説明

含水性眼用レンズ

【課題】形成後のレンズに表面改質処理を施すことなく、表面水濡れ性、伸縮性、透明性、酸素透過性に優れたシリコーンハイドロゲル眼用レンズを提供する。
【解決手段】ポリシロキサンマクロモノマーと、イオン性モノマー及び親水性モノマーを含む単量体混合物と、重合開始剤と、を両親媒性物質に溶解して得た溶液で共重合反応をさせ、該両親媒性物質は、沸点70〜200℃の有機溶媒であり、酢酸エステル、分岐鎖状ケトン、酢酸エステルと分岐鎖状アルコールとの組み合わせ及び分岐鎖状ケトンと分岐鎖状アルコールとの組み合わせからなる一群から選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ表面の水濡れ性が高く、かつレンズの酸素透過性、柔軟性、伸縮性、透明性及び形状回復性が良好なシリコーンハイドロゲル眼用レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の含水性コンタクトレンズは、2−ヒドロキシエチルメタクリレートやビニルピロリドン等の親水性モノマーを主成分としたものであり、その材料のしなやかさにより装用感がよいことが知られている。
【0003】
一般的に含水性コンタクトレンズの酸素透過性はレンズの含水率に依存するため、角膜への酸素供給量には限度があった。
【0004】
最近では、コンタクトレンズの連続的な装用が主流となっているため、高い酸素透過性は必要不可欠な要素であり、さらには良好なレンズ表面の湿潤性、含水性、耐汚染性、連続的な装用に耐え得る高い装用感の向上も重要な課題であった。
【0005】
レンズ素材としてシリコーン含有モノマーを一定量配合することで酸素透過性が付与され、その配合量に伴い酸素透過性は向上するものの疎水性も高くなる。そのため、レンズ素材に親水性モノマーを配合する場合、その相溶性の低さから、両成分を用いて得られる重合体に好ましい酸素透過性と含水性及び表面湿潤性を付与させることは困難であり、このバランスを保ちながらレンズ素材を提供することが課題であった。
【0006】
その解決手段として、アルコール類やケトン類などの有機溶剤を両親媒性物質として介在させて共重合性を向上させる方法が検討されており、特許文献1乃至3には、シリコーン含有モノマー、親水性モノマー及びアルコール構造を有する化合物を希釈剤として用いたシリコーンヒドロゲルが開示されている。
【0007】
しかしながら、これらの方法で使用している有機溶剤は、ポリシロキサンマクロモノマー及びシリコーン含有モノマーとイオン性モノマーとの相溶性が低く均一溶液が調製できなかったり、また、沸点が低く、共重合時に有機溶剤が飛散するため得られる共重合体が白化したり、形状不良が生じやすいという問題を有していた。
【0008】
また、シリコーン含有モノマーを構成成分とするレンズ素材表面は、撥水性を呈するため、得られるレンズ素材表面の改質によりレンズ表面に湿潤性を付与する検討が様々になされてきた。
【0009】
例えば、特許文献4には、プラズマ処理を施した眼用レンズ表面に親水性モノマーをグラフト重合させて親水性を付与する方法が開示されており、特許文献5には、親水性モノマーを乾式処理により表面グラフト重合する方法が、特許文献6には、シリコーンを含むハイドロゲルに低温プラズマ処理し、酸素雰囲気下に曝し、且つ100℃以上の温度において親水性モノマー水溶液中に浸漬処理する方法が、それぞれ開示されている。
【0010】
さらに、特許文献7には、レンズ基材をメタンと湿潤空気のプラズマ重合処理後、非重合性ガスによりプラズマ処理する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特表平8−501504号公報
【特許文献2】国際公開WO97−09169号公報
【特許文献3】特開平11−228644号公報
【特許文献4】特開平6−49251号公報
【特許文献5】特開平8−319329号公報
【特許文献6】特開2003−215509号公報
【特許文献7】特開2007−70405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながらこれらの方法は、いずれも形成された眼用レンズに対し親水性化処理を施すものであり、眼用レンズ基材にストレスが発生し、変形や劣化が生じることが予測される。また、これらの方法は、極めて大がかりな装置が必要であり、さらに、被膜を形成させるための条件設定が複雑であるなどの問題点を有している。
【0013】
そこで、形成後の眼用レンズに処理を施すことなく、表面に親水性を付与することが重要となった。
【0014】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、形成後のレンズに表面改質処理を施すことなく、表面に水濡れ性が付与されたコンタクトレンズや眼内レンズなどのシリコーンハイドロゲル眼用レンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1)ポリシロキサンマクロモノマーと、イオン性モノマー及び親水性モノマーを含む単量体混合物と、重合開始剤と、を両親媒性物質に溶解して得た溶液での共重合反応で得られるシリコーンハイドロゲル眼用レンズ。
【0016】
(2)前記両親媒性物質は、沸点70〜200℃の有機溶媒であり、酢酸エステル、分岐鎖状ケトン、前記酢酸エステルと分岐鎖状アルコールとの組み合わせ及び前記分岐鎖状ケトンと前記分岐鎖状アルコールとの組み合わせからなる一群から選択されることを特徴とする(1)に記載のシリコーンハイドロゲル眼用レンズ。
【0017】
(3)前記両親媒性物質のうち、前記酢酸エステルは酢酸ブチル又は酢酸アミルであり、前記分岐鎖状ケトンはメチルイソブチルケトン又はメチルイソプロピルケトンであり、前記分岐鎖状アルコールはターシャリーブチルアルコールであることを特徴とする(1)又は(2)に記載のシリコーンハイドロゲル眼用レンズ。
【0018】
(4)前記単量体混合物は、親水性モノマーとアニオン性モノマーと非親水性モノマーの組み合わせ、シリコーン含有(メタ)アクリレートと前記親水性モノマーと前記アニオン性モノマーと前記非親水性モノマーとの組み合わせ、前記シリコーン含有(メタ)アクリレートと前記親水性モノマーと前記アニオン性モノマーとの組み合わせ、前記親水性モノマーと前記アニオン性モノマーとカチオン性モノマーと前記非親水性モノマーとの組み合わせ、前記親水性モノマーと双性イオンモノマーと前記非親水性モノマーとの組み合わせからなる一群から選択されることを特徴とする(1)乃至(3)に記載のシリコーンハイドロゲル眼用レンズ。
【0019】
