説明

含水組成物

【課題】水難溶性の紫外線吸収剤が、可溶化又は水中分散化された含水組成物を提供すること。
【解決手段】下記成分(1)〜(3)を含有する含水組成物を提供することにより、上記の課題を解決し得ることを見出した。
(1)下記式(I)にて表されるポリオキシエチレン付加化合物
HO(CHCHO)−R (I)
[式中、Rはフィトステロール残基又はフィトスタノール残基を示し、nは5〜100の数を示す。]
(2)水難溶性の紫外線吸収剤
(3)水

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料や皮膚外用剤等として使用することが可能な含水組成物に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
水に溶解しにくい紫外線吸収剤(水難溶性の紫外線吸収剤)の多くは、化粧料や皮膚外用剤等の皮膚外用の分野において有用であり、これらの紫外線吸収剤を安定に外用組成物中に含有させる技術が種々に提供されている。当該技術として代表的な技術として乳化技術や可溶化技術が挙げられる。そして、紫外線吸収剤をさっぱりとした感触で皮膚への分配を行うことができる技術という点では、可溶化技術や水中分散技術を挙げることができる。特に、可溶化技術は、紫外線吸収剤を化粧水等の形態で用いる場合に不可欠な技術であり、一般的には、紫外線吸収剤の可溶化剤として、ポリオキシエチレンアルキルエーテルやポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の界面活性剤が用いられている。しかしながら、分子量が大きく、特に、バルキーな構造を有する水に対して難溶性の紫外線吸収剤を用いた場合、これらの界面活性剤では、当該水難溶性紫外線吸収剤の充分量を可溶化することは非常に困難であった。
【0003】
下記特許文献1では、水難溶性医薬用薬剤を溶解する手段として、エトキシル化フィトステロール及びフィトスタノールの使用が報告されている。しかし、本製剤は生きた細胞での細胞損傷の予防を目的とする医薬用薬剤の水溶液を実現するものであり、紫外線吸収剤に関する記載とその利用については言及が無い。
【特許文献1】特開2005−511586号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、水難溶性の紫外線吸収剤が、可溶化又は水中分散化された含水組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記の課題の解決に向けて、水難溶性紫外線吸収剤を水中に溶解することが可能な界面活性物質についての検討を行い、ポリオキシエチレンを付加したフィトステロール若しくはフィトスタノールを、水系中で、水難溶性の紫外線吸収剤と共存させることにより、当該紫外線吸収剤を溶解することが可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、下記成分(1)〜(3)を含有する、含水組成物(以下、本発明の含水組成物ともいう)を提供する発明である。
(1)下記式(I)にて表されるポリオキシエチレン付加化合物(以下、化合物(I)ともいう)
HO(CHCHO)−R (I)
[式中、Rはフィトステロール残基又はフィトスタノール残基を示し、nは5〜100の数を示す。]
(2)水難溶性の紫外線吸収剤
(3)水
【0007】
化合物(I)は、下記式:
【0008】
【化1】

