説明

含フッ素化合物、含フッ素化合物の製造方法およびその用途

【課題】液晶材料等の機能性材料として有用な、新規な含フッ素化合物、該化合物を含む組成物および該組成物を含む液晶電気光学素子の提供。さらに、該化合物の工業的に利用可能な製造方法の提供。
【解決手段】R1-(A1-Z1)m-(A2-Z2)n-A3-(CH2)p-CF=CF-(CH2)q-A4-(Z3-A5)r-(Z4-A6)s-R2 (1)で表される含フッ素化合物。式中、R1、R:相互に独立して、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜10の一価の脂肪族炭化水素基。A〜A6:相互に独立して、フェニレン基またはシクロヘキシレン基。Z〜Z4:相互に独立して、単結合、−O−、−S−、または炭素数1〜4の二価の脂肪族炭化水素基。m、n、r、s:相互に独立して0または1。p、q:相互に独立して0〜3の整数。ただし、p+qは1以上。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な含フッ素化合物、該化合物を含有する液晶組成物、該液晶組成物を含有する液晶電気光学素子、および該化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶素子は携帯電話やPDAのような携帯機器、複写機やパソコンモニタのようなOA機器用表示装置、液晶テレビなどの家電製品用表示装置をはじめ、時計、電卓、測定器、自動車用計器、カメラなどの用途に使用されており、広い動作温度範囲、低動作電圧、高速応答性、化学的安定性等の種々の性能が要求されている。
このような液晶素子には液晶相を示す材料が使用されているが、現在のところ、これら全ての特性を単独の化合物で満たすわけではなく、一つまたは二つ以上の特性の優れた複数の液晶化合物や非液晶性化合物を混合して液晶組成物として要求性能を満たしている。
液晶素子の分野において、液晶組成物に使用される化合物に要求される種々の特性の中でも、他の液晶材料または非液晶材料との相溶性に優れ、化学的にも安定であり、かつ液晶素子に用いた場合に広い温度範囲で高速応答性に優れ低電圧駆動できる性質を有する化合物を提供することは重要な課題である。
【0003】
このような課題の解決策として、例えば、CF=CF連結基を有するスチルベン化合物などが報告されている(特許文献1)。この化合物は粘性が低く液晶表示素子に用いた場合は応答速度が速いという特長が有るが、光に対して不安定であり紫外線カットフィルターなどを併用しなければならないという問題が有る。
【0004】
このように、液晶組成物などに用いられる化合物は、特定の性能を向上させると他の性能が犠牲になることが多いため、特定の性能を向上させつつ他の性能が大幅に低下しない化合物の開発が望まれている。
【0005】
【特許文献1】特開平03−294386号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、液晶材料等の機能性材料として有用な、新規な含フッ素化合物を提供することを目的とする。また、該化合物を含有する液晶組成物および該液晶組成物を含有する液晶電気光学素子を提供することも目的とする。さらに、該化合物の工業的に利用可能な製造方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書においては、式(1)で表される化合物を化合物(1)と記し、他の式で表される化合物も同様に記す。
【0008】
本発明は、上記の目的を達成するため、化合物(1)を提供する。
1-(A1-Z1)m-(A2-Z2)n-A3-(CH2)p-CF=CF-(CH2)q-A4-(Z3-A5)r-(Z4-A6)s-R2 (1)
(ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
1、R2:相互に独立して、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜10の一価の脂肪族炭化水素基。ただし、該脂肪族炭化水素基中の1つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよく、該脂肪族炭化水素基中の炭素−炭素原子間または該脂肪族炭化水素基の結合末端に、エーテル性酸素原子またはチオエーテル性硫黄原子が挿入されていてもよい。
1、A2、A3、A4、A5、A6:相互に独立して、フェニレン基またはシクロヘキシレン基。ただし、A1、A2、A3、A4、A5およびA6の基中の1つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよく、該基中に存在する1つまたは2つの−CH=が窒素原子に置換されていてもよく、該基中に存在する1つまたは2つの−CH2−がエーテル性酸素原子またはチオエーテル性硫黄原子に置換されていてもよい。ただし、2つの−CH2−が連続してエーテル性酸素原子またはチオエーテル性硫黄原子に置換されることはない。
1、Z2、Z3、Z4:相互に独立して、単結合、−O−、−S−、または炭素数1〜4の二価の脂肪族炭化水素基。ただし、該脂肪族炭化水素基中の1つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよく、該脂肪族炭化水素基中の炭素−炭素原子間または該脂肪族炭化水素基の結合末端に、エーテル性酸素原子またはチオエーテル性硫黄原子が挿入されていてもよい。
m、n、r、s:相互に独立して0または1。
p、q:相互に独立して0〜3の整数。ただし、p+qは1以上。)
【0009】
化合物(1)は、m+n+r+sが2以下であることが好ましい。
【0010】
また、化合物(1)は、pとqが共に1であることも好ましい。
【0011】
また、化合物(1)は、Z1、Z2、Z3およびZ4が全て単結合であることも好ましい。
【0012】
また、化合物(1)は、A1、A2、A3、A4、A5およびA6が相互に独立して、1,4−シクロヘキシレン基または1,4−フェニレン基であることも好ましい。該1,4−フェニレン基中に存在する水素原子の1つ以上がフッ素原子で置換されていてもよい。
【0013】
また、本発明は化合物(1)の製造方法を提供する。
化合物(2)をメタル化し、これとテトラフルオロエチレンとを反応させて化合物(3)を合成し、化合物(4)を同様にメタル化した化合物を化合物(3)と反応させることによる、化合物(1)を製造する。
1-(A1-Z1)m-(A2-Z2)n-A3-(CH2)p-X (2)
1-(A1-Z1)m-(A2-Z2)n-A3-(CH2)p-CF=CF2(3)
X-(CH2)q-A4-(Z3-A5)r-(Z4-A6)s-R2 (4)
1-(A1-Z1)m-(A2-Z2)n-A3-(CH2)p-CF=CF-(CH2)q-A4-(Z3-A5)r-(Z4-A6)s-R2 (1)
(ただし、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子であり、R1、R2、A1、A2、A3、A4、A5、A6、Z1、Z2、Z3、Z4、m、n、p、q、r、sは前記と同じ意味を示す。)
【0014】
また、本発明は、化合物(1)を含有する液晶組成物を提供する。
【0015】
