説明

吸収性物品用エンボスロール

【課題】エンボスパターン変更が任意に行え、かつエンボス形成用凸部の一部摩耗や一部欠損などに柔軟に対処できるようにした吸収性物品用エンボスロールを提供する。
【解決手段】ロール基軸2と、このロール基軸2に外嵌されるとともに、周面部に種々のパターンでエンボス形成用凸部3a、3a…が形成された多数のエンボス形成用リング材3,3…とからなり、前記エンボス形成用リング材3,3…の任意の組合せにより、所要のエンボスパターンを構成可能とする。前記ロール基軸2に外嵌された多数のエンボス形成用リング材3,3…は、前記ロール基軸2の両側面に固定され、前記エンボス形成用リング材3,3…群を挟着する左右一対の側板4,4と、前記エンボス形成用リング材3の周辺部に形成されたボルト通孔3f〜3iに挿通された1又は複数の通しボルト5とによって固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙おむつ、ナプキン、パンティライナー、失禁パッド等の吸収性物品の表面側(肌当接面側)にエンボス溝を形成するためのエンボスロールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、使い捨て紙おむつ、生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド等の吸収性物品として、ポリエチレンシート又はポリエチレンラミネート不織布などの不透液性シートと、不織布または透孔性プラスチックシートなどの透液性表面シートとの間に綿状パルプ等からなる吸収体を介在したものが知られている。
【0003】
この種の吸収性物品にも幾多の改良が重ねられ、体液漏れ等を防止するための手段が種々講じられている。例えば、幅方向及び/又は前後方向への体液の拡散を防止するとともに、吸収体のヨレを防止し、かつ吸収体中央部を隆起させて局部への密着性を向上させるなどの目的で、表面側にエンボスロールによってエンボス溝を形成する技術が存在する。
【0004】
例えば、下記特許文献1では、生理用ナプキンの透液性表面シート面側に略長手方向に沿う方向に長手方向中心線を跨いで左右一対の縦方向エンボス溝が形成されるとともに、略幅方向に沿う方向に平面視で円弧状の幅方向エンボス溝が形成された吸収性物品が開示されている。
【0005】
また、下記特許文献2では、透液性の表面シートと液不透過性の裏面シートの間に液保持性の吸収層を介在させてなる吸収性物品において、肌当接面に、立体形状からなる突設部を形成させると共に、該突設部の外周囲に凹部(エンボス溝)を形成させてなる吸収性物品が開示されている。
【0006】
前記エンボス溝を形成するには、図7に示されるように、表面にエンボス成形用凸部52が形成されたエンボスロール50とアンビルロール51とからなるエンボス加工装置を用い、図8に示されるように、吸収性物品の製造過程において、裏面側シート(クレープ紙又は防水紙等)、吸収体および透液性表面シートを積層させた状態で、所定温度に加熱されたエンボスロール50とアンビルロール51との間を通過させ、前記エンボスロール50に形成されたエンボス成形用凸部52による圧搾によって形成される(上記特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−119540号公報
【特許文献2】特開平11−33054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記エンボスロール50のエンボス形成用凸部52は、ロールに対する直接的な彫り込みによって形成されたものであり、以下に示すような問題があった。
(1)吸収性物品のエンボスパターンの仕様変更の度に、エンボスロールを製作し直すことになり、費用が嵩むとともに、製作にも時間が掛かるため、パターン変更に迅速に対応できない。
(2)エンボスロールに形成されたエンボス形成用凸部には経時的に摩耗が生じるが、その摩耗はごく限られた部位で生じるにも拘わらず、その摩耗が進行すると、エンボスロール全体を製作し直す必要があった。また、エンボス形成用凸部の一部に欠損が生じた場合も、その一部補修は困難で、エンボスロール全体を製作し直す必要があった。
(3)開発段階では設計したエンボス溝の効果を検証するために試作品の製作が行われるが、エンボス溝パターン毎に、或いは若干の仕様変更であってもエンボスロールを製作する必要があり、経費的無駄が多かった。
