1/1になるようにコロネートHX[日本ポリウレタン工業(株)製]を加え、JISG−3141鋼板上にアプリケーターにより塗布し、常温で1週間自然乾燥した厚さ25μmの試験片を作成し、JIS−K5400 6.15(ゴバン目セロテープ試験)により測定した。
【0034】
[鉛筆硬度] JIS−K5400 6.14(鉛筆引っかき試験)による。
[耐酸性] 10%HCl溶液による24時間スポットテスト後の塗膜外観を目視観察する。
【0035】
◎:異状なし
○:ほとんど変化なし
△:やや侵される
×:侵される
[耐アルカリ性] 10%NaOH溶液による24時間スポットテスト後の塗膜外観を目視観察する。
【0036】
◎:異状なし
○:ほとんど変化なし
△:やや侵される
×:侵される
[油性マジックはじき性] 油性マジック(黒・赤・マジックインキ商品名)により塗膜表面を塗りつぶし、はじき性を評価する。さらにこの塗膜を室温で1時間放置後、乾拭きにより除去する。これを20回繰り返した後の、塗膜表面のはじき性を評価する。
【0037】
◎:良くはじく
○:はじく
△:ややはじく
×:全くはじかない
[油性マジック繰り返し除去性] 油性マジック(黒・赤・マジックインキ商品名)により塗膜表面を塗りつぶし、室温で1時間放置後乾拭きにより除去する。さらにこれを20回繰り返した後の、塗膜表面の除去性を評価する。
【0038】
◎:全く跡が付かない
○:ごくわずか跡が付く
△:かなり跡が付く
×:完全に跡が残る
[撥水性] 水の接触角(単位:度)で評価した。
【0039】
[実施例2〜5]
[表1]に示す単量体を用いて前記実施例の操作に準拠して共重合体を製造し、これらの特性を同様に調べた。結果を[表1]に示す。
【0040】
[実施例6]
内容積1Lのステンレス製撹伴機付きオートクレーブ(耐圧100kg/cm2)に、脱気したのち、VDF51.8g、TFE81g、アクリル酸メチル(以下MAと略す)23.2g、EVE29.0g、アリルグリシジルエーテル(以下AGEと略す)46.2g、下記構造式で示されるメタクリル変性ポリジメチルシラン(分子量約3500)9.5g、トルエン400ml、およびt−ブチルパーオキシピバレート1.1gを入れ、撹拌しながら内温を60℃に昇温した。
【0041】
CH2=C(CH3)−COO−C36−Si(CH32−〔O−Si(CH3244−OSi(CH33
その後、撹拌しながら反応を続け、20時間後撹拌を停止し、反応を終了した。得られた共重合体を減圧乾燥により単離した。ポリマー収量は217g、モノマー反応率は90%であった。得られた共重合体の塩酸−ジオキサン法によって測定したエポキシ当量550、燃焼法によるフッ素含有量は38wt%、GPCで測定した数平均分子量は1.7×104であった。このポリマーを酢酸ブチルに溶解させ50%の酢酸ブチル溶液とした。また上記共重合体の硬化塗膜の透明性、塗膜特性を次の方法で調べた。結果を[表1]に示す。
【0042】
[基材との密着性] 上記50%酢酸ブチル溶液に該ポリマーのエポキシ基とカルボキシル基が1/1になるようにアデカハードナーEH−3326[旭電化工業(株)製]を加え、JISG−3141鋼板上にアプリケーターにより塗布し、140℃で30分熱処理した厚さ25μmの試験片を作成し、JIS−K5400 6.15(ゴバン目セロテープ試験)により測定した。
その他の塗膜特性は実施例1と同様に調べた。結果を[表1]に示す。
【0043】
[実施例7〜9]
表1に示す単量体を用いて前記実施例の操作に準拠して共重合体を製造し、これらの特性を同様に調べた。結果を[表1]に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
[比較例1]
内容積1Lのステンレス製撹拌機付きオートクレーブ(耐圧100kg/cm2)に、脱気したのち、VDF96g、TFE84g、MA15.1g、HBVE52.2g、酢酸ブチル400ml、およびt−ブチルパーオキシピバレート1.2gを入れ、撹伴しながら内温を60℃に昇温した。その後、撹拌しながら反応を続け、20時間後撹拌を停止し、反応を終了した。得られた共重合体を減圧乾燥により単離した。ポリマー収量は230g、モノマー反応率は93%であった。得られた共重合体の無水酢酸によるアセチル化法によって測定した水酸基価は110mgKOH/g樹脂、燃焼法によるフッ素含有量は49wt%、GPCで測定した数平均分子量は1.9×104であった。このポリマーを酢酸ブチルに溶解させ50%の酢酸ブチル溶液とした。また上記共重合体の硬化塗膜の塗膜特性を次の方法で調べた。結果を[表2]に示す。
【0046】
[基材との密着性] 上記50%酢酸ブチル溶液に該ポリマーの水酸基/NCO基が1/1になるようにコロネートHX[日本ポリウレタン工業(株)製]を加え、JISG−3141鋼板上にアプリケーターにより塗布し、常温で1週間自然乾燥した厚さ25μmの試験片を作成し、JIS−K5400 6.15(ゴバン目セロテープ試験)により測定した。その他の塗膜特性は、実施例1と同様に調べた。結果を[表2]に示す。
【0047】
[比較例2]
比較例1で得られた50%酢酸ブチル溶液に該ポリマーに対し5%のTSF410[東芝シリコーン(株)製]を加え、前記比較例と同様に試験片を作成し、これらの特性を調べた。結果を[表2]に示す。
【0048】
[比較例3]
内容積1Lのステンレス製撹拌機付きオートクレーブ(耐圧100kg/cm2)に、脱気したのち、VDF48g、TFE75g、EVE18.0g、ブチルビニルエーテル(以下BVEと略す)37.5g、トルエン400ml、およびt−ブチルパーオキシピバレート1.3gを入れ、撹拌しながら内温を60℃に昇温した。その後、撹拌しながら反応を続け、20時間後撹拌を停止し、反応を終了した。得られた共重合体を減圧乾燥により単離した。ポリマー収量は236g、モノマ−反応率は89%であった。得られた共重合体の燃焼法によるフッ素含有量は32wt%、GPCで測定した数平均分子量は1.6×104であった。このポリマーを酢酸ブチルに溶解させ50%の酢酸ブチル溶液とした。また上記共重合体の硬化塗膜の塗膜特性を次の方法で調べた。結果を[表2]に示す。
【0049】
[基材との密着性] 上記50%酢酸ブチル溶液に該ポリマーの固形分に対し1%のジブチル錫ジラウレートを加え、JISG−3141鋼板上にアプリケーターにより塗布し、常温で2週間自然乾燥した厚さ25μmの試験片を作成し、JIS−K5400 6.15(ゴバン目セロテープ試験)により測定した。その他の塗膜特性は、実施例1と同様に調べた。結果を[表2]に示す。
【0050】
[比較例4]
表2に示す単量体を用いて前記比較例の操作に準拠して共重合体を製造し、これらの特性を同様に調べた。結果を[表2]に示す。
【0051】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合単位として、フルオロオレフィンを15〜85モル%、一般式(1)、(2)、(3)及び(4)の内から選択される1種以上の有機珪素化合物を0.001〜50モル%含み構成された含フッ素共重合体が、酢酸エチル、酢酸ブチル、キシレン、トルエン、メチルエチルケトンの内から選択された1種以上の溶媒に溶解されていることを特徴とする含フッ素共重合体溶液
CH2=CH−Si(12 (1)