【0009】
にて、表すこともできる。この化学式のポリオキシエチレン鎖部分に対して右側の基は、上記Rがとり得る、フィトステロール残基又はフィトスタノール残基である。
【0010】
本発明において「含水組成物」とは、水を含有する組成物のことを意味する。また、本明細書中に言及される「溶解した状態」とは、他の成分の影響のない状態で目視観察を行った場合に、系中に紫外線吸収剤が「透明又は半透明の状態」で均等に存在すると認められる状態を意味する。この「透明又は半透明の状態」としては、例えば、水難溶性の紫外線吸収剤が熱力学的に安定な「可溶化状態」や、当該紫外線吸収剤が微粒子として水相中に分散して存在する「水中分散状態」が挙げられる。
【0011】
本発明の含水組成物は、典型的には、皮膚に適用可能な外用組成物又はその基剤、として用いることが可能である。外用組成物の具体的な製品形態としては、化粧料又は皮膚外用剤が挙げられる。化粧料と皮膚外用剤は、共に、皮膚に適用することが可能な形態であり、両者は重なり合う概念で、特に、化粧料であることは、皮膚外用剤であることをも意味するものである。皮膚外用剤であって化粧料ではない場合とは、皮膚外用剤の目的が美容を第一義とする「化粧」ではなく、健康を第一義とする場合、すなわち、「医薬部外品」若しくは「医薬品」である場合が該当する。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、水難溶性の紫外線吸収剤が可溶化又は水分散化された含水組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[ポリオキシエチレン付加化合物(化合物(I))の配合]
本発明の含水組成物においては、上述のように、水と水難溶性の紫外線吸収剤と共に、化合物(I)が配合される。化合物(I)は、後述するように、上記式(I)の範囲内の1種のみの化合物として本発明の含水組成物に配合することも可能であり、異なる2種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0014】
化合物(I)において、Rがとり得るフィトステロール残基の母化合物であるフィトステロールは、植物由来のステロールであり(F.D.GunstoneおよびB.G.Herslof、A Lipid Glossary、ジ・オイリー・プレス、エアー、1992)、特に、限定はされない。すなわち、Rがとり得るフィトステロール残基としては、シトステロール残基、カンペステロール残基、スチグマステロール残基、ブラッシカステロール(brassicasterol)残基、アベナステロール(avenasterol)残基、エルゴステロール残基等が挙げられる。また、本発明の含水組成物中に配合される化合物(I)は、上述したように、Rが異なるフィトステロール残基である2種以上の化合物の混合物であることも可能である。
【0015】
同じく、Rがとり得るフィトスタノール残基の母化合物であるフィトスタノールは、フィトステロールの水素化又は飽和対応物質であり、特に限定されない。すなわち、Rがとり得るフィトスタノール残基としては、例えば、シトスタノール、カンペスタノール、スチグマスタノール、ブラッシカスタノール(brassicastanol)、アベナスタノール(avenastanol)、エルゴスタノール等が挙げられる。また、本発明の含水組成物中に配合される化合物(I)は、上述したように、Rが異なるフィトスタノール残基である2種以上の化合物の混合物であることも可能である。
【0016】
さらに、化合物(I)は、Rが1種又は2種以上のフィトステロール残基を有する化合物と、同じく1種又は2種以上のフィトスタノール残基を有する化合物の混合物として、本発明の含水組成物に配合することも可能である。
【0017】
また、化合物(I)におけるポリオキシエチレン鎖の数を示すnは5〜100であり、好適には5〜50である。
【0018】
化合物(I)は、その化学構造を基に常法を用いて製造することができる。例えば、フィトステロールに対しエチレンオキシドを添加未反応物の除去後、中和、脱水、脱臭、濾過を行い、容易に化合物(I)を製造することができる。
【0019】
本発明の含水組成物における化合物(I)の配合量は、組成物に対して10質量%以下、好適には3質量%以下である。また、当該化合物(I)の配合量は、水難溶性の紫外線吸収剤の配合量との相対関係に依るところが大きい。水難溶性の紫外線吸収剤に対する化合物(I)の存在比の上限は、上記の化合物(I)の配合量の上限値を限度指標として、質量比で1以上であることが好適であり、3以上であることが特に好適である。化合物(I)の配合量の下限の好適値も、この配合比により規定され得る。なお、化合物(I)は、本発明の含水組成物の必須の配合成分であり、この配合量が0質量%となることはない。
【0020】
[水難溶性の紫外線吸収剤の配合]
本発明の含水組成物でおいては、水難溶性の紫外線吸収剤を1種又は2種以上配合して、これを可溶化又は水分散化することが必要である。水難溶性の紫外線吸収剤における水以外の溶媒に対する溶解性については特に限定されるものではない。なお、この水難溶性の紫外線吸収剤の配合は、水溶性の紫外線吸収剤の選択的な配合を妨げない。
【0021】
