説明

吸収性樹脂粒子、これを含む吸収体及び吸収性物品

【課題】ムレによる不快感を生じない吸収性樹脂粒子、及び吸収性物品を提供する。
【解決手段】水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解性ビニルモノマー(a2)並びに架橋剤(a3)を必須構成単位とする架橋重合体(A)と、一般式(1)で表される含窒素化合物(B)とを含み、(A)及び(B)の合計重量に基づく(B)の含有量が5〜40重量%である吸収性樹脂粒子。


[一般式(1)中のR〜Rは、水素、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトリル基、アルキル基、アルケニル基又はアリール基を表す。アルキル基、アルケニル基又はアリール基は、それらの基の水素原子がヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、ニトリル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性樹脂粒子、これを含む吸収体及び吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通液性が高く、吸収速度が速い吸水剤は吸収性物品の実使用時においてモレや戻り量が少なく、吸収性物品の表面のドライ性が向上するため、着用者の肌のムレ、カブレを軽減できることが知られている(特許文献1)。
また、粘度調整剤を含有してなる吸収剤は、軟便や嘔吐物等の粘稠液体状の排泄物の耐モレ性に優れており、吸収した水分を強固に保持するため、ムレ防止性やカブレ防止性を発揮することが知られている(特許文献2)。
【0003】
しかしながら、従来の吸収性樹脂粒子や吸水剤では、吸収性物品の短時間使用時でのムレは低減できても長時間使用時ではやはりムレが発生し、不快感があるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−057075号公報
【特許文献2】特開2005−186015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の吸収性樹脂粒子を用いた吸収性物品(紙おむつ等)は、液体を吸収しモレやカブレ等の問題を解決しているが、吸収後でも長時間装着時にはムレによって装着者の皮膚がふやけ、不快を感じやすい。そして、このようなムレによる不快感がない吸収性物品、これに使用し得る吸収性樹脂粒子が強く望まれている。
本発明の目的は、ムレが発生しにくい吸収性樹脂粒子を提供し、この吸収性樹脂粒子を使用することで上記のようなムレによる不快感を生じない吸収性物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、特定の含窒素化合物を含有する吸収性樹脂粒子で、上記課題を解決できることを見いだし本発明に到達した。
【0007】
すなわち、本発明の吸収性樹脂粒子は、水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解性ビニルモノマー(a2)並びに架橋剤(a3)を必須構成単位とする架橋重合体(A)と、一般式(1)で表される含窒素化合物(B)とを含み、(A)及び(B)の合計重量に基づく(B)の含有量が5〜40重量%であることを要旨とする。
【化1】

[一般式(1)中のR〜Rは、水素、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトリル基、アルキル基、アルケニル基又はアリール基を表す。アルキル基、アルケニル基又はアリール基は、それらの基の水素原子がヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、ニトリル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい。]
【0008】
また、本発明の吸収体は、上記の吸収性樹脂粒子と繊維状物とを含有してなる点を要旨
とする。
【0009】
そして、本発明の吸収性物品は、上記の吸収体を備えてなる点を要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の吸収性樹脂粒子は、特定の含窒素化合物を含有しムレに対して優れる。
したがって、本発明の吸収性樹脂粒子を吸収性物品(紙おむつ及び生理用ナプキン等)
に適用したとき、ムレが少なく、不快感が生じにくい。
【発明を実施するための形態】
【0011】