(5)前記単量体混合物は、前記親水性モノマーが、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアクリルアミド及び2−ヒドロキシエチルメタクリレートからなる一群から選択されたものであり、前記非親水性モノマーが、トリデシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート及びエチレングリコールジメタクリレートからなる一群から選択されたものであり、前記シリコーン含有(メタ)アクリレートが、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレートであり、前記アニオン性モノマーが、メタクリル酸であり、前記カチオン性モノマーが、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライドであり、前記双性イオンモノマーがN,N−ジメチル−N−メタクリロイルオキシエチル−N−カルボキシメチル−アンモニウムベタインであることを特徴とする(4)に記載のシリコーンハイドロゲル眼用レンズ。
【0020】
(6)前記重合開始剤は、ターシャリーブチルパーオキシデカノエート又は2,2'−アゾビスイソブチロニトリルであることを特徴とする(1)乃至(5)に記載のシリコーンハイドロゲル眼用レンズ。
【0021】
(7)ポリシロキサンマクロモノマーと、イオン性モノマー及び親水性モノマーを含む単量体混合物と、重合開始剤と、を両親媒性物質に溶解して溶液を得る手順と、該溶液で共重合反応をさせる手順と、を備えることを特徴とするシリコーンハイドロゲル眼用レンズの製造方法。
【0022】
(8)前記両親媒性物質は、沸点70〜200℃の有機溶媒であり、酢酸エステル、分岐鎖状ケトン、前記酢酸エステルと分岐鎖状アルコールとの組み合わせ及び前記分岐鎖状ケトンと前記分岐鎖状アルコールとの組み合わせからなる一群から選択されることを特徴とする(7)に記載のシリコーンハイドロゲル眼用レンズの製造方法。
【0023】
(9)前記両親媒性物質のうち、前記酢酸エステルは酢酸ブチル又は酢酸アミルであり、前記分岐鎖状ケトンはメチルイソブチルケトン又はメチルイソプロピルケトンであり、前記分岐鎖状アルコールはターシャリーブチルアルコールであることを特徴とする(7)又は(8)に記載のシリコーンハイドロゲル眼用レンズの製造方法。
【0024】
(10)前記単量体混合物は、親水性モノマーとアニオン性モノマーと非親水性モノマーの組み合わせ、シリコーン含有(メタ)アクリレートと前記親水性モノマーと前記アニオン性モノマーと前記非親水性モノマーとの組み合わせ、前記シリコーン含有(メタ)アクリレートと前記親水性モノマーと前記アニオン性モノマーとの組み合わせ、前記親水性モノマーと前記アニオン性モノマーとカチオン性モノマーと前記非親水性モノマーとの組み合わせ、前記親水性モノマーと双性イオンモノマーと前記非親水性モノマーとの組み合わせからなる一群から選択されることを特徴とする(7)乃至(9)に記載のシリコーンハイドロゲル眼用レンズの製造方法。
【0025】
(11)前記単量体混合物は、前記親水性モノマーが、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアクリルアミド及び2−ヒドロキシエチルメタクリレートからなる一群から選択されたものであり、前記非親水性モノマーが、トリデシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート及びエチレングリコールジメタクリレートからなる一群から選択されたものであり、前記シリコーン含有(メタ)アクリレートが、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレートであり、前記アニオン性モノマーが、メタクリル酸であり、前記カチオン性モノマーが、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライドであり、前記双性イオンモノマーがN,N−ジメチル−N−メタクリロイルオキシエチル−N−カルボキシメチル−アンモニウムベタインであることを特徴とする(10)に記載のシリコーンハイドロゲル眼用レンズの製造方法。
【0026】
(12)前記重合開始剤は、ターシャリーブチルパーオキシデカノエート又は2,2'−アゾビスイソブチロニトリルであることを特徴とする(7)乃至(11)に記載のシリコーンハイドロゲル眼用レンズの製造方法。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、形成後のレンズに表面改質処理を施すことなく、表面水濡れ性、伸縮性、透明性、酸素透過性に優れたシリコーンハイドロゲル眼用レンズを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0029】
本発明に使用するカチオン性モノマーとしては、2−トリメチルアンモニウムエチルメタクリル酸ハイドロキサイド、2−トリメチルアンモニウムアクリル酸ハイドロキサイド、2−トリメチルアンモニウムメチルアクリル酸クロライド、メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート、メタクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、メタクリロイルオキシエチルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムp−トルエンスルホネート、メタクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、メタクリロイルアミノプロピルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンンモニウムp−トルエンスルホネート、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−メタクロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドなどの四級アンモニウム塩、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、アミノエチルメタクリレート、メチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエタノールアミノエチルメタクリレート、アミノエチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、ビニルアミン、アミノスチレン、2−ビニルピリジン、モルホリノメタクリレートなどの三級アミンが挙げられる。また、二級アミン及び一級アミンの利用も可能である。
