説明

吸水剤及びその製造方法

【課題】蓄光剤との相乗効果を高めうる吸水剤の提供。
【解決手段】本発明の吸水剤は、エチレン性不飽和単量体を重合させて得られる吸水性樹脂と蓄光剤とを含む。吸水剤の含水率は、30質量%以下である。好ましくは、上記エチレン性不飽和単量体が、アクリル酸及び/又はアクリル酸塩を30モル%以上含有する。この吸水剤は、多価金属塩、多価アルコール及び界面活性剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む。好ましくは、1面体以上12面体以下の形状を有する粒子が吸水剤の全質量に対して50質量%以上100質量%以下である。好ましくは、上記蓄光剤が、MAlで示される化合物である。ただし、Mはカルシウム、ストロンチウム及びバリウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
暗所において発光しうる材料として、蓄光剤が知られている。例えば特開平2005−287570公報は、蓄光剤を含む水性蛍光芳香消臭剤組成物を開示する。一方、吸水剤は、その特性を活かしうる様々な用途に用いられている。蓄光剤と組み合わされたゲル状発光消臭剤が、特開平6−39023号に開示されている。このゲル状発光消臭剤は、吸水性樹脂を含む。このゲル状発光消臭剤は、消臭作用を奏すると同時に、暗所でも消臭剤の位置が識別しやすい。
【特許文献1】特開2005−287570公報
【特許文献2】特開平6−39023号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特開平6−39023号に記載されているゲル状発光消臭剤は、暗い中でも見えるようにする目的で単に蓄光剤を用いたにすぎない。このゲル状発光消臭剤の用途は、単なる消臭剤にすぎない。この用途は、限定的である。本発明者は、吸水性樹脂と蓄光剤との相乗効果を高めうる新たな技術思想を見出した。更に、本発明者は、特開平6−39023号に記載されたゲル状発光消臭剤が有する問題点を見出した。このゲル状発光消臭剤においては、蓄光剤の付着が不均一となりやすいことが判明した。この原因として、蓄光剤の比重が大きいことが考えられる。汎用されている蓄光剤は、水に不溶である。また比重の大きな蓄光剤は、水中において沈降しやすい。特開平6−39023号に記載された製造方法では、水中で蓄光剤を混合しているため、蓄光剤の付着が不均一となりやすい。
【0004】
本発明は、従来技術とは異なる全く新たな技術思想に基づき、蓄光剤を含む吸水剤の新たな発明を見出した。本発明は、従来技術では奏し得なかった異質な効果を有している。
【0005】
本発明の目的は、蓄光剤との相乗効果を高めうる吸水剤の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る吸水剤は、エチレン性不飽和単量体を重合させて得られる吸水性樹脂と蓄光剤とを必須成分として含む。更にこの吸水剤は、その他の成分として無機粒子を含んでいても良い。この吸水剤の含水率は、30質量%以下である。この吸水剤は、膨潤度合いを変えることにより、暗所における発光状態を様々に変更しうる自由度を有する。この吸水剤は、膨潤させる液体の色を変えることにより、明所と暗所とで異なる色とすることができる。低い含水率により、吸水剤の硬度が硬くされうる。硬い吸水剤は、形状保持性が高い。後述のような略多面体形状とされた場合、形状保持性は特に重要となる。含水率が低い吸水剤は、略多面体形状とされた粒子のエッジ部分の変形や欠けが生じにくい。
【0007】
好ましくは、上記エチレン性不飽和単量体は、アクリル酸及び/又はアクリル酸塩を30モル%以上含有する。これにより、吸水倍率等の性能が高い吸水剤が得られうる。
【0008】
好ましくは、上記吸水剤は、多価金属塩、多価アルコール及び界面活性剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む。多価金属塩、多価アルコール及び界面活性剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種は、蓄光剤の定着性を高めるのに寄与しうる。この配合により、吸水剤の製造工程において、含水ゲル状重合体の切断工程が容易とされうる。
【0009】
好ましくは、上記吸水剤は、1面体以上12面体以下の形状を有する粒子が吸水剤の全質量に対して50質量%以上100質量%以下である。この形状により、比表面積が小さくなるので、吸水剤の単位体積あたりの蓄光剤の配合量を低減させつつ発光度合いを高めることができる。上記好ましい範囲となりやすい。この形状により、発光時における外観が良好となる。
【0010】
好ましくは、上記蓄光剤は、下記式(A)で表される化合物である。
MAl(A)
ただし、式(A)においてMはカルシウム、ストロンチウム及びバリウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素である。この蓄光剤により、残光時間や輝度が向上しうる。
【0011】
本発明に係る芳香剤は、上記に記載された吸水剤を含む。この芳香剤は、外観(ディスプレイ効果)に優れる。
【0012】
本発明に係る吸水剤の製造方法は、アクリル酸及び/又はアクリル酸塩を30モル%以上含有するエチレン性不飽和単量体を重合させ、含水率が40質量%以上である含水ゲル状重合体を得る重合工程と、上記含水ゲル状重合体に蓄光剤が添加される工程と、上記蓄光剤が添加された上記含水ゲル状重合体が乾燥される乾燥工程とを含む。含水率が40質量%以上である含水ゲル状重合体には、蓄光剤が付着しやすい。
【0013】
好ましくは、上記製造方法は、上記乾燥工程後の吸水剤に液体を吸収させる吸液工程を含む。吸液工程により、蓄光剤を有する吸水剤の発光仕様を様々に設定することができる。
【0014】
本発明に係る他の製造方法は、アクリル酸及び/又はアクリル酸塩を30モル%以上含有するエチレン性不飽和単量体を重合させ、含水率が40質量%以上である含水ゲル状重合体を得る重合工程と、上記含水ゲル状重合体が切断される切断工程と、多価金属塩、多価アルコール及び界面活性剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種により上記含水ゲル状重合体の少なくとも一部を被覆する被覆工程と、上記被覆工程後の上記含水ゲル状重合体に蓄光剤を添加する工程とを含む。切断工程により、含水ゲル状重合体が角ばった形状に加工されやすい。角ばった形状の粒子は、発光時において特徴的な外観を呈する。被覆工程により、含水ゲル状重合体同士の付着が抑制され、製造工程が効率化されうる。被覆工程後に蓄光剤が添加されることにより、蓄光剤が含水ゲル状重合体の表面に効率的に付着しうる。
【0015】
本発明に係る他の製造方法は、アクリル酸及び/又はアクリル酸塩を30モル%以上含有するエチレン性不飽和単量体を重合させ、含水率が40質量%である含水ゲル状重合体を得る重合工程と、この含水ゲル状重合体が多価アルコールにより被覆される被覆工程と、上記含水ゲル状重合体が切断される切断工程と、上記含水ゲル状重合体に、多価金属塩と蓄光剤とを同時に添加する工程を含む。多価アルコールにより、切断工程中における含水ゲル状重合体同士の付着が効果的に抑制されうる。多価金属塩は、切断された含水ゲル状重合体同士の付着を効果的に抑制しうる。多価金属塩と蓄光剤とを同時に添加することにより、製造工程を簡略化しつつ蓄光剤の付着効率を高めることができる。
【0016】
本発明に係る他の製造方法は、アクリル酸及び/又はアクリル酸塩を30モル%以上含有するエチレン性不飽和単量体を重合させ、含水率が40質量%以上である含水ゲル状重合体を得る重合工程と、上記含水ゲル状重合体に多価金属塩が付着される工程と、上記含水ゲル状重合体に蓄光剤が添加される工程と、多価金属塩及び蓄光剤の存在下において上記含水ゲル状重合体が加熱乾燥される工程を含む。加熱乾燥工程により、多価金属塩の金属原子と、吸水性樹脂ポリマーの末端のカルボシキル基とが結合する反応が起こりうる。この結合により形成される分子構造は、吸水剤の表面における蓄光剤の定着性を高めうる。
【発明の効果】
【0017】
諸性能が高く、様々な範囲に応用されうる蓄光剤を含む吸水剤が提供されうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。先ず製造方法について説明がなされ、次に吸水剤について説明がなされる。
【0019】
[重合工程]
本発明の吸水剤に含まれる吸水性樹脂は、含水ゲル状重合体を乾燥することにより得られうる。この含水ゲル状重合体は、エチレン性不飽和単量体を重合して得られうる。重合法は限定されず、単量体水溶液を重合する方法(水溶液重合)、単量体水溶液を疎水性有機溶媒に懸濁させる重合法(逆相懸濁重合)等、種々の重合法が適用されうる。重合工程は、好ましくは微量の架橋剤の存在下においてなされる。なお、本明細書において、用語「含水ゲル状重合体」には、架橋された重合体と架橋されていない重合体との双方を含む。また、本明細書においては、「質量」および「質量%」は、それぞれ「重量」および「重量%」と同義語として扱う。本明細書において、含水ゲル状重合体は、単に含水ゲルとも称される。
【0020】
上記含水ゲル状重合体の原料として用いられるエチレン性不飽和単量体は、水溶性を有する単量体である。このエチレン性不飽和単量体として、例えば、(メタ)アクリル酸、β−アクリロイルオキシプロピオン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルホスホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルリン酸、(メタ)アクリロキシアルカンスルホン酸などの酸基含有単量体、これら酸基含有単量体のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルキルアミン塩;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類及びこれらの四級化物(たとえば、アルキルハイドライドとの反応物、ジアルキル硫酸との反応物など);ジアルキルアミノヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類及びこれらの四級化物;N−アルキルビニルピリジニウムハライド;ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド;メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのアルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート;ビニルピリジン、N−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−アクリロイルピペリジン;N−ビニルアセトアミド;などが挙げられる。これらエチレン性不飽和単量体は、一種類のみが用いられてもよく、また、二種類以上が用いられてもよい。
【0021】
上記例示のエチレン性不飽和単量体のうち、アクリル酸及び/又はアクリル酸塩を30モル%以上100モル%以下、好ましくは50モル%以上100モル%以下、さらに好ましくは90モル%以上100モル%以下含有することが好ましい。30モル%未満であると、得られる含水ゲルの吸水性能や安全性がより低下することがあり、また、重合反応性が低下することがある。さらに、汎用性が低下し、経済性が低下することがある。ここで、アクリル酸塩とはアクリル酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、ヒドロキシアンモニウム塩、アミン塩、アルキルアミン塩を示す。
【0022】
上記例示の水溶性塩類のうち、ナトリウム塩およびカリウム塩が特に好ましい。これらアクリル酸塩系単量体は、単独で用いられてもよく、また、二種類以上が併用されてもよい。なお、吸水性樹脂の平均分子量及び重合度は、特に限定されるものではない。
【0023】
上記エチレン性不飽和単量体を主成分として含む単量体組成物を重合させることにより、上記の含水ゲル状重合体が得られる。上記単量体組成物は、得られる含水ゲル状重合体の親水性を阻害しない程度に、上記エチレン性不飽和単量体と共重合可能な他の単量体(共重合性モノマー)を含んでいてもよい。
【0024】
上記の共重合性モノマーとしては、具体的には、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどの疎水性単量体;などが挙げられる。これら共重合性モノマーは、単独で用いられてもよく、また、二種類以上が適宜混合されて用いられてもよい。
【0025】
また、重合工程で用いられ得る架橋剤としては、たとえば、分子内にビニル基を複数有する化合物;分子内にカルボキシル基やスルホン酸基と反応することのできる官能基を複数含有する化合物;などが挙げられる。これら架橋剤は、単独で用いられてもよく、また、二種類以上が併用されてもよい。
【0026】
分子内にビニル基を複数含有する化合物としては、たとえば、N,N'−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、N,N−ジアリルアクリルアミド、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ジアリルオキシ酢酸、ビス(N−ビニルカルボン酸アミド)、テトラアリロキシエタンなどが挙げられる。
【0027】
分子内にカルボキシル基やスルホン酸基と反応することのできる官能基を複数有する化合物としては、(ポリ)エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、(ポリ)グリセリン、2−ブテン−1,4−ジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサノール、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピレン、オキシエチレンオキシプロピレンブロック共重合体、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどの多価アルコール化合物;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリシドールなどのエポキシ化合物;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリアミドポリアミン、ポリエチレンイミンなどの多価アミン化合物、並びに、それら多価アミンとハロエポキシ化合物との縮合物;2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの多価イソシアネート化合物;1,2−エチレンビスオキサゾリンなどの多価オキサゾリン化合物;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤;1,3−ジオキソラン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−エチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,3−ジオキサン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキサン−2−オン、4,6−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−オン、1,3−ジオキソパン−2−オンなどのアルキレンカーボネート化合物;エピクロロヒドリンなどのハロエポキシ化合物;亜鉛、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄、ジルコニウムなどの水酸化物あるいは塩化物などが挙げられる。