また、本発明は、化合物(1)を含有する液晶組成物を、電極付き基板間に挟持した液晶電気光学素子を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の化合物は、工業的にも容易かつ簡便に合成することができるものであり、液晶組成物などに用いることができる。また、本発明の化合物の構造から、粘性の低下、弾性定数の適正化、耐光性の向上などの効果の発現が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
化合物(1)において、R1およびR2は、相互に独立して、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜10の一価の脂肪族炭化水素基である。ただし、該脂肪族炭化水素基は1つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。また、該脂肪族炭化水素基中の炭素−炭素原子間または該脂肪族炭化水素基の結合末端に、エーテル性酸素原子またはチオエーテル性硫黄原子が挿入されていてもよい。なお、ハロゲン原子による置換と、エーテル性酸素原子またはチオエーテル性硫黄原子の挿入は、同一の脂肪族炭化水素基に同時に行われていてもよい。
【0018】
炭素数1〜10の一価の脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。また、これらの基中の1つ以上の水素原子がハロゲン原子に置換した基としては、フルオロアルキル基、クロロアルキル基が挙げられる。更に、これらの基中の炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子やチオエーテル性硫黄原子が挿入された基としてはアルコキシアルキル基またはアルキルチオアルキル基が挙げられる。また、基の結合末端にエーテル性酸素原子またはチオエーテル性硫黄原子が挿入された基としてはアルコキシ基またはアルキルチオ基が挙げられる。また、ハロゲン原子による置換とエーテル性酸素原子の挿入が同一の脂肪族炭化水素基に行われた基としてはフルオロアルコキシ基が挙げられる。これらの基は、直鎖状と分岐状のどちらでもかまわないが直鎖状が好ましい。
【0019】
炭素数1〜10のアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、特にエチル基、プロピル基、またはペンチル基が好ましい。炭素数1〜10のアルコキシ基としては、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、特にメトキシ基またはエトキシ基が好ましい。炭素数1〜10のフルオロアルキル基としては、炭素数1〜5のフルオロアルキル基が好ましく、特にトリフルオロメチル基が好ましい。炭素数1〜10のフルオロアルコキシ基としては、炭素数1〜5のフルオロアルコキシ基が好ましく、特にトリフルオロメトキシ基が好ましい。ハロゲン原子としては、フッ素原子または塩素原子が好ましく、特にフッ素原子が好ましい。
【0020】
1およびR2としては、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、または炭素数2〜10のアルキニル基が好ましい。該アルキル基、アルケニル基またはアルケニル基中の1つ以上の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよく、基中の炭素−炭素原子間または基の結合末端にエーテル性酸素原子またはチオエーテル性硫黄原子が挿入されていてもよい。
特に、フッ素原子、直鎖状で炭素数1〜10のアルキル基、アルコキシ基、フルオロアルキル基またはフルオロアルコキシ基が好ましい。また、フッ素原子、直鎖状で炭素数1〜5のアルキル基、アルコキシ基、フルオロアルキル基またはフルオロアルコキシ基がより好ましい。
【0021】
化合物(1)において、A1、A2、A3、A4、A5およびA6は、相互に独立して、フェニレン基またはシクロヘキシレン基である。ただし、該基中の1つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよく、該基中に存在する1つまたは2つの−CH=が窒素原子に置換されていてもよく、該基中に存在する1つまたは2つの−CH2−がエーテル性酸素原子またはチオエーテル性硫黄原子に置換されていてもよい。ただし、2つの−CH2−が連続してエーテル性酸素原子またはチオエーテル性硫黄原子に置換されることはない。
【0022】
1、A2、A3、A4、A5およびA6は、化合物が直線的な構造となり、液晶用として用いやすいことから、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−フェニレン基が好ましい。また、液晶用として用いた場合の相溶性や誘電率異方性の観点からは、1,4−フェニレン基は1つ以上のフッ素原子で置換されていることも好ましい。1つ以上のフッ素原子で置換された1,4−フェニレン基としては、3−フルオロ−1,4−フェニレン基、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン基、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン基が好ましい。
【0023】
1、Z2、Z3およびZ4は、相互に独立して、単結合、−O−、−S−、または炭素数1〜4の二価の脂肪族炭化水素基である。ただし、該脂肪族炭化水素基中の1つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよく、該脂肪族炭化水素基中の炭素−炭素原子間または該脂肪族炭化水素基に、エーテル性酸素原子またはチオエーテル性硫黄原子が挿入されていてもよい。なお、ハロゲン原子による置換と、エーテル性酸素原子またはチオエーテル性硫黄原子の挿入は、同一の脂肪族炭化水素基に同時に行われていてもよい。
【0024】
1が単結合である場合にはZ1の両側の環基は直接結合することを意味する。例えば、Z1が単結合でありnが0の場合はA1とA3とは直接結合する。また、Z1が単結合でありnが1の場合はA1とA2とは直接結合する。Z2、Z3およびZ4においても同様である。
【0025】
炭素数1〜4の二価の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜4のアルキレン基、炭素数2〜4のアルケニレン基、または炭素数2〜4のアルキニレン基が挙げられる。また、これらの基中の1つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換された基としては、フルオロアルキレン基、クロロアルキレン基、またはフルオロアルケニレン基が挙げられる。更に、これらの基中の炭素−炭素原子間または基の結合末端に、エーテル性酸素原子またはチオエーテル性硫黄原子が挿入された基としては、オキシアルキレン基、アルキルオキシアルキレン基、チオアルキレン基、オキシフルオロアルキレン基、またはチオフルオロアルキレン基が挙げられる。
【0026】
炭素数1〜4のアルキレン基としては、−CH2−、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、または−CH2CH2CH2CH2−が挙げられ、特に−CH2−または−CH2CH2−が好ましい。
【0027】
炭素数2〜4のアルケニレン基としては、−CH=CH−、−CH=CH−CH2−、−CH=CH−CH2−CH2−、−CH=CH−CH=CH−、または−CH2−CH=CH−CH2−が挙げられ、特に−CH=CH−が好ましい。