【0030】
本発明に使用するアニオン性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−ビニルプロピオン酸、4−ビニルプロピオン酸、プロトン酸等のエチレン系不飽和カルボン酸、メタクリロイルオキシプロピルスルホン酸、ビニルスルホン酸、p−スチレンスルホン酸等のスルホン酸モノエステル、また、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート等のリン酸モノエステルが挙げられる。
【0031】
本発明に使用する双性イオンモノマーとは、単量体中にアニオン性であるスルホン酸基あるいはカルボキシル基又はその塩とカチオン性基の両者を有するものであり、カチオン性基としてはアミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、4級アンモニウム基等を例示することができ、一般式(1)で示される。
【0032】
具体的には、N,N−ジメチル−N−(メタ)アクリロイルオキシメチル−N−スルホメチル−アンモニウムベタイン、N,N−ジメチル−N−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N−スルホメチル−アンモニウムベタイン、N,N−ジメチル−N−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−N−スルホメチル−アンモニウムベタイン、N,N−ジメチル−N−(メタ)アクリロイルオキシメチル−N−スルホプロピル−アンモニウムベタイン、N,N−ジメチル−N−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N−スルホプロピル−アンモニウムベタイン、N,N−ジメチル−N−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−N−スルホプロピル−アンモニウムベタイン、N,N−ジエチル−N−(メタ)アクリロイルオキシメチル−N−スルホメチル−アンモニウムベタイン、N,N−ジエチル−N−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N−スルホメチル−アンモニウムベタイン、N,N−ジエチル−N−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−N−スルホメチル−アンモニウムベタイン、N,N−ジエチル−N−(メタ)アクリロイルオキシメチル−N−スルホプロピル−アンモニウムベタイン、N,N−ジエチル−N−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N−スルホプロピル−アンモニウムベタイン、N,N−ジエチル−N−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−N−スルホプロピル−アンモニウムベタイン、N,N−ジメチル−N−(メタ)アクリルアミドプロピル−N−スルホメチル−アンモニウムベタイン、N,N−ジメチル−N−(メタ)アクリルアミドプロピル−N−スルホプロピル−アンモニウムベタイン、N,N−ジエチル−N−(メタ)アクリルアミドプロピル−N−スルホメチル−アンモニウムベタイン、N,N−ジエチル−N−(メタ)アクリルアミドプロピル−N−スルホプロピル−アンモニウムベタイン、N,N−ジメチル−N−(メタ)アクリルアミドプロピル−N−カルボキシメチル−アンモニウムベタイン、N,N−ジメチル−N−(メタ)アクリルアミドプロピル−N−カルボキシエチル−アンモニウムベタイン、N,N−ジエチル−N−(メタ)アクリルアミドプロピル−N−カルボキシメチル−アンモニウムベタイン、N,N−ジエチル−N−(メタ)アクリルアミドプロピル−N−カルボキシエチル−アンモニウムベタインが挙げられるが、本発明において特に好ましく用いられるのは、一般式(2)で示されるカルボキシベタイン(メタ)アクリレートである。
【0033】
具体的には、N,N−ジメチル−N−(メタ)アクリロイルオキシメチル−N−カルボキシメチル−アンモニウムベタイン、N,N−ジメチル−N−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N−カルボキシメチル−アンモニウムベタイン、N,N−ジメチル−N−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−N−カルボキシメチル−アンモニウムベタイン、N,N−ジメチル−N−(メタ)アクリロイルオキシメチル−N−カルボキシエチル−アンモニウムベタイン、N,N−ジメチル−N−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N−カルボキシエチル−アンモニウムベタイン、N,N−ジメチル−N−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−N−カルボキシエチル−アンモニウムベタイン、N,N−ジエチル−N−(メタ)アクリロイルオキシメチル−N−カルボキシメチル−アンモニウムベタイン、N,N−ジエチル−N−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N−カルボキシメチル−アンモニウムベタイン、N,N−ジエチル−N−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−N−カルボキシメチル−アンモニウムベタイン、N,N−ジエチル−N−(メタ)アクリロイルオキシメチル−N−カルボキシエチル−アンモニウムベタイン、N,N−ジエチル−N−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N−カルボキシエチル−アンモニウムベタイン、N,N−ジエチル−N−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−N−カルボキシエチル−アンモニウムベタインが挙げられる。
【0034】
【化1】

【0035】
(式中Rは、水素原子又はメチル基であり、Rは、メチル基又はエチル基を示し、Xは、O又はNHを示し、Yは−SO又はCOOである。また、mは1〜6の整数であり、nは、1〜3の整数である。)
【0036】
【化2】

【0037】
(式中Rは、水素原子又はメチル基であり、Rは、メチル基又はエチル基であり、Xは、O又はNHである。また、mは1〜6の整数であり、nは、1〜3の整数である。)