【0008】
そこで本発明の主たる課題は、エンボスパターン変更が任意に行え、かつエンボス形成用凸部の一部摩耗や一部欠損などに柔軟に対処できるようにした吸収性物品用エンボスロールを提供することになる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、ロール基軸と、このロール基軸に外嵌されるとともに、周面部にエンボス形成用凸部が形成された多数のエンボス形成用リング材とからなり、前記エンボス形成用リング材の任意の組合せにより、所要のエンボスパターンを構成可能としたことを特徴とする吸収性物品用エンボスロールが提供される。
【0010】
上記請求項1記載の発明においては、エンボスロールを、ロール基軸と、このロール基軸に外嵌されるとともに、周面部に種々のパターンでエンボス形成用凸部が形成された多数のエンボス形成用リング材とから構成するようにした。従って、前記エンボス形成用リング材の任意の組合せにより、所要のエンボスパターンが構成可能となる。また、エンボス形成用凸部の一部摩耗や一部欠損があっても、当該摩耗や欠損の生じたエンボス形成用リング材のみを交換すれば良いためエンボスロールを新たに製作し直す経費的無駄を削減できるようになる。
【0011】
請求項2に係る本発明として、前記ロール基軸に外嵌された多数のエンボス形成用リング材は、前記ロール基軸の両側面に固定され、前記エンボス形成用リング材群を挟着する左右一対の側板と、前記エンボス形成用リング材の周辺部に形成されたボルト通孔に挿通された1又は複数の通しボルトとによって固定されている請求項1記載の吸収性物品用エンボスロールが提供される。
【0012】
請求項3に係る本発明として、前記ロール基軸の外周面には母線方向に沿って多数の加工溝が形成されるとともに、前記エンボス形成用リング材のロール基軸挿通孔の周縁に多数の加工溝が形成され、前記ロール基軸に外嵌された多数のエンボス形成用リング材は、前記ロール基軸の両側面にボルト固定され、前記エンボス形成用リング材群を挟着する左右一対の側板と、前記加工溝同士の噛み合いにより固定されている請求項1記載の吸収性物品用エンボスロールが提供される。
【0013】
請求項4に係る本発明として、前記ロール基軸の周面に半径方向に沿って多数の雌ネジ孔が形成されるとともに、前記エンボス形成用リング材に半径方向に沿って多数の貫通孔が形成され、前記ロール基軸に外嵌された各エンボス形成用リング材は、前記貫通孔を通してロール基軸の雌ネジ孔に螺入されたタップボルトによって固定されている請求項1記載の吸収性物品用エンボスロールが提供される。
【0014】
上記請求項2〜4記載の発明は、ロール基軸に外嵌されたエンボス形成用リング材群の固定構造を列挙したものであり、これらの固定構造を採用することにより、前記エンボス形成用リング材をがたつかせることなく、かつ周方向に位置ズレさせることなく、ロール基軸に対して堅固に固定することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上詳説のとおり本発明によれば、多数用意されたエンボス形成用リング材からの任意の組合せにより、所要のエンボスパターンを構成することができるため、エンボスパターン変更が任意に行えるようになるとともに、エンボス形成用凸部の一部に摩耗が生じた場合や一部に欠損が生じた場合には、当該不良箇所のエンボス形成用リング材のみを交換すればよいため、エンボスロールを製作し直すことなく、これらの問題に柔軟に対処できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
〔第1形態例〕
図1は第1形態例に係るエンボスロール1Aの分解斜視図であり、図2はその組立て状態を示す正面図である。
【0017】
エンボスロール1Aは、ロール基軸2と、このロール基軸2に外嵌されるとともに、周面部に種々のパターンで1又は複数のエンボス形成用凸部3a、3a…が形成された多数のエンボス形成用リング材3,3…とから構成される。
【0018】
前記ロール基軸2は、ロール本体2Aと、その両側面に夫々設けられた回転軸2B、2Bとから構成される部材で、前記ロール本体2Aはエンボス形成ロール1Aの幅と同寸法の軸長とされ、その端面には周方向に適宜の間隔でタップ雌ネジ孔2a、2a…が形成されている。