水難溶性の紫外線吸収剤としては、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤(典型的には、ビスレゾルシニルトリアジン、さらに具体的には、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン(別名:2,4―ビス{〔4−(2−エチルヘキシルオキシ)―2−ヒドロキシ〕フェニル}−6−(4−メトキシフェニル)1,3,5−トリアジン、市販品としてチノソーブ(TINOSORB)S、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社)、オクチルトリアゾン(別名:2,4,6―トリス{4−(2−エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ}1,3,5−トリアジン、若しくは、2,4,6−トリアニリノ−p−(カルボ−2’−エチルヘキシル−1’−オキシ)−1,3,5−トリアジン、市販品としてユビナール T150(UVINUL T150)、BASF社)、2−[2−ヒドロキシ−4−(2−エチルヘキシル)フェノキシ]−2H−ベンゾトリアゾール等;安息香酸系紫外線吸収剤(例えば、パラアミノ安息香酸(以下、PABAと略す)、PABAモノグリセリンエステル、N,N−ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N−ジエトキシPABAエチルエステル、N,N−ジメチルPABAエチルエステル、N,N−ジメチルPABAブチルエステル;アントラニル酸系紫外線吸収剤(例えば、ホモメンチル−N−アセチルアントラニレート等);サリチル酸系紫外線吸収剤(例えば、アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p−イソプロパノールフェニルサリシレート等);ケイ皮酸系紫外線吸収剤(例えば、オクチルシンナメート、エチル−4−イソプロピルシンナメート、エチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、メチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、プロピル−p−メトキシシンナメート、イソプロピル−p−メトキシシンナメート、シクロヘキシル−p−メトキシシンナメート、エチル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、2−エチルヘキシル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート等);ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(例えば、2−[4−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステル、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4’−メチルベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、2−エチルヘキシル−4’−フェニル−ベンゾフェノン−2−カルボキシレート、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシ−3−カルボキシベンゾフェノン等);3−(4’−メチルベンジリデン)−d,l−カンファー、3−ベンジリデン−d,l−カンファー;2−フェニル−5−メチルベンゾキサゾール;2,2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニルベンゾトリアゾール;2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール;2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニルベンゾトリアゾール;ジベンザラジン;ジアニソイルメタン;4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン;5−(3,3−ジメチル−2−ノルボルニリデン)−3−ペンタン−2−オン;フェニルアクリレート系紫外線吸収剤(例えば、2−エチルヘキシルー2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート(別名:オクトクリレン)、2−エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等);ジベンゾイルメタン系紫外線吸収剤(例えば、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン等);カンファー誘導体(例えば4−メチルベンジリデンカンファー、テレフタリリデンジカンファースルフォニックアシッド等);フェニルベンゾトリアゾール誘導体(例えばヒドロキシ−(エチルヘキシル)フェノキシベンゾトリアゾール、メチレンビス−ベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール等);ベンザルマロネート誘導体(例えばジメチコベンザルマロネート等)等が挙げられる。
【0022】
水難溶性の紫外線吸収剤の中でも、その化学構造の中に6員環を2つ以上有することが好ましく、当該条件の紫外線吸収剤としては、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、2,4,6−トリス[4−(2−エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]1,3,5−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(2−エチルヘキシル)フェノキシ]−2H−ベンゾトリアゾール等のトリアジン誘導体が挙げられる。これらの中でもビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンは好適である。
【0023】
また、UVA領域に吸収を有する紫外線吸収剤は、水溶性色素や水溶性薬剤の安定化効果が優れる傾向が認められる。このような水難溶性の紫外線吸収剤としては、例えば、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、2,4,6−トリス[4−(2−エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]1,3,5−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(2−エチルヘキシル)フェノキシ]−2H−ベンゾトリアゾール、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、2−[4−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステル等を挙げることができる。