イオン性モノマーの配合量は0.1〜15重量%であり、好ましくは0.5〜10重量%である。イオン性モノマーの含有量が0.1重量%未満であると、得られたシリコーンハイドロゲル眼用レンズの表面に親水性が付与されず、また、15重量%を超えると疎水性成分との相溶性が低下し好ましくない。
【0038】
アニオン性モノマー及びカチオン性モノマーをそれぞれ1種類以上含有する場合、対となるイオン同士がイオン結合した形で存在することが好ましく、より具体的には、カチオン性モノマー/アニオン性モノマーのモル比は通常、カチオン性モノマー/アニオン性モノマー=0.8〜1.2程度が好ましい範囲として使用される。
【0039】
また、ポリシロキサンマクロモノマーは、一般式(3)で示される。具体的には、α−モノ(メタクリロキシメチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ジ(メタクリロキシメチル)ポリジメチルシロキサン、α−モノ(3−メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ジ(3−メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン、α−モノ(3−メタクリロキシブチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ジ(3−メタクリロキシブチル)ポリジメチルシロキサン、α−モノビニルポリジメチルシロキサン、α,ω−ジビニルポリジメチルシロキサンが挙げられるが、好ましくは、α,ω−ジ(3−メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサンである。
【0040】
【化3】

【0041】
(式中Xは独立して、CH=CH−又は、下記一般式(4)のエチレン性不飽和の重合可能なラジカルであり、R、R、R及びRはそれぞれ同一又は異なるメチル基、又はトリメチルシロキシ基を表わし、Rは水素原子又はメチル基であり、mは10〜150の整数でnは2〜5の整数である。)
【0042】
【化4】

【0043】
また、シリコーン含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチルシロキシジメチルシリルメチル(メタ)アクリレート、トリメチルシロキシジメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート、モノ[メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート]、トリス[メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート]、メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、モノ[メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ]ビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルエチルテトラメチルジシロキシプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルメチル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、トリメチルシロキシジメチルシリルプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルエチルテトラメチルジシロキシメチル(メタ)アクリレート、テトラメチルトリイソプロピルシクロテトラシロキサニルプロピル(メタ)アクリレート、テトラメチルトリイソプロピルシクロテトラシロキシビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシプロピルジメチルメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシプロピルジメチルエトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシエチルメチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシエチルメチルジエトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルエトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチルメチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチルメチルジエトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチルジメチルメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチルジメチルエトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリス(メトキシエトキシ)シラン等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、本発明においては少なくとも1種類の両末端に官能基を有し且つ、平均分子量が5000以上を有する、ポリシロキサンマクロモノマー又はシリコーン含有(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
【0044】
平均分子量が5000以下の場合、得られる重合体の伸縮性及び、酸素透過性が低下するため好ましくない。また、ラジカル重合性官能基を片末端のみ有しないポリシロキサンマクロモノマー及びシリコーン含有(メタ)アクリレートを単独で用いた場合、得られる重合体の架橋密度が十分でなく、眼用レンズとして用いることが困難であるため、好ましくない。
【0045】
ポリシロキサンマクロモノマー及びシリコーン含有(メタ)アクリレートの一方又は両方の好ましい配合量は10〜60重量%であり、より好ましくは20〜50重量%である。ポリシロキサンマクロモノマー及びシリコーン含有(メタ)アクリレートの一方又は両方の含有量が10重量%未満であると、得られた重合体を眼用レンズとして用いた場合、酸素透過性が低下し、また60重量%を超えると親水性構成成分との相溶性が低下し好ましくない。
【0046】
本発明に用いる親水性モノマーとは、分子中に親水性基を少なくとも1種類有するものであり、本発明においては、さらに、重合性官能基として(メタ)アクリル基、ビニル基のいずれかを有することが好ましい。
【0047】