【0028】
炭素数2〜4のアルキニレン基としては、−C≡C−、−C≡C−CH2−、−C≡C−CH2−CH2−、−C≡C−C≡C−、または−CH2−C≡C−CH2−が挙げられ、特に−C≡C−が好ましい。また、−CH=CH−C≡C−のように、二重結合と三重結合が混在しても構わない。
【0029】
炭素数1〜4のフルオロアルキレン基、クロロアルキレン基およびフルオロアルケニレン基としては、−CF2−、−CF2CF2−、−CF2CF2CF2CF2−、−CH2CF2−、−CF=CF−、−CCl2CH2−、または−CF=CF−C≡C−が挙げられ、特に−CF2CF2−または−CF=CF−が好ましい。
【0030】
炭素数1〜4のオキシアルキレン基、チオアルキレン基、アルキルオキシアルキレン基、オキシフルオロアルキレン基およびチオフルオロアルキレン基としては、−OCH2−、−CH2O−、−SCH2−、−CH2S−、−CH2CH2OCH2−、−OCF2−、−SCF2−、−CF2O−、または−CF2S−が挙げられ、−OCF2−または−CF2O−が好ましい。
【0031】
1、Z2、Z3およびZ4は、フェニレン基と結合する場合は、化合物の安定性の面から結合する部分に二重結合などの不飽和結合を持たない構造であることが好ましい。
【0032】
1、Z2、Z3およびZ4は、化合物の安定性と合成の容易さから、単結合、−O−、−S−、または炭素数1〜4のアルキレン基が好ましい。該アルキレン基中の1つ以上の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよく、該アルキレン基中の炭素−炭素原子間または基の結合末端に、エーテル性酸素原子またはチオエーテル性硫黄原子が挿入されていてもよい。特に単結合または炭素数1〜4のアルキレン基が好ましく、単結合がより好ましい。
【0033】
化合物(1)において、m、n、r、sは相互に独立して0または1である。粘性があまり高くならないことから、m+n+r+sは2以下であることが好ましい。
【0034】
化合物(1)において、p、qは相互に独立して0〜3の整数である。ただし、p+qは1以上である。pとqは共に1であることが好ましい。
【0035】
化合物(1)としては、化合物(1−1)が好ましく、化合物(1−2)がより好ましく、化合物(1−3)が特に好ましい。
【0036】
11-(A11-Z11)m-(A21-Z21)n-A31-(CH2)p-CF=CF-(CH2)q-A41-(Z31-A51)r-(Z41-A61)s-R21 (1−1)
(ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
11、R21:相互に独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、または炭素数2〜10のアルキニル基。ただし、基中の1つ以上の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよく、基中の炭素−炭素原子間または基の結合末端にエーテル性酸素原子またはチオエーテル性硫黄原子が挿入されていてもよい。
11、A21、A31、A41、A51、A61:相互に独立して、1,4−シクロヘキシレン基または1,4−フェニレン基。ただし該1,4−フェニレン基中に存在する水素原子の1つ以上がフッ素原子に置換されていてもよい。
11、Z21、Z31、Z41:相互に独立して、単結合、−O−、−S−、または炭素数1〜4のアルキレン基。ただし、該基中の1つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよく、該基中の炭素−炭素原子間または該基の結合末端に、エーテル性酸素原子またはチオエーテル性硫黄原子が挿入されていてもよい。
m、n、p、q、r、sは前記と同じ意味を示す。)
【0037】
12-(A11-Z12)m-(A21-Z22)n-A31-(CH2)p-CF=CF-(CH2)q-A41-(Z32-A51)r-(Z42-A61)s-R22 (1−2)
(ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
12、R22:相互に独立して、フッ素原子、直鎖状の炭素数1〜10のアルキル基、アルコキシ基、フルオロアルキル基、またはフルオロアルコキシ基。
12、Z22、Z32、Z42:相互に独立して、単結合または炭素数1〜4のアルキレン基。
11、A21、A31、A41、A51、A61、m、n、p、q、r、sは前記と同じ意味を示す。)
【0038】
13-(A11)m-A31-(CH2)p-CF=CF-(CH2)q-A41-(A61)s-R23 (1−3)
(ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
13、R23:相互に独立して、フッ素原子、直鎖状の炭素数1〜5のアルキル基、アルコキシ基、フルオロアルキル基またはフルオロアルコキシ基。
11、A31、A41、A61、m、p、q、sは前記と同じ意味を示す。)
【0039】
化合物(1)の具体例としては以下の化合物が挙げられる。
【0040】
CH3−Cy−CH2CF=CFCH2−Cy−C37
25−Cy−CH2CF=CFCH2−Cy−C25
25−Cy−CH2CF=CFCH2−Cy−C37
25−Cy−CH2CF=CFCH2−Cy−C511
37−Cy−CH2CF=CFCH2−Cy−C49
37−Cy−CH2CF=CFCH2−Cy−C511
511−Cy−CH2CF=CFCH2−Cy−C511
37−Cy−CH2CF=CFCH2−Cy−OCH3
【0041】
CH3−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−C37
25−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−C25
25−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−C37
25−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−C511
37−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−C25
37−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−C37
37−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−C49
37−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−C511
511−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−C25
511−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−C37
511−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−C511
37−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−OCH3