水溶性ビニルモノマー(a1)としては特に限定はなく公知{たとえば、特許第3648553号公報、特開2003−165883号公報、特開2005−75982号公報、特開2005−95759号公報}のビニルモノマー等が使用できる。
【0012】
加水分解性ビニルモノマー(a2)は、加水分解により水溶性ビニルモノマー(a1)となるビニルモノマーを意味し、特に限定はなく公知{たとえば、特許第3648553号公報、特開2003−165883号公報、特開2005−75982号公報、特開2005−95759号公報}のビニルモノマー等が使用できる。なお、水溶性ビニルモノマーとは、25℃の水100gに少なくとも100g溶解する性質を持つビニルモノマーを意味する。また、加水分解性とは、50℃の水及び必要により触媒(酸又は塩基等)の作用により加水分解され水溶性になる性質を意味する。加水分解性ビニルモノマーの加水分解は、重合中、重合後及びこれらの両方のいずれでもよいが、得られる吸収性樹脂粒子の分子量の観点等から重合後が好ましい。
【0013】
これらのうち、吸収特性の観点等から、水溶性ビニルモノマー(a1)が好ましく、さらに好ましくはアニオン性ビニルモノマー、次に好ましくはカルボキシ(塩)基、スルホ(塩)基、アミノ基、カルバモイル基、アンモニオ基又はモノ−、ジ−若しくはトリ−アルキルアンモニオ基を有するビニルモノマー、次に好ましくはカルボキシ(塩)基又はカルバモイル基を有するビニルモノマー、特に好ましくは(メタ)アクリル酸(塩)及び(メタ)アクリルアミド、次に特に好ましくは(メタ)アクリル酸(塩)、最も好ましくはアクリル酸(塩)である。
【0014】
なお、「カルボキシ(塩)基」は「カルボキシ基」又は「カルボキシレート基」を意味し、「スルホ(塩)基」は「スルホ基」又は「スルホネート基」を意味する。また、(メタ)アクリル酸(塩)はアクリル酸、アクリル酸塩、メタクリル酸又はメタクリル酸塩を意味し、(メタ)アクリルアミドはアクリルアミド又はメタクリルアミドを意味する。また、塩としては、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム及びカリウム等)塩、アルカリ土類金属(マグネシウム及びカルシウム等)塩又はアンモニウム(NH)塩等が含まれる。これらの塩のうち、吸収特性の観点等から、アルカリ金属塩及びアンモニウム塩が好ましく、さらに好ましくはアルカリ金属塩、特に好ましくはナトリウム塩である。
【0015】
水溶性ビニルモノマー(a1)又は加水分解性ビニルモノマー(a2)のいずれかを構成単位とする場合、それぞれ単独で構成単位としてもよく、また、必要により2種以上を構成単位としてもよい。また、水溶性ビニルモノマー(a1)及び加水分解性ビニルモノマー(a2)を構成単位とする場合も同様である。また、水溶性ビニルモノマー(a1)及び加水分解性ビニルモノマー(a2)を構成単位とする場合、これらの含有モル比(a1/a2)は、75/25〜99/1が好ましく、さらに好ましくは85/15〜95/5、特に好ましくは90/10〜93/7、最も好ましくは91/9〜92/8である。この範囲であると、吸収性能がさらに良好となる。
【0016】
架橋剤(a3)としては特に限定はなく公知{たとえば、特許第3648553号公報、特開2003−165883号公報、特開2005−75982号公報、特開2005−95759号公報}の架橋剤等が使用できる。
これらのうち、吸収特性の観点等から、エチレン性不飽和基を2個以上有する架橋剤が好ましく、さらに好ましくは炭素数2〜10のポリオールのポリ(メタ)アリルエーテル及びN,N’−メチレンビスアクリルアミド、特に好ましくはトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、テトラアリロキシエタン、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル及びN,N’−メチレンビスアクリルアミド、最も好ましくはペンタエリスリトールトリアリルエーテル及びN,N’−メチレンビスアクリルアミドである。
【0017】
架橋剤(a3)単位の含有量(モル%)は、水溶性ビニルモノマー(a1)単位及び加水分解性ビニルモノマー(a2)単位のモル数に基づいて、0.001〜5が好ましく、さらに好ましくは0.005〜3、特に好ましくは0.01〜1である。この範囲であると、吸収特性がさらに良好となる。
【0018】
水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解性ビニルモノマー(a2)並びに架橋剤(a3)を必須構成単量体(a)とする単量体には、これらの他に、これらと共重合可能なその他のビニルモノマー(a4)を含むことができる。
【0019】