本発明に用いる親水性モノマーとしては、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMAA)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、(メタ)アクリル酸、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、グリセロールメタクリレートなどの(メタ)アクリルモノマー、N−ビニルピロリドン(NVP)、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニル−N−エチルアセトアミド、N−ビニル−N−エチルホルムアミド、N−ビニルホルムアミドなどのビニルモノマーが挙げられる。
【0048】
配合量は20〜80重量%で好ましくは、30〜60重量%である。親水性モノマー含有量が30重量%未満であると柔軟性や含水率が低下し、また、80重量%を超えると疎水性構成成分との相溶性、酸素係数等が低下し好ましくない。
【0049】
本発明では、得られた共重合体の強度、形状安定性、柔軟性の向上のために、アルキル(メタ)アクリレートを共重合することができる。アルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、3−メチルトリデシル(メタ)アクリレート、6−メチルトリデシル(メタ)アクリレート、7−メチルトリデシル(メタ)アクリレート、2,11−ジメチルドデシル(メタ)アクリレート、2,7−ジメチル−4,5−ジエチルオクチル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、i−ステアリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート等の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0050】
また、本発明では、前述アルキル(メタ)アクリレートの他に、耐汚染性の向上及びレンズ表面粘着性の軽減のためにフッ素原子含有アルキル(メタ)アクリレートを共重合することができる。フッ素原子含有アルキル(メタ)アクリレートとしては、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、テトラフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロビス(トリフルオロメチル)ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、ヘプタフルオロブチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ノナフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、ドデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、トリデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、トリデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、ヘキサデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、オクタデカフルオロウンデシル(メタ)アクリレート、ノナデカフルオロウンデシル(メタ)アクリレート、エイコサフルオロドデシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−オクタフルオロ−6−トリフルオロメチルヘプチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−ドデカフルオロ−8−トリフルオロメチルノニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−ヘキサデカフルオロ−10−トリフルオロメチルウンデシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0051】
配合量は、好ましくは1〜30重量%であり、特に好ましくは5〜20重量%である。アルキル(メタ)アクリレート及びフッ素原子含有アルキル(メタ)アクリレートの含有量が1重量%未満であると、得られた重合体の物理化学的特徴に大きな向上は見られず、その効果を発揮するに至らず好ましくない。また、含有量が30重量%を越えると得られる重合体の酸素透過性の低下や、含水率の低下が発生するため好ましくない。
【0052】
本発明では、耐熱性、機械的特性の向上のために、多官能性の架橋成分を共重合する。架橋成分としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエリチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート系架橋剤、アリルメタクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、ジアリルサクシネート、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、トリアリルホスフェート、トリアリルトリメリテート、ジアリルエーテル、N,N−ジアリルメラミン、ジビニルベンゼン等のビニル系架橋剤が挙げられる。
【0053】
共重合体の強度、形状安定性、柔軟性の向上のために用いるアルキル(メタ)アクリレート及び多官能性架橋成分は、非親水性であることが好ましく、本発明においては、トリデシルメタクリレート(TDMA)、2−エチルヘキシルアクリレート(EHA)、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートが特に好ましく用いられる。
【0054】
本発明は、モノマー調整時に両親媒性物質を介在させ、その状態を維持したままで重合を行うことに一つの特徴がある。具体的には、カチオン性モノマー、アニオン性モノマー及び双性イオンモノマーを少なくとも1種類、ポリシロキサンマクロモノマー及びシリコーン含有(メタ)アクリレートの一方又は両方、親水性モノマー、並びにそれらと共重合可能なモノマーを含む単量体混合物の総量100重量%に対し、両親媒性物質を20〜70重量%、より好ましくは、30〜60重量%を添加する。両親媒性物質を介在させた状態で熱又は紫外線による重合を行うことで、通常疎水性となる重合体の表面構造が親水性を有する構造となり、湿潤性が高まる。さらには、イオン性モノマーが表面構造に存在することで、極めて優れた表面湿潤性を有することとなる。すなわち、モノマーの相溶性と、得られる重合体の表面湿潤性には、両親媒性物質の介在が大きく寄与する。