37−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−CF3
37−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−OCF3
25−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−F
37−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−F
37−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph(3F)−F
37−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph(3F,5F)−F
37−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph(2F,3F)−F
【0042】
CH3−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−Ph−C37
25−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−Ph−C25
25−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−Ph−C37
25−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−Ph−C511
37−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−Ph−C25
37−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−Ph−C37
37−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−Ph−C49
37−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−Ph−C511
511−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−Ph−C25
511−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−Ph−C37
511−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−Ph−C511
37−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−Ph−OCH3
37−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−Ph−CF3
37−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−Ph−OCF3
25−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−Ph−F
37−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−Ph−F
37−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−Ph(3F)−F
37−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−Ph(3F,5F)−F
37−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−Ph(2F,3F)−F
37−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph(3F,5F)−Ph(3F,5F)−F
【0043】
CH3−Cy−CH2CF=CFCH2−Cy−Ph−C37
25−Cy−CH2CF=CFCH2−Cy−Ph−C25
25−Cy−CH2CF=CFCH2−Cy−Ph−C37
25−Cy−CH2CF=CFCH2−Cy−Ph−C511
37−Cy−CH2CF=CFCH2−Cy−Ph−C25
37−Cy−CH2CF=CFCH2−Cy−Ph−C37
37−Cy−CH2CF=CFCH2−Cy−Ph−C49
37−Cy−CH2CF=CFCH2−Cy−Ph−C511
511−Cy−CH2CF=CFCH2−Cy−Ph−C25
511−Cy−CH2CF=CFCH2−Cy−Ph−C37
511−Cy−CH2CF=CFCH2−Cy−Ph−C511
37−Cy−CH2CF=CFCH2−Cy−Ph−OCH3
37−Cy−CH2CF=CFCH2−Cy−Ph−CF3
37−Cy−CH2CF=CFCH2−Cy−Ph−OCF3
25−Cy−CH2CF=CFCH2−Cy−Ph−F
37−Cy−CH2CF=CFCH2−Cy−Ph−F
37−Cy−CH2CF=CFCH2−Cy−Ph(3F)−F
37−Cy−CH2CF=CFCH2−Cy−Ph(3F,5F)−F
37−Cy−CH2CF=CFCH2−Cy−Ph(2F,3F)−F
【0044】
CH3−Cy−Cy−CH2CF=CFCH2−Cy−C37
25−Cy−Cy−CH2CF=CFCH2−Cy−C25
25−Cy−Cy−CH2CF=CFCH2−Cy−C37
25−Cy−Cy−CH2CF=CFCH2−Cy−C511
37−Cy−Cy−CH2CF=CFCH2−Cy−C25
37−Cy−Cy−CH2CF=CFCH2−Cy−C37
37−Cy−Cy−CH2CF=CFCH2−Cy−C49
37−Cy−Cy−CH2CF=CFCH2−Cy−C511
511−Cy−Cy−CH2CF=CFCH2−Cy−C25
511−Cy−Cy−CH2CF=CFCH2−Cy−C37
511−Cy−Cy−CH2CF=CFCH2−Cy−C511
37−Cy−Cy−CH2CF=CFCH2−Cy−OCH3
【0045】
CH3−Cy−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−C37
25−Cy−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−C25
25−Cy−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−C37
25−Cy−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−C511
37−Cy−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−C25
37−Cy−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−C37
37−Cy−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−C49
37−Cy−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−C511
511−Cy−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−C25
511−Cy−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−C37