【0028】
上記の架橋剤の使用量としては、特に限定されるものではない。架橋剤の割合は、上記単量体成分に対して、0.0001モル%以上10モル%以下の範囲内であることが好ましく、0.001モル%以上1モル%以下の範囲内であることがより好ましい。本発明において、上記の単量体成分を重合する方法としては、水溶液重合が挙げられる。具体的には、バットやベルト上での静置重合、あるいはニーダー中での重合が挙げられる。重合後になされうる切断工程と重合工程とが連続的とされうる観点から、可動式のエンドレスベルト上での静置重合が好ましい。切断工程については、後述する。
【0029】
切断工程を容易とする観点から、上記重合工程によって製造された含水ゲル状重合体はシート状であるのが好ましい。吸水剤の好ましいサイズ及び形状を考慮すると、このシート状の含水ゲル状重合体の厚みは、3mm以上10mm以下が好ましい。更に、静置重合を上記シート厚みで行うことによって、乾燥工程において、残存モノマーが効果的に低減されうる。
【0030】
シート状の含水ゲル状重合体を切断することにより、4面体以上12面体以下の略多面体形状を有するゲル粒子が容易に得られうる。特に、シート状の含水ゲル状重合体に縦切り及び横切りがなされることにより、略6面体形状のゲルが容易に得られうる。換言すれば、シート状の含水ゲル状重合体に縦切り及び横切りがなされることにより、さいの目に切断されたゲルが容易に得られうる。なお、縦切りとは、シートの長手方向に沿った切断であり、横切りとは、シートの幅方向に沿った切断である。切断により得られる粒子はゲルであるので、変形しやすい。よって、略多面体を構成する各面は厳密な平面とはならないことが多い。この点を考慮し、本明細書では、「略6面体」、「略多面体」などのように、「略」の用語が用いられる。この略多面体は、滑らかな複数の面と、これらの面同士の境界を示す稜線とからなる。この稜線は、略多面体の「辺」に相当する。本発明の略多面体は、目視により多面体と認識されうる程度の形状を有している。面同士の境界部分は角ばっているので、略多面体を構成する各辺は、目立つ。辺が目立つことにより、より多面体らしく見える。辺が目立つことにより、略多面体の外観(ディスプレイ効果)が高められうる。
【0031】
厚みが3mm以上10mm以下のシート状の含水ゲル状重合体を縦切りおよび横切りすることにより、質量平均粒子径が3mm以上10mm以下のゲル粒子が得られうる。シート状の含水ゲル状重合体により、略多面体形状の粒子を得ることが容易となる。質量平均粒子径が3mm以上10mm以下の含水ゲル状重合体は、乾燥後の吸水剤における残存モノマー含有量低減に有効である。上記静置重合は、シート厚み3mm以上10mm以下でなされることが好ましい。
【0032】
また、上記水溶液重合の方法としては、連続式重合または回分重合の何れか採用されてもよい。上記水溶液重合は、常圧、減圧、加圧の何れの圧力下で実施されてもよい。重合重合工程は、空気雰囲気下で行ってもよいが、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素などの不活性ガスの気流下で行うことが好ましい。
【0033】
上記重合工程における重合開始時には、たとえば、重合開始剤、あるいは放射線や電子線、紫外線、電磁線などの活性化エネルギー線などが用いられうる。
【0034】
重合開始剤は特に限定されない。重合開始剤として、熱分解型開始剤や光分解型開始剤が用いられ得る。重合開始剤の使用量は、0.001〜5モル%が好ましく、0.01〜0.5モル%がより好ましい。熱分解型開始剤としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;過酸化水素、t−ブチルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド等の過酸化物;アゾニトリル化合物、アゾアミジン化合物、環状アゾアミジン化合物、アゾアミド化合物、アルキルアゾ化合物、2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2'−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕ジヒドロクロリド等のアゾ化合物が挙げられる。
【0035】
光分解型開始剤としては、ベンゾイン誘導体、ベンジル誘導体、アセトフェノン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、アゾ化合物等が挙げられる。これらの重合開始剤は、単独もしくは、適宜組み合わせて使用されうる。残存モノマー低減能を考慮すると、熱分解型開始剤と光分解型開始剤とが併用されることが好ましい。また、重合開始剤として過酸化物が用いられる場合、たとえば、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、L−アスコルビン酸などの還元剤を併用することにより酸化還元(レドックス)重合がなされてもよい。
【0036】
重合反応を安定に開始させるためには、上記エチレン性不飽和単量体の水溶液中の溶存酸素量が一定にされるのが好ましく、さらに円滑に重合を開始させるためには、上記水溶液中の溶存酸素量が低減されることが好ましい。溶存酸素量の好ましい範囲は、8mg/l以下、さらに好ましくは6mg/l以下、特に好ましくは2mg/l以下である。
【0037】
エチレン性不飽和単量体中の水溶液における残存酸素の除去方法としては、たとえば、不活性ガスの吹き込み、減圧脱気法、膜脱気法、還元剤添加法などがある。それらの方法について以下に説明する。
【0038】
[不活性ガスの吹き込み]
第一の方法として、重合装置へ通じる配管であって、エチレン性不飽和単量体の水溶液が流れる配管の中へ不活性ガスを吹き込む方法が例示される。第二の方法として、エチレン性不飽和単量体を収容している液槽中において不活性ガスをバブリングさせる方法が例示される。いずれの方法においても、吹き込んだ不活性ガスおよび析出する酸素の気泡を除去した後に重合が開始される必要がある。
【0039】
気泡の除去方法としては、上記第一の方法において、たとえば、旋回流を利用し気泡と液とを分離したり、エチレン性不飽和単量体の水溶液を脱気槽へ一旦投入し気泡が除去されるまで放置したりする方法が挙げられる。旋回流を利用する方法としては、例えば、新日本石油化学株式会社製のクイックトロンを使用することができる。
【0040】
[減圧脱気法]
減圧脱気法は、エチレン性不飽和単量体の水溶液を減圧することにより、上記エチレン性不飽和単量体の水溶液中の溶存酸素を低減させる方法である。エチレン性不飽和単量体の水溶液を減圧する方法として、脱気ポンプを使用する方法などが挙げられる。脱気ポンプを使用する方法としては、たとえば、株式会社横田製作所製の脱気ポンプASP−0310、ASP−0510が用いられ得る。
【0041】
[膜脱気法]
膜脱気法は、減圧脱気法の1種である。膜脱気法は、エチレン性不飽和単量体の水溶液が脱気膜モジュール内部を通過する際、脱気膜モジュールの外側を減圧にすることにより、エチレン性不飽和単量体の水溶液中の溶存酸素を脱気膜モジュールの外側に排出させる方法である。
【0042】
脱気膜としては多孔質膜または分離膜を用いることができ、たとえば、永柳工業株式会社製の分離膜であるシリコン系樹脂非多孔質膜NAGASEP M40−A、M40−B、M−60−B、M80−Bや、三菱レイヨン・エンジニアリング株式会社製の非多孔質膜をポリエチレン製の脱気膜モジュールMHF0504MBFT、MHF1704、MHF3504、MHF304EED、MGF304KMD、MHF0498P等が用いられ得る。
【0043】
[還元剤添加法]
還元剤添加法は、エチレン性不飽和単量体の水溶液中にヒドラジン、亜硫酸ナトリウムまたは重亜硫酸ナトリウムを添加し化学的に脱気する方法である。
【0044】
なお、上記の各方法に加えて、または単独で、超音波による脱気、脱泡がなされてもよい。
【0045】
重合反応時、ゲルシートに泡が混入すると吸水剤の外観が悪化するため好ましくない。よって、たとえば、以下の(I)から(III)より選ばれる1つ又は2つ以上がなされることが好ましい。
(I)エチレン性不飽和単量体の水溶液の脱気、脱泡を実施する。
(II)重合時の発熱を抑制すること、たとえば、エチレン性不飽和単量体の水溶液の突沸を回避するため、エチレン性不飽和単量体の水溶液の温度を30℃以下、好ましくは25℃以下、さらに好ましくは、20℃以下に保持して重合を行うこと。
(III)光分解開始剤を用い、紫外線を利用して重合を開始させること。
【0046】
なお、重合中における含水ゲル状重合体の最高到達温度は、好ましくは60℃以上100℃以下、より好ましくは70℃以上90℃以下、さらに好ましくは80℃以上90℃以下である。100℃を超えるとエチレン性不飽和単量体の水溶液の突沸が起こるため好ましくなく、60℃未満では重合時間が長くなり、生産性が低下するので好ましくない。
【0047】
紫外線を利用して重合を開始させる場合、重合反応に必要とされる紫外線の積算光量としては、好ましくは500mJ/cm以上5000mJ/cm以下、さらに好ましくは600mJ/cm以上4000mJ/cm以下である。積算光量が500mJ/cm未満の場合、より多くの光分解開始剤を必要とするため好ましくない。また、積算光量が5000mJ/cmを超える場合、重合反応が急激に起こり、その際の発熱によって、エチレン性不飽和単量体の水溶液が突沸するおそれがある。さらに、ゲルシートに必要以上のエネルギーを照射することとなり、含水ゲル状重合体が劣化または分解するため好ましくない。
【0048】
紫外線を発生させるためのUVランプは、ブラックライト水銀ランプ、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ等があり、これらランプの何れを用いてもよいし、これらランプを併用してもよい。なかでもメタルハライドランプとブラックライト水銀ランプとを併用し、積算光量を調整することが好ましい。
【0049】
上記単量体成分を架橋剤の存在下で重合させる際には、溶媒として水を用いることが好ましい。つまり、上記単量体成分および架橋剤を水溶液として重合することが好ましい。これにより、得られる吸水剤の吸水性能が向上しうる。
【0050】
上記水溶液(以下、単量体水溶液とする)中の単量体成分の濃度は、30質量%以上60質量%以下の範囲内がより好ましい。単量体成分の濃度が30質量%未満の場合には、得られる吸水剤の水可溶性成分量が増加するおそれがある。一方、単量体成分の濃度が60質量%を越える場合には、反応温度を制御することが困難となるおそれがある。水溶液の単量体成分の濃度を上記範囲とすることにより、含水率40質量%以上70質量%以下の含水ゲル状重合体を得ることができる。含水ゲル状重合体の含水率が40質量%以上とされることにより、含水ゲル状重合体の表面に蓄光剤が付着しやすくなる。
【0051】
また、単量体水溶液の溶媒として、水と、水に可溶な有機溶媒とを併用することもできる。この有機溶媒としては、具体的には、たとえば、メチルアルコール、エチルアルコール、アセトン、ジメチルスルホキシド、エチレングリコールモノメチルエーテル、グリセリン、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、アルキレンカーボネートなどが挙げられる。これら有機溶媒は、単独で用いてもよく、また、二種類以上が併用されてもよい。
【0052】
重合工程において、蓄光剤が添加されてもよい。添加方法は特に制限されず、例えば貯蔵タンク等に入れられた液体の単量体又は単量体水溶液に蓄光剤を混合する方法が採用されうる。蓄光剤が混合された単量体又は単量体水溶液を重合することにより、蓄光剤をその内部に含む吸水性樹脂及び吸水剤が得られうる。この場合、蓄光剤が吸水性樹脂の内部に存在しうるため、蓄光剤が分離しにくい。ただし、蓄光剤の使用量を減らしつつ発光度合いを高める観点からは、蓄光剤は吸水性樹脂の表面に存在するのが好ましい。この観点から、蓄光剤は重合工程後に添加されるのが好ましい。蓄光剤を吸水剤の内部及び表面に存在させるのも好ましい。
【0053】
[切断工程]
切断工程では、含水ゲル状重合体が切断される。切断の手段は限定されない。切断の間隔は切断方向も限定されない。切断工程により得られた切断面のエッジは、角ばっている。角ばったエッジは、粒子形状の外観を向上させうる。
【0054】
好ましい切断工程では、表面が略平滑な複数の面からなる4面体以上12面体以下の形状の粒子が当該含水ゲル状重合体の質量に対して50質量%以上100質量%以下となるように切断がなされる。より好ましくは、切断工程において、表面が略平滑な面からなっている略6面体形状の粒子が、当該含水ゲル状重合体の質量に対して50質量%以上100質量%以下、好ましくは80質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは90質量%以上100質量%以下、特に好ましくは95質量%以上100質量%以下となるように切断がなされる。外観性(ディスプレイ効果)を高める観点から、含水ゲル状重合体の粒子は、好ましくは、略立方体形状の粒子又は略直方体形状の粒子が良い。含水ゲル状重合体を乾燥して得られる吸水性樹脂(吸水剤)の粒子も、略立方体形状の粒子又は略直方体形状の粒子が好ましい。
【0055】
上記略6面体形状の粒子が当該含水ゲル状重合体の質量に対して50質量%未満である場合、粒子の形状が不揃いとなり、当該含水ゲル状重合体を乾燥した後に得られる吸水性樹脂を水性液で膨潤させた際の外観が損なわれる。外観の悪化は、商品価値を低下させうる。
【0056】
後述するように、好ましい切断工程においては、シート状に成形された上記含水ゲル状重合体に対して縦切り及び横切りがなされる。この切断工程により、略多面体形状の粒子が得られやすい。この切断工程により、比表面積が小さい粒子が得られやすい。
【0057】
シート状に成形された上記含水ゲル状重合体に対して縦切り及び横切りがなされると、略6面体形状の粒子が主成分のゲルが得られる。ただし、切り損じが生じる場合もあるため、略6面体形状でない略多面体形状の粒子も生じ、複数種類の略多面体粒子の混合物が生じうる。よって、4面体以上12面体以下の形状の粒子が当該含水ゲル状重合体の全質量に対して50質量%以上100質量%以下となる含水ゲル状重合体が得られる。意図的な切断により、略6面体形状でない略多面体形状の粒子を得てもよい。
【0058】
吸水剤を水性液で膨潤させた際の外観(ディスプレイ性能)を高める観点から、略4面体以上略12面体以下の略多面体形状の含水ゲル状重合体が好ましい。略12面体を超える略多面体形状は好ましくない。