【0024】
本発明の含水組成物における水難溶性の紫外線吸収剤の配合量は、当該組成物中で水難溶性の紫外線吸収剤が、常温にて可溶化又は水分散化されている状態を保つことができる限り、特に限定されない。水難溶性の紫外線吸収剤と化合物(I)の配合量の関係は、上述した通りである。この配合量の関係の限度内において、各々の紫外線吸収剤そのものの性質を加味して、具体的な配合量を決定することも可能である。
【0025】
[水の配合]
本発明の含水組成物における水は、通常は、イオン交換水、精製水、又は、水道水である。組成物全体における、化合物(I)、及び、水難溶性の紫外線吸収剤の総量に対する残量、あるいは、組成物全体における、化合物(I)、水難溶性の紫外線吸収剤、及び、一般的な配合成分に対する残量を含有させることができる。
【0026】
[本発明の具体的な態様]
本発明の含水組成物においては、化合物(I)の存在により、本来は水に難溶性の紫外線吸収剤が容易に可溶化又は水分散化される。好ましくは、例えば、水難溶性の紫外線吸収剤を、化合物(I)に溶解又は分散させたパーツを調製し、これを安定化対象である水溶性薬剤又は水溶性色素を含む水相に混合して、可溶化又は分散させることにより、本発明の含水組成物を製造することができる。
【0027】
上記の必須成分のみが含有されている態様の本発明の含水組成物は、これを化粧料又は皮膚外用剤として用いられる外用組成物とすることが可能である。当該外用組成物では、可溶化又は水分散された難溶性の紫外線吸収剤の薬効や紫外線遮蔽作用等の性質を、外皮に対して活用することができる。
【0028】
また、これらの必須成分のみを含有する態様の本発明の含水組成物を、他の一般的な成分が配合される外用組成物の基剤として用いることができる。すなわち、第一に、本発明の含水組成物を製造し、第二に、一般的な成分を配合して、最終的な目的とする態様の外用組成物を製造することができる。
【0029】
ここに一般的な成分としては、薬効の付加、着色、製造パラメーターの調整、イオン強度の調整、pHの調整、製剤の安定性等のため、賦形剤、緩衝液、塩、酸化防止剤、防腐剤、香料、界面活性剤、水溶性ビタミン等を挙げることができる。一般的な成分は、通常は、水溶性物質が用いられるが、紫外線吸収剤であることも、最終製品の剤型によっては許容される。例えば、構造上、6員環を持たない液状油分等も当該一般成分として用いることができる。
【0030】
また、上記の必須成分のみを含有する態様の本発明の含水組成物の製造を経ることなしに、最終的な目的とする形態の外用組成物を製造することも可能である。この場合は、例えば、一般的な成分として選択された水溶性成分を水に溶解させた水相を調製して、この水相に対して、水難溶性の紫外線吸収剤を化合物(I)に対して溶解又は分散させたパーツを混合することにより、当該紫外線吸収剤を可溶化又は水分散化させて、最終形態の外用組成物を製造することができるが、この製造方法に限定されるものではなく、必要や選択した一般的な成分の性質に応じて適宜製造方法を選択又は工夫することができる。
【実施例】
【0031】
以下、本発明の実施例を開示し、本発明をさらに具体的に説明するが、これにより本発明が限定されるものではない。配合量は、特に断りのない限り、配合対象に対する質量%である。
【0032】
[試験例]
常法に基づき、化合物(I)若しくは他の界面活性剤と、紫外線吸収剤を混合して溶解し、当該パーツを水中にて混合することにより、表1〜表6に示す試験品(実施例又は比較例)を得て、下記の判定基準による試験を行った。結果については、各表毎に個別に記載する。なお、各表の配合量を示す欄における「−」は、0質量%であることを示す。さらに、「POE」とは「ポリオキシエチレン」の略称であり、「POP」とは「ポリオキシプロピレン」の略称である。
【0033】
(1)試験品調製直後の試験
(a)溶解状態の確認
各試験品について、目視による溶解状態の確認試験を行った。判定基準は以下の通りである。
◎: 透明状態である。
○: ほぼ透明状態である。
△: 白濁〜半透明である。
×: 分離物が認められる。
【0034】
(b)透明度(L値)の確認
各試験品について、透明度についてL値の計測による確認を行った。L値は、島津製作所社製の分光光度計(UV−160)を用い、コントロールとして蒸留水の透明度を100としたときの透明度として測定した。判定基準は、以下の通りである。
90以上: 透明状態である。
70〜90未満: ほぼ透明である。
70未満: 白濁〜半透明である。
測定不能: 分離物が認められる。
【0035】
(c)使用性試験
調製直後の各試験品について、専門パネル10名による使用感触テストを行った。判定基準は、以下の通りである。
【0036】
○: 10人中5人以上が、べたつきがないと評価した場合
△: 10人中3〜4人が、べたつきがないと評価した場合
×: 10人中0〜2人が、べたつきがないと評価した場合
【0037】
(2)経時による試験
上記のごとく調製した試験品を50℃で1ヶ月保存し(以下、「50℃1M」とも表す)、再び、上記の要領でL値の測定を行った。そして、上記の試験品調製直後に計測したL値と、今回計測したL値の差により、経時的な安定性の評価を行った。判定基準は、以下の通りである。なお、今回計測したL値も併せて各表に記載する。
◎: L値変化 ±2以内
○: L値 ±5以内
△: L値 ±10以内
×: L値変化 ±10以上、又は、分離物が認められる
【0038】
<試験系1>
【0039】
【表1】