511−Cy−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−C511
37−Cy−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−OCH3
37−Cy−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−CF3
37−Cy−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−OCF3
25−Cy−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−F
37−Cy−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−F
37−Cy−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph(3F)−F
37−Cy−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph(3F,5F)−F
37−Cy−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph(2F,3F)−F
【0046】
CH3−Cy−Ph−CH2CF=CFCH2−Ph−C37
25−Cy−Ph−CH2CF=CFCH2−Ph−C25
25−Cy−Ph−CH2CF=CFCH2−Ph−C37
25−Cy−Ph−CH2CF=CFCH2−Ph−C511
37−Cy−Ph−CH2CF=CFCH2−Ph−C25
37−Cy−Ph−CH2CF=CFCH2−Ph−C37
37−Cy−Ph−CH2CF=CFCH2−Ph−C49
37−Cy−Ph−CH2CF=CFCH2−Ph−C511
511−Cy−Ph−CH2CF=CFCH2−Ph−C25
511−Cy−Ph−CH2CF=CFCH2−Ph−C37
511−Cy−Ph−CH2CF=CFCH2−Ph−C511
37−Cy−Ph−CH2CF=CFCH2−Ph−OCH3
37−Cy−Ph−CH2CF=CFCH2−Ph−CF3
37−Cy−Ph−CH2CF=CFCH2−Ph−OCF3
25−Cy−Ph−CH2CF=CFCH2−Ph−F
37−Cy−Ph−CH2CF=CFCH2−Ph−F
37−Cy−Ph−CH2CF=CFCH2−Ph(3F)−F
37−Cy−Ph−CH2CF=CFCH2−Ph(3F,5F)−F
37−Cy−Ph−CH2CF=CFCH2−Ph(2F,3F)−F
【0047】
CH3−Cy−Ph−CH2CF=CFCH2−Cy−C37
25−Cy−Ph−CH2CF=CFCH2−Cy−C25
25−Cy−Ph−CH2CF=CFCH2−Cy−C37
25−Cy−Ph−CH2CF=CFCH2−Cy−C511
37−Cy−Ph−CH2CF=CFCH2−Cy−C25
37−Cy−Ph−CH2CF=CFCH2−Cy−C37
37−Cy−Ph−CH2CF=CFCH2−Cy−C49
37−Cy−Ph−CH2CF=CFCH2−Cy−C511
511−Cy−Ph−CH2CF=CFCH2−Cy−C25
511−Cy−Ph−CH2CF=CFCH2−Cy−C37
511−Cy−Ph−CH2CF=CFCH2−Cy−C511
37−Cy−Ph−CH2CF=CFCH2−Cy−OCH3
【0048】
ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
Cy:トランス−1,4−シクロヘキシレン基。
Ph:1,4−フェニレン基。
Ph(3F):3−フルオロ−1,4−フェニレン基。
Ph(3F,5F):3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン基。
Ph(2F,3F):2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン基。
【0049】
本発明の化合物(1)は、以下の方法で合成することができる。式中の記号は前記と同じ意味を示す。
1-(A1-Z1)m-(A2-Z2)n-A3-(CH2)p-X (2)

1-(A1-Z1)m-(A2-Z2)n-A3-(CH2)p-CF=CF2 (3)
↓ X-(CH2)q-A4-(Z3-A5)r-(Z4-A6)s-R2 (4)
1-(A1-Z1)m-(A2-Z2)n-A3-(CH2)p-CF=CF-(CH2)q-A4-(Z3-A5)r-(Z4-A6)s-R2 (1)
【0050】
化合物(2)をメタル化した後、テトラフルオロエチレンと反応させて化合物(3)を合成する。また、化合物(4)も同様にメタル化し、これと化合物(3)とを反応させることで化合物(1)を得ることができる。化合物(2)または化合物(4)のメタル化としては、金属リチウムなどでリチオ化する方法や、金属マグネシウムとの反応によりグリニャール試薬とする方法が挙げられる。
【0051】
金属リチウムを用いてリチオ化する場合、電子移動剤を共存させてリチオ化を実施してもよい。電子移動剤としては芳香環が2個以上または縮合環となっている化合物が使用される。具体的にはナフタレン、ビフェニル、2,6−ジ−tert−ブチルナフタレン、2,7−ジ−tert−ブチルナフタレン、4,4’−ジ−tert−ブチルビフェニル、アントラセン等が挙げられるが、好ましくはナフタレン、ビフェニル、4,4’−ジ−tert−ブチルビフェニルである。電子移動剤の使用量は、化合物(2)または化合物(4)に対して0.01倍モルから4倍モル、好ましくは0.1倍モルから2.5倍モルである。
【0052】
また、金属リチウムの使用量は化合物(2)または化合物(4)に対して2倍モルから5倍モル、好ましくは2倍モルから3倍モルである。金属マグネシウムとの反応によりグリニャール試薬を調整する場合、金属マグネシウムの使用量は1倍モルから5倍モル、好ましくは1倍モルから1.5倍モルである。
【0053】
メタル化反応は溶媒中で実施される。反応溶媒としてはベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、t-ブチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒、石油エーテル類あるいは上記溶媒の適当な混合溶媒などを用いることができるが、特にエーテル系溶媒またはエーテル系溶媒と脂肪族炭化水素系溶媒の混合溶媒が好ましい。溶媒量は、合成の規模により大きく異なり、適宜変更することが可能である。例えばラボスケールの場合は、化合物(2)または化合物(4)1モルに対し、0.1倍から10000倍の体積(mL)を使用するのが好ましく、0.5倍から3000倍の体積(mL)を使用するのがより好ましい。
【0054】
メタル化反応の反応温度は−100℃から100℃が好ましく、特に−80℃から70℃が好ましい。
【0055】
メタル化反応の反応時間は0.5時間から48時間が好ましく、特に0.5時間から8時間が好ましい。
【0056】
化合物(2)のメタル化の後、単離することなく連続的にテトラフルオロエチレンとの反応を実施することで化合物(3)を得ることができる。すなわち、メタル化が終了した反応液中にテトラフルオロエチレンガスを導通することで実施される。テトラフルオロエチレンの使用量は化合物(2)に対し1倍モルから10倍モル、好ましくは1倍モルから3倍モルである。所望によりテトラフルオロエチレンは窒素、アルゴンなどの不活性ガスで希釈して用いてもよい。希釈割合は任意であるが、安全性、効率の観点からテトラフルオロエチレンの割合は30〜70%が好ましい。