【0055】
本発明で使用する両親媒性物質は有機溶媒が好ましく、具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−オクチルアルコール、2−メチルシクロヘキサノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、3−メチル−3−ペンチルアルコール、ジメチル−3−オクチルアルコール、3−メトキシ−1−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール-t-ブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール等のグリコールエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸セチル、酢酸ラノリル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸ミリスチル、乳酸ラウリル、乳酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソステアリル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチルヘキシル、パルミチン酸セチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、安息香酸メチル等のエステル系溶媒、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、ノルマルオクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、シクロへキサン、エチルシクロへキサン等の脂環族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルヘプチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、エチルアミルケトン、エチルブチルケトン、エチルヘキシルケトン、ブチルメチルケトン、シクロヘプタノン、シクロヘキサン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンケトン、アニソール等のアセトン系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ジメチルスルホキシキド、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホン等のスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等のアミド系溶媒、N-メチルピロリドン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルアミド等の非プロトン性極性溶媒、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、アニソール、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、ペンチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ベンジルエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、トリオキサン、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチルアセタール等のエーテル系溶媒、石油系溶媒等であり、これらは単独あるいは混合して使用することができる。
【0056】
本発明において好ましく用いられるのは沸点が70〜200℃の有機系溶媒であり、より好ましくは、沸点が100〜150℃の有機系溶媒であり、さらに好ましくは、沸点が100〜150℃の酢酸エステル系溶媒、分岐鎖状アセトン系溶媒である。用いる両親媒性有機溶媒が分岐鎖状となることで、相溶性が向上することとなる。
【0057】
また、沸点が70℃よりも低い場合、熱重合や光重合を行う際、ポリマー化以前に溶媒が揮発し相溶性が低下してしまうため、得られる重合体が白化するため好ましくない。また、沸点が200℃以上の場合、得られた重合体中に残存する有機溶媒を除去しにくいため、安全性に影響を及ぼすため好ましくない。
【0058】
一般的に、熱重合や光重合を行う場合にはラジカル重合開始剤や光増感剤などを添加して行う。
【0059】
ラジカル重合開始剤としては、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス酪酸ジメチル、2,2'−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)などのアゾ系重合開始剤、ジイソブチリールパーオキサイド、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジステアロイルパーオキサイド、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(4−ターシャリーブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、ターシャリーヘキシルパーオキシネオデカノエート、ターシャリーブチルパーオキシネオデカノエート、ターシャリーヘキシルパーオキシピバレート、ターシャリーブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−ヘキサノイル)パーオキシヘキサン、ターシャリーヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ターシャリーブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ターシャリーブチルパーオキシイソブチレート、ターシャリーヘキシルパーオキシイソプロピルカーボネート、ターシャリーブチルパーオキシマレイン酸、ターシャリーブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、ターシャリーブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(3−メチルベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ターシャリーブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、ターシャリーヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ターシャリーブチルパーオキシ酢酸、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物系重合開始剤がある。