【0019】
一方、前記エンボス形成用リング材3は、薄肉のリング板とされ、周面部には任意箇所に1又は複数の、図示例では4箇所にエンボス形成用凸部3a、3a…が形成されている。このエンボス形成用凸部3a、3a…は、エンボスロール1Aが1回転する間に、ラインを流れる2つの吸収性物品に対してエンボスを付与する構成となっているため、4つのエンボス形成用凸部3a、3a…の内、2づつがぞれぞれ組となる。
【0020】
また、前記エンボス形成用リング材3の中央には、ロール基軸2が挿通されるロール基軸挿通孔3bが形成されるとともに、周辺部には後述するように、前記ロール基軸2に外嵌された多数のエンボス形成用リング材3,3…群を固定するために、前記ロール基軸挿通孔3bと周面部との間に、周方向に沿って複数の、図示例では4つの円弧状のボルト通孔3f〜3iが形成されている。
【0021】
前記エンボス形成用リング材3は、前記エンボス形成用凸部3a、3a…の数、周方向長さ、配置位置等を種々変えたものが予め多数用意されており、多数のエンボス形成用リング材3,3…群からの任意の組合せにより、所要のエンボスパターンを構成可能とする。
【0022】
組立ては、図2に示されるように、エンボス形成用凸部3a、3a…の配置が所望のエンボスパターンとなるようにエンボス形成用リング材3,3…を組み合わせながら、前記ロール基軸2に外嵌させたならば、前記ロール基軸2の側面に夫々側板4,4を夫々配設し、側板4を貫通してロール基軸2のタップ雌ネジ孔2aに向けてタップボルト7、7…を螺入し前記側板4,4を固定することにより前記エンボス形成用リング材3,3…群を挟着する。また、エンボス形成用リング材群3,3…のボルト通孔3f〜3iに通しボルト5、5…を挿通し、ナット6によって締結することにより、各エンボス形成リング材3,3…をがたつかせること無く、かつ周方向に位置ズレしないように堅固に固定を図る。
【0023】
〔第2形態例〕
図3は第2形態例に係るエンボスロール1Bの分解斜視図であり、図4はその組立て状態を示す正面図である。
エンボスロール1Bは、ロール基軸2と、このロール基軸2に外嵌されるとともに、周面部に種々のパターンで1又は複数のエンボス形成用凸部3a、3a…が形成された多数のエンボス形成用リング材3,3…から構成される点は上記第1形態例と同様である。本第2形態例では、ロール基軸2に対するエンボス形成用リング材3,3…の固定態様が異なる。
【0024】
具体的には、図3に示されるように、ロール基軸2の外周面に母線方向に沿って多数のギア状の加工溝2b、2b…を形成するとともに、エンボス形成用リング材3については、第1形態例のように円弧状のボルト通孔3f〜3iを形成することなく、ロール基軸挿通孔3bの周縁に多数のギア状の加工溝3j、3j…を形成する。なお、第1形態例と同様の部分については同符合を付して説明を省略する。
【0025】
組立ては、図4に示されるように、エンボス形成用凸部3a、3a…の配置が所望のエンボスパターンとなるようにエンボス形成用リング材3,3…を組み合わせながら、前記ロール基軸2に外嵌させたならば、前記ロール基軸2の側面に夫々側板4,4を夫々配設し、側板4を貫通してロール基軸2のタップ雌ネジ孔2aに向けてタップボルト7、7…を螺入し前記側板4,4を固定することにより前記エンボス形成用リング材3,3…群を挟着する。また、ロール基軸2に形成した加工溝2b、2b…と、前記エンボス形成用リング材3に形成した加工溝3j、3j…との噛み合いにより、前記エンボス形成用リング材3の周方向の位置ズレが確実に防止される。
【0026】
〔第3形態例〕
図5は第3形態例に係るエンボスロール1Cの分解斜視図であり、図6はその組立て状態を示す正面図である。
吸収性物品用エンボスロール1Cは、ロール基軸2と、このロール基軸2に外嵌されるとともに、周面部に種々のパターンでエンボス形成用凸部8a、8a…が形成された多数のエンボス形成用リング材3,3…から構成される点は上記第1、2形態例と同様である。
【0027】
前記ロール基軸2は、ロール本体2Aと、その両側面に夫々設けられた回転軸2B、2Bとから構成される部材で、前記ロール本体2Aはエンボス形成ロール1の幅と同寸法の軸長とされ、前記ロール基軸2の周面には半径方向に沿って多数の雌ネジ孔2c、2c…が形成されている。