【0057】
メタル化物とテトラフルオロエチレンとの反応において、リチオ化物とテトラフルオロエチレンとの反応温度は−100℃〜25℃が好ましく、特に−80℃〜0℃が好ましい。グリニャール試薬とテトラフルオロエチレンの反応温度は−100℃〜80℃が好ましく、特に0℃〜50℃が好ましい。
【0058】
メタル化物とテトラフルオロエチレンとの反応において、反応時間は0.5時間〜48時間が好ましく、特に0.5時間〜24時間が好ましい。
【0059】
反応後、通常の後処理作業、精製作業を実施することにより化合物(3)を得ることができる。
【0060】
化合物(3)と化合物(4)のメタル化物を反応させることで化合物(1)が得られる。これには先に説明したように別途調整した化合物(4)のメタル化反応液に化合物(3)を加えてもよいし、化合物(3)に別途調整した化合物(4)のメタル化反応液を加えてもよい。
【0061】
化合物(3)はあらかじめ溶媒で希釈しておいてもよい。希釈溶媒としてはベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、t-ブチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒、石油エーテル類あるいは上記溶媒の適当な混合溶媒などを用いることができるが、特にエーテル系溶媒またはエーテル系溶媒と脂肪族炭化水素系溶媒の混合溶媒が好ましい。希釈溶媒量は、合成の規模により大きく異なり、適宜変更することが可能である。例えばラボスケールの場合は、化合物(3)1モルに対し、0.1倍から2000倍の体積(mL)を使用するのが好ましく、0.5倍から1000倍の体積(mL)を使用するのがより好ましい。
【0062】
反応温度は−100℃から100℃が好ましく、化合物(4)のリチオ化物の場合には、特に−80℃〜25℃が好ましく、化合物(4)のグリニャール試薬の場合には、特に0℃〜70℃が好ましい。
【0063】
反応時間は0.5時間から48時間が好ましく、特に0.5時間から24時間が好ましい。
【0064】
反応後、通常の後処理作業、精製作業を実施することにより化合物(1)で表わされる新規な含フッ素化合物を得ることができる。
【0065】
化合物(2)は、例えば化合物(2−1)の場合、下記化合物(5)を還元して化合物(6)とした後、ハロゲン化して合成するなどの公知の方法で得ることができる。
R−Cy−Cy−COOH (5)
R−Cy−Cy−CH2OH (6)
R−Cy−Cy−CH2Cl (2−1)
【0066】
本発明の化合物(1)はその少なくとも1種を、他の液晶化合物および/または非液晶化合物と混合することにより、優れた性能を有する液晶組成物を得ることができる。例えば、従来の液晶組成物に化合物(1)を添加した場合、粘性の低下や弾性定数の適正化などの効果が期待できる。
【0067】
液晶組成物中の化合物(1)の量は、液晶組成物100重量部に対して、0.1〜30重量部が好ましく、1〜10重量部が特に好ましい。
【0068】
液晶組成物中の化合物(1)以外の化合物としては、液晶組成物の用途、要求性能などにより異なるが、通常は液晶化合物および該液晶化合物に類似の構造を有する化合物を主成分とし、これに必要に応じた他の化合物を添加するのが好ましい。
【0069】
他の化合物の具体例としては、誘電異方性を向上させる成分、高温で液晶性を示す成分、低粘性成分、屈折率異方性値を調製する成分、コレステリック性を付与する成分、2色性を示す成分、導電性を付与する成分等が挙げられる。液晶組成物中に含ませ得る他の化合物の例としては、以下の具体例が挙げられる。なお、下式におけるR3、R4 は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、またはシアノ基等の基を表し、PhおよびCyは前記と同じ意味を示す。
【0070】
3−Cy−Cy−R4
3−Cy−Ph−R4
3−Ph−Ph−R4
3−Ph−C≡C−Ph−R4
3−Cy−COO−Ph−R4
3−Ph−COO−Ph−R4
3−Cy−CH=CH−Ph−R4
3−Cy−CH2CH2−Ph−R4
3−Ph−CH2CH2−Ph−R4
3−Cy−Cy−Ph−R4
3−Cy−Ph−Ph−R4
3−Cy−Ph−C≡C−Ph−R4
3−Ph−Ph−Ph−R4
3−Cy−Ph−Ph−Cy−R4
3−Ph−Ph−C≡C−Ph−R4
3−Cy−COO−Ph−Ph−R4
3−Cy−Ph−COO−Ph−R4
3−Cy−COO−Ph−COO−Ph−R4
3−Ph−COO−Ph−COO−Ph−R4
3−Ph−COO−Ph−OCO−Ph−R4
【0071】
また、液晶組成物中に含ませる他の化合物としては、上記化合物に限定されない。例えば、上記化合物の環構造または末端基の水素原子は、ハロゲン原子、シアノ基、またはメチル基等へ置換されていてもよく、また、上記化合物の環構造または末端基の水素原子は、シクロヘキサン環、ベンゼン環、ピリミジン環、またはジオキサン環等の他の六員環または五員環等へ置換されていてもよい。また、環と環との間に存在する結合基を他の結合基に変更してもよい。これらの置換または変更は、目的とする性能に合わせて適宜選択すればよい。
【0072】
本発明の化合物(1)を含む液晶組成物は、液晶セルに注入するなどして、電極付の基板間に挟持され、液晶電気光学素子を構成する。代表的な液晶セルとしては、TN型液晶電気光学素子がある。なお、ここで液晶電気光学素子と表現しているのは、表示用途以外、たとえば、調光窓、光シャッタ、偏光交換素子等にも使用できることを明らかにしているためである。
【0073】
上記液晶電気光学素子は、TN方式、STN方式、ゲスト・ホスト(GH)方式、動的散乱方式、フェーズチェンジ方式、DAP方式、二周波駆動方式、強誘電性液晶表示方式など種々のモードで使用できる。
【0074】
以下に、液晶電気光学素子の構成および製法の具体例を示す。プラスチック、ガラス等の基板上に、必要に応じてSiO2、Al23等のアンダーコート層やカラーフィルタ層を形成し、In23−SnO2(ITO)、SnO2等の電極を設け、パターニングした後、必要に応じてポリイミド、ポリアミド、SiO2、Al23等のオーバーコート層を形成し、配向処理し、これにシール材を印刷し、電極面が相対向するように配して周辺をシールし、シール材を硬化して空セルを形成する。
【0075】
この空セルに、本発明の化合物を含む組成物を注入し、注入口を封止剤で封止して液晶セルを構成する。この液晶セルに必要に応じて偏光板、カラー偏光板、光源、カラーフィルタ、半透過反射板、反射板、導光板、紫外線カットフィルタ等を積層する、文字、図形等を印刷する、ノングレア加工するなどして液晶電気光学素子とする。
【0076】
なお、上記の説明は、液晶素子の基本的な構成及び製法を説明したものであり、他の構成も採用出来る。例えば、2層電極を用いた基板、2層の液晶層を形成した2層液晶セル、反射電極を用いた基板、TFT、MIM等の能動素子を形成したアクティブマトリクス基板を用いたアクティブマトリクス素子等、種々の構成のものが使用できる。特に本発明の組成物は、TFT、MIM等のアクティブマトリクス素子にも好適である。
【0077】