【0060】
重合開始剤の量は、共重合体成分100重量%に対して0.001〜1.0重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜1.0重量%である。
【0061】
本発明の眼用レンズの製造方法としては、レンズ形状の成形型を用いて重合する方法や、チューブ状の容器中で重合した後にレンズ形状に切削、研磨する方法など公知の方法が採用できる。また、本発明の材料を眼内レンズとして利用する場合には、レンズ形成後にレンズ部にレンズ支持部を取り付けることも可能であるし、レンズ部と支持部を一体的に形成することも可能である。
【0062】
本発明の眼用レンズに紫外線吸収効果を付与する場合には、一般的に用いられる紫外線吸収剤を材料中に添加すればよい。紫外線吸収剤の具体例としては、2−ヒドロキシ−4−(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−5−t−ブチルベンゾフェノン、2−(2‘−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2‘−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−メタクリロイルオキシメチル安息香酸フェニル等が挙げられる。
【0063】
[実施例]
以下、本発明の好ましい実施例を説明するが、この実施例は本発明の理解のために提供されるものであって、本発明の範囲がかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0064】
[評価方法]
実施例及び比較例における膨潤状態のシリコーンハイドロゲル眼用レンズの評価方法として、以下の試験、評価基準を採用した。
【0065】
[水濡れ性]
膨潤後のシリコーンハイドロゲル眼用レンズを37±2℃の生理食塩水に24時間浸漬し、その後取り出したときのレンズ表面の水濡れ性を目視にて評価した。
【0066】
○:全体的に良好な水濡れ性を示している。
【0067】
×:水弾きが確認される。
【0068】
その後、接触角計CA−D型(協和界面科学株式会社製)を用い、気泡法にて接触角の測定を行った。
【0069】
[レンズ伸縮性及び強度]
「プラスチックの引っ張り試験法(JIS K 7113)」に基づき試験片を調整し、膨潤したものをサンプルとして伸縮性及び強度を測定した。
【0070】
[レンズ透明性]
シリコーンハイドロゲル眼用レンズの透明性を目視にて評価した。
【0071】
○:完全透明。
【0072】
△:一部白濁(乳白色)あり。
【0073】
×:50%以上白濁
[酸素透過係数]
シリコーンハイドロゲル眼用レンズ成形体の酸素透過量の評価として、コンタクトレンズ製造・輸入承認申請マニュアル(日本コンタクトレンズ協会)に記載の「改良電極法によるDk値測定作業手順書」に基づき酸素透過係数(Dk値)を測定した。
【0074】
(実施例1〜9)
シリコーン含有(メタ)アクリレートとして3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレート(SiMA 信越化学工業株式会社製)、ポリシロキサンマクロモノマーとしてα,ω−ジ(3−メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン(FM−7725 チッソ株式会社製)、親水性モノマーとしてN−ビニルピロリドン(NVP)、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMAA)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、アニオン性モノマーとしてメタクリル酸(MAA)、カチオン性モノマーとしてメタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド(MAPTAC)、双性イオンモノマーとしてN,N−ジメチル−N−メタクリロイルオキシエチル−N−カルボキシメチル−アンモニウムベタイン(GLBT 大阪有機化学工業社製)、非親水性成分としてトリデシルメタクリレート(TDMA)、2−エチルヘキシルアクリレート(EHA)、エチレングリコールジメタクリレート(ED)を表1に示す配合量で混合した後に、両親媒性物質である酢酸ブチル(BuOAc)、酢酸アミル(AmOAc)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、ターシャリーブチルアルコール(t−BuOH)を表1に示す配合量で添加し、重合開始剤として、ターシャリーブチルパーオキシデカノエート(t−BuND)又は2,2'−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を表1に示す配合量で添加した。
【0075】
各成分を均一になるように十分攪拌して溶液を得た後、この溶液をレンズ形状のポリプロピレン製の成形型内に注入し、窒素雰囲気下、60℃で10時間加温することにより該溶液で共重合反応をさせ、レンズ形状の重合体とした。得られた重合体をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)にて60分間浸漬し膨潤させた後成形体の評価を行った。
【0076】
得られたシリコーンハイドロゲル眼用レンズの評価結果を表1に示すが、極めて良好な水濡れ性、適度な伸縮性、透明性、酸素透過性を示した。
【0077】
(比較例1)
本発明の必須成分である両親媒性物質を使用せず、その他成分については実施例1と同様の手順で原料の調製を行った。しかしながら、均一溶液を得られず、シリコーンハイドロゲル眼用レンズを作製するに至らなかった。
【0078】
(比較例2)
用いた両親媒性物質の沸点が70℃以下である以外、その他成分については実施例1と同様の手順で原料の調製を行った。攪拌時均一溶液となったが、得られたシリコーンハイドロゲル眼用レンズは白化しており、また表面は著しく撥水していた。
【0079】
(比較例3)
本発明の必須成分であるイオン性モノマーを添加せず、その他成分については実施例1と同様の手順でレンズを作製し評価した。得られたシリコーンハイドロゲル眼用レンズ表面は著しく撥水していた。