【0028】
一方、エンボス形成用リング材3は、第1形態例及び第2形態例に係るエンボス形成用リング材に比べると、複数枚分の厚みを有するリング材となっている。前記エンボス形成用リング材3の周部には任意箇所に凸状の台座部8A、8Bが形成されており、この台座部8A、8Bの外面には種々のパターンで1又は複数の、図示例では4つのエンボス形成用凸部8a、8a…が形成されているとともに、半径方向に沿って多数の貫通孔3c、3c…が形成されている。
【0029】
前記エンボス形成用リング材3は、前記台座部8A、8Bの長手寸法、その外面に形成されるエンボス形成用凸部8aの数、周方向長さ、配置位置等を種々変えたものが予め多数用意されており、エンボス形成用リング材3,3…群からの任意の組合せにより、所要のエンボスパターンを構成可能とする。
【0030】
組立ては、図6に示されるように、エンボス形成用凸部8a、8a…の配置が所望のエンボスパターンとなるようにエンボス形成用リング材3,3…を組み合わせながら、前記ロール基軸2に外嵌させたならば、エンボス形成用リング材3の貫通孔3cを通してロール基軸2の雌ネジ孔2cにタップボルト9,9…を螺入し固定を図る。なお、タップボルト9はすべての貫通孔3cに設ける必要はなく、少なくとも1箇所以上でボルト固定すれば十分である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1形態例に係るエンボスロール1Aの分解斜視図である。
【図2】その組立て状態を示す正面図である。
【図3】第2形態例に係るエンボスロール1Bの分解斜視図である。
【図4】その組立て状態を示す正面図である。
【図5】第3形態例に係るエンボスロール1Cの分解斜視図である。
【図6】その組立て状態を示す正面図である。
【図7】従来のエンボスロールを示す斜視図である。
【図8】エンボス形成要領を示すライン概略図である。
【符号の説明】
【0032】
1A〜1C…エンボスロール、2…ロール基軸、3…エンボス形成用リング材、3a…エンボス形成用凸部、3b…ロール基軸挿通孔、3c…挿通孔、3j…加工溝、4…側板、5…通しボルト、6…ナット、7…タップボルト、8A・8B…台座部、8a…エンボス形成用凸部、9…タップボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール基軸と、このロール基軸に外嵌されるとともに、周面部に種々のパターンでエンボス形成用凸部が形成された多数のエンボス形成用リング材とからなり、前記エンボス形成用リング材の任意の組合せにより、所要のエンボスパターンを構成可能としたことを特徴とする吸収性物品用エンボスロール。
【請求項2】
前記ロール基軸に外嵌された多数のエンボス形成用リング材は、前記ロール基軸の両側面に固定され、前記エンボス形成用リング材群を挟着する左右一対の側板と、前記エンボス形成用リング材の周辺部に形成されたボルト通孔に挿通された1又は複数の通しボルトとによって固定されている請求項1記載の吸収性物品用エンボスロール。
【請求項3】
前記ロール基軸の外周面には母線方向に沿って多数の加工溝が形成されるとともに、前記エンボス形成用リング材のロール基軸挿通孔の周縁に多数の加工溝が形成され、前記ロール基軸に外嵌された多数のエンボス形成用リング材は、前記ロール基軸の両側面にボルト固定され、前記エンボス形成用リング材群を挟着する左右一対の側板と、前記加工溝同士の噛み合いにより固定されている請求項1記載の吸収性物品用エンボスロール。
【請求項4】
前記ロール基軸の周面に半径方向に沿って多数の雌ネジ孔が形成されるとともに、前記エンボス形成用リング材に半径方向に沿って多数の貫通孔が形成され、前記ロール基軸に外嵌された各エンボス形成用リング材は、前記貫通孔を通してロール基軸の雌ネジ孔に螺入されたタップボルトによって固定されている請求項1記載の吸収性物品用エンボスロール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−89825(P2007−89825A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−283239(P2005−283239)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】