【0059】
上記切断には、例えばローラー型カッターや、ギロチンカッター、スライサー、ロールカッタ、シュレッダー、ハサミなどの各種の切断手段やこれらの組み合わせが用いられ得る。切断手段は特に限定されない。
【0060】
本発明において、切断工程は必須ではない。例えば、前述した逆相懸濁重合により得られた球状重合体の場合、切断工程が省略されうる。なお、逆相懸濁重合により得られた球状重合体も、含水ゲル状重合体である。
【0061】
上記含水ゲル状重合体の含水率は、40質量%以上70質量%以下であることが好ましく、45質量%以上65質量%以下であることがさらに好ましく、50質量%以上60質量%以下であることが特に好ましい。
【0062】
上記含水率が40質量%未満である場合、重合反応時における発熱が高くなり、含水ゲル重合体中に多数の発泡が発生することがあるため好ましくない。一方、上記含水率が70質量%を超えると、重合反応が円滑に行われないことがあるため好ましくない。また、上記含水率が70質量%を超えた場合、残存モノマーを十分反応させることはできるが、乾燥後に残る水分が多くなりすぎる。この水分の多さにより、乾燥に多くのエネルギーが必要となり作業効率が低下する。
【0063】
上記含水ゲル状重合体の質量平均粒子径は、好ましくは3mm以上10mm以下、さらに好ましくは3mm以上8mm以下とされる。上記含水ゲル重合体の粒径分布は、対数標準偏差値で0以上0.25以下となっていることが好ましい。
【0064】
一般に、含水ゲルの粒子径が大きいものの方が、同じ条件で乾燥させた時の残存モノマーが減少し易い傾向にある。含水ゲルを乾燥すると表層から乾燥(温度上昇による水分蒸発)が始まり次第に内部へ進行していく。粒径の細かい小さい含水ゲルの場合、比較的短時間で内部まで水分蒸発してしまうため、残存モノマーと含水ゲル状重合体中に残存している重合開始剤とが反応しにくく、結果として残存モノマーが減りにくくなる。上記含水ゲル重合体の質量平均粒子径が3mm未満の場合は、粒子径が小さいため、残存モノマーを減少させにくくなり、好ましくない。
【0065】
一方、粒径が大きい含水ゲルの場合は、乾燥によりゲル内部の温度が上昇しているにもかかわらずゲル内部の水分蒸発が遅れるため、残存モノマーと上記重合開始剤との反応が起こりやすくなり、残存モノマーが減少しやすくなる。上記含水ゲル重合体の質量平均粒子径が10mmを超えると、上記と同様の理由で残存モノマーは減少しやすくなっているが、ゲルを内部まで乾燥させるためには多くの乾燥時間(エネルギー)が必要となるので、作業効率が低下する。
【0066】
上記含水ゲル重合体の質量平均粒子径が、3mm以上10mm以下であり、上記含水ゲル重合体の粒径分布が対数標準偏差値で0以上0.25以下となっている場合、上記含水ゲル重合体の粒径が比較的大きく且つ粒径分布が均一である。よって、乾燥工程において残存モノマーが上記重合開始剤と反応しやすい。
【0067】
ここで、「質量平均粒子径」とは標準篩分級された粒子で規定される平均粒子径のことをいう。また、対数標準偏差値とは、平均粒径の分布を表す値である。なお、平均粒径及び対数標準偏差値の算出方法については実施例にて説明する。
【0068】
[被覆工程]
被覆工程では、含水ゲル状重合体の表面の少なくとも一部が付着抑制剤により被覆される。付着抑制剤は、含水ゲル状重合体の粒子の凝集を抑制する。付着抑制剤は、含水ゲル状重合体の表面に付着し、含水ゲル状重合体の粒子間の付着を抑制する。本明細書において、この付着抑制効果が離型効果とも称される。付着抑制剤は、多価金属塩、多価アルコール及び界面活性剤に分類される化合物のうち少なくとも1種類を含む。付着抑制剤は、、含水ゲル重合体の表面の少なくとも一部を被覆して、含水ゲル重合体の粒子同士の付着を抑制する。
【0069】
好ましくは、被覆工程は、切断工程の前又は切断工程と同時になされる。これにより、切断面同士の付着が抑制され、切断工程の生産性が高まりうる。
【0070】
付着抑制剤の使用量は特に限定されない。好ましくは、付着抑制剤は、吸水性樹脂の固形分に対して0.0015質量%以上35質量%以下、より好ましくは0.002質量%以上30質量%以下、さらに好ましくは0.002質量%以上25質量%以下である。上記使用量が0.0015質量%よりも少ないと、切断して得られる粒子状含水ゲルの離型効果が小さく、再凝集しやすくなる。一方、上記使用量が35質量%よりも多いと、添加に見合う効果が得られず、更には最終製品の吸水剤の物性が低下するおそれがある。
【0071】
上記多価金属塩としては、例えば、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、ビス硫酸カリウムアルミニウム、ビス硫酸ナトリウムアルミニウム、カリウムミョウバン、アンモニウムミョウバン、アルミン酸ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、塩化鉄(III)、塩化セリウム(III)、塩化ルテニウム(III)、塩化イットリウム(III)、塩化クロム(III)、硫酸ジルコニウム、6フッ化ジルコニウムカリウム、6フッ化ジルコニウムナトリウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニウムカリウム、炭酸ジルコニウムナトリウム、酢酸ジルコニウム、プロピオン酸ジルコニウムなどが挙げられる。
【0072】
水などの水性液とにおける溶解性が良好である観点から、上記多価金属塩は、結晶水を有する塩であるのが好ましい。この観点から、特に好ましいのは、アルミニウム化合物であり、中でも、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、ビス硫酸カリウムアルミニウム、ビス硫酸ナトリウムアルミニウム、カリウムミョウバン、アンモニウムミョウバン、ナトリウムミョウバン、アルミン酸ナトリウムが好ましく、硫酸アルミニウムが特に好ましい。硫酸アルミニウムとしては、硫酸アルミニウム18水塩、硫酸アルミニウム14〜18水塩等の含水結晶の粉末を最も好適に使用することができる。これらは1種のみ用いられても良いし、2種以上が併用されても良い。
【0073】
多価金属塩は、水溶液として用いるのが好ましい。多価金属塩水溶液の濃度としては、特に限定されるものではないが、好ましくは1質量%以上50質量%以下、より好ましくは3質量%以上40質量%以下、更に好ましくは5質量%以上30質量%以下、特に好ましくは10質量%以上20質量%以下である。
【0074】
多価金属塩水溶液の濃度が1質量%より少ないと、離型性能を付与するためには多量の多価金属塩水溶液が必要となり、その後の乾燥工程で多くのエネルギーを要するので、好ましくない。一方、多価金属塩水溶液の濃度が50質量%を超えると、離型性能は向上するものの、水溶解性の低下がおこるとともに、含水ゲル状重合体の表面への均一な噴霧が難しくなるので好ましくない。また、多価金属塩水溶液の濃度が50質量%を超えると、使用量が多すぎて非経済的である。
【0075】
上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、グリセリン、2−ブテン−1,4−ジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサノール、トリメチロールプロパン、2,3,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールなどが用いられうる。汎用性が高いので、プロピレングリコールが特に好ましい。これら多価アルコールは、1種のみが用いられても良いし、2種以上が併用されても良い。
【0076】
上記界面活性剤としては、たとえば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、又は両性界面活性剤などを用いられうる。具体的なアニオン性界面活性剤としては、混合脂肪酸ナトリウム石けん、半硬化牛脂脂肪酸ナトリウム石けん、ステアリン酸ナトリウム石けん、オレイン酸カリウム石けん、ヒマシ油カリウム石けんなどの脂肪酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、高級アルコール硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミンなどのアルキル硫酸エステル塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩;アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルナフタレンスルホン酸塩;ジアルキルスルホコハク酸ナトリウムなどのアルキルスルホコハク酸塩;アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムなどのアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩;アルキルリン酸カリウムなどのアルキルリン酸塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキル(またはアルキルアリル)硫酸エステル塩;特殊反応型アニオン界面活性剤;特殊カルボン酸型界面活性剤;β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩、特殊芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩などのナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル;などが挙げられる。
【0077】
具体的なノニオン性界面活性剤としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールブロック共重合体などのポリオレフィンオキサイド;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル;ポリオキシエチレン誘導体;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンジステアレートなどのソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビットなどのポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル;グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレエート、自己乳化型グリセロールモノステアレートなどのグリセリン脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールモノオレエートなどのポリオキシエチレン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンアルキルアミン;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;アルキルアルカノールアミド;などが挙げられる。
【0078】
カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤としては、具体的には、ココナットアミンアセテート、ステアリルアミンアセテートなどのアルキルアミン塩;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライドなどの第四級アンモニウム塩;ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、ラウリルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインなどのアルキルベタイン;ラウリルジメチルアミンオキサイドなどのアミンオキサイド;などが挙げられる。上記各界面活性剤に加えて、さらに、フッ素系界面活性剤やシロキサン系界面活性剤も用いられうる。
【0079】
上記各界面活性剤の中でも、特に好ましいのは、ポリプロピレングリコールまたはポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールブロック共重合体である。これらの界面活性剤は、含水ゲル状重合体に添加する際の添加量が少量で済む。また、これらの界面活性剤は、添加後に含水ゲル状重合体の表面に対して表面処理が施された状態でも、該含水ゲル状重合体の物性(たとえば、加圧下吸水倍率など)をほとんど阻害しない。さらに、これらの界面活性剤は使用上の安全性が高いため好ましい。
【0080】
付着抑制剤は、多価金属塩、多価アルコール及び界面活性剤のうち少なくとも1種類を含んでいればよい。また、2種類以上の付着抑制剤が組み合わされる場合、これら2種以上の付着抑制剤が混合された状態で用いられても良いし、別々に用いられても良い。多価金属塩、多価アルコール及び界面活性剤のうち少なくとも2種を組み合わせて用いる場合、好ましくは、多価金属塩と多価アルコールとの組み合わせである。この場合、それぞれの使用量は特に制限されない。多価金属塩と多価アルコールとが組み合わされる場合、多価金属塩の質量は、付着抑制剤の全質量に対し、20質量%以下であることが好ましい。
【0081】
上記付着抑制剤は、含水ゲル状重合体の表面の少なくとも一部をで被覆すればよい。離型効果を高める観点から、含水ゲル状重合体の表面全体が付着抑制剤により被覆されているのが好ましい。付着抑制剤は、付着抑制剤が含水ゲル状重合体の内部まで浸透している必要な無いが、含水ゲル状重合体の機能を損なわない限り、含水ゲル状重合体の内部まで浸透していてもよい。
【0082】
含水ゲル状重合体の表面を均等に被覆する観点から、付着抑制剤は、噴霧又は散布されるのが好ましい。換言すれば、付着抑制剤の含水ゲル状重合体への付着手段は、噴霧又は散布が好ましい。付着抑制剤の噴霧及び散布の手段は、限定されない。付着抑制剤の噴霧及び/又は散布には、アトマイザー、1流体ノズル、2流体ノズルのような空気混合タイプ噴霧装置、液体注入ポンプ、刷毛、およびローラー等の従来公知の噴霧手段が用いられ得る。また、噴霧及び/又は散布手段の設置数は特に限定されない。
【0083】
切断工程により、含水ゲル状重合体の切断面同士がくっつき合う現象が生じうる。付着抑制剤は、含水ゲル状重合体同士の付着を効果的に抑制する。よって、被覆工程は、切断工程の前又は切断工程と同時になされるのが好ましい。
【0084】
蓄光剤添加工程(後述)の前又は蓄光剤添加工程と同時に被覆工程がなされるのが好ましい。この場合、含水ゲル状重合体の粒子同士のくっつきが抑制されるので、蓄光剤が含水ゲル状重合体の表面に均等に付着しやすい。蓄光剤の均等な付着により、発光時における外観が良好となりうる。
【0085】
付着抑制剤の付着手段は、付着抑制剤による含水ゲル状重合体の付着防止効果が得られる限り特に限定されない。切断工程で用いる刃に付着抑制剤を噴霧及び/又は散布し、この刃で含水ゲル状重合体を切ってもよい。この切断工程では、刃に付着した含水ゲル状重合体が付着抑制剤へと移動する。この切断工程では、刃を経由して付着抑制剤が含水ゲル状重合体の表面を被覆しうる。この方法は、切断工程により発生する切断面を付着抑制剤により効率的に被覆しうる。付着抑制剤は、含水ゲル状重合体に直接噴霧及び/又は散布してもよいし、縦切り刃、横切り回転刃及び/又は固定刃に噴霧及び/又は散布し、この付着抑制剤を、当該縦切り刃、横切り回転刃及び/又は固定刃から含水ゲル状重合体に付着させてもよい。