共重合可能なその他のビニルモノマー(a4)としては特に限定はなく公知{たとえば、特許第3648553号公報、特開2003−165883号公報、特開2005−75982号公報、特開2005−95759号公報}の疎水性ビニルモノマー等が使用でき、下記の(i)〜(iii)のビニルモノマー等が使用できる。
(i)炭素数8〜30の芳香族エチレン性モノマー
スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン及びヒドロキシスチレン等のスチレン、並びにビニルナフタレン及びジクロルスチレン等のスチレンのハロゲン置換体等。
(ii)炭素数2〜20の脂肪族エチレンモノマー
アルケン[エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン及びオクタデセン等];並びにアルカジエン[ブタジエン及びイソプレン等]等。
(iii)炭素数5〜15の脂環式エチレンモノマー
モノエチレン性不飽和モノマー[ピネン、リモネン及びインデン等];並びにポリエチレン性ビニル重合性モノマー[シクロペンタジエン、ビシクロペンタジエン及びエチリデンノルボルネン等]等。
【0020】
その他のビニルモノマー(a4)を含む場合、その他のビニルモノマー(a4)の含有量(モル%)は、水溶性ビニルモノマー(a1)及び加水分解性ビニルモノマー(a2)のモル数に基づいて、0.01〜5が好ましく、さらに好ましくは0.05〜3、次に好ましくは0.08〜2、特に好ましくは0.1〜1.5である。なお、吸収性能等の観点から、その他のビニルモノマー(a4)を使用しないことが最も好ましい。
【0021】
架橋重合体(A)は1種でもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
【0022】
水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解性ビニルモノマー(a2)並びに架橋剤(a3)を必須構成単量体(a)とする単量体を共重合することにより架橋重合体(A)が得られる。共重合の方法としては、公知の水溶液重合{断熱重合、薄膜重合及び噴霧重合法等;特開昭55−133413号等}や、公知の逆相懸濁重合{特公昭54−30710号、特開昭56−26909号及び特開平1−5808号等}と同様にしてできる。
【0023】
架橋重合体(A)の含有量(重量%)は、架橋重合体(A)及び含窒素化合物(B)の重量に基づいて、60〜95であり、ムレの発生の観点から、好ましくは80〜90である。
【0024】
<一般式(1)で表される含窒素化合物(B)>
含窒素化合物(B)は、一般式(1)で表される。含窒素化合物(B)にはその塩も含まれる。
【0025】
一般式(1)中のR〜Rは、水素、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトリル基、アルキル基、アルケニル基又はアリール基を表す。アルキル基、アルケニル基又はアリール基は、それらの基の水素原子がヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、ニトリル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
アルキル基、アルケニル基又はアリール基の炭素数は、ムレ防止の観点から、1〜10が好ましく、さらに好ましくは1〜6である。
アルキル基及びアルケニル基は、直鎖構造又は分岐構造のものが含まれる。アルキル基、アルケニル基又はアリール基において、それらの水素原子が置換される場合の置換基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、ニトリル基、ハロゲン原子が挙げられ、吸収性能の観点から、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基が好ましい。
【0026】
一般式(1)で表される含窒素化合物としては、具体的には尿素、1−メチル尿素、ヒドロキシ尿素、1,1−ジメチル尿素、1,3−ジメチル尿素、カルボヒドラジド、セミカルバジド塩酸塩等が挙げられる。(B)としては、ムレ防止の観点から、尿素が好ましい。
【0027】
(B)の25℃における水への溶解度は0.1〜500g/100mlであることが好ましく、さらに好ましくは1〜500g/100ml、次にさらに好ましくは10〜500g/100mlである。この範囲であると、吸収性能がさらに良好となる。
【0028】