さらに、前記したTN型以外のモード、即ち、高ツイスト角のスーパーツイストネマチック(STN)型液晶素子や、多色性色素を用いたゲスト−ホスト(GH)型液晶素子、横方向の電界で液晶分子を基板に対して平行に駆動させるインプレーンスイッチング(IPS)型液晶素子、液晶分子を基板に対して垂直配向させるVA型液晶素子、強誘電性液晶素子等、種々の方式で使用することが出来る。また、電気的に書き込みをする方式ではなく、熱により書き込みをする方式に用いることもできる。
【実施例】
【0078】
以下に、実施例を用いて本発明を具体的に説明する。ただし、以下に示す実施例は本発明の例示を目的とするものであり、本発明はこれに限定されない。また、PhおよびCyは前記と同じ意味を示す。
【0079】
(実施例1)
化合物(2−a)から化合物(3−a)を合成し、化合物(3−a)から化合物(1−a)を合成した。
37−Cy−Cy−CH2Cl (2−a)
37−Cy−Cy−CH2CF=CF2 (3−a)
37−Cy−Cy−CH2CF=CFCH2−Cy−C49 (1−a)
【0080】
(工程1)
化合物(3−a)の合成
アルゴン置換した2Lの四口フラスコに、金属リチウム3.3g、4,4’−ジ−tert−ブチルビフェニル12.5g、THF400mLを加え室温で攪拌した。3時間後、反応液を−10℃に冷却し、公知の方法で合成した化合物(2−a)40g(0.156mol)のTHF溶液40mLを加え、3時間攪拌した。次いで−70℃に冷却した後、反応液中に60%テトラフルオロエチレン/窒素ガス7.5Lを導通し、1時間攪拌した。反応液を徐々に0℃まで昇温し、2N塩酸水溶液400mLを加え、ヘキサン500mLで抽出した。ヘキサン溶液を水200mL、重曹水200mL、水200mLの順で洗浄した後、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物(3−a)35.4g(0.117mol 収率70%)を得た。
【0081】
H−NMR(300MHz,CDCl)0.84−1.80(m,19H),1.71−1.80(m,8H),2.06−2.19(m,2H)
19F−NMR(283MHz,CFCl)−106.31(dd,J=33.63Hz,91.58Hz,1F),−125.49(dd,J=91.58Hz,112.78Hz,1F),−172.26(ddt,J=24.31Hz,30.53Hz,112.78Hz,1F)
【0082】
(工程2)
化合物(1−a)の合成
アルゴン置換した300mLの四口フラスコに金属リチウム0.30g、4,4’−ジ−tert−ブチルビフェニル1.1g、THF36mLを加え室温で攪拌した。3時間後、−10℃に冷却し、公知の方法で合成したtrans−4−ブチル−シクロヘキシルメチルクロリド2.61g(0.014mol)のTHF溶液5.3mLを加え、3時間攪拌した。次いで化合物(3−a)3.57g(0.012mol)のTHF溶液8mLを加えた。−70℃で1時間攪拌した後、徐々に室温まで昇温した。反応液に2N塩酸水溶液30mLを加え、ヘキサン30mLで2回抽出した。ヘキサン溶液を水20mL、重曹水20mL、水20mLの順で洗浄した後、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒ヘキサン)で精製し、化合物(1−a)2.65g(0.006mol 収率50%)を得た。
【0083】
H−NMR(300MHz,CDCl)0.84−1.28(m,34H),1.47−1.76(m,12H),2.14−2.27(m,4H)
19F−NMR(283MHz,CFCl3)−152.69(m,2F)
【0084】
化合物(1−a)の、C−Sm転移温度は70.9℃、Sm−Ne転移温度は80.3℃、Ne−I転移温度は82.0℃であった。なお、Cは結晶相、Smはスメクチック相、Neはネマチック相、Iは等方性液体相である。
【0085】
(実施例2)
化合物(2−b)から化合物(3−b)を合成し、化合物(3−b)から化合物(1−b)を合成した。
37−Cy−CH2Cl (2−b)
37−Cy−CH2CF=CF2 (3−b)
37−Cy−CH2CF=CFCH2−Ph−F (1−b)
【0086】
(工程1)
化合物(3−b)の合成
アルゴン置換した2Lの四口フラスコに金属リチウム9.52g、4,4’−ジ−tert−ブチルビフェニル36.5g、THF800mLを加え室温で攪拌した。3時間後、−10℃に冷却し、公知の方法で合成した化合物(2−b)80g(0.458mol)のTHF溶液240mLを加え、3時間攪拌した。次いで−70℃に冷却した後、反応液中に60%テトラフルオロエチレン/窒素ガス21Lを導通し、1時間攪拌した。反応液を徐々に0℃まで昇温し、2N塩酸水溶液800mLを加え、ヘキサン500mLで抽出した。ヘキサン溶液を水270mL、重曹水270mL、水270mLの順で洗浄した後、溶媒を留去した。蒸留精製を行い化合物(3−b)59.7g(0.271mol 収率60%)を得た。
【0087】
b.p.86.0℃〜87.4℃
1H−NMR(300MHz,CDCl3)0.85−1.34(m,19H),1.53−1.77(m,8H),2.07−2.20(m,2H)
19F−NMR(283MHz,CFCl3)−106.39(dd,J=30.52Hz,88.47Hz,1F),−125.49(dd,J=85.36Hz,109.67Hz,1F),−172.27(ddt,J=24.31Hz,30.53Hz,115.89Hz,1F)
【0088】
(工程2)
化合物(1−b)の合成
窒素置換した300mL四口フラスコに金属マグネシウム665mg、THF5mL、ヨウ素1かけらを加え、室温で攪拌した。次いで、公知の方法で合成したp−フルオロベンジルクロリド3.95g(0.027mol)のTHF溶液25mLの滴下を開始した。滴下中は反応温度が45℃以下になるように制御した。滴下終了後、40℃で更に1時間攪拌した。反応液を室温まで冷却した後、(3−b)2.0g(0.009mol)のTHF溶液10mLを滴下し、50℃で48時間攪拌した。反応液を冷却し2N塩酸水溶液30mLを加え、ヘキサン30mLで2回抽出した。ヘキサン溶液を水20mL、重曹水20mL、水20mLの順で洗浄した後、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒ヘキサン)で精製し、化合物(1−b)1.27g(0.004mol 収率44%)を得た。
【0089】
1H−NMR(300MHz,CDCl3)0.85−1.76(m,17H),2.20−2.31(m,2H),3.59−3.68(m,2H),6.96−7.25(m,4H)
19F−NMR(283MHz,CFCl3)−116.93(d,J=6.22Hz,1F),−151.82(dt,J=24.59Hz,124.93Hz,1F),−154.72(dt,J=24.31Hz,125.21Hz,1F)
【0090】
(実施例3)
化合物(2−c)から化合物(3−c)を合成し、化合物(3−c)から化合物(1−c)を合成した。
25−Cy−Ph−CH2Cl (2−c)
25−Cy−Ph−CH2CF=CF2 (3−c)
25−Cy−Ph−CH2CF=CFCH2−Ph−F (1−c)
【0091】
(工程1)
化合物(3−c)の合成