【0086】
また、被覆工程が、混合によりなされてもよい。付着抑制剤を噴霧及び/又は散布しながら含水ゲル状重合体と付着抑制剤とを混合することもできる。また後述するように、付着抑制剤及び蓄光剤を含水ゲル状重合体に混合するのが好ましい。混合装置としては、通常に固形物に液体を混合するために使用される混合装置であれば特に限定されず、レーディゲミキサー、ナウターミキサーなどの混合装置が好ましい。
【0087】
上記縦切り刃、横切り回転刃、固定刃及び/又は含水ゲル状重合体への付着抑制剤の噴霧及び/又は散布量は、特に限定されない。好ましくは、吸水性樹脂の固形分に対する付着抑制剤の付着量が0.0015質量%以上35質量%以下となるように噴霧及び/又は散布がなされることが好ましい。さらに好ましくは0.0015質量%以上25質量%以下、特に好ましくは0.0015質量%以上20質量%以下、最も好ましくは0.0015質量%以上18質量%以下である。
【0088】
前述したように、例えば逆相懸濁重合により得られた球状重合体の場合、切断工程は不要とされうる。この球状の重合体にも、被覆工程がなされる。この被覆工程は、例えば混合によりなされうる。後述するように、好ましくは、付着抑制剤及び蓄光剤が球状の重合体に混合される。混合装置としては、通常に固形物に液体を混合するために使用される混合装置であれば特に限定されず、レーディゲミキサー、ナウターミキサーなどの混合装置が好ましい。
【0089】
付着量が0.0015質量%未満の場合は、十分に含水ゲル状重合体を被覆することができないため、十分な付着性防止効果が得られにくい。一方、付着量が35質量%を超えると、乾燥のために必要となるエネルギーが多くなるだけでなく、ダスト量が増加するという問題が生じる。また、付着抑制剤として多価金属塩が使用される場合、ゲル表面の架橋反応が過度に進行し、吸水倍率が低下するという問題が生じる。更に、多価金属塩の種類によっては、切断機などが腐食しやすいという問題が生じる。
【0090】
キレート剤及び/又は紫外線吸収剤を含有させる方法としては、噴霧及び/又は散布しながら混合がなされることも可能である。混合装置としては、通常に液体を混合するために使用される混合機であれば限定されず、レーディゲミキサー、ナウターミキサーなどの混合装置が好ましい。
【0091】
また、上記付着抑制剤のうち、界面活性剤又は多価アルコールは、上記重合工程において、エチレン性不飽和単量体の水溶液及び/又は含水ゲル状重合体内部に含まれていてもよい。上記含水ゲル状重合体内部に含有させる方法としては特に限定されるものではなく、例えば、アクリル酸及び/又はアクリル酸塩を30モル%以上100モル%以下含有するエチレン性不飽和単量体の水溶液中に、界面活性剤及び/又は多価アルコールを投入し、均一に混合させた後に重合させる方法が挙げられる。
【0092】
界面活性剤または多価アルコールに分類される化合物のうち少なくとも1種類を含水ゲル重合体の内部に含有させることにより、含水ゲル重合体の表面同士の付着を低減させることができ、含水ゲル状重合体の切断面同士の付着が低減しうる。
【0093】
含水ゲル重合体の内部に含有させる界面活性剤及び/又は多価アルコールの使用量は特に限定されず、好ましくは吸水性樹脂の固形分に対して0.001質量%以上10質量%以下、より好ましくは0.01質量%以上8質量%以下、さらに好ましくは0.03質量%以上5質量%以下である。上記使用量が0.001質量%よりも少ないと、含水ゲルの切断面同士の付着性低減効果が小さく再凝集しやすくなる。一方、上記使用量が10質量%よりも多いと、吸水性樹脂が持つ透明性が損なわれ、例えば白化が起こり、外観が損なわれるおそれがある。
【0094】
さらに、上記含水ゲル状重合体の内部及び/又は表面には、キレート剤及び/又は紫外線吸収剤が含まれていても良い。キレート剤及び/又は紫外線吸収剤を含有させる方法は、特に限定されず、例えば、付着抑制剤と同様に、アトマイザー、1流体ノズル、2流体ノズルのような空気混合タイプ噴霧装置および液体注入ポンプ等の従来公知の手段を用いて含水ゲル状重合体に噴霧及び/又は散布する方法が挙げられる。
【0095】
また、付着抑制剤と同様に、キレート剤及び/又は紫外線吸収剤が含水ゲル状重合体を切るための刃に噴霧及び/又は散布されてもよい。例えば、付着抑制剤が、縦切りまたは横切りするための固定刃及び/又は回転刃に噴霧及び/又は散布されてもよい。刃に付着したキレート剤及び/又は紫外線吸収剤は、この刃の使用により、上記含水ゲル状重合体の内部または切断面を含む表面に移動する。
【0096】
上記キレート剤としては、従来公知の金属イオン封鎖能を有する化合物であれば特に制限なく用いることができる。キレート剤として、例えば、(1)アミノカルボン酸及びその塩、(2)クエン酸モノアルキルアミド及びクエン酸モノアルケニルアミド及びそれらの塩、(3)マロン酸モノアルキルアミド及びマロン酸モノアルケニルアミド及びそれらの塩、(4)モノアルキルリン酸エステル及びモノアルケニルリン酸エステル及びそれらの塩、(5)N−アシル化グルタミン酸及びN−アシル化アスパラギン酸及びそれらの塩、(6)β―ジケトン誘導体、(7)トロポロン誘導体、等が挙げられる。これらのキレート剤は単独で用いられてもよく、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0097】
(1)アミノカルボン酸及びその塩としてはカルボキシル基を3個以上有するアミノカルボン酸及びその塩が金属イオン封鎖能の点で好ましい。具体的には、ニトリロトリ酢酸、エチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、トリエチレンテトラアミンヘキサ酢酸、シクロヘキサンー1,2−ジアミンテトラ酢酸、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、エチレングリコールジエチルエーテルジアミンテトラ酢酸、エチレンジアミンテトラプロピオン酸、N−アルキルーN'−カルボキシメチルアスパラギン酸、N−アルケニルーN'−カルボキシメチルアスパラギン酸、これらのアルカリ金属塩、これらのアルカリ土類金属塩、これらのアンモニウム塩もしくはこれらのアミン塩が挙げられる。
【0098】
(2)クエン酸モノアルキルアミド及びクエン酸モノアルケニルアミド及びそれらの塩は、例えばアルコールとクエン酸の脱水縮合により得られる。
【0099】
(3)マロン酸モノアルキルアミド及びマロン酸モノアルケニルアミド及びそれらの塩は、例えば、α―オレフィンをマロン酸メチルに付加せしめた後加水分解がなされることにより得られる。
【0100】
(4)モノアルキルリン酸エステル及びモノアルケニルリン酸エステル及びそれらの塩はとしては、ラウリルリン酸、ステアリルリン酸等が挙げられる。
【0101】
(5)N−アシル化グルタミン酸及びN−アシル化アスパラギン酸及びそれらの塩としては、例えば(株)味の素より市販されているアミソフトHS−11やGS−11等が挙げられる。
【0102】
(6)β―ジケトン誘導体としては、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン等が挙げられる。
【0103】
(7)トロポロン誘導体としてはトロポロン、β―ツヤプリシン、γ―ツヤプリシン等が挙げられる。
【0104】
これらキレート剤の中でも好ましくはカルボキシル基を3個以上有するアミノカルボン酸及びその塩であり、中でもジエチレントリアミンペンタ酢酸、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、シクロヘキサンー1,2−ジアミノテトラ酢酸、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸及びそれらの塩が、耐光性の観点から最も好ましい。
【0105】
また、上記紫外線吸収剤としては、その種類に特に制限はなく、通常、波長領域として300nm以上400nm以下の範囲の光を効率よく吸収しうるものであればいかなるものでも良い。ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤としては、
(イ)2−ヒドロキシベンゾフェノン−4−ジグリセリルエーテル、(ロ)2,2'−ジヒロキシベンゾフェノン−4−ジグリセリルエーテル、(ハ)2−ヒドロキシベンゾフェノン−4、4'−ジグリセリルエーテル、(ニ)2,2'−ジヒロキシベンゾフェノン−4、4'−ビスグリセリルエーテル、(ホ)2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノンナトリウム塩、(ヘ)2,2'−ジヒロキシ−4,4'−ジメトキシ−5−スルホベンゾフェノンナトリウム塩、(ト)2,2'−ジヒロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、(チ)2−(2'−ヒドロキシ−4'−メトキシ−5'−スルホフェニル)ベンゾトリアゾールナトリウム塩、(リ)2−(2'−ヒドロキシ−4'−ブトキシ−5'−スルホフェニル)ベンゾトリアゾールナトリウム塩、等が挙げられる。
【0106】
これらの中でも特にベンゾフェノン系でかつ非イオン系のもの、すなわち、上記(イ)〜(ニ)が好ましい。
【0107】
上記キレート剤及び/又は紫外線吸収剤の合計使用量は、通常吸水性樹脂の固形分に対して好ましくは0.001質量%以上10質量%以下、より好ましくは0.01質量%以上5質量%以下である。上記使用量が10質量%を超えると、使用に見合う効果が得られず不経済になるばかりか、吸収倍率が低下したり、8族遷移金属イオンの必要量が多量となる等の問題が生じる。また、上記使用量が0.001質量%よりも少ないと、吸水剤の耐久性向上効果が得られない。
【0108】
[蓄光剤添加工程]
吸水剤の製造方法は、蓄光剤が添加される工程を含む。蓄光剤は、含水率が30質量%以下の吸水性樹脂に添加されてもよい。蓄光剤の付着しやすさの観点から、蓄光剤は、含水率が40質量%以上の含水ゲル状重合体に対して添加されるのが好ましい。蓄光剤の吸水剤表面への付着効率を高め、蓄光剤の発光効果を高める観点から、蓄光剤は、切断工程後の含水ゲル状重合体に対して添加されるのがより好ましい。また、切断工程を要さない球状重合体においては、この球状重合体に蓄光剤が添加される。
【0109】
蓄光剤は、後述される付着抑制剤の存在下において添加されるのが好ましい。付着抑制剤は、含水ゲル状重合体の表面同士がくっつき合うこと抑制するので、蓄光剤の吸水剤表面への付着度を高めうる。よって、蓄光剤は、表面の少なくとも一部が付着抑制剤により被覆された含水ゲル状重合体に添加されるのが好ましく、又は蓄光剤は付着抑制剤と一緒に添加されるのが好ましい。生産性の観点からは、蓄光剤と付着抑制剤と含水ゲル状重合体とが同時に混合されるのが好ましい。
【0110】
蓄光剤の添加の方法は限定されない。被覆の均一性を高める観点から、蓄光剤は、含水ゲル状重合体と混合されるのが好ましい。蓄光剤が、付着抑制剤と共に含水ゲル状重合体に混合されるのも好ましい。又は、蓄光剤は、含水ゲル状重合体に対して散布及び/又は噴霧されてもよい。散布装置及び/又は噴霧装置としては、後述される付着抑制剤用の装置が用いられ得る。蓄光剤が水に溶けない場合、スラリー状態とされた蓄光剤が混合、散布又は噴霧されてもよい。
【0111】
蓄光剤が含水ゲル状重合体に混合される場合、その混合方法は、限定されない。含水ゲル状重合体と蓄光剤との混合は、撹拌しながらなされるのが好ましい。撹拌装置としては、パドルブレンダー、リボンミキサー、ロータリーブレンダー、ジャータンブラー、プラウジャーミキサー、モルタルミキサー、レーディゲミキサーが例示され、レーディゲミキサーが特に好ましい。
【0112】
好ましい工程の一例は、切断工程の前又は切断工程と同時に多価アルコールが含水ゲル状重合体に添加され、切断工程の後に多価金属塩及び蓄光剤が含水ゲル状重合体に添加される。多価アルコールにより、切断工程時における含水ゲル状重合体同士の付着が効果的に抑制される。多価金属塩と蓄光剤とを同時に添加することにより、製造工程が簡略化されうるとともに、蓄光剤の付着効率が高まる。
【0113】
通常、蓄光剤は、水に不溶である。蓄光剤添加工程が水中においてなされた場合、蓄光剤が沈殿しやすい。よってこの場合、蓄光剤の付着が不均一となりやすい。これに対し、本発明の好ましい蓄光剤添加工程では、蓄光剤の付着が均一となりやすい。
【0114】
[乾燥工程]
乾燥工程は、上記含水ゲル状重合体を乾燥する工程である。乾燥工程により、吸水剤の含水率が30質量%以下とされうる。乾燥方法については特に限定されるものではない。たとえば、通気バンド型乾燥機、回転型通気乾燥機、攪拌乾燥機、流動層乾燥機、振動流動乾燥機などを用いる従来の乾燥方法が好適に用いられうる。
【0115】
また、これらの乾燥機を用いて高湿乾燥を行うことが好ましい。高湿乾燥とは、上記乾燥機を用いて、少なくとも水蒸気を含有し且つ50〜100℃の露点を有する気体と対象物とを接触させながら乾燥することである。
【0116】
含水ゲル状重合体を乾燥する際の温度は、雰囲気温度または含水ゲル状重合体の温度(材料温度)として適用されうる。含水ゲル状重合体を乾燥する際の温度は、含水ゲル状重合体の材料温度として適用されることが好ましい。
【0117】
ここで、雰囲気温度とは、熱風温度を指す。また、材料温度とは、含水ゲル状重合体を40mm以上積み重ねて乾燥した状態において、厚み方向中央付近に温度センサーを差し込み測定した温度を指す。
【0118】
切断工程の後は、含水ゲル状重合体の表面積が広くなり、乾燥しやすい。よって乾燥工程は、切断工程の後になされるのが好ましい。
【0119】
乾燥工程は、蓄光剤が添加された後になされるのが好ましい。換言すれば、乾燥工程の前に蓄光剤が添加されるのが好ましい。含水率が高い吸水剤においては、蓄光剤が吸水剤の表面に付着しやすいからである。
【0120】
乾燥工程は、上記蓄光剤添加工程及び上記被覆工程の後になされるのが好ましい。乾燥工程は、蓄光剤及び付着抑制剤の存在下においてなされるのが好ましい。乾燥時の加熱により、吸水性樹脂のポリマー分子と付着抑制剤とが結合する反応が起こりうる。例えば、乾燥時の加熱により、吸水性樹脂のポリマー分子が有する末端のカルボシキル基と、多価金属塩の金属イオンとが結合しうる。例えば、末端のカルボシキル基と、多価金属塩のアルミイウムイオンとが結合しうる。2つの末端カルボシキル基と1つの金属イオンとが結合することにより、環状部が形成されうる。この環状部に蓄光剤の分子が取り込まれうる。これにより、吸水剤の表面における蓄光剤の定着性が高められ得る。
【0121】
上記含水ゲル状重合体を乾燥する際の温度は、80℃以上150℃以下であることが好ましく、100℃以上145℃以下であることがさらに好ましく、120℃以上140℃以下であることが特に好ましい。乾燥温度が80℃未満であると、残存モノマー低減および乾燥に多くの時間が必要となり好ましくない。また、乾燥温度が低いと、ポリマー分子の末端基と付着抑制剤との反応が起こりにくい。乾燥温度が150℃を超えると、上記含水ゲル状重合体の内部に存在する水が突沸し、乾燥後の吸水剤の形状が不定形となることがある。不定形の吸水剤は、外観に劣り、商品価値が低下しうる。