3
(ここで、1、R2、及びR3は、それぞれ水素原子、メチル基、エチル基、ブチル基、フェニル基、−CF3、−C24CF3、−C(CH33または−OSi(CH33の内のいずれかを示す。1、R2、及びR3はそれぞれ同一または異なっていてもよい。)

CH2=C4−(CH2n−Si(CH32
−〔O−Si(CH32m−OSi(CH33 (2)

CH2=C4−COO−(CH2n−Si(CH32
−〔O−Si(CH32m−OSi(CH326 (3)

(ここで、4は水素原子またはメチル基を示し、6は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示す。nは0〜10の整数、mは0〜160の整数を示す。)
CH2=C7−COO−(CH2p−Si(89 (4)

10
(ここで、7は水素原子またはメチル基、8、R9、及びR10はそれぞれ水素原子、メチル基、エチル基、ブチル基または−OSi(CH33の内のいずれかを示す。8、R9、及びR10はそれぞれ同一または異なっていてもよい。pは0〜10の整数を示す。)
【請求項2】
前記含フッ素共重合体がさらにアルキルビニルエーテル、アルキルアリルエーテル、メタクリル酸エステル及びアクリル酸エステルの内から選択された1種以上の重合体単位を残部として含み構成されることを特徴とする請求項1記載の含フッ素共重合体溶液
【請求項3】
重合単位を溶液重合法で共重合させることからなり、その溶媒として酢酸エチル、酢酸ブチル、キシレン、トルエン、メチルエチルケトンの内から選択された1種以上を使用することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の含フッ素共重合体溶液の製造方法。

【公開番号】特開2009−149905(P2009−149905A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37438(P2009−37438)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【分割の表示】特願2000−49052(P2000−49052)の分割
【原出願日】平成12年2月25日(2000.2.25)
【出願人】(000157119)関東電化工業株式会社 (68)
【Fターム(参考)】