(B)の含有量(重量%)は、架橋重合体(A)及び(B)の合計重量に基づいて、5〜40であり、ムレが発生しにくい観点から、好ましくは10〜20である。(B)の含有量が5未満であると、ムレが発生しやすくなり、40を超えると吸収性能が悪くなる。
【0029】
本発明の吸収性樹脂粒子は、下記に記載する本発明の製造方法により容易に得られる。
【0030】
水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解性ビニルモノマー(a2)並びに架橋剤(a3)を必須構成単量体(a)とする単量体を共重合して架橋重合体(A)を得た後、(A)と含窒素化合物(B)とを混合して架橋重合体/含窒素化合物複合体ゲル(A/B)を得る工程(1)又は
水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解性ビニルモノマー(a2)並びに架橋剤(a3)を必須構成単量体(a)とする単量体と、含窒素化合物(B)とを混合した後、これらを共重合して架橋重合体/含窒素化合物複合体ゲル(A/B)を得る工程(2)を含んでなる。
【0031】
本発明の製造方法において、含窒素化合物(B)は固体状であることが好ましい。
【0032】
<工程(1)>
工程(1)は、前述の方法で得られた架橋重合体(A)を得た後、架橋重合体(A)と含窒素化合物(B)とを混合して架橋重合体/含窒素化合物複合体ゲル(A/B)を得る工程である。
【0033】
架橋重合体(A)と含窒素化合物(B)とを混合する方法としては、架橋重合体(A)と水からなる含水ゲルと、含窒素化合物(B)とを混合する方法が含まれる。
【0034】
含窒素化合物(B)の使用量(重量%)(水等の溶媒を含まない量)は、架橋重合体(A)及び含窒素化合物(B)の重量に基づいて、ムレの発生の観点から、5〜40であり、好ましくは10〜20である。
【0035】
架橋重合体(A)と水からなる含水ゲルを使用する場合、この含水ゲルは、必要に応じて細断してから使用してもよい。細断する場合、細断後のゲルの大きさ(最長径)は、ゲルの乾燥性の観点から、50μm〜10cmが好ましく、さらに好ましくは100μm〜2cm、特に好ましくは1mm〜1cmである。
【0036】
細断は、公知の方法で行うことができ、通常の細断装置{たとえば、ベックスミル、ラバーチョッパ、ファーマミル、ミンチ機、衝撃式粉砕機及びロール式粉砕機}等を使用して細断できる。
【0037】
架橋重合体(A)は1種でもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
【0038】
架橋重合体(A)の使用量(重量%)は、架橋重合体(A)及び含窒素化合物(B)の重量に基づいて、60〜95であり、好ましくは80〜90である。この範囲であると、ムレの発生がさらに良好となる。
【0039】
架橋重合体(A)と含窒素化合物(B)との混合装置としては、公知の装置{双腕型ニーダー、インターナルミキサー(バンバリーミキサー)、セルフクリーニング型ミキサー、ギアコンパウンダー、スクリュー型押し出し機、スクリュー型ニーダー、粉砕型ニーダー、ミンチ機、円筒型混合機、V字型混合機、リボン型混合機、スクリュー型混合機、双腕型混合機、溝型混合機、鋤型混合機、タービュライザー、ナウター型混合機、流動式混合機、気流型混合機、回転円盤型混合機、コニカルブレンダー及びロールミキサー等}が使用できる。これらは複数個を組み合わせて使用できる。
【0040】
架橋重合体(A)と含窒素化合物(B)との混合温度(℃)は、0〜150が好ましく、さらに好ましくは5〜130、特に好ましくは10〜100である。この範囲であると、さらに均一混合しやすくなり、吸収性能がさらに良好となる。
【0041】
<工程(2)>
水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解性ビニルモノマー(a2)並びに架橋剤(a3)を必須構成単量体(a)とする単量体と、含窒素化合物(B)との混合は、均一混合できれば方法に制限はなく、公知の方法で行うことができる。
【0042】
単量体と含窒素化合物(B)との混合装置としては、公知の装置{双腕型ニーダー、インターナルミキサー(バンバリーミキサー)、セルフクリーニング型ミキサー、ギアコンパウンダー、スクリュー型押し出し機、スクリュー型ニーダー、粉砕型ニーダー、ミンチ機、円筒型混合機、V字型混合機、リボン型混合機、スクリュー型混合機、双腕型混合機、溝型混合機、鋤型混合機、タービュライザー、ナウター型混合機、流動式混合機、気流型混合機、回転円盤型混合機、コニカルブレンダー及びロールミキサー等}等が使用できる。これらは複数個を組み合わせてもよい。
【0043】