【0122】
また、上記含水ゲル状重合体を乾燥する際、材料温度を急激に上げると、切断された含水ゲルの表層部分において急激が乾燥が起こる。この急激な乾燥により、切断された含水げるの表層部分において、付着抑制剤の乾燥が一気に進行する。この乾燥の進行により、ダスト成分が発生しやすくなり、得られる吸水剤に含まれるダストが増加するおそれがある。この観点から、急激な材料温度の上昇を避ける乾燥方法が好ましい。たとえば、バンド乾燥機などを使用して多段階で昇温させる手法や株式会社大川原製製作所製のロートスルーなどの回転通気式乾燥機などを使用する手法が好ましい。
【0123】
急激な温度上昇が抑制された上記乾燥方法により、得られる吸水剤に対する、粒子径が10μm以下のダスト量が低減されうる。例えば、2段階で昇温させる乾燥方法が採用されうる。たとえば、第1段階目の乾燥温度としては、好ましくは10℃以上120℃未満、より好ましくは30℃以上115℃未満、さらに好ましくは、50℃以上110℃未満とすることができる。第1段階目の乾燥時間としては、好ましくは10分以上5時間以下、より好ましくは10分以上2時間以下、さらに好ましくは10分以上1.5時間以下である。
【0124】
また、第2段階目の乾燥温度としては、好ましくは120℃以上180℃未満、より好ましくは130℃以上175℃未満、さらに好ましくは、140℃以上175℃未満とすることができる。第2段階目の乾燥時間は、好ましくは10分以上5時間以下、より好ましくは10分以上2時間以下である。
【0125】
上記の如く第1段階目の乾燥温度が設定されることにより、120℃未満の温度であらかじめ上記含水ゲル状重合体が乾燥される。この第一段階目の乾燥により、第2段階目の乾燥において、上記含水ゲル状重合体の内部に存在する水の突沸が抑制されうる。また、第2段階目の乾燥温度に昇温した際には、上述したように突沸が抑制されるため、吸水剤の変形を抑制しつつ高度(120℃以上180℃未満)ので乾燥が可能となる。これにより、得られる吸水剤の形状は安定し、外観に優れた吸水剤が得られうる。
【0126】
なお、第1段階目の乾燥温度が120℃以上である場合、得られた吸水剤のダスト量が増加するおそれがある。また、第2段階目の乾燥温度が120℃未満である場合、乾燥に多くの時間を費やす必要が生じうる。第2段階目の乾燥温度が180℃以上である場合、上記含水ゲル状重合体の内部に存在する水が突沸し、得られる吸水剤の形状が不定形となり、外観が損なわれるおそれがある。よってこれらは好ましくない。
【0127】
回転型通気式乾燥機(たとえば、株式会社大川原製作所のロートスルーなど)が使用される場合、ドラム回転数は5min−1以上20min−1以下であることが好ましく、風速は0.5m/s以上20m/s以下であることが好ましく、熱風温度は150℃以上200℃以下であることが好ましい。ドラム回転数は、乾燥する含水ゲル状重合体の処理量によっても調整されうる。上記ロートスルーが使用されることにより、連続的に材料温度を上昇させる乾燥がなされうる。これにより、含水ゲル状重合体を乾燥した後のダスト量が低減されうる。
【0128】
以上のような乾燥方法により、得られた吸水剤のダスト量が効果的に低減されうる。
【0129】
上記乾燥後の吸水剤の含水率は好ましくは、好ましくは5質量%以上30質量%以下、さらに好ましくは10質量%以上25質量%以下、特に好ましくは15質量%以上25質量%以下である。含水率を5質量%未満とするためには、比較的多くの乾燥時間が必要となるため好ましくない。一方、含水率が30質量%を超えると、吸水剤を長期間保存した場合に吸水剤同士が再付着しやすくなり、また、吸水できる水の量が減少し、吸水倍率が低下する。
【0130】
[吸液工程]
乾燥工程後に吸液工程がなされてもよい。吸液工程では、吸水剤に水等の液体を吸収させる。吸液工程により、同一の吸水剤から、所望の膨潤倍率を有する吸水剤が得られうる。膨潤倍率により、暗所における発光の状態が変化しうる。膨潤倍率が大きくされるほど、輝度は小さくなる。膨潤倍率が大きくされるほど、吸水剤の表面積が大きくなり、発光する面積も広くなる。また、膨潤倍率の変化により、発光する光の色が変化しうる。例えば、膨潤倍率が5倍の場合と10倍の場合とでは、輝度、発光面積及び光の色が異なる。種々の用途や使用者の好みに合わせて膨潤倍率が調整されうる。乾燥工程では、含水率が30質量%以下とされうる。含水率が30質量%以下とされることにより、膨潤倍率の選択自由度が高まる。
【0131】
吸液工程において、蓄光剤の発光色と異なる色を有する液体が吸収されてもよい。この場合、明所と暗所とで色が異なる吸水剤とすることができる。
【0132】
上記吸水剤の残存モノマーの含有量は、好ましくは0質量ppm以上300質量ppm以下、さらに好ましくは0質量ppm以上200質量ppm以下、特に好ましくは0質量ppm以上100質量ppm以下である。上記含有量が300質量ppmを超えると、衛生上問題及び臭気の問題に影響を及ぼす可能性があるため好ましくない。なお、上記残存モノマーの測定法については実施例で説明する。
【0133】
本発明に係る吸水剤の質量平均粒子径は2mm以上10mm以下であることが好ましく、2.5mm以上9.0mm以下であることがより好ましく、3.0mm以上8.0mm以下であることがさらに好ましい。質量平均粒子径が2mm未満であると、残存モノマーが多く含有されている可能性があるため好ましくなく、10mmを超えると含水率が高くなり長期間保存した場合に粒子同士が再付着しやすくなり、また比較的多くの乾燥時間が必要になる。
【0134】
本発明に係る吸水剤の粒径分布の対数標準偏差値は、0以上0.25以下であることが好ましく、0以上0.23以下であることがより好ましく、0以上0.20以下であることがさらに好ましい。対数標準偏差値がこの範囲内であれば、粒子状含水ゲルの粒径分布が非常に狭く、全体的に均質な粒子となる。
【0135】
本発明では、さらに粒子状の吸水剤の表面近傍に架橋処理がなされてもよい。この表面架橋処理により、これにより荷重下の吸収倍率が大きくされうる。表面架橋処理には、吸水剤の有する官能基、例えば酸性基と反応しうる架橋剤が用いられ得る。この表面架橋剤として、通常当該用途に用いられている公知の架橋剤が例示される。
【0136】
表面架橋剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタジオール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、2−ブテン−1,4−ジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサノール、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピレン、オキシエチレン−オキシプロピレンブロック共重合体、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリシドールなどの多価エポキシ化合物;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミンなどの多価アミン化合物や、それらの無機塩ないし有機塩(例えばアジチニウム塩);2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの多価イソシアネート化合物;1,2−エチレンビスオキサゾリンなどの多価オキサゾリン化合物;1,3−ジオキソラン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−エチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,3−ジオキサン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキサン−2−オン、4,6−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−オン、4,6−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−オン、1,3−ジオキソパン−2−オンなどのアルキレンカーボネート化合物;エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリン、α−メチルエピクロロヒドリンなどのハロエポキシ化合物、および、その多価アミン付加物(例えばハーキュレス製カイメン:登録商標);亜鉛、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄、ジルコニウムなどの水酸化物あるいは亜鉛、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄、ジルコニウムなど塩化物等の多価金属化合物等が挙げられる。
【0137】
これらの中でも、多価アルコール化合物、多価エポキシ化合物、多価アミン化合物やそれらの塩、アルキレンカーボネート化合物が好ましい。これらの表面架橋剤は単独で用いてもよいし、二種以上が併用されてもよい。
【0138】
表面架橋剤の量としては、吸水性樹脂100質量%に対して0.001質量%以上10質量%以下用いるのが好ましく、0.01質量%以上5質量%以下用いるのが好ましい。
【0139】
表面架橋工程における加熱処理には通常の乾燥機や加熱炉が用いられうる。例えば、薄型攪拌乾燥機、回転乾燥機、円盤乾燥機、流動層乾燥機、気流乾燥機、赤外線乾燥機、振動流動乾燥機等を挙げることができる。その場合、加熱処理温度は、好ましくは40℃以上250℃以下、より好ましくは90℃以上230℃以下、さらに好ましくは120℃以上220℃以下である。加熱処理時間としては、通常1分以上120分以下が好ましく、10分以上60分以下がより好ましい。
【0140】
質量平均粒子径が3mm以上10mm以下である4面体以上12面体以下の形状の粒子状含水ゲル状重合体を乾燥することにより、質量平均粒子径が2mm以上10mm以下である4面体以上12面体以下の略多面体形状の吸水剤粒子が得られる。この吸水剤粒子を粉砕、分級及び造粒し、不定形破砕状の吸水剤としてもよい。
【0141】
本発明の製造方法で得られた吸水剤に、無機粒子;ポリメタクリル酸メチル等の有機粒子;パルプ等の親水性繊維;ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等の合成繊維;ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等の界面活性剤が添加されてもよい。この添加は、吸水剤の製造工程の途中でなされてもよく、吸水剤の製造後になされてもよい。
【0142】
本発明に係る吸水剤に必要に応じて含まれる上記無機粒子は、吸湿時における吸水剤粒子同士の付着を低減しうる。無機粒子の種類は限定されず、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、タルク、リン酸カルシウム、リン酸バリウム、珪酸、珪酸塩、粘土、珪藻土、ゼオライト、ベントナイト、カオリン、ハイドロタルサイト、活性白土等が挙げられる。これらの無機粒子は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。上記例示の無機粒子のうち、微細な非晶質二酸化ケイ素がより好ましい。また、該非晶質二酸化ケイ素の粒子径は、1,000μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、50μm以下がさらに好ましく、10μm以下が特に好ましい。
【0143】
無機粒子の使用量は、吸水剤の用途等にもよるが、吸水性樹脂100重量部に対して、0.05重量部〜2重量部の範囲内が好ましく、0.1重量部〜1重量部の範囲内がより好ましい。無機粒子の使用量が0.05重量部よりも少ない場合には、無機粒子による上記効果が得られにくい。また、無機粒子の使用量が2重量部よりも多い場合、該使用量に見合った効果が得られ難いので、経済的に不利となるおそれがある。
【0144】
無機粒子の添加方法は限定されない。無機粒子は、吸水剤の内部に存在していてもよいし、吸水剤の表面に存在していてもよい。無機粒子による上記効果を高める観点から、無機粒子は、吸水剤の表面に存在しているのが好ましい。無機粒子を吸水剤の表面近傍に存在させる観点から、無機粒子は、重合後又は乾燥後の吸水性樹脂(吸水剤)に添加されるのが好ましい。
【0145】
吸水性樹脂と無機粒子とを混合する際に用いられる混合装置としては、例えば、円筒型混合機、スクリュー型混合機、スクリュー型押出機、タービュライザー、ナウター型混合機、V字型混合機、リボン型混合機、双腕型ニーダー、流動式混合機、気流型混合機、回転円盤型混合機、ロールミキサー、転動式混合機等が好適である。混合速度は、高速であってもよく、また、低速であってもよい。尚、無機粒子は、溶媒等を用いないで混合すること、つまり、ドライブレンドが好ましい。ただし、無機粒子は、溶媒を用いたエマルションの状態で吸水性樹脂と混合することもできる。
【0146】
なお、本願発明の新規な吸水剤は例えば上記製法を一例として得られうる。上記製法は本願吸水剤を効率的に製造しうる点で好ましい。その他の製造方法として、下記の製法2から4なども採用されうる。
【0147】
[製法2]
含水ゲルまたはその乾燥物を切断する。切断により得られた粒子の質量平均粒子径や形状等が所望の範囲から外れている場合、粒子を選別して所望の吸水剤を得る製造方法。
【0148】
[製法3]
上記単量体を重合して得られた含水ゲル状重合体について、切断工程を経ずに、質量平均粒子径が3mm以上10mm以下であって、4面体以上12面体以下の略多面体形状の含水ゲル状重合体を取り出す製造方法。
【0149】
[製法4]
切断工程を経ずに含水ゲル状重合体を乾燥し、この乾燥物を粉砕して吸水剤を得る製造方法。
【0150】
[切断機]
切断工程は、はさみ等の刃物によりなされてもよく、切断機によりなされてもよい。本発明で用いられ得る切断機は、シート状の含水ゲル状重合体(ゲルシート)を切断するための切断機である。好ましい切断機は、上記含水ゲル状重合体を縦切り(幅切り)する少なくとも1つ以上の縦切り刃と、上記含水ゲル状重合体を横切り(長さ切り)する少なくとも1つ以上の横切り回転刃と、固定刃とを有する。さらにこの切断機は、付着抑制剤を上記縦切り刃、横切り回転刃、固定刃及び/又は含水ゲル状重合体に噴霧及び/又は散布する1つ以上の噴霧及び/又は散布手段を備える。この切断機を用いて上記切断工程を行うことにより、略6面体形状の粒子を主成分とし、表面の少なくとも一部が付着抑制剤によって被覆された含水ゲル状重合体が得られうる。
【0151】