【0080】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリシロキサンマクロモノマーと、
イオン性モノマー及び親水性モノマーを含む単量体混合物と、
重合開始剤と、
を両親媒性物質に溶解して得た溶液での共重合反応で得られるシリコーンハイドロゲル眼用レンズ。
【請求項2】
前記両親媒性物質は、沸点70〜200℃の有機溶媒であり、酢酸エステル、分岐鎖状ケトン、前記酢酸エステルと分岐鎖状アルコールとの組み合わせ及び前記分岐鎖状ケトンと前記分岐鎖状アルコールとの組み合わせからなる一群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のシリコーンハイドロゲル眼用レンズ。
【請求項3】
前記両親媒性物質のうち、前記酢酸エステルは酢酸ブチル又は酢酸アミルであり、前記分岐鎖状ケトンはメチルイソブチルケトン又はメチルイソプロピルケトンであり、前記分岐鎖状アルコールはターシャリーブチルアルコールであることを特徴とする請求項1又は2に記載のシリコーンハイドロゲル眼用レンズ。
【請求項4】
前記単量体混合物は、親水性モノマーとアニオン性モノマーと非親水性モノマーの組み合わせ、シリコーン含有(メタ)アクリレートと前記親水性モノマーと前記アニオン性モノマーと前記非親水性モノマーとの組み合わせ、前記シリコーン含有(メタ)アクリレートと前記親水性モノマーと前記アニオン性モノマーとの組み合わせ、前記親水性モノマーと前記アニオン性モノマーとカチオン性モノマーと前記非親水性モノマーとの組み合わせ、前記親水性モノマーと双性イオンモノマーと前記非親水性モノマーとの組み合わせからなる一群から選択されることを特徴とする請求項1乃至3に記載のシリコーンハイドロゲル眼用レンズ。
【請求項5】
前記単量体混合物は、
前記親水性モノマーが、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアクリルアミド及び2−ヒドロキシエチルメタクリレートからなる一群から選択されたものであり、
前記非親水性モノマーが、トリデシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート及びエチレングリコールジメタクリレートからなる一群から選択されたものであり、
前記シリコーン含有(メタ)アクリレートが、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレートであり、
前記アニオン性モノマーが、メタクリル酸であり、
前記カチオン性モノマーが、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライドであり、
前記双性イオンモノマーがN,N−ジメチル−N−メタクリロイルオキシエチル−N−カルボキシメチル−アンモニウムベタインであることを特徴とする請求項4に記載のシリコーンハイドロゲル眼用レンズ。
【請求項6】
前記重合開始剤は、ターシャリーブチルパーオキシデカノエート又は2,2'−アゾビスイソブチロニトリルであることを特徴とする請求項1乃至5に記載のシリコーンハイドロゲル眼用レンズ。
【請求項7】
ポリシロキサンマクロモノマーと、イオン性モノマー及び親水性モノマーを含む単量体混合物と、重合開始剤と、を両親媒性物質に溶解して溶液を得る手順と、
該溶液で共重合反応をさせる手順と、
を備えることを特徴とするシリコーンハイドロゲル眼用レンズの製造方法。
【請求項8】
前記両親媒性物質は、沸点70〜200℃の有機溶媒であり、酢酸エステル、分岐鎖状ケトン、前記酢酸エステルと分岐鎖状アルコールとの組み合わせ及び前記分岐鎖状ケトンと前記分岐鎖状アルコールとの組み合わせからなる一群から選択されることを特徴とする請求項7に記載のシリコーンハイドロゲル眼用レンズの製造方法。
【請求項9】
前記両親媒性物質のうち、前記酢酸エステルは酢酸ブチル又は酢酸アミルであり、前記分岐鎖状ケトンはメチルイソブチルケトン又はメチルイソプロピルケトンであり、前記分岐鎖状アルコールはターシャリーブチルアルコールであることを特徴とする請求項7又は8に記載のシリコーンハイドロゲル眼用レンズの製造方法。
【請求項10】
前記単量体混合物は、親水性モノマーとアニオン性モノマーと非親水性モノマーの組み合わせ、シリコーン含有(メタ)アクリレートと前記親水性モノマーと前記アニオン性モノマーと前記非親水性モノマーとの組み合わせ、前記シリコーン含有(メタ)アクリレートと前記親水性モノマーと前記アニオン性モノマーとの組み合わせ、前記親水性モノマーと前記アニオン性モノマーとカチオン性モノマーと前記非親水性モノマーとの組み合わせ、前記親水性モノマーと双性イオンモノマーと前記非親水性モノマーとの組み合わせからなる一群から選択されることを特徴とする請求項7乃至9に記載のシリコーンハイドロゲル眼用レンズの製造方法。
【請求項11】
前記単量体混合物は、
前記親水性モノマーが、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアクリルアミド及び2−ヒドロキシエチルメタクリレートからなる一群から選択されたものであり、前記非親水性モノマーが、トリデシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート及びエチレングリコールジメタクリレートからなる一群から選択されたものであり、
前記シリコーン含有(メタ)アクリレートが、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレートであり、
前記アニオン性モノマーが、メタクリル酸であり、
前記カチオン性モノマーが、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライドであり、
前記双性イオンモノマーがN,N−ジメチル−N−メタクリロイルオキシエチル−N−カルボキシメチル−アンモニウムベタインであることを特徴とする請求項10に記載のシリコーンハイドロゲル眼用レンズの製造方法。
【請求項12】
前記重合開始剤は、ターシャリーブチルパーオキシデカノエート又は2,2'−アゾビスイソブチロニトリルであることを特徴とする請求項7乃至11に記載のシリコーンハイドロゲル眼用レンズの製造方法。

【公開番号】特開2011−95575(P2011−95575A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250468(P2009−250468)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000131245)株式会社シード (30)
【Fターム(参考)】