含窒素化合物(B)の使用量(重量%)は、必須構成単量体(a)及び含窒素化合物(B)の重量に基づいて、ムレの発生の観点から、5〜40が好ましく、さらに好ましくは10〜20である。
【0044】
必須構成単量体(a)の使用量(重量%)は、必須構成単量体(a)及び含窒素化合物(B)の重量に基づいて、ムレの発生の観点から、60〜95が好ましく、さらに好ましくは80〜90である。
【0045】
単量体と含窒素化合物(B)との混合温度(℃)は、0〜150が好ましく、さらに好ましくは5〜130、特に好ましくは10〜100である。この範囲であると、さらに均一混合しやすくなり、吸収性能がさらに良好となる。
【0046】
含窒素化合物(B)と混合した後、水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解性ビニルモノマー(a2)並びに架橋剤(a3)を必須構成単量体(a)とする単量体を共重合する方法としては、公知の水溶液重合{断熱重合、薄膜重合及び噴霧重合法等;特開昭55−133413号等}や、公知の逆相懸濁重合{特公昭54−30710号、特開昭56−26909号及び特開平1−5808号等}と同様にしてできる。
【0047】
工程(1)又は(2)で得た架橋重合体/含窒素化合物複合体ゲル(A/B)は、後処理により吸収性樹脂粒子を導くことができる。
後処理としては、細断、溶媒留去(乾燥)、粉砕、粒度調節、表面架橋及び添加剤の混合等が含まれる。これらの後処理は組み合わせて行ってもよいし、いずれか一つだけ行ってもよい。また、後処理の順番に制限はなく、適宜決定されるが、吸収性能の観点から、上記の順序が好ましい。なお、これらの後処理のうち、吸収性能の観点から、乾燥を含むことが好ましい。また、水溶液重合を採用する場合、吸収性能の観点から、さらに、粉砕を含むことが好ましい。
【0048】
<細断>
細断は、公知の方法で行うことができ、公知の細断装置{たとえば、ベックスミル、ラバーチョッパ、ファーマミル、ミンチ機、衝撃式粉砕機及びロール式粉砕機}等を使用して細断できる。
【0049】
細断する場合、細断後の複合体ゲル(A/B)の大きさ(最長径)は、50μm〜10cmが好ましく、さらに好ましくは100μm〜2cm、特に好ましくは1mm〜1cmである。この範囲であると、さらに取り扱いしやすくなることの他に、この後に溶媒を留去する場合、溶媒をさらに留去しやすくなり、また、その後に粉砕する場合、さらに粉砕しやすくなる。
【0050】
<溶媒留去(乾燥)>
工程(1)又は(2)において、溶媒(有機溶媒及び水等)を使用した場合、吸収性能の観点から、この溶媒を留去することが好ましい。
溶媒に有機溶媒を含む場合、留去後の有機溶媒の含有量(重量%)は、吸収性樹脂粒子の重量に基づいて、0〜10が好ましく、さらに好ましくは0〜5、特に好ましくは0〜3、最も好ましくは0〜1である。この範囲であると、吸収性能がさらに良好となる。
【0051】
溶媒に水を含む場合、留去後の水分(重量%)は、吸収性樹脂粒子の重量に基づいて、0〜25が好ましく、さらに好ましくは1〜20、特に好ましくは2〜17、最も好ましくは3〜15である。この範囲であると、吸収性能及び吸収性樹脂粒子の耐壊れ性がさらに良好
となる。
【0052】
なお、有機溶媒の含有量及び水分は、赤外水分測定器{株式会社ケット科学研究所製JE400等:120±5℃、30分、加熱前の雰囲気湿度50±10%RH、ランプ仕様100V、40W}により加熱したときの加熱前後の測定試料の重量減量から求められる。
【0053】
溶媒(水を含む。)を留去する方法としては、80〜230℃の温度の熱風で留去(乾燥)する方法、100〜230℃に加熱されたドラムドライヤー等による薄膜乾燥法、(加熱)減圧乾燥法、凍結乾燥法及び赤外線による乾燥法等が適用できる。
なお、溶媒留去に先立ち、デカンテーション、遠心分離及び濾過等により、溶媒を除くことができる。
【0054】
<粉砕>
粉砕は吸収性能の観点から、溶媒を留去した後に行うことが好ましい。
粉砕方法は特に限定がなく、公知の粉砕装置{たとえば、ハンマー式粉砕機、衝撃式粉砕機、ロール式粉砕機及びジェット気流式粉砕機}等により粉砕できる。
【0055】
<粒度調節>
粉砕された粒子は、必要によりふるい分け等により粒度調節される。
粉砕された粒子の重量平均粒子径(μm)は、100〜800が好ましく、さらに好ましくは200〜500、特に好ましくは350〜450である。この範囲であると、吸収性能がさらに良好となる。したがって、この範囲になるように粒度調節することが好ましい。
【0056】
また、微粒子の含有量は少ない方が吸収性能が良好となるため、全粒子に占める106μm以下(好ましくは150μm以下)の微粒子の含有量は3重量%以下が好ましく、さらに好ましくは1重量%以下である。微粒子の含有量は、上記の重量平均粒径を求める際に作成するプロットを用いて求めることができる。