以下、好ましい上記切断機について、図1〜図3に基づき説明する。図1は、好ましい切断機の概略構成を示す断面図である。この断面図は簡略化されており、断面が単なる線として示されるとともに、ハッチングが省略されている。図1に示すように、切断機2は、ロールカッタ4及びロールカッタ6と、スクレーパ8、10と、横切り回転刃12と、固定刃14とを備える。更に切断機2は、噴霧装置16、18、20、22、24、26を備える。ロールカッタ4及びロールカッタ6は、縦切り刃である。噴霧装置の設置数は限定されない。噴霧装置の一部又は全部が散布装置で置換されてもよい。更に切断機2は、ゲルシート注入部34とケーシング36とを備える。ケーシング36は、切断された含水ゲル状重合体の飛散を防止するものであり、その形状は特に限定されない。
【0152】
横切り回転刃12は、回転軸28、ブレード30、及び回転体32を備える。回転軸28と回転体32とは、同軸である。回転軸28の回転に伴い回転体32が回転する。回転体32は、円筒状である。回転体32の外周面にブレード30が取り付けられている。横切り回転刃12と固定刃14とは挟み切り装置を構成する。
【0153】
図2は、ロールカッタ4及びロールカッタ6を上から見た図であり、図3は、ロールカッタ4とロールカッタ6とのかみ合い部分を拡大した図である。ロールカッタ4及びロールカッタ6の表面には、凹凸状のカッター刃が形成されている。ロールカッタ4及びロールカッタ6は、凹部A1と凸部A2とを有する。凹部A1と凸部A2とは交互に配置している。ロールカッタ4のカッター刃の凹凸と、ロールカッタ6のカッター刃の凹凸とは互いにかみ合っている。ロールカッタ4の凹部A1とロールカッタ6の凸部A2とはかみ合っている。ロールカッタ4の凸部A2とロールカッタ6の凹部A1とはかみ合っている。回転軸38が回転すると、ロールカッタ4のカッター刃が回転する。回転軸40が回転すると、ロールカッタ6のカッター刃が回転する。
【0154】
互いにかみ合うロールカッタ4とロールカッタ6とは、例えば同じ寸法とされ、同じ回転速度で回転する。ロールカッタ4の回転方向とロールカッタ6の回転方向とは互いに逆方向とされる。ロールカッタ4及びロールカッタ6の回転方向が、図1において矢印で示されている。カッター刃の凹凸の幅、深さ及び高さは、含水ゲル状重合体に所望される大きさに応じて決定される。
【0155】
ロールカッタ4及びロールカッタ6を回転させつつ、ゲルシート注入部34からゲルシートを供給する。ゲルシートは、ロールカッタ4とロールカッタ6との間に巻き込まれ、縦切りされる。縦切りにより、ゲルシートは、細長く切断される。ロールカッタ4及びロールカッタ6により、ゲルシートは、短ざく状に切断される。
【0156】
次に、短ざく状とされた含水ゲル状重合体は、横切りされる。横切りにより、細長い含水ゲル状重合体は、短く切断される。縦切り及び横切りにより、含水ゲル状重合体は粒子状に切断される。
【0157】
横切りは、横切り回転刃12と固定刃14とによりなされる。縦切りされた含水ゲル状重合体は、スクレーパ8及びスクレーパ10の上端のエッジにより、ロールカッタ4、6から剥離される。剥離された含水ゲル状重合体は、スクレーパ8とスクレーパ10との間を下降する。下降した含水ゲル状重合体は、両スクレーパ8、10の下端部から排出される。排出された含水ゲル状重合体は、固定刃14とブレード30とにより切断される。横切り回転刃12の回転により、横切りは順次実行される。横切り回転刃12の回転速度やブレード30の周方向における配置間隔は、所望される含水ゲル状重合体粒子のサイズに応じて適宜決定されうる。
【0158】
噴霧装置16、18は、付着抑制剤をロールカッタ4、6に噴霧する。噴霧装置20、22は、付着抑制剤を含水ゲル状重合体、ロールカッタ4及びロールカッタ6に噴霧する。噴霧装置26は、横切り回転刃12に付着抑制剤を噴霧する。付着抑制剤により、切断された含水ゲル状重合体同士がくっつきにくくなり、切断工程が精度よく且つ効率的になされる。なお、噴霧装置への付着抑制剤の供給は、従来公知のポンプなどによりなされうる。
【0159】
噴霧装置及び/又は散布装置の位置及び台数は限定されない。含水ゲル状重合体表面に対する被覆効率を向上させる観点から、噴霧装置及び/又は散布装置は、含水ゲル状重合体の少なくとも一部と、含水ゲル状重合体を切断する刃の少なくとも一部とに直接噴霧及び/又は散布されるのが好ましい。含水ゲル状重合体表面に対する被覆効率を向上させる観点から、噴霧装置及び/又は散布装置は、含水ゲル状重合体、ブレード30、固定刃14及びロールカッタ4、6へ直接噴霧及び/又は散布が可能な位置に設置されるのが好ましい。
【0160】
含水ゲル状重合体の表面に付着した付着抑制剤は、含水ゲル状重合体同士のくっつきを抑制する。刃の表面に付着した付着抑制剤は、切断時に含水ゲル状重合体に移動する。この移動により、含水ゲル状重合体の切断面が付着抑制剤により効率よく被覆される。ロールカッタ4、ロールカッタ6、ブレード30等、切断機2の各部材に付着した付着抑制剤これらの部材に含水ゲル状重合体が付着することをも抑制し、これらの部材が有する切断能力等の機能を保持する役割も果たす。
【0161】
なお、上記噴霧装置及び/又は散布装置は特に限定されず、従来公知のものが用いられ得る。例えば、アトマイザー、1流体ノズル、2流体ノズルのような空気混合タイプの噴霧装置や液体注入ポンプ等が用いられ得る。
【0162】
上記実施形態では、固定刃14はスクレーパ8、10の下端近傍に設けられている。固定刃14の数や設置位置は、上記実施形態に限定されない。固定刃は縦切り用の用いられてもよい。
【0163】
切断効率を高め、かつ均一な形状にカッティングする観点から、切断時の含水ゲル状重合体の温度は低くされることが好ましい。切断効率を高め、かつ均一な形状にカッティングする観点から、ゲルシートのテンションをコントロールしながら切断がなされることが好ましい。切断時の含水ゲル状重合体の好ましい温度は70℃以下、より好ましくは60℃以下、さらに好ましくは50℃以下、よりさらに好ましくは40℃以下、特に好ましくは30℃以下、最も好ましくは20℃以下である。
【0164】
切断工程以前の段階で含水ゲル状重合体の温度を低くする方法としては、重合工程において冷却を十分行う方法、冷風等によって強制的に冷却する方法及び/又は冷却ベルトを使用する方法等が挙げられる。冷却ベルトは、ゲルシートを移送するベルトである。冷却ベルトは、例えば、水平に置いたSUS製エンドレスベルトの上部にゲルシート載せてゲルシートを移送させながら、ベルト下面(ベルト内側)から冷水をあてるベルト等が採用されうる。
【0165】
また、切断工程は、乾燥した空気や冷風を吹きつけつつなされるのが好ましく、25℃以下の乾燥した空気や冷風を吹きつけつつなされるのがより好ましい。このようにすると、切断時の摩擦熱等による含水ゲル状重合体のべとつきや、切断された含水ゲル状重合体の付着がさらに軽減されうる。なお、切断機の具体例としては、株式会社タナカ製の角切りペレタイザーPM−300などがある。
【0166】
[混合機]
切断された含水ゲル状重合体への付着抑制剤の被覆を均一にする観点、及び/又は付着抑制剤を追加して含水ゲル状重合体の付着防止性を向上させる観点から、切断後の含水ゲル状重合体をさらに混合装置により混合することが好ましい。または、キレート剤及び/又は紫外線吸収剤の混合のため混合装置を活用することも可能である。
【0167】
混合機は、蓄光剤添加工程においても用いられうる。蓄光剤を均一に付着させる観点から、蓄光剤添加工程において、含水ゲル状重合体と蓄光剤とが混合されるのが好ましい。
【0168】
この場合に使用する装置としては通常の装置でよく、例えばレーディゲミキサー、円筒型混合機、スクリュー型混合機、スクリュー押し出し機、タービュライザー、ナウター型混合機、V型混合機、リボン型混合機、双腕型ニーダー、流動式混合機、気流型混合機、回転円盤型混合機、ロールミキサー、転動式混合機などが挙げられる。混合機は、連続混合式でもよく、バッチ混合式でもよい。装置内での滞留時間および付着抑制剤の噴霧量を一定とし、付着防止性を安定させる観点から、バッチ式が好ましく、装置としてはレーディゲミキサーの使用が好ましい。
【0169】
バッチ式レーディゲミキサーを使用した場合の混合の方法として、例えば、下記の方法が挙げられる。すなわち、切断工程においてカッティングされた含水ゲル状重合体をレーディゲミキサーへ所定量投入後、付着抑制剤を噴霧しながら混合する。
【0170】
なお、付着抑制剤を噴霧する前に所定時間混合しておくこと(予備混合)、及び/又は噴霧終了後に混合を継続すること(後混合)を行うこともできる。予備混合は、含水ゲルを解砕するので、付着抑制剤による被覆をより一層均一としうる。
【0171】
混合の際、ブレードの回転数は100min−1以上200min−1以下、サイドチョッパーの回転数は1000min−1以上4000min−1以下であることが好ましい。混合時間は、レーディゲミキサーの容量、材料の充填率によっても異なるが、予備混合は0秒以上2分未満、本混合は10秒以上3分未満、後混合は0秒以上5分未満であることが好ましい。
【0172】
なお、これらの混合機は、吸水性樹脂を表面架橋する場合において、表面架橋剤の混合にも使用できる。また、付着抑制剤は噴霧及び/又は散布により追加するのがよい。この場合、アトマイザー、1流体ノズル、2流体ノズルのような空気混合タイプ噴霧装置;液体注入ポンプ、刷毛、およびローラー等の従来公知の噴霧及び/又は散布手段が用いられ得る。
【0173】
吸水剤は、乾燥工程の後に選別されてもよい。この選別により、所望の質量平均粒子径を有する吸水剤が得られうる。選別工程を経ることにより、質量平均粒子径が2mm以上10mm以下とすることが容易となる。選別工程を経ることにより、対数平均標準偏差を0以上0.25以下にすることが容易となる。
【0174】
選別機として、回転式選別機が用いられ得る。回転式選別機の具体例としては、SPSR−2000、SPSR−1500、SPSR−1000、SPSR−500、SPSR−250、SPSR−2000W、SPSR−1500W、SPSR−1000W、SPSR−500W、SPSR−250W(いずれも株式会社誠和鉄工所製)などが挙げられる。
【0175】
回転式選別機の他、振動平面式選別機が用いられてもよい。振動平面式選別機の具体例としては、株式会社タナカ製のペレット選別機であるPS−280、PSL−300、PSL−400、PSLL−400などが挙げられる。
【0176】
吸水剤の製造中に異物が混入した場合、吸水剤の外観が損なわれる。また、異物が金属の場合は吸水剤の劣化が進行しやすい。又は、異物が金属の場合、吸水剤の保存安定性が低減しやすい。そのため、異物は除去されるのが好ましい。異物の典型例としては、大きさ及び形状が吸水剤と同様であり、色調が吸水剤と異なるものが挙げられる。異物として、金属片、ごみ、金属片やごみなどが付着した吸水剤等が挙げられる。これら異物を除去する方法としては、たとえば、目視により除去する方法、異物選別機を利用する方法および除鉄機を利用する方法等がある。
【0177】
除鉄機としては、電磁石、永久磁石の何れを使用することができるが、2000ガウス以上12000ガウス以下のものが好ましく、さらに好ましくは5000ガウス以上12000ガウス以下であり、特に好ましくは8000ガウス以上12000ガウス以下である。
【0178】
[蓄光剤]
本発明に係る吸水剤は、蓄光剤を含む。蓄光剤の種類は限定されず、公知の蓄光剤が用いられ得る。蓄光剤は、太陽光や蛍光灯の光などを吸収し、暗所において発光する性質を有する。蓄光剤として、CaS:Bi、CaSrS:Bi、ZnCdS:Cu、ZnS:Cu等の硫化物系、MO・Si:Eu等のシリコン系、下記式(A)で表される化合物及びSrAl1425:Eu,Dy等のアルミン酸塩系が例示される。蓄光剤の発光色として、緑色、青色、紫色及びこれらの中間色が例示される。
【0179】
好ましい蓄光剤は、下記式(A)で表される化合物である。
MAl(A)
ただし、式(A)においてMはカルシウム、ストロンチウム及びバリウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素である。式(A)で示される化合物は、残光時間が長いので好ましい。式(A)で示される化合物として、SrAl、CaAl及びBaAlが例示される。上記式(A)で表される化合物を母結晶とする蓄光剤であってもよい。また式(A)におけるMは、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素とマグネシウムとを含む複数の金属元素よりなっていてもよい。安全性の観点から、放射性物質を含まない蓄光剤が好ましい。
【0180】
上記蓄光剤は、賦活剤として、ユウロピウムを含んでいてもよい。好ましいユウロピウムの含有量は、上記式(A)の金属元素Mに対するモル%で、0.001モル%以上10モル%以下である。
【0181】
上記蓄光剤は、共賦活剤を含んでいてもよい。共賦活剤は、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、マンガン、スズ及びビスマスよりなる群から選ばれる少なくとも1種以上の元素であるのが好ましい。好ましい共賦活剤の含有量は、上記式(A)の金属元素Mに対するモル%で、0.001モル%以上10モル%以下である。
【0182】
化学的安定性及び残光特性の観点から、より好ましい蓄光剤として、SrAl:Eu、SrAl:Eu,Dy、SrAl:Eu,Nd、CaAl:Eu、CaAl:Eu,Nd等が挙げられる。
【0183】
なお、式(A)で示される蓄光剤は、例えば特許第2543825号に記載された方法により製造されうる。また、式(A)で示される蓄光剤は、市販されている。市販されている蓄光剤として、根本特殊化学株式会社製のN夜光(ルミノーバ)が挙げられる。このN夜光(ルミノーバ)の品番として、G−300シリーズ、V−300シリーズ及びBG−300シリーズ等が挙げられる。G−300シリーズの化学組成は、SrAl:Eu,Dyである。V−300シリーズの化学組成は、CaAl:Eu,Ndである。BG−300シリーズの化学組成は、SrAl1425:Eu,Dyである。「N夜光」及び「ルミノーバ」は、日本における登録商標である。
【0184】
蓄光剤の含有量は限定されない。暗所における発光性を高める観点から、蓄光剤は、吸水性樹脂の質量に対して1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上が特に好ましい。吸水剤の強度や吸水倍率を高める観点から、蓄光剤は吸水性樹脂の質量に対して20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0185】
[吸水性樹脂及び吸水剤]
本発明に係る吸水剤は、上記蓄光剤を含む。この吸水剤は、エチレン性不飽和単量体を重合してなる吸水性樹脂を含む。この吸水性樹脂は、アクリル酸及び/又ははアクリル酸塩を30モル%以上含有するエチレン性不飽和単量体を重合させて得られる吸水性樹脂と蓄光剤とを含む。好ましくは、このエチレン性不飽和単量体は、アクリル酸及び/又はアクリル酸塩を30モル%以上100モル%以下含有している。
【0186】
エチレン性不飽和単量体が、アクリル酸塩系単量体を主成分として含む単量体とされた場合、得られる含水ゲルの吸水性能や安全性がより一層向上するので好ましい。より好ましくは、アクリル酸塩系単量体は、アクリル酸又はその水溶性塩類である。
【0187】