窒素置換した200mLの四口フラスコに金属マグネシウム1.02g、THF10mL、ヨウ素1かけらを加え、室温で攪拌した。次いで、公知の方法で合成した化合物(2−c)10g(0.042mol)のTHF溶液90mLの滴下を開始した。滴下中は反応温度が45℃以下になるように制御した。滴下終了後、40℃で更に1時間攪拌した。反応液を−30℃に冷却し、反応液中に60%テトラフルオロエチレン/窒素ガス2Lを導通した。反応液を徐々に室温まで昇温し、24時間攪拌した。反応液に2N塩酸水溶液50mLを加え、ヘキサン100mLで抽出した。ヘキサン溶液を水50mL、重曹水50mL、水50mLの順で洗浄した後、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒ヘキサン)で精製し、化合物(3−c)5.01g(0.018mol 収率43%)を得た。
【0092】
19F−NMR(283MHz,CFCl3)−106.12(dd,J=33.63Hz,88.47Hz,1F),−125.06(dd,J=85.36Hz,115.89Hz,1F),−172.69(ddt,J=24.31Hz,30.53Hz,112.78Hz,1F)
【0093】
(工程2)
化合物(1−c)の合成
窒素置換した200mLの四口フラスコに金属マグネシウム3.44g、THF50mL、ヨウ素1かけらを加え、室温で攪拌した。次いで、公知の方法で合成したp−フルオロベンジルクロリド12.8g(0.088mol)のTHF溶液50mLの滴下を開始した。滴下中は反応温度が45℃以下になるように制御した。滴下終了後、40℃で更に1時間攪拌した。反応液を室温まで冷却した後、化合物(3−c)4.3g(0.015mol)のTHF溶液10mLを滴下し、50℃で24時間攪拌した。反応液を冷却し2N塩酸水溶液50mLを加え、ヘキサン50mLで2回抽出した。ヘキサン溶液を水50mL、重曹水50mL、水50mLの順で洗浄した後、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒ヘキサン)で精製し、化合物(1−c)1.81g(0.005mol 収率33%)を得た。
【0094】
1H−NMR(300MHz,CDCl3)0.88−1.90(m,9H),2.41−3.70(m,4H)6.96−7.25(m,8H)
19F−NMR(283MHz,CFCl3)−116.73(d,7.07Hz,1F),−152.92(dt,J=24.59Hz,128.04Hz,1F),−154.37(dt,J=24.30Hz,124.93Hz,1F)
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の含フッ素化合物は、工業的に容易かつ簡便に合成することができ、更に液晶組成物などの機能性を必要とする用途に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式(1)で表される含フッ素化合物。
1-(A1-Z1)m-(A2-Z2)n-A3-(CH2)p-CF=CF-(CH2)q-A4-(Z3-A5)r-(Z4-A6)s-R2 (1)
(ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
1、R2:相互に独立して、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜10の一価の脂肪族炭化水素基。ただし、該脂肪族炭化水素基中の1つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよく、該脂肪族炭化水素基中の炭素−炭素原子間または該脂肪族炭化水素基の結合末端に、エーテル性酸素原子またはチオエーテル性硫黄原子が挿入されていてもよい。
1、A2、A3、A4、A5、A6:相互に独立して、フェニレン基またはシクロヘキシレン基。ただし、A1、A2、A3、A4、A5およびA6の基中の1つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよく、該基中に存在する1つまたは2つの−CH=が窒素原子に置換されていてもよく、該基中に存在する1つまたは2つの−CH2−がエーテル性酸素原子またはチオエーテル性硫黄原子に置換されていてもよい。ただし、2つの−CH2−が連続してエーテル性酸素原子またはチオエーテル性硫黄原子に置換されることはない。
1、Z2、Z3、Z4:相互に独立して、単結合、−O−、−S−、または炭素数1〜4の二価の脂肪族炭化水素基。ただし、該脂肪族炭化水素基中の1つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよく、該脂肪族炭化水素基中の炭素−炭素原子間または該脂肪族炭化水素基の結合末端に、エーテル性酸素原子またはチオエーテル性硫黄原子が挿入されていてもよい。
m、n、r、s:相互に独立して0または1。
p、q:相互に独立して0〜3の整数。ただし、p+qは1以上。)
【請求項2】
式(1)で表される化合物において、m+n+r+sが2以下である、請求項1に記載の含フッ素化合物。
【請求項3】
式(1)で表される化合物において、pとqが共に1である、請求項1または2に記載の含フッ素化合物。
【請求項4】
式(1)で表される化合物において、Z1、Z2、Z3およびZ4が全て単結合である、請求項1ないし3のいずれかに記載の含フッ素化合物。
【請求項5】
式(1)で表される化合物において、A1、A2、A3、A4、A5およびA6が相互に独立して、1,4−シクロヘキシレン基または1,4−フェニレン基であり、該1,4−フェニレン基中に存在する水素原子の1つ以上がフッ素原子で置換されていてもよい、請求項1ないし4のいずれかに記載の含フッ素化合物。
【請求項6】
式(2)で表される化合物をメタル化し、これとテトラフルオロエチレンとを反応させて式(3)で表される化合物を合成し、式(4)で表される化合物を同様にメタル化した化合物を式(3)で表される化合物と反応させることによる、式(1)で表される化合物の製造方法。
1-(A1-Z1)m-(A2-Z2)n-A3-(CH2)p-X (2)
1-(A1-Z1)m-(A2-Z2)n-A3-(CH2)p-CF=CF2(3)
X-(CH2)q-A4-(Z3-A5)r-(Z4-A6)s-R2 (4)
1-(A1-Z1)m-(A2-Z2)n-A3-(CH2)p-CF=CF-(CH2)q-A4-(Z3-A5)r-(Z4-A6)s-R2 (1)
(ただし、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子であり、R1、R2、A1、A2、A3、A4、A5、A6、Z1、Z2、Z3、Z4、m、n、p、q、r、sは前記と同じ意味を示す。)
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれかに記載の含フッ素化合物を含有する液晶組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の液晶組成物を電極付き基板間に挟持した液晶電気光学素子。

【公開番号】特開2008−19225(P2008−19225A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−194580(P2006−194580)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(000108030)AGCセイミケミカル株式会社 (130)
【Fターム(参考)】