【0057】
<表面架橋>
裁断された細断ゲル又は粉砕された粒子は、必要に応じて、表面架橋剤により表面架橋処理を行うことができる。
表面架橋剤としては、公知{たとえば、特開昭59−189103号、特開昭58−180233号、特開昭61−16903号、特開昭61−211305号、特開昭61−252212号、特開昭51−136588号及び特開昭61−257235号等}の表面架橋剤{多価グリシジル、多価アルコール、多価アミン、多価アジリジン、多価イソシアネート、シランカップリング剤及び多価金属等}等が使用できる。これらの表面架橋剤のうち、経済性及び吸収性能の観点から、多価グリシジル、多価アルコール及び多価アミンが好ましく、さらに好ましくは多価グリシジル及び多価アルコール、特に好ましくは多価グリシジル、最も好ましくはエチレングリコールジグリシジルエーテルである。
【0058】
表面架橋をする場合、表面架橋剤の使用量(重量%)は、表面架橋剤の種類、架橋の条件、目標とする性能等により種々変化させることができるため特に限定はないが、吸収性能の観点等から、必須構成単量体(a)の重量に基づいて、0.001〜3が好ましく、さらに好ましくは0.005〜2、特に好ましくは0.01〜1である。
【0059】
表面架橋をする場合、表面架橋方法は、公知{たとえば、特許第3648553号、特開2003−165883号、特開2005−75982号、特開2005−95759号}の方法が適用できる。
【0060】
<添加剤の混合>
細断ゲル、乾燥粒子、粉砕粒子又は表面架橋粒子等には、他の添加剤{たとえば、公知(特開2003−225565号、特開2006−131767号等)の防腐剤、防かび剤、抗菌剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、芳香剤、消臭剤、無機質粉末及び有機質繊維状物等}を混合することができる。
他の添加剤を混合する場合、均一混合できれば混合方法に制限はなく、公知の混合方法が適用できる。
【0061】
他の添加剤の含有量(重量%)は、(A)及び(B)の合計重量に基づいて、10以下が好ましく、さらに好ましくは8以下であり、次に好ましくは5以下であり、特に好ましくは3以下であり、最も好ましくは1以下である。この範囲であると、吸収性能が良好となる。
【0062】
本発明の吸収性樹脂粒子の形状については特に限定はなく、不定形破砕状、リン片状、パール状及び米粒状等が挙げられる。これらのうち、紙おむつ等に適用したとき、繊維状物とのからみが良く、繊維状物からの脱落の心配がないという観点及び吸収性能の観点から、不定形破砕状及びパール状が好ましい。
【0063】
必要によりふるい分けした場合の本発明の吸収性樹脂粒子の重量平均粒子径(μm)は、100〜800が好ましく、さらに好ましくは200〜700、次に好ましくは250〜600、特に好ましくは300〜500、最も好ましくは350〜450である。この範囲であると、吸収性能がさらに良好となる。
【0064】
本発明の吸収性樹脂粒子の見掛け密度(g/ml)は、0.54〜0.70が好ましく、さらに好ましくは0.56〜0.65、特に好ましくは0.58〜0.63である。この範囲であると、吸収性能がさらに良好となる。なお、見掛け密度は、JIS K7365:1999に準拠して、25℃で測定される。
【0065】
本発明の吸収性樹脂粒子は、各種の吸収体に適用することにより、吸収性能に優れた吸収性物品を製造し得る。吸収体及び吸収性物品は、公知{例えば特開2003−225565号、特開2006−131767号及び特開2005−097569号等、特開2005−186016号公報}の方法等により製造される。
吸収性物品としては、衛生用品{紙おむつ(子供用紙おむつ及び大人用紙おむつ等)、ナプキン(生理用ナプキン等)、嘔吐物吸収用エチケット袋、紙タオル、パッド(失禁者用パット及び手術用アンダーパット等)及びペットシート(ペット尿吸収シート及び保温シート等)等}、及び各種の家庭用及び産業用の吸収シート{鮮度保持シート、ドリップ吸収シート、水稲育苗シート、コンクリート養生シート及びケーブル等の水走り防止シート等}が含まれる。
これらのうち、本発明の吸収性樹脂粒子は吸収性能の観点から衛生用品に好適であり、さらに紙おむつ、パッド及び生理用ナプキン、特に紙おむつ及び生理用ナプキンに適している。
【実施例】
【0066】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定され