アクリル酸塩類の中和率は、好ましくは30モル%以上100モル%以下、より好ましくは50モル%以上99モル%以下である。塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、ヒドロキシアンモニウム塩、アミン塩又はアルキルアミン塩である。上記例示の水溶性塩類のうち、ナトリウム塩およびカリウム塩が特に好ましい。
【0188】
中和率が70モル%以上100モル%以下である場合、重合反応が特に円滑に進行され、吸水性樹脂の歩留まりが高まるため好ましい。これらアクリル酸塩系単量体は、単独で用いられてもよく、また、二種類以上が併用されてもよい。
【0189】
本発明に係る吸水剤の含水率は30質量%以下が好ましく、より好ましくは20質量%以下である。含水率が30質量%以下とされた吸水剤は、多量の水等を吸収でき、吸収倍率が高い。この吸水剤では、吸収される水等の量を調整することにより、所望される膨潤倍率が選択されうる。膨潤倍率により、暗所における発光の状態が変化しうる。膨潤倍率が大きくされるほど、輝度は小さくなる。また、膨潤倍率の変化により、発光する光の色が変化する。例えば、膨潤倍率が5倍の場合と10倍の場合とでは、輝度や光の色が異なる。種々の用途や使用者の好みに合わせて膨潤倍率が調整されうる。含水率が30質量%以下とされることにより、膨潤倍率の選択自由度が高まる。含水率が30質量%以下とされることにより、吸水剤の用途が拡がる。
【0190】
含水率が30質量%以下とされることにより、樹脂は硬くなりやすい。この硬さにより、吸水剤の形状が保持されやすい。ハンドリング時や移送時において、吸水剤の粒子同士が衝突したり擦れ合ったりすることがある。含水率が30質量%以下とされることにより、粒子の変形が抑制されうる。
【0191】
含水率が30質量%以下とされることにより、吸水剤の粒子同士がくっつきにくくなる。よって、製造工程中や移送時等において、粒子同士の凝集が効果的に抑制されうる。
【0192】
吸水剤は、単一又は複数の略滑らかな面からなり且つ1面体以上12面体以下の形状を有する粒子を含むのが好ましく、この粒子が吸水剤の全質量に対して50質量%以上100質量%以下であるのがより好ましい。この粒子は、比表面積が小さくされやすい。比表面積が小さくされることにより、少量の蓄光剤で発光を目立たせることができ、蓄光剤の有効活用が可能となる。粒子形状、質量平均粒子径及び/又は粒径分布を調整することにより、比表面積が調整されうる。
【0193】
本願において1面体とは、単一の略滑らかな面からなる形状を意味する。典型的な1面体の粒子は、球状粒子である。球状粒子は、例えば逆相懸濁重合により好適に得られうる。この逆相懸濁重合は、例えば米国特許4093776号、米国特許4367323号、米国特許4446261号等に記載されている。
【0194】
より好ましくは、この吸水剤において、4面体以上12面体以下の略多面体形状を有する粒子が吸水剤の全質量に対して50質量%以上100質量%以下とされる。4面体以上12面体以下の略多面体形状により、比表面積が低くなりやすい。更に、4面体以上12面体以下の略多面体形状により外観(ディスプレイ効果)が向上し、商品価値が高まりうる。この観点から略6面体形状がより好ましい。また、4面体以上12面体以下の略多面体形状を有する粒子は、上記切断工程により容易に製造されうる。
【0195】
好ましくは、吸水剤の質量平均粒子径は2mm以上10mm以下とされる。好ましくは、粒径分布の対数標準偏差値は0以上0.25以下とされる。好ましい範囲の質量平均粒子径及び/又は粒径分布により、比表面積を好ましい範囲に調整することが容易となる。
【0196】
好ましくは、吸水剤は多価金属塩、多価アルコール及び界面活性剤よりなる群か選ばれる少なくとも1種を含む。この吸水剤では、上記切断工程の効率を高めることができ、生産性が高められ得る。この吸水剤は、上記切断工程が容易となりうるので、略多面体形状の粒子とされやすい。
【0197】
多価金属塩、多価アルコール及び界面活性剤よりなる群か選ばれる少なくとも1種により、吸水剤の表面における蓄光剤の定着性が高められ得る。例えば、吸水性樹脂のポリマー分子が有する末端のカルボシキル基と、多価金属塩の金属イオンとが結合しうる。例えば、末端のカルボシキル基と、多価金属塩のアルミイウムイオンとが結合しうる。2つの末端カルボシキル基と1つの金属イオンとが結合することにより、環状部が形成されうる。この環状部に蓄光剤の分子が取り込まれうる。これにより、蓄光剤の定着性が高められ得る。
【0198】
吸水剤における残存モノマーの含有量は、0質量ppm以上300質量ppm以下であることが好ましい。この吸水剤は、臭気や衛生上の問題が少なく、高品質である。
【0199】
既に説明したように、シート状に成形された上記含水ゲル状重合体が縦切り及び横切りされることにより、4面体以上12面体以下の略多面体形状の粒子が当該含水ゲル状重合体の質量に対して50質量%以上100質量%以下となる含水ゲル状重合体が得られうる。これを乾燥させることにより、4面体以上12面体以下の略多面体形状の粒子が吸水剤の全質量に対して50質量%以上100質量%以下である吸水剤が得られうる。質量平均粒子径が2mm以上10mm以下とされ、かつ、粒径分布の対数標準偏差値が0.25以下とされた吸水剤は、良好な乾燥状態を有している。なぜならこの吸水剤は、粒径が全体的に均質となっている含水ゲル状重合体を乾燥したものだからである。
【0200】
含水率が5質量%以上30質量%以下である吸水剤は、残存モノマーと上記重合開始剤との反応に好適な含水率を有する含水ゲル状重合体を乾燥することにより得られやすい。よって、含水率が5〜30質量%である吸水剤においては、その残存モノマーの含有量を300質量ppm以下となりやすい。
【0201】
吸水剤における付着抑制剤の含有量は、吸水性樹脂の固形分に対して0.0015質量%以上35質量%以下であることが好ましい。0.0015質量%以上とすることにより、含水ゲル状重合体の被覆が十分になされ、含水ゲル状重合体を乾燥させる際に塊となりにくい。よって、乾燥が円滑に行われる。35質量%以下の場合、含水ゲル状重合体のべたつきが抑制され、ハンドリングが容易となる。また、35質量%以下の場合、付着抑制剤が飛散しにくくなり、更には付着抑制剤の使用量が抑制されて経済的である。
【0202】
蓄光剤の発光色と異なる色の液体を吸収させた吸水剤であってもよい。例えば、暗所において緑色に発光する吸水剤に、赤色に着色された水を吸収させてもよい。この例では、明所では赤色に見え、暗所では緑色に発光する吸水剤が得られる。このように、明るい場所と暗い場所とで色の異なる吸水剤とすることができ、吸水剤の用途が広がりうる。
【0203】
吸水剤の用途は、限定されない。本発明に係る吸水剤は、従来より吸水性樹脂又は吸水剤が用いられているあらゆる用途に適用されうる。例えば、本発明の吸水剤は、芳香剤、消臭剤、冷却剤、標識、尿吸収剤、オムツや生理用ナプキンなどの吸収性物品、保冷剤、植物育成用保水剤等に用いられ得る。
【0204】
標識としては、例えば道路標識が挙げられる。道路標識に用いられる場合、例えば、本発明に係る吸水剤を透明シートで挟んでなるシート状の吸水剤が用いられても良い。この吸水剤で標識の周囲を囲むことにより、夜間において標識が見えやすくなる。更に、標識に用いられる吸水剤は、雨水を吸収しうる状態で用いられるのが好ましい。例えば上記透明シートが透水性を有するものとされるのが好ましい。雨水を吸収することにより発光面積が拡がる。夜間で且つ雨天の際には道路標識が極めて見えにくくなるが、上記吸収剤は、夜間で且つ雨天の際に道路標識を見えやすくする。
【0205】
尿吸収剤としては、例えば、簡易式トイレに用いられる尿吸収剤が挙げられる。簡易式トイレは、一般に幼児用や介護用として用いられている。尿吸収剤が簡易式トイレに配置されることにより、夜間において簡易式トイレの位置がわかりやすくなる。更にこの場合、夜間において尿を排出する目標位置がわかりやすくなる。また、特に幼児用の簡易式トイレの場合、幼児に排尿を促す効果もある。尿を吸収することにより発光面積が拡がる。この発光面積の広がりを見ることにより、幼児は喜んで排尿しやすい。
【0206】
冷却剤としては、人体用の冷却剤が例示される。この冷却剤は、ゲル状に膨潤させて用いられる。この冷却剤は、例えば発熱の際におでこ等にあてて用いられる。この冷却剤は、夜間に用いられることも多い。本発明の吸水剤が用いられることにより、暗所であっても冷却剤が目立つ。夜間において冷却剤がおでこ等から外れた場合でも、発光をたよりに冷却剤を見つけることができる。
【0207】
芳香剤又は消臭剤として用いられる場合、公知の消臭成分や芳香剤成分が配合されうる。吸収剤の製造工程において、芳香剤や消臭剤は、あらゆる段階で添加されうる。
【0208】
好ましい芳香剤成分として、合成芳香剤成分、植物抽出成分等が用いられうる。芳香剤成分として、アセト酢酸エチル、アセトフェノン、アニスアルデヒド、アミルシンナミックアルデヒド、アンスラニル酸メチル、イソオイゲノール、イソ吉草酸エチル、イソ吉草酸イソアミル、イソチオシアン酸アリル、γ−ウンデカラクトン、エチルバニリン、オイゲノール、カプリル酸エチル、カプロン酸アリル、カプロン酸エチル、ギ酸イソアミル、ギ酸ゲラニル、ケイ皮アルコール、ケイ皮アルデヒド、ケイ皮酸、ケイ皮酸エチル、ケイ皮酸メチル、ゲラニオール、酢酸イソアミル、酢酸ゲラニル、酢酸シトロネリル、酢酸シンナミル、酢酸ベンジル、酢酸リナリル、サリチル酸メチル、シクロヘキシルプロピオン酸アリル、シトラール、シトロネラール、1,8−シネオール、デシルアルデヒド、テルピネオール、ノナラクトン、バニリン、ヒドロキシシトロネラール、フェニル酢酸エチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ベンジル、ヘリオトロピン、ベンジルアルコール、ボルネオール、マルトール、p−メチルアセトフェノン、N−メチルアントラニル酸メチル、1−メントール、α−ヨノン、酪酸、酪酸イソアミル、酪酸ブチル、リナロール等が例示される。
【0209】
消臭成分としては、合成消臭成分、植物抽出成分等が挙げられる。好ましくは植物抽出成分である。植物抽出成分として、柿、カシ、ザクロ、ハイビスカス、ツバキ、サザンカ、茶、サンショウ、オレンジ、レモン、グアヤク、山桜、ヘビ苺、月桂樹、シナモン、樟、サッサフラス、ナンテン、アケビ、ボタン、ヤナギタデ、ダイオウ、ナツメ、ナツメグ、コブシ、ホウノキ等からの抽出物などが例示される。上記茶の抽出物としては、例えば緑茶、発酵茶、半発酵茶からの抽出物が使用されうる。植物抽出成分としては、より好ましくはポリフェノールである。
【0210】
本発明は、目視されうる状態で使用される吸水剤に好適に適用される。本発明の吸水剤は、夜間等の暗い場所において目立つ特性を有する。この特性が活かされうる用途が好ましい。
【0211】
なお、本発明は、前述された各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲内で種々の変更が可能である。
【実施例】
【0212】
本発明について、実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正および改変を行うことができる。なお、評価方法は以下に従った。
【0213】
(1)吸収倍率
吸収倍率とは、0.90質量%食塩水に対する無加圧下、48時間後の吸収倍率をいい、以下の方法で測定することができる。
【0214】
吸水剤0.200gを不織布(南国パルプ工業(株)製、商品名:ヒートロンペーパー、型式:GSP−22)製の袋(85mm×60mm)に均一に入れてヒートシールし、室温で大過剰(通常500g程度)の0.90質量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)中に浸漬した。
【0215】
48時間後に袋を引き上げ、遠心分離機(株式会社コクサン社製、遠心機:型式H−122)を用いて、edana ABSORBENCY II 441,1−99に記載の遠心力(250G)で3分間水切りを行った後、袋の質量W2(g)を測定した。また、同様の操作を吸水剤を用いずに行い、そのときの質量W1(g)を測定した。そして、これら質量W1、W2から、次式(1)に従って吸収倍率CRC(g/g)を算出した。
【0216】
吸収倍率CRC(g/g)=[W2(g)−W1(g)]/[吸水剤の質量(g)]−1 ・・・(1)
【0217】
(2)残存モノマー
吸水剤中の残存モノマーの含有量は、従来公知の方法によって測定することができる。例えば、0.90質量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)184.3gに吸水剤1.0gを加え、攪拌下で2時間抽出した後、膨潤ゲル化した吸水剤を、濾紙を用いて濾別し、濾液中の残存モノマー量を液体クロマトグラフィーで分析する方法を挙げることができる。この場合、既知濃度のモノマー標準溶液を同様に分析して得た検量線を外部標準とし、濾液の希釈倍率を考慮して、吸水剤中の残存モノマー量を求めることができる。
【0218】
(3)含水ゲル状重合体の質量平均粒子径、および対数標準偏差値の測定
含水ゲル状重合体サンプル30gを20質量%NaCl水溶液1000gに投入し、スターラーチップを300rpmで回転させることによって120分間攪拌した。この攪拌終了後、下記記載の対数標準偏差(下式(2)におけるR=15.9%、50.0%、84.9%)が測定できる5〜8種類のふるいを選択してサンプルを100g投入し、さらに6000gの20質量%NaCl水溶液を投入して分級した。ふるいは、THE IIDA TESTING SIEVE(径が20cmであり、ふるいの目開きが16.0mm、13.2mm、11.2mm、9.5mm、8.0mm、6.70mm、5.6mm、4.75mm、4.0mm、3.35mm、2.8mm、2.36mm、2.0mm又は1.0mmであるJIS標準ふるいZ8801−1(1998))から選択された。分級されたふるい上のサンプルを十分に水切りした後に秤量した。
【0219】
上記分級及び水切りされた後の粒子状含水ゲルの質量をwとし、ふるい目の開きをrとし、サンプルの質量w0=30gとして、下式(2)に基づいて、粒子状含水ゲルの粒径分布を対数確率紙にプロットした。プロットの積算ふるい上%Rが50質量%に相当する粒子径が粒子状含水ゲルの平均粒子径とされた。式(2)を以下に示す。
【0220】
R(α)=(w0/w)1/3×r・・・(2)
【0221】
対数標準偏差値σζは、上記プロットにおいて、積算ふるい上%がR=84.1%における粒径(X1とする)およびR=15.9%の粒径(X2とする)を算出し、これらX1およびX2から、次式(3)により、算出した。
【0222】
σζ=(1/2)ln(X2/X1)・・・(3)
【0223】
(4)吸水剤の質量平均粒子径、および対数標準偏差値の測定