【0040】
表1において、比較例1〜2はフィトステリル骨格を有さない界面活性剤を用いているため、可溶化能が低く、紫外線吸収剤の可溶化に適していないことが明らかになった。実施例1〜3は、界面活性剤としてフィトステリル骨格を有する化合物(I)を用いており、十分に実用的なレベルで水難溶性の紫外線吸収剤であるトリアジン系紫外線吸収剤の可溶化を行うことができた。
【0041】
<試験系2>
【0042】
【表2】

【0043】
表2において、比較例3は、配合したポリオキシエチレン付加フィトステロールのポリオキシエチレン基のモル数が5未満であるため、経時安定性に若干の問題があった。
【0044】
実施例4は、化合物(I)のポリオキシエチレン基が5〜50モルであり、外観、使用性、経時的安定性が良好であった。
【0045】
実施例5は、化合物(I)のポリオキシエチレン基が50以上であるため、使用の際にべたつきが認められた。
【0046】
<試験系3>
表3に示す試験系では、化合物(I)と水難溶性物質の比率(質量比)が問題となるため、当該比率も表に示した。
【0047】
【表3】

【0048】
実施例9は、化合物(I)/紫外線吸収剤の比率が1以下であるため、若干半透明状態となった。
【0049】
実施例6〜8は、化合物(I)/紫外線吸収剤の比率が1以上であるため、外観、使用性、安定性が良好であった。
【0050】
<試験系4>
【0051】
【表4】

【0052】
実施例10で用いた化合物(I)は、化学構造中に6員環を1つしか有さない紫外線吸収剤であり、可溶化は可能であるが、経時的安定性が最良の結果には至らなかった。
【0053】
実施例11〜13で用いて化合物(I)は、化学構造中に6員環を2つ以上有する紫外線吸収剤であるため、外観、安定性が良好であった。
【0054】
<試験系5>
表5に示す試験系では、本発明の含水組成物の必須成分の他に、一般成分を用いた処方(外用剤)を採用して各試験を行った。各一般成分は水溶性であり、予め、イオン交換水に混合して水相パーツを調製して、紫外線吸収剤と化合物(I)の溶解パーツと混合することにより、各試験品の調製を行った。
【0055】
【表5】

【0056】
実施例14〜17の結果により、一般的な成分を配合した系であっても、本発明の含水組成物における本来の効果は損なわれないことが明らかになった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(1)〜(3)を含有する、含水組成物。
(1)下記式(I)にて表されるポリオキシエチレン付加化合物
HO(CHCHO)−R (I)
[式中、Rはフィトステロール残基又はフィトスタノール残基を示し、nは5〜100の数を示す。]
(2)水難溶性の紫外線吸収剤
(3)水
【請求項2】
ポリオキシエチレン付加化合物(I)に対する、水難溶性の紫外線吸収剤の配合量比が、質量比で1以上である、請求項1に記載の含水組成物。
【請求項3】
ポリオキシエチレン付加化合物(I)におけるフィトステロール残基又はフィトスタノール残基Rが、シトステロール残基、カンペステロール残基、スチグマステロール残基、ブラッシカステロール(brassicasterol)残基、アベナステロール(avenasterol)残基、エルゴステロール残基、シトスタノール残基、カンペスタノール残基、スチグマスタノール残基、ブラッシカスタノール(brassicastanol)残基、アベナスタノール(avenastanol)残基、及び、エルゴスタノール残基、からなる群から選ばれる1種又は2種以上である、請求項1又は2に記載の含水組成物。
【請求項4】
ポリオキシエチレン付加化合物(I)におけるnが5〜50の数である、請求項1〜3のいずれかに記載の含水組成物。
【請求項5】
水難溶性の紫外線吸収剤が、6員環を2つ以上有する化学構造の紫外線吸収剤である、請求項1〜4のいずれかに記載の含水組成物。
【請求項6】
水難溶性の紫外線吸収剤が、UVA領域に吸収を持つ紫外線吸収剤である、請求項1〜5のいずれかに記載の含水組成物。
【請求項7】
水難溶性の紫外線吸収剤が、トリアジン誘導体である、請求項1〜6に記載の含水組成物。
【請求項8】
含水組成物が外用組成物である、請求項1〜7のいずれかに記載の含水組成物。
【請求項9】
外用組成物の形態が化粧料又は皮膚外用剤である、請求項8に記載の含水組成物。
【請求項10】
含水組成物が、外用組成物を製造するための基剤として用いられる組成物である、請求項1〜9のいずれかに記載の含水組成物。

【公開番号】特開2010−13375(P2010−13375A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−172924(P2008−172924)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】