るものではない。以下、特記しない限り、部は重量部を、%は重量%を示す。
【0067】
<製造例1>
容量1リットルのガラス製反応容器にアクリル酸ナトリウム77g、アクリル酸22.7g、N,N’−メチレンビスアクリルアミド0.3gおよび脱イオン水295gを仕込み、攪拌、混合しながら内容物の温度を3℃に保った。内容物に窒素を流入して溶存酸素量を1ppm以下とした後、過酸化水素の1%水溶液1g、アスコルビン酸の0.2%水溶液1.2gおよび2,2’−アゾビスアミジノプロパンジハイドロクロライドの2%水溶液2.8gを添加・混合して重合を開始させ、約5時間重合することにより含水ゲル状重合体(A1)を得た。
【0068】
<製造例2>
容量1リットルのガラス製反応容器にアクリル酸ナトリウム77g、アクリル酸22.7g、N,N’−メチレンビスアクリルアミド0.3g、尿素5.26gおよび脱イオン水295gを仕込み、攪拌、混合しながら内容物の温度を3℃に保った。内容物に窒素を流入して溶存酸素量を1ppm以下とした後、過酸化水素の1%水溶液1g、アスコルビン酸の0.2%水溶液1.2gおよび2,2’−アゾビスアミジノプロパンジハイドロクロライドの2%水溶液2.8gを添加・混合して重合を開始させ、約5時間重合することにより含水ゲル状重合体(A2)を得た。
【0069】
<実施例1>
製造例1で得られた含水ゲル重合体(A1)に尿素を5.26g添加し、さらにインターナルミキサーで均一に混合した後、150℃、風速2.0m/秒の条件の通気型バンド乾燥機(井上金属工業製)で乾燥した。得られた乾燥物を粉砕し、30〜60メッシュの粒度に調整して吸水剤を得た。この吸水剤100gを高速攪拌しながらエチレングリコールジグリシジルエーテルの10%水/メタノール混合溶液(水/メタノール=70/30)を2g加えて混合した後、140℃で30分間加熱架橋することで表面架橋型の吸収性樹脂粒子(1)を得た。
【0070】
<実施例2>
「尿素を5.26g添加」を「尿素を11.11g添加」に変更したこと以外、実施例1と同様にして吸収性樹脂粒子(2)を得た。
【0071】
<実施例3>
「尿素を5.26g添加」を「尿素を25g添加」に変更したこと以外、実施例1と同様にして吸収性樹脂粒子(3)を得た。
【0072】
<実施例4>
「尿素を5.26g添加」を「尿素を66.67g添加」に変更したこと以外、実施例1と同様にして吸収性樹脂粒子(4)を得た。
【0073】
<実施例5>
製造例2で得られた含水ゲル重合体(A2)をインターナルミキサーで3〜7mmの大きさに細断後に、150℃、風速2.0m/秒の条件の通気型バンド乾燥機で乾燥した。 得られた乾燥物を粉砕し、30〜60メッシュの粒度に調整して吸水剤を得た。この吸水剤100gを高速攪拌しながらエチレングリコールジグリシジルエーテルの10%水/メタノール混合溶液(水/メタノール=70/30)を2g加えて混合した後、140℃で30分間加熱架橋することで表面架橋型の吸収性樹脂粒子(5)を得た。
【0074】
<比較例1>
製造例1で得られた含水ゲル状重合体(HA1)をインターナルミキサーで3〜7mmの大きさに細断後に、150℃、風速2.0m/秒の条件の通気型バンド乾燥機で乾燥した。 得られた乾燥物を粉砕し、30〜60メッシュの粒度に調整して吸水剤を得た。この吸水剤100gを高速攪拌しながらエチレングリコールジグリシジルエーテルの10%水/メタノール混合溶液(水/メタノール=70/30)を2g加えて混合した後、140℃で30分間加熱架橋することで表面架橋型の比較の吸収性樹脂粒子(H1)を得た。なお、本比較例1は、特開2002−282687号公報の比較例2に相当する物である。
【0075】
<比較例2>
製造例1で得られた含水ゲル状重合体(A1)をインターナルミキサーで3〜7mmの大きさに細断後に、尿素(B)を5g添加し、さらにインターナルミキサーで均一に混合したこと以外は実施例1と同様にして吸収性樹脂粒子(H2)を得た。なお、本比較例2は、特開2002−282687号公報の実施例5に相当する物である。

【0076】
実施例1〜5及び比較例1及び2で得た吸収性樹脂粒子を用いて、以下のようにして、吸収体及び吸収性物品(紙おむつ)を調製し、吸収時間および湿度上昇率(ムレの指標)を評価し、この結果を表2に示した。
【0077】
<吸収性物品(紙おむつ)の調製>
フラッフパルプ50部と評価試料{吸収性樹脂粒子}50部とを気流型混合装置{株式会社オーテック社製パッドフォーマー}で混合して、混合物を得た後、この混合物を坪量約500g/m2となるように均一にアクリル板(厚み4mm)上に積層し、5Kg/cm2の圧力で30秒間プレスし、吸収体を得た。この吸収体を10cm×40cmの長方形に裁断し、各々の上下に吸収体と同じ大きさの吸水紙(坪量15.5g/m2、アドバンテック社製、フィルターペーパー2番)を配置し、さらにポリエチレンシート(タマポリ社製ポリエチレンフィルムUB−1)を裏面に、不織布(坪量20g/m2、旭化成社製エルタスガード)を表面に配置することにより紙おむつを調製した。
【0078】
<吸収時間測定法>
測定する紙おむつの中央に金属リング(内径70mm、長さ50mm)をセットし、生理食塩水100mlを注入し、注入してから生理食塩水を吸収し終えるまで{生理食塩水による光沢が確認できなくなるまで}の時間(秒)を測定する。なお、生理食塩水、測定雰囲気は、25±3℃、65±5%RHで行った。
<湿度上昇率測定法:ムレ評価>
オートドライデシケーター(AZ ONE社製:UVOH400SA)内の湿度を36±1%(T0)、温度を28±1℃に調整する。上記吸収時間測定法で紙おむつの吸収時間を測定した後、そのまますぐに紙おむつをオートドライデシケーター内に入れ、蓋を閉めて密閉にし、湿度制御装置を停止し、紙おむつをオートドライデシケーターに入れてから15分後の湿度(T1)を測定する。なお、紙おむつは湿度計の近くの横に置き、湿度上昇率は下記式にて求める。
【0079】
(T1−T0)/T0 = 湿度上昇率
【0080】
【表1】

【0081】
表1から判るように、本発明の吸収性樹脂粒子を使用した吸収性物品は、比較用の吸収性樹脂粒子を使用した吸収性物品に比べ、湿度上昇率が低くムレ防止に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の吸収性樹脂粒子は、吸収性樹脂粒子と繊維状物とを含有してなる吸収体に適用
でき、この吸収体を備えてなる吸収性物品{紙おむつ、生理用ナプキン及び医療用保血剤
等}に有用である。また、ペット尿吸収剤、携帯トイレ用尿ゲル化剤、青果物用鮮度保持
剤、肉類・魚介類用ドリップ吸収剤、保冷剤、使い捨てカイロ、電池用ゲル化剤、植物・
土壌用保水剤、結露防止剤、止水剤、パッキング剤及び人工雪等の種々の用途にも使用で
きる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解性ビニルモノマー(a2)並びに架橋剤(a3)を必須構成単位とする架橋重合体(A)と、一般式(1)で表される含窒素化合物(B)とを含み、(A)及び(B)の合計重量に基づく(B)の含有量が5〜40重量%である吸収性樹脂粒子。
【化1】

[一般式(1)中のR〜Rは、水素、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトリル基、アルキル基、アルケニル基又はアリール基を表す。アルキル基、アルケニル基又はアリール基は、それらの基の水素原子がヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、ニトリル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい。]
【請求項2】
水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解性ビニルモノマー(a2)並びに架橋剤(a3)を必須構成単量体(a)とする単量体を共重合して得られる架橋重合体(A)と含窒素化合物(B)とを混合して架橋重合体/含窒素化合物複合体ゲル(A/B)を得る工程(1);又は
水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解性ビニルモノマー(a2)並びに架橋剤(a3)を必須構成単量体(a)とする単量体と、含窒素化合物(B)とを混合して得られる混合物を共重合して架橋重合体/含窒素化合物複合体ゲル(A/B)を得る工程(2)
を含んでなり、(A)及び(B)の合計重量に基づいて、(B)の使用量が5〜40重量%である吸収性樹脂粒子の製造方法。
【請求項3】
含窒素化合物(B)が固体状である請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の吸収性樹脂粒子を含有する吸収体。
【請求項5】
請求項4に記載の吸収体を用いた吸収性物品。


【公開番号】特開2012−62420(P2012−62420A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208795(P2010−208795)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(301023009)サンダイヤポリマー株式会社 (57)
【Fターム(参考)】