下記記載の対数標準偏差(上式(2)におけるR=15.9%、50.0%、84.9%)が測定できる5〜8種類のふるいを選択して、吸水剤のサンプルを100g投入した。ふるいは、THE IIDA TESTING SIEVE(径が20cmであり、ふるいの目開きが16.0mm、13.2mm、11.2mm、9.5mm、8.0mm、6.70mm、5.6mm、4.75mm、4.0mm、3.35mm、2.8mm、2.36mm、2.0mm又は1.0mmであるJIS標準ふるいZ8801−1(1998))から選択された。次に、振動分級機(IIDA SIEVE SHAKER、TYPE:ES−65型、SER.No.0501)により5分間、分級した。分級されたふるい上のサンプルを秤量した。上記分級後の吸水剤の質量をwとし、ふるい目の開きをrとし、サンプルの質量w0=30gとして、上記の式(2)に基づいて、吸水剤の粒径分布を対数確率紙にプロットした。プロットの積算ふるい上%Rが50質量%に相当する粒子径が吸水剤の平均粒子径とされた。
【0224】
対数標準偏差値σζは、上記プロットにおいて、積算ふるい上%がR=84.1%における粒径(X1とする)およびR=15.9%の粒径(X2とする)を算出し、これらX1およびX2から、上式(3)により、算出した。
【0225】
(5)耐光性試験
吸水剤の固形分に対して25倍のイオン交換水を完全に吸収させたゲル30gを225ccのマヨネーズビンに入れ、蓋をして密封した後、屋外で1週間放置後の状態を目視で観察した。
【0226】
(6)含水ゲルの形状及び形状ごとの質量百分率の測定
切断終了後の含水ゲル状重合体サンプル30gを取り、粒子ごとの形状を目視で確認した。目視により、各粒子が略何面体の形状であるか等を判断した。4面体以上12面体以下の略多面体形状の粒子の合計質量Wt1、または略6面体形状の粒子の合計質量Wt2を算出した。Wt1(g)/30(g)×100、又はWt2(g)/30(g)×100により、各形状ごとの質量百分率を得た。
【0227】
(7)含水ゲル状重合体の含水率及び固形分率の測定
重合機から取り出された含水ゲル状重合体の一部を少量切り取って素早く冷やし、ハサミで素早く細分化した。この含水ゲル状重合体4gを内径50mmのシャーレに取り、180℃静置乾燥機中で16時間乾燥した。含水ゲル状重合体の含水率(質量%)をG1とし、乾燥後の含水ゲル状重合体の質量(g)をG2とし、乾燥前の含水ゲル状重合体の質量(g)をG3としたとき、下記式にて含水率G1を算出した。
G1=100−G2/G3×100
【0228】
なお、含水ゲル状重合体の固形分率は、次式のように含水率G1から計算されうる。
固形分率(質量%)=100−G1
【0229】
(8)吸水剤の含水率及び固形分率の測定
吸水剤2gを内径50mmのシャーレに取り、180℃静置乾燥機中で16時間乾燥した。吸水剤の含水率(質量%)をG4とし、乾燥後の吸水剤質量(g)をG5とし、乾燥前の吸水剤質量(g)をG6としたとき、下記式にて含水率G4を算出した。
G4=100−G5/G6×100
【0230】
なお、吸水剤の固形分率は含水率G4から計算されうる。
固形分率(質量%)=100−G4
【0231】
〔実施例1〕
37質量%アクリル酸ナトリウム水溶液254.50g、アクリル酸29.50g、10質量%ポリエチレングリコールジアクリレート(n=9)水溶液0.747g、イオン交換水20.26g及び10質量%ポリエチレングリコール水溶液6.25gを含むモノマー水溶液を調製した。すなわち、アクリル酸およびアクリル酸ナトリウムを100モル%含有する(架橋剤を除く)エチレン性不飽和単量体を調製した。このモノマー水溶液に窒素を吹き込み、水溶液中の溶存酸素濃度を0.1ppm以下とした。なお、10質量%ポリエチレングリコールとして、関東化学株式会社製の商品名ポリエチレングリコール6,000が用いられた。
【0232】
ついで、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名Irgacure184;チバスペシャリティケミカル株式会社製)の1.0質量%アクリル酸溶液1.41g及び3.0質量%過硫酸ナトリウム水溶液1.41gを順番に投入した。次に、モノマー液を30cm×30cmのPFA製バット中に注ぎ、高圧水銀ランプ450Wを用いて照射距離60cmにて照射し、重合を行った。高圧水銀ランプ450Wとして、ハリソン東芝ライティング株式会社製の商品名トスキュア401が用いられた。
【0233】
重合開始温度は22℃であり、2分30秒後には80℃に達した。5分間高圧水銀ランプを照射した後、高圧水銀ランプを消して重合を終了し、シート状の含水ゲル状重合体(含水ゲルシート)を得た。このときの含水ゲル状重合体の含水率は55質量%であった。
【0234】
含水ゲルシートの厚みは約5mmであった。この含水ゲルシートをハサミにより5mm角に切断して、略6面体の粒子を含む含水ゲル(1)を得た。この含水ゲル(1)は、一辺が約5mmであり、略立方体形状を成しており、表面が平滑な6つの面からなっている。含水ゲル(1)において、略6面体形状を有する含水ゲルの割合は98.5質量%であった。また、含水ゲル(1)の質量平均粒子径は5.0mmであり、含水ゲル(1)の粒径分布の対数標準偏差値は0.20であった。この含水ゲル(1)300gを容量5リットルのレーディゲミキサー(マツボー社製)に投入し、シリンジで10質量%硫酸アルミニウム水溶液0.75g(0.05質量%)及び蓄光剤7.5gを滴下しながら200min−1の回転数で1分間混合した。添加後の含水ゲルは非凝集状態であった。蓄光剤として、根本特殊化学株式会社製の「N夜光ルミノーバ」の品番G−300Mを用いた。
【0235】
混合後の含水ゲルを50メッシュ(目開き300μm)の金網上に広げ、130℃で30分間乾燥したところ、含水率20質量%の吸水剤(1)を得た。得られた吸水剤(1)の平均粒径は3.8mmであり、対数標準偏差値σζは0.19であった。また、吸水剤(1)において、吸収倍率(CRC)は41.0g/gであり、残存モノマー含有量は100ppmであった。耐光性試験においてもゲルの変色、変形等は見られなかった。吸水剤(1)において、略6面体形状を有する含水ゲルの割合は98.5質量%であった。
【0236】
なお、含水ゲル状重合体、および吸水剤の平均粒径、および対数標準偏差の測定には、目開き8.0mm、6.70mm、5.6mm、4.75mm、4.0mm、2.8mm、2.0mmのふるいを使用した。
【0237】
[実施例2]
プロトアネモネンおよびフルフラールがND(non−Detactable/1ppm未満)であり、且つ、p−メトキシフェノール50ppm(対アクリル酸の重量)を含有するアクリル酸を、苛性ソーダで中和することにより、71.3モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液(2)を4500g得た。この水溶液(2)の単量体濃度は、39重量%である。この4500gの水溶液(2)に、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数8)14.6gを溶解し、反応液(2)とした。
【0238】
次に、この反応液(2)を、窒素ガス雰囲気下で30分間脱気した。シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋が取り付けられた反応器が用意された。この反応器に、脱気した上記反応液(2)を供給し、該反応液(2)を30℃に保ちながら、窒素ガス置換した。その後、窒素ガス置換した反応液(2)を撹拌しながら、過硫酸ナトリウム2.46gおよびL−アスコルビン酸0.10gを水溶液で添加したところ、約1分後に重合が開始された。そして、30℃〜90℃で重合を行い、重合を開始して60分後に、架橋された含水ゲル状重合体(2)を得た。
【0239】
得られた含水ゲル状重合体(2)は、その径が約5mmに細分化されていた。この含水ゲル状重合体(2)の含水率は42質量%であった。含水ゲル状重合体(2)において、4面体以上12面体以下の略多面体形状の粒子は、0質量%であった。
【0240】
この含水ゲル状重合体(2)1000gを容量5リットルのレーディゲミキサー(マツボー社製)に投入し、シリンジで10質量%硫酸アルミニウム水溶液420g及び蓄光剤21gを滴下しながら200min−1の回転数で1分間混合した。添加後の含水ゲルは非凝集状態であった。蓄光剤として、根本特殊化学株式会社製の「N夜光ルミノーバ」の品番BG−300Mを用いた。
【0241】
混合後の含水ゲル状重合体(2)を50メッシュ(目開き300μm)の金網上に広げ、150℃で90分間熱風乾燥した。得られた乾燥重合体(2)を、振動ミルを用いて粉砕し、さらに20メッシュ(目開き850μm)の金網で分級および調合することにより、不定形破砕状の吸水剤(2)を得た。吸水剤(2)において、4面体以上12面体以下の略多面体形状の粒子は、0質量%であった。
【0242】
[評価]
実施例1に係る吸水剤(1)10gを225ccのマヨネーズ瓶に入れることにより、評価サンプル(1a)を得た。吸水剤(1)10gを225ccのマヨネーズ瓶に入れ、50gの水を加えて5倍に膨潤させることにより、評価サンプル(1b)を得た。吸水剤(1)10gを225ccのマヨネーズ瓶に入れ、100gの水を加えて10倍に膨潤させることにより、評価サンプル(1c)を得た。
【0243】
実施例2に係る吸水剤(2)10gを225ccのマヨネーズ瓶に入れることにより、評価サンプル(2a)を得た。吸水剤(2)10gを225ccのマヨネーズ瓶に入れ、50gの水を加えて5倍に膨潤させることにより、評価サンプル(2b)を得た。吸水剤(2)10gを225ccのマヨネーズ瓶に入れ、100gの水を加えて10倍に膨潤させることにより、評価サンプル(2c)を得た。
【0244】
各サンプルについて、蛍光灯の光を8時間照射した後、暗所で目視により観察した。全ての例のサンプルが光って見えた。実施例1に係るサンプル(1a)、(1b)及び(1c)では、発光する粒子の形状が略六面体であることが確認できた。これに対して、実施例2に係るサンプル(2a)、(2b)及び(2c)では、吸水剤全体が一体的に光って見えており、吸水剤の粒子形状は確認できなかった。また、膨潤倍率が同じサンプル同士で比較すると、実施例1のほうが実施例2よりも明るく見えた。即ち、サンプル(1a)はサンプル(2a)よりも明るく見えた。サンプル(1b)はサンプル(2b)よりも明るく見えた。サンプル(1c)はサンプル(2c)よりも明るく見えた。
【0245】
[実施例3]
はさみに代えて、図1で示される前述の切断機2が用いられた他は実施例1と同様にして、実施例3に係る吸水剤(3)を得た。この吸水剤(3)を評価したところ、上記全ての評価項目について吸水剤(1)と同等の結果が得られた。
【0246】
[実施例4]
切断機2においてプロピレングリコールを噴霧しながら切断工程がなされた以外は実施例3と同様にして、実施例4に係る吸水剤(4)を得た。実施例4では、切断工程における切断面同士の付着が、実施例3よりも少なく、切断工程が円滑になされた。
【0247】
上記実施形態及び実施例は、本発明の技術内容を明らかにするものであって、本発明がそれら実施形態又は実施例に限定して狭義に解釈されるべきではない。
【産業上の利用可能性】
【0248】
本発明の吸水剤は、芳香剤、消臭剤、熱さまし用シート等の冷却剤、尿吸収剤、オムツや生理用ナプキンなどの吸収性物品、植物育成用保水剤等に適用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0249】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る製造方法に適した製造装置を示す断面図である。
【図2】図2は、図1におけるロールカッタを上方から見た図である。
【図3】図3は、図2の一部を拡大した図である。
【符号の説明】
【0250】
2・・・切断機
4、6・・・ロールカッタ
8、10・・・スクレーパ
12・・・横切り回転刃
14・・・固定刃
16、18、20、22、24、26・・・噴霧装置
30・・・ブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン性不飽和単量体を重合させて得られる吸水性樹脂と蓄光剤とを含み、含水率が30質量%以下である吸水剤。
【請求項2】
上記エチレン性不飽和単量体が、アクリル酸及び/又はアクリル酸塩を30モル%以上含有する請求項1の吸水剤。
【請求項3】
多価金属塩、多価アルコール及び界面活性剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1又は2に記載の吸水剤。
【請求項4】
1面体以上12面体以下の形状を有する粒子が吸水剤の全質量に対して50質量%以上100質量%以下である請求項1から3のいずれかに記載の吸水剤。
【請求項5】
上記蓄光剤が、下記式(A)で表される化合物である請求項1から4のいずれかに記載の吸水剤。
MAl(A)
ただし、式(A)においてMはカルシウム、ストロンチウム及びバリウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素である。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の吸水剤を含む芳香剤。
【請求項7】
アクリル酸及び/又はアクリル酸塩を30モル%以上含有するエチレン性不飽和単量体を重合させ、含水率が40質量%以上である含水ゲル状重合体を得る重合工程と、
上記含水ゲル状重合体に蓄光剤が添加される工程と、
上記蓄光剤が添加された上記含水ゲル状重合体が乾燥される乾燥工程とを含む吸水剤の製造方法。
【請求項8】
上記乾燥工程後の吸水剤に液体を吸収させる吸液工程を含む請求項7に記載の吸水剤の製造方法。
【請求項9】
アクリル酸及び/又はアクリル酸塩を30モル%以上含有するエチレン性不飽和単量体を重合させ、含水率が40質量%以上である含水ゲル状重合体を得る重合工程と、
上記含水ゲル状重合体が切断される切断工程と、
多価金属塩、多価アルコール及び界面活性剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種により、上記含水ゲル状重合体の少なくとも一部を被覆する被覆工程と、
上記被覆工程後の上記含水ゲル状重合体に蓄光剤を添加する工程とを含む吸水剤の製造方法。
【請求項10】
アクリル酸及び/又はアクリル酸塩を30モル%以上含有するエチレン性不飽和単量体を重合させ、含水率が40質量%である含水ゲル状重合体を得る重合工程と、
この含水ゲル状重合体が多価アルコールにより被覆される被覆工程と、
上記含水ゲル状重合体が切断される切断工程と、
上記含水ゲル状重合体に、多価金属塩と蓄光剤とを同時に添加する工程を含む吸水剤の製造方法。
【請求項11】
アクリル酸及び/又はアクリル酸塩を30モル%以上含有するエチレン性不飽和単量体を重合させ、含水率が40質量%以上である含水ゲル状重合体を得る重合工程と、
上記含水ゲル状重合体に多価金属塩が付着される工程と、
上記含水ゲル状重合体に蓄光剤が添加される工程と、
多価金属塩及び蓄光剤の存在下において上記含水ゲル状重合体が加熱乾燥される工程を含む吸水剤の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−201811(P2008−201811A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−35766(P2007